JP5565276B2 - リチウムイオン電池の蓄電量補正方法 - Google Patents

リチウムイオン電池の蓄電量補正方法 Download PDF

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Description

本発明は、オリビン構造を備えるリチウムイオン電池の蓄電量を補正する蓄電量補正方法に関する。
充放電可能な二次電池としてリチウムイオン電池が知られている。リチウムイオン電池の蓄電量(State of charge、以下「SOC」という)は、車両の走行状態(例えば、発進、通常走行、加速、減速など)や車両用負荷(ストップランプ、ヘッドランプ、ワイパ、電動ファンなど)によって変動するため、リチウムイオン電池の使用中にSOCを監視する必要がある。ここで、蓄電量を推定する方法として、特許文献1は、電池の蓄電量が制御中心SOCと一致した時を基準として、充電電流積算値と放電電流積算値とが一致した時に検出される電池の端子間電圧および充放電電流と、予め求めておいた内部抵抗値とに基づいて、電池の開放端電圧を推定しSOCを算出するSOC算出装置を開示する。
特開2007−192726号公報
しかしながら、正極活物質に一般式:LIMPO(式中、Mは遷移金属である)で表わされるオリビン構造を含むリチウムイオン電池(以下、オリビン系リチウムイオン電池という)の場合、開放端電圧からSOCを算出することが困難である。図8は、3元系リチウムイオン電池及びオリビン系リチウムイオン電池の開放端電圧及びSOCの関係を示したグラフである。なお、同図において、SOCは、一般に使用可能とされた電圧範囲(オリビン系リチウムイオン電池の場合、2.5〜4.1V)で定義した。
3元系リチウムイオン電池は、正極がLiNi1/3Mn1/3Co1/3からなる層状構造に構成されており、負極がグラファイトにより構成されている。オリビン系リチウムイオン電池は、正極がオリビン構造であるLiFePO、負極がグラファイトにより構成されている。
同図を参照して、3元系リチウムイオン電池の場合、開放端電圧が上昇するとSOCが上昇するため、開放端電圧及びSOCの間には相関関係があることがわかる。なお、開放端電圧とは、電池を機器に接続しない状態(電流を流さない状態)での電池両端子間の電圧値を意味する。他方、オリビン系リチウムイオン電池の場合、SOCが約10〜98%の範囲では開放端電圧に殆ど変化がなく、この範囲において開放端電圧及びSOCの間には相関関係がないことがわかる。したがって、オリビン系リチウムイオン電池の場合には、開放端電圧からSOCを推定するのが困難であるため、別の推定方法を用いる必要がある。そこで、本願発明は、オリビン系リチウムイオン電池のSOCを精度よく推定することを目的とする。
正極活物質に一般式:LIMPO (式中、Mは遷移金属である)で表わされるオリビン構造を含む正極体と、負極体とを含むリチウムイオン電池の第1の蓄電量を、前記リチウムイオン電池を充電したときの充電抵抗を算出する充電抵抗算出ステップと、前記リチウムイオン電池を放電したときの放電抵抗を算出する放電抵抗算出ステップと、前記充電抵抗算出ステップで算出された充電抵抗と前記放電抵抗算出ステップで算出された放電抵抗との抵抗比率を算出する抵抗比率算出ステップと、前記充電抵抗を前記放電抵抗で除した抵抗比率が増加するのに応じて前記リチウムイオン電池の蓄電量が高くなる相関情報に基づき、前記抵抗比率算出ステップで算出された前記抵抗比率から前記第1の蓄電量を推定する蓄電量推定ステップと、を実行することにより推定する第1のステップと、前記リチウムイオン電池の充放電量を積算することにより前記リチウムイオン電池に蓄電される第2の蓄電量を推定する第2のステップと、前記第1及び第2のステップで推定された第1及び第2の蓄電量の差分を算出する第3のステップと、前記差分が閾値以上である場合には、放電により前記リチウムイオン電池の前記第1の蓄電量を所定値以下まで減少させる第4のステップと、前記リチウムイオン電池の前記第1の蓄電量が前記所定値以下まで減少した状態で、前記リチウムイオン電池の開放端電圧を測定する第5のステップと、
前記開放端電圧から前記リチウムイオン電池の第3の蓄電量を算出する第6のステップと、前記第2の蓄電量を前記第3の蓄電量に補正する第7のステップと、を有することを特徴とするリチウムイオン電池の蓄電量補正方法。
(2)上記(1)の構成において、前記相関情報は前記リチウムイオン電池の複数の温度情報のそれぞれについて個別に存在し、前記第1のステップは、さらに、前記リチウムイオン電池の温度に関する情報を取得する温度情報取得ステップと、前記温度情報取得ステップで取得された温度情報に対応した前記相関情報を特定する相関情報特定ステップと、を有し、前記蓄電量推定ステップは、前記相関情報特定ステップにおいて特定された前記相関情報に基づき、前記放電抵抗算出ステップで算出された前記抵抗比率から前記第1の蓄電量を推定することができる。上記(2)の構成によれば、温度に応じたより正確な相関情報を用いて、蓄電量を推定することができる。
)上記(1)又は(2)の構成において、前記所定値は10%に設定することができる。上記()の構成によれば、第3の蓄電量の推定精度をより高めることができる。
本願発明によれば、第1及び第2の蓄電量を比較することにより、第1の蓄電量に誤差があるか否かを正確に判別することができる。また、充放電量を積算することにより蓄電量を推定する推定方法において、基準となる蓄電量の誤差が積み上げにより大きくなった場合でも、より正確な推定情報(第3の蓄電量)を用いて前記基準となる蓄電量を補正することができる。
バッテリ及びバッテリの充放電制御に関わる要素のブロック図である。 オリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の各抵抗比率及びSOCの測定結果を示したグラフである(電池温度が25℃)。 オリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の各抵抗比率及びSOCの測定結果を示したグラフである(電池温度が10℃)。 オリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の各抵抗比率及びSOCの測定結果を示したグラフである(電池温度が−10℃)。 オリビン系リチウムイオン電池の抵抗比率及びSOCの相関情報を示すデータテーブルの一例である。 実施形態1のSOC算出方法を示したフローチャートである。 実施形態2のSOC補正方法を示したフローチャートである。 オリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の開放端電圧及びSOCの関係を示したグラフである。
図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1はバッテリ及びバッテリの充放電制御に関わる要素のブロック図である。本実施形態のバッテリ2は、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)、電気自動車(Electric Vehicle)に搭載することができる。
バッテリ2は、システムメインリレー101A、101Bを介して、昇圧回路102に接続されている。昇圧回路102は、バッテリ2の出力電圧を昇圧してからインバータ103に出力する。インバータ103は、昇圧回路102からの直流電力を交流電力に変換してモータ・ジェネレータ(三相交流モータ)104に出力する。モータ・ジェネレータ104で生成された運動エネルギは、車両1を走行させるエネルギとして用いられる。
また、車両の制動時には、モータ・ジェネレータ104によって電気エネルギが生成され、インバータ103に出力される。インバータ103は、モータ・ジェネレータ104からの交流電力を直流電力に変換して、昇圧回路102に出力する。昇圧回路102は、インバータ103の出力電圧を降圧してからバッテリ2に出力し、バッテリ2の充電を行う。
バッテリ2は複数の電池ブロック20A〜20Zを備える。これらの電池ブロック20A〜20Zは電気的に直列に接続されている。電池ブロック20Aは複数の単電池201A〜201Eを備える。これらの単電池201A〜201Eは電気的に直列に接続されている。他の電池ブロック20B〜20Zは、電池ブロック20Aと同じ構成であるため、説明を繰り返さない。各電池ブロック20A〜20Zにはそれぞれ電圧検出センサ105が接続されており、各電圧検出センサ105は各電池ブロック20A〜20Zのブロック電圧をバッテリコントローラ106に出力する。
バッテリ2には、電流検出センサ107が接続されており、電流検出センサ107は、バッテリ2に流れる電流値に関する情報をバッテリコントローラ106に出力する。メモリ108には、後述するSOCを算出するための種々の算出プログラム等が記憶されている。バッテリコントローラ106は、メモリ108に記憶された算出プログラムを実行する。
各単電池201A〜201Zには温度センサ109が設けられている。温度センサ109はサーミスタ素子であってもよい。温度センサ109から出力される各単電池201A〜201Zの温度情報は、バッテリコントローラ106に出力される。
単電池201Aは、正極活物質に一般式:LIMPO(式中、Mは遷移金属である)で表わされるオリビン構造を含む正極体と、負極体とを含むオリビン系リチウムイオン電池である。ここで、オリビン構造における遷移金属MはFe,Mn,Co,Niであってもよい。
正極活物質は、他の酸化物を含んでもよい。当該他の酸化物は、LIMO(式中、Mは遷移金属である)で表わされる層状岩塩構造、或いはLIM(式中、Mは遷移金属である)で表わされるスピネル構造であってもよい。層状岩塩構造における遷移金属MはNi,Mn,Coであってもよい。スピネル構造における遷移金属MはNi,Mnであってもよい。負極活物質は、カーボン、或いはLiTi12で表わされるスピネル構造を含んでも良い。カーボンはグラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンであってもよい。
ここで、本発明者は、オリビン系リチウムイオン電池には三元系リチウムイオン電池とは異なる特性があり、具体的には、オリビン系リチウムイオン電池を充電させたときの充電抵抗と放電させたときの放電抵抗との比率(以下、抵抗比率ともいう)と、SOCとの間には比例関係があることを発見した。このオリビン系リチウムイオン電池の特性について、図2乃至図4を参照しながら詳細に説明する。
図2乃至図4は、オリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の各抵抗比率及びSOCの測定結果を示したグラフである。ここで充電抵抗は、充電前の電圧と所定時間充電後の電圧との電圧差を電流で除したものであり、所定時間は適宜定めればよい。本実施形態では、当該所定時間を10秒に設定した。放電抵抗は、放電前の電圧と所定時間放電後の電圧との電圧差を電流で除したものであり、所定時間は適宜定めればよい。本実施形態では、当該所定時間を10秒に設定した。SOCは、オリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池をそれぞれ充放電させたときの電流積算量から算出した。以下の説明において、電流積算量からSOCを推定する方法を電流積算法と称するものとする。なお、電流積算法は、従来知られた方法であるため詳細な説明を省略する。電流積算法の一例は、特開2000−166105号公報に開示されている。
この電流積算法には、電流積算の回数が少ないほどSOCの推定精度が高くなり、電流積算の回数が多くなるほど誤差の積み上げによりSOCの推定精度が悪くなるという特性がある。したがって、未使用のオリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池を充放電させることによりSOCを測定した。図2はオリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の電池温度が25℃である場合に対応する。図3はオリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の電池温度が10℃である場合に対応する。図4はオリビン系リチウムイオン電池及び三元系リチウムイオン電池の電池温度が−10℃である場合に対応する。
オリビン系リチウムイオン電池の正極には、正極活物質としてオリビン構造であるLiFePOを使用し、導電材としてAB(アセチレンブラック)を使用し、結着材としてPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)を使用した。LiFePO,AB(アセチレンブラック)及びPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)の比率は、質量%で87:10:3とした。
オリビン系リチウムイオン電池の負極には、負極活物質としてグラファイトを使用し、結着材としてPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)を使用した。グラファイト及びPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)の比率は、質量%で95:5に設定した。電解液には、EC(エチレンカーボネート)及びEMC(エチルメチルカーボネート)からなる混合液にLiPFを1mol/lの濃度で溶解させたものを使用した。EC(エチレンカーボネート)及びEMC(エチルメチルカーボネート)の比率は質量%で3:7とした。セパレータには、PE(ポリエチレン)膜、PP(ポリプロピレン)膜、PE(ポリエチレン)膜からなる三層構造のセパレータを使用した。
三元系リチウムイオン電池の正極には、正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3を使用し、導電材としてAB(アセチレンブラック)を使用し、結着材としてPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)を使用した。LiFePO,AB(アセチレンブラック)及びPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)の比率は、質量%で87:10:3とした。
三元系リチウムイオン電池の負極には、負極活物質としてグラファイトを使用し、結着材としてPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)を使用した。グラファイト及びPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)の比率は、質量%で95:5に設定した。電解液には、EC(エチレンカーボネート)及びEMC(エチルメチルカーボネート)からなる混合液にLiPFを1mol/lの濃度で溶解させたものを使用した。EC(エチレンカーボネート)及びEMC(エチルメチルカーボネート)の比率は質量%で3:7とした。セパレータには、PE(ポリエチレン)膜、PP(ポリプロピレン)膜、PE(ポリエチレン)膜からなる三層構造のセパレータを使用した。
図2乃至図4の実験に用いられたオリビン系リチウムイオン電池では、遷移金属としてFeを用いたが、抵抗比率が増加するのに応じてオリビン系リチウムイオン電池の蓄電量が増加する相関関係は、オリビン構造が有する二層協働反応により得られるため、他の遷移金属を用いた場合でも当然に得られる。
図2を参照して、電池温度が25℃であるときのオリビン系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗が増加するのに従って、SOCが増加することがわかった。SOCを示す軸をX軸、充電抵抗/放電抵抗を示す軸をY軸としたときに、これらの関係は、
y=0.0046x+0.8254なる一次式により表わされる。
電池温度が25℃であるときの三元系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗が増加すると、急激にSOCが増大することがわかった。これらの関係は、
y=0.0006x+0.9719なる一次式により表わされる。
図3を参照して、電池温度が10℃であるときのオリビン系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗が増加するのに従って、SOCが増加することがわかった。SOCを示す軸をX軸、充電抵抗/放電抵抗を示す軸をY軸としたときに、これらの関係は、
y=0.0089x+0.6316なる一次式により表わされる。
電池温度が10℃であるときの三元系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗が増加すると、急激にSOCが低下することがわかった。これらの関係は、
y=−0.0014x+1.0767なる一次式により表わされる。
図4を参照して、電池温度が−10℃であるときのオリビン系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗が増加するのに従って、SOCが増加することがわかった。SOCを示す軸をX軸、充電抵抗/放電抵抗を示す軸をY軸としたときに、これらの関係は、
y=0.0051x+0.9048なる一次式により表わされる。
電池温度を−10℃に制御した三元系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗が増加すると、SOCが増加することがわかった。これらの関係は、
y=0.0034x+0.8348なる一次式により表わされる。
これらの測定結果から、オリビン系リチウムイオン電池の場合、電池温度に拘わらず充電抵抗/放電抵抗が増加するのに応じて、SOCが増加する傾向があることがわかった。三元系リチウムイオン電池の場合、充電抵抗/放電抵抗とSOCとの関係が、電池温度によって異なり、傾向が一定でないことがわかった。
したがって、オリビン系リチウムイオン電池のSOCについては、充電抵抗/放電抵抗とSOCとの関係を示す一次式を電池温度に対応付けることにより、精度よく推定することができる。すなわち、前記一次式の演算を実行するプログラムを温度毎にメモリ108に記憶させておくことにより、オリビン系リチウムイオン電池のSOCを精度よく推定することができる。
また、別の方法として、充電抵抗/放電抵抗とSOCとの関係を電池温度に対応付けたデータテーブルをメモリ108に記憶させておくことにより、オリビン系リチウムイオン電池のSOCを精度よく推定することができる。図5はデータテーブルの一例であり、充電抵抗/放電抵抗と、これに対応するSOCとを同じNoでグループ化している。このようなデータテーブルをバッテリ2の温度毎に有することにより、SOCを推定することができる。
次に、本実施形態に係るSOCの算出方法について、図6のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。図6のフローチャートはバッテリコントローラ106が実行する。ステップS101において、バッテリコントローラ106はバッテリ2の充電が開始されるとステップS102に進む。
ステップS102において、バッテリコントローラ106は、各電圧検出センサ105により検出される各電池ブロック20A〜20Zの各ブロック電圧、電流検出センサ107により検出される電流値及び温度センサ109により検出される各単電池201A〜201Zの温度を順次メモリ108に記憶する。また、バッテリコントローラ106は、図示しない内部タイマーを作動させる。
ステップS103において、バッテリコントローラ106はタイマーによるカウント時間が10秒に達したか否かを判別し、カウント時間が10秒に達した場合には、ステップS104に進む。ステップS104において、バッテリコントローラ106は、ブロック電圧、電流値及び温度をメモリ108に記憶するのを停止するとともに、前記内部タイマーを停止する。
ステップS105において、バッテリコントローラ106はバッテリ2の放電が開始されたか否かを判別する。バッテリ2の放電が開始された場合には、ステップS106に進む。ステップS106において、バッテリコントローラ106は、各電圧検出センサ105により検出される各電池ブロック20A〜20Zの各ブロック電圧、電流検出センサ107により検出される電流値及び温度センサ109により検出される各単電池201A〜201Zの温度を順次メモリ108に記憶する。また、バッテリコントローラ106は、図示しない内部タイマーを作動させる。
ステップS107において、バッテリコントローラ106はタイマーによるカウント時間が10秒に達したか否かを判別し、カウント時間が10秒に達した場合には、ステップS108に進む。ステップS108において、バッテリコントローラ106は、ブロック電圧、電流値及び温度をメモリ108に記憶するのを停止するとともに、前記内部タイマーを停止する。
ステップS109において、バッテリコントローラ106は、メモリ108に蓄積された情報に基づき、各電池ブロック20A〜20Zの平均温度を算出する。具体的には、電池ブロック20Aに含まれる単電池201A〜201Eの平均温度を算出して、これを電池ブロック20Aの平均温度としてメモリ108に記憶する。他の電池ブロック20B〜20Zについても同様の方法により平均温度を算出して、メモリ108に記憶する。また、バッテリコントローラ106は、メモリ108に蓄積された情報に基づき、充電抵抗及び放電抵抗を算出し、さらに充電抵抗を放電抵抗で除した抵抗比率を算出する。
ステップS110において、バッテリコントローラ106は、ステップS109おいて算出した平均温度に基づきメモリ108に記憶された当該平均温度に対応する相関情報を特定する。
ステップS111において、バッテリコントローラ106は、ステップS109において算出した抵抗比率と特定した相関情報とに基づき、SOCを算出し、これをメモリ108に記憶する。上述の実施形態によれば、オリビン系リチウムイオン電池のSOCを精度よく推定することができる。
(実施形態2)
上記実施形態1の推定方法に基づき算出されたオリビン系リチウムイオン電池のSOCは、電流積算法により算出されるSOCを補正するための補正情報として活用することができる。上記したように、電流積算法は、電流積算の回数が少ない場合にはSOCの推定精度が非常に高いというメリットがある一方で、電流積算の回数が多くなると誤差の積み上げにより推定精度が低くなるというデメリットがある。したがって、バッテリコントローラ106は、誤差を解消するために電流積算を一度リセットする必要がある。
図7は、電流積算法により算出されるSOCを補正する補正方法を示したフローチャートである。このフローチャートを実行するプログラムは、メモリ108に記憶されている。バッテリコントローラ106は、このプログラムを電流積算法によるSOCの算出回数が所定回数に達したときに実行し、或いは所定周期で実行してもよい。
ステップS201において、実施形態1の方法に基づき充電抵抗/放電抵抗からSOCを推定する。実施形態1の方法に基づき推定したSOCを第1のSOCと称する。ステップS202において、バッテリコントローラ106は電流積算法に基づきSOCを推定する。電流積算法に基づき推定したSOCを第2のSOCと称する。
ステップS203において、バッテリコントローラ106は、ステップS201で算出した第1のSOCとステップS202で算出した第2のSOCとの差分、つまりΔSOCを算出する。ステップS204において、バッテリコントローラ106は、ΔSOCと閾値とを比較して、ΔSOCが閾値以下であるか否かを判別する。当該閾値は、SOCの推定精度を維持する観点から実績データなどに基づき適宜設定すればよい。
ステップS204においてΔSOCが閾値以上である場合には、ステップS205に進む。ここで、ΔSOCが閾値以上である場合には、電流積算法により算出されたSOCの誤差が大きいため、この誤差を解消するために電流積算法の基準値となるSOCを一度リセットする必要がある。ステップS205において、バッテリコントローラ106はバッテリ2が充電中であるか否かを判別する。ステップS205においてバッテリ2が充電中である場合には、ステップS206に進む。
ステップS206において、バッテリコントローラ106は充電を放電に切り替えてステップS207に進む。ステップS205において充電中でない場合、つまり放電中である場合には、ステップS207に進む。ここで、ステップS205、ステップS206においてバッテリ2を放電に設定する理由は、下記の通りである。
図8を参照して、オリビン系リチウムイオン電池は、三元系リチウムイオン電池とは異なり開放端電圧とSOCとの相関関係を掴みにくいが、SOCの低い領域(具体的には、境界値として10%が考えられる)においては三元系リチウムイオン電池と同様にSOCが高くなる程開放端電圧が高くなるという相関関係がある。このため、オリビン系リチウムイオン電池を放電してSOCを一旦低くした状態で、開放端電圧を測定することにより、SOCを正確に推定することができる。この開放端電圧を測定することにより得られるSOCを、第3のSOCと称するものとする。そして、この第3のSOCを第1のSOCと置き換えて、電流積算法における基準値(初期値)として用いることにより、誤差を少なくすることができる。
ステップS207において、バッテリコントローラ106は、第1のSOCが10%以下に低下したか否かを判別する。第1のSOCが10%よりも高い場合には、ステップS206に戻り放電を継続する。第1のSOCが10%以下に低下した場合には、ステップS208に進む。ステップS208において、バッテリコントローラ106は、バッテリ2の開放端電圧を測定し、図8における開放端電圧とSOCとの相関関係から第3のSOCを算出する。ここで、SOCが10%以下であるときの開放端電圧とSOCとの相関関係を導出するプログラムはメモリ108に記憶されている。当該プログラムは、これらの相関関係を数式化した関数式からSOCを算出する算出プログラムであってもよい。当該プラグラムは、これらの相関関係を示すデータテーブルからSOCを算出する算出プログラムであってもよい。
ステップS209において、バッテリコントローラ106は、メモリ108に記憶された第1のSOC、つまり、電流積算法の基準となるSOCを第3のSOCに書き換える。これにより、電流積算法による正確なSOCの推定を行うことができる。
(変形例1)
上述の実施形態では、抵抗比率及びSOCの相関情報を個々の温度情報に対応付けて複数準備したが、本発明はこれに限られるものではなく、特定の温度に対応した一つの相関情報のみにしてもよい。この場合、特定の温度に対応した一つの相関情報をメモリ108に記憶させ、バッテリ2の温度が当該特定の温度に達したときにのみ実施形態1のSOC算出プログラム、或いは実施形態2のSOC補正プログラムを実行してもよい。例えば、図2に図示するバッテリ2の温度が25℃である場合の前記相関情報をメモリ108に記憶させ、温度センサ109により検出された温度が25℃に達した時に、実施形態1のSOC算出プログラム、或いは実施形態2のSOC補正プログラムを実行してもよい。この場合、メモリ108には、複数の前記相関情報を記憶させておく必要がなくなる。前記特定の温度とは、下記変形例2に記載するように特定の温度範囲であってもよい。
(変形例2)
上述の実施形態では、測定された温度に対応する抵抗比率及びSOCの相関情報をメモリ108に記憶させたが、本発明はこれに限られるものではなく、所定の温度範囲毎に前記相関情報をメモリ108に記憶させてもよい。例えば、15℃〜20℃については、前記相関情報を共有させてもよい。この場合、メモリ108に記憶される前記相関情報が少なくなり、低容量のメモリを用いることによるコスト削減を図ることができる。前記所定の温度は、5℃、或いは10℃であってもよい。
(変形例3)
上述の実施形態では、充電抵抗を算出するためのデータ収集を先に行った後、放電抵抗を算出するためのデータ収集を行ったが、本発明はこれに限られるものではなく、これらの算出順序を反対にしてもよい。算出順序を反対にした場合であっても、上記実施形態1及び2の効果を得ることができる。
(変形例4)
上述の実施形態2において、ステップS201、ステップS202に順序を反対にしてもよい。すなわち、電流積算法により第2のSOCを算出した後に、抵抗比率及び相関情報から第1のSOCを算出してもよい。算出順序を反対にした場合であっても、上記実施形態1及び2の効果を得ることができる。
(変形例5)
上述の実施形態では、充電抵抗を放電抵抗で除することにより抵抗比率を算出したが、本発明はこれに限られるものではなく、放電抵抗を充電抵抗で除することにより抵抗比率としてもよい。この場合、抵抗比率が増加するのに応じてオリビン系リチウムイオン電池のSOCは低下する。抵抗比率を実施形態の逆数にしても、上記実施形態1及び2の効果を得ることができる。
(変形例6)
上述の実施形態では、ブロック電圧から抵抗比率を算出したが、本発明はこれに限られるものではなく、個々の単電池201A〜201Zに電圧センサを設けて、各単電池201A〜201Zそれぞれについて抵抗比率を算出してもよい。
2 バッテリ 20A〜20Z 電池ブロック 201A〜201Z 単電池
105 電圧センサ 106 バッテリコントローラ 107 電流センサ
108 メモリ 109 温度センサ

Claims (3)

  1. 正極活物質に一般式:LIMPO (式中、Mは遷移金属である)で表わされるオリビン構造を含む正極体と、負極体とを含むリチウムイオン電池の第1の蓄電量を、前記リチウムイオン電池を充電したときの充電抵抗を算出する充電抵抗算出ステップと、前記リチウムイオン電池を放電したときの放電抵抗を算出する放電抵抗算出ステップと、前記充電抵抗算出ステップで算出された充電抵抗と前記放電抵抗算出ステップで算出された放電抵抗との抵抗比率を算出する抵抗比率算出ステップと、前記充電抵抗を前記放電抵抗で除した抵抗比率が増加するのに応じて前記リチウムイオン電池の蓄電量が高くなる相関情報に基づき、前記抵抗比率算出ステップで算出された前記抵抗比率から前記第1の蓄電量を推定する蓄電量推定ステップと、を実行することにより推定する第1のステップと、
    前記リチウムイオン電池の充放電量を積算することにより前記リチウムイオン電池に蓄電される第2の蓄電量を推定する第2のステップと、
    前記第1及び第2のステップで推定された第1及び第2の蓄電量の差分を算出する第3のステップと、
    前記差分が閾値以上である場合には、放電により前記リチウムイオン電池の前記第1の蓄電量を所定値以下まで減少させる第4のステップと、
    前記リチウムイオン電池の前記第1の蓄電量が前記所定値以下まで減少した状態で、前記リチウムイオン電池の開放端電圧を測定する第5のステップと、
    前記開放端電圧から前記リチウムイオン電池の第3の蓄電量を算出する第6のステップと、
    前記第2の蓄電量を前記第3の蓄電量に補正する第7のステップと、を有することを特徴とするリチウムイオン電池の蓄電量補正方法。
  2. 前記相関情報は前記リチウムイオン電池の複数の温度情報のそれぞれについて個別に存在し、
    前記第1のステップは、さらに、前記リチウムイオン電池の温度に関する情報を取得する温度情報取得ステップと、前記温度情報取得ステップで取得された温度情報に対応した前記相関情報を特定する相関情報特定ステップと、を有し、
    前記蓄電量推定ステップは、前記相関情報特定ステップにおいて特定された前記相関情報に基づき、前記放電抵抗算出ステップで算出された前記抵抗比率から前記第1の蓄電量を推定することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の蓄電量補正方法。
  3. 前記所定値は10%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池の蓄電量補正方法。

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