トナーブロックは、球体トナーが集合されることにより形成されている。トナーブロックを形成するには、まず、球体トナーが水に分散されたトナー懸濁液を調製する。
1.トナー懸濁液の調製
(1)トナー母粒子懸濁液の調製
トナー懸濁液を調製するには、まず、球形のトナー母粒子が分散されたトナー母粒子懸濁液を調製する。
(1−1)母体微粒子懸濁液の調製
トナー母粒子懸濁液を調製するには、まず、ポリエステル樹脂と着色剤とワックスとを含有する母体微粒子が分散された母体微粒子懸濁液を調製する。
(1−1−1)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂は、酸価を有する官能基(例えば、カルボキシル基など)を有しており、市販品として、例えば、ER508(三菱レイヨン製)、FC1565(三菱レイヨン製)、FC023(三菱レイヨン製)などが挙げられる。
ポリエステル樹脂の酸価は、例えば、0.5〜40mgKOH/g、好ましくは、1.0〜20mgKOH/gである。
また、ポリエステル樹脂の重量平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による)は、例えば、9,000〜200,000、好ましくは、20,000〜150,000である。
また、ポリエステル樹脂の架橋分(THF不溶分、ゲル分)は、例えば、10質量%以下、好ましくは、0.5〜10質量%である。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば、50〜70℃、好ましくは、55〜65℃である。
(1−1−2)着色剤
着色剤は、ポリエステル樹脂に分散または浸透されることによって球体トナーを着色する。黒色の球体トナーを得る場合には、例えば、カーボンブラックが用いられる。
また、着色剤としては、例えば、キノフタロンイエロー、ハンザイエロー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、ペノリンオレンジ、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料、例えば、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料または金属粉、例えば、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの油溶性染料または分散染料、例えば、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸樹脂などのロジン系染料が挙げられる。さらには、高級脂肪酸や樹脂などよって加工された染料や顔料なども挙げられる。これらは、所望する色に応じて、単独使用または併用することができる。例えば、有彩単一色のトナーには、同色系の顔料と染料、例えば、ローダミン系の顔料と染料、キノフタロン系の顔料と染料、フタロシアニン系の顔料と染料を、それぞれ配合することができる。
着色剤は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、例えば、2〜20質量部、好ましくは、4〜10質量部の割合で配合される。
(1−1−3)ワックス
ワックスは、紙などの記録媒体に対する球体トナーの定着性を向上させるために添加され、例えば、エステル系ワックス、炭化水素系ワックスなどが挙げられる。
エステル系ワックスとしては、例えば、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルなどの脂肪族エステル化合物、例えば、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの多官能エステル化合物などが挙げられる。
炭化水素系ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類、例えば、キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリン、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス、例えば、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。
これらワックスは、単独使用または併用することができ、好ましくは、エステル系ワックスが挙げられる。
ワックスは、ポリエステル樹脂100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、3〜10質量部の割合で配合される。
(1−1−4)ポリエステル樹脂乳化液の調製
母体微粒子懸濁液を調製するには、まず、ポリエステル樹脂、着色剤およびワックスを含有するポリエステル樹脂液(油相)と、水を含有する水系媒体(水相)とを混合して、ポリエステル樹脂液が水系媒体中に分散されたポリエステル樹脂乳化液を調製する。
ポリエステル樹脂液を調製するには、まず、着色剤を有機溶剤に分散させて着色剤分散液を調製し、その後、着色剤分散液、ポリエステル樹脂、ワックスおよび有機溶剤を配合する。
有機溶剤としては、ポリエステル樹脂およびワックスを溶解または膨潤させることができれば、特に制限されず、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。
着色剤分散液を調製するには、着色剤100質量部に対して、ポリエステル樹脂を、例えば、50〜200質量部、好ましくは、80〜150質量部、有機溶剤を、例えば、1000〜3500質量部、好ましくは、900〜3600質量部の配合割合で配合して、攪拌機(例えば、ディスパー、ホモジナイザー)で攪拌、混合する。
そして、ポリエステル樹脂液を調製するには、着色剤分散液100質量部に対して、ポリエステル樹脂を、例えば、100〜500質量部、好ましくは、200〜300質量部、ワックスを、例えば、5〜35質量部、好ましくは、10〜30質量部、有機溶剤を、500〜2000質量部、800〜1500質量部の配合割合で配合し、混合する。
その後、ワックスが溶解可能な温度以上かつ有機溶剤の沸点未満となる加熱温度、具体的には、ワックスや有機溶剤の種類にもよるが、例えば、30℃を超過する温度、好ましくは、32〜79℃に加熱して、ワックスを有機溶剤に溶解させることにより、ポリエステル樹脂液を得る。
次いで、ポリエステル樹脂乳化液を調製するには、別途、水に、例えば、アミン類などの塩基性有機化合物を水に溶解した有機塩基水溶液や、例えば、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウムなどのアルカリ金属を水に溶解した無機塩基水溶液を配合し、水系媒体を調製する。
無機塩基水溶液を配合する場合には、例えば、0.1〜5N(規定)、好ましくは、0.2〜2N(規定)の無機塩基水溶液を、水100質量部に対して、例えば、0.1〜40質量部、好ましくは、1〜20質量部の配合割合で、配合する。
また、有機塩基水溶液を配合する場合には、例えば、0.1〜5N(規定)、好ましくは、0.2〜2N(規定)の有機塩基水溶液を、水100質量部に対して、例えば、0.5〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部の配合割合で、配合する。
なお、水系媒体には、適宜、水溶性溶媒(例えば、アルコール類、グリコール類)、添加剤(例えば、界面活性剤、分散剤)などを配合することもできる。
次いで、ポリエステル樹脂乳化液を調製するには、例えば、水系媒体100質量部に対して、ポリエステル樹脂液を50〜150質量部、好ましくは、80〜120質量部の配合割合で配合し、混合する。
詳しくは、ポリエステル樹脂液にワックスが含まれる場合は、ワックスが溶解可能な温度以上かつ有機溶剤の沸点未満となる温度範囲、例えば、30〜80℃、好ましくは、40〜70℃で、ポリエステル樹脂液および水系媒体を加熱し、加熱温度を保持しながら、ポリエステル樹脂液および水系媒体を配合する。
その後、加熱温度を保持しながら、例えば、ホモジナイザー(ローターステーター型)などの高速分散機を用いて混合する。
ホモジナイザーの回転数は、先端周速が、例えば、5〜20m/s、好ましくは、7〜14m/sとなるように調整される。また、攪拌時間は、例えば、10〜120分、好ましくは、15〜60分である。
これにより、ポリエステル樹脂乳化液を得る。
得られたポリエステル樹脂乳化液中には、ポリエステル樹脂液が100〜1000nmの液滴となって水系媒体中に乳化されている。
なお、ポリエステル樹脂乳化液の調製においては、ポリエステル樹脂液を水系媒体に配合してもよく、また、水系媒体をポリエステル樹脂液に配合することもできる。水系媒体をポリエステル樹脂液に配合する場合には、転相乳化法を用いることもできる。
(1−1−5)ポリエステル樹脂乳化液からの有機溶剤の除去
次いで、母体微粒子懸濁液を調整するには、ポリエステル樹脂乳化液から有機溶剤を除去する。
ポリエステル樹脂乳化液から有機溶剤を除去するには、送風、加熱、減圧またはこれらの併用など、公知の方法が用いられる。
詳しくは、ポリエステル樹脂乳化液を、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気下、例えば、常温〜90℃、好ましくは、50〜80℃で加熱し、有機溶剤を揮発させる。これにより、母体微粒子懸濁液を得る。
母体微粒子懸濁液中の母体微粒子の体積平均粒子径は、メジアン径として、例えば、0.03〜1μm、好ましくは、0.05〜0.5μmである。
(1−2)母体微粒子の凝集・融合
次いで、トナー懸濁液を調製するには、母体微粒子懸濁液に凝集剤を添加して母体微粒子を凝集させ、その後、加熱により、凝集させた母体微粒子を融合(融着)させてトナー母粒子を形成させる。
母体微粒子を凝集させるには、まず、母体微粒子懸濁液を水で希釈して、固形分濃度を、例えば、1〜30質量%、好ましくは、5〜20質量%となるように、調整する。
なお、この希釈において、凝集・融合工程における分散安定性を図るべく、必要により、界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなど)、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
界面活性剤は、例えば、母体微粒子懸濁液の固形分100質量部に対して、0.5〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部の配合割合で、配合される。また、母体微粒子懸濁液に界面活性剤を添加する場合には、予め界面活性剤水溶液を調製し、その界面活性剤水溶液を、母体微粒子懸濁液に添加することもできる。
次いで、母体微粒子を凝集させるには、母体微粒子懸濁液に凝集剤を添加する。
凝集剤としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸カルシウムなどの無機金属塩、例えば、ポリ塩化アルミニウムなどの無機金属塩の重合体などが挙げられる。
凝集剤を添加するには、例えば、0.01〜1.0N(規定)、好ましくは、0.05〜0.5N(規定)の凝集剤水溶液を調製し、その凝集剤水溶液を、母体微粒子懸濁液100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部、添加する。
そして、例えば、まず、ホモジナイザーなどの高速分散機に攪拌し、次いで、平板タービン翼、プロペラ翼、アンカー翼などの攪拌翼を用いて、先端周速が、例えば、1〜2m/秒となるような回転数で攪拌する。なお、攪拌時の液温は、例えば、10〜50℃、好ましくは、20〜30℃であり、攪拌時間は、例えば、5〜60分、好ましくは、10〜30分である。
次いで、母体微粒子懸濁液に凝集停止剤を添加して、母体微粒子の凝集を停止させる。
凝集停止剤としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩が挙げられる。また、イオン性界面活性剤を使用することもできる。
凝集停止剤を添加するには、例えば、0.01〜5.0N(規定)、好ましくは、0.1〜2.0N(規定)の凝集停止剤水溶液を調製し、その凝集停止剤水溶液を、母体微粒子懸濁液100質量部に対して、例えば、0.5〜20質量部、好ましくは、1.0〜10質量部、添加する。
次いで、母体微粒子懸濁液を攪拌しながら、母体微粒子のガラス転移点(Tg)以上の温度、例えば、55〜100℃、好ましくは、65〜95℃で、例えば、0.5〜10時間、加熱する。
これにより、凝集させた母体微粒子が融合されて、球形のトナー母粒子が形成される。
次いで、母体微粒子懸濁液を冷却した後、静置して、トナー母粒子を沈殿させる。
その後、沈殿されたトナー母粒子を、水で洗浄して、例えば、固形分5〜40質量%となるように水に再分散させて、トナー母粒子懸濁液を得る。
トナー母粒子懸濁液中のトナー母粒子の体積平均粒子径は、例えば、3〜12μm、好ましくは、6〜10μmである。
(2)帯電制御樹脂微粒子懸濁液の調製
別途、帯電制御樹脂を含有する帯電制御樹脂微粒子が分散された帯電制御樹脂微粒子懸濁液を調製する。
(2−1)帯電制御樹脂乳化液の調製
帯電制御樹脂微粒子懸濁液を調製するには、まず、帯電制御樹脂および有機溶剤を、水に乳化させて、帯電制御樹脂乳化液を調製する。
帯電制御樹脂は、カチオン性基を有する合成樹脂であり、トナーに正帯電性を安定的に付与するために配合される。
カチオン性基としては、例えば、第4級アンモニウム基、第4級アンモニウム塩含有基、アミノ基、ホスホニウム塩含有基などが挙げられる。好ましくは、第4級アンモニウム塩含有基が挙げられる。
合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、好ましくは、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、アクリル−スチレン樹脂が挙げられる。
帯電制御樹脂のガラス転移温度(Tg)は、トナーの保存安定性や熱定着性から、例えば、40℃〜100℃、好ましくは、55℃〜80℃である。
具体的には、第4級アンモニウム塩含有基を含有する帯電制御樹脂としては、例えば、藤倉化成株式会社製 商品名「FCA−207P」(スチレン83質量%、アクリル酸ブチル15質量%およびN,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウム=P−トルエンスルホン酸2質量%からなる共重合物、重量平均分子量(Mw):12,000、ガラス転移温度(Tg):67℃)や、同社製 商品名「FCA−161P」、同社製 商品名「FCA−78P」、同社製 商品名「FCA−201PS(アクリル酸ブチル、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウム=p−トルエンスルホナートおよびスチレンの共重合物(N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート含有量14質量%)、重量平均分子量(Mw):15000、ガラス転移温度(Tg):66℃)」などが挙げられる。
有機溶剤としては、上記した有機溶剤が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。
そして、帯電制御樹脂乳化液を調製するには、まず、帯電制御樹脂を有機溶剤に溶解または膨潤させて帯電制御樹脂液を調製し、次いで、帯電制御樹脂液を、水に乳化させる。
帯電制御樹脂液を調製するには、例えば、有機溶剤100質量部に対して、帯電制御樹脂5〜100質量部、好ましくは、10〜50質量部、配合し、混合する。
帯電制御樹脂液を水に乳化させるには、例えば、水100質量部に対して、帯電制御樹脂液を、例えば、50〜150質量部、好ましくは、80〜100質量部、配合し、ホモジナイザーなどの高速分散機を用いて、例えば、5000〜20000rpm(先端周速4〜17m/s)、好ましくは、7000〜16000rpm(先端周速7〜14m/s)で、5〜60分、好ましくは、10〜30分攪拌する。
これにより、帯電制御樹脂液が液滴となって、水に乳化され、帯電制御樹脂乳化液が調製される。
(2−2)帯電制御樹脂微粒子懸濁液の調製
次いで、帯電制御樹脂微粒子懸濁液を得るには、帯電制御樹脂乳化液から有機溶剤を除去する。
帯電制御樹脂乳化液から有機溶剤を除去する方法としては、上記した母体微粒子懸濁液から有機溶剤を除去した方法と同じ方法が挙げられる。
これにより、帯電制御樹脂微粒子が分散された帯電制御樹脂微粒子懸濁液を得ることができる。
帯電制御樹脂微粒子懸濁液中の帯電制御樹脂微粒子の表面に存在するカチオン性基の量は、例えば、5.0×10−5〜6.0×10−4mol/g、好ましくは、1.0×10−4〜3.0×10−4mol/gである。
なお、カチオン性基の量は、例えば、コロイド滴定法(流動電位法)により測定することができる。
また、帯電制御樹脂微粒子懸濁液中の帯電制御樹脂微粒子の体積平均粒子径は、メジアン径として、例えば、0.03〜0.5μm、好ましくは、0.05〜0.3μmである。
(3)トナー母粒子に対する帯電制御樹脂微粒子の固着
次いで、トナー懸濁液を調製するには、帯電制御樹脂微粒子懸濁液とトナー母粒子懸濁液とを混合する。
帯電制御樹脂微粒子懸濁液とトナー母粒子懸濁液とを混合するには、特に制限されず、例えば、トナー母粒子懸濁液に、帯電制御樹脂微粒子懸濁液を配合して、平板タービン翼などの攪拌翼を用いて攪拌する。
帯電制御樹脂微粒子懸濁液は、例えば、トナー母粒子懸濁液の固形分(つまり、トナー母粒子)100質量部に対して、帯電制御樹脂微粒子懸濁液の固形分(つまり、帯電制御樹脂)が、例えば、0.1〜5質量部、好ましくは、0.5〜3質量部となる配合量で、トナー母粒子懸濁液に配合される。
次いで、帯電制御樹脂微粒子懸濁液とトナー母粒子懸濁液との混合物を加熱する。
加熱条件は、特に制限されず、例えば、トナー母粒子のTg(ガラス転移点)が帯電制御樹脂のTgよりも低い場合、トナー母粒子のTgに対して+0〜5℃の範囲の温度で、10〜60分加熱する。トナー母粒子のTgが帯電制御樹脂のTgよりも高い場合、帯電制御樹脂のTgに対して+0〜5℃の範囲の温度で、10〜60分加熱する。
なお、加熱時の混合物のpHは、例えば、アルカリ金属塩などのpH調整剤を添加することにより、例えば、pH6〜10.5、好ましくは、pH6〜8に調整される。
これにより、トナー母粒子の表面に帯電制御樹脂微粒子が固着された球体トナーを形成し、球体トナーが分散されたトナー懸濁液を得る。
2.外添剤の添加
その後、トナー懸濁液に、必要により、外添剤を添加する。外添剤は、トナーの帯電性、流動性、保存安定性などを調整するために添加され、トナー母粒子よりも非常に小さい粒径の粒子からなる。
外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物、および、これらの疎水化処理物(例えば、シリカの疎水化処理物は、シリカの微粉体を、シリコーンオイルやシランカップリング剤(例えば、ジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンなど)で処理することにより、得ることができる。)などの無機粒子、例えば、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体からなるコアシェル型粒子などの合成樹脂粒子が挙げられる。
外添剤を添加するには、例えば、外添剤をエタノールなどの溶媒に分散させて外添剤分散液を調製し、その外添剤分散液をトナー懸濁液に添加し、混合する。
外添剤は、特に制限されないが、トナー懸濁液の固形分(すなわち、球体トナー)100質量部に対して、例えば、0.1〜6質量部、配合される。
3.トナーブロックの形成
(1)トナー懸濁液の水分量調整
次いで、トナーブロックを形成するには、トナー懸濁液の水分量を、例えば、32.5〜37質量%、好ましくは、33〜35質量%となるように調整する。
トナー懸濁液の水分量が上記範囲を超過すると、得られたトナーブロックにおいて球体トナー同士が比較的密に集合され、トナーブロックを崩壊させることが困難になるため、好ましくない。
また、トナー懸濁液の水分量が上記範囲未満であると、トナー懸濁液が流動性を有さないケーキ状(すなわち、球体トナーの集合体(後述))になる場合があるため、好ましくない。
トナー懸濁液の水分量を調整するには、例えば、トナー懸濁液を、上記した水分量となるように、濾過する。
詳しくは、まず、トナー懸濁液を、固形分10質量%(すなわち、水分量90質量%)となるように、蒸留水で希釈し、次いで、希釈されたトナー懸濁液(水分量90質量%)を濾過する。このとき、回収された濾液の質量を計測し、トナー懸濁液の水分量が上記範囲となるような分量の濾液が回収されたときに、濾過を停止する。
このようにして水分量が調整されたトナー懸濁液は、ダイラタンシーを示すダイラタント流体である。
(2)吸水・乾燥
次いで、トナーブロックを形成するには、水分量が調整されたトナー懸濁液を、吸水体から形成される吸水体容器に注ぐ。
吸水体容器は、底壁と、底壁から立設される側壁とを備える有底枠形状に形成されており、すべて、吸水体から形成されている。
吸水体としては、例えば、濾紙、メンブレンフィルタ、不織布フィルタ(例えば、グラスファイバーフィルター)などの多孔質フィルタ、例えば、ラバーフォーム、多孔質セラミックスなどのスポンジ状多孔質体などの多孔質体、また、例えば、不織布、織物、編物などの布帛などが挙げられる。
吸水体の吸水速度は、0.2mlの水を、例えば、3分以内、好ましくは、2分以内に吸収するような吸水速度である。言い換えると、吸水体の吸水速度は、0.0011ml/秒以上、好ましくは、0.0017ml/秒以上である。
また、吸水体の単位質量(1g)あたりの吸水量は、例えば、0.9〜10g、好ましくは、1〜5gである。
トナー懸濁液を吸水体容器に注ぐと、トナー懸濁液中の水が、一部、吸水体容器に吸収され、球体トナーの集合体が、吸水体容器の形状に対応するブロック形状に形成される。また、球体トナーの集合体は、ケーキ状であり、球体トナーの集合体には、吸水体容器に吸収されなかった水が含まれている。
トナー懸濁液を吸水体容器に注いだ後、球体トナーの集合体が形成されるまでの時間(吸水時間、以下同じ)は、例えば、150秒以下、好ましくは、100秒以下である。
吸水時間を測定するには、例えば、まず、トナー懸濁液(シリカ配合)を吸水体容器に注ぐと同時に計測を開始し、次いで、球体トナーの集合体から、余剰の水(集合体の表面からしみ出した状態の水)が吸水体に吸水されたときを終点として計測を終了する。
球体トナーの集合体の含水率は、例えば、32.3質量%以下、好ましくは、31.8質量%以下である。
含水率を測定するには、例えば、まず、得られた球体トナーの集合体を、約1g(乾燥前質量)採取し、次いで、採取した集合体を乾燥させて、乾燥された集合体の質量(乾燥後質量)を測定する。そして、乾燥前質量に対する乾燥後質量の百分率を、含水率とする。
次いで、吸水体容器を型枠として、例えば、風乾などの乾燥方法により、球体トナーの集合体を乾燥させる。
これにより、球体トナーが集合されたトナーブロックが形成される。
4.トナーブロック
得られたトナーブロックの嵩密度は、例えば、0.3〜0.8g/ml、好ましくは、0.45〜0.7g/mlである。
また、得られたトナーブロックの充填率は、例えば、30〜69%、好ましくは、39〜65%である。
また、得られたトナーブロックの最大圧縮応力は、例えば、80000〜550000N/m2、例えば、90000〜500000N/m2である。
トナーブロックの最大圧縮応力を測定するには、まず、トナーブロックを切断し、略角柱形状の試験片を形成する。
詳しくは、試験片のサイズは、任意の一辺(縦辺とする。以下同じ)の長さを縦長さ、縦辺と直交する他の一辺(横辺とする。以下同じ。)の長さを横長さ、縦辺および横辺の両方と直交する一辺の長さを厚みとしたときに、縦長さが、例えば、10〜20mm、横長さが、例えば、10〜20mm、厚みが、例えば、5〜10mmである。
次いで、トナーブロックの最大圧縮応力を測定するには、図1(a)に示すように、圧縮試験機1を用いて、試験片Sを厚み方向に加圧し、試験片Sが崩壊したときの加圧力を計測する。
圧縮試験機1は、試験片Sを載置する台座2と、台座2の上側に間隔を隔てて設けられる圧縮部材3とを備えている。
台座2は、その上面が、試験片Sを水平に載置するための水平面とされている。水平面には、試験片Sが滑らないように、微細な凹凸が形成されている。
圧縮部材3は、上下方向に延びる略円筒形状に形成されており、上下に進退可能に設けられている。また、圧縮部材3の下面の直径は、試験片Sの縦長さおよび横長さの両方よりも短く、具体的には、5〜10mmである。
このような圧縮試験機1としては、市販の粉体流動性試験機などで代替することができ、例えば、パウダーレオメータFT−4(Freedman Technology社製)を用いることができる。
そして、台座2の上面に試験片Sを、試験片Sの厚み方向が上下方向に沿うように載置し、圧縮部材3を回転させずに下降させる。
すると、圧縮部材3の下面が、試験片Sの上面に上側から当接され、圧縮部材3によって、試験片Sが加圧される。
そして、試験片Sが圧縮部材3によって崩壊されるまで、徐々に圧縮部材3の試験片Sに対する加圧力を増大させ、試験片Sが圧縮部材3によって崩壊されたときの、圧縮部材3の試験片Sに対する加圧力を計測する。
そして、計測された加圧力を、圧力部材3の下面の面積で除し、トナーブロックの最大圧縮応力とする。
また、得られたトナーブロックの最大せん断応力は、例えば、120〜1800N/m2、好ましくは、150〜1650N/m2である。
トナーブロックの最大せん断応力を測定するには、図1(b)に示すように、上記した圧縮試験機1を用いて、台座2の上面に試験片Sを、試験片Sの厚み方向が上下方向に沿うように載置し、圧縮部材3を回転させながら、下降させる。
このとき、圧縮部材3が回転されながら下降されるので、圧縮部材3の外周面における任意の一点Pは、圧縮部材3の下降に伴って、螺旋を描くように移動される。この螺旋のねじれ角(helix angle)は、例えば、約30°である。
また、圧縮部材3の下面の直径は、試験片Sの縦長さおよび横長さの両方よりも長く、具体的には、約50mmである。
そして、試験片Sが圧縮部材3によって崩壊されたときの、圧縮部材3の試験片Sに対するせん断力を計測する。
計測されたせん断力を、試験片Sの上面の面積で除し、トナーブロックの最大せん断応力とする。
また、最大せん断応力を、試験片Sの厚みで除し、トナーブロックの単位厚み当たりのせん断応力とする。
トナーブロックの単位厚み当たりのせん断応力は、例えば、25000〜230000N/m2、好ましくは、30000〜200000N/m2である。
5.トナーブロックの現像カートリッジへの充填
トナーブロックは、図2に示すように、レーザプリンタなどの画像形成装置(図示せず)に設けられる現像ユニット11に充填される。
現像ユニット11は、トナーを担持するための現像ローラ12を一端部に備え、現像ローラ12の軸方向に長手の略ボックス形状に形成されている。また、現像ユニット11は、トナーブロックを収容するトナー収容部13と、現像ローラ12を回転可能に支持する現像部14とを備えている。
トナー収容部13は、現像ユニット11の他方側半分に設けられ、略ボックス形状に形成されており、押圧部材15と、削剥部材16とを備えている。
押圧部材15は、現像ローラ12の軸方向に沿って延びる平板形状に形成されており、トナー収容部13内において、トナー収容部13の他方側壁の一方側に配置されている。また、押圧部材15は、一方および他方にスライド可能に設けられており、付勢部材(図示せず)により、常には、他方から一方に向かって付勢されている。
削剥部材16は、押圧部材15の一方側に対向配置され、多数の貫通穴18を有する平板形状に形成されている。具体的には、削剥部材16は、パンチングメタルなどの多孔板や、金属メッシュなどの網状部材から形成されている。また、削剥部材16は、現像ローラの軸方向に沿って往復スライド可能に形成されており、トナー収容部13の一端部に設けられるセンサ19からのエンプティ信号に基づいて、駆動源(図示せず)から駆動力が伝達されることにより、スライドされる。
現像部14は、トナー収容部13に連通されるように、現像ユニット11の一方側半分に設けられ、供給ローラ17を備えている。
供給ローラ17は、現像ローラ12の他方側に配置され、現像ローラ12に対して、他方側から接触されている。
そして、トナーブロックを現像ユニット11に充填するには、押圧部材15を、付勢部材(図示せず)の付勢力に抗して他方側へスライドさせながら、トナーブロックを、押圧部材15と削剥部材16との間に配置する。
そして、押圧部材15の他方側へのスライドを解除すると、押圧部材15が付勢部材(図示せず)の付勢力により一方側へスライドされて、トナーブロックに他方側から当接される。これにより、トナーブロックは、押圧部材15によって削剥部材16に向かって押圧され、一端部において、削剥部材16に当接される。つまり、トナーブロックは、押圧部材15と削剥部材16との間に挟持される。
これにより、トナーブロックの現像ユニット11への充填が完了される。
6.現像動作
トナーブロックが充填された現像ユニット11が、画像形成装置(図示せず)内において駆動されると、削剥部材16が、現像ローラ12の軸方向に沿って往復スライドされる。
すると、削剥部材16に当接されているトナーブロックが圧縮、せん断され、粉砕されて、粉末状にほぐされる。このとき、集合されていた球体トナーは、互いに分離され、削剥部材16の貫通穴18を通過して、現像部14に供給される。
現像部14に供給された球体トナーは、現像ローラ12と供給ローラ17との間で摩擦帯電され、感光体(図示せず)に供給される。
7.作用効果
このトナーブロックによれば、球体トナーが集合されることにより形成されているため、現像カートリッジにトナーブロックを充填するときに、球体トナーが飛散することを防止することができる。
また、トナーブロックは、嵩密度が0.3〜0.8g/mlに調整されている。また、トナーブロックは、充填率が30〜69%に調整されている。
つまり、トナーブロックは、球体トナー同士が比較的緩く集合(凝集)されることにより、形成されている。
具体的には、トナーブロックの最大圧縮応力は、80000〜550000N/m2であり、トナーブロックの最大せん断応力は、120〜1800N/m2である。
そのため、現像カートリッジ内において、トナーブロックを、容易にほぐして、球体トナーの粉末とすることができる。
以下、トナーブロックの製造方法を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に言及のない限り、質量基準である。また、各種物性は、後述する測定方法に準じて測定した。
実施例1
1.トナー懸濁液の調製
(1)トナー母粒子懸濁液の調製
(1−1)母体微粒子懸濁液の調製
(1−1−1)ポリエステル樹脂乳化液の調製
ポリエステル樹脂(ER508:Tg62.1℃、Mn(数平均分子量)3700、Mw(重量平均分子量)113000、ゲル分2wt%未満、酸価6.8KOHmg/g:三菱レイヨン製)15質量部と、カーボンブラック(#260:三菱化学製)15質量部と、MEK(関東化学、鹿一級)70質量部とを混合し、ホモジナイザー(ローターステーター式、シャフト22F、DIAX−900型、ハイドルフ製)にて回転数10000rpmで10分間攪拌することにより、着色剤分散液を得た。
着色剤分散液100質量部を、ジルコニアビーズ(直径1mm)450質量部とともにビーズミル(RMB−04:アイメックス製)に投入し、攪拌速度2000rpmで60分間、処理した。
次いで、着色剤分散液60.6質量部にMEK671.15質量部をゆっくりと混合した後、ポリエステル樹脂(ER508)150.9質量部と、エステル系ワックス(ニッサンエレクトールWEP3:日本油脂製)12.73質量部とを混合して攪拌し、これを液温70℃に加熱攪拌してポリエステル樹脂液を得た。
別途、蒸留水900質量部と、1規定の水酸化ナトリウム水溶液9.0質量部とを混合して70°に加熱して水系媒体を調製した。
そして、水系媒体全量とポリエステル樹脂液全量とを、2Lビーカーに投入して混合し、ホモジナイザーにて回転数16000rpmで30分間攪拌して乳化させてポリエステル樹脂乳化液を得た。
(1−1−2)ポリエステル樹脂液からの有機溶剤の除去
このポリエステル樹脂乳化液を、窒素を気相中へ送気しながら、80℃で加熱攪拌して、MEKを除去し、母体微粒子が分散された母体微粒子懸濁液を得た。
母体微粒子懸濁液の固形分濃度は、23.1質量%であった。
また、母体微粒子懸濁液中の母体微粒子の体積平均粒子径は、メジアン径として0.275μmであった。
(1−2)母体微粒子の凝集・融合
次いで、母体微粒子懸濁液を2L丸型セパラブルフラスコへ移し、ノニオン系界面活性剤(ノイゲンXL−70:第一工業製薬製)の5%水溶液60質量部を混合し、蒸留水で希釈して、固形分濃度10%の母体微粒子懸濁液の希釈液1600質量部を準備した。
この希釈液に、凝集剤として0.2規定の塩化アルミニウム水溶液31質量部を添加し、ホモジナイザーにて回転数8000rpmで高速混合した。
そして、ホモジナイザーで5分間攪拌した後に、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液6質量部を投入し、さらに5分間、ホモジナイザーにて回転数8000rpmで攪拌した。
その後、2Lセパラブルフラスコを45℃のウォーターバスで加熱しながら、先端周速が約1.3m/秒となる回転数に設定された6枚平板タービン翼(φ75mm)で、30分攪拌して母体微粒子を凝集させた。その後、凝集停止剤として0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液40質量部を投入した後、先端周速が約0.75m/秒となるように6枚平板タービン翼(φ75mm)を減速し、10分間攪拌した。
その後、攪拌を継続しながら、1℃/分の昇温速度で95℃まで昇温し、95℃で150分攪拌した。
光学顕微鏡で母体微粒子懸濁液を観察し、球形のトナー母粒子が形成されていることを確認した後、冷却した。
冷却後、トナー母粒子の粒子径を、コールターマルチサイザーII(アパーチャ径100μm、ベックマンコールター製)で測定した。
トナー母粒子の個数平均粒子径Dnは、7.12μmであり、トナー母粒子の体積平均粒子径Dvは、8.27μmであった。
また、個数基準粒子径が5μm以下のトナー母粒子は、7.3%含まれていた。
また、体積基準粒子径が20μm以下のトナー母粒子は、0.43%含まれていた。
冷却されたトナー母粒子懸濁液を一晩放置してトナー母粒子を沈殿させ、上澄みを廃棄した。
その後、沈殿したトナー母粒子に蒸留水500質量部を加え、攪拌して、トナー母粒子を再分散させ、濾紙(No.5B、ADVANTEC TOYO製)を用いて濾過した。
濾過残滓(トナー母粒子)を蒸留水で再分散させて、固形分10質量%のトナー母粒子懸濁液を得た。
(2)帯電制御樹脂微粒子懸濁液の調製
(2−1)帯電制御樹脂乳化液の調製
帯電制御樹脂(商品名「FCA−201PS」、藤倉化成製)を準備した。
MEK82.5質量部と、帯電制御樹脂17.5質量部とを混合攪拌し、帯電制御樹脂をMEKに溶解させて、帯電制御樹脂液を得た。
この帯電制御樹脂液全量に、蒸留水100質量部を混合し、ホモジナイザー(ローターステーター式、シャフト18F、ローター径12.5mm:DIAX−900型ハイドルフ製)にて、回転数16000rpm(先端周速10.5m/s)で20分間攪拌して乳化させて帯電制御樹脂乳化液を得た。
(2−2)帯電制御樹脂微粒子懸濁液の調製
これを1Lセパラブルフラスコへ移し、窒素を気相中へ送気しながら、60℃で45分間加熱攪拌してMEKを揮発させて除去し、帯電制御樹脂微粒子が分散された帯電制御樹脂微粒子懸濁液(固形分19.5質量%)を得た。
(3)トナー母粒子に対する帯電制御樹脂微粒子の固着
上記した(1−2)において得られたトナー母粒子懸濁液(固形分10質量%)1600質量部を、6枚平板タービン翼(φ75mm)にて150rpmで攪拌しながら60℃の湯浴中で20分間加熱攪拌した。
次いで、加熱されたトナー母粒子懸濁液に、帯電制御樹脂微粒子懸濁液(固形分19.5質量%)を、8.21質量部(帯電制御樹脂微粒子として1.6質量部)混合して混合液を調製し、浴温を維持しながら20分間攪拌した。
その後、攪拌しながら、混合液を約30℃まで冷却し、濾過して、得られた濾過残渣(球体トナー)を蒸留水500質量部で2回洗浄した後、蒸留水を加えて、固形分10質量%のトナー懸濁液を得た。
2.外添剤の添加
別途、エタノール(関東化学製、鹿一級)10質量部に、HVK2150(疎水性シリカ、BET比表面積90〜130mg/100ml、クラリアント製)1.5質量部と、NA50Y(疎水性シリカ、BET比表面積30〜50mg/100ml、アエロジル製)2.5質量部とを配合し、超音波分散機(28kHz、650W)を用いて超音波処理して、シリカ分散液を得た。
上記した(3)において得られたトナー懸濁液(固形分10質量%)1500質量部に、得られたシリカ分散液14質量部を添加し、超音波分散機(28kHz、650W)を用いて超音波処理した。
その後、シリカ分散液が添加されたトナー懸濁液を濾過し、得られた濾過残渣(シリカ配合球体トナー)を蒸留水500質量部で2回洗浄した後、蒸留水を加えて、固形分10質量%のトナー懸濁液(シリカ配合)を得た。
3.トナーブロックの形成
(1)トナー懸濁液(シリカ配合)の水分量調整
得られたトナー懸濁液(シリカ配合)(固形分10質量%、水分90質量%)を濾過(濾紙:No.5B、ADVANTEC TOYO製)し、トナー懸濁液(シリカ配合)の水分を、表2に示す水分量に調整した。得られたトナー懸濁液(シリカ配合)は、ダイラタント流体であった。
(2)吸水・乾燥
水分量が調整されたトナー懸濁液(シリカ配合)を、下記表2に示す種類の吸水体からなる略矩形有底枠形状(縦300mm×横300mm×深さ15mm)の吸水体容器に注ぎ、吸水させて、球体トナーの集合体を得た。なお、吸水体容器の下には、吸水体容器を形成する吸水体と同じ吸水体を、10枚、重ねて配置した。
トナー懸濁液(シリカ配合)を吸水体容器に注いでから、球体トナーの集合体を得るまでの時間(吸水時間)を、表2に示す。
吸水時間を測定するには、まず、トナー懸濁液(シリカ配合)を吸水体容器に注ぐと同時に計測を開始し、次いで、球体トナーの集合体から、余剰の水(集合体の表面からしみ出した状態の水)が吸水体に吸水されたときを終点として計測を終了した。
また、得られた球体トナーの集合体の含水率を、表2に示す。
含水率を測定するには、まず、得られた球体トナーの集合体を、約1g(乾燥前質量)採取し、次いで、採取した集合体を乾燥させて、乾燥された集合体の質量(乾燥後質量)を測定した。そして、乾燥前質量に対する乾燥後質量の百分率を、含水率とした。
その後、吸水体容器を型枠として、球体トナーの集合体を風乾により乾燥させた。これにより、トナーブロックを得た。
実施例2〜16
トナー懸濁液(シリカ配合)の水分量を、表2に示すように調整して、表2に示す吸水体を用いて、表2に示す含水率の球体トナーの集合体を得た以外は、実施例1と同様にして、トナーブロックを得た。なお、水分量を調整されたトナー懸濁液(シリカ配合)は、ダイラタント流体であった。
比較例1
トナー懸濁液(シリカ配合)の水分量を調整することなく、トナー懸濁液(シリカ配合)(固形分10質量%、水分90質量%)を吸水体容器に投入した以外は、実施例1と同様にして、トナーブロックを得た。なお、トナー懸濁液(シリカ配合)は、ダイラタント流体ではなかった。
比較例2〜6
トナー懸濁液(シリカ配合)の水分量を、表2に示すように調整し、表2に示す吸水体を用いて、表2に示す含水率の球体トナーの集合体を得た以外は、実施例1と同様にして、トナーブロックを得た。なお、水分量を調整されたトナー懸濁液(シリカ配合)は、ダイラタント流体ではなかった。
<固形分の測定方法>
アルミ容器に測定対象を2〜20g採取して乾燥前の質量を測定し、内部が送風環境下にある47℃の乾燥機中で24時間以上乾燥させ、不揮発分の質量を測定した。乾燥前の質量に対する不揮発分の質量の百分率を、固形分(質量%)として算出した。
<母体微粒子の平均粒子径の測定>
マイクロトラック粒度分布測定装置(UPA150:日機装製)を使用して、各母体微粒子懸濁液中の母体微粒子の体積平均粒子径を測定した。
希釈溶媒に純水を使用し、溶媒の屈折率は1.33に設定し、母体微粒子の屈折率は、1.91に設定した。
<トナー母粒子、球体トナーの平均粒子径の測定>
粒度分布測定装置(コールターマルチサイザーII:ベックマン・コールター製)を使用した。アパーチャ径が100μmのものを使用して測定した。
(1)トナー母粒子の平均粒子径
トナー母粒子懸濁液を、粒度分布測定装置の測定器に、装置表示部が示す適量濃度範囲になるように投入して、体積基準の平均粒子径を測定した。
(2)球体トナーの平均粒子径
(2−1)トナー懸濁液中の球体トナー
トナー懸濁液を、粒度分布測定装置の測定器に、スポイト(2ml)で数滴(3〜5滴)投入して、体積基準の平均粒子径を測定した。結果を表2に示す。
(2−2)トナーブロック中の球体トナー
トナーブロックをメッシュ(アパーチャ径/ワイヤー径=250μm/173μm)上に設置し、30g/cm2の圧力で押し付けるように、メッシュにこすりつけた。
メッシュをくぐり抜けた球体トナーを約45mg採取し、分散剤(COULTER Dispersant Type IC NONIONIC)の4質量%水溶液250mlに分散させ、分散液を得た。なお、分散は、超音波洗浄器(ULTRASONIC CLEANER VS−100 50Hz 100W)を用いて、30秒間実施した。
得られた分散液を、粒度分布測定装置の測定器に、装置表示部が示す適量濃度範囲になるように投入して、体積基準の平均粒子径を測定した。結果を表2に示す。
<吸水体の吸水性評価>
(1)吸水度
約1cm幅の帯状に細長く裁断した吸水体を20℃の蒸留水中に立てて、10分間に上昇する水の高さを測定した。結果を表1に示す。
(2)吸水量
まず、スポイドを用いて、吸水体に蒸留水を吸水させた。
次いで、吸水体が吸水しなくなった時点(吸水体の表面に水がしみ出し、吸水体の表面に光沢が現われた時点)で、余剰の水(吸水体の表面からしみ出した水)を拭き取った後、吸水後の吸収体の質量を測定した。
別途、未吸水の吸水体の質量を測定し、下記式から、単位質量当たりの吸水量を算出した。結果を表1に示す。
式:(吸水後の吸収体の質量−未吸水の吸水体の質量)/未吸水の吸水体の質量
(3)吸水速度
マイクロシリンジを用いて、蒸留水0.2mlを吸水体に滴下した。
蒸留水を滴下してから、滴下した蒸留水の水滴が吸水体にしみ込む(水滴の光沢がなくなる)までの時間を測定した。結果を表1に示す。
<トナーブロックの内部応力測定>
各実施例および各比較例のトナーブロックから、表2に示すサイズの試験片を切り出し、トナーブロックの内部応力を測定した。
(1)圧縮応力測定
圧縮試験機としてパウダーレオメータFT−4(Freedman Technology社製)を用い、上記し、図1(a)に示すように、試験片を、厚み方向に加圧し、試験片が崩壊(変形または破壊された状態)したときの加圧力を計測した。なお、圧縮部材の下面の直径は、7.7mmであった。
そして、計測された加圧力を、圧力部材の下面の面積で除し、トナーブロックの最大圧縮応力とした。結果を表2に示す。
(2)せん断応力測定
また、圧縮試験機としてパウダーレオメータFT−4(Freedman Technology社製)を用い、上記し、図1(b)に示すように、試験片を、圧縮部材を回転させながら、厚み方向に加圧し、試験片が崩壊(変形または破壊された状態)したときのせん断力を計測した。
このとき、ねじれ角(helix angle)が30°となるように、圧縮部材を下降させた。また、圧縮部材の下面の直径は、47mmであった。
そして、計測されたせん断力を、試験片の上面の面積で除し、トナーブロックの最大せん断応力とした。結果を表2に示す。
また、最大せん断応力を試験片の厚みで除し、トナーブロックの単位厚み当たりのせん断応力とした。結果を表2に示す。
<トナーブロックの性能試験>
(1)トナーブロックの充填
レーザプリンタ(HL−5240、ブラザー工業製)に設けられる現像ユニット(TN580、ブラザー工業製)のトナー収容室に、上記した現像ユニット(図2参照)と同様に、押圧部材と削剥部材とを設置して、試験用の現像ユニットを作製した。
試験用の現像ユニットにおいて、押圧部材をスライドさせながら、各実施例および各比較例のトナーブロックを、押圧部材と削剥部材との間に配置し、挟持させた。
(2)印字かぶり
次いで、現像ユニットを駆動させて、各実施例および各比較例のトナーブロックを削り、得られた球体トナー粉末の印刷画質を評価した。
まず、用紙(4200 20lb、Xerox製)をレーザプリンタにセットし、白ベタ画像を画出した。
白ベタ画像の白色度(a1)と、未使用の4200用紙20lb(Xerox製)の白色度(a0)を、REFLECT METER MODEL TC−6MC(東京電色製)で測定した。
白色度の差(a0−a1)を、印字かぶりとして、表2に示す。
(3)感光体転写残
次いで、ベタ画像を印刷し、その印刷途中でレーザプリンタを停止させた。
現像ユニット(TN580)と、感光体を備える感光体ユニットとを取り出して、感光体表面において、転写ローラとの接触が終了した直後の部分にメンディングテープ(スコッチ製)を一度だけ貼り付け、速やかに離すことによって、用紙に転写されなかったトナー(転写残トナー)を採取した。
転写残トナーが付着したメンディングテープを、未使用の4200用紙20lb(Xerox製)に貼り付け、REFLECT METER MODEL TC−6MC(東京電色製)を用いて白色度(b1)を測定した。
別途、未使用の4200用紙20lb(Xerox製)に、転写残トナーの付着していないメンディングテープ(スコッチ製)を貼り付け、同様に白色度(b0)を測定した。
白色度の差(b0−b1)を、感光体転写残として、表2に示す。