本願発明の実施の形態を詳細に説明する前に、本実施の形態における用語の意味を説明すると次の通りである。
窒化シリコン、窒化ケイ素またはシリコンナイトライドというときは、Si3N4は勿論であるが、それのみではなく、シリコンの窒化物で類似組成の絶縁膜を含むものとする。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態においては、電界効果トランジスタを代表するMIS・FET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をMISと略し、pチャネル型のMIS・FETをpMISと略し、nチャネル型のMIS・FETをnMISと略す。なお、MOS・FET(Metal Oxide Semiconductor FET)は、そのゲート絶縁膜が酸化シリコン(SiO2等)膜からなる構造の電界効果トランジスタであり、上記MISの下位概念に含まれるものとする。
(実施の形態1)
本発明者が検討したのは、EEPROMまたはフラッシュメモリ等のような不揮発性メモリを有する半導体装置であって、その不揮発性メモリの複数のメモリセルの各々が、例えば2トランジスタ構造のスプリットゲート電極構造を備え、かつ、その一方のトランジスタ側に、窒化膜(窒化シリコン膜等)をデータ記憶用の電荷蓄積層とするMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)構造を備える半導体装置である。MONOS構造とした場合、単一トランジスタメモリセルでは、EEPROM構造の場合に比べてディスターブの影響を受け易いので、これを防ぐべく、2トランジスタ構造のスプリットゲート電極構造を採用している。また、上述したスプリットゲート型のメモリセル構造はいずれも消去時に半導体基板から電荷蓄積層にホールを注入、もしくは電荷蓄積層から半導体基板に電子を引き抜くため、メモリゲート電極に負電圧を印加する負電源回路が必要となり、メモリ占有率が低下して製造歩留りが低下してしまう。また、FNトンネリング電流で書き込みを行う場合、書込みの高速化が難しいという問題もある。従って、データ書き込み時はホットエレクトロン注入により半導体基板から電荷蓄積用の窒化膜中に電子を注入することで書き込み時間の高速化を図る一方、データ消去時はメモリゲート電極側に正の電圧を印加して電荷蓄積用の窒化膜中の電子をメモリゲート電極側に引き抜く動作とすることで電源回路の簡素化が可能になる。しかし、これまで上記のような回路動作を行うメモリセル構造については詳細に検討されていない。そこで、本実施の形態では、上記のような回路動作を行うメモリセル構成に適用した場合について説明するが、以下の実施の形態は、上記のような回路動作のメモリセル構造に適用することに限定されるものではなく種々の回路動作のメモリセルに適用することができるものも含んでいる。
図1は、上記メモリセルMCの回路図を示している。メモリセルMCは、メモリセルMCのドレイン電極Dと、ソース電極Sとの間に、例えばメモリセル選択用のnMISQnc(以下、単に選択用のnMISQncという)と、メモリ用のnMISQnmとの2つのトランジスタを有している。選択用のnMISQncはコントロールゲート電極CGを有し、メモリ用のnMISQnmはメモリゲート電極MGおよび上記電荷蓄積層CSLを有している。符号のVdはドレイン電圧、Vcgはコントロールゲート電圧、Vmgはメモリゲート電圧、Vsはソース電圧、Vsubは基板電圧を示している。
図2は、上記メモリセルMCの基本的なデバイス断面の一例を示している。ここでは、コントロールゲート電極乗り上げ型のメモリセルMC1(MC)を例示している。半導体基板(以下、単に基板という)1Subは、例えばp型のシリコン(Si)単結晶からなり、その主面(デバイス形成面)にはメモリセルMC1の選択用のnMISQncと、メモリ用のnMISQnmとが配置されている。このメモリセルMC1のドレイン領域Drmおよびソース領域Srmは、例えばn−型の半導体領域2aと、その半導体領域2aよりも不純物濃度の高いn+型の半導体領域2bとを有している(LDD(Lightly Doped Drain)構造)。n−型の半導体領域2aは、メモリセルMCのチャネル領域側に配置され、n+型の半導体領域2bはメモリセルMCのチャネル領域側からn−型の半導体領域2a分だけ離れた位置に配置されている。このドレイン領域Drmとソース領域Srmとの間の基板1Subの主面上には、上記選択用のnMISQncのコントロールゲート電極CGと、上記メモリ用のnMISQnmのメモリゲート電極MGとが隣接して配置されている。
コントールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGは、例えばn型の低抵抗なポリシリコンからなる。コントロールゲート電極CGの一部はメモリゲート電極MG側に乗り上げている。コントロールゲート電極CGと基板1Subの主面との間には、例えば厚さ2〜3nm程度の薄い酸化シリコン(SiO2等)からなるゲート絶縁膜3が設けられている。このゲート絶縁膜3の下方の基板1Subの主面には、p型の半導体領域4が形成されている。この半導体領域4は、選択用のnMISQncのチャネル形成用の半導体領域であり、この半導体領域4により選択用のnMISQncのしきい値電圧が所定の値に設定されている。半導体領域4は、選択用のnMISQncのしきい値電圧を上げる機能を有している。半導体領域4には、ホウ素(B)が導入されている。
一方、メモリゲート電極MGと基板1Subの主面との間には、上記電荷蓄積層CSLが、その上下の絶縁膜5t,5bに挟まれた状態で設けられている。電荷蓄積層CSLは、例えば窒化シリコンからなり、その厚さは、例えば50nm以下である。ただし、電荷蓄積層CSLは窒化シリコンに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばアルミナ(Al2O3)等のように絶縁性のトラップ準位を形成できるような材料を用いることができる。絶縁膜5b,5tは、例えば酸化シリコン等からなる。絶縁膜5bの厚さは、例えば2〜6nm程度、絶縁膜5tの厚さは、例えば10〜17nm程度である。絶縁膜5tを酸窒化シリコン(SiON)で形成しても良い。
また、絶縁膜5b、5tを、それぞれ窒素を含有した酸化シリコン膜として形成することもできる。これは、メモリ用のnMISQnmを形成した後に、選択用のnMISQncまたはメモリセル周辺のMIS形成領域に形成されるMISのゲート絶縁膜として酸化シリコン膜を形成する酸化工程において、シリコンからなる基板1Subと多結晶シリコンからなるメモリゲート電極MGが酸化され、それによって絶縁膜5b、5tの端部における膜厚が増加してしまうという問題がある。本実施の形態のようなメモリ用のnMISQnmでは、基板1Subから電荷蓄積層CSLへ電子を注入して書き込み動作を行ない、電荷蓄積層CSLからメモリゲート電極MGへ電子を引き抜くことで消去動作を行なうため、このようなメモリゲート電極MG端部での絶縁膜5b、5t膜厚の増加は、誤書き込み・誤消去の原因となる。したがって、絶縁膜5b、5tを、それぞれ窒素を含有した酸化シリコン膜とすることで、絶縁膜5b、5tの端部における過剰な酸化シリコン膜の形成を防止することが可能となる。
具体的な実施方法としては、絶縁膜5b形成後に、例えば、酸窒化(NO)アニールを行ない、絶縁膜5bの基板1Sub側に窒素を導入する。これにより、他の酸化工程時に絶縁膜5b端部の膜厚の増加を防ぐことが可能となる。また、絶縁膜5t形成後に窒素プラズマ処理を行なうか、またはメモリゲート電極MGとなる導電膜の堆積後に酸窒化(NO)アニールを行なうことによって、絶縁膜5tの導電膜側に窒素を導入することができる。これにより、他の酸化工程時に絶縁膜5t端部の膜厚の増加を防ぐことが可能となる。
更に、選択用のnMISQncまたはメモリセル周辺のMISのゲート絶縁膜(酸化シリコン膜)をCVD法によって形成することで、熱酸化工程に比べて成膜温度を低くすることができるので、絶縁膜5b、5tの端部における過剰な酸化シリコン膜の形成を、より阻害することが可能となる。
上記絶縁膜5bの下方、p型の半導体領域4とソース領域Srmとの間の基板1Subの主面には、n型の半導体領域6が形成されている。この半導体領域6は、メモリ用のnMISQnmのチャネル形成用の半導体領域であり、この半導体領域6によりメモリ用のnMISQnmのしきい値電圧が所定の値に設定されている。半導体領域6は、メモリ用のnMISQnmのしきい値電圧を下げる機能を有している。半導体領域6には、例えばヒ素(As)またはリン(P)が導入されている。メモリゲート電極MGの上面には、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜7が設けられている。
また、メモリゲート電極MG、絶縁膜5t,5bおよび電荷蓄積層CSLの側面には、例えば酸化シリコンからなるサイドウォール8が形成されており、メモリゲート電極MGとコントロールゲート電極CGとの絶縁がなされている。このようなメモリセルMC1のコントロールゲート電極CGの両側面、絶縁膜7の上面一部およびソース領域Srm側のサイドウォール8の表面には、これを覆うようにサイドウォール9が形成されている。このサイドウォール9は、例えば酸化シリコンからなり、主として上記n−型の半導体領域2aを形成するための部材である。
このようなメモリセルMC1において、データの記憶に寄与する電荷は、ホットエレクトロン注入により矢印Aで示す位置等で基板1Subから電荷蓄積層CSL中のトラップ準位に注入される。この電荷は離散的に蓄積されるため、電荷蓄積層CSLを取り囲む酸化膜(絶縁膜5b,5tやサイドウォール8)のどこか一部に欠陥が生じて異常リークがおきても、電荷蓄積層CSL中の電荷が全て抜けてしまうことがないため、データ保持の信頼度を向上させることができる。そして、このため、電荷蓄積層CSLの上下の絶縁膜5b,5tを薄膜化できるので、書き込みおよび消去動作の低電圧化を図ることができる。また、データの書き込み時はホットエレクトロン注入により基板1Subから電荷蓄積層CSL中に電子を注入するので、電子注入効率に優れ、高速、低電流の書き込みができる。一方、データの消去時はメモリゲート電極MG側に正の電圧を印加して電荷蓄積層CSL中の電子をメモリゲート電極MG側に引き抜く方式とするので、書き込みおよび消去動作の制御が容易であり、電源回路や周辺回路の簡素化(小規模化)が可能である。
図3は、図1および図2のメモリセルMCのデータの読み出し動作Re、消去動作Erおよび書き込み動作Wr時の各部への印加電圧値の一例を示している。
データの読み出し動作Reに際しては、選択したメモリセルMCのドレイン電極D(ドレイン領域Drm)に、例えば1V程度、コントロールゲート電極CGに、例えば1.5V程度、選択したメモリセルMCのソース電極S(ソース領域Srm)、メモリゲート電極MGおよび基板1Subに、例えば0(零)Vを印加して、メモリセルMCの選択用のnMISQncをオンする。この時、メモリ用のnMISQnmの電荷蓄積層CSL中の電子の有無によりメモリ用のnMISQnmのしきい値電圧が変化し、ドレイン領域Drmとソース領域Srmとの間に電流が流れたり、流れなかったりするので、これにより、記憶データを読み出す。
また、データの消去動作Erに際しては、選択したメモリセルMCのドレイン電極D(ドレイン領域Drm)、ソース電極S(ソース領域Srm)および基板1Subに、例えば0(零)V、コントロールゲート電極CGに、例えば1.5V程度、メモリゲート電極MGに、例えば14V程度を印加する。これにより、電荷蓄積層CSL中の電子をトンネル放出によりメモリゲート電極MG側に逃がし、データを消去する。
さらに、データの書き込みは、ソースサイド・ホットエレクトロン注入方式を採用している。データの書き込み動作Wrに際しては、選択したメモリセルMCのドレイン電極D(ドレイン領域Drm)および基板1Subに、例えば0(零)V、コントロールゲート電極CGに、例えば1.5V程度、メモリゲート電極MGに、例えば12V程度、選択したメモリセルMCのソース電極S(ソース領域Srm)に、例えば6V程度を印加する。これにより、メモリセルMCのチャネルで発生したホットエレクトロンを電荷蓄積層CSLに注入し、データを書き込む。
図4および図5は、スプリットゲート電極型のメモリセルMCの基本的なデバイス断面の他の例を示している。図4はメモリゲート電極乗り上げ型のメモリセルMC2(MC)を例示し、図5はサイドウォール方式メモリゲート電極乗り上げ型のメモリセルMC3(MC)を例示している。図4および図5のメモリセルMC2,MC3では、メモリゲート電極MGの一部がコントロールゲート電極CG側に乗り上げているが、コントロールゲート電極CG上面上の酸化シリコン等からなる絶縁膜10、絶縁膜5b,5tおよび電荷蓄積層CSL等によりコントロールゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの絶縁がなされている。この場合もデータの読み出し、書き込みおよび消去動作は上記したのと同じなので説明を省略する。以上のようなメモリセルを有する半導体装置は、例えばIC(Integrated circuit)カード(メモリカード)に使用されている。
次に、上記図2、図4および図5に示したスプリットゲート型のメモリセルMC(MC1〜MC3)について本発明者が初めて見出した課題を図6および図7により説明する。
図6は上記図2のスプリットゲート電極型のメモリセルMC1の形成工程中の基板1Subの要部断面図を示している。この基板1Sub(この段階では平面略円形状のウエハ)の主面には、n型の半導体領域6が形成されている。また、この基板1Subの主面には、絶縁膜5b、電荷蓄積層CSL、絶縁膜5t、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜7の積層パターンが形成されている。そして、その積層パターンの側面には、例えば酸化シリコンからなるサイドウォール8が形成されている。上記メモリセルMC1の形成工程では、まず、このような基板1Subの主面上に、図7に示すように、選択用のnMISQnc(図2参照)の形成領域が露出され、それ以外の領域が覆われるようなフォトレジストパターン(以下、単にレジストパターンという)PR1を形成する。続いて、そのレジストパターンPR1、サイドウォール8およびメモリゲート電極MGの一部をマスクとして、例えばホウ素(B)をイオン注入法により基板1Subの主面に導入する。これにより、基板1Subの主面にp型の半導体領域4をメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。この時、メモリセルMC1の動作安定性の観点からは選択用のnMISQncのしきい値電圧を高く保ちたいので、ホウ素の導入量を、既に基板1Subの主面に形成されている上記n型の半導体領域6の導電型が打ち消される程度に導入する必要がある。このため、p型の半導体領域4には多量の不純物が打ち込まれることになるので、その半導体領域4での総合の不純物濃度(半導体領域4,6の各々の形成用の不純物濃度の和)が高くなる。
このように、図2、図4および図5のスプリットゲート電極型のメモリセルMC1〜MC3では、選択用のnMISQncとメモリ用のnMISQnmとが隣接しているため、nMISQnc,Qnmのチャネル形成用の半導体領域を形成するには、そのいずれか一方のチャネル形成用の半導体領域を形成するための不純物を基板1Subに打ち込んだ後に、それを打ち消すように反対導電型の不純物を打ち込むことにより他方のチャネル形成用の半導体領域を形成する必要がある。このため、どちらかのチャネル形成用の半導体領域には多量の不純物が打ち込まれることになるので、その多量の不純物が打ち込まれたチャネル形成用の半導体領域の総合の不純物濃度が高くなる。その結果、キャリアの移動度の低下(ドレイン電流Idsの低下)やしきい値電圧のばらつきの増大等のような電気的特性の劣化が生じる。
そこで、本実施の形態1では、選択用のMISとメモリ用のMISとの2つのMISを有するスプリットゲート電極型のメモリセルMCの形成工程において、一方のMISのチャネル形成用の半導体領域をエッチングしてから、他方のMISのチャネル形成用の半導体領域を形成する。これにより、他方のMISのチャネル形成用の半導体領域の不純物濃度を下げることができるので、キャリアの移動度を向上させることができ、メモリセルMCでのドレイン電流Idsを増大させることができる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルMCの動作速度(データの読み出し速度)を向上させることができる。また、しきい値電圧のバラツキを低減できるので、スプリットゲート型のメモリセルMCの動作信頼性を向上させることができる。
この具体例を図8〜図19の半導体装置の製造工程中におけるメモリ領域の基板1Subの要部断面図により説明する。ここでは、図2のメモリセルMC1への適用例を説明する。
まず、図8に示すように、例えばp型のシリコン(Si)単結晶からなる基板1Sub(この段階では平面略円形状の半導体ウエハ)の主面に、例えばヒ素(As)をイオン注入法により導入する。これにより、基板1Subの主面に、メモリ用のnMISQnm(図2参照)のチャネル形成用のn型の半導体領域6を形成する。本実施の形態1では、後述する工程で基板1Subの主面を若干エッチングしてn型の半導体領域6を部分的に除去するエッチング工程があるが、上記半導体領域6を形成するための不純物イオンがあまり深い位置まで打ち込まれていると、上記エッチング工程時に基板1Subのエッチング量を大きくせざるを得なくなってしまうので、半導体領域6を形成するための不純物イオンの打ち込み深さを浅くした方が好ましい。この時の不純物イオンの打ち込みエネルギーは、例えば20〜40keV程度である。また、この時の不純物イオンの打ち込み深さ(不純物濃度が最も高くなる深さ)は、例えば10〜20nm程度である。また、不純物イオンのドーズ量は、例えば1×1014/cm2程度である。不純物としてリンを用いることもできるが、ヒ素を用いたのは、リンよりも原子量(質量)の重いヒ素を用いることにより、同じ打ち込みエネルギーでも基板1Subの浅い位置に半導体領域6を形成でき、浅い位置に半導体領域6を形成するのが容易だからである。
次いで、図9に示すように、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜5b、窒化シリコンからなる電荷蓄積層CSL、酸化シリコンからなる絶縁膜5t、低抵抗ポリシリコンからなるメモリゲート形成用の導体膜11および酸化シリコンからなる絶縁膜7を酸化、もしくはCVD(Chemical Vapor Deposition)法により下層から順に堆積した後、これら積層膜をフォトリソグラフィ(以下、単にリソグラフィという)技術およびエッチング技術によりパターニングすることにより、図10に示すように、絶縁膜5b、電荷蓄積層CSL、絶縁膜5t、メモリゲート電極MG(11)および絶縁膜7の積層パターンを形成する。続いて、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜をCVD法等によって堆積した後、これを異方性のドライエッチング法によりエッチバックすることにより、図11に示すように、上記積層パターンの側面にサイドウォール8を形成する。
次いで、図12に示すように、基板1Subの主面上に、選択用のnMIS形成領域側が露出されるようなレジストパターンPR2を形成した後、レジストパターンPR2、サイドウォール8および絶縁膜8をエッチングマスクとして、サイドウォール8の材料と基板1Subの材料とのエッチング選択比が大きくなるような条件でエッチング処理を施すことにより、選択用のnMIS形成領域の基板1Subの主面を部分的にエッチングして窪み13を形成する。これにより、選択用のnMIS形成領域のn型の半導体領域6を除去する。この時、サイドウォール8をエッチングマスクとしているので、基板1Subの一部を位置合わせ良く選択的に除去することができる。この時のエッチング方法としては、例えばドライエッチング法を用いている。ただし、ウエットエッチング法を用いても良い。ウエットエッチングを用いた場合、基板1Subにあまり損傷を与えることなく基板1Subの一部を除去できる。また、ドライエッチング処理を施した後、若干のウエットエッチング処理を施すことにより、ドライエッチング時に生じた基板1Subの損傷層を除去しても良い。これにより、選択用のnMISの電気的特性を向上させることができる。窪み13の深さは、あまり深いと段差の原因となるので、例えば50nm以下が好ましく、具体的には、例えば20nm程度とされている。
次いで、図13に示すように、レジストパターンPR2、サイドウォール8およびメモリゲート電極MGをマスクとして、基板1Subの主面に、例えば二フッ化ホウ素(BF2)をイオン注入することにより、選択用のnMISのチャネル形成用のp型の半導体領域4を形成する。この時の不純物イオンの打ち込みエネルギーは、例えば40〜100keV程度である。本実施の形態1では、選択用のnMIS形成領域の基板1Subの主面が削られn型の半導体領域6が除去されているので、窪み13を形成しない場合と比較して、選択用のnMISのチャネル形成用のp型の半導体領域4の不純物濃度を下げることができる。このため、キャリア(電子)の移動度を向上させることができ、メモリセルMC1でのドレイン電流Idsを増大させることができる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルMC1の動作速度(データの読み出し速度)を向上させることができる。また、選択用のnMISのしきい値電圧のバラツキを低減できるので、スプリットゲート電極型のメモリセルMC1の動作信頼性を向上させることができる。
次いで、図14に示すように、基板1Subに対して酸化処理を施すことにより、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜3を形成した後、その基板1Subの主面上に、例えば低抵抗ポリシリコンからなる導体膜をCVD法により堆積し、さらにその導体膜をリソグラフィ技術およびドライエッチング技術によりパターニングすることにより、コントロールゲート電極CGを形成する。続いて、図15に示すように、コントロールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGをマスクとして、例えばヒ素またはリンを基板1Subの主面にイオン注入することにより、基板1Subの主面にn−型の半導体領域2aをコントールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。
次いで、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜をCVD法により堆積した後、これを異方性のドライエッチング法によりエッチバックすることにより、図16に示すように、コントロールゲート電極CGの両側面、絶縁膜7上およびサイドウォール8の表面上に、サイドウォール9を形成する。続いて、図17に示すように、サイドウォール9およびコントロールゲート電極CGをマスクとして、例えばヒ素またはリンを基板1Subの主面にイオン注入することにより、基板1Subの主面にn+型の半導体領域2bをコントールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。このようにしてメモリセルMC1のドレイン領域Drmおよびソース領域Srmを形成し、選択用のnMISQncおよびメモリ用のnMISQnmを形成する。その後、図18に示すように、基板1Subの主面部およびコントロールゲート電極CGの上面部に、例えばコバルトシリサイド(CoSix)等のようなシリサイド層14をサリサイド(Salicide:Self Align silicide)プロセスにより形成する。
次いで、図19に示すように、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜15をCVD法により堆積した後、絶縁膜15にコンタクトホールCNTを形成する。続いて、コンタクトホールCNT内にプラグPLGを形成する。プラグPLGは、例えばチタン(Ti)および窒化チタン(TiN)の積層膜からなる薄いバリア膜と、そのバリア膜に包まれるように形成されたタングステン(W)またはアルミニウム(Al)等からなる相対的厚い導体膜とを有している。その後、絶縁膜15上に、例えばタングステンまたはアルミニウム(Al)等からなる第1層配線M1を形成する。これ以降は、通常の半導体装置の製造工程を経て不揮発性メモリを有する半導体装置を製造する。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前記実施の形態1の変形例であって、メモリゲート電極の両側の基板1Sub部分をエッチングする例を、図20〜図22の半導体装置の製造工程中の基板1Subの要部断面図により説明する。
まず、前記実施の形態1の図8〜図11で説明した工程を経た後、前記図12で説明したのと同様のエッチング処理を基板1Subに施すことにより、図20に示すように、メモリゲート電極MGおよびサイドウォール8の形成領域から露出される基板1Subの主面部に窪み13を形成する。ここでは、メモリゲート電極MGおよびサイドウォール8の形成領域の両側を除去する。すなわち、メモリセルのソース領域の形成部分の半導体領域6も除去してしまう。続いて、図21に示すように、基板1Subの主面上に、選択用のnMIS形成領域側が露出されるようなレジストパターンPR2を形成した後、レジストパターンPR2、サイドウォール8および絶縁膜8をマスクとして、基板1Subの主面に、例えば二フッ化ホウ素(BF2)をイオン注入することにより、選択用のnMISのチャネル形成用のp型の半導体領域4を形成する。この時の条件は、前記図13で説明したのと同じである。また、本実施の形態2でも、前記図13で説明したのと同様の効果を得ることができる。その後、前記実施の形態1と同様にして、図22に示すように、メモリセルMC1(MC)を形成する。
本実施の形態2では、メモリセルMC1のソース領域Srmの形成部分でも窪み13を形成し、n型の半導体領域6の層を除去しているので、ドレイン領域Drmおよびソース領域Srmのn−型の半導体領域2aおよびn+型の半導体領域2bの不純物濃度も低減できる。また、窪み13を形成しない場合と比較して、n−型の半導体領域2aおよびn+型の半導体領域2bの濃度調整を容易にすることができる。
(実施の形態3)
前記実施の形態1,2の方法は、前記図4および図5のメモリセルMC2,MC3にも適用できる。そこで、本実施の形態3では、前記図4のメモリセルMC2に前記実施の形態2の方法を適用した例を図23〜図31の半導体装置の製造工程中の要部断面図により説明する。
まず、図23に示すように、例えばp型のシリコン(Si)単結晶からなる基板1Sub(前記半導体ウエハ)の主面に、例えば二フッ化ホウ素(BF2)をイオン注入法により導入する。これにより、基板1Subの主面に、選択用のnMISQnc(図4参照)のチャネル形成用のp型の半導体領域4を形成する。本実施の形態3では、後述する工程で基板1Subの主面を若干エッチングしてp型の半導体領域4を部分的に除去するエッチング工程があるので、前記実施の形態1のn型の半導体領域6と同様の理由から、p型の半導体領域4を形成するための不純物イオンの打ち込み深さを浅くした方が好ましい。この時の不純物イオンの打ち込みエネルギーは、例えば40〜100keV程度である。また、この時の不純物イオンの打ち込み深さ(不純物濃度が最も高くなる深さ)は、例えば40〜100nm程度である。また、不純物イオンのドーズ量は、例えば1×1014/cm2程度である。不純物としてホウ素を用いることもできるが、二フッ化ホウ素を用いたのは、ホウ素よりも原子量(質量)の重い二フッ化ホウ素を用いることにより、同じ打ち込みエネルギーでも基板1Subの浅い位置に半導体領域4を形成でき、浅い位置に半導体領域4を形成するのが容易だからである。
続いて、図24に示すように、基板1Subに対して酸化処理を施すことにより、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜3を形成した後、その基板1Subの主面上に、例えば低抵抗ポリシリコンからなる導体膜17をCVD法により堆積し、さらにその導体膜17上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜10をCVD法により堆積する。その後、ゲート絶縁膜3、導体膜17および絶縁膜10の積層膜をリソグラフィ技術およびドライエッチング技術によりパターニングすることにより、図25に示すように、コントロールゲート電極CGを形成する。
次いで、前記図12で説明したのと同様のエッチング処理を基板1Subに施すことにより、図26に示すように、コントロールゲート電極CGの形成領域から露出される基板1Subの主面部に窪み13を形成する。ここでは、コントロールゲート電極CGの形成領域の両側の基板1Subの表層を除去する。すなわち、メモリセルのメモリ用のnMIS形成領域、ソース領域およびドレイン領域の形成部分のp型の半導体領域4も除去してしまう。続いて、図27に示すように、コントロールゲート電極CGをマスクとして、基板1Subの主面に、例えばヒ素またはリンをイオン注入することにより、メモリ用のnMISのチャネル形成用のn型の半導体領域6を形成する。この時の不純物イオンの打ち込みエネルギーは、例えば20〜40keV程度である。本実施の形態3では、メモリ用のnMIS形成領域の基板1Subの主面が削られp型の半導体領域4が除去されているので、メモリ用のnMISのチャネル形成用のn型の半導体領域6の不純物濃度を下げることができる。このため、キャリア(電子)の移動度を向上させることができ、メモリセルMC2でのドレイン電流Idsを増大させることができる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルMC2の動作速度(データの読み出し速度)を向上させることができる。また、窪み13を形成しない場合と比較して、メモリ用のnMISのしきい値電圧のバラツキを低減できるので、スプリットゲート型のメモリセルMC2の動作信頼性を向上させることができる。
次いで、図28に示すように、基板1Subの主面上に、前記絶縁膜5b、電荷蓄積層CSL絶縁膜5tおよびメモリゲート形成用の導体膜11をCVD法により下層から順に堆積した後、これら積層膜をリソグラフィ技術およびエッチング技術によりパターニングすることにより、図29に示すように、絶縁膜5b、電荷蓄積層CSL、絶縁膜5tおよびメモリゲート電極MG(11)の積層パターンを形成する。続いて、コントロールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGをマスクとして、例えばヒ素またはリンを基板1Subの主面にイオン注入することにより、基板1Subの主面にn−型の半導体領域2aをコントールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。その後、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜をCVD法により堆積した後、これを異方性のドライエッチング法によりエッチバックすることにより、図30に示すように、コントロールゲート電極CGの片側面、絶縁膜10上およびメモリゲート電極MGの両側面に、サイドウォール9を形成する。続いて、サイドウォール9およびメモリゲート電極MGをマスクとして、例えばヒ素またはリンを基板1Subの主面にイオン注入することにより、基板1Subの主面にn+型の半導体領域2bをコントールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。このようにしてメモリセルMC2のドレイン領域Drmおよびソース領域Srmを形成し、選択用のnMISQncおよびメモリ用のnMISQnmを形成する。その後、図31に示すように、前記実施の形態1と同様に、サリサイドプロセスを経て基板1Subの主面部およびコントロールゲート電極CGの上面部にシリサイド層14を形成し、絶縁膜15を堆積し、コンタクトホールCNTを形成し、プラグPLGを形成し、第1層配線M1を形成する。
本実施の形態3では、メモリセルMC2のドレイン領域Drmおよびソース領域Srmの形成部分でも窪み13を形成し、p型の半導体領域4の層を除去しているので、ドレイン領域Drmおよびソース領域Srmのn−型の半導体領域2aおよびn+型の半導体領域2bの不純物濃度も低減できる。また、窪み13を形成しない場合と比較して、そのn−型の半導体領域2aおよびn+型の半導体領域2bの濃度調整を容易にすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態4は、前記スプリットゲート電極型のメモリセルについて本発明者が初めて見出した他の問題を解決するための一例を説明するものである。その問題は、メモリセルの選択用のMISのソース・ドレイン用の半導体領域がコントロールゲート電極に対してオフセットになるという問題である。
まず、その問題を図32および図33により説明する。図32はメモリセルMC1の要部断面図、図33は図32の破線で囲んだ領域Bの拡大断面図を示している。メモリセルMC1の場合、選択用のnMISQncのチャネル形成用のp型の半導体領域4を、メモリ用のnMISQnmのチャネル形成用のn型の半導体領域6の形成後に形成するので、選択用のnMISQnmとメモリ用のnMISQnmとの境界領域では、p型の半導体領域4の一部がn型の半導体領域6側に拡散する。そのp型の半導体領域4がn型の半導体領域6側に拡散した領域Cでは、本来、n型であった領域が、p型またはp型に近い導電型に変わってしまう場合がある。その結果、選択用のnMISQncのコントロールゲート電極CGから見ると、選択用のnMISQncのソース・ドレイン領域となるn型の半導体領域6が長さL1だけ離れてしまったような形となる。すなわち、ドレイン電流Idsを律則するコントロールゲート電極CGがゲート絶縁膜3を介して平面的に重ならない部分(領域C)が生じる。このようなオフセット領域が生じると、ドレイン電流Idsが低下し、メモリセルMC1の動作速度が低下する問題が生じる。
そこで、本実施の形態4では、選択用のMISのチャネル形成用の半導体領域の端部が、メモリ用のMISのメモリゲート電極の側面に形成されたサイドウォールの側面から離れるようなスペーサを、メモリゲート電極の側面のサイドウォールの側面に形成した後に、選択用のMISのチャネル形成用の半導体領域を形成するための不純物を基板1Subに導入する。これにより、選択用のMISのソース・ドレイン領域となる半導体領域(メモリ用のMISのチャネル形成用の半導体領域)の端部がコントロールゲート電極下で確実に重なるようにすることができるので、スプリットゲート型のメモリセルのドレイン電流Idsを向上させることができる。したがって、スプリットゲート型のメモリセルの動作速度(データの読み出し速度)を向上させることができる。この具体例を図34〜図39の半導体装置の製造工程中におけるメモリ領域の基板1Subの要部断面図により説明する。
まず、前記実施の形態1の図8〜図11で説明した工程を経た後、図34に示すように、基板1Sub(半導体ウエハ)の主面上に、上記スペーサ用の絶縁膜19を堆積する。絶縁膜19は、例えば酸化シリコンからなり、その厚さは、例えば30nm程度である。本実施の形態4では、この絶縁膜19を、例えばTEOS(Tetraethoxysilane)と酸素(O2)との混合ガスを用いたCVD法等により堆積した。また、下層の絶縁膜7およびサイドウォール8形成用の酸化シリコン膜は、例えばモノシラン(SiH4)と酸素(O2)との混合ガスを用いたCVD法により堆積した後、その酸化シリコン膜の緻密化のためにアニール処理を施すことで形成されている。このようにすることで、後述するように絶縁膜19をウエットエッチング処理により除去するときに、絶縁膜19のエッチングレートを、同じ酸化シリコンからなる絶縁膜7およびサイドウォール8の2倍程度にまでできるので、絶縁膜19を選択的に除去することができる。ただし、絶縁膜19の材料として窒化シリコンを用いても良い。この場合も絶縁膜19をエッチング除去するときに酸化シリコンとのエッチング選択比を高くとることができる。
続いて、図35に示すように、基板1Subの主面上に、前記実施の形態1と同様にレジストパターンPR2を形成した後、前記実施の形態1の図13で説明したのと同様に、例えば二フッ化ホウ素(BF2)またはホウ素(B)をイオン注入することにより、選択用のnMISのチャネル形成用のp型の半導体領域4を形成する。この時、本実施の形態4では、選択用のnMIS形成領域側のサイドウォール8の側面に被着された絶縁膜19がマスクとなり、p型の半導体領域4のメモリゲート電極CG側の端部が、選択用のnMIS形成領域側のサイドウォール8の側面から絶縁膜19の厚さ分だけ離れたところに位置するようになる。
その後、レジストパターンPR2を除去後、絶縁膜19を、図36に示すように、ウエットエッチング法により選択的に除去する。続いて、図37に示すように、前記実施の形態1と同様に、ゲート絶縁膜3およびコントロールゲート電極CGを形成した後、例えばヒ素またはリンを基板1Subにイオン注入してn−型の半導体領域2aを形成する。その後、図38および図39に示すように、前記実施の形態1と同様に、選択用のnMISQncおよびメモリ用のnMISQnmを形成し、スプリットゲート電極型のメモリセルMC1を形成する。
本実施の形態4では、図39に示すように、n型の半導体領域6の端部がサイドウォール8の側面から長さL2だけコントロールゲート電極CG下側に突き出すように延在している。すなわち、メモリセルMC1の電流を律則するコントロールゲート電極CGがゲート絶縁膜3を介して確実にn型の半導体領域6(選択用のnMISQncのソース・ドレイン領域)の端部に重なるようにすることができる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルMC1のドレイン電流Idsを向上させることができるので、スプリットゲート電極型のメモリセルMC1の動作速度(データの読み出し速度)を向上させることができる。長さL2は、上記絶縁膜19の厚さで制御できる。したがって、コントロールゲート電極CGがゲート絶縁膜3を介してn型の半導体領域6の端部に重なる重なり量を比較的容易に設定することができる。長さL3は絶縁膜19の厚さを示している。長さL3から長さL2を引いた長さL4は、p型の半導体領域4がn型の半導体領域6側に拡散した長さを示している。
ただし、本実施の形態4では、n型の半導体領域6がコントロールゲート電極CG下に突き出しコントロールゲート電極CGがゲート絶縁膜3を介してn型の半導体領域6の端部に重なっている場合について説明したが、本実施の形態4は、選択用のnMISQncのソース・ドレイン領域であるn型の半導体領域6の端部がコントロールゲート電極CGの端部から離れていなければ良く、図40に示すように、コントロールゲート電極CGがゲート絶縁膜3を介してn型の半導体領域6の端部と重なっていないが、n型の半導体領域6の端部がサイドウォール8の側面位置とほぼ一致しており、コントロールゲート電極CGの端部から離れていない構造を排除するものではない。なお、図40の長さL5は、絶縁膜19の厚さであり、また、p型の半導体領域4がn型の半導体領域6側に拡散した長さでもある。
また、本実施の形態4と前記実施の形態1,2とを組み合わせても良い。すなわち、基板1Subの主面に窪み13を形成した後、絶縁膜19を堆積し、その後、p型の半導体領域4を形成するための不純物を導入する。
また、前記絶縁膜19を他の工程で用いる絶縁膜と兼用しても良い。この場合、工程の兼用ができるので、半導体装置の製造時間の短縮およびコストの低減が可能となる。
(実施の形態5)
本実施の形態5は、前記スプリットゲート電極型のメモリセルについて本発明者が初めて見出した他の問題を解決するための一例を説明するものである。その問題は、乗り上げている側のゲート電極をパターニングする工程で、乗り上げていないゲート電極の側面に、乗り上げている側のゲート電極の一部が残され、それを除去する際に基板の主面をエッチングしてしまうという問題である。
まず、その問題を図41〜図43により説明する。図41〜図43はコントロールゲート電極のパターニング工程中の基板1Subの要部断面図を示している。図41に示すように、基板1Subの主面にゲート絶縁膜3を形成した後、基板1Subの主面上に、コントロールゲート電極形成用の低抵抗ポリシリコン等からなる導体膜21をCVD法等によって堆積し、さらにその上にコントロールゲート電極形成用のレジストパターンPR3を形成する。続いて、レジストパターンPR3をエッチングマスクとして異方性のドライエッチング処理を施すことにより、図42に示すように、コントロールゲート電極CGを形成する。この時、メモリゲート電極MG側面のサイドウォール8の側面に導体膜21aが残される場合がある。そこで、その残された導体膜21aを除去するため、図43に示すように、導体膜21aが露出されるようなレジストパターンPR4を形成し、エッチング処理により導体膜21aを除去する。ところが、この時、導体膜21aはポリシリコンからなるので、下層のシリコンからなる基板1Subの主面も部分的にエッチングされ、基板1Subの主面が荒れてしまう結果、メモリセルのドレイン電流Idsが低下する場合がある。
そこで、本実施の形態5では、ゲート電極が乗り上げない側の基板上に保護膜を形成する工程を有するものである。これにより、乗り上げる側のゲート電極の加工時に生じたエッチ残りを除去する際に、上記保護膜により基板1Subの主面が保護されるので、基板1Subの主面がエッチングされるのを防止できる。この具体例を図44〜図52の半導体装置の製造工程中におけるメモリ領域の基板1Subの要部断面図により説明する。
まず、前記実施の形態1の図8〜図11で説明した工程を経た後、図44に示すように、基板1Sub(半導体ウエハ)の主面上に、レジストパターンPR2を形成し、例えば二フッ化ホウ素(BF2)またはホウ素(B)をイオン注入することにより、p型の半導体領域4を形成する。続いて、レジストパターンPR2を除去した後、図45に示すように、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンからなる厚さ20nm程度の絶縁膜23を形成する。その後、絶縁膜23上に、上記p型の半導体領域4の形成時に用いたレジストパターン2と同じレジストパターンPR5を形成した後、これをエッチングマスクとして絶縁膜23をエッチングすることにより、図46に示すように、絶縁膜23のパターンを形成する。絶縁膜23のパターンは、絶縁膜7の上面の一部と片側のサイドウォール8の表面と、メモリセルのソース領域側の基板1Subの上面とを覆うように形成されている。
次いで、図47に示すように、基板1Subの主面上に、上記ゲート絶縁膜3を形成した後、その上に、例えば低抵抗ポリシリコンからなる導体膜21をCVD法等によって堆積する。続いて、導体膜21上に、コントロールゲート電極形成用のレジストパターンPR3を形成した後、これをエッチングマスクとして、導体膜21をパターニングすることにより、図48に示すように、コントロールゲート電極CGを形成する。この時、メモリゲート電極MGの片側側面のサイドウォール8の側面下部側に導体膜21aが残される。本実施の形態5では、導体膜21aが上記絶縁膜23上に残される。そこで、基板1Subの主面上に、導体膜21aを除去するためのレジストパターンPR4をリソグラフィ技術により形成した後、これをエッチングマスクとして、エッチング処理を施すことにより、導体膜21aを図49に示すように除去する。この時、本実施の形態5では、ポリシリコンと絶縁膜23とのエッチング選択比を大きくとり、ポリシリコンの方が絶縁膜23よりもエッチングされ易い条件でエッチング処理を施す。この時、ポリシリコンからなるエッチ残りの導体膜21aの下層(導体膜21aと基板1Subとの間)に、ゲート絶縁膜3よりも厚い絶縁膜23が設けられているので、基板1Subの主面が保護され、基板1Subの主面がエッチングされないようにすることができる。すなわち、エッチ残りの導体膜2aの除去に起因する基板1Subの荒れを防止できる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルのドレイン電流Idsの低下を防止できるので、スプリットゲート電極型のメモリセルの高速動作(データの高速読み出し)を維持できる。
次いで、レジストパターンPR4を除去後、図50に示すように、基板1Subに、例えばリンまたはヒ素等のような不純物をイオン注入して、n−型の半導体領域2aをコントロールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。続いて、図51に示すように、前記実施の形態1と同様に、サイドウォール9を形成した後、基板1Subの主面にn+型の半導体領域2bをコントールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合的に形成する。このようにしてメモリセルMC1のドレイン領域Drmおよびソース領域Srmを形成し、選択用のnMISQncおよびメモリ用のnMISQnmを形成する。その後、図52に示すように、前記実施の形態1と同様に、サリサイドプロセスによりシリサイド層14を形成した後、絶縁膜15の堆積工程、コンタクトホールCNTの形成工程、プラグPLGの形成工程、第1層配線M1の形成工程を経て半導体装置を製造する。
本実施の形態5と前記実施の形態1,2とを組み合わせても良い。すなわち、基板1Subの主面に窪み13を形成した後、p型の半導体領域4を形成する。続いて、絶縁膜23を堆積した後、コントロールゲート電極CGを形成する。
また、本実施の形態5と前記実施の形態4とを組み合わせても良い。この場合、絶縁膜19,23を別々に堆積して各々の目的を達成させるようにしても良いが、保護用の絶縁膜23を前記実施の形態4のp型の半導体領域4を形成する際のスペーサ用の絶縁膜19として用いても良い。すなわち、図8〜図11の工程後、基板1Subの主面上に絶縁膜23を堆積し、さらに、前記実施の形態4と同様に不純物を導入してp型の半導体領域4を形成する。これ以降は上記図45以降で説明したのと同じである。この場合、保護用の絶縁膜23とスペーサ用の絶縁膜19とを別々に堆積する場合に比べて半導体装置の製造工程を低減でき、半導体装置の製造時間の短縮およびコストの低減が可能となる。
(実施の形態6)
本実施の形態6は、前記実施の形態5の変形例であって、前記保護用の絶縁膜23を同一基板上の他のMISのゲート絶縁膜により形成する場合の一例を説明する。本実施の形態6によれば、工程の兼用ができるので、半導体装置の製造時間の短縮およびコストの低減が可能となる。
図53〜図61は、本実施の形態6の半導体装置の製造工程中の基板1Subの要部断面図であって、各図の左側はメモリ領域の要部断面図を示し、右側は周辺回路用の高耐圧nMIS形成領域の要部断面図を示している。
図53は、前記図8〜図11で説明した工程後、前記図44で説明した工程を経た後の基板1Sub(半導体ウエハ)の要部断面図を示している。また、図53の右側において、基板1Subの主面には、例えばSGI(Shallow Groove Isolation)と称する溝型の分離部25が形成されている。この分離部25は、基板1Subに掘られた溝内に、例えば酸化シリコン膜が埋め込まれることで形成されている。この分離部25により活性領域が規定されている。
まず、このような基板1Subに対して酸化処理を施すことにより、図54に示すように、高耐圧nMISのゲート絶縁膜23aを基板1Subの主面に形成する。ゲート絶縁膜23aは、例えば厚さ2〜8nm程度の酸化シリコンからなり、高耐圧nMIS形成領域のみならず、メモリ領域の基板1Subの主面にも形成されている。続いて、図55に示すように、基板1Subの主面上に、例えば厚さ13nm程度の酸化シリコンからなる絶縁膜23bをCVD法等により堆積した後、絶縁膜23bの膜質を向上させるべくアニール処理を施す。絶縁膜23a,23bは、高耐圧nMISのゲート絶縁膜となる。絶縁膜23bを堆積することにより、高耐圧nMISのゲート絶縁耐圧を向上させることができる。その後、基板1Subの主面上に、メモリ領域の選択用のnMIS形成領域が露出され、高耐圧nMIS形成領域を覆うようなレジストパターンPR6をリソグラフィ技術により形成した後、これをエッチングマスクとしてエッチング処理を施すことにより、図56に示すように、絶縁膜23a,23bをパターニングする。メモリ領域の選択用のnMIS形成領域では、絶縁膜23aが除去され、基板1Subの主面が露出される。この後、前記実施の形態1のように選択用のnMIS形成領域の基板1Subの主面を部分的にエッチングして窪み13を形成してもよいのは勿論である。
次いで、図57に示すように、基板1Subに対して酸化処理を施すことにより、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜3を形成する。このゲート絶縁膜3は、選択用のnMIS等のような低耐圧のMISのゲート絶縁膜となる。ゲート絶縁膜3の厚さは、上記高耐圧nMISのゲート絶縁膜23a,23bよりも薄く、例えば2〜5nm程度である。続いて、基板1Subの主面上に、例えば低抵抗ポリシリコンからなる導体膜21をCVD法等により堆積した後、その上にレジストパターンPR7をリソグラフィ技術により形成する。レジストパターンPR7は、メモリ領域のコントロールゲート電極形成領域と、高耐圧nMIS形成領域のゲート電極形成領域を覆い、それ以外が露出されるようなパターンとされている。その後、レジストパターンPR7をエッチングマスクとして、エッチング処理により導体膜21をパターニングすることにより、図58に示すように、メモリセルの選択用のnMISのコントロールゲート電極CGおよび周辺回路の高耐圧nMISのゲート電極HGを形成する。この時、メモリゲート電極MGの片側側面のサイドウォール8の側面下部側に導体膜21aが残される。本実施の形態5では、導体膜21aが上記絶縁膜23a,23b上に残される。そこで、導体膜21aを除去するため、基板1Subの主面上に、導体膜21aが露出され、それ以外の領域が覆われるようなレジストパターンPR8を形成した後、これをエッチングマスクとして、前記実施の形態5の導体膜21aの除去処理と同様のエッチング処理を施すことにより、導体膜21aを図59に示すように除去する。これにより、ポリシリコンからなるエッチ残りの導体膜21aの下層(導体膜21aと基板1Subとの間)にゲート絶縁膜3よりも厚い絶縁膜23a,23bの積層膜が設けられているので、基板1Subの主面が保護され、基板1Subの主面がエッチングされないようにすることができる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルのドレイン電流Idsの低下を防止できるので、スプリットゲート電極型のメモリセルの高速動作(データの高速読み出し)を維持できる。
次いで、レジストパターンPR8を除去した後、図60に示すように、絶縁膜23a,23bは残したまま、例えばヒ素をイオン注入法等により基板1Subに導入することにより、メモリセル用および高耐圧nMIS用のn−型の半導体領域2aを同時に形成する。続いて、基板1Subの主面上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜をCVD法等によって堆積した後、これを異方性のドライエッチング法によりエッチバックすることにより、図61に示すように、コントロールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの側面側と、高耐圧nMISのゲート電極HGの側面にサイドウォール9を同時に形成する。この時、サイドウォール9から露出する絶縁膜23a,23bも除去してしまう。その後、例えばリンをイオン注入法等により基板1Subに導入することにより、メモリセル用および高耐圧nMIS用のn+型の半導体領域2bを同時に形成する。このようにしてメモリセルMC1のドレイン領域Drmおよびソース領域Srmと、高耐圧nMISQnhのドレイン領域Drhおよびソース領域Srhとを同時に形成する。
このように本実施の形態6では、保護用の絶縁膜23a,23bを高耐圧nMISQnhのゲート絶縁膜23a,23bで形成することにより、工程の兼用が可能となるので、半導体装置の製造時間の短縮およびコストの低減が可能となる。
上記本実施の形態6では、エッチ残りの導体膜21aを除去する時の保護用の絶縁膜を酸化法で形成された絶縁膜23aとCVD法で形成された絶縁膜23bとの積層膜で形成した場合について説明したが、保護用の絶縁膜を、絶縁膜23a,23bのいずれか一方で形成しても良い。
(実施の形態7)
前記実施の形態5,6の保護用の絶縁膜をCVD法で形成する場合は、メモリセルの最初に形成されるゲート電極上が保護用の絶縁膜で覆われるので、そのゲート電極上にシリサイド層を形成することができない。
そこで、本実施の形態7では、最初に形成されるゲート電極のうち、第1層配線等のような配線が接触し接続されるコンタクトホール部分にシリサイド層を形成する。これにより、最初に形成されるゲート電極と第1層配線等の配線との接触抵抗を低減できる。
図62は、本実施の形態7の具体的な一例のメモリ領域の要部平面図を示している。図62のX1−X1線の断面図に相当する箇所が、前記実施の形態5の図44〜図52または前記実施の形態6の図53〜図61の左側の断面図である。コントロールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの上面において、サリサイドプロセスによりシリサイド層14が形成された箇所に斜線のハッチングを付す。後から形成されるコントロールゲート電極CGの上面には全てシリサイド層14が形成されている。一方、最初に形成されるメモリゲート電極MGの上面は、コンタクトホールCNTが配置される領域のみにシリサイド層14が形成されている。これにより、コンタクトホールCNT内のプラグPLGとメモリゲート電極MGとの接触抵抗を低減できる。なお、コンタクトホールCNTは第1層配線と電気的に接続されている。
このような構成を形成するには、前記図45および図46で説明した工程の中で、図45のレジストパターンPR5のパターン形状を、メモリゲート電極MGの上記コンタクトホールCNTが配置される領域の保護用の絶縁膜23部分も露出されるようなパターン形状とし、エッチング処理により、そのメモリゲート電極MGの上記コンタクトホールCNTが配置される領域の保護用の絶縁膜23部分および絶縁膜7部分も除去しておく。そして、前記図51で説明した工程後、コントロールゲート電極CGの上面と、メモリゲート電極MGの上記コンタクトホールCNTが配置される領域とが露出された状態でサリサイドプロセスを施すことにより、コントロールゲート電極CGの上面全ておよびメモリゲート電極MGの上面の上記コンタクトホールCNTが配置される領域にシリサイド層14を形成する。なお、このような方法は前記実施の形態6に本実施の形態7を適用する場合も同様である。
なお、シリサイド層14の形成方法としては、基板1Subの主面上の全面に、例えば、コバルト(Co)膜、チタン(Ti)膜またはニッケル(Ni)等の高融点金属膜をスパッタ法で形成し、その後、熱処理を施してコントロールゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの多結晶シリコン膜と高融点金属膜とを反応させる。その後、未反応の高融点金属膜を除去し、金属・半導体反応層であるシリサイド層14が形成される。
また、本実施の形態7および前記実施の形態5,6は、前記図4および図5のスプリットゲート型のメモリセルにも適用できる。
(実施の形態8)
本実施の形態8は、前記スプリットゲート電極型のメモリセルについて本発明者が初めて見出した他の問題を解決するための一例を説明するものである。その問題は、電荷蓄積層CSLの幅(短方向寸法)がメモリゲート電極の幅(短方向寸法)よりも大きくなる結果、消去動作が困難になる、という問題である。
まず、その問題を図63〜図65により説明する。図63は、メモリゲート電極MGの形成工程後の基板1Subの要部断面図を示している。この工程では、通常、低抵抗ポリシリコン等からなるメモリゲート電極MGをドライエッチング法で形成した後、電荷蓄積層CSLをウエットエッチングで選択的にエッチングして形成している。ここでは、メモリゲート電極MGの幅方向(基板1Subの主面に沿う方向、短方向)端部と、電荷蓄積層CSLの幅方向端部とが一致またはほぼ一致するような状態でエッチングが行われている。しかし、このような状態でその後の酸化工程を経ると、図64および図65に示すように、メモリゲート電極MGの幅方向両端部が酸化されてしまう(図65の矢印参照)一方で電荷蓄積層CSLは窒化シリコンからなるので酸化されず残される結果、メモリゲート電極MGの実質的な幅(短方向寸法)が電荷蓄積層CSLの幅よりも短くなり、電荷蓄積層CSLの幅方向両端部がメモリゲート電極MGの幅方向外側にはみ出したような形になる。このような電荷蓄積層CSLの両端のはみ出し部分Eは、メモリゲート電極MGからの物理的な距離が遠くなるので、メモリゲート電極MGからの電界の影響を受け難くなる。このため、メモリセルMCの消去動作の際、電荷蓄積層CSLの両端のはみ出し部分Eに蓄積された電荷を引き抜き難くなる、という問題が生じる。この問題は、メモリセルMCの消去動作に際して、電荷蓄積層CSLの電荷を引き抜く方向によらない。すなわち、本実施の形態においてはメモリゲート電極MGに電子を引き抜くことで消去動作を行なっているが、基板1Subに電子を引き抜くようなメモリセルにおいても同様の問題が発生する。なお、この問題は、前記図4および図5のメモリセルでも生じる。
そこで、本実施の形態8では、上記電荷蓄積層をオーバーエッチングして上部のメモリゲート電極よりも小さくする工程を有するものである。これにより、最終的にメモリゲート電極の外側に電荷蓄積層の一部がはみ出さないようにすることができる。すなわち、データの消去(電荷の引き抜き)が難しくなるような部分が電荷蓄積層に形成されないようにすることができる。したがって、スプリットゲート電極型のメモリセルの動作速度(データの消去速度)を向上させることができる。また、消去動作不良の発生率を低減できるので、半導体装置の歩留りを向上させることができる。この具体例を図66〜図70の半導体装置の製造工程中におけるメモリ領域の基板1Subの要部断面図により説明する。
まず、メモリセルのメモリゲート電極の形成工程では、電荷蓄積層(窒化シリコン)とメモリゲート電極(ポリシリコン)とを同時にエッチングするのが難しいので、2段階でエッチング処理を行う。すなわち、前記実施の形態1の図8および図9で説明した工程を経た後、図66に示すように、レジストパターンPR9をエッチングマスクとしたドライエッチング法により、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜5tをパターニングする。この時は、ポリシリコンと窒化シリコンとのエッチング選択比を大きくとり、ポリシリコンの方がエッチングされ易い条件でエッチング処理を行う。
続いて、レジストパターンPR9を除去した後、基板1Subに対して熱りん酸等を用いたウエットエッチング処理を施すことにより、図67に示すように、電荷蓄積層CSLを選択的にエッチングする。この時、本実施の形態8では、電荷蓄積層CSLの幅方向両端の露出側面が、メモリゲート電極MGの幅方向両端の露出側面よりも内側に位置するようにオーバーエッチング処理を施す。これにより、その後の酸化処理工程でメモリゲート電極MGの幅方向両端の側面部分が酸化されることに起因して電荷蓄積層CSLの幅方向両端部の側面がメモリゲート電極の幅方向両端の側面の外側に位置してしまうような不具合を防止することができる。このような電荷蓄積層CSLのサイドエッチング量(アンダーカット量またはオーバーエッチング量)は、熱りん酸によるウエットエッチング時間を調節ことで変えることができる。
その後、前記実施の形態1で説明したのと同様の工程を経て、図68および図69に示すように、スプリットゲート型のメモリセルMC1を形成する。図69は、図68の要部拡大断面図を示している。本実施の形態8の場合も、図68および図69に示すように、電荷蓄積層CSLのパターニング後の酸化処理によりメモリゲート電極MGの側面部分が酸化され、メモリゲート電極MGの幅方向寸法が設計値より若干小さくなっている。上記のように本実施の形態8では、メモリゲート電極MGが酸化により小さくなってしまうのを見越して電荷蓄積層CSLの幅方向寸法を小さくしてあるので、最終的に、電荷蓄積層CSLの幅方向両端部の側面が、メモリゲート電極MGの幅方向両端部の側面とほぼ一致しており、メモリゲート電極MGの外側に、はみ出さないようにされている。このため、スプリットゲート型のメモリセルMC1の消去動作に際して、電荷の引き抜き難い箇所が電荷蓄積層CSLに存在しないので、データの消去速度を向上させることができる。また、電荷の引き抜き難い箇所が電荷蓄積層CSLに存在しないので、消去動作不良の発生率を低減でき、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
以上の説明では、最終的に電荷蓄積層CSLの幅方向両端部が、メモリゲート電極MGの幅方向両端部とほぼ一致している場合について説明したが、本実施の形態8は、電荷蓄積層CSLがメモリゲート電極MGの外側にはみ出していなければ良く、図70のメモリセルの要部拡大断面図に示すように、最終的に電荷蓄積層CSLの幅がメモリゲート電極MGの幅よりも小さく、電荷蓄積層CSLの幅方向両端部が、メモリゲート電極MGの幅方向両端部よりも内側に位置している構造を排除するものではない。この構造の場合は、電荷蓄積層CSLの平面全域が、メモリゲート電極MGの平面全域に内包されるようになる。このため、消去時の電荷の引き抜きの確実性を向上させることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態9は、前記実施の形態8の変形例であって、前記図4のスプリットゲート電極型のメモリセルMC2の形成方法に前記実施の形態8の方法を適用した場合の一例を説明する。
まず、前記図23〜図25で説明した工程を経た後、図71に示すように、コントロール電極CGをマスクとして自己整合的にn型の半導体領域6を基板1Subに形成する。続いて、絶縁膜5b、電荷蓄積層CSL、絶縁膜5tおよび導体膜11をCVD法等により下層から順に基板1Sub上に堆積した後、その上に、メモリゲート電極形成用のレジストパターンPR10をリソグラフィ技術により形成する。その後、そのレジストパターンPR10をエッチングマスクとして、そこから露出する導体膜11および絶縁膜5tを前記実施の形態8と同様にエッチングした後、レジストパターンPR10を除去し、図72に示すように、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜5tをパターニングする。
次いで、前記実施の形態8と同様に、電荷蓄積層CSLをウエットエッチング処理により選択的にエッチングすることにより、図73に示すように、電荷蓄積層CSLをパターニングする。この時、本実施の形態9でも、電荷蓄積層CSLの露出両側面が、メモリゲート電極MGの露出側面よりも内側に位置するようにオーバーエッチング処理を施す。これにより、電荷蓄積層CSLの幅方向両端部の側面がメモリゲート電極MGの幅方向両端部の側面の外側に位置してしまうような不具合を前記実施の形態8と同様に防止することができる。
その後、前記実施の形態3で説明したのと同様の工程を経て、図74に示すように、スプリットゲート電極型のメモリセルMC2を形成する。本実施の形態9の場合も、図74に示すように、電荷蓄積層CSLのパターニング後の酸化処理によりメモリゲート電極MGの側面部分が酸化され、メモリゲート電極MGの幅方向寸法が設計値より若干小さくなっているが、上記のように本実施の形態9でも、それを見越して電荷蓄積層CSLの幅方向寸法を小さくしてあるので、最終的に、電荷蓄積層CSLの幅方向両端部の側面が、メモリゲート電極MGの幅方向両端部の側面とほぼ一致しており、メモリゲート電極MGの外側に、はみ出さないようにされている。これにより、スプリットゲート型のメモリセルMC2の消去動作に際して、前記実施の形態8と同様にデータの消去速度を向上させることができる。また、消去動作不良の発生率を低減でき、半導体装置の歩留りを向上させることができる。もちろん本実施の形態9でも図70で説明したように最終的に電荷蓄積層CSLの両端部が、メモリゲート電極MGの両端部よりも内側に位置するようにしても良い。
(実施の形態10)
本実施の形態10は、前記実施の形態8の変形例であって、前記図5のスプリットゲート電極型のメモリセルMC3の形成方法に前記実施の形態8の方法を適用した場合の一例を説明する。
まず、前記実施の形態9と同様に前記図71の導体膜11の堆積工程までを経た後、その導体膜11を異方性のドライエッチング処理によりエッチバックすることにより、図75に示すように、コントロールゲート電極CGの側面側に、導体膜11のサイドウォール11aを形成する。続いて、図76に示すように、基板1Subの主面上に、メモリゲート電極MG形成用のレジストパターンPR11をリソグラフィ技術により形成する。その後、そのレジストパターンPR11をエッチングマスクとして、そこから露出する導体膜11aおよび絶縁膜5tを前記実施の形態8,9と同様にエッチングしてメモリゲート電極MG(11a)および絶縁膜5tをパターニングする。
次いで、レジストパターンPR11を除去した後、前記実施の形態8,9と同様に、電荷蓄積層CSLをウエットエッチング処理により選択的にエッチングすることにより、図77に示すように、電荷蓄積層CSLをパターニングする。この時、本実施の形態10では、電荷蓄積層CSLの露出両側面が、絶縁膜5tの下に入り込み窪むようにオーバーエッチング処理を施す。これにより、電荷蓄積層CSLの幅方向片端部の側面がメモリゲート電極MGの幅方向片端部の側面の外側に位置してしまうような不具合を前記実施の形態8,9と同様に防止することができる。
その後、前記実施の形態3で説明したのと同様の工程を経て、図78に示すように、スプリットゲート型のメモリセルMC3を形成する。本実施の形態10の場合も、図78に示すように、電荷蓄積層CSLのパターニング後の酸化処理によりメモリゲート電極MGの表面部分が酸化され、メモリゲート電極MGの幅方向寸法が設計値より若干小さくなっているが、上記のように本実施の形態10でも、それを見越して電荷蓄積層CSLの幅方向寸法を小さくしてあるので、最終的に、電荷蓄積層CSLの幅方向片端部の側面が、メモリゲート電極MGの幅方向片端部の側面とほぼ一致しており、メモリゲート電極MGの外側に、はみ出さないようにされている。これにより、スプリットゲート型のメモリセルMC3の消去動作に際して、前記実施の形態8,9と同様にデータの消去速度を向上させることができる。また、消去動作不良の発生率を低減でき、半導体装置の歩留りを向上させることができる。もちろん本実施の形態10でも図70で説明したように最終的に電荷蓄積層CSLの片端部の側面が、メモリゲート電極MGの片端部の側面よりも内側に位置するようにしても良い。
(実施の形態11)
本実施の形態11は、前記スプリットゲート型のメモリセルについて本発明者が初めて見出した他の問題を解決するための一例を説明するものである。その問題は、メモリゲート電極の不純物濃度が高いとデータの消去時間が遅くなる、という問題である。
図79は、スプリットゲート電極型のメモリセルの消去特性がメモリゲート電極の不純物濃度にどのように依存するかを示している。メモリゲート電極材料は、例えばn型の低抵抗ポリシリコンを用いた。また、データ記憶に寄与する電荷は電子とされている。図79中の矢印で示すように、メモリゲート電極への不純物イオンの打ち込み濃度を増加していくと、消去速度が遅くなることが分かる。これは、メモリゲート電極側にデータ記憶に寄与する電子を引き抜く消去方式の場合、電子の引き抜きによる効果と、メモリゲート電極側から注入された正孔との再結合による効果との両方が消去動作に影響を与えているためと想定される。図80にエネルギーバンド図を例示する。白丸が正孔、黒丸が電子を示している。消去速度が変わるのは、メモリゲート電極MGから注入される正孔が電荷蓄積層CSLから引き抜かれた電子と再結合して電子・正孔対を生成したり、電荷蓄積層CSL中の電子がメモリゲート電極MGの近傍の絶縁膜5t中の欠陥準位を介してメモリゲート電極MG側に流れたり(トンネル現象)すること等に起因すると考えられる。したがって、メモリゲート電極MGの絶縁膜5tとの界面を空乏化させることにより消去速度を制御することが可能である。
具体例として前記実施の形態1〜10のメモリセルMCのメモリゲート電極MGをn型のポリシリコンで形成し、そのメモリゲート電極MG中のn型の不純物の濃度を下げる。または、前記実施の形態1〜10のメモリセルMCのメモリゲート電極MGをn型のポリシリコンで形成し、メモリゲート電極MGの絶縁膜5tとの界面領域の不純物濃度を、同じメモリゲート電極MGの他の領域の不純物濃度よりも低くする。すなわち、同じメモリゲート電極MG中に意図的に不純物濃度差が形成されており、そのメモリゲート電極MGの電荷蓄積層CSL側の一領域(第1領域)の不純物濃度がそれ以外の領域(第2領域)に比較して相対的に低くなっている。このような構成にすることにより、電荷蓄積層CSL中の電子の引き抜きと、メモリゲート電極MG側からの正孔の注入が生じてデータ記憶に寄与する電子と再結合することとの両方の作用によりデータ消去が進められるので、消去速度を速くすることが可能となる。また、この場合も消去動作不良の発生率を低減できるので、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
本発明者の検討によれば、メモリゲート電極MGの全体または上記絶縁膜5tとの界面領域のn型不純物の濃度は、例えば1×1018/cm3〜2×1020/cm3程度、好ましくは8×1019/cm3〜1.5×1020/cm3程度とされている。この下限値より低いと空乏化したり、メモリゲート電極MGの抵抗値が増えたりして、消去を含めた他の動作上の問題が生じるためであり、上記上限値よりも高いと上記消去動作上の問題が生じるからである。
また、本発明者が検討した一般的なスプリットゲート電極型のMONOS構造のメモリセルでは、そのメモリゲート電極を、周辺回路等を構成する他のMISのゲート電極と同工程で形成しているので、そのメモリゲート電極中に含まれるn型不純物の濃度が、例えば2.5×1020/cm3以上であり本実施の形態11よりも高くなっている。これに対して、本実施の形態11では、メモリゲート電極MGと上記他のMISのゲート電極とを別々に形成する。そして、メモリゲート電極MGの不純物濃度を上記のように低くする。具体的にはメモリゲート電極MGとなる相対的に低濃度のn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜と、上記他のMISのゲート電極となる相対的に高濃度のn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜とを別々にCVD法によって形成し、その後、パターニングすることで形成する。もちろん、メモリゲート電極MGと同一基板上の上記他のMISのゲート電極とを同時にパターニングし、後ほどの工程でイオン注入法等により他のMISのゲート電極側にn型不純物を導入し、その他のMISのゲート電極中のn型不純物の濃度を相対的に高くするようにしても良い。このイオン注入法による形成法の方が、上述の別々にCVD法で形成するよりも、上記他のMISのゲート電極の不純物濃度の制御が容易であるというメリットがある。いずれにしても、本実施の形態11では、メモリセルMCのメモリゲート電極MGのn型不純物の濃度と、同一基板上に形成された上記他のMISのゲート電極のn型不純物の濃度とが意図的に異なっており、メモリゲート電極MGのn型不純物の濃度の方が、上記他のMISのゲート電極のn型不純物の濃度よりも意図的に低くなっている。
また、同様の考えから、前記実施の形態1〜10のメモリセルMCのメモリゲート電極MGをp型にすることにより、上記と同様の作用により消去速度を速くすることが可能となる。本発明者の検討によれば、メモリゲート電極MGをp型とした場合、メモリゲート電極MGのp型不純物の濃度は、例えば1×1018/cm3程度以上とすることが好ましい。したがって、この場合も同一基板に形成された他のMISにp型のゲート電極を持つMISがある場合に、メモリセルMCのメモリゲート電極MG中のp型不純物の濃度の方が、上記他のMISのp型のゲート電極中のp型不純物の濃度よりも意図的に高くなるような場合もある。
(実施の形態12)
本実施の形態12では、前記実施の形態11で説明した、同じメモリゲート電極MG中に意図的に不純物濃度差が形成されており、そのメモリゲート電極MGの電荷蓄積層CSL側の一領域の不純物濃度が相対的に低くなっている場合を説明する。
図81は、本実施の形態12のメモリセルMC1の要部断面図の一例を示している。ここでは、メモリゲート電極MGが、導体層11a,11bの積層構成を有している。導体層11a,11bはいずれもn型の低抵抗ポリシリコンからなるが、その不純物濃度が意図的に異なっており、下層側、すなわち、絶縁膜5tに接する側の導体層(第1領域)11aのn型不純物の濃度の方が、その上の導体層(第2領域)11bのn型不純物の濃度よりも低くなっている。これにより、前記実施の形態11と同様に消去速度を速くすることができる。また、半導体装置の歩留りを向上させることができる。さらに、本実施の形態12によれば、前記実施の形態11ではメモリゲート電極MG全体が低濃度のn型不純物からなる導電膜で構成されている場合も例示したが、メモリゲート電極MGに不純物濃度の高い導体層11bが設けられているので、メモリゲート電極MGの抵抗や配線との接触抵抗を低減できる。
このような導体層11a,11bを形成するには、例えば次の第1、第2の方法を挙げることができる。第1の方法は、導体膜11a,11bをCVD法により別々に堆積する方法である。すなわち、図9等で説明した導体膜11の堆積工程の時に、導体膜11a,11bを下層から順に堆積する。この時、導体膜11a,11b中の各々のn型不純物の濃度を調節する。その後、導体膜11b上に絶縁膜7を堆積後、その積層膜を前記と同様にパターニングすることにより、メモリゲート電極MGを形成する。第2の方法は、イオン注入法により不純物濃度分布を形成する方法である。すなわち、図9等で説明したように導体膜11を堆積した後、その導体膜11にイオン注入法等によりn型不純物を導入する際に、そのイオン打ち込みエネルギーおよびドーズ量等の条件を変えて導入することにより、導体膜11中にn型不純物濃度の異なる導体層11a,11bを形成する。その後、導体膜11上に絶縁膜7を堆積後、その積層膜を前記と同様にパターニングすることにより、メモリゲート電極MGを形成する。このイオン注入法を採用した場合、各々の導体層11a,11bの不純物濃度や形成位置を制御し易いので、導体層11a,11bを、より狙いに近い状態で形成することができる。
本実施の形態12も導体層11a,11bをp型の低抵抗ポリシリコンで形成しても良い。この場合、絶縁膜5tに接する下層側の導体膜11aのp型不純物の濃度の方が、上層側の導体膜11bのp型不純物の濃度よりも高くされている。
(実施の形態13)
本実施の形態13では、前記実施の形態12の変形例を説明する。
図82は、本実施の形態13のメモリセルMC1の要部断面図の一例を示している。ここでは、メモリゲート電極MGが、導体層11a,11b,11cの3層の積層構成を有している。導体層11a,11b,11cはいずれもn型の低抵抗ポリシリコンからなるが、その不純物濃度が意図的に異なっており、最下層(すなわち、絶縁膜5tに接する側)の導体層(第1領域)11aと、最上層の導体層11cのn型不純物の濃度の方が、中間の導体層(第2領域)11bのn型不純物の濃度よりも低くなっている。導体膜11a,11cのn型不純物の濃度は同じでも異なっていても良い。これにより、前記実施の形態11,12と同様に消去速度を速くすることができる。また、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
最上の導体層11cの濃度を低減した理由は、最上に高濃度のポリシリコン層が存在すると、洗浄処理後に高濃度のポリシリコン層の表面にウォーターマークが残ったり、高濃度のポリシリコン層に異常酸化が生じたりする場合があるので、それを回避するためである。すなわち、本実施の形態13によれば、最上の導体層11cの不純物濃度を低くしたことにより、半導体装置の製造工程中の不具合を回避できるので、半導体装置の信頼性および歩留りを向上させることができる。
上記導体層11a,11b,11cの形成方法は、前記実施の形態12と同じなので説明を省略する。
本実施の形態13も導体層11a,11b,11cをp型の低抵抗ポリシリコンで形成しても良い。この場合、絶縁膜5tに接する下層側の導体膜11aのp型不純物の濃度の方が、上層側の導体膜11b,11cのp型不純物の濃度よりも高くされている。
(実施の形態14)
本実施の形態14では、前記実施の形態12の変形例を説明する。
図83は、本実施の形態14のメモリセルMC1の要部断面図の一例を示している。ここでは、メモリゲート電極MGが、導体層11とシリサイド層14との積層構成を有している。導体膜11は、例えばn型の低抵抗ポリシリコンからなり、そのn型不純物の濃度が前記実施の形態11,12で説明したように低くされている。シリサイド層14は、例えばコバルトシリサイドまたはタングステンシリサイド等からなる。このように、導体膜11中のn型不純物の濃度を前記実施の形態11,12で記載したように低くしたとしても、導体膜11上に低抵抗なシリサイド層14を設けることにより、メモリゲート電極MGの総抵抗を低く抑えることができる。ただし、本実施の形態14でも、導体膜11をp型のポリシリコンで形成し、その上にシリサイド層14を設ける構造としても良い。
(実施の形態15)
本実施の形態15では、前記実施の形態12のさらに他の変形例を説明する。
図84は、本実施の形態15のメモリセルMC1の要部断面図の一例を示している。ここでは、メモリゲート電極MGが、導体層11と、バリアメタル層28と、メタル層29との3層の積層構成を有している。導体膜11は、例えばn型の低抵抗ポリシリコンからなり、そのn型不純物の濃度が前記実施の形態11,12で説明したように低くされている。バリアメタル層28は、例えば窒化タングステン(WN)等からなる。また、メタル層29は、例えばタングステン等からなる。このように、導体膜11中のn型不純物の濃度を前記実施の形態11,12で記載したように低くしたとしても、導体膜11上に低抵抗なメタル層29を設けることにより、メモリゲート電極MGの総抵抗を大幅に低くすることができる。ただし、本実施の形態15でも、導体膜11をp型のポリシリコンで形成し、その上にバリアメタル層28を介してメタル層29を設ける構造としても良い。
(実施の形態16)
本実施の形態16は、前記スプリットゲート電極型のメモリセルについて本発明者が初めて見出したさらに他の問題を解決するための一例を説明するものである。その問題は、メモリセルのドレイン電流の劣化が生じ易い、という問題である。
電荷蓄積層CSLまたは絶縁膜5tの材料として特に酸窒化シリコン(SiON)を使用するMONOS構造のメモリセルでは、消去動作により界面準位が形成された書き換え動作を行うとメモリセルのドレイン電流Idsが低下する場合がある。このため、メモリセルがオン状態となる時の電流劣化を考慮してメモリセルを設計する必要がある。
すなわち、本実施の形態16では、電荷蓄積層に蓄えられた電荷をメモリゲート電極側に引き抜く動作によりデータの消去を行うスプリットゲート電極型のメモリセルにおいて、書き込みレベルの最も少ない状態が、メモリセルの初期しきい値電圧Vthよりも高い状態となるようにする。これにより、データの書込および消去に伴うドレイン電流の劣化を許容できる。したがって、メモリセルのデータの書き換え補償回数を向上でき、メモリセルの寿命を向上させることが可能となる。
本実施の形態16のメモリセルの構造(読み出し、書き込みおよび消去動作を含む)は、前記実施の形態1〜15で説明したのと同じである。図85は、本実施の形態16のメモリセルの書き込みおよび消去状態を示している。初期状態Inは、しきい値電圧Vthが低い状態であるが、一度書き込んだ後の消去状態を初期状態Inと同じ状態にせず、それよりも高い状態とする。多値記憶の場合には、最も書き込みレベルの低い状態が、初期状態Inよりも高い状態とする方式である。この方式の場合、書き換え等の劣化によりドレイン電流Idsが減少した場合でも、深く消し込む余裕があるために、半導体装置の動作上の劣化が見えない状態とすることができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば前記実施の形態1〜16では、MONOS構造のメモリセルに適用した場合について説明したが、例えば基板上に、酸化シリコン膜、電荷蓄積用の窒化シリコン膜(または酸窒化シリコン膜)および低抵抗ポリシリコン膜(または上記と同様のポリサイドやポリメタル構造の膜)を下層から順に積層した構成を有する、MNOS(Metal Nitride Oxide Semiconductor)構造のメモリセルに適用することもできる。
また、前記実施の形態1〜10は、消去動作に際してデータ記憶に寄与する電荷をメモリゲート電極に引き抜くメモリセル構造とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、消去動作に際してデータ記憶に寄与する電荷を基板側に引き抜くメモリセル構造のものにも適用できる。
また、前記実施の形態1〜16では、電荷蓄積層を窒化膜で形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば酸化シリコン膜中にドット状に形成された複数のナノ結晶を有する構成としても良い。上記ナノ結晶は、一般的な不揮発性メモリの浮遊ゲート電極と同様に、データに寄与する電荷が捕獲される部分である。各ナノ結晶は、例えばCVD法により形成されている。各ナノ結晶は、物理的に離れた状態で形成されている(すなわち、離散的なトラップ準位を有する)ので、データの保持時にリークパスがあっても一部の電荷しか失われず、データ保持特性に優れている。また、データの消去および書き込み時においても、特性が多くのナノ結晶間で平均化されるので、ナノ結晶の直径や絶縁膜などの構造ばらつき、あるいは確率的振る舞いの影響を受け難いため、このメモリセルを有する半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
また、前記実施の形態1〜16の各々を、他の実施の形態の一つまたは2つ以上の複数個と組み合わせてもよいのは勿論である。
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野であるICカードに適用した場合について説明したが、それに限定されるものではなく、例えば携帯電話等のような移動体通信機器やパーソナルコンピュータ等のような情報処理装置に内蔵されるメモリにも適用できる。