JP5564200B2 - キトサン微粒子分散液、その用途及びその製造方法 - Google Patents
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Description
キトサンには、生体適合性が高いという優れた特性により、医薬分野及び化粧品分野での利用が期待されている。例えば、医療分野での創傷被覆剤・治癒促進剤・人工皮膚、化粧品分野での粉体特性改良剤・皮膚保湿剤などが挙げられる。
更には、キトサンの用途拡大や付加価値を高める目的で、キトサンの微粒子化についての試みが行われている。また、微粒子化したキトサンを安定した分散液として提供することで、微粉体飛散や混合ダマの発生を防止することが出来、製剤配合の際の汎用性も格段に広がるものとなる。
例えばキトサンの微粒子化についての試みについては、1)キトサン酸性水溶液を疎水性溶剤と混合し乳化することによりエマルションを形成させ、塩基又は有機溶剤中に注入し凝固させる方法(例えば、特許文献1参照)、2)低分子量のキトサンを酸性水溶液中に溶解して得た溶解液を塩基性溶液中で凝固析出することを特徴とする粒状キトサンの製造方法(例えば、特許文献2参照)、3)キトサンを酸性溶液中に溶解して得た溶解液を塩基性溶液中で凝固再成し、生成した凝固物を洗浄後粉砕分散せしめ、該分散液を高温雰囲気中に加圧空気と共に吐出乾燥することを特徴とする超微小球状キトサンの製造方法(例えば、特許文献3参照)、4)キトサン酸性溶液を、高温噴霧乾燥させ10μm以下のキトサン微粒子を得る方法(例えば、特許文献4参照)、5)キトサンの酸性水溶液をデカリン等疎水性分散媒中に分散させ、撹拌下に水分を蒸発させることを特徴とする粒状多孔質キトサンの製造方法(例えば、特許文献5参照)、6)キトサンの酸の水溶液に、硫酸塩を添加してキトサンを析出させるキトサン微粒子の製造方法(例えば、特許文献6参照)、7)キトサンのクエン酸水溶液に、クエン酸塩を添加してキトサンを析出させ、クエン酸塩を添加して析出させたキトサン懸濁液を加熱してキトサンを溶解、次いで冷却してキトサンを析出させることを特徴とする平均粒子径が1μm以下のキトサン微粒子の製造法(例えば、特許文献7参照)、8)イオン交換相分離法を利用したサブミクロンサイズのアニオン含有キトサン微粒子の製造法(例えば、特許文献8参照)、9)キトサンを希硫酸に加熱溶解し、その後冷却してキトサンを析出させるキトサン微粒子の製造法(例えば、特許文献9参照)が知られている。
また、実際に微粒子を透析精製する場合、微粒子がキトサン濃度0.5質量%以上の高濃度に分散する状態ではその液の粘性や、微粒子状態であるゆえの流動抵抗及び積層性が問題となる為、相当に(キトサン濃度が0.1〜0.2質量%程度となる様に)希釈しなければ精製の実施は不可能である。その結果、精製工程を経たキトサン微粒子液の濃度は希薄(キトサン濃度0.5質量%未満)にならざるを得ないものである。また、精製後の濃縮操作による高濃度化に関しては、微粒子の熱による状態変化及びサイズ的な濾別困難さから、産業的な実施は著しく困難若しくは多大なコストを要するものとなる。
そして、濃縮が達成された場合であっても、上記特許文献1〜9の方法で製造したキトサン微粒子は、0.5質量%以上のキトサンを含む高濃度域下での水分散性が悪く、その点においても汎用性に欠ける点に課題がある。特に、本願発明の近接技術を開示するものとなる特許文献1及び7の製造方法等により得たキトサン微粒子分散液は、分散性が悪く(キトサン濃度0.5質量%以上で静置しておくとキトサン微粒子が沈降し)、また、流動性の損失(キトサン濃度2質量%以上でゲル化し、ハンドリングに支障)が生じるなどの課題があることを、発明者等は試験実証している。
更には、従来の上記特許文献1〜9の方法で製造したキトサン微粒子の分散液は、熱に対する影響を受け状態が変化し易く、夏場の密閉環境下での移送には十分な温度管理を図る必要があった。
また、従来の技術において、キトサンと本発明の特定酸3種(クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸から選ばれる一つ以上の酸)を所定配合比で加熱溶解後、冷却することによりキトサン微粒子分散液を調製する方法についても知見はないものである。
更に、従来の技術において、微粉体キトサンと本発明の特定酸3種(クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸から選ばれる一つ以上の酸)を所定配合比で機械懸濁することによりキトサン微粒子分散液を調製する方法についても知見はないものである。
また、キトサンの繊維素材への利用については、抗酸化性を具備した植物組織破砕物や抽出物を含むキトサン微粒状物をセルロースビスコースに添加し紡糸する方法(例えば、特許文献11参照)が開示されているが、キトサン微粒子の分散液を繊維表面に塗布する方法についての記載はないものである。
また、皮脂成分の酸化分解や微生物分解により発生する脂質酸化臭〔例えば中高年世代特有のノネナール(加齢臭)〕の防臭・消臭に対して、例えば、抗酸化剤の使用(特許文献13)、縮合型カキタンニンを含有する消臭剤(特許文献14)、トレハロース体臭抑制剤(特許文献15)が知られているが、キトサン微粒子分散液により脂質酸化臭の発生を抑制する記載は全くないものである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) キトサン微粒子が、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する水溶液に分散していることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
(2) クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液によりキトサンを溶かす溶解工程と、該溶解工程より得られたキトサン溶液の酸溶媒を除去する脱酸工程とからなる方法にて製造したことを特徴とする上記(1)に記載のキトサン微粒子分散液。
(3) キトサンを、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経て製造したことを特徴とする上記(1)に記載のキトサン微粒子分散液。
(4) 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁して製造したことを特徴とする上記(1)に記載のキトサン微粒子分散液。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を、化粧品材料、食品材料、衛生用品材料、生活用品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、医療材料、衣料材料、工業材料に用いることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
(6) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を含有してなることを特徴とする消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤としてのキトサン微粒子分散液の用途。
(7) キトサンを、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経ることを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
(8) 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁することを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
本発明のキトサン微粒子分散液は、キトサン微粒子が、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する水溶液に、高濃度で存在した良分散性及び流動性を有していることを特徴とするキトサン微粒子分散液である。
すなわち、本発明のキトサン微粒子分散液は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸がキトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の特定存在割合となるように設定した水系(水溶液中)に、高濃度のキトサンを微小サイズの懸濁状態で分散させたものである。そして、本発明となるキトサン微粒子分散液の特性としては、第一に、経時的なキトサンの沈降が無く均一な分散状態を安定に維持できること(良分散性)、第二の特性として、高濃度でありながらゲル化の相転移現象が起こらず、分散液として流動性を失わない点が挙げられる。また、分散状態のキトサン微粒子が、熱に対して安定であるという特性もある。
これらの二つの分散液特性は、その分散系全体において、特定成分である「クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸」が、特定存在割合である「キトサン100質量部に対し、10(超)〜70質量部」となるように設定されることが必須となり達成される。本発明のキトサン微粒子分散液において、上記特定の酸が10質量部以下では流動性の低下が見られ、70質量部を超すと、後述する分散液の塗布特性が軽減することなどから、好ましくない。そして、特定成分であるクエン酸、酒石酸、リンゴ酸と類似物質となるその他の有機酸(例えば、乳酸、コハク酸など)では、キトサンに対するその存在割合をどのように変化させても、このような特性域は存在し得ないものである。また、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)をキトサン微粒子と共存させた場合であっても、上記の特定存在割合以外では、このような特性は発現し得ないものである。
更に、この特定存在割合については、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、キトサン100質量部に対し、20〜60質量部が好ましい。例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸20〜60質量部、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸30〜50質量部、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜30質量部となる。
上記特定の酸が20〜55質量部では高温下(40℃以上)でも分散液の塗布特性が安定に維持できる点で優れ、45〜60質量部では低温(20℃未満)での流動性が良くハンドリングし易い点で優れている。
なお、本発明において、「クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種」とは、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の使用について、これら特定3種の群から選ばれる1種(各単独)又は2種又は3種の酸を組み合わせて使用できることを意味するものである。
そして、本発明のキトサン微粒子分散液を構成するキトサン微粒子のサイズ(平均)としては、平均粒径0.1〜50μmのものが好ましい。この平均粒径が0.1μm未満では、ハンドリングが難しく、一方、50μmを超すサイズでは分散性が不安定となり好ましくないからである。そして、ハンドリングのし易さと高度利用が可能となることから判断するとシングルミクロンサイズ(平均粒径1〜9μm)が更に好ましく、そして、より分散安定性に優れる点で平均粒径1〜4μmが特に好ましい。
なお、本発明において、「平均粒径」とは、キトサン濃度0.5%(純水希釈)の測定試料条件で、動的光散乱法(DLS)及びレーザー回折法による粒子径測定値(平均値)を意味するものである。
このキトサン濃度が0.2質量%未満では、低濃度過ぎて機能性を利用した製剤化に不適となり、一方、60質量%を超す濃度では(流動性は有るが)高粘性となりハンドリングがし難くなり好ましくないからである。そして、コストとハンドリングの両面で優れる点で、2質量%以上、30質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以上、20質量%以下が特に好ましい。
この製造法によると、原料のキトサン(通常はフレーク状固体)は、酸溶媒の作用により一度完全に溶解した均一の溶液状態となり、その後、酸溶媒を除去する脱酸処理により均一性に優れたキトサン微粒子分散液に仕上げられる。このようにして得られる本発明のキトサン微粒子には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲で必ず含まれるものであり、系内中のキトサンは0.6〜5μmの微小サイズ分散状態で存在している。そして、この脱酸製造法におけるキトサン微粒子分散液製造の生産効率と再現性の良さを勘案すると、該特定成分の割合は20〜65質量部、キトサン微粒子のサイズは平均粒径で1〜4μmが好ましい条件といえる。例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸40〜65質量部、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸20〜50質量部、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜35質量部である。
また、脱酸製造法で得られたキトサン微粒子分散液は、含まれる灰分等の不純物割合が従来のキトサン微粒子分散液と比べ明らかに低く(乾物換算で、灰分が0〜0.1質量%未満)なる点にメリットがあり、仕上がり液のpHも3.6〜5.5の弱酸性となることから化粧品、医薬品の用途に好適となるのである。
そして、本発明では、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の特定3種の群から選ばれる1種又は2種又は3種の酸を組み合わせて使用できる。また、微粒子の用途の必要性に応じて、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の使用に加え、これら特定酸3種の群以外の酸1種以上と併用することもできる。この組合せについて、特に限定されるものではないが、好ましくは、キトサン溶解性が高く安全性の高い塩酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、イタコン酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、葉酸、更に好ましくは、食品添加物として認められている塩酸、酢酸、アスコルビン酸、イタコン酸、グルコン酸、コハク酸を使用することが好ましい。
また、溶解工程で用いる酸の濃度は、特に限定されないが、通常、0.1〜60質量%である。製造容量の制限から、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは、1質量%以上である。また、酸の水への溶解性より判断すると、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下で使用される。
撹拌装置についても、特に限定されず、例えば、回転羽根方式、超音波方式、水流循環方式、気泡方式等の種々のものが単独若しくは併せて利用できる。
そして、その脱酸工程の過程においては、キトサンは溶解状態を維持したままで全体系は溶液として進行するが、その終点付近では該特定酸の特異的な作用により溶解していたキトサンは粒子化に向かう状態へ移行し、最終的には、キトサンと該特定酸は相互作用し(終点を迎え)微粒子の状態で存在するようになり本発明の脱酸工程が完了する。なお、本発明となる脱酸方法で得られるキトサン微粒子は、水系において、高濃度(キトサン濃度として0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上)含まれ、且つ、沈降性の少ない高分散状態で存在するものとなる。
また、本発明のキトサン微粒子分散液は、従来のキトサン微粒子分散液と異なり灰分が殆ど若しくは全く含まれず、灰分量が乾物換算で0.1質量%未満(0%を含む)である。このような特徴のキトサン微粒子分散液は、キトサンの良溶媒であり且つ特定条件においてキトサンと微粒子を構成する作用を併せて持つ本発明の特定酸を採用することで初めて達成されるものである。また、プロセス的には脱酸工程(溶解系)における精製機能が効率的に進むためでもあり、本発明のキトサン微粒子分散液における灰分量は、乾物中で0.03質量%以下(0%を含む)が好ましく、0.01質量%以下(0%を含む)が更に好ましい。
従来の製造方法で調製されたキトサン微粒子は、そのプロセス(粒子化、中和、不溶化等の工程)で必然的に使用されるアルカリ等の薬剤により、本発明のキトサン微粒子分散液とは異なり灰分量が0.1質量%以上(乾物中)となることは避けられない点に課題があるものである。
なお、キトサン微粒子に含まれる「クエン酸、酒石酸、リンゴ酸量」は、キトサン微粒子を1N水酸化ナトリウム水溶液で処理した後、HPLC法で測定し各々求められる。キトサン微粒子の「キトサンの量」は、キトサン微粒子を硫酸分解によるケルダール法で測定したキトサンアミノ基由来の窒素量より、脱アセチル化度より導き出されるキトサンの単位構造を基に算出される。そして、キトサン微粒子の「灰分量」は、550℃による強熱残分試験法により求められる。
この製造法によると、原料のキトサン(通常はフレーク状固体)は、特定酸溶媒と加熱の作用により一度完全に溶解した均一の溶液状態となるが、その後、冷却、放冷により均一性に優れたキトサン微粒子分散液に仕上げられる。このようにして得られる本発明のキトサン微粒子分散液には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲で存在することが必須となり、系内中のキトサンは平均粒径0.6〜5μmの微粒子分散状態で存在している。そして、この加熱溶解製造法におけるキトサン分散液製造の生産効率と再現性の良さを勘案すると、該特定成分となる酸の割合は20〜60質量部、キトサン微粒子の平均粒径は1〜4μmが好ましい条件といえる。また、加熱溶解製造法では、pHがより中性に近い範囲(3.6〜6.3)まで得られることがメリットとなる。
なお、加熱溶解法に使用するキトサン、酸溶媒、撹拌等の製造条件(特定成分となる酸の割合と溶解温度以外)は上述の脱酸製造法の溶解工程と同様であり、その説明を省略する。
この加熱溶解製造法において、特定成分となる酸の割合と溶解温度としては、得られるキトサン微粒子分散液が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲(好ましくは20〜60質量部)で存在することが必須であればよく、上述の如く、使用する酸溶媒の溶解特性に合わせて任意に設定でき、例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸10(超)〜70質量部(好ましくは20〜60質量部)、溶解温度40〜95℃で加熱溶解、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸20〜50質量部(好ましくは30〜50質量部)、溶解温度40〜95℃で加熱溶解、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜35質量部(好ましくは20〜30質量部)、溶解温度40〜95℃で加熱溶解、その後、冷却、放冷により均一性に優れた目的のキトサン微粒子分散液が得られるものとなる。
なお、加熱溶解法、並びに、上記脱酸製造法で乳酸、コハク酸などの他の有機酸等を用いても(各酸の割合と溶解温度の組み合わせでも)、不溶であったり、溶液となり、目的のキトサン微粒子分散液は得られないものである。
また、微粉体キトサンのサイズとしては、平均粒径0.1〜50μmが好ましい。微粉体サイズが0.1μm未満では、ハンドリングが難しく、50μmを超すサイズでは、分散性が不安定となり好ましくないからである。更には、原料入手若しくは微粉化措置の難易度及び分散安定性から判断すると、1〜20μmが特に好ましい。
この微粉体懸濁製造法の具体的な操作一例としては、微粉体キトサンの100質量部を、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(キトサン100質量部に対して10[超]〜70質量部)を含む水溶液(150〜19,900質量部)に添加し、高速回転懸濁装置を用いて機械懸濁(10,000〜30,000rpm、10〜60分間)させる。上述の酸量については、酸種の特性に合わせて任意に設定でき、例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸10[超]〜70質量部、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸20〜50質量部、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜35質量部を含有させれば良い。
なお、微粉体懸濁製造法で乳酸、コハク酸などの他の有機酸等を用いても(各種酸の含有割合を変化させても)、溶液状態のキトサンと不溶キトサン(微粉体)が非分散系で混在するだけで、目的のキトサン微粒子分散液は得られないものである。
何故、本発明で特定する酸であるクエン酸、酒石酸、リンゴ酸が、前述のような他の酸(キトサンの良溶媒及び貧溶媒)には見られない特異的な作用を示す理由の詳細は明らかではないが、何れも分子構造内に1つ以上のフレキシブルな水酸基を持つことが影響しているものと推察される。
具体的には、これらの酸成分は、1分子中に2個以上のカルボキシル基(クエン酸3個、酒石酸2個、リンゴ酸2個)と1個以上の水酸基(クエン酸1個、酒石酸2個、リンゴ酸1個)を持ち、これらが、キトサンのアミノ基及び水酸基とイオン的及び水素結合的に相互に作用する関係にあり、特定の存在割合に於いては、そのバランスにより微粒子化及び分散安定化に働くものと推察される。これについては、水酸基の無い類似構造の多価カルボン酸であるコハク酸と水酸基を有するがモノカルボン酸である乳酸には、この様な作用域が無いことから示唆されるものである。特に、この様な作用(現象)をコハク酸(水酸基0個)は示さず、同一の骨格構造(エタンの1,2炭素位置に各々カルボキシル基が結合した「ブタン二酸」)であるリンゴ酸と酒石酸(水酸基が各々1個と2個結合)が示すことから判断すると、本発明の作用は、単なる多価カルボン酸では起こりえない特異的な作用であると推察することができる。また、本発明の作用域をpHで見ると、架橋的なイオン交換相分離では説明できない範囲〔例えば、クエン酸が多価イオンとして殆ど存在し得ないpH3.8よりも酸性の域(クエン酸のpKa2よりも1以上pHが低い域、化学便覧;pKa1:3.13、pKa2:4.76)〕も含まれている点から、本発明のキトサン微粒子液の効果が多価イオン的な作用だけで達成されているものではないことが示唆される。
従って、本発明のキトサン微粒子分散液は、化粧品材料、食品材料、衛生用品材料、生活用品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、医療材料、衣料材料、工業材料に好適に用いることができ、例えば、本発明のキトサン微粒子分散液を含有してなる消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤へ好適に適用することができる。具体的には、上記構成のキトサン微粒子分散液を含むことを特徴とする食品用鮮度保持剤、食品用保存料、機能性食品素材、衛生用品素材(例えば、おしめ・身体洗浄用不織布・生理用品)、老化防止用化粧料、化粧品用酸化防止剤、医薬品用酸化防止剤、医薬部外品用酸化防止剤、工業用酸化防止剤、体臭抑制剤、口臭抑制剤、衣類用消臭・防臭剤、生ゴミ用消臭・防臭剤、冷蔵庫用消臭・防臭剤、インテリア用消臭・防臭剤、医薬品用消臭・防臭剤、医薬部外品用消臭・防臭剤、デオドラント剤、入浴剤、食品マスキング剤(例えば、わさび・ニンニク)、化粧品、石鹸、歯磨き粉、頭髪処理剤、食品用抗菌剤、化粧品用抗菌剤、医薬品用抗菌剤、医薬部外品用抗菌剤、工業品用抗菌剤、居住空間改善剤(例えば、埃・花粉飛散防止用の噴霧剤)、繊維、紙、プラスチック、建材として各々好適に適用することができる。
特に最近の男性のエチケットに対する意識向上に伴い、男性用化粧品や男性用デオドラント剤の需要が増加傾向であり、中高年特有の皮脂酸化臭であるノネナールの消臭・防臭に対する要求は強く、市販抗酸化剤であるアスコルビン酸よりも優れたノネナール発生抑制能(加齢臭防臭能)を有する該キトサン微粒子分散液は産業上有用な機能性及び用途を提供するものである。
下記表1〜4に示す各製法によりキトサン微粒子分散液等を製造し、これらの分散液の液性状などを評価した。使用したキトサンは、北海道曹達社製、商品名:ノースキトサンMC−2W,平均分子量:71,600〜107,400、脱アセチル化度:約85%のものである。
表1(製造No1〜25)は、加熱溶解方式による製法に基づくものであり、キトサン100質量部に対して、表1に示す割合となる各種酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、コハク酸)を加え、加熱撹拌(80℃、300rpm)してキトサン微粒子分散液などを調製した。
製造No47は、表2の脱酸法である製造No30と同様に調製したものであり、製造No48は、表1の加熱溶解法である製造No2〜8(ただし、クエン酸を55質量部した以外)と同様に調製したものである(キトサン濃度2%)。
これに対して、製造No49〜51は、特開2005−68282号公報に基づくクエン酸Na法(後述する比較例2と同様)であり、キトサン100質量部に対して100質量部のクエン酸を用いて調製した4%濃度のキトサン溶液に、30w/v%クエン酸ナトリウム水溶液をpHが3.9になる様に添加混合し、これを3つに分けて、純水でキトサン濃度が1%、2%、2.5%になるように各々希釈した後、再度加温溶解(80℃、300rpm)させて放冷して、キトサン濃度が1%、2%、2.5%となるキトサン微粒子分散液を調製したものである。
製造No52は、特開平7−304643号公報にエマルション法(後述する比較例1と同様)であり、5%キトサン溶液(3.15%酒石酸溶解)とソルビタンモノラウレート2%トルエン溶液のエマルション液(等量混合の高速回転懸濁装置処理)を5倍容量の凝固液(0.05N水酸化カリウム/エタノール溶液)へ撹拌滴下して得たキトサン微粒子を、エタノール洗浄・遠心分離濃縮後に純水希釈(キトサン濃度2%に調整)、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)で懸濁してキトサン微粒子分散液を調製したものである。
製造No53は、イオン交換相分離法であり、5%キトサン溶液(4.4%乳酸溶解)を4倍容量の分散液(0.5%硫酸ナトリウム水溶液)へ撹拌滴下して冷却後(5℃)に得たキトサン微粒子を、遠心分離濃縮後に純水希釈(キトサン濃度2%に調整)、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)で懸濁してキトサン微粒子分散液を調製したものである。
これらの結果を下記表1〜4に示す。
これに対して、表1のNo1、9,10,14の本発明の酸の割合が範囲外となるもの、並びに、表1のNo19〜25、表2の製造No34及び35、表3の製造No44〜46、表4の製造No53の乳酸、コハク酸を用いた本発明範囲外となるもの、従来の製法等では、キトサン微粒子分散液を調製できなかったり、または、分散液となっても目的の液性状とならないことが判明した。
(実施例1のキトサン微粒子分散液の調製)
キトサン(北海道曹達社製、商品名:ノースキトサンMC−2W,平均分子量:71,600〜107,400、脱アセチル化度:約85%)200gとクエン酸376gに純水を加えて全量4.0kgとし、撹拌溶解(室温、300rpm)して、キトサン溶液を得た。次に、前記で得られたキトサン溶液2Lと純水8Lを混合し、分画分子量10,000の中空糸膜(旭化成ケミカルズ社製:MICROZA UF SLP−1053)を取り付けたろ過膜装置を用い、ダイアフィルトレーション法により脱酸(本槽内に50〜100ml/minの速度で30L連続注水し、同速度にて38L連続して酸液を膜透過する。)し、キトサン微粒子分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、クエン酸55質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度3.80%)である。該分散液を純水にてキトサン濃度2.63%になるように希釈した。
なお、得られた微粒子分散液について、キトサン濃度0.5%(純水希釈)の測定試料条件で、光散乱法(シスメックス社製粒子物性評価装置、ゼータサイザーナノZS)による粒度分析を行ったところ、微粒子サイズ(平均粒径)は「1.5μm」であった。
上記実施例1で使用したキトサン7gと酒石酸5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解して、キトサン溶液を得た。このキトサン溶液にソルビタンモノラウレートの2%トルエン溶液を等量混合し、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)でエマルション化した液を、5倍容量の0.05N水酸化カリウム/エタノール溶液中に撹拌滴下した後に、メッシュろ過により微粒子化したキトサンを回収した。回収したキトサン微粒子は、エタノール洗浄を繰り返した後、純水でキトサン濃度2.63%になるように希釈し、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)で懸濁し、キトサン分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、酒石酸71質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度2.63%)である。なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、比較例1のキトサン分散液の微粒子サイズは「3.1μm」であった。
実施例1で使用したキトサン5gとクエン酸5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(40℃、300rpm)して、キトサン溶液を得た。このキトサン溶液(室温、300rpm)に、30w/v%クエン酸ナトリウム水溶液を6ml添加混合し白濁させ(この白濁時のpH3.86)、純水でキトサン濃度を2.63%になるように希釈した後、再度加温溶解(80℃、300rpm)させて放冷後にキトサン分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、クエン酸100質量部(加えて、クエン酸ナトリウム36質量部)の水溶液に分散している状態(キトサン濃度2.63%)である。なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、比較例2のキトサン分散液の微粒子サイズは「0.8μm」であった。
これらの結果を下記表5に示す。
(比較例3のキトサン溶液の調製、)
上記実施例1で使用したキトサン5gとクエン酸7gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(室温、300rpm)して、キトサン溶液を得た。該溶液をキトサン濃度が2.63%になる様に純水で希釈した。
(比較例4のキトサン粉砕品懸濁液の調製)
上記実施例1で使用したキトサンを乾式の粉砕機で粉砕後、50μmメッシュ篩を透過させた。該粉砕品を純水に懸濁し、更にキトサン濃度2.63%になるように純水で希釈した。
官能評価試験は、サンプル液を手の甲に50μl塗布し、のばした後の「さらさら感」についてパネラー12人にどちらのサンプルが優れているか評価させた。その結果を図1に示す。
図1に示すように、従来からの剤形であるキトサン溶液よりキトサン微粒子分散液の方が「さらさら感」に優れていることが判明した(有意水準5%、二項検定)。
図2に示すように、従来からの剤形であるキトサン粉砕品の懸濁液よりキトサン微粒子分散液の方が「さらさら感」が優れていた(有意水準5%、二項検定)。
(実施例2のキトサン微粒子分散液の調製)
上記実施例1で使用したキトサン2.63gとクエン酸1.5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(80℃、300rpm)して、キトサン微粒子分散液を得た。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、クエン酸57質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度2.63%)である。
なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、実施例2のキトサン分散液の微粒子サイズは「1.3μm」であった。
(比較例5のキトサン溶液の調製)
上記実施例1で使用したキトサン2.63gと乳酸1.5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(40℃、300rpm)して、キトサン溶液を得た。
これらキトサン塗布綿布(1cm×1cm)5片を純水中で連続撹拌(純水400ml、室温、600rpm)させ、1時間毎に1片を取り出して、キトサンが綿布に付着しているかを、0.005Mヨウ素溶液を滴下させ調査した。なお、このヨウ素溶液における、キトサンの検出限界は、0.005%であることを事前に確認している。
これらの結果を下記表6に示す。
実施例1のキトサン微粒子分散液と比較例3のキトサン溶液の各々を、手の甲に塗布位置を分けて、指で塗り2分経過してから水道水で1分間洗浄した後に、キトサンが肌に付着しているかを、0.01Mヨウ素溶液を滴下させ調査した。なお、このヨウ素溶液における、キトサンの検出限界は、0.005%であることを事前に確認している。
これらの結果を下記表7に示す。
1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(和光純薬製)(以下DPPH)の1500μMエタノール溶液をエタノール/純水=1/3(体積比)にて5倍希釈後し、300μM溶液を調製した。同DPPH溶液2ml+リン酸緩衝液(pH5.8)2ml+サンプル液2mlを遮光下、室温にて所定時間250rpm撹拌し、DPPH由来の紫色の退色状況を観察した。今回各サンプル液中に存在するキトサン量は2.63%とした。これらの結果を下記表8に示す。
実施例1と実施例2のキトサン微粒子分散液及び以下に示す比較例5のL−アスコルビン酸水溶液について、9−ヘキサデセン酸の酸化抑制能評価試験を行った。
(比較例5のL−アスコルビン酸水溶液の調製方法)
L(+)−アスコルビン酸(和光純薬製)を純水に溶解し、最終的に4%になるように調製した(全量0.1L)。具体的な試験手順は以下の1)〜8)の手順で行った。
2) ろ紙をリン酸緩衝液(pH5.8)0.75mlにて湿らした。
3) 緩衝液で湿らしたろ紙上にcis-9−ヘキサデセン酸(東京化成工業製)(以降9−ヘキサデセン酸)27mg及び酸化剤として30%過酸化水素水(和光純薬製)を20μlを添加した。
4) 上記3)のろ紙上にサンプル液もしくは純水(ブランク)を0.25ml添加した。
5) バイアルを専用キャップで封入後、4週間40℃にて暗黒下インキュベートした。
6) インキュベート終了後、バイアルに内部標準物質としてn−ブチルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)を20mg添加後、1M水酸化ナトリウム水溶液1ml、次いで1M塩酸2mlを添加し良く攪拌した。
7) 上記6)にn−ヘキサン2mlを添加し2分間振とう抽出した。
8) 上記7)のn−ヘキサンの一部を分取し、9−ヘキサデセン酸残量を水素炎イオン化型検出器式ガスクロマトグラフィーにて定量した。
これらの結果を下記表9に示す。
実施例1と実施例2のキトサン微粒子分散液及び比較例5のL−アスコルビン酸水溶液、更に以下に示す比較例6のトレハロース水溶液を用いて、下記に示す乾燥系での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの発生抑制効果試験を行った。
具体的な試験手順は、以下の通りである。
(比較例6のトレハロース水溶液の調製方法)
D(+)−トレハロースニ水和物(和光純薬製)を純水に溶解し、最終的にトレハロースとして4%になるように調製した(全量0.05L)。
2) 1)のろ紙上に成分量として10mgになるように各種サンプル液を添加し、真空乾燥した。
3) 2)の乾燥したろ紙上に9−ヘキサデセン酸27mgおよび酸化剤として30%過酸化水素水20μlを添加した。
4) バイアルを専用キャップで封入後、一週間40℃にて暗黒下でインキュベートした。
5) インキュベート終了後、バイアルを15分間室温にて放冷した。次にバイアルを80℃のホットプレート上にて5分間加温後、ガラス製ガスタイトシリンジにてヘッドスペースガスを1ml採取し、水素炎イオン化型検出器式ガスクロマトグラフに全量注入し2−ノネナールを定量した。
これらの結果を図3に示す。
実施例1のキトサン微粒子分散液及び比較例5、6を用いて、下記に示す湿潤系での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの発生抑制効果試験を行った。
具体的な試験手順は以下の通りである。
2) 1)のろ紙をリン酸緩衝液(pH5.8)0.75mlにて湿らした。
3) 緩衝液で湿らしたろ紙上に9−ヘキサデセン酸35mgおよび酸化剤として30%過酸化水素水20μlを添加した。
4) 3)上にサンプル液もしくは純水(ブランク)を0.25ml添加した。
5) バイアルを専用キャップで封入後、所定期間40℃にて暗黒下でインキュベートした。
6) インキュベート終了後、バイアルを15分間室温にて放冷した。次にバイアルを80℃のホットプレート上にて5分間加温後、ガラス製ガスタイトシリンジにてヘッドスペースガスを1ml採取し、水素炎イオン化型検出器式ガスクロマトグラフに全量注入し2−ノネナールを定量した。
これらの結果を図4に示す。
実施例1のキトサン微粒子分散液及び以下に示す比較例7の粉末活性炭懸濁液を用いて、アンモニアの消臭能評価試験を行った。
(比較例7の粉末活性炭懸濁液の調製法)
粉末状活性炭エバダイヤ5LPD(荏原エンジニアリングサービス社製)を純水に懸濁させ、終濃度4%に調整した。
具体的な試験手順は以下の通りである。
2) ろ紙をリン酸緩衝液(pH5.8)0.5mlにて湿らした。
3) 緩衝液で湿らしたろ紙上に 28%アンモニア水溶液(和光純薬製)を20μl添加した。
4) 3)にサンプル液もしくは純水(ブランク)を1.0ml添加した。
5) バイアルを専用キャップで封入後、40℃にて所定時間インキュベートした。
6) インキュベート後、ヘッドスペースガス1mlをガラス製ガスタイトシリンジにて採取し20mMメタンスルホン酸水溶液10mlにバブリングし、ガス中のアンモニアを液捕集した。
7) 6)のメタンスルホン酸中のアンモニア濃度をカチオンクロマトグラフィーにて定量した。
これらの結果を図5に示す。
本試験はミュラーヒントン液体培地(pH6.0、キトサン添加濃度0%、0.02%、0.05%、0.08%、0.10%)での黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC No.13276)での生育状況(37 ℃、48 時間)をバイオサーモアナライザー(H−201、日本医科器械製作所社製)で測定し、抗菌性を判定した(+:生育、±:僅かに生育、−:生育なし)。
これらの結果を下記表10に示す。
以上のことから、本発明のキトサン微粒子分散液は、従来からの剤形であるキトサン溶液やキトサン粉砕品の懸濁液よりも黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌活性を有することが判った。
(実施例3のキトサン微粒子分散液の調製)
3.6%酒石酸を含む様に調製した5%キトサン水溶液100mlと純水400mlを、分画分子量10,000のUF膜(GE water technologies社製、商品名:PW、有効膜面積60平方cmの平膜構造)を取り付けたフロー式ろ過膜装置(日東電工マテックス社製、RUM−2・C10−T)を用い、操作圧力0.4Mpaの室温条件でろ過膜処理して、液量250mlの濃縮液と液量250mlの透過液を得た。この濃縮液全量(250ml)に水250mlを加え、同様な条件でろ過膜処理を更に8回(計9回の定容加水ろ過、最終濃縮液量100ml)実施し、キトサン微粒子分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、酒石酸35質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度4.75%)である。該分散液を純水にてキトサン濃度2.63%になるように希釈した。
なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、実施例3のキトサン分散液の微粒子サイズは「4.1μm」であった。
3.2%リンゴ酸を含む様に調製した5%キトサン水溶液100mlと純水400mlを、分画分子量10,000のUF膜(GE water technologies社製、商品名:PW、有効膜面積60平方cmの平膜構造)を取り付けたフロー式ろ過膜装置(日東電工マテックス社製、RUM−2・C10−T)を用い、操作圧力0.4Mpaの室温条件でろ過膜処理して、液量250mlの濃縮液と液量250mlの透過液を得た。この濃縮液全量(250ml)に水250mlを加え、同様な条件でろ過膜処理を更に8回(計9回の定容加水ろ過、最終濃縮液量100ml)実施し、キトサン微粒子分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、リンゴ酸35質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度4.73%)である。該分散液を純水にてキトサン濃度2.63%になるように希釈した。
なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、実施例4のキトサン分散液の微粒子サイズは「4.7μm」であった。
キトサン微粒子分散液2mlに対して、金1000mg/L標準原液(関東化学社製)を100μl添加し、遮光下で6時間静置後、液色の変化を観察した。尚、標準原液中の塩化金酸イオンが還元され、ナノサイズの粒子が生成した場合、プラズモン吸収により特有の紫から赤色を呈する。
この金ナノ粒子生成能評価結果を下記表11に示す。
市販マヨネーズ20gに実施例2のキトサン微粒子分散液を0.1g添加混合し、全量を20ml容のプラスチック製皿(60×40×10mmH)に入れ、上面は開放(空気と接触する)状態とした(添加混合区)。これとは別に、同マヨネーズ20gの同条件区(無添加区)を設け、上記の添加区と共に同一の密閉容器(180×130×70mmH)に収容して、10℃でインキュベート(暗黒下)し、上面開放部(空気接触部)の変色状況を経時的に調査した。尚、変色の判定は、完全密閉の非空気接触状態で低温(5℃)保管した対照の同マヨネーズとの色調比較で行った(○:対照と同色調・同濃淡、△:対照と同色調・異濃淡、×:対照と異色調・異濃淡)。
これらの結果を下記表12に示す。
市販の加工わさびに、実施例2のキトサン微粒子分散液と純水を表13の割合で添加混合し、4種類の添加濃度区(0、0.1、1、10%)を設けた。これらを、各々50ml容量のガラス製サンプル瓶に収容し、蓋をしめた状態で室温30分間置き、開封時の臭いと味を官能評価した。
これらの結果を下記表13に示す。
キュウリ浅漬け(市販液状浅漬けの素と輪切りキュウリを等重量で混合)に、実施例2のキトサン微粒子分散液を割合を変えて添加混合し、3種類の添加濃度区(0、1、3%)を設けた。また、これとは別に同キュウリ浅漬けにエタノールが濃度3%となる様に、エタノール添加区を設けた。これらの4区を、10℃でインキュベート(暗黒下)し、浅漬け液1ml中の一般生菌数を標準寒天培地法によりを経時的に調査した。
これらの結果を下記表14に示す。
Claims (11)
- キトサンを、該キトサン100質量部に対し10超〜70質量部のクエン酸を含有する水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- キトサンを、該キトサン100質量部に対し10超〜50質量部の酒石酸を含有する水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- キトサンを、該キトサン100質量部に対し10超〜35質量部のリンゴ酸を含有する水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- キトサンを、該キトサン100質量部に対し10超〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも2種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- 前記加熱して溶かす工程の温度が40〜95℃である請求項1〜4の何れか一つであることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10超〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁して製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- キトサン微粒子分散液中のキトサン濃度が0.5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液。
- 請求項1〜7の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を、化粧品材料、食品材料、衛生用品材料、医薬品材料、医療材料、衣料材料、工業材料に用いることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
- 請求項1〜7の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を含有してなる消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤としてのキトサン微粒子分散液の用途。
- キトサンを、該キトサン100質量部に対し10超〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させることを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
- 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10超〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁することを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
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