JP5564200B2 - キトサン微粒子分散液、その用途及びその製造方法 - Google Patents

キトサン微粒子分散液、その用途及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、キトサンの微粒子について、従来より高濃度で安定した微粒子状態を維持可能とし、産業的な利用性を高めたキトサン微粒子分散液に関し、更に詳しくは、肌に対する良好な官能性、繊維や肌に対する良好な滞留性、良好な抗酸化性、脂質酸化臭(例えば、中高年世代特有の加齢臭であるノネナール等)の防臭、アンモニア等塩基性化合物に対する消臭性、黄色ブドウ球菌に対する良好な抗菌性等を備えた従来にない多機能性、良分散性、高流動性を有するキトサン微粒子分散液、その用途及びその製造方法に関する。
天然由来の高分子であるキトサンは、キチンのN−脱アセチル化物で2―アミノ−2−デオキシーD−グルコースを1構成単位とする塩基性多糖であり、キチン分子とキトサン分子のN−アセチル基の置換度(脱アセチル化度)とその分布、鎖長(分子量)の相違により特異的な分子特性が見られる。
キトサンには、生体適合性が高いという優れた特性により、医薬分野及び化粧品分野での利用が期待されている。例えば、医療分野での創傷被覆剤・治癒促進剤・人工皮膚、化粧品分野での粉体特性改良剤・皮膚保湿剤などが挙げられる。
この様に、各産業分野での利用が期待されるキトサンであるが、その溶解特性の問題から、希酸水溶液に溶解した、所謂キトサン溶液の状態での使用が一般的であり、酸性域の用途に制限されるなど、産業的な利用は十分とは言えない状況である。
更には、キトサンの用途拡大や付加価値を高める目的で、キトサンの微粒子化についての試みが行われている。また、微粒子化したキトサンを安定した分散液として提供することで、微粉体飛散や混合ダマの発生を防止することが出来、製剤配合の際の汎用性も格段に広がるものとなる。
例えばキトサンの微粒子化についての試みについては、1)キトサン酸性水溶液を疎水性溶剤と混合し乳化することによりエマルションを形成させ、塩基又は有機溶剤中に注入し凝固させる方法(例えば、特許文献1参照)、2)低分子量のキトサンを酸性水溶液中に溶解して得た溶解液を塩基性溶液中で凝固析出することを特徴とする粒状キトサンの製造方法(例えば、特許文献2参照)、3)キトサンを酸性溶液中に溶解して得た溶解液を塩基性溶液中で凝固再成し、生成した凝固物を洗浄後粉砕分散せしめ、該分散液を高温雰囲気中に加圧空気と共に吐出乾燥することを特徴とする超微小球状キトサンの製造方法(例えば、特許文献3参照)、4)キトサン酸性溶液を、高温噴霧乾燥させ10μm以下のキトサン微粒子を得る方法(例えば、特許文献4参照)、5)キトサンの酸性水溶液をデカリン等疎水性分散媒中に分散させ、撹拌下に水分を蒸発させることを特徴とする粒状多孔質キトサンの製造方法(例えば、特許文献5参照)、6)キトサンの酸の水溶液に、硫酸塩を添加してキトサンを析出させるキトサン微粒子の製造方法(例えば、特許文献6参照)、7)キトサンのクエン酸水溶液に、クエン酸塩を添加してキトサンを析出させ、クエン酸塩を添加して析出させたキトサン懸濁液を加熱してキトサンを溶解、次いで冷却してキトサンを析出させることを特徴とする平均粒子径が1μm以下のキトサン微粒子の製造法(例えば、特許文献7参照)、8)イオン交換相分離法を利用したサブミクロンサイズのアニオン含有キトサン微粒子の製造法(例えば、特許文献8参照)、9)キトサンを希硫酸に加熱溶解し、その後冷却してキトサンを析出させるキトサン微粒子の製造法(例えば、特許文献9参照)が知られている。
しかしながら、上記特許文献1〜9の方法で得られたキトサン微粒子は、粒子化のプロセスで使用された凝固剤や分散剤、塩等の薬剤が不純物として混入しており、透析処理等の精製工程を経てもこれを完全に除去するのは不可能であるため、化粧品・食品・衛生用品・医薬品・医療分野等の多分野への利用には適していないのが現状である。
また、実際に微粒子を透析精製する場合、微粒子がキトサン濃度0.5質量%以上の高濃度に分散する状態ではその液の粘性や、微粒子状態であるゆえの流動抵抗及び積層性が問題となる為、相当に(キトサン濃度が0.1〜0.2質量%程度となる様に)希釈しなければ精製の実施は不可能である。その結果、精製工程を経たキトサン微粒子液の濃度は希薄(キトサン濃度0.5質量%未満)にならざるを得ないものである。また、精製後の濃縮操作による高濃度化に関しては、微粒子の熱による状態変化及びサイズ的な濾別困難さから、産業的な実施は著しく困難若しくは多大なコストを要するものとなる。
そして、濃縮が達成された場合であっても、上記特許文献1〜9の方法で製造したキトサン微粒子は、0.5質量%以上のキトサンを含む高濃度域下での水分散性が悪く、その点においても汎用性に欠ける点に課題がある。特に、本願発明の近接技術を開示するものとなる特許文献1及び7の製造方法等により得たキトサン微粒子分散液は、分散性が悪く(キトサン濃度0.5質量%以上で静置しておくとキトサン微粒子が沈降し)、また、流動性の損失(キトサン濃度2質量%以上でゲル化し、ハンドリングに支障)が生じるなどの課題があることを、発明者等は試験実証している。
更には、従来の上記特許文献1〜9の方法で製造したキトサン微粒子の分散液は、熱に対する影響を受け状態が変化し易く、夏場の密閉環境下での移送には十分な温度管理を図る必要があった。
上述の様に、従来存在するキトサン微粒子(分散液)は、プロセス由来の薬剤・不純物の混入を実質防げないものであり、且つ、分散液での性状が希薄及び不安定(沈降、ゲル化、熱変性など)となり、産業的な利用性を満足するものでは無かった。
そして、従来の技術において、キトサンの酸性水溶液に薬剤の添加を一切行わず酸溶媒の除去操作のみによりキトサン微粒子分散液を調製する試みは無く、また、その微粒子化が従来よりキトサン易溶の酸溶媒(良溶媒)として知られている本発明の特定酸3種(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸)により達成されることについての示唆や見解も全く存在しないものである。
また、従来の技術において、キトサンと本発明の特定酸3種(クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸から選ばれる一つ以上の酸)を所定配合比で加熱溶解後、冷却することによりキトサン微粒子分散液を調製する方法についても知見はないものである。
更に、従来の技術において、微粉体キトサンと本発明の特定酸3種(クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸から選ばれる一つ以上の酸)を所定配合比で機械懸濁することによりキトサン微粒子分散液を調製する方法についても知見はないものである。
一方、キトサン微粒子の肌への官能性については、化粧料に配合した状態での使用感、仕上がり感、安定性の向上について、例えば、球状キトサン粉末を配合してなる化粧料(例えば、特許文献10参照)に開示されているが、キトサン微粒子分散液そのものを化粧品又はデオドラント剤として捉え、官能評価した記載はないものである。
また、キトサンの繊維素材への利用については、抗酸化性を具備した植物組織破砕物や抽出物を含むキトサン微粒状物をセルロースビスコースに添加し紡糸する方法(例えば、特許文献11参照)が開示されているが、キトサン微粒子の分散液を繊維表面に塗布する方法についての記載はないものである。
更に、平均分子量が3,000〜7,000の水溶性キトサンについて、抗酸化性があることが開示されているが(例えば、特許文献12参照)、平均分子量が20,000以上のキトサンから成る微粒子の分散液について抗酸化性を示す記載はないものである。
また、皮脂成分の酸化分解や微生物分解により発生する脂質酸化臭〔例えば中高年世代特有のノネナール(加齢臭)〕の防臭・消臭に対して、例えば、抗酸化剤の使用(特許文献13)、縮合型カキタンニンを含有する消臭剤(特許文献14)、トレハロース体臭抑制剤(特許文献15)が知られているが、キトサン微粒子分散液により脂質酸化臭の発生を抑制する記載は全くないものである。
特開平7−304643号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開昭61−40337号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開昭62−62827号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開昭63−20301号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平1−301701号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平9−143203号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2005−068282号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2009−013073号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平7−330807号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開昭62−190110号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平11−001820号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2005−075957号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平11−286423号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2001−302483号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2002−080336号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、優れた分散性、流動性を有すると共に、肌に対する良好な官能性、繊維や肌に対する良好な滞留性、良好な抗酸化性、脂質酸化臭の防臭、アンモニア等塩基性化合物に対する消臭性、黄色ブドウ球菌に対する良好な抗菌性等を備えた従来にない多機能性を有するキトサン微粒子分散液、その用途及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、キトサン微粒子が、該キトサン100質量部に対し特定の有機酸を特定量含有する水溶液に分散することにより、上記目的の優れた分散性、流動性を有すると共に、従来にない多機能性を有するキトサン微粒子分散液、その用途及びその製造方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) キトサン微粒子が、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する水溶液に分散していることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
(2) クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液によりキトサンを溶かす溶解工程と、該溶解工程より得られたキトサン溶液の酸溶媒を除去する脱酸工程とからなる方法にて製造したことを特徴とする上記(1)に記載のキトサン微粒子分散液。
(3) キトサンを、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経て製造したことを特徴とする上記(1)に記載のキトサン微粒子分散液。
(4) 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁して製造したことを特徴とする上記(1)に記載のキトサン微粒子分散液。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を、化粧品材料、食品材料、衛生用品材料、生活用品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、医療材料、衣料材料、工業材料に用いることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
(6) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を含有してなることを特徴とする消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤としてのキトサン微粒子分散液の用途。
(7) キトサンを、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経ることを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
(8) 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁することを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
本発明によれば、優れた分散性、流動性を有する等の分散液としての安定性が付与されると共に、肌に対する良好な官能性、繊維や肌に対する良好な滞留性、良好な抗酸化性、脂質酸化臭の防臭、アンモニア等塩基性化合物に対する消臭性、黄色ブドウ球菌に対する良好な抗菌性等を備えた従来にない多機能性を有するキトサン微粒子分散液、並びに、この有用なキトサン微粒子分散液を含有する消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤等への用途、及び従来にない高濃度、良分散性、流動性損失の無い、多機能性を有するキトサン微粒子分散液の製造方法が安価に安定に提供される。
さらさら感についての官能試験(キトサン微粒子分散液、キトサン溶液)の結果を示す特性図である。 さらさら感についての官能試験(キトサン微粒子分散液、キトサン粉砕品懸濁液)の結果を示す特性図である。 キトサン微粒子分散液による脂質酸化臭発生抑制試験(乾燥系での9−ヘキサデセン酸から2−ノネナールの発生抑制試験)の結果を示す特性図である。 キトサン微粒子分散液による脂質酸化臭発生抑制試験(湿潤系での9−ヘキサデセン酸から2−ノネナールの発生抑制試験)の結果を示す特性図である。 キトサン微粒子分散液によるアンモニア消臭試験の結果を示す特性図である。
以下に、本発明の最良の形態を発明ごとに詳しく説明する。
本発明のキトサン微粒子分散液は、キトサン微粒子が、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する水溶液に、高濃度で存在した良分散性及び流動性を有していることを特徴とするキトサン微粒子分散液である。
すなわち、本発明のキトサン微粒子分散液は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸がキトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の特定存在割合となるように設定した水系(水溶液中)に、高濃度のキトサンを微小サイズの懸濁状態で分散させたものである。そして、本発明となるキトサン微粒子分散液の特性としては、第一に、経時的なキトサンの沈降が無く均一な分散状態を安定に維持できること(良分散性)、第二の特性として、高濃度でありながらゲル化の相転移現象が起こらず、分散液として流動性を失わない点が挙げられる。また、分散状態のキトサン微粒子が、熱に対して安定であるという特性もある。
本発明において、キトサン分散液の「良分散性」については、例えば、ある容器に収容したキトサン分散液を室温(概ね20〜25℃)にて2日間、静置した後の上面から5%容量上層液の660nm透過率で確認でき、その透過率が20%未満となることが好ましく、また、10%未満となることが更に好ましい。また、「流動性」に関しては、同様に2日間の静置の後に、容器を静かに90度傾けても分散系上面が速やかに流れ得るか(ゲル化が起こっていないか)で確認することができる。
これらの二つの分散液特性は、その分散系全体において、特定成分である「クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸」が、特定存在割合である「キトサン100質量部に対し、10(超)〜70質量部」となるように設定されることが必須となり達成される。本発明のキトサン微粒子分散液において、上記特定の酸が10質量部以下では流動性の低下が見られ、70質量部を超すと、後述する分散液の塗布特性が軽減することなどから、好ましくない。そして、特定成分であるクエン酸、酒石酸、リンゴ酸と類似物質となるその他の有機酸(例えば、乳酸、コハク酸など)では、キトサンに対するその存在割合をどのように変化させても、このような特性域は存在し得ないものである。また、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)をキトサン微粒子と共存させた場合であっても、上記の特定存在割合以外では、このような特性は発現し得ないものである。
更に、この特定存在割合については、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、キトサン100質量部に対し、20〜60質量部が好ましい。例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸20〜60質量部、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸30〜50質量部、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜30質量部となる。
上記特定の酸が20〜55質量部では高温下(40℃以上)でも分散液の塗布特性が安定に維持できる点で優れ、45〜60質量部では低温(20℃未満)での流動性が良くハンドリングし易い点で優れている。
なお、本発明において、「クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種」とは、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の使用について、これら特定3種の群から選ばれる1種(各単独)又は2種又は3種の酸を組み合わせて使用できることを意味するものである。
また、本発明では、キトサン微粒子分散液の用途の必要性に応じて、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の使用に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、これら特定酸3種の群以外の酸1種以上と併用することもできる。この組み合わせる酸の種類と配合割合について、特に限定されるものではないが、分散系の安定性を維持できる範囲で併用するのが適当であり、具体的には、分散液のpHが3.4〜6.3の範囲となるように併用する種類と割合を調整することが好ましい。
本発明のキトサン微粒子分散液を構成するキトサンは、特に限定されるものではないが、カニ、エビ等の種々の天然物由来のキチンを脱アセチル化したものなどが挙げられる。キトサンの分子量については、特に限定されるものではないが、通常、重量平均分子量(以下、単に「平均分子量」という)7千〜80万のものが使用され、分散液の塗布特性が安定に維持できる点から、平均分子量1万以上が好ましく、平均分子量2万以上が特に好ましい。キトサンの脱アセチル化度についても、特に限定されるものではないが、通常60%以上が使用される。
そして、本発明のキトサン微粒子分散液を構成するキトサン微粒子のサイズ(平均)としては、平均粒径0.1〜50μmのものが好ましい。この平均粒径が0.1μm未満では、ハンドリングが難しく、一方、50μmを超すサイズでは分散性が不安定となり好ましくないからである。そして、ハンドリングのし易さと高度利用が可能となることから判断するとシングルミクロンサイズ(平均粒径1〜9μm)が更に好ましく、そして、より分散安定性に優れる点で平均粒径1〜4μmが特に好ましい。
なお、本発明において、「平均粒径」とは、キトサン濃度0.5%(純水希釈)の測定試料条件で、動的光散乱法(DLS)及びレーザー回折法による粒子径測定値(平均値)を意味するものである。
また、本発明において、キトサン微粒子分散液は、キトサン微粒子が該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する水溶液に分散しているものであり、この範囲で全分散系に含まれるキトサン濃度は、0.2〜60質量%となるものである。好ましくは、キトサン濃度は0.5〜40質量%が好ましい。
このキトサン濃度が0.2質量%未満では、低濃度過ぎて機能性を利用した製剤化に不適となり、一方、60質量%を超す濃度では(流動性は有るが)高粘性となりハンドリングがし難くなり好ましくないからである。そして、コストとハンドリングの両面で優れる点で、2質量%以上、30質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以上、20質量%以下が特に好ましい。
本発明のキトサン微粒子分散液を得る方法としては、上述の分散系条件を最終的に満たすことができれば、特に限定されないが、後で詳述する「脱酸製造法」、「加熱溶解製造法」、「微粉体懸濁製造法」を例示することができる。特に、均一性に優れたキトサン微粒子分散液が得られる点から、「脱酸製造法」、「加熱溶解製造法」が好ましい。
本発明のキトサン微粒子分散液の製造法の一つである「脱酸製造法」は、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸の少なくも一つと水によりキトサンを溶かす溶解工程と、該溶解工程より得られたキトサン溶液の酸溶媒を除去する脱酸工程から成る製造方法である。
この製造法によると、原料のキトサン(通常はフレーク状固体)は、酸溶媒の作用により一度完全に溶解した均一の溶液状態となり、その後、酸溶媒を除去する脱酸処理により均一性に優れたキトサン微粒子分散液に仕上げられる。このようにして得られる本発明のキトサン微粒子には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲で必ず含まれるものであり、系内中のキトサンは0.6〜5μmの微小サイズ分散状態で存在している。そして、この脱酸製造法におけるキトサン微粒子分散液製造の生産効率と再現性の良さを勘案すると、該特定成分の割合は20〜65質量部、キトサン微粒子のサイズは平均粒径で1〜4μmが好ましい条件といえる。例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸40〜65質量部、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸20〜50質量部、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜35質量部である。
また、脱酸製造法で得られたキトサン微粒子分散液は、含まれる灰分等の不純物割合が従来のキトサン微粒子分散液と比べ明らかに低く(乾物換算で、灰分が0〜0.1質量%未満)なる点にメリットがあり、仕上がり液のpHも3.6〜5.5の弱酸性となることから化粧品、医薬品の用途に好適となるのである。
本発明方法となる脱酸製造法に使用するキトサンは、特に限定されるものではないが、カニ、エビの甲殻等の種々の天然物由来のキチンを脱アセチル化したものなどが挙げられる。キトサンの分子量については、特に限定されるものではないが、通常、平均分子量7千〜80万のものが使用され、粒子化形成に有利な立体構造を有する点から、平均分子量1万以上、そして、高粘性を示さず濃度を上げてもハンドリングし易い点から、平均分子量50万以下のものが好ましく、この両方の性質を併せ持つ点から、平均分子量2万〜20万程度のものが好ましい。また、キトサンの脱アセチル化度についても、特に限定されるものではないが、通常60%以上が使用され、アミノ基に由来する均一な粒子特性を有している点から脱アセチル化度90〜100%のものが特に好ましい。
また、脱酸製造法において、キトサン溶解に用いる酸溶媒は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種を必須とするものである。これらの酸は、何れも食品添加物として認められ安全性の高い物質であり、キトサンに対し安定した溶解性を示す良溶媒であるが、キトサンと特定の構成比では微粒子化する特徴を有する特異的な酸である。
そして、本発明では、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の特定3種の群から選ばれる1種又は2種又は3種の酸を組み合わせて使用できる。また、微粒子の用途の必要性に応じて、クエン酸・酒石酸・リンゴ酸の使用に加え、これら特定酸3種の群以外の酸1種以上と併用することもできる。この組合せについて、特に限定されるものではないが、好ましくは、キトサン溶解性が高く安全性の高い塩酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、イタコン酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、葉酸、更に好ましくは、食品添加物として認められている塩酸、酢酸、アスコルビン酸、イタコン酸、グルコン酸、コハク酸を使用することが好ましい。
脱酸製造法の溶解工程に使用するクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の使用量は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の使用総量がキトサン100質量部に対し、30〜200質量部の範囲であるのが好ましい。これらの酸の使用量が30質量部未満では(幾らその他の溶解条件、温度・撹拌速度等を整えても)キトサンの溶解率が80%未満となり実用性に欠けるものとなり、一方、200質量部を超えても実用的な溶解性(溶解度、溶解速度)はそれ以上向上せず無駄に過剰な酸を添加することとなるので好ましくない。そして、比較的穏和な条件(例えば、温度40℃未満・撹拌速度300rpm程度)での溶解性とコスト性を兼ねた40〜190質量部が、更に好ましい。また、後工程の膜処理等の脱酸が効率的に達成できることを考慮して、50〜140質量部が、特に好ましい。例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸80〜190質量部(特には、80〜140質量部)で、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸60〜150質量部(特には、70〜130質量部)で、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸40〜100質量部(特には、50〜90質量部)で、使用する酸溶媒の溶解特性に合わせて任意に設定溶解する。
また、溶解工程で用いる酸の濃度は、特に限定されないが、通常、0.1〜60質量%である。製造容量の制限から、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは、1質量%以上である。また、酸の水への溶解性より判断すると、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下で使用される。
更に、溶解工程で調製されるキトサン溶液のキトサン濃度は、特に限定されないが、使用するキトサンの分子量と脱アセチル化度により適切な濃度が決定され、通常、0.5〜30質量%である。生産性(効率)の観点から、好ましくは、1質量%以上、更に好ましくは、5質量%以上である。また、溶解の難易度、粘性による操作性から判断すると、好ましくは、20質量%以下、更に好ましくは、10質量%以下である。
また、脱酸製造法の溶解工程は、一般的調製方法、装置、及び条件により実施可能であり、特に限定されない。例えば、撹拌装置を備えた溶解槽に、水とキトサンを入れて撹拌し、酸溶媒を添加して撹拌を適宜(2時間程度)継続させキトサンを溶解させた後、不溶解分については濾過等の任意の手段で除去し、キトサン溶液を得ることができる。また、酸溶媒の添加については、本発明の酸溶媒(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸)は通常固体であるため、適当な濃度(例えば、1〜60質量%)に水で希釈して酸水溶液で添加するのが望ましい。なお、キトサンを該酸水溶液に添加してもよい。
撹拌装置についても、特に限定されず、例えば、回転羽根方式、超音波方式、水流循環方式、気泡方式等の種々のものが単独若しくは併せて利用できる。
キトサンを溶解させる時の液温度は、特に限定されるものではないが、本発明の酸(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸)はキトサン易溶の良溶媒であるので、通常は室温で溶解を実施し、酸溶媒の使用量を減らす目的で90℃まで加温溶解することもできる。90℃を超えると、キトサン溶液が着色するので好ましくない。加温条件としては、30〜80℃が好ましい。加温効果を得るためには温度30℃以上必要であり、また、運転コスト面を考慮すると80℃以下となる。更に、装置の耐久性の面から30〜40℃(未満)が特に好ましい。キトサンを溶解させる時の撹拌速度は、特に限定されるものではないが、通常は、300rpm以上、好ましくは500rpm以上(〜3600rpm)で実施することにより、有効な溶解効率を得ることができる。
本発明となる脱酸製造法の脱酸工程は、本発明の第一工程である溶解工程で得られたキトサン溶液、即ち本発明での酸(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸)が溶媒となり溶解した状態で存在しているキトサンについて、キトサンを系内に残しつつ酸を除去する操作を施すものである。なお、本発明でいう「脱酸」とは、非解離の酸分子、解離した酸のアニオン、プロトンを除去することを意味するものである。
そして、その脱酸工程の過程においては、キトサンは溶解状態を維持したままで全体系は溶液として進行するが、その終点付近では該特定酸の特異的な作用により溶解していたキトサンは粒子化に向かう状態へ移行し、最終的には、キトサンと該特定酸は相互作用し(終点を迎え)微粒子の状態で存在するようになり本発明の脱酸工程が完了する。なお、本発明となる脱酸方法で得られるキトサン微粒子は、水系において、高濃度(キトサン濃度として0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上)含まれ、且つ、沈降性の少ない高分散状態で存在するものとなる。
このような脱酸製造法の脱酸工程は、キトサンを系内に残し、特定酸を選択的・速やかに除去(脱酸・精製)可能な機能を持つ処理装置により実施される。例えば、透析装置、濾過膜処理装置、選択的なイオン交換膜を備えた装置、若しくは、選択的なイオン交換能を持つ樹脂を備えた装置等を挙げることができる。また、この脱酸工程は、均一でサイズが揃った微粒子製造が可能となるので、循環若しくは撹拌等による流動状態で実施されることが好ましい。
また、脱酸製造法の脱酸工程として、透析法により酸溶媒を除去する方法を採用した場合を以下に説明する。この透析は、キトサンを系内に残し、脱酸・精製ができる一般的な透析方法、装置、及び条件により実施される。例えば、セロハン膜等の半透膜による透析チューブや透析装置等を挙げることができる。透析法の操作条件については、キトサン溶液の粘性や濃度より判断し、温度及び透析液(例えば、水)の交換率を適宜調整するのが好ましい。
更に、脱酸製造法の脱酸工程として、ろ過処理膜法により酸溶媒を除去する方法を採用した場合を以下に説明する。このろ過膜処理は、キトサンを系内に残し、脱酸・精製ができる一般的なろ過膜処理方法、装置、及び条件により実施される。例えば、全量ろ過方式やクロスフロー方式のろ過膜処理装置等を挙げることができるが、脱酸を効率良く、且つ、適当条件から極限まで調整可能な方法として、クロスフロー方式のろ過膜処理装置を用いた定容加水ろ過法(ダイアフィルトレーション法)が好ましい。また、ろ過膜の種類については、使用するキトサンの分子量によって限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)より適宜選択し使用するのが望ましいが、分画分子量が1千〜10万のものが好ましい。ろ過膜の構造については、ろ過膜処理の最終段階で生成する微粒子の容量調整や回収がし易い点で、平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、中空糸膜が好ましい。ろ過膜処理の運転条件については、キトサン溶液の粘性や透過液の速度より判断し、温度及び圧力を適宜調整するのが好ましい。
また、脱酸製造法の脱酸工程として、イオン交換膜処理法により酸溶媒を除去する方法を採用した場合を以下に説明する。このイオン交換樹脂処理は、キトサンを系内に残し、脱酸・精製ができる一般的なイオン交換樹脂処理方法、装置、及び条件により実施される。例えば、陰イオン交換樹脂又は両性イオン交換樹脂を備えた装置や陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を備えた2床式装置、混床式装置等を挙げることができる。イオン交換樹脂処理の運転条件については、キトサン溶液の粘性やイオンの交換速度より判断し、温度、圧力及び供給速度を適宜調整するのが好ましい。
以上詳細に説明した様に、溶解工程と脱酸工程より成る本発明の脱酸製造法(分散液)は、キトサン100質量部をクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)30〜200質量部を含む酸溶媒(水溶液)に一度完全に溶解させ、その後、酸溶媒を除去する脱酸処理によりクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲となるキトサン微粒子分散液に仕上げられるものである。
また、本発明のキトサン微粒子分散液は、従来のキトサン微粒子分散液と異なり灰分が殆ど若しくは全く含まれず、灰分量が乾物換算で0.1質量%未満(0%を含む)である。このような特徴のキトサン微粒子分散液は、キトサンの良溶媒であり且つ特定条件においてキトサンと微粒子を構成する作用を併せて持つ本発明の特定酸を採用することで初めて達成されるものである。また、プロセス的には脱酸工程(溶解系)における精製機能が効率的に進むためでもあり、本発明のキトサン微粒子分散液における灰分量は、乾物中で0.03質量%以下(0%を含む)が好ましく、0.01質量%以下(0%を含む)が更に好ましい。
従来の製造方法で調製されたキトサン微粒子は、そのプロセス(粒子化、中和、不溶化等の工程)で必然的に使用されるアルカリ等の薬剤により、本発明のキトサン微粒子分散液とは異なり灰分量が0.1質量%以上(乾物中)となることは避けられない点に課題があるものである。
なお、キトサン微粒子に含まれる「クエン酸、酒石酸、リンゴ酸量」は、キトサン微粒子を1N水酸化ナトリウム水溶液で処理した後、HPLC法で測定し各々求められる。キトサン微粒子の「キトサンの量」は、キトサン微粒子を硫酸分解によるケルダール法で測定したキトサンアミノ基由来の窒素量より、脱アセチル化度より導き出されるキトサンの単位構造を基に算出される。そして、キトサン微粒子の「灰分量」は、550℃による強熱残分試験法により求められる。
本発明のキトサン微粒子分散液の製造法の一つである「加熱溶解製造法」は、キトサンを、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経ることを特徴とするキトサン分散液の製造方法である。
この製造法によると、原料のキトサン(通常はフレーク状固体)は、特定酸溶媒と加熱の作用により一度完全に溶解した均一の溶液状態となるが、その後、冷却、放冷により均一性に優れたキトサン微粒子分散液に仕上げられる。このようにして得られる本発明のキトサン微粒子分散液には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲で存在することが必須となり、系内中のキトサンは平均粒径0.6〜5μmの微粒子分散状態で存在している。そして、この加熱溶解製造法におけるキトサン分散液製造の生産効率と再現性の良さを勘案すると、該特定成分となる酸の割合は20〜60質量部、キトサン微粒子の平均粒径は1〜4μmが好ましい条件といえる。また、加熱溶解製造法では、pHがより中性に近い範囲(3.6〜6.3)まで得られることがメリットとなる。
本発明となる加熱溶解製造法において、キトサンを溶解させる時の液温度は、40℃以上であれば良く、好ましくは、40〜95℃で、使用する酸溶媒の溶解特性に合わせて任意に設定されるものである。
なお、加熱溶解法に使用するキトサン、酸溶媒、撹拌等の製造条件(特定成分となる酸の割合と溶解温度以外)は上述の脱酸製造法の溶解工程と同様であり、その説明を省略する。
この加熱溶解製造法において、特定成分となる酸の割合と溶解温度としては、得られるキトサン微粒子分散液が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲(好ましくは20〜60質量部)で存在することが必須であればよく、上述の如く、使用する酸溶媒の溶解特性に合わせて任意に設定でき、例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸10(超)〜70質量部(好ましくは20〜60質量部)、溶解温度40〜95℃で加熱溶解、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸20〜50質量部(好ましくは30〜50質量部)、溶解温度40〜95℃で加熱溶解、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜35質量部(好ましくは20〜30質量部)、溶解温度40〜95℃で加熱溶解、その後、冷却、放冷により均一性に優れた目的のキトサン微粒子分散液が得られるものとなる。
なお、加熱溶解法、並びに、上記脱酸製造法で乳酸、コハク酸などの他の有機酸等を用いても(各酸の割合と溶解温度の組み合わせでも)、不溶であったり、溶液となり、目的のキトサン微粒子分散液は得られないものである。
また、本発明のキトサン微粒子分散液の製造法の一つである「微粉体懸濁製造法」は、微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁することを特徴とするキトサン分散液の製造方法である。ここで、「微粉体キトサン」とは、微粉状態(0.1〜50μm)の水不溶性のキトサン、キトサン塩(例えば、硫酸塩)、キトサン誘導体乾燥物をいう。
この製造法によると、原料の微粉体キトサンは、特定割合の特定成分と機械懸濁の作用によりキトサン分散液に仕上げられる。このようにして得られる本発明のキトサン微粒子分散液には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(特定成分)が、キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部の範囲で存在することが必須となり、系内中のキトサンは使用する微粉体サイズに依って平均粒径0.1〜50μmの微小サイズ分散状態で存在している。そして、この微粉体懸濁製造法におけるキトサン分散液製造の生産効率と再現性の良さを勘案すると、該特定成分の割合は20〜60質量部が好ましい条件といえる。
本発明となる微粉体懸濁製造法において、使用する微粉体キトサンは、水不溶性の微粉状態乾燥物であれば特に限定されるものではないが、乾式・湿式のキトサン粉砕物、噴霧乾燥等のキトサン造粒物、従来法(例えば、エマルション法など)で得られる種々のキトサン微粒子を例示することができる。なお、通常原料で入手できるキトサン粉砕物が、好ましい。例えば、市販のキトサン粉砕品としては、ダイキトサン320Mやダイキトサン3ミクロンが挙げられる。
また、微粉体キトサンのサイズとしては、平均粒径0.1〜50μmが好ましい。微粉体サイズが0.1μm未満では、ハンドリングが難しく、50μmを超すサイズでは、分散性が不安定となり好ましくないからである。更には、原料入手若しくは微粉化措置の難易度及び分散安定性から判断すると、1〜20μmが特に好ましい。
この微粉体キトサンの懸濁方法は、一般的方法、装置、及び条件により実施可能であり、特に限定されない。例えば、撹拌装置、高速回転懸濁装置や超音波懸濁装置を用い、水(若しくは水溶液)、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸(溶液)と微粉体キトサンを入れて、機械懸濁することができる。また、この機械懸濁の際に、特定成分であるキトサンとクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸が、系内中に特定割合で配合されていれば本発明のキトサン微粒子分散液を得ることができ、配合当初のキトサンが全て微粉体で存在する必要は無く、一部溶解状態(全キトサンの40%以下)で存在しても良い。
この微粉体懸濁製造法の具体的な操作一例としては、微粉体キトサンの100質量部を、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸(キトサン100質量部に対して10[超]〜70質量部)を含む水溶液(150〜19,900質量部)に添加し、高速回転懸濁装置を用いて機械懸濁(10,000〜30,000rpm、10〜60分間)させる。上述の酸量については、酸種の特性に合わせて任意に設定でき、例えば、クエン酸であれば、キトサン100質量部に対しクエン酸10[超]〜70質量部、また、酒石酸であれば、キトサン100質量部に対し酒石酸20〜50質量部、更にリンゴ酸であれば、キトサン100質量部に対しリンゴ酸20〜35質量部を含有させれば良い。
なお、微粉体懸濁製造法で乳酸、コハク酸などの他の有機酸等を用いても(各種酸の含有割合を変化させても)、溶液状態のキトサンと不溶キトサン(微粉体)が非分散系で混在するだけで、目的のキトサン微粒子分散液は得られないものである。
本発明において、キトサン溶解に用いる酸溶媒は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種に限定されるものである。これらの酸は、何れも食品添加物として認められ安全性の高い物質であり、その他の1価及び多価の有機酸(例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸等)や無機酸(例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等)には見られない作用である。クエン酸、酒石酸、リンゴ酸は、キトサンに対し安定した溶解性を示す良溶媒であるが、キトサンと特定の構成比では微粒子化及び安定な分散状態を維持する特徴を有する特異的な酸である。
何故、本発明で特定する酸であるクエン酸、酒石酸、リンゴ酸が、前述のような他の酸(キトサンの良溶媒及び貧溶媒)には見られない特異的な作用を示す理由の詳細は明らかではないが、何れも分子構造内に1つ以上のフレキシブルな水酸基を持つことが影響しているものと推察される。
具体的には、これらの酸成分は、1分子中に2個以上のカルボキシル基(クエン酸3個、酒石酸2個、リンゴ酸2個)と1個以上の水酸基(クエン酸1個、酒石酸2個、リンゴ酸1個)を持ち、これらが、キトサンのアミノ基及び水酸基とイオン的及び水素結合的に相互に作用する関係にあり、特定の存在割合に於いては、そのバランスにより微粒子化及び分散安定化に働くものと推察される。これについては、水酸基の無い類似構造の多価カルボン酸であるコハク酸と水酸基を有するがモノカルボン酸である乳酸には、この様な作用域が無いことから示唆されるものである。特に、この様な作用(現象)をコハク酸(水酸基0個)は示さず、同一の骨格構造(エタンの1,2炭素位置に各々カルボキシル基が結合した「ブタン二酸」)であるリンゴ酸と酒石酸(水酸基が各々1個と2個結合)が示すことから判断すると、本発明の作用は、単なる多価カルボン酸では起こりえない特異的な作用であると推察することができる。また、本発明の作用域をpHで見ると、架橋的なイオン交換相分離では説明できない範囲〔例えば、クエン酸が多価イオンとして殆ど存在し得ないpH3.8よりも酸性の域(クエン酸のpKa2よりも1以上pHが低い域、化学便覧;pKa1:3.13、pKa2:4.76)〕も含まれている点から、本発明のキトサン微粒子液の効果が多価イオン的な作用だけで達成されているものではないことが示唆される。
このように構成される本発明のキトサン微粒子分散液は、従来になく高濃度化・高分散化されており、更に、肌触り(さらさら感)において良好な官能性、対象面へ良好な滞留性、抗酸化性(例えば、油脂成分の酸化防止能等)、還元能(例えば、塩化金酸イオンからナノサイズの金属金の生成能)、脂質酸化臭の防臭能(例えば、加齢臭物質であるノネナール等の原因皮脂成分より発生することを抑制する能力等)、塩基性化合物に対する消臭能(例えば、アンモニアに対する消臭能等)、抗菌能(例えば、肌常在菌に対する生育阻止能等)、保湿能、居住空間改善能(例えば、荷電した埃・花粉や煙草臭を吸着し飛散を防止する能力等)を有するものとなる。
従って、本発明のキトサン微粒子分散液は、化粧品材料、食品材料、衛生用品材料、生活用品材料、医薬品材料、医薬部外品材料、医療材料、衣料材料、工業材料に好適に用いることができ、例えば、本発明のキトサン微粒子分散液を含有してなる消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤へ好適に適用することができる。具体的には、上記構成のキトサン微粒子分散液を含むことを特徴とする食品用鮮度保持剤、食品用保存料、機能性食品素材、衛生用品素材(例えば、おしめ・身体洗浄用不織布・生理用品)、老化防止用化粧料、化粧品用酸化防止剤、医薬品用酸化防止剤、医薬部外品用酸化防止剤、工業用酸化防止剤、体臭抑制剤、口臭抑制剤、衣類用消臭・防臭剤、生ゴミ用消臭・防臭剤、冷蔵庫用消臭・防臭剤、インテリア用消臭・防臭剤、医薬品用消臭・防臭剤、医薬部外品用消臭・防臭剤、デオドラント剤、入浴剤、食品マスキング剤(例えば、わさび・ニンニク)、化粧品、石鹸、歯磨き粉、頭髪処理剤、食品用抗菌剤、化粧品用抗菌剤、医薬品用抗菌剤、医薬部外品用抗菌剤、工業品用抗菌剤、居住空間改善剤(例えば、埃・花粉飛散防止用の噴霧剤)、繊維、紙、プラスチック、建材として各々好適に適用することができる。
特に最近の男性のエチケットに対する意識向上に伴い、男性用化粧品や男性用デオドラント剤の需要が増加傾向であり、中高年特有の皮脂酸化臭であるノネナールの消臭・防臭に対する要求は強く、市販抗酸化剤であるアスコルビン酸よりも優れたノネナール発生抑制能(加齢臭防臭能)を有する該キトサン微粒子分散液は産業上有用な機能性及び用途を提供するものである。
次に、本発明に係るキトサン微粒子分散液の試験例(実施例及び比較例)を示して、本発明を更に詳述する。なお、試験例中、特に断らない限り、実施例中の「%」は質量基準である。
試験例1(各製法によるキトサン微粒子分散液等の製造、分散液の液性状、製造No1〜53)
下記表1〜4に示す各製法によりキトサン微粒子分散液等を製造し、これらの分散液の液性状などを評価した。使用したキトサンは、北海道曹達社製、商品名:ノースキトサンMC−2W,平均分子量:71,600〜107,400、脱アセチル化度:約85%のものである。
表1(製造No1〜25)は、加熱溶解方式による製法に基づくものであり、キトサン100質量部に対して、表1に示す割合となる各種酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、コハク酸)を加え、加熱撹拌(80℃、300rpm)してキトサン微粒子分散液などを調製した。
表2(製造No26〜42)は、脱酸方式による製法に基づくものであり、キトサン100質量部に対して、表2に示す初発酸割合となる各種酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、コハク酸)を加え、撹拌溶解(室温、300rpm)してキトサン溶液を得た。このキトサン溶液を表2に示す各脱酸の製造条件(初発キトサン濃度、初発酸濃度、初発酸割合、装置・器具、操作条件)で処理して、表2に示す酸の割合となるキトサン微粒子分散液などを調製した。この脱酸方式の製造条件を詳述すると、製造No26では、表2(脱酸の製造条件)に記載した様に、1.8%クエン酸(同表の初発酸濃度)を含む様に調製した1%キトサン水溶液(同表の初発キトサン濃度)50mlと純水450mlを混合〔同表の操作条件:(キトサン)0.1%濃度開始〕し、分画分子量10,000の平膜構造UF膜(同表の装置・器具)を用い、操作圧力0.4Mpaの室温条件(同表の操作条件の膜処理温度、圧力)でろ過膜処理し、250mlの液が透過した(濃縮液250mlとなる)時点を1サイクル(定容加水ろ過の1段)とした。引き続き、この濃縮液に純水250mlを加えて処理を開始し、同様な条件・操作で定容加水ろ過処理計10回(同表の操作条件の処理段数)を実施し、最終的に濃縮液量を80mlに合わせ、設定濃度0.6%(同表の最終キトサン濃度)のキトサン微粒子分散液を得た。製造No27〜29、31〜42も、表2(脱酸の製造条件)に記載した各内容に従い、上記製造No26と同様に調製した。また、製造No30は、表2(脱酸の製造条件)に記載した様に、9.4%クエン酸(同表の初発酸濃度)を含む様に調製した5%キトサン水溶液(同表の初発キトサン濃度)400mlと純水1600mlを混合〔同表の操作条件:(キトサン)1%濃度開始〕し、中空糸構造のUF膜(同表の装置・器具)を用い、ダイアフィルトレーション法により脱酸(本槽内に10〜20ml/minの速度で6L連続給水し、同速度にて7.5L連続して酸液を膜透過する)を実施し最終的に濃縮液量を500mlに合わせ、設定濃度4%(同表の最終キトサン濃度)のキトサン微粒子分散液を調製した。
表3(製造No43〜46)は、機械懸濁(微粉体懸濁)方式による製法に基づくものであり、微粉体キトサン〔焼津水産化学工業社製、キトサンLL、平均粒径50μm(50μmメッシュ篩透過)100質量部を、表3に示す各種酸(クエン酸、乳酸、コハク酸)を含む水溶液(各60、30、20質量部)に添加し、高速回転懸濁装置(KINEMATICA社製、ポリトロンホモジナイザーPT2100)を用いて機械懸濁(20,000rpm、10分間)させてキトサン微粒子分散液を得たものである。
表4(製造No47〜53)は、本発明となるキトサン微粒子分散液と、従来のキトサン微粒子製法との液性状を比較するものである。
製造No47は、表2の脱酸法である製造No30と同様に調製したものであり、製造No48は、表1の加熱溶解法である製造No2〜8(ただし、クエン酸を55質量部した以外)と同様に調製したものである(キトサン濃度2%)。
これに対して、製造No49〜51は、特開2005−68282号公報に基づくクエン酸Na法(後述する比較例2と同様)であり、キトサン100質量部に対して100質量部のクエン酸を用いて調製した4%濃度のキトサン溶液に、30w/v%クエン酸ナトリウム水溶液をpHが3.9になる様に添加混合し、これを3つに分けて、純水でキトサン濃度が1%、2%、2.5%になるように各々希釈した後、再度加温溶解(80℃、300rpm)させて放冷して、キトサン濃度が1%、2%、2.5%となるキトサン微粒子分散液を調製したものである。
製造No52は、特開平7−304643号公報にエマルション法(後述する比較例1と同様)であり、5%キトサン溶液(3.15%酒石酸溶解)とソルビタンモノラウレート2%トルエン溶液のエマルション液(等量混合の高速回転懸濁装置処理)を5倍容量の凝固液(0.05N水酸化カリウム/エタノール溶液)へ撹拌滴下して得たキトサン微粒子を、エタノール洗浄・遠心分離濃縮後に純水希釈(キトサン濃度2%に調整)、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)で懸濁してキトサン微粒子分散液を調製したものである。
製造No53は、イオン交換相分離法であり、5%キトサン溶液(4.4%乳酸溶解)を4倍容量の分散液(0.5%硫酸ナトリウム水溶液)へ撹拌滴下して冷却後(5℃)に得たキトサン微粒子を、遠心分離濃縮後に純水希釈(キトサン濃度2%に調整)、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)で懸濁してキトサン微粒子分散液を調製したものである。
下記表1〜4における液性状における「粒子の沈降性」は、室温(25℃)下で、2日経過後(及び表4では3週間後)のキトサン微粒子の沈降を透過率(5%容量上層液の660nm測定)で評価したものであり、「ゲル化」は、室温下で、2日経過後のキトサン微粒子(分散液)のゲル化、流動性を官能評価したものであり、「粒子の耐熱温度」は、キトサン微粒子分散液を加熱し、キトサン微粒子分散液の液状態が変化(液中のキトサン微粒子が変性・崩壊して、凝固又は溶解)しない最高温度(限界温度)を評価したものであり、「粒径」は得られた微粒子分散液について、キトサン濃度0.5%(純水希釈)の測定試料条件で、光散乱法(シスメックス社製粒子物性評価装置、ゼータサイザーナノZS)による粒度分析を行ったものであり、「pH」は、得られたキトサン微粒子分散液をガラス電極法によりpH測定したものである。
これらの結果を下記表1〜4に示す。
Figure 0005564200
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Figure 0005564200
上記表1〜4(製造No1〜53)の結果をみると、キトサン微粒子が、該キトサン100質量部に対し10(超)〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する水溶液に分散してなる表1の製造No2〜8、11〜13、15〜18、表2の製造No26〜33及び36〜42、表3の製造No43、表4の製造No47及び48のキトサン微粒子分散液は、従来より高濃度で安定した微粒子状態を維持可能とし、プロセス由来の薬剤・不純物の混入が実質無いものであり、且つ、分散液での性状が安定性(沈降、ゲル化、耐熱性)に優れ、産業的な利用性を満足するものとなることが判明した。
これに対して、表1のNo1、9,10,14の本発明の酸の割合が範囲外となるもの、並びに、表1のNo19〜25、表2の製造No34及び35、表3の製造No44〜46、表4の製造No53の乳酸、コハク酸を用いた本発明範囲外となるもの、従来の製法等では、キトサン微粒子分散液を調製できなかったり、または、分散液となっても目的の液性状とならないことが判明した。
<物性比較試験>(試験例2:実施例1及び比較例1、2)
(実施例1のキトサン微粒子分散液の調製)
キトサン(北海道曹達社製、商品名:ノースキトサンMC−2W,平均分子量:71,600〜107,400、脱アセチル化度:約85%)200gとクエン酸376gに純水を加えて全量4.0kgとし、撹拌溶解(室温、300rpm)して、キトサン溶液を得た。次に、前記で得られたキトサン溶液2Lと純水8Lを混合し、分画分子量10,000の中空糸膜(旭化成ケミカルズ社製:MICROZA UF SLP−1053)を取り付けたろ過膜装置を用い、ダイアフィルトレーション法により脱酸(本槽内に50〜100ml/minの速度で30L連続注水し、同速度にて38L連続して酸液を膜透過する。)し、キトサン微粒子分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、クエン酸55質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度3.80%)である。該分散液を純水にてキトサン濃度2.63%になるように希釈した。
なお、得られた微粒子分散液について、キトサン濃度0.5%(純水希釈)の測定試料条件で、光散乱法(シスメックス社製粒子物性評価装置、ゼータサイザーナノZS)による粒度分析を行ったところ、微粒子サイズ(平均粒径)は「1.5μm」であった。
(比較例1のキトサン微粒子の調製)
上記実施例1で使用したキトサン7gと酒石酸5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解して、キトサン溶液を得た。このキトサン溶液にソルビタンモノラウレートの2%トルエン溶液を等量混合し、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)でエマルション化した液を、5倍容量の0.05N水酸化カリウム/エタノール溶液中に撹拌滴下した後に、メッシュろ過により微粒子化したキトサンを回収した。回収したキトサン微粒子は、エタノール洗浄を繰り返した後、純水でキトサン濃度2.63%になるように希釈し、高速回転ホモジナイザー(15000rpm)で懸濁し、キトサン分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、酒石酸71質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度2.63%)である。なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、比較例1のキトサン分散液の微粒子サイズは「3.1μm」であった。
(比較例2のキトサン微粒子の調製)
実施例1で使用したキトサン5gとクエン酸5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(40℃、300rpm)して、キトサン溶液を得た。このキトサン溶液(室温、300rpm)に、30w/v%クエン酸ナトリウム水溶液を6ml添加混合し白濁させ(この白濁時のpH3.86)、純水でキトサン濃度を2.63%になるように希釈した後、再度加温溶解(80℃、300rpm)させて放冷後にキトサン分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、クエン酸100質量部(加えて、クエン酸ナトリウム36質量部)の水溶液に分散している状態(キトサン濃度2.63%)である。なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、比較例2のキトサン分散液の微粒子サイズは「0.8μm」であった。
実施例1と比較例1、2のキトサン分散液50mlを、各々別の100ml容量のガラス製容器に入れ室温にて2日間静置した後に、上面から2.5ml液を静かに採取し、660nm透過率を測定した。また、同様にて2日間の静置の後に、容器を静かに90度傾けても分散系上面が速やかに流れ得るか(ゲル化が起こっていないか)を確認した。なお、ゲル化しているものについては、上記の上面2.5ml液の採取が不可能であり、透過率の測定は実施しなかった。
これらの結果を下記表5に示す。
Figure 0005564200
上記表5に示す結果のように、本発明となる実施例1のキトサン微粒子分散液は、流動性を有し且つ透過率の低下なく分散性を良好に維持していたが、比較例1と2は、それぞれ分散性低下と流動性損失が見られた。
<肌触り官能試験>(試験例3:実施例1及び比較例3〜4)
(比較例3のキトサン溶液の調製、)
上記実施例1で使用したキトサン5gとクエン酸7gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(室温、300rpm)して、キトサン溶液を得た。該溶液をキトサン濃度が2.63%になる様に純水で希釈した。
(比較例4のキトサン粉砕品懸濁液の調製)
上記実施例1で使用したキトサンを乾式の粉砕機で粉砕後、50μmメッシュ篩を透過させた。該粉砕品を純水に懸濁し、更にキトサン濃度2.63%になるように純水で希釈した。
上記実施例1のキトサン微粒子分散液と比較例3のキトサン溶液に対して、肌触りについての二点識別法による官能評価試験を行った。
官能評価試験は、サンプル液を手の甲に50μl塗布し、のばした後の「さらさら感」についてパネラー12人にどちらのサンプルが優れているか評価させた。その結果を図1に示す。
図1に示すように、従来からの剤形であるキトサン溶液よりキトサン微粒子分散液の方が「さらさら感」に優れていることが判明した(有意水準5%、二項検定)。
上記実施例1のキトサン微粒子分散液と比較例4のキトサン粉砕品懸濁液に対して、肌触りについての二点識別法による官能評価試験を行った。サンプル液を手の甲に50μl塗布し、のばした後の「さらさら感」についてパネラー12人にどちらのサンプルが優れているか評価させた。その結果を図2に示す。
図2に示すように、従来からの剤形であるキトサン粉砕品の懸濁液よりキトサン微粒子分散液の方が「さらさら感」が優れていた(有意水準5%、二項検定)。
<繊維への塗布試験>(試験例4:実施例1、2及び比較例5)
(実施例2のキトサン微粒子分散液の調製)
上記実施例1で使用したキトサン2.63gとクエン酸1.5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(80℃、300rpm)して、キトサン微粒子分散液を得た。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、クエン酸57質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度2.63%)である。
なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、実施例2のキトサン分散液の微粒子サイズは「1.3μm」であった。
(比較例5のキトサン溶液の調製)
上記実施例1で使用したキトサン2.63gと乳酸1.5gに純水を加えて全量100gとし、撹拌溶解(40℃、300rpm)して、キトサン溶液を得た。
実施例1、2のキトサン微粒子分散液と比較例5のキトサン溶液の各々について、0.01N酢酸緩衝液(微調整は塩酸、水酸化ナトリウム水溶液を併用)を用いて希釈し、0.007%キトサン液分散液と溶液を得た。この各液に、綿布を含浸(10分間浸漬)させ、室温で一晩風乾(吊り下げた状態で乾燥)の後に、キトサン塗布綿布を得た。
これらキトサン塗布綿布(1cm×1cm)5片を純水中で連続撹拌(純水400ml、室温、600rpm)させ、1時間毎に1片を取り出して、キトサンが綿布に付着しているかを、0.005Mヨウ素溶液を滴下させ調査した。なお、このヨウ素溶液における、キトサンの検出限界は、0.005%であることを事前に確認している。
これらの結果を下記表6に示す。
Figure 0005564200
上記表6に示す結果に示すように、本発明となる実施例1、2(分散液状態)の方が比較例5(溶液状態)よりも、多機能有効成分であるキトサン微粒子が繊維に付着し易い傾向にあることが判明した。
<皮膚への塗布試験>(試験例5:実施例1及び比較例3)
実施例1のキトサン微粒子分散液と比較例3のキトサン溶液の各々を、手の甲に塗布位置を分けて、指で塗り2分経過してから水道水で1分間洗浄した後に、キトサンが肌に付着しているかを、0.01Mヨウ素溶液を滴下させ調査した。なお、このヨウ素溶液における、キトサンの検出限界は、0.005%であることを事前に確認している。
これらの結果を下記表7に示す。
Figure 0005564200
上記表7の結果に示すように、本発明となる実施例1(分散液状態)の方が比較例3(溶液状態)よりも、多機能有効成分であるキトサン微粒子が肌に付着し易い傾向にあることが判明した。
<抗酸化性試験(DPPHによる定性評価法)>(試験例6:実施例1、2及び比較例3)
1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(和光純薬製)(以下DPPH)の1500μMエタノール溶液をエタノール/純水=1/3(体積比)にて5倍希釈後し、300μM溶液を調製した。同DPPH溶液2ml+リン酸緩衝液(pH5.8)2ml+サンプル液2mlを遮光下、室温にて所定時間250rpm撹拌し、DPPH由来の紫色の退色状況を観察した。今回各サンプル液中に存在するキトサン量は2.63%とした。これらの結果を下記表8に示す。
Figure 0005564200
上記表8の結果から明らかように、キトサン微粒子分散液において、従来からの剤形であるキトサン水溶液(比較例3)よりも強いDPPHラジカル捕捉能が確認された。
<抗酸化性試験(脂質酸化抑制能評価試験)>(試験例7:実施例1、2及び比較例5)
実施例1と実施例2のキトサン微粒子分散液及び以下に示す比較例5のL−アスコルビン酸水溶液について、9−ヘキサデセン酸の酸化抑制能評価試験を行った。
(比較例5のL−アスコルビン酸水溶液の調製方法)
L(+)−アスコルビン酸(和光純薬製)を純水に溶解し、最終的に4%になるように調製した(全量0.1L)。具体的な試験手順は以下の1)〜8)の手順で行った。
1) 10ml容量ヘッドスペース用ガラスバイアルの底に円状セルロースろ紙(直径1.5cm)5枚を敷き詰めた。
2) ろ紙をリン酸緩衝液(pH5.8)0.75mlにて湿らした。
3) 緩衝液で湿らしたろ紙上にcis-9−ヘキサデセン酸(東京化成工業製)(以降9−ヘキサデセン酸)27mg及び酸化剤として30%過酸化水素水(和光純薬製)を20μlを添加した。
4) 上記3)のろ紙上にサンプル液もしくは純水(ブランク)を0.25ml添加した。
5) バイアルを専用キャップで封入後、4週間40℃にて暗黒下インキュベートした。
6) インキュベート終了後、バイアルに内部標準物質としてn−ブチルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)を20mg添加後、1M水酸化ナトリウム水溶液1ml、次いで1M塩酸2mlを添加し良く攪拌した。
7) 上記6)にn−ヘキサン2mlを添加し2分間振とう抽出した。
8) 上記7)のn−ヘキサンの一部を分取し、9−ヘキサデセン酸残量を水素炎イオン化型検出器式ガスクロマトグラフィーにて定量した。
これらの結果を下記表9に示す。
Figure 0005564200
上記表9の結果から明らかなように、本発明となるキトサン微粒子分散液は、既存の抗酸化剤であるL−アスコルビン酸の水溶液以上の脂質酸化抑制効果を示すことが判った。
<乾燥系での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの発生抑制効果試験>(試験例8:実施例1、2及び比較例5、6)
実施例1と実施例2のキトサン微粒子分散液及び比較例5のL−アスコルビン酸水溶液、更に以下に示す比較例6のトレハロース水溶液を用いて、下記に示す乾燥系での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの発生抑制効果試験を行った。
具体的な試験手順は、以下の通りである。
(比較例6のトレハロース水溶液の調製方法)
D(+)−トレハロースニ水和物(和光純薬製)を純水に溶解し、最終的にトレハロースとして4%になるように調製した(全量0.05L)。
1) 10ml容量ヘッドスペース用ガラスバイアルの底に円状セルロースろ紙(直径1.5cm)5枚を敷き詰めた。
2) 1)のろ紙上に成分量として10mgになるように各種サンプル液を添加し、真空乾燥した。
3) 2)の乾燥したろ紙上に9−ヘキサデセン酸27mgおよび酸化剤として30%過酸化水素水20μlを添加した。
4) バイアルを専用キャップで封入後、一週間40℃にて暗黒下でインキュベートした。
5) インキュベート終了後、バイアルを15分間室温にて放冷した。次にバイアルを80℃のホットプレート上にて5分間加温後、ガラス製ガスタイトシリンジにてヘッドスペースガスを1ml採取し、水素炎イオン化型検出器式ガスクロマトグラフに全量注入し2−ノネナールを定量した。
これらの結果を図3に示す。
図3の試験結果から明らかなように、乾燥系において本発明となるキトサン微粒子分散液は既存の抗酸化剤であるL−アスコルビン酸の水溶液、或いはトレハロース水溶液以上のノネナール発生抑制効果を示すことが判った。
<湿潤系での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの発生抑制効果試験>(試験例9:実施例1及び比較例5、6)
実施例1のキトサン微粒子分散液及び比較例5、6を用いて、下記に示す湿潤系での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの発生抑制効果試験を行った。
具体的な試験手順は以下の通りである。
1) 10ml容量ヘッドスペース用ガラスバイアルの底に円状セルロースろ紙(直径1.5cm)5枚を敷き詰めた。
2) 1)のろ紙をリン酸緩衝液(pH5.8)0.75mlにて湿らした。
3) 緩衝液で湿らしたろ紙上に9−ヘキサデセン酸35mgおよび酸化剤として30%過酸化水素水20μlを添加した。
4) 3)上にサンプル液もしくは純水(ブランク)を0.25ml添加した。
5) バイアルを専用キャップで封入後、所定期間40℃にて暗黒下でインキュベートした。
6) インキュベート終了後、バイアルを15分間室温にて放冷した。次にバイアルを80℃のホットプレート上にて5分間加温後、ガラス製ガスタイトシリンジにてヘッドスペースガスを1ml採取し、水素炎イオン化型検出器式ガスクロマトグラフに全量注入し2−ノネナールを定量した。
これらの結果を図4に示す。
図4の試験結果から明らかなように、湿潤系においても本発明となるキトサン微粒子分散液は既存の抗酸化剤であるL−アスコルビン酸の水溶液、或いはトレハロース水溶液以上のノネナール発生抑制効果を示すことが判った。
<アンモニア消臭能評価試験>(試験例10:実施例1及び比較例7)
実施例1のキトサン微粒子分散液及び以下に示す比較例7の粉末活性炭懸濁液を用いて、アンモニアの消臭能評価試験を行った。
(比較例7の粉末活性炭懸濁液の調製法)
粉末状活性炭エバダイヤ5LPD(荏原エンジニアリングサービス社製)を純水に懸濁させ、終濃度4%に調整した。
具体的な試験手順は以下の通りである。
1) 10ml容量ヘッドスペース用ガラスバイアルの底に円状ろ紙(直径1.5cm)5枚を敷き詰めた。
2) ろ紙をリン酸緩衝液(pH5.8)0.5mlにて湿らした。
3) 緩衝液で湿らしたろ紙上に 28%アンモニア水溶液(和光純薬製)を20μl添加した。
4) 3)にサンプル液もしくは純水(ブランク)を1.0ml添加した。
5) バイアルを専用キャップで封入後、40℃にて所定時間インキュベートした。
6) インキュベート後、ヘッドスペースガス1mlをガラス製ガスタイトシリンジにて採取し20mMメタンスルホン酸水溶液10mlにバブリングし、ガス中のアンモニアを液捕集した。
7) 6)のメタンスルホン酸中のアンモニア濃度をカチオンクロマトグラフィーにて定量した。
これらの結果を図5に示す。
図5の試験結果から明らかなように、本発明品のキトサン微粒子分散液は既存の脱臭剤である粉末活性炭の懸濁水よりアンモニア消臭能が高いことが判った。
<抗菌性試験(黄色ブドウ球菌)>(試験例11:実施例1及び比較例3、4)
本試験はミュラーヒントン液体培地(pH6.0、キトサン添加濃度0%、0.02%、0.05%、0.08%、0.10%)での黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC No.13276)での生育状況(37 ℃、48 時間)をバイオサーモアナライザー(H−201、日本医科器械製作所社製)で測定し、抗菌性を判定した(+:生育、±:僅かに生育、−:生育なし)。
これらの結果を下記表10に示す。
Figure 0005564200
上記表10の試験結果から明らかなように、本発明となる実施例1のキトサン微粒子分散液は、pH6.0の液体培地において、0.02%濃度まで黄色ブドウ球菌の生育を完全に阻止していることが判った。これに対して、比較例3のキトサン溶液は完全生育阻止濃度は0.05%濃度までである。さらに比較例4のキトサン粉砕品では0.10%であっても、完全に生育阻止できないことが判った。
以上のことから、本発明のキトサン微粒子分散液は、従来からの剤形であるキトサン溶液やキトサン粉砕品の懸濁液よりも黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌活性を有することが判った。
<金ナノ粒子生成試験>(試験例12:実施例1、3及び4)
(実施例3のキトサン微粒子分散液の調製)
3.6%酒石酸を含む様に調製した5%キトサン水溶液100mlと純水400mlを、分画分子量10,000のUF膜(GE water technologies社製、商品名:PW、有効膜面積60平方cmの平膜構造)を取り付けたフロー式ろ過膜装置(日東電工マテックス社製、RUM−2・C10−T)を用い、操作圧力0.4Mpaの室温条件でろ過膜処理して、液量250mlの濃縮液と液量250mlの透過液を得た。この濃縮液全量(250ml)に水250mlを加え、同様な条件でろ過膜処理を更に8回(計9回の定容加水ろ過、最終濃縮液量100ml)実施し、キトサン微粒子分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、酒石酸35質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度4.75%)である。該分散液を純水にてキトサン濃度2.63%になるように希釈した。
なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、実施例3のキトサン分散液の微粒子サイズは「4.1μm」であった。
(実施例4のキトサン微粒子分散液の調製)
3.2%リンゴ酸を含む様に調製した5%キトサン水溶液100mlと純水400mlを、分画分子量10,000のUF膜(GE water technologies社製、商品名:PW、有効膜面積60平方cmの平膜構造)を取り付けたフロー式ろ過膜装置(日東電工マテックス社製、RUM−2・C10−T)を用い、操作圧力0.4Mpaの室温条件でろ過膜処理して、液量250mlの濃縮液と液量250mlの透過液を得た。この濃縮液全量(250ml)に水250mlを加え、同様な条件でろ過膜処理を更に8回(計9回の定容加水ろ過、最終濃縮液量100ml)実施し、キトサン微粒子分散液を調製した。このキトサン微粒子分散液は、キトサン100質量部に対して、リンゴ酸35質量部の水溶液に分散している状態(キトサン濃度4.73%)である。該分散液を純水にてキトサン濃度2.63%になるように希釈した。
なお、上記と同様に粒度分析の測定を行ったところ、実施例4のキトサン分散液の微粒子サイズは「4.7μm」であった。
上記実施例1、実施例3及び実施例4のキトサン微粒子分散液について金ナノ粒子生成能評価試験を以下の方法にて行った。
キトサン微粒子分散液2mlに対して、金1000mg/L標準原液(関東化学社製)を100μl添加し、遮光下で6時間静置後、液色の変化を観察した。尚、標準原液中の塩化金酸イオンが還元され、ナノサイズの粒子が生成した場合、プラズモン吸収により特有の紫から赤色を呈する。
この金ナノ粒子生成能評価結果を下記表11に示す。
Figure 0005564200
上記表11に示すように、実施例1、実施例3及び実施例4のキトサン微粒子分散液を使用することにより金ナノ粒子が生成することが確認された。即ちこれらのキトサン微粒子分散液には塩化金酸イオンを還元し、金ナノ粒子を生成する還元能(抗酸化能)があることが判った。
<マヨネーズ酸化防止試験>(試験例13:実施例2)
市販マヨネーズ20gに実施例2のキトサン微粒子分散液を0.1g添加混合し、全量を20ml容のプラスチック製皿(60×40×10mmH)に入れ、上面は開放(空気と接触する)状態とした(添加混合区)。これとは別に、同マヨネーズ20gの同条件区(無添加区)を設け、上記の添加区と共に同一の密閉容器(180×130×70mmH)に収容して、10℃でインキュベート(暗黒下)し、上面開放部(空気接触部)の変色状況を経時的に調査した。尚、変色の判定は、完全密閉の非空気接触状態で低温(5℃)保管した対照の同マヨネーズとの色調比較で行った(○:対照と同色調・同濃淡、△:対照と同色調・異濃淡、×:対照と異色調・異濃淡)。
これらの結果を下記表12に示す。
Figure 0005564200
上記表12の試験結果から明らかの様に、本発明のキトサン微粒子分散液を添加混合したマヨネーズは、無添加マヨネーズが経時的に変色する一方で、空気接触下での保管に於いても酸化による変色現象が見られず、本発明のキトサン微粒子分散液が酸化防止能を有することが判った。
<わさびマスキング試験>(試験例14:実施例2)
市販の加工わさびに、実施例2のキトサン微粒子分散液と純水を表13の割合で添加混合し、4種類の添加濃度区(0、0.1、1、10%)を設けた。これらを、各々50ml容量のガラス製サンプル瓶に収容し、蓋をしめた状態で室温30分間置き、開封時の臭いと味を官能評価した。
これらの結果を下記表13に示す。
Figure 0005564200
上記表13の試験結果から明らかの様に、本発明のキトサン微粒子分散液を添加混合することで、濃度依存的にわさびの辛みと刺激臭(6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート由来)が軽減しており、本発明のキトサン微粒子分散液がマスキング能を有することが判った。
<キュウリ浅漬けの日持ち向上試験>(試験例15:実施例2)
キュウリ浅漬け(市販液状浅漬けの素と輪切りキュウリを等重量で混合)に、実施例2のキトサン微粒子分散液を割合を変えて添加混合し、3種類の添加濃度区(0、1、3%)を設けた。また、これとは別に同キュウリ浅漬けにエタノールが濃度3%となる様に、エタノール添加区を設けた。これらの4区を、10℃でインキュベート(暗黒下)し、浅漬け液1ml中の一般生菌数を標準寒天培地法によりを経時的に調査した。
これらの結果を下記表14に示す。
Figure 0005564200
上記表14の試験結果から明らかの様に、本発明のキトサン微粒子分散液を添加混合したキュウリ浅漬けは、無添加区及びエタノール添加区が経時的に菌数が増殖する一方で、12日間の長期保管に於いても菌数の増加が見られず、本発明のキトサン微粒子分散液が食品の日持ち向上能を有することが判った。
以上の試験例1〜15の結果を総合的に考察すると、0.5〜40%の高キトサン濃度条件下において平均粒径0.1〜50μmサイズの良分散性のキトサン微粒子分散液が提供される。更に肌触り(さらさら感)において良好な官能性、対象面へ良好な滞留性、抗酸化性、脂質酸化臭発生抑制能、アンモニア等塩基性化合物に対する消臭能、塩化金酸イオンを還元し、金ナノ粒子を生成する還元能(抗酸化能)、酸化防止能、マスキング能、食品の日持ち向上能などを有するキトサン微粒子分散液が提供される。
産業上利用の可能性
本発明のキトサン微粒子分散液を使用することにより、本発明のキトサン微粒子分散液を含むことを特徴とする食品用鮮度保持剤、食品用保存料、機能性食品素材、衛生用品素材(例えば、おしめ・身体洗浄用不織布・生理用品)、老化防止用化粧料、化粧品用酸化防止剤、医薬品用酸化防止剤、工業用酸化防止剤、体臭抑制剤、口臭抑制剤、衣類用消臭・防臭剤、生ゴミ用消臭・防臭剤、冷蔵庫用消臭・防臭剤、インテリア用消臭・防臭剤、医薬品用消臭・防臭剤、デオドラント剤、入浴剤、食品マスキング剤(例えば、わさび・ニンニク)、化粧品、石鹸、歯磨き粉、頭髪処理剤、食品用抗菌剤、化粧品用抗菌剤、医薬品用抗菌剤、工業品用抗菌剤、居住空間改善剤(例えば、埃・花粉飛散防止用の噴霧剤)、繊維、紙、プラスチック、建材等が提供される。

Claims (11)

  1. キトサンを、該キトサン100質量部に対し10〜70質量部のクエン酸を含有する水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  2. キトサンを、該キトサン100質量部に対し1050質量部の酒石酸を含有する水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  3. キトサンを、該キトサン100質量部に対し1035質量部のリンゴ酸を含有する水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  4. キトサンを、該キトサン100質量部に対し10〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも2種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させ製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  5. 前記加熱して溶かす工程の温度が40〜95℃である請求項1〜4の何れか一つであることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  6. 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁して製造したことを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  7. キトサン微粒子分散液中のキトサン濃度が0.5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液。
  8. 請求項1〜の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を、化粧品材料、食品材料、衛生用品材料、医薬品材料、医療材料、衣料材料、工業材料に用いることを特徴とするキトサン微粒子分散液。
  9. 請求項1〜の何れか一つに記載のキトサン微粒子分散液を含有してなる消臭・防臭剤、抗酸化剤、抗菌剤、保湿剤、居住空間改善剤としてのキトサン微粒子分散液の用途。
  10. キトサンを、該キトサン100質量部に対し10〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸の水溶液に加熱して溶かす工程を経て得られた溶液を、冷却することにより微粒子を生成させることを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
  11. 微粉体キトサンと該キトサン100質量部に対し10〜70質量部のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸とを、水溶液の状態で機械懸濁することを特徴とするキトサン微粒子分散液の製造方法。
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