JP5563573B2 - 症候性心不全の長期治療 - Google Patents

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Description

本発明は、心臓血管が原因の、特に不整脈による死亡を減少させる、またはいかなる原因(any cause)による、特に心臓血管が原因の入院を減少させるため、および症候性心不全(HF)の患者に3.5年より長く毎日投与するための、単独のまたは他の治療薬と組み合わせた薬剤としてのω−3ポリ不飽和脂肪酸(エチルエステルとして、以下「n−3 PUFA」と称する)の使用に関する。
心不全は、血液を満たすまたは充分な量の血液を身体に送る心臓の性能を損なう構造的または機能的心臓疾患から生じ得る症状である。これは、心停止として知られている「心拍の停止」と、または、正常心臓機能が停止して、血液動態的崩壊となり死に至る心臓停止と混同すべきでない。
うっ血性心不全は、普遍的に合意された定義が無く診断が困難であることから、特に、症状が「中等度」であると考えられる場合診断されないことが多い。最良の治療をもってしても、心不全は年間死亡率10%を伴う。これは65歳以上の人たちの入院の主要な原因である。
心不全は、身体代謝要求への不適当な反応に続発する臨床的徴候および症候により特徴付けられる。この症状は、急性に起こり得るまたは慢性的に経過し得る。
心不全の病態生理学的解釈は近年著しく進歩した。この症候群は、「50〜60年代」には腎機能障害を伴うポンプ不全と考えられ、「70〜80年代」には末梢抵抗の増加を伴うポンプ不全と考えられ、現在では、神経ホルモンの活性化の結果、血行動態が損なわれ、多くの器官および装置の損傷を伴うこととなる、ポンプ機能の不全であると考えられている。
心臓「ポンプ機能」の本薬剤療法は、疾患の原因病理論の異なる点について種々の態様で作用する薬剤の使用を含む。
そのような薬剤としては、例えば、ACE−阻害剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤);利尿薬;アドレナリン作動薬やホスホジエステラーゼ阻害薬のような非ジギタリス系陽性変力作用薬;細動脈および細静脈拡張薬、例えばヒドララジンおよびイソソルビド・ジニトレート;βブロッカー、例えばメトプロロールおよびビソプロロール;およびジギタリス誘導体、例えばジゴトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
人口の高齢化は現象の関連度を増幅する寄与因子のようである。
WO02/058793(特許文献1)は、心不全の予防または治療のためのポリ不飽和脂肪酸の使用に関する。この出願に実験データは提供されていない。
Lancet 1999(354:447−55)(GISSI−Prevenzione clinical trial)(非特許文献1)は、n−3 PUFAで3.5年治療した心筋梗塞後患者における全死亡率の減少に関する。
EP1310249は、既往梗塞エピソードを経験していない患者における主要心臓血管事象の一次予防のためのポリ不飽和脂肪酸の使用に関する。しかしながら、この特許出願には幾つかの動物データしか報告されておらず、それらは必ずしもヒトにおけるHFの治療における薬効を予測するものではない。
WO89/11521は、心臓血管病変の治療に有用なポリ不飽和酸を多量に含む混合物の抽出のための産業的プロセスを記載している。
US5502077、US5656667、US5698594およびIT1235879は、それぞれ、高グリセリド血症、コレステロール値の異常および高血圧に言及している。しかしながら、引用文献の各々は危険因子の治療を扱っており、実際のおよび明言された疾患を扱ってはいない。
US5753703は、心臓血管疾患、血管病変、糖尿病性末梢神経障害、およびアテローム性動脈硬化、血栓塞栓および組織疾患の予防および治療のために、ω−3系のポリ不飽和脂肪酸またはそれらのエステルと組み合わせて、L−カルニチンまたはその誘導体を使用することを記載している。
EP0409903は、高脂血症および関連病変、血栓症、心筋梗塞および血小板凝集を治療するために、アテローム性動脈硬化の予防における抗凝固剤として、脳梗塞の、血管運動痙攣により引き起こされる病巣および閉塞の、糖尿病およびその合併症の、慢性および急性炎症のおよび自己免疫症状の治療のために、胃腸部位における非ステロイド性抗炎症剤により引き起こされる副作用の防止において、および腫瘍予防において有用な、EPAおよびDHAおよび/またはそれらのエステルの高濃度混合物を調製するための方法を記載している。
CN1082909は、例えば認知症および心筋の梗塞を治療するための抗血栓剤および抗認知症薬としての、大豆リン脂質、マツヨイグサ(oenothera odorata)およびギンクゲチンと組み合わせられる、EPAおよびDHAおよびω−3系の他のポリ不飽和脂肪酸のエチルエステルに基づく組成物を記載している。
US5760081は、EPAを含む組成物の静脈内注射により心室心筋の切迫細動を予防する方法を記載しており、切迫細動のリスクがある被検体は既に心筋の梗塞のエピソードの主体であったことが多く、注射は梗塞エピソードから3時間以内に行われ、おそらく心腔内注射が用いられる。これらは、常に、心室細動の特定の治療のための非経口介入および極度の緊急事態の状況である。
Clinical Drug Investigation 15(6),473は、異常血漿リポタンパク症候を有し心筋の梗塞を経験している被検体において、トリグリセリドおよび総アポリポタンパクC IIIを減少させ抗トロンビンIIIを増加させるために、一日4gの投与量でEPAおよびDHAエチルエステルを投与することに関し、それらは結果として、これらの組成物の投与がリポタンパク値の改善となり、相対的危険因子の低下につながり得ることを示している。
WO00/48592は、心筋の梗塞を既に被っている患者における死、特に「突然死」を予防するために、25%体重(b.w.)を超える量でEPAおよびDHAエチルエステルの混合物を使用することを記載している。
医療分野において、心不全の患者において死亡を予防し、合計入院日数を減少させ、または心臓血管が理由の入院を減少させるために、安全で便利な方法が依然として求められている。
国際公開第02/058793号パンフレット
Lancet 1999 (354:447−55)
大規模臨床試験において、n−3 PUFAで3.5年以上治療した症候性心不全(HF)の患者が、心臓血管が原因の、特に不整脈による死亡の数、いかなる原因による入院の日数、および心臓血管が原因の入院日数、特に心室性不整脈による最初の入院の日数の、統計的に著しい減少を示すことが発見された。
さらに、所定のサブグループ分析が、左室駆出率(LVEF)40%未満、糖尿病および/または総コレステロール200mg/dl未満、好ましくは188mg/dl以下の患者が、いかなる原因による死亡と心臓血管が原因の入院とを併せた統計的に著しい減少を示すことも示した。
従来技術は前記特定の達成を決して言及も示唆もしていないので、これらの結果は驚くべきであり予想されないものである。実際、例えば、Lancet 1999(354:447−55)またはEuropean Heart Journal 2000(21;949−952)において、非致命的心臓血管事象(非致命的心筋梗塞および非致命的脳卒中)の割合がn−3 PUFA治療により変化しないと報告された。
試験プロフィール、および患者の処置に関する図である。 時間と全ての原因の死亡に対するKaplan−Meier曲線に関する図である。 時間と全ての原因の死亡、または心臓血管の理由による入院に対するKaplan−Meier曲線に関する図である。
従って、本発明の主な目的は、
心臓血管が原因の、特に不整脈による死亡を防止する、
いかなる原因による入院を減少させる、または
心臓血管が原因の入院を減少させる、特に心室性不整脈による最初の入院のリスクを減少させるための、および
症候性心不全の患者に3.5年より長く投与するための、
単独のまたは他の治療薬と組み合わせた薬剤としてのn−3 PUFAの使用である。
本発明の一つの好ましい態様は、心臓血管が原因の死亡または入院を減少させるための、および、左室駆出率(LVEF)40%未満、糖尿病および/または総コレステロール200mg/dl未満、好ましくは188mg/dl以下の症候性心不全の患者に3.5年より長く投与するための、単独のまたは他の治療薬と組み合わせた薬剤としてのn−3 PUFAの使用である。
従って、本発明のさらなる目的は、
心臓血管が原因の、特に不整脈による死亡を防止する、
いかなる原因による入院を減少させる、または
心臓血管が原因の入院を減少させる、特に心室性不整脈による最初の入院のリスクを減少させるのに有用な、および
症候性心不全の患者に3.5年より長く投与するのに有用な、
単独のまたは他の治療薬と組み合わせた薬剤の調製のためのn−3 PUFAの使用である。
本発明のさらなる好ましい態様は、心臓血管が原因の死亡または入院を減少させるのに有用な、および左室駆出率(LVEF)40%未満、糖尿病および/または総コレステロール200mg/dl未満、好ましくは188mg/dl以下の症候性心不全の患者に3.5年以上投与するのに有用な、単独のまたは他の治療薬と組み合わせた薬剤の調製のためのn−3 PUFAの使用である。
「n−3 PUFA」という用語(ω?3脂肪酸またはオメガ−3脂肪酸とも呼ぶ)は、共通してn−3位に炭素−炭素二重結合を有する、すなわち脂肪酸のメチル端からの三番目の結合を有する、長鎖ポリ不飽和脂肪酸の族、通常C16−C24、特にC20−C22鎖を有するものを意味する。自然に見つかる最も一般的なn−3脂肪酸の例が、以下の表に、提示された名称と共に報告されている。
Figure 0005563573
好ましくは、本発明のn−3 PUFAは、EPAおよびDHAを多量に含む脂肪酸の混合物、例えば、EPAとDHAの含量が、脂肪酸合計重量に基づいて25重量%超、好ましくは約30〜約100重量%、特に約75〜95重量%、より好ましくは少なくとも85重量%である脂肪酸混合物である。本発明のn−3 PUFAの合計含量について、好ましくは、脂肪酸合計重量に基づいて少なくとも90重量%のn−3 PUFAを含む脂肪酸混合物である。
本明細書で用いられる「n−3 PUFA」という用語は、それらの対応するC1−C3アルキルエステル、および/または、水酸化ナトリウムのような医薬的許容される塩基とのそれらの塩、リシン、アルギニン、またはコリンのようなアミノアルコールを包含することを意図する。エチルエステルが最も広く用いられ、本発明に好ましい。
本発明の組成物は好ましくは経口投与され、特に、ソフトゼラチンカプセルの状態で投与される。経口使用の場合、単位投与量は、通常、ω−3系のポリ不飽和脂肪酸100から1000mgであり、好ましくは500から1000mgまたは300−500mgであり、合計投与量は、関わる場合に従って、一日当たりまたは隔日当たり通常約0.1から3.0gであり、好ましくは一日当たり0.3から2.0gであり、特に一日当たり1.0gである。
この量の生成物を、所望の血中濃度に達するように、複数に分割された日用量または好ましくは単回投与量の状態で投与することができる。もちろん、臨床医は、患者の症状、年齢および体重に基づいて、投与すべき生成物(または別の治療薬との混合物)の量を変えることができる。
経口投与用の他のタイプの製剤、例えばハードカプセル、またはポリ不飽和脂肪酸が固体支持体に吸着されている錠剤も、本発明の目的に適している。エマルジョン、分散性賦形剤中の粒子、シロップ、液滴等、および滅菌溶液やエマルジョン等のような薬剤の全身的吸収を確保することができる他の投与形態も用いることができ、これらは病状の重症度に基づいて当業者により評価されるような非経口用途等に適している。
EPAとDHAエチルエステルの混合物を80重量%以上およびω−3ポリ不飽和脂肪酸エチルエステルを合計で90重量%以上含むEuropean Pharmacopea 2000(EuPh.2000)に示される組成物も、本発明の目的に適している。
本発明の使用に適した薬剤は、通常、医薬的に許容される少なくとも一種のビヒクルおよび/または少なくとも一種の希釈剤および/または少なくとも一種の界面活性剤および/または少なくとも一種の増粘剤および/または少なくとも一種のバインダーおよび/または少なくとも一種の潤滑剤および/または少なくとも一種の芳香剤および/または少なくとも一種の着色剤および/または少なくとも一種安定化剤などを含み、これらは、当業者が容易に選択することができる。
以下の表は、本発明により用いることができるn−3 PUFA組成物の例を報告するが、これらに限定されない。
Figure 0005563573
EPAとDHAとの最も好ましい比は、約0.6−1.1/1.3−1.8、特に0.9−1.5である。
好ましくは、脂肪酸合計重量に基づいて、EPA(エチルエステルとして)の含量は40〜51重量%であり、DHA(エチルエステルとして)の含量は34〜45重量%である。
有効成分として前記規格と満たすと共に本発明により用いることができる、n−3 PUFAを含む特定の薬剤が、既に市場で入手することができる。
「別の治療薬」という用語は、さらなる単一薬または、二種以上のさらなる薬、内科医の指示に従って好ましくは2〜10種、特に2〜6種の薬を意味し、これらは、組み合わせて、すなわちn−3 PUFAと一緒にまたは別々に(実質的に同時にまたは順次的に)投与することができる。
本発明によるそのような予防または組合せ療法のための治療薬は、例えば、ACE−阻害剤、NEP−阻害剤、ACE/NEP−阻害剤、アンギオテンシンI変換酵素阻害剤、利尿薬、陽性変力作用薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、細動脈および細静脈拡張薬、βブロッカーおよびジギタリスグリコシド、またはそれらの混合物である。
NEPは、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の分解ペプチダーゼである。
ACE−阻害剤は、例えば、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ホシノプリル、シラザプリル、ベナザプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルおよびデラプリル、特にシラザプリル、カプトプリルおよびエナラプリルである。
ACE/NEP−阻害剤は、例えば、オマパトリラート、サムパトリラートおよびL−フェニルアラニン、[(2S)−2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−4−(2−チアゾリル)(化合物Z13752A、Zambon Companyの生成物)である。
アンギオテンシンII受容体拮抗薬(アンギオテンシンII変換阻害剤)は、例えば、カンデサルタン、バルサルタンおよびロサルタンである。
利尿薬は、例えば、ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、トリアムテレン、クロフェナミド、フロセミド、トラセミド、エタクリン酸、エトゾリン、スピロノラクトンおよびアミロリドであり、当該分野でよく知られているカリウム保持性薬と一緒に用いる場合は、特にフロセミドおよびヒドロクロロチアジドである。
ドーパミン作動薬は、例えばドパミンおよびイボパミンである。
ホスホジエステラーゼ阻害剤は、例えばアムリノン、ミルリノン、エノキシモンおよびブクラデシン、特にアムリノンおよびエノキシモンである。
細動脈および細静脈拡張薬は、例えばヒドララジンおよびイソソルビド・ジニトレートである。
βブロッカーは、例えばビソプロロール、プラクトトール、メトプロロール、ブシンドール、カルベジロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロールおよびネビボロール、特にビソプロロール、カルベジロールおよびメトプロロールである。
ジギタリスグリコシド剤は、例えば、アセチルジギトキシン、アセチルジゴキシン、ジギトキシン、ジゴキシン、ラナトシドC、デスラノシド、メチルジゴキシンおよびギトホルマート、特にジギトキシン、ジゴキシン、アセチルジゴキシンおよびメチジゴキシンである。
陽性変力作用薬は、例えばピモベンダンおよびベスナリノン、特にピモベンダンである。
本発明により用いることができる別の治療薬はスタチンである。本発明により用いることができるスタチンは、ヒトの使用のために知られている任意のスタチンである。非限定的例は、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチンおよびロスバスタチンからなる群より選択されるスタチンであり、好ましくはシンバスタチンおよびロスバスタチンである。
本発明の心不全の患者に投与されるn−3 PUFAの好ましい投与量は経口日用量1gであり、治療の期間は3.5年より長い、好ましくは少なくとも4年である。
本発明のn−3 PUFAと組み合わせて心不全の患者に投与されるスタチンの好ましい投与量は経口日用量10mgであり、治療の期間は3.5年より長い、好ましくは少なくとも4年である。
本明細書で用いられる「入院」という用語は、各患者について病院に入る日数を意味する。
本明細書で用いられる「症候性心不全(HF)の患者」という用語は、European Society of CardiologyガイドラインによりNYHAクラスII−IV(ニューヨーク心臓協会分類)と分類される病因によるHF(心不全)の臨床的エビデンスを有する男性または女性を意味する。
心臓血管病理において、駆出率は、各心拍により心室から送り出される血液の分画である。駆出率という用語は、右室および左室の両方に適用される。限定されない場合、駆出率という用語は、特に左室に適用され、従って、これは左室駆出率(LVEF)の同義語である。
健常個体は、典型的には、駆出率が55%を超える。心筋梗塞または心筋症中に生じるような心臓の筋肉への損傷は、血液を拍出する心臓の性能を損ない、従って、駆出率を低下させる。
以下の実施例は、決して限定することなく本発明をさらに説明するものである。
(実施例1)
(n−3 PUFAによる治療の効果を評価するための臨床試験)
適格患者は、European Society of CardiologyガイドラインによりNYHAクラスII−IV(ニューヨーク心臓協会分類)と分類される病因によるHF(心不全)の臨床エビデンスを有する18歳以上の男性および女性であった。ただし、LVEF(左室駆出率または左室機能)を登録前3か月以内に測定したことを条件とする。LVEFが40%を超える場合、患者は、試験対象患者基準を満たすために、前年に少なくとも1回、HFのために病院に来ている必要があった。
全ての患者は、登録前に文書でのインフォームドコンセントを提出した。
試験に登録した患者の安全を監視し、試験の進行をモニターするために、独立したData and Safety Monitoring Boardを設置した。このボードは、独立した統計学者を介して全てのデータに通じていた。全ての原因の死亡としての効果を、所定の停止ルールを用いてモニターした。
患者は、二重盲検的に無作為に割り当てられて、1gのn−3 PUFA(平均比率が1−1.2のエチルエステルとしてのエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸850−882mg)または対応するプラセボの1カプセルを毎日摂取した。スタチンへの特異的適応または禁忌が示されない患者も、同時に無作為化して、経口ロスバスタチンまたは対応するプラセボの10mg/日を接種した(図1参照)。
患者を、n−3 PUFAで3.5年以上、中央値として3.9年間処理した。
慢性HFに対する効果が証明されている全ての治療(例えば、ACE−阻害剤、βブロッカー、利尿薬、ジギタリス、スピロノラクトン)が前向きに推薦された。
前記臨床的試験の理論的解釈および設計も、「The European Journal of Heart Failure 6 (2004) 635−641」に報告されている。試験の最後に得られた結果を、ここで、以下の表および図面に報告する。
(研究の終点および所定のサブグループ分析)
研究は、2つの共通の一次終点:すなわち死亡する時間および死亡または心臓血管で入院する時間を用いて設計した。二次的結果は、心臓血管による死亡;心臓血管による死亡またはHFによる入院、心臓血管による死亡または何らかの理由による入院;突然心臓死;何らかの理由による入院;心臓血管が理由の入院;HFによる入院;MI(心筋梗塞);脳卒中を含んでいた。
研究で記録された全ての事象は、予め合意された定義および手順に基づいて特別委員により盲検的に判定された。
全ての理由による死亡または心臓血管の理由による入院の併せた結果に対する研究薬剤の効果は、年齢(中央値の上側対下側);左室駆出率(LVEF40%超対LVEF40%未満);HFの病因(虚血性対非虚血性);機能的能力(NYHAクラスII対III−IV)(Eur Heart J,2001,22:1527−60も参照されたい);糖尿病の存在(存在対不存在);および基準総コレステロール値(中央値の上側対下側)に従って定義された患者のサブグループにおいて評価した。
(サンプルの寸法および統計的局面)
統計的分析を、0.05の全体的有意水準で行い、2つの一次終点に対して調節し、第一の終点(死亡の時間)は0.045の両側有意水準で試験し、第二の終点(死亡または心臓血管により入院する時間)は0.01の有意水準で試験した。2つの共通の一次終点間に相関がある場合、正味アルファ・スペンディング(alpha spending)が保存された。
治療群間の一次終点の比較を、ログランク検定により行った。治療効果の程度を評価するために、無作為化群間で不均衡であると分かった(p値<0.1)変数に対して調整されるCox比例ハザードモデルを用いた。95.5%および99%の信頼区間(CI)を、それぞれ第一および第二の共通一次終点について計算した。所定のサブグループにおける二次終点(調整分析)および複合一次終点への効果の程度を評価するために、Cox比例ハザードモデルを用いて95%(CI)のハザード比(HR)を計算した。観察時間の80%を大幅に超えて実験的治療を行った4994人の患者において主要プロトコールに違反することなく実施した2つの共通一次終点についてのプロトコールごとの分析を除いて、全ての分析は、治療企図(ITT)集団において行った。
研究(基準で、1および3年間)を通して脂質プロフィールの無作為化群間の相違を、変数の反復測定分析により試験した。実験パラメーターが正規性仮定を満たさなかった場合、対数変換を適用した。
全ての分析は、SASソフトウェア、バージョン8−2を用いて行った。
(結果)
合計で6975人の患者を無作為化し、3494人をn−3 PUFAを摂取するように割り当て、3481人をプラセボを摂取するように割り当てた(図1)。
薬物治療バックグラウンドの詳細を含む基準特性を表1に示す。患者の平均年齢は67歳であり、それらの42%が70歳を超えていた。女性が、合計集団の22%の割合を占めた。研究の開始において、患者の94%、65%および39%を、レニン−アンギオテンシン系のブロッカー、βブロッカーおよびスピロノラクトンでそれぞれ治療した。
Figure 0005563573
Figure 0005563573
Figure 0005563573
研究の主な結果を、2つの共通一次終点について図2aおよび2bに示す。両方の場合において、Kaplan−Maier曲線は治療開始から約2年後に分岐し始め、n−3 PUFA群における955人の患者(27.3%)およびプラセボ群における1014人の患者(29.1%)がいかなる原因により死亡し(HR 0.91、95.5%CI [0.83−0.99]、p=0−041)、また、全ての原因の死亡または心臓血管の理由による入院の共通一次結果が、n−3 PUFAおよびプラセボ群において1981人(56.7%)および2053人(59.0%)の患者においてそれぞれ得られた(HR 0.92、99% CI [0.85−0.99]、p=0.009)。
二次結果を表2に示す。
Figure 0005563573
n−3 PUFA群における結果事象の割合は、プラセボ群における割合より低かったが、脳卒中のみが例外であった。(a)心臓血管が原因の死亡(p=0.045)、(b)無作為化後に何らかの理由による最初の入院(p=0.049)または心臓血管が原因の最初の入院(p=0.026)、および(c)心臓血管による死亡またはいかなる原因による入院(p=0.043)の併せた終点、を経験した患者の割合は、n−3 PUFA群において著しく低かった。突然心臓死は、n−3 PUFAを割り当てられた患者の307人(8.8%)およびプラセボ群の患者の325人(9.3%)において起こった(HR 0.93、95%CI [0.79−1.08]、p=0.333)。無作為化後に初めてMIを起こした患者の数はn−3 PUFA群において107人およびプラセボ群において129人であり(p=0.121)、脳卒中は、n−3 PUFAを割り当てられた122人の患者およびプラセボ群の103人(p=0.271)の患者において起こった。HFによる最初の入院は、n−3 PUFAおよびプラセボ群において、それぞれ、978人(28.0%)および995人(28.6%)の患者において生じた(HR 00.94、95.5%CI [0.861.02]、p=0.147)。
心室性不整脈による最初の入院は、n−3 PUFA群において97/3494人(2.8%)の患者において生じ、プラセボ群において132/13481人(3.8%)の患者において生じた(HR 0.72、95.5%CI [0.55−0.93]、p=0.013)。
死亡の原因を表3に報告する。
Figure 0005563573
HFの悪化が死亡の大部分を占め、次いで推定不整脈による死亡である(立証された、または明確な原因が見つからない場合、推定される不整脈死または突然死と定義される)。推定不整脈死は、n−3 PUFA群において274人(7.8%)の患者で、およびプラセボ群において304人(8.7%)の患者で起こった(HR 0.88、95%CI [0.751.04]、p=0.141)。HFの悪化による死亡は、n−3 PUFA群およびプラセボ群において、それぞれ、319人(9.1%)および332人(9.5%)の患者で起こった(HR 0.92、95%CI [0.79−1.07]、p=0.275)。非心臓血管原因および癌による死亡の数は、2つの治療群において類似していた。
全ての原因による死亡または心臓血管の理由による入院のリスクは、全ての所定のサブグループにおいてn−3 PUFAにより同様に影響され、治療効果が不均一であるエビデンスは無かった(表4参照)。
Figure 0005563573
予想された通り、トリグリセリドの血漿中濃度は、n−3 PUFA治療を割り当てられた患者において、基準における中央値126mg/dLから、1年後および3年後において、それぞれ、120mg/dLおよび119mg/dLに僅かに減少したが、プラセボ群においては変化しなかった(相互作用時間治療:p<0.0001)。n−3 PUFAまたはプラセボを割り当てられた患者の間で、総HDLまたはLDLコレステロールの相違は観察されなかった。
要約すると、登録された患者は6975人であり、3494人はn−3 PUFAが割り当てられ、3481人はプラセボが割り当てられた。平均年齢は67歳であり、病因は50%が虚血性であった。いかなる原因により死んだ患者は、n−3 PUFA群およびプラセボ群において、それぞれ、955人(27%)および1014人(29%)であった(危険率0.91、95.5%信頼区間[0.83−0.99]、p=0.041)。死亡またはCV入院の共通一次結果は、n−3 PUFA群において1981人(57%)の患者において経験され、プラセボ群において2053人(59%)の患者において経験された(危険率0.92、99%信頼区間[0.85−0.99]、p=0.009)。二次結果に関しては、n−3 PUFAは、CV死亡の割合(p=0.045)、合計入院日数(p=0.049)およびCVの理由による入院(p=0.026)、ならびにCV死亡または合計入院日数の併せた終点(p=0.043)を減少させる。薬物の安全性は優れていた。
得られた結果は、試験に含まれる患者の大きな集団において、1g/日のn−3 PUFAを長期投与することが、全ての原因による死亡および心臓血管が理由の入院の両方を減少させるのに有効であったことを示している。この利益の重要性は、a)推薦された療法により既に入念に治療された集団において得られたこと、b)全ての所定のサブグループを通して一貫していたこと、およびc)充分に従順な患者における大きな利益と両立し得るプロトコールごとの分析を見つけたことによりさらに支持されたこと、を考慮して評価すべきである。n−3 PUFAを決して試験しなかったHFの症候性患者の脆弱集団において悪影響は見つからず、薬剤の安全性が確認されている。
図2aおよび表3に示されるように、合計死亡率(1.8%)の絶対的リスク削減のうち、主要な部分(50%)が推定不整脈死亡に起因する。さらに、最初の心臓血管入院の絶対的リスク削減における47%が、心室性不整脈による入院の減少によるものであった。
この治療は、既に推薦されている薬理学的治療により提供されたものの上に、減少した死亡および心臓血管入院としての有益な利点を提供した。これは、n−3 PUFAで4年近く治療した56人の患者ごとの1件の死亡事象の減少に相当する。

Claims (8)

  1. 心臓血管が原因の死亡または入院を減少させるために、左室駆出率(LVEF)40%未満、糖尿病および/または総コレステロール200mg/dl未満の症候性心不全の患者に、3.5年より長く投与されるように用いられる、n−3 PUFAを含み、該n−3 PUFAが、EPAおよびDHAが脂肪酸合計重量に基づいて75〜95重量%の量である脂肪酸の混合物である、症候性心不全治療用組成物
  2. 前記n−3 PUFAが、EPAおよびDHAの含量が脂肪酸合計重量に基づいて少なくとも85重量%である脂肪酸の混合物であり、n−3 PUFAの合計含量が脂肪酸合計重量に基づいて少なくとも90重量%である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記n−3 PUFAが、0.9〜1.5の比のEPAとDHAとのエチルエステルの混合物であり、EPAエチルエステルの含量が脂肪酸合計重量に基づいて40〜51重量%であり、DHAエチルエステルの含量が脂肪酸合計重量に基づいて34〜45重量%である、請求項1または2に記載の組成物
  4. 症候性心不全の患者に投与されるn−3 PUFAの投与量が経口日用量1gである、請求項1から3のいずれかに記載の組成物
  5. n−3 PUFAと同時にまたは順次的に投与するさらなる1または複数の薬剤を含む、請求項に1から4のいずれかに記載の組成物
  6. 前記薬剤が、ACE−阻害剤、NEP−阻害剤、ACE/NEP−阻害剤、アンギオテンシンI変換酵素阻害剤、利尿薬、陽性変力作用薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、細動脈および細静脈拡張薬、βブロッカーおよびジギタリスグリコシド、またはそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の組成物
  7. 前記薬剤がスタチンである、請求項5に記載の組成物
  8. 前記スタチンが、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチンおよびロスバスタチンからなる群より選択される、請求項7に記載の組成物
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