JP5560787B2 - フィルタ装置 - Google Patents
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y(n)=y(n−1)*α (1)
のように表される。
n=1の時点では、インパルスであることからx(1)=“00000”になると共に、係数乗算器112からy(0)*αが出力されることから、加算器110からはy(1)=y(0)*αが出力される。すなわち、
y(1)=“10000”*“0.11”=“01100”
となる。
y(2)=“01100”*“0.11”=“01001”
y(3)=“01001”*“0.11”=“00110.11”
この場合、y(3)は小数となるがHPF100では整数値を出力することから、値を整数に丸める必要がある。そこで、切捨てにより値を整数に丸めると、
y(3)=“00110.11”=“00110”
となる。以下、同様にして切捨てにより値を整数に丸めて、y(4)〜y(8)を求めると、次式に示すようになる。
y(4)=“00110”*“0.11”=“00100.10”=“00100”
y(5)=“00100”*“0.11”=“00011.00”=“00011”
y(6)=“00011”*“0.11”=“00010.01”=“00010”
y(7)=“00010”*“0.11”=“00001.10”=“00001”
y(8)=“00001”*“0.11”=“00000.11”=“00000”
このように、n=8の時点においてy(8)はゼロとなって、HPF100の出力はn=8の時点においてゼロに収束するようになる。
y(3)=“00110.11”=“00111”
以下、同様にして四捨五入により値を整数に丸めて、y(4)〜y(8)を求めると、次式に示すようになる。
y(4)=“00111”*“0.11”=“00101.01”=“00101”
y(5)=“00101”*“0.11”=“00011.11”=“00100”
y(6)=“00100”*“0.11”=“00011.00”=“00011”
y(7)=“00011”*“0.11”=“00010.01”=“00010”
y(8)=“00010”*“0.11”=“00001.10”=“00010”
となり、y(9)以降も“00010”となる。このようにy(n)がy(n−1)と同じ値となって、ゼロに収束することなく一定の値となってしまう現象をリミットサイクルと呼ぶ。また、係数αが負の値の場合、10進数で5,−5,5,−5,5,−5,・・・のように発振することもある。これもリミットサイクルとなる。
また、図7(b)に示す従来のHPF100において、量子化ビット数を5ビット、係数αを2進数で“0.11”とした時に、値“10000”のインパルスが入力された際に四捨五入により値を整数に丸めた場合のインパルス応答を図9に示す。図9において、横軸は時点nとされ、縦軸は10進数で表した出力ディジタル信号y(n)の値とされている。図9には、HPFにおけるインパルス応答の理論的な応答のグラフも示されており、理論的な応答と対比すると四捨五入により値を整数に丸めた場合は、n=7の時点までは理論値に近い応答となるが、n=7の時点以降においてy(n)が“00010”(10進数で「2」)と一定になり、インパルス応答にリミットサイクルが生じてしまうことが分かる。
図1に示す第1実施例のHPF1は1次巡回型のディジタルフィルタとされており、遅延手段11と係数乗算器12からなる帰還路を有している。x(n)は標本化周期Tで標本化された入力ディジタル信号であり、y(n)は標本化周期T毎の出力ディジタル信号である。遅延手段11は、y(n)を単位時間とされる1標本化周期Tだけ遅延する遅延手段であり、遅延手段11からの信号y(n−1)に係数乗算器12により係数αが乗算される。係数乗算器12からの信号y(n−1)*α=y’(n−1)は値丸め手段において有効桁に値が丸められる。値丸め手段は、有効桁未満を四捨五入することにより値を丸めるアルゴリズムとされる第1丸めアルゴリズム手段13と、有効桁未満を切り捨てることにより値を丸める第2丸めアルゴリズム手段14と、第1丸めアルゴリズム手段13と第2丸めアルゴリズム手段14による丸め結果を演算する毎に選択して出力するセレクタ15から構成されている。値丸め手段により有効桁に値が丸められた信号y”(n+1)は加算器10において、入力ディジタル信号x(n)と加算されて出力ディジタル信号y(n)が導かれる。すなわち、時点nのy(n)は、
y(n)=x(n)+y”(n−1) (2)
のように表される。
y’(0)=“10000”*“0.11”=“01100”
となる。値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択するが、y’(0)には有効桁未満の桁(小数桁)が含まれていないことから、セレクタ15からの信号y”(0)=y’(0)となる。すなわち、y(1)=y”(0)=“01100”となる。
なお、y’(n−1)に小数が生じない場合は、第1丸めアルゴリズム手段13および第2丸めアルゴリズム手段14からの信号は同じになることから、セレクタ15がいずれの丸め結果を選択しても出力される信号は同じとなる。
n=2の時点においてはn=1の時点と同様に演算されて、y(2)は次式に示すようになる。
y(2)=y”(1)=y’(1)=“01100”*“0.11”=“01001”
y’(2)=“01001”*“0.11”=“00110.11”
となってy’(2)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00110.11”は、“00111”と丸められ、y”(2)=“00111”となる。すなわち、y(3)は、
y(3)=y”(2)=“00111”
となる。
y’(3)=“00111”*“0.11”=“00101.01”
となってy’(3)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00101.01”は、“00101”と丸められ、y”(3)=“00101”となる。すなわち、y(4)は、
y(4)=y”(3)=“00101”
となる。
y’(4)=“00101”*“0.11”=“00011.11”
となってy’(4)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00011.11”は、“00100”と丸められ、y”(4)=“00100”となる。すなわち、y(5)は、
y(5)=y”(4)=“00100”
となる。
n=6の時点におけるy’(5)は、
y’(5)=“00100”*“0.11”=“00011.00”
となってy’(5)は有効桁未満の小数が生じない。この場合、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択するが、y”(5)=y’(5)となる。すなわち、y(6)は、
y(6)=y”(5)=“00011”
となる。
y’(6)=“00011”*“0.11”=“00010.01”
となってy’(6)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00010.01”は、“00010”と丸められ、y”(6)=“00010”となる。すなわち、y(7)は、
y(7)=y”(6)=“00010”
となる。
n=8の時点におけるy’(8)は、
y’(7)=“00010”*“0.11”=“00001.10”
となってy’(7)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00001.10”は、“00010”と丸められ、y”(7)=“00010”となる。すなわち、y(8)は、
y(8)=y”(7)=“00010”
となり、y(7)と同じ値となる。
y’(8)=“00010”*“0.11”=“00001.10”
となってy’(8)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00001.10”は、“00010”と丸められ、y”(8)=“00010”となる。すなわち、y(9)は、
y(9)=y”(8)=“00010”
となり、y(8)と同じ値となる。
n=10の時点におけるy’(9)は、
y’(9)=“00010”*“0.11”=“00001.10”
となってy’(9)は有効桁未満の小数が生じる。ここでは、10回目の演算周期となることから値丸め手段のセレクタ15は、第2丸めアルゴリズム手段14による丸め結果を選択する。第2丸めアルゴリズム手段14では、有効桁未満の小数値が切り捨てられることから“00001.10”は、“00001”と丸められ、y”(9)=“00001”となる。すなわち、y(10)は、
y(10)=y”(9)=“00001”
となる。
y’(10)=“00001”*“0.11”=“00000.11”
となってy’(10)は有効桁未満の小数が生じる。ここで、値丸め手段のセレクタ15は、第1丸めアルゴリズム手段13による丸め結果を選択する。第1丸めアルゴリズム手段13では、有効桁未満の小数値が四捨五入されることから“00000.11”は、“00001”と丸められ、y”(10)=“00001”となる。すなわち、y(11)は、
y(11)=y”(10)=“00001”
となり、y(10)と同じ値となる。
n=12ないしn=19の時点では、n=11の時点と同様の演算内容とされるので説明は省略するがy(12)ないしy(19)の値は“00001”となる。
そして、n=20の時点におけるy’(19)は、
y’(19)=“00001”*“0.11”=“00000.11”
となってy’(19)は有効桁未満の小数が生じる。ここでは、20回目の演算周期となることから値丸め手段のセレクタ15は、第2丸めアルゴリズム手段14による丸め結果を選択する。第2丸めアルゴリズム手段14では、有効桁未満の小数値が切り捨てられることから“00000.11”は、“00000”と丸められ、y”(19)=“00000”となる。すなわち、y(20)は、
y(20)=y”(19)=“00000”
とゼロに収束するようになる。
図2を参照すると、本発明にかかるHPF1は、n=7の時点までは理論値に近い応答となり、n=8,9の時点においてはn=7の時点と同じ値のy(n)が出力される。しかし、n=10の時点においてy(10)は“1”だけゼロ方向へ変化するようになる。さらに、n=11〜19の時点においてはn=10の時点と同じ値(“00001”)のy(n)が出力されるが、n=20の時点においてy(20)は“1”だけゼロ方向へ変化してゼロに収束するよう変化するようになる。このように、本発明の第1実施例にかかるフィルタ装置においては、応答特性が理論値に近い応答とすることができると共に、リミットサイクルが生じることのないフィルタ装置とすることができる。
図3に示す第2実施例のHPF2も1次巡回型のディジタルフィルタとされており、遅延手段24と係数乗算器25からなる帰還路を有している。第2実施例のHPF2は、加算器20と遅延手段24との間に値丸め手段を設けるようにした構成とされている。すなわち、遅延手段24は、出力ディジタル信号y(n)を単位時間とされる1標本化周期Tだけ遅延する遅延手段であり、遅延手段24からの信号y(n−1)に係数乗算器25により係数αが乗算される。係数乗算器25からの信号y(n−1)*α=y’(n−1)は加算器20において、入力ディジタル信号x(n)と加算される。加算器20からの信号y’(n)は値丸め手段において有効桁に値が丸められる。値丸め手段は、有効桁未満を四捨五入することにより値を丸めるアルゴリズムとされる第1丸めアルゴリズム手段21と、有効桁未満を切り捨てることにより値を丸める第2丸めアルゴリズム手段22と、第1丸めアルゴリズム手段21と第2丸めアルゴリズム手段22による丸め結果を演算周期毎に選択して出力するセレクタ23から構成されている。値丸め手段により有効桁に値が丸められた信号は出力ディジタル信号y(n)として出力される。
このような、第2実施例のHPF2のインパルス応答は、第1実施例のHPF1のインパルス応答と同様となる。例えば、図2に示す第2実施例のHPF2に、入力ディジタル信号として値“10000”のインパルスがn=0の時点で入力された場合のインパルス応答は、量子化ビット数の有効桁数を5ビット、係数αを10進数で0.75(2進数で“0.11”)とすると共に、セレクタ23は10回に1回だけ第2丸めアルゴリズム手段22による丸め結果を選択するものとすると、図2に「本発明」として示すインパルス応答と同様となる。従って、本発明の第2実施例にかかるフィルタ装置においては、応答特性が理論値に近い応答とすることができると共に、リミットサイクルが生じることのないフィルタ装置とすることができる。
図4に示す第3実施例のHPF3は2次巡回型のディジタルフィルタとされており、第3実施例のHPF3は、遅延手段34と係数乗算器35からなる第1帰還路と、遅延手段36と係数乗算器37からなる第2帰還路とを有している。すなわち、遅延手段34は、出力ディジタル信号y(n)を単位時間とされる1標本化周期Tだけ遅延する遅延手段であり、遅延手段34からの信号y(n−1)に係数乗算器35により係数α1が乗算される。係数乗算器35からの信号y(n−1)*α1=y’(n−1)は加算器30に入力される。また、遅延手段36は、信号y(n−1)を単位時間とされる1標本化周期Tだけ遅延する遅延手段であり、遅延手段36からの信号y(n−2)に係数乗算器37により係数α2が乗算される。係数乗算器37からの信号y(n−2)*α2=y’(n−2)も加算器30に入力される。
これにより、第3実施例に示す2次のHPF3や高次のHPFのインパルス応答においても、応答特性が理論値に近い応答とすることができると共に、リミットサイクルが生じにくくなるフィルタ装置とすることができる。
図5に示すミキサー4は、CPU(Central Processing Unit)40が管理プログラム(OS:Operating System)を実行しており、ミキサー4の全体の動作をOS上で制御していると共に、楽音制御処理等を実行している。ROM(Read Only Member)41には、音色データやCPU40が実行する楽音制御処理等の動作ソフトウェアが格納されている。ROM41を書き換え可能なメモリとすることにより、動作ソフトウェアを書き換え可能となり動作ソフトウェアのバージョンアップを容易に行うことができる。RAM(Random Access Memory)42には、CPU40のワークエリアや各種データ等の記憶エリアが設定されている。
図6において、複数のアナログ入力ポート(AD52)に入力された複数のアナログ信号はディジタル信号に変換されて入力パッチ(Input Patch)60に入力される。また、複数のディジタル入力ポート(DD54)に入力された複数のディジタル信号は、そのまま入力パッチ60に入力される。入力パッチ60では、信号の入力元である複数の入力ポートの何れか1つの入力ポートを、Nチャンネル(Nは1以上の整数:例えば96チャンネル)とされる入力チャンネル部61の各入力チャンネル(Input Channel)61−1,61−2,61−3,・・・・,61−Nに選択的にパッチ(結線)している。各入力チャンネル61−1〜61−Nには、入力パッチ60でパッチされた入力ポートからのオーディオ信号In.1,In.2,In.3,・・・,In.Nがそれぞれ供給される。
このようなミキサー4におけるDSP50において動作する本発明にかかるフィルタ装置では、応答特性が理論値に近い応答とすることができると共に、リミットサイクルが生じることのないフィルタ装置とすることができる。これにより、本発明にかかるフィルタ装置が適用されたミキサー4においては、聴取した際に良好に聞こえる音響信号を出力することができると共に、音響信号が出力されたままになることを防止することができるようになる。
さらに、本発明のフィルタ装置において、値丸め手段におけるセレクタは、第1丸めアルゴリズム手段による丸め結果を選択する回数iに対して、第2丸めアルゴリズム手段による丸め結果を選択する回数jがi≫j(i,jは正の整数)とされている。この場合、セレクタは一例として10回に1回だけ第2丸めアルゴリズム手段による丸め結果を選択するようにしたが、これに限ることはなくセレクタが第2丸めアルゴリズム手段による丸め結果を選択する回数を、数%に相当する回数とすることができる。この場合、セレクタが第2丸めアルゴリズム手段による丸め結果を選択する周期は一定周期とする必要はなくランダムな周期で選択するようにしても良い。
なお、本発明のフィルタ装置はHPFに限るものではなく、ローパスフィルタやバンドパスフィルタ等に適用できるものである。また、m本の帰還路を有しているm次のフィルタ装置とされている場合は、セレクタは第2丸めアルゴリズム手段の丸め結果を選択する際に、m回連続して選択するようになされる。
Claims (3)
- 単位時間遅延する遅延手段および係数を乗算する係数乗算器とを含む帰還路を有し、該帰還路の出力信号と入力信号とを加算する加算器の出力が前記帰還路に入力される経路を備えるフィルタ装置であって、
前記帰還路の出力から前記帰還路に入力するまでの経路に設けられており、第1丸めアルゴリズムと第2丸めアルゴリズムによる丸め結果をセレクタにより演算する毎に選択して出力する値を有効桁に丸める丸め手段を備え、
前記第1丸めアルゴリズムは理論値に近い特徴を得られるがリミットサイクルを生じる恐れがあるアルゴリズムとされ、前記第2丸めアルゴリズムは前記第1丸めアルゴリズムに比べリミットサイクルが生じにくいアルゴリズムとされており、前記セレクタでは第1丸めアルゴリズムによる丸め結果を選択する回数iに対して、第2丸めアルゴリズムによる丸め結果を選択する回数jがi≫j(i,jは正の整数)とされていることを特徴とするフィルタ装置。 - 前記第1丸めアルゴリズムは有効桁未満をk捨(k+1)入(kは正の整数)することにより値を丸めるアルゴリズムとされ、前記第2丸めアルゴリズムは有効桁未満をゼロ方向へ切り捨てることにより値を丸めるアルゴリズムとされていることを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
- m本の前記帰還路を有しているm次のフィルタ装置とされている場合は、前記セレクタは前記第2丸めアルゴリズムの丸め結果を選択する際に、m回連続して選択することを特徴とする請求項1または2記載のフィルタ装置。
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