JP5560503B2 - 黒毛和種の成長に関わる遺伝子変異 - Google Patents

黒毛和種の成長に関わる遺伝子変異 Download PDF

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本発明は、ウシについて、グレリン受容体遺伝子上の変異を検出することを特徴とする、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法に関する。
黒毛和種は、日本が世界に誇る貴重な遺伝資源の一つであり、また優良・高品質な動物タンパク質資源である。将来、世界的規模での食料危機が危惧される中で、日本の食料自給率向上のために黒毛和種の産肉量の一層の向上が求められている。さらに、近年の分子生物学的解析手法とウシゲノム研究の進展により増体に関わる遺伝子の同定とその変異解析は進展しているものの、黒毛和種における増体に関わる有効な遺伝子とその変異の同定並びにその遺伝的変異の生産現場での利用は極めて限られている。
黒毛和種において枝肉重量等増体形質に影響を及ぼす遺伝子とその変異に関しては、成長ホルモン遺伝子の変異(GH1:c.457C>G、c.593C>T、第19染色体)についての報告がある(特許文献1)。また、マイクロサテライトDNA多型を用い、黒毛和種での枝肉重量等増体形質に影響を及ぼす遺伝子座の染色体上での領域決定の研究が行われているが(染色体番号:4,5,14)、未だ遺伝子の特定やその変異の解明までには至っていない(非特許文献1、2)。
一方、胃で生産され摂食促進と成長ホルモン放出作用をもつ新規ホルモン「グレリン」は、視床下部弓状核や脳下垂体成長ホルモン放出細胞等で発現するグレリン受容体を通してその機能を発揮する。このグレリン受容体の遺伝子発現が抑制されたラットは成長が明らかに抑制される。さらに、ヒトでは、グレリン受容体遺伝子の変異と肥満等摂食調節形質との間に関連性が指摘されている(非特許文献3、4)。また、ニワトリでは成長ホルモン多型(SNPs)と脂肪蓄積との関連性が指摘されている(非特許文献5)。
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
千国・三橋、特許申請番号CA2441938 Journal of Animal Science, 82, 3415-3420, 2004 Animal Genetics, 37,51-54, 2006 Miyasaka K., et al. J Neural Transm. 113(9):1279-85, 2006 Baessler A., et al. Diabetes. 54(1):259-67, 2005 Lei M., et al., Poult Sci. 86(5):835-42, 2007
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウシについて、グレリン受容体遺伝子上の変異を検出することを特徴とする、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法を提供することにある。
上述のように、ラットの成長やヒトの肥満とのグレリン受容体遺伝子との関連が指摘されてきた一方で、ウシにおいてのグレリン受容体遺伝子の変異の解明、並びにその変異と枝肉重量等増体形質との関連に関する研究や技術開発はこれまでに報告されていない。
そこで本発明は、黒毛和種においてグレリン受容体遺伝子の変異を明らかにし、黒毛和種の枝肉重量等増体形質との関連性を統計学的に行い、黒毛和種の増体が良い効果をもつ遺伝子タイプを明らかにすることを目的とする。なお、本遺伝子のタイピングに際しては、容易に遺伝子型が判別できる技術であることが要求される。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。
まず、黒毛和種におけるグレリン受容体遺伝子のプロモーター領域、5’非翻訳領域、エキソン1領域、エキソン2領域、イントロン1領域、3’非翻訳領域の塩基置換変異並びに5’非翻訳領域の2塩基反復(マイクロサテライト)数の変異を解析し、5’非翻訳領域、エキソン1領域、並びに5’非翻訳領域の2塩基反復(マイクロサテライト)数の変異を見いだした。このような例はこれまでに報告されていない。また、本遺伝子座は第1染色体上にあり従来報告されている成長ホルモン遺伝子座位等とは異なる。
さらに、グレリン受容体遺伝子の塩基レベルでの変異と枝肉重量等増体形質との関連性について、環境効果を考慮した黒毛和種間接検定牛集団1,285頭を用いて統計学的に検討したところ、5’非翻訳領域に存在する1塩基置換部位(翻訳開始点から-7位)と2塩基反復(マイクロサテライト)数変異の組み合わせ、すなわちハプロタイプが枝肉重量、屠殺前重量、検定終了時体重、1日平均増体重、バラ厚、皮下脂肪厚の形質に有意に関連していることを見いだした。
本発明の黒毛和種におけるグレリン受容体遺伝子の塩基レベルでの変異は、増体形質に影響を及ぼすものである。枝肉重量に良い効果のハプロタイプをヘテロ型に持つ個体は、通常の効果のハプロタイプをホモ型に持つ個体より約3%枝肉重量が増加し、枝肉重量に良い効果のハプロタイプをホモ型に持つ個体は、通常の効果のハプロタイプをホモ型に持つ個体より約5%枝肉重量が増加することが期待できる。
増体形質に良い影響をもつグレリン受容体遺伝子の頻度は、黒毛和種個体集団において約0.2と推定される。したがってこの優良遺伝子の頻度を増加させる余地は大きい。
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔20〕を提供するものである。
〔1〕 被検ウシについて、グレリン受容体遺伝子上の変異を検出することを特徴とする、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法であって、以下の工程(a)から(d)の工程を含む方法。
(a)被検対象となるウシから、DNAを抽出する工程
(b)抽出したDNAにおいて、多型部位を含むDNA断片を増幅する工程
(c)増幅したDNA断片を解析し、多型を検出する工程
(d)(c)の工程において、検出された変異に基づき、産肉形質を決定する工程
〔2〕 産肉形質が、産肉量であることを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔3〕 産肉形質を決定するための対象形質が、枝肉重量、屠殺前重量、検定終了時体重、1日平均増体重、バラ厚、皮下脂肪厚、推定歩留のいずれかである、〔1〕または〔2〕に記載の判定方法。
〔4〕 多型がマイクロサテライト多型である、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位に相当する多型部位において、マイクロサテライト多型を検出することを特徴とする、〔4〕に記載の方法。
〔6〕 〔1〕に記載の工程(d)において、相同染色体のうち少なくとも一つのアリル反復数が、19、21、22、23、24、26、29または33である場合に、産肉量が多いと決定することを特徴とする、〔4〕に記載の方法。
〔7〕 〔1〕に記載の工程(b)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行なわれることを特徴とする、〔4〕に記載の方法。
〔8〕 〔1〕に記載の工程(c)において、増幅されたDNA断片の長さを決定することにより、マイクロサテライト多型を検出することを特徴とする〔4〕に記載の方法。
〔9〕 〔1〕に記載の工程(c)において、増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することにより、マイクロサテライト多型を検出することを特徴とする〔4〕に記載の方法。
〔10〕 多型が一塩基多型である、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕 多型部位において、ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がCである場合と比較してAである場合に、産肉量が多いと決定する〔10〕に記載の方法。
〔12〕 多型部位において、ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がAである場合と比較してCである場合に、産肉量が少ないと決定する〔10〕に記載の方法。
〔13〕 〔1〕に記載の工程(b)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行なわれることを特徴とする、〔10〕に記載の方法。
〔14〕 〔1〕に記載の工程(c)において、制限断片長多型(RFLP)を検出することにより、一塩基多型の存在を検出することを特徴とする〔10〕に記載の方法。
〔15〕 制限酵素Msp Iを用いて、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の一塩基多型を検出することを特徴とする、〔14〕に記載の方法。
〔16〕 〔1〕に記載の工程(c)において、増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することにより、一塩基多型を検出することを特徴とする〔10〕に記載の方法。
〔17〕 〔1〕に記載の工程(c)において、一塩基多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするプローブにより、一塩基多型を検出することを特徴とする、〔10〕に記載の方法。
〔18〕 ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するプローブ。
〔19〕 以下の(a)または(b)に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチド。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位の多型部位
(b)配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位の配列に相当する多型部位
〔20〕 〔18〕に記載のプローブ、または、〔19〕に記載のプライマーを含む、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定するためのキット。
本発明により、黒毛和種の産肉形質に関連する遺伝子上の領域が明らかとなり、当業者に過度の負担を強いることなく、黒毛和種の産肉形質を決定することができる。
本発明は、黒毛和種における枝肉重量等の増体形質の遺伝的な改良のための候補種雄牛の選抜、生産現場での肥育子牛の選抜において、有効な遺伝子マーカーとして畜産分野で広範な利用が期待される。また、候補種雄牛の選抜にあっては、直接検定の効果をさらに上げることができる特色を有している。
本発明により見出された、ウシグレリン受容体遺伝子の5'非翻訳領域における、増体形質に関連するマイクロサテライト領域は、他の生物種の当該領域には見られない。したがって、本発明のマイクロサテライト多型および一塩基多型を組み合わせることにより、他の生物種と比較しても、黒毛和種の増体形質をより効率的に判定することが可能となった。
〔発明の実施の形態〕
本発明者らは、黒毛和種においてグレリン受容体遺伝子の変異を明らかにし、黒毛和種の枝肉重量等増体形質との関連性を統計学的に行い、黒毛和種の増体に良い効果をもたらす遺伝子タイプを明らかにした。本発明は、これらの知見に基づくものである。
本発明は(a)被検対象となるウシから、DNAを抽出する工程、(b)抽出したDNAにおいて、多型部位を含むDNA断片を増幅する工程、(c)増幅したDNA断片を解析し、多型を検出する工程、(d)(c)の工程において、検出された変異に基づき、産肉形質を決定する工程を含む、被検ウシについて、グレリン受容体遺伝子上の変異を検出することを特徴とする、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法に関する。
本発明におけるウシグレリン受容体遺伝子は、7回膜貫通構造を持つGタンパク質共役型受容体をコードしており、主に視床下部弓状核や脳下垂体成長ホルモン放出細胞等に発現して、胃から分泌するグレリンシグナルの伝達に必要な受容体遺伝子である。上記ウシグレリン受容体遺伝子およびその周辺配列の塩基配列を配列番号:1に示す。
当該配列は、当業者においては、公共の遺伝子データバンク、例えば、NCBIアクセッション番号NW_001493715によって取得することが可能である。NW_001493715に開示された塩基配列において、本願に係るウシグレリン受容体遺伝子およびその周辺配列(配列番号:1)は756,821位〜763,282位に相当する部分である。
本発明における産肉形質の判定が適用されるウシは、肉用牛であり、好ましくは黒毛和種である。
本発明において、「産肉形質」とは肉用牛における産肉量または肉質等を客観的に評価する基準を示す。産肉形質を決定するための対象形質としては、検定開始日齢、検定開始体重、検定開始体高、検定終了体重、検定終了体高、1日平均増体重、屠殺前体重、枝肉重量、ロース芯面積、バラ厚、皮下脂肪厚、推定歩留、筋間脂肪厚、BMS番号(脂肪交雑番号)などが挙げられるが、本発明で見出された遺伝子変異で優劣を判定できる産肉形質として、好ましくは、枝肉重量、屠殺前重量、検定終了時体重、1日平均増体重、バラ厚、皮下脂肪厚、推定歩留が挙げられる。
産肉形質は当業者であれば、公知の方法、文献などを参照して、容易に測定することができる。例えば、和牛登録実務必携(平成17年度版、社団法人 全国和牛登録会編、第7章 種雄牛の産肉能力検定、第2編定款・規程類 III種雄牛の検定方法)などを参照することができる。
また、本発明において「産肉形質を判定する」とは、被検対象となる肉用牛の産肉形質が、ウシグレリン受容体遺伝子に変異を持たない個体の産肉形質と比較して、有意に優れた形質を有するか否かを判定することをいう。本発明におけるウシグレリン受容体遺伝子の変異を有する個体は、変異を持たない個体の産肉形質と比較して、上記産肉形質を決定するための各対象形質において2〜10%、好ましくは2〜5%、さらに好ましくは2〜4%程度の産肉量の増加を示す。
本発明における「多型」の第一の態様としては、マイクロサテライト多型を挙げることができる。
マイクロサテライト配列とは、ゲノム上に存在する短い単位配列の繰り返しからなる繰り返し配列をいう。ゲノム上の特定の位置にあるマイクロサテライト配列は個体により繰り返し数が異なる場合があり、多型が存在する。
本発明のマイクロサテライト多型としては、例えば、配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位に相当する多型部位における多型を挙げることができる。
本発明のマイクロサテライト配列の繰り返し配列の種類および単位数は個体によって異なるが、好ましくは相同染色体のうち少なくとも一つの染色体における、マイクロサテライトの2塩基(TGまたはTC)反復数が、各15、19、21、22、23、24、26、29または33、より好ましくは反復数が19の場合に、産肉形質が優れていると決定することができる。
本発明の方法は、(a)被検対象となるウシから、DNAを抽出する工程、を含む。DNAの抽出は、当業者においては公知の方法によって行なうことができる。まず、ウシからDNA試料を調製する。DNA試料の調製は、例えば、ウシ各種組織、血液、精液サンプルより行うことができるが、これらに特に限定されない。これらのサンプルは市販のものを用いてもよいし、自ら採取して得てもよい。ウシからのDNAの抽出は、当業者においては一般的に公知の方法、例えば、フェノール・クロロホルム法または市販のゲノムDNA抽出キットを用いて行うことができる。
本発明の方法においては次いで、(b)抽出したDNAにおいて、多型部位を含むDNA断片を増幅する工程、を行なう。該DNAの増幅は、例えば、本発明の多型部位を含むDNA断片にハイブリダイズするプライマーを用いて、DNA試料を鋳型としたPCRを実施することにより行うことが可能である。PCRは、当業者においては、その反応条件等について実験または経験によって最適な条件を適宜選択して実施することが可能である。通常、PCRは、反応液および耐熱性ポリメラーゼを含む市販の試薬キット、および市販のPCR装置等を利用して、簡便に実施することができる。PCRにより増幅するDNA領域としては、本発明の多型部位を含むDNA領域であれば特に制限はないが、配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位に相当する部分を含むDNA領域であることが好ましい。
本発明のPCRに用いるプライマーとしては、配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位に相当する部分を含む塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであれば特に限定されない。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。
ハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。一例を示せば、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、「1xSSC、0.1% SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「0.5xSSC、0.1% SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2xSSC、0.1% SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの洗浄の条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
本発明において使用されるマイクロサテライト配列を増幅し得るプライマーオリゴヌクレオチドの配列は、当業者においては、鋳型となるDNAの配列情報に基づいて、適宜、設計することが可能である。好ましくは、配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位に相当する部分を含むDNAまたはその相補鎖であるDNAに相補的な連続する15塩基を含むオリゴヌクレオチドである。PCRにおいて、上記マイクロサテライト配列を含むDNA領域を増幅する場合には、通常、上記マイクロサテライト配列を挟み込むように設定されたオリゴヌクレオチドのペアが用いられる。配列番号:2、3、22および23(図1〜3)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、最も好ましい本発明のオリゴヌクレオチドの例である。
本発明のオリゴヌクレオチドは、上記マイクロサテライト配列を含むDNA領域を増幅しうる限り、該DNA領域に完全に相補的である必要はない。例えば、5'末端側に数ベース程度の他の塩基への置換変異を有する、もしくは5'末端側に任意の塩基が付加されたオリゴヌクレオチドであっても、本発明のオリゴヌクレオチドとして利用することが可能であるものと考えられる。
本発明の上記オリゴヌクレオチドは、当業者においては、通常、市販されたオリゴヌクレオチド合成機もしくは合成オリゴヌクレオチド受託サービスを利用して容易に取得することが可能である。
本発明のプライマーは、さらに修飾することができる。たとえば、蛍光物質や、ビオチンまたはジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーも本発明の方法に使用することができる。
本発明においては次いで、(c)増幅したDNA断片を解析し、多型を検出する工程を行なう。増幅されたDNA断片の解析は、当業者においては種々の方法によって行なうことができる。
例えば、増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することにより、当該DNA断片を解析することができる。増幅したDNA断片の塩基配列の決定は、当業者においては、DNAシークエンサー等を用いて容易に実施することができる。また、塩基配列の決定により、増幅されたDNA断片において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を決定することもできる。
マイクロサテライト配列の検出においては、上記のように塩基配列の決定により直接的に検出する方法以外に、塩基配列の決定なしに間接的に検出する方法を利用することもできる。間接的な方法としては、代表的には、SSLP(Simple Sequence Length Polymorphism)法が挙げられる(Nucleic Acids Res. 1989; 17: 6463、Genomics. 1994; 19: 137)。本方法は、ゲノム中に存在するマイクロサテライトの長さ(構成する塩基数)がウシのタイプによって相違することを利用して、マイクロサテライトを挟むようなプライマーを設定してPCRを行い、増幅されたDNA断片の長さの差を検出する方法である。
本方法においては、まず、ウシからDNA試料を調製し、次いで、本発明のマイクロサテライト部位を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、DNA試料を鋳型としたPCRを実施する。次いで、PCRにより増幅されたDNAをゲル上で分離し、分離されたDNAの鎖長を解析する。ゲル上で分離されたDNAの鎖長の差は、DNA断片を電気泳動した後のバンドパターンの違いとして検出することができる。PCRに用いるプライマーの片方を蛍光ラベルしておけば、ソフトウェア(例えば、GeneScanソフトウェア、Genotyperソフトウェア(Applied Biosystems))を用いて、電気泳動後のDNA断片の解析を行うことができる。
上記DNA断片の解析を行なった後、被検対象となるウシの該解析結果を比較する。増幅されたDNA断片の解析結果とは、具体的には被検対象となるウシの増幅されたDNA断片において、決定された塩基配列、決定されたマイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数、またはDNA断片の長さ等をいう。
本発明は、次いで(d)(c)の工程において、検出された変異に基づき、産肉形質を決定する工程を含む。具体的には、相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の反復数が15、19、21、22、23、24、26、29または33、好ましくは19である場合には、産肉形質が優れていると判定することができる。
本発明における「多型」の第二の態様として、一塩基多型を挙げることができる。
本発明の「一塩基多型部位」は、ウシグレリン受容体遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域に存在する多型であれば、特に限定されない。具体的には、本発明の方法に用いる多型部位として、ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)または+70位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,773位)の多型部位に相当する多型部位を挙げることができる。
本発明の好ましい態様においては、上述した多型部位における塩基種の変異が、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がCである場合と比較してAである場合に、産肉形質が多いと決定することができる。反対に、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がAである場合と比較してCである場合に、産肉量が少ないと決定することができる。
上記に示した一塩基多型部位の塩基種は配列表に示した配列に対して相補鎖側にある塩基種を示している場合があるが、本明細書において記載された前後配列を用いれば異同を確認することは当業者にとって容易であり、検出を行うにあたってはプラス鎖とマイナス鎖のどちらを調べても必然的にもう一方の結果を決定することができる。
本発明の一塩基多型部位における塩基種の決定は、当業者においては種々の方法によって行うことができる。一例を示せば、本発明の一塩基多型部位を含むDNAの塩基配列を直接決定することによって行うことができる。
本方法においては、上述のマイクロサテライト多型を検出する場合と同様、(a)被検対象となるウシから、DNAを抽出する工程、(b)抽出したDNAにおいて、多型部位を含むDNA断片を増幅する工程を行う。
本方法において、次いで、(c)増幅したDNA断片を解析し、多型を検出する方法を行う。単離したDNAの塩基配列の決定は、当業者においては、DNAシークエンサー等を用いて容易に実施することができる。
予め塩基のバリエーションが明らかにされている多型部位について、その塩基種を決定するための様々な方法が公知である。本発明の塩基種の決定方法は、特に限定されない。例えば、PCR法を応用した解析方法として、TaqMan PCR法、AcycloPrime法、およびMALDI-TOF/MS法等が実用化されている。またPCRに依存しない塩基種の決定法としてInvader法やRCA法が知られている。更にDNAアレイを使って塩基種を決定することもできる。ここに述べた方法は、いずれも本発明における多型部位の塩基種の決定に応用できる。
また、PCR-SSP法を用いて塩基種を決定することもできる。PCR-SSP法とは、PCR産物にアレル特異的プライマーを用いて伸張反応を行い、SNP型を判定する方法である。本発明の配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位の一塩基多型解析の場合には、2,697位の一塩基多型部分を含む198塩基対部分を第一回のPCRでまず増幅する。次に、この第1回PCR産物を鋳型にして、その内側に2,697位の一塩基多型部分がプライマーの3’末端に位置するように5’FAM 蛍光色素標識したリバースプライマーをアリルごとにサイズを変えて(Aアリル:14塩基;Cアリル:17塩基)作製する。フォワードプライマーは第一回のPCRと同様のプライマーを使用できる(図5)。これら3種類(フォワードプライマープライマー:1種類;リバースプライマープライマー:2種類)を用いて、第二回目のPCR(PCR-SSP)を行う。判定は、シークエンサーでPCR産物のピークパターンを判別することで簡単に遺伝子型を決定できる。
これらの方法はいずれも多量のサンプルを高速にジェノタイピングするために開発された方法である。MALDI-TOF/MSを除けば、通常、いずれの方法にも何らかの形で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼らない塩基種決定法も古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。
RFLPは、制限酵素の認識部位の変異、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内における塩基の挿入または欠失が、制限酵素処理後に生じる断片の大きさの変化として検出できることを利用している。検出対象となる多型を含む塩基配列を認識する制限酵素が存在すれば、RFLPの原理によって多型部位の塩基を知ることができる。
本発明においては、制限酵素Msp Iを用いて、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の一塩基多型を検出することができる(図6)。また、同様に制限酵素Tth111 Iを用いて、+70位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,773位)の一塩基多型を検出することができる。
また、CAPS (Cleaved Amplifeid Polymorphic Sequence)マーカーあるいはプライマーに変異を導入し、制限酵素サイトを作り出すdCAPS (derived CAPS)マーカーを使用することもできる。dCAPSマーカーは、PCRのプライマーにテンプレートのDNAとミスマッチを起こして、PCR産物上に制限酵素サイトを作り出すという手法である(特開2003-259898)。
標識プローブを必要としない方法として、DNAの二次構造の変化を指標として塩基の違いを検出する方法も公知である。PCR-SSCPでは、1本鎖DNAの二次構造がその塩基配列の相違を反映することを利用している(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。PCR-SSCP法は、PCR産物を1本鎖DNAに解離させ、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、1本鎖DNAの二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移動度の違いとして検出することができる。
その他、標識プローブを必要としない方法として、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis: DGGE法)等を例示することができる。DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、DNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法である。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離する。部分的に解離したDNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本鎖DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。
更にDNAアレイを使って塩基種を決定することもできる(細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」,秀潤社,2000.4/20発行,pp97-103「オリゴDNAチップによるSNPの解析」,梶江慎一)。DNAアレイは、同一平面上に配置した多数のプローブに対してサンプルDNA(あるいはRNA)をハイブリダイズさせ、当該平面をスキャンすることによって、各プローブに対するハイブリダイズが検出される。多くのプローブに対する反応を同時に観察することができることから、例えば、多数の多型部位について同時に解析するには、DNAアレイは有用である。
上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、アリル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。アリル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、検出すべき多型部位が存在する領域にハイブリダイズする塩基配列で構成される。ASOを試料DNAにハイブリダイズさせるとき、多型によって多型部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出することもできる。本発明においては、配列番号:1に記載の塩基配列における、2,697位または2,773位の多型部位に相当する多型部位のいずれかに記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション法に用いるプローブとして使用することができる。
該オリゴヌクレオチドは、本発明の上記多型部位のいずれかの多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするものである。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドは、検出する遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における、上記植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードするDNA塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
本発明は、次いで(d)(c)の工程において、検出された変異に基づき、産肉形質を決定する工程を含む。本発明においては、上述のとおり、多型部位における塩基種の変異が、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がCである場合と比較してAである場合に、産肉形質が多いと決定することができる。反対に、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がAである場合と比較してCである場合に、産肉量が少ないと決定することができる。
本発明は、本発明のマイクロサテライト多型および本発明の一塩基多型を複数同時に検出することにより、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法もまた含む。変異の組み合わせは特に限定されるものではないが、本発明の好ましい態様の一例として、相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の反復数が19であり、本発明の一塩基多型のいずれかまたは全てを有する場合に、産肉形質が優れていると判定することができる。
本発明は、本発明の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー、および多型部位を含むDNA領域にハイブリダイズするプローブを提供する。
本発明において、多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーには、多型部位を含むDNAを鋳型として、多型部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーも含まれる。該プライマーは、多型部位を含むDNAにおける、多型部位の3'側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域と多型部位との間隔は任意である。両者の間隔は、多型部位の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。たとえば、DNAチップによる解析のためのプライマーであれば、多型部位を含む領域として、20〜500、通常50〜200塩基の長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者においては、多型部位を含む周辺DNA領域についての塩基配列情報を基に、解析手法に応じたプライマーをデザインすることができる。本発明のプライマーを構成する塩基配列は、ゲノムの塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列のみならず、適宜改変することができる。
本発明のプライマーには、ゲノムの塩基配列に相補的な塩基配列に加え、任意の塩基配列を付加することができる。例えば、IIs型の制限酵素を利用した多型の解析方法のためのプライマーにおいては、IIs型制限酵素の認識配列を付加したプライマーが利用される。このような、塩基配列を修飾したプライマーは、本発明のプライマーに含まれる。更に、本発明のプライマーは、修飾することができる。例えば、蛍光物質や、ビオチンまたはジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーが各種のジェノタイピング方法において利用される。これらの修飾を有するプライマーも本発明に含まれる。
本発明のプライマーの具体的な例としては、(a)配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位の多型部位、または2,773位の多型部位、または(b)配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位の配列に相当する多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドが挙げられるが、本発明のプライマーはこれに限定されるものではない。このようなプライマーの一例として、配列番号:2〜31に記載のプライマーが挙げられる。
一方本発明において、多型部位を含む領域にハイブリダイズするプローブとは、多型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるプローブを言う。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプローブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。従って、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれないが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明における望ましいプローブとして示すことができる。
言いかえれば、ゲノムDNA上の本発明の多型部位、または多型部位に隣接する部位にハイブリダイズすることができるプローブは、本発明のプローブとして好ましい。本発明のプローブには、プライマーと同様に、塩基配列の改変、塩基配列の付加、あるいは修飾が許される。例えば、Invader法に用いるプローブは、フラップを構成するゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、多型部位を含む領域にハイブリダイズする限り、本発明のプローブに含まれる。本発明のプローブを構成する塩基配列は、ゲノムにおける本発明の多型部位の周辺DNA領域の塩基配列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。
本発明のプライマーまたはプローブは、それを構成する塩基配列をもとに、任意の方法によって合成することができる。本発明のプライマーまたはプローブの、ゲノムDNAに相補的な塩基配列の長さは、通常15〜100、一般に15〜50、好ましくは15〜30である。与えられた塩基配列に基づいて、当該塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成する手法は公知である。更に、オリゴヌクレオチドの合成において、蛍光色素やビオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用して、オリゴヌクレオチドに任意の修飾を導入することもできる。あるいは、合成されたオリゴヌクレオチドに、蛍光色素などを結合する方法も公知である。
本発明のプローブの具体的な例としては、上述のように、配列番号:1に記載の塩基配列における、2,697位または2,773位の多型部位に相当する多型部位のいずれかに記載の多型部位を含む領域にハイブリダイズするプローブであって、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するプローブが挙げられる。
さらに本発明は、配列番号:1に記載の塩基配列における2,773位の塩基種がGである、ウシグレリン受容体変異タンパク質もまた提供する。
本発明の検査薬の他の一つの態様は、ウシグレリン受容体変異タンパク質を特異的に認識する抗体を含む、識別用試薬である。該抗体は、本発明の方法に用いることが可能な抗体であれば、特に制限されないが、例えばポリクローナル抗体やモノクローナル抗体が挙げられる。抗体は必要に応じて標識されていてもよい。
ウシグレリン受容体変異タンパク質を認識する抗体は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして取得することができる。ウシグレリン受容体変異タンパク質、あるいはGSTとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させたリコンビナントウシグレリン受容体変異タンパク質、またはその部分ペプチドをウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、ウシグレリン受容体変異タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、ウシグレリン受容体変異タンパク質若しくはその部分ペプチドをマウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、該細胞とマウスミエローマ細胞とをポリエチレングリコールなどの試薬を用いて融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、ウシグレリン受容体変異タンパク質に結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、ウシグレリン受容体変異タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
本発明はまた、本発明のウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法に使用するための試薬(検査薬)を提供する。本発明の試薬は、前記本発明のプライマー、プローブおよび/または抗体を含む。ウシ黒毛和種の産肉形質の判定においては上記、本発明の多型部位のいずれかに記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマー、プローブおよび/または抗体を用いる。
本発明の試薬には、塩基種の決定方法に応じて、有効成分であるプライマー、プローブおよび/または抗体以外に、例えば、各種の酵素、酵素基質、緩衝液、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、タンパク質安定剤(BSAやゼラチンなど)および保存剤などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいはIIs制限酵素などの、上記の塩基種決定方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。
さらに、本発明における試薬の別の態様は、本発明の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定するための試薬である。
これらは本発明の多型部位を指標とする検査に使用される。これらの調製方法に関しては、当業者に公知の方法で行なうことができる。
また、本発明の試薬を少なくとも1つ含有するウシ黒毛和種の産肉形質判定用キットもまた、本発明に含まれる。該キットには、上記プライマー、プローブまたは抗体のいずれかに記載の物質の他に、例えば、本発明の方法に用いるための各種試薬類、反応液、対照標品、反応容器、操作器具等を含めることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕 成長と枝肉重量等産肉形質に優れる個体に確認されているマイクロサテライトアリルの検出
(1)グレリン受容体遺伝子のゲノムDNA配列の5’-flanking領域の中で翻訳開始点から上流−275塩基(図2中2,429位)から−232塩基(図2中2,472位)の範囲に存在するマイクロサテライトに注目し(図1、図2)、このマイクロサテライトに変異が存在するか、黒毛和種1,285頭のゲノムDNAを用いて検討した。その検討に当たってはマイクロサテライト領域を増幅できるように塩基配列情報からPCRプライマーを作製した(図1)。なお、PCRの条件等は以下のように行った。
1)プライマー
・F-プライマー:F:1320(Fam 修飾)
配列番号:2:5’-gggCTgTgggTCACTCTgTC-3’
・R-プライマー:R:1449
配列番号:3:5’-gAggATgCTTggAAAggAAA-3’
増幅産物:180塩基対
2)PCR溶液
(使用したDNAポリメラーゼ: TOYOBO KOD Plus)
1サンプル当たり:
10 X Buffer 2μl
dNTP 2μl
MgSO4 1μl
プライマー(F)(10pmol/μl) 1μl
プライマー(R)(10pmol/μl) 1μl
KOD Plus(酵素) 0.3μl (0.3U)
蒸留水 11.7μl
DNA サンプル 1μl
計 20μl
3)PCR条件
(1) 94℃ 2 min
(2) 94℃ 30 sec
62℃ 45 sec
68℃ 30 sec
35 サイクル
(3) 68℃ 1 min
(4) 4℃ 保持
1×TAE bufferによる2.5%アガロースゲルで増幅を確認する。
PCR増幅を確認後、ABI社のシークエンサーで増幅サイズを決定する。
(2)増幅PCR産物のサイズをDNAシークエンサーで決定すると、そのサイズには、164、172、176、178、180、182、186、192、200塩基対の9種類の変異、すなわちアリルが認められた。プライマー領域の配列から、これらアリルのマイクロサテライトの2塩基(TGまたはTC)反復数は、各15、19、21、22、23、24、26、29、33回である(表1)。また、アリル頻度は、0.04%〜32%までの差異がある。また、頻度が10%以上の主要なアリルは、172 (14.5%)、178(15.0%)、180(26.5%)、182(32%)の4種類であった(表1)
(3)解析した黒毛和種1,285頭は、家畜改良事業団が実施した後代検定事業で使われた種雄牛117頭の息牛であり、全て産肉・肉質形質データを持つものである。形質データは、検定開始日齢、検定開始体重、検定開始体高、検定終了体重、検定終了体高、1日平均増体重、屠殺前体重、枝肉重量、ロース芯面積、バラ厚、皮下脂肪厚、推定歩留、筋間脂肪厚、BMS No (脂肪交雑番号)の14形質である(表2)。
(4)マイクロサテライトDNAのアリルの組み合わせアリル型は、1,285頭で34種類が認められ、うち164/172型, 176/186型および 176/200型の3種類では、各1個体のみが観察された(表3)。したがって、マイクロサテライトDNAのアリル型と形質との関連性に関する統計解析に際しては、1個体のみアリル型は除外し、31種類のアリル型1,282個体のデータを用いて行った(表3)。
(5)統計モデルを、形質データ値=平均値+マイクロサテライトDNA型+誤差の一元配置として分散分析を行った。その結果、検定終了時体重(有意水準:P=0.001267、0.5%以下)、1日平均増体重(有意水準:P=0.003953、0.5%以下)、屠殺前重量(有意水準:P=0.002256、0.5%以下)、枝肉重量(有意水準:P=0.000456、0.1%以下)で統計的に極めて有意な結果が得られた(表4)。また、皮下脂肪厚(P=0.011427、5%以下)およびバラ厚(P=0.014564、5%以下)、推定歩留(P=0.041535、5%以下)でも統計学的に有意な結果が得られた。しかし、BMS.Noなど他の形質には統計学的有意差は認められなかった。したがって、本マイクロサテライトDNA型は枝肉重量、終了時体重、屠殺前重量、一日平均増体重の産肉形質に強い影響を与えていることが判明した(表4)。
(6)マイクロサテライトDNA型ごとの枝肉重量と一日平均増体重の平均値を検討すると、アリル172をヘテロ型またはホモ型もつ個体の平均値は常に全体の平均値を上回っていた(表5)。また、アリル192をヘテロ型またはホモ型もつ個体の枝肉重量と一日平均増体重の平均値は全体の平均値を上回る傾向が認められた(表5)。したがってアリル172とアリル192、特にアリル172は産肉性を高める効果をもち、特にアリル172でその効果は顕著であることが明らかになった。
(7)この結果を明確にするために、「アリル172」と「アリル172以外」に便宜的にわけ、統計学的モデルを、形質データ値=平均値+マイクロサテライトDNA型(「アリル172/アリル172」,「アリル172/アリル172以外」と「アリル172以外/アリル172以外」) + 誤差の一元配置として分散分析を行った。この解析では形質データとして、各種マイクロサテライトDNA型との分散分析で有意差が出た「枝肉重量」、「終了時体重」、「屠殺前重量」、「一日平均増体重」について解析した。その結果、上記4形質の全てにおいて有意確率0.005%以下で、明らかに3種類マイクロサテライトDNA型間で統計的に差異の有ることが判明した(表6)。
(8)「アリル172」を持たない個体935頭の「枝肉重量」、「一日平均増体重」、「検定終了時体重」、「屠殺前重量」の平均値は、各349.2kg、0.90kg、593.4kg、589.0kg、「アリル172」をヘテロ型に持つ個体323頭の各平均値は、360.6kg、0.94kg、610.6kg、605.2kg、また「アリル172」をホモ型に持つ個体24頭の各平均値は、366.8kg、0.96kg、618.7kg、614.0kgであった(表7)。
各形質の平均値の差異は、「アリル172」を持たない個体(表7中アリル型:0)と「アリル172」をヘテロ型に持つ個体(表7中アリル型:1)間で各11.4kg(3.3%)、0.035(3.9%)、17.1kg(2.9%)、16.2kg(2.8%)であった。また、「アリル172」を持たない個体(表7中アリル型:0)と「アリル172」をホモ型に持つ個体(表7中アリル型:2)間で各17.6kg(4.9%)、0.058(6.2%)、25.2kg(4.1%)、25.0kg(4.1%)であった。さらに、「アリル172」をヘテロ個体にもつ個体(表7中アリル型:1)と「アリル172」をホモ型に持つ個体間で各6.2kg(1.7%)、0.023(2.4%)、8.1kg(1.3%)、8.8kg(1.4%)であった。
したがって、「アリル172」をヘテロ型に持つ個体の平均値は、「アリル172」をもたない個体の平均値より、枝肉重量で11.4kg(3.3%)、1日平均増体重で0.035kg(3.9%)、検定終了時体重で17.1kg(2.9%)、屠殺前体重16.2kg(2.9%)多かった。また「アリル172」をホモ型に持つ個体の平均値は、「アリル172」をもたない個体の平均値より、枝肉重量で17.6kg(4.9%)、1日平均増体重で0.058kg(6.2%)、検定終了時体重で25.2kg(4.1%)、屠殺前体重25.0kg(4.1%)多かった。「アリル172」をホモ型に持つ個体の平均値は、「アリル172」をヘテロ型にもつ個体の平均値より、枝肉重量で6.2kg(1.7%)、1日平均増体重で0.023kg(2.4%)、検定終了時体重で8.1kg(1.3%)、屠殺前体重8.8kg(1.4%)多かった。これらの結果から、枝肉重量、1日平均増体重、検定終了時体重、屠殺前体重における「アリル172」のプラス効果は相加的であることが明らかになった(表7)。
(9)3種類のアリル組み合わせ型、すなわち(1)「アリル172」/「アリル172」(2)「アリル172」/「アリル172以外」(3)「アリル172以外」/「アリル172以外」のどの間で統計学的に差異が有るのか、アリル型間で平均値の差の検定をScheffe法により行った(表8)。その結果、「枝肉重量」、「一日平均増体重」、「終了時体重」、「屠殺前重量」の4形質全てにおいて、「アリル172」/「アリル172以外」と「アリル172以外」/「アリル172以外」間で常に0.01%有意水準以下で統計学的有意差が認められた。また、「アリル172」/「アリル172」と「アリル172以外」/「アリル172以外」間では、「一日平均増体重」は5%有意水準で統計的有意であり、「枝肉重量」では5%有意水準に近く、また「終了時体重」、「屠殺前重量」では10%水準で統計的に有意に近い値であった。したがって、「アリル172」を1個以上持つ個体と1個も持たない個体間では、持つ個体が明らかに4形質全てで優れることが明確になった。
〔実施例2〕 一塩基多型(SNP)解析と産肉形質との関連性
(1)マイクロサテライト領域以外のグレリン受容体遺伝子領域に一塩基置換(SNP)等の変異が存在し、ハプロタイプを形成し、このSNPの変異が肉質形質の影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこで、グレリン受容体遺伝子中でマイクロサテライト部分以外に塩基レベルでの変異が存在するのかを検討した。
塩基レベルでの変異を検討するため、マイクロサテライト領域以外の5’UTR部分を含む5’フランキング領域、5’非翻訳領域、エキソン1部分、イントロン領域、エキソン2部分、3’フランキング領域(3’UTR部分)の塩基配列、約6.4キロベースペアーをカバーするプライマーセット9組を作製し、PCR法により増幅、塩基配列を決定した(図2および図3)。 遺伝子領域全体の塩基置換変異の検討に当たっては、9領域の全てにつき形質データをもつ全頭のサンプルで行うのは時間、費用と労力の点で現実的ではない。そこで、マイクロサテライトを変異マーカーとして捉え、黒毛和種で主要なマイクロサテライトのアリルであるアリル172、アリル180およびアリル182のホモ型(各1個体、2個体、2個体計5個体)並びに優良なアリルである172のヘテロ型3個体(アリル型:172/180,172/192,172/200)の計8個体を用いて、グレリン受容体遺伝子の塩基配列約6.4kbを決定した。
PCRの条件はいずれのプライマーセットにおいても、以下のように行った。
1)プライマー
各プライマーセットのF-プライマーとRプライマーの位置および配列は、それぞれ図2と図3および配列番号:4〜23に示した。
2)PCR溶液
(使用したDNAポリメラーゼ: Takara LA Taq)
1サンプル当たり:
2 X GC Buffer I 10μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 3.2μl
プライマー(F)(10pmol/μl) 1μl
プライマー(R)(10pmol/μl) 1μl
Takara LA Taq (5U/μl) 0.2μl (1U)
蒸留水 3.6μl
ゲノムDNA サンプル(10ng/μl) 1μl
計 20μl
3)PCR条件
(1) 94℃ 4 min
(2) 94℃ 30 sec
60℃ 45 sec
72℃ 60 sec
35 サイクル
(3) 72℃ 2 min
(4) 4℃ 保持
1×TAE bufferによる2.5%アガロースゲルで増幅を確認した。
PCR増幅を確認後、PCR増幅産物をSephadex plateで精製後、これを鋳型としてBigDye Terminator v3.1 Cycle sequencing Kit (Applied Biosystems 社)を用い、Dye Terminator 法により行った。使用したプライマーはPCR増幅を行ったものと同一のプライマーを用いて両側から塩基配列を決定した。
多型塩基はシークエンス波形データを用いてPhred/phrap/PolyPhredソフトウエアおよびSEQUENCHER(Genecodes)ソフトウエアを用いて各塩基の精度(クオリティー値)の算出、アセンブルおよび多型塩基の検出を行った。ソフトウエアが検出した多型塩基については必ず目視確認し、明らかに多型波形のものを多型塩基として採用した。
(2)グレリン受容体遺伝子領域における多型塩基の検出:
黒毛和種8個体のマイクロサテライト型とグレリン受容体遺伝子約6.4kbの全塩基配列決定結果を表9に示した。この遺伝子領域には8個体間で20箇所の多型塩基を見出した。多型塩基が認められた領域の内訳は、5’フランキング領域が2箇所、5’非翻訳領域が1箇所、エキソン1領域が3箇所、イントロン1領域は14箇所であった。エキソン2および3’非翻訳領域には多型塩基は認められなかった。また、20箇所の多型塩基のうち1箇所(4,689位)は4塩基の挿入/欠損であった。
これら20箇所の多型塩基の中でマイクロサテライトのタイプと連鎖不平衡のハプロタイプを形成し、かつマイクロサテライトアリルの効果と一致する多型塩基は、5’非翻訳領域内にありマクロサテライト座位の近傍にある、配列番号:1における2,697位の一塩基多型(アリル:A,C)であった。なお、この位置は、翻訳開始点の上流7位(−7位)である(図4)。また、この結果から、主要なマイクロサテライトのアリルは、それぞれ、172-A, 180-C,182-C,192-A,200-Cのハプロタイプを形成していることが推定された。
(3)グレリン受容体遺伝子領域におけるマイクロサテライトとのハプロタイプ構築:
次に、これらの結果は解析したサンプル1,285個体全体としていえるのか、2,697位の一塩基多型をサンプル1,285個体で解析した。
解析方法は、多数検体のタイピングに適したPCR-SSP法によった(SSP:Sequence Specific Primer:配列特異的プライマー)。なお、別にRFLP法でも2,697位の一塩基多型解析を行える。
(A)PCR-SSP法の条件:
PCR-SSP法とは、PCR産物にアレル特異的プライマーを用いて伸張反応を行い、SNP型を判定する。本一塩基多型解析の場合には、2,697位の一塩基多型部分を含む198塩基対部分を第一回のPCRでまず増幅する。次に、この第1回PCR産物を鋳型にして、その内側に2,697位の一塩基多型部分がプライマーの3’末端に位置するように5’FAM 蛍光色素標識したR-プライマーをアリルごとにサイズを変えて(Aアリル:14塩基;Cアリル:17塩基)
作製する。F-プライマーは第一回のPCRと同様のプライマーある。
これら3種類(F-プライマー:2種類;R-プライマー:1種類)を用いて、第二回目のPCR(PCR-SSP)を行う。判定は、図5および7に示すようにAアリルは106塩基対産物、Cアリルは109塩基対産物となり、シークエンサーでPCR産物のピークパターンを判別することで簡単に遺伝子型を判定できる。
(1) 第1PCR用プライマー
F-プライマー:ACTCTTTTGCGCCTAACTAAGGA(配列番号:24)
R-プライマー:CTCGTCAGTCAGCGAGTCATT(配列番号:25)
PCR産物サイズ: 198 bp
(2) PCR反応溶液
QIAGEN multi Kit 5.0μl
10μM GhrelinR_F3 0.5μl
10μM GhrelinR_R3 0.5μl
減菌蒸留水 3.0μl
DNA 2.0μl
計 11.0μl
(3) PCR条件
(℃) Time Cycle(s)
94 15min 1
94 15sec 35
60 30sec
72 90sec
72 30min 1
10 ∞
PCR産物に減菌蒸留水70μlを加え、PCR-SSP反応用のPCR 反応の鋳型とする。
(4) PCR-SSP反応プライマー
2,697位の一塩基多型のCアリルのR-プライマー
(FAM) CATTCCACATGCTGCCG(配列番号:26)
PCR産物サイズ:109bp
2,697位の一塩基多型のAアリルのR-プライマー
(FAM) TCCACATGCTGCCT(配列番号:27)
PCR産物サイズ:106bp
(5) PCR反応溶液
QIAGEN multi Kit 5.0μl
1μM GhrelinR_SNP-7_C_3 0.4μl
1μM GhrelinR_SNP-7_A_3 1.2μl
減菌蒸留水 2.4μl
PCR Product 1.0μl
計 10.0μl
(6) PCR条件
(℃) Time Cycle(s)
94 15min 1
94 15sec 35
60 30sec
72 90sec
72 30min 1
10 ∞
PCR-SSPによる産物を、常法によりABI社のシーケンサーで増幅サイズを確認する。結果は波形データとして現れ、フラグメントの長さにより多型を判定する。例として2,697位のSNPを判定した結果を図7に示す。
(B)RFLP法
2回(ネステッド)PCRを行い、制限酵素MspI(認識部位:C!CGG)で消化し、その切断DNA断片パターンからSNP型を判定する。
(1) 第1PCRプライマー(PCR産物:583bp)
F-プライマーbGhrR/FP(1484)/OD1:CTTTCCAAgCATCCTCCCTgAg(配列番号:28)
R-プライマーbGhrR/RP(2067)/OD1:gAAgCAgATggCgAAgTAgCg(配列番号:29)
(2) PCR溶液
使用するDNAポリメラーゼ:KOD plus
1サンプル当たり(全量 20μl)
10X KOD バッファー 2μl
dNTP(2.5mM) 2μl
MgSO4 (25mM) 1μl
F-プライマー (10pmol/μl) 1μl
R-Primer (10pmol/μl) 1μl
KOD Plus(酵素) 0.3μl
減菌蒸留水 11.7μl
DNA サンプル(10-50μg/ml) 1μl
計 20μl
(3) 第1PCR条件
(i) 94℃ 2 min. 1 cycle
(ii) 94℃ 30 sec 30 cycles
60℃ 45 sec
68℃ 30 sec
(iii) 68℃ 60 sec 1 cycle
(iv) 4℃ keep (1) 94℃ 4 min
(4) 第2PCR(PCR産物:191bp)
プライマー:
FP(2SNRF2666)-01: CAgTCgCgTCCCTgAACC(配列番号:30)
RP(2SNRF2856)-02: CACgCAggTggCTgTgAC(配列番号:31)
DNA サンプルは第1PCR産物減菌蒸留水で100希釈したもの1μl
(5) PCR溶液
使用するDNAポリメラーゼ:KOD plus
1サンプル当たり(全量 20μl)
10X KOD バッファー 2μl
dNTP(2.5mM) 2μl
MgSO4 (25mM) 1μl
F-プライマー(10pmol/μl) 1μl
R-プライマー(10pmol/μl) 1μl
KOD Plμs(酵素) 0.3μl
減菌蒸留水 11.7μl
DNA サンプル(第1PCRの100倍希釈) 1μl
計 20μl
(6) 第2PCR
(i) 94℃ 2 min. 1 cycle
(ii) 94℃ 30 sec 35 cycles
61.5℃ 45 sec
68℃ 30 sec
(iii) 68℃ 60 sec 1 cycle
(iv) 4℃ keep
(7) MspIによるRFLP:1サンプル当たり
第2 PCR 産物 5μl
10XTブッファー 2μl
0.1%BSA 2μl
MspI(制限酵素)10U/μl 0.5μl
減菌蒸留水 10.5μl
計 20μl
37℃ 1時間消化する。
(C)結果
15%アクリルアミドゲル電気泳動でバンドパターンを判定する。SNPのAアリルは112, 49, 21, 17 bpのバンドパターンとなる。また。SNPのCアリルは112, 35,21,17,14 bpバンドパターンとなる(図6および8)。
2,697位の一塩基多型をサンプル1,285個体で解析した結果を表10に示した。34種類のマイクロサテライト型のうち32種類は2,697位一塩基多型と1対1の対応であったが、178/180型はA/CとC/C型、180/182型はA/CとC/C型に対応していた。さらに、これらの遺伝子型の組み合わせから、マイクロサテライトと2,697位一塩基多型のハプロタイプを構築した(表11)。表11に示すように、アリル172はアリルAと主要なハプロタイプ(172-A)を形成していた。他の主要なハプロタイプとしては、178-A、180-C,182-Cが存在し、マイナーなハプロタイプとして176-A, 186-A, 192-A、200-Cが存在していた。さらに非常にマイナーなハプロタイプとして164-A, 178-C, 182-Aが存在し、178-Cと 182-Aはそれぞれ主要ハプロタイプである178-Aと182-Cの組換え型と推定された。また、2,697位一塩基多型のアリルAの頻度は37.2%,アリルCの頻度は、62.8%であった(表11)。
表11に示したように、2,697位一塩基多型のアリルAはマイクロサテライトのアリル172およびアリル178と出現頻度が高い主要なハプロタイプを形成し、マイクロサテライトのアリル192, アリル186,アリル176 とは出現頻度が低いマイナーなハプロタイプを形成していた。そこで、2,697位一塩基多型(SNP)が産肉形質に影響を及ぼし、アリルAがアリルCより望ましい効果を与えている可能性について、マイクロサテライト型の効果を検討したと同様のサンプルを用いて統計学的に検討した。
(4)2,697位SNPと産肉形質との関連性に関する統計学的検討:
2,697位SNPと産肉形質との関連性に関する統計学的検討に関しては、統計モデルを、形質データ値=平均値 + 2,697位SNP型 + 誤差の一元配置として統計解析と分散分析を行った(表12、表13)。
統計解析の結果、AA型個体174頭の「枝肉重量」、「一日平均増体重」、「検定終了時体重」、「屠殺前重量」の平均値は、各355.4kg、0.924kg、604.25kg、598.97kg、AC型609頭の各平均値は、355.24kg、0.917kg、602.50kg、597.84kg、またCC型個体502頭の各平均値は、347.80kg、0.902kg、590.76kg、586.27kgであり、4形質全てにおいてAA型>AC型>CC型であった(表12)。また、これら3遺伝子型の平均値分散分析により、枝肉重量、1日平均増体重、検定終了時体重、屠殺前体重間の4形質ともF値は各6.466(有意水準:0.5%以下)、3.967(有意水準:5%以下)、7.056(有意水準:0.5%以下)、6.700(有意水準:0.5%以下)となり、AA型、AC型およびCC型の3アリル型間の平均値の差の効果は統計的に有意であった(表13)。
(5)さらにこのSNPの遺伝子型、AA型、AC型、CC型間で4形質の平均値差の検定をScheffe法で行ったところ、枝肉重量、検定終了時体重、屠殺前体重の3形質全てにおいて、AC型とCC型間(有意確率0.5%以下)およびAA型とCC型間(有意確率5%以下)では統計的に有意であった。また、1日平均増体重ではAC型とCC型間およびAA型とCC型間では統計的に有意に近い値であった(有意確率5〜8%)(表14)。
以上のことから、これら4形質に及ぼす2,697位のSNPの効果(AA型>AC型>CC型)は統計的に有意であるが、有意確率値はマイクロサテライトをアリル172とアリル172以外に分けた3アリル型間の検定結果の有意確率値(表6)より小さな値であるため、このSNPの産肉4形質に及ぼす効果は、マイクロサテライトより小さいものと推定された。
(6)次に、枝肉重量、1日平均増体重、検定終了時体重、屠殺前体重の4形質に及ぼす効果は、マイクロサテライト(アリル172とそれ以外のアリル)と2,697位のSNP(アリルAとアリルC)とでどちらが大きいかを明確にするために、両遺伝子型に注目したハプロタイプの組み合わせ型に基づく統計解析と分散分析を行った。すなわち、マイクロサテライト型は、アリル172とそれ以外のアリル、2,697位SNPではアリルAとアリルCに分けてハプロタイプを構築し、1,285頭形質データについて統計解析および分散分析を行った(表15、表16)。なお、統計モデルは、形質データ値=平均値 + ハプロタイプ型 + 誤差の一元配置として分散分析を行った。
(7)統計解析の結果、6種類のハプロタイプの組み合わせ型頻度は、1,285頭中172-A/172-A型24頭、172-A/172以外-A96頭、172-A/172以外-C228頭、172以外-A/172以外-A54頭、172以外-A/172以外-C381頭、172以外-C/172以外-C502頭となり、ハプロタイプ頻度は172-A:0.144、172以外-A:0.228、172以外-C:0.628となった(表15)。ハプロタイプ172-Aの頻度は0.144であり、マイクロサテライトに注目した場合のアリル172の頻度:0.1449(表1)とほぼ同じであった。
6種類のハプロタイプの組み合わせ型の「枝肉重量」、「一日平均増体重」、「検定終了時体重」、「屠殺前重量」の平均値は、常に172-A/172-A>172-A/172以外-A>172-A/172以外-C>172以外-A/172以外-C>172以外-C/172以外-C>172以外-A/172以外-Aの傾向、すなわち「172-A」のハプロタイプを持つ場合が常に形質の平均値が高い傾向が認められた(表16)。
また、これら6種類のハプロタイプの組み合わせ型の平均値の分散分析により(表17)、枝肉重量、1日平均増体重、検定終了時体重、屠殺前体重間の4形質ともF値は各6.694(有意水準:0.001%以下)、6.242(有意水準:0.001%以下)、6.596(有意水準:0.001%以下)、6.129(有意水準:0.005%以下)となり、6種類のハプロタイプの組み合わせ型間の平均値の差の効果は統計的に極めて有意であった(表17)。これらの有意確率は、マイクロサテライトに注目した解析(表4)および2,697位SNPに注目した解析(表13)より明らかに小さかった。また、アリル172とアリル172以外に分けた3マイクロサテライト型の分けた分散分析の有意確率(表6)とほぼ同一であった。したがってマイクロサテライト型単独あるいは2,697位SNP型より、マイクロサテライトと2,697位SNPハプロタイプの組み合わせ型が、これら肉質の4形質に大きな効果を与えていることが判明した。
(8)次に、この6種類のハプロタイプ型間で平均値の差の検定をScheffe法で行い、どのハプロタイプ型間で統計的に有意な差があるのか検討した。その結果、表18に示すように、枝肉重量、1日平均増体重、検定終了時体重、屠殺前体重間の4形質において、172-A/172以外-A、172-A/172以外-Cのグループと172以外-A/172以外-A、172以外-C/172以外-Cのグループ間で統計的に有意な差異が認められた(有意水準:0.5%〜10%水準)。すなわち、「172-A」ハプロタイプをヘテロ型にもつ個体は、「172-A」ハプロタイプをもたない個体よりこれら4形質に優れることが示された。なお、「172-A」ハプロタイプ・ホモ型は例数が24頭と少ないため、統計的には他のどのタイプとも有意差とはならなかったと思われる。したがって、マイクロサテライトで172アリルを持たない場合、SNPがAAホモ型であっても肉質4形質は低下することが判明した。以上のことから、これら4形質に及ぼす効果はマイクロサテライト型が基本的に最も重要であり、アリル172のもとで2,697位SNPアリルAの優れた効果が発現すると推察された。
(9)以上のことから、グレリン受容体遺伝子のマイクロサテライト−2,697位SNP位のハプロタイプは、「枝肉重量」、「一日平均増体重」、「検定終了時体重」、「屠殺前重量」に統計学的にも有意な影響を与え、「172−A」ハプロタイプは他のハプロタイプより統計学的に明らかに優れた効果を持つことが判明した。
(10)なぜマイクロサテライト172アリルが他のアリルより枝肉重量等の4形質に優れた効果を示すかについては、以下の仮説が考えられる。
すなわち、核内でグレリン受容体遺伝子は5’UTR内にあるマイクロサテライトTGリピート部位を含めmRNAに転写され、イントロン1のスプラスアウト、成熟mRNAとなった後、成熟mRNAは細胞質へと移行し、タンパク質合成の場であるリボソームRNAに翻訳開始コドン部位が結合する。成熟mRNAとリボソームRNAの結合にさらに翻訳に関わる翻訳因子が結合し翻訳が開始する。その翻訳効率は、mRNAの5’UTRとしてコドンの上流にあるマイクロサテライト配列がコードしていたTGリピート反復構造によってmRNAの3次元構造は影響を受け、TGリピート数が19回であるアリル172のmRNAは、TGリピート数が各22回、23回、24回、29回、33回であるアリル178、アリル180、アリル182、アリル192、アリル200より転写効率が高く、合成されるグレリン受容体タンパク質生産量が多くなると推察される。
(11)また、2,697位のSNPのアリルAは、アリルCより枝肉重量等の4形質に優れた効果を示すかについては、以下のように考えられる。
2,697位SNP位は5’非翻訳領域として必ずmRNAに転写される領域である。翻訳開始点-3位から+4位はKozak配列とよばれ、コンセンサス配列は(-3位)ACCAUGC(+4位)である(AUGはメチオニンの翻訳開始コドン)。このKozak配列は翻訳の際、mRNAとリボソームRNAが相互作用を行い、翻訳を開始する重要な配列である。この配列の中で、特に-3位のA(アデニン)と+4位のC(シトシン)が特に重要でこの部位の塩基の置換がおこると翻訳の効率が変化することが知られている。翻訳開始点2,697位は、Kozak配列で特に重要な-3位に近接しており、2,697位SNP位のアリルA(アデニン)とアリルC(シトシン)は塩基構造上、プリンとピリミジンで異なる。したがって、このアリルAとアリルCの置換により、グレリン受容体遺伝子から転写されたmRNAの翻訳効率は、先に述べたマイクロサテライトコード部分の19回のTGリピート数をもつ「172−A」ハプロタイプのmRNAの3次元構造はアリルAによって、さらに翻訳効率が向上すると推察される。したがって、本「172−A」ハプロタイプをもつ個体の脳下垂体等成長ホルモン放出細胞では、発現するグレリン受容体の分子数が多くなり、結果としてグレリンに対する感受性が高くなり、同一のグレリンの刺激でも、成長ホルモン分泌量は、172-A/172-A、172-A/172以外-A>172-A/172以外-Cのグループ>172以外-A/172以外-C>172以外-C/172以外-C>172以外-A/172以外-Aのグループになると考えられる。したがって、172-Aハプロタイプを持つ個体はもたない個体より成長ホルモンの分泌量が高く、これが枝肉重量等増体形質に良い影響を与えることが考えられる。
(12)172-Aハプロタイプの頻度は、黒毛和種集団で約0.144であり、このハプロタイプに注目し、交配に際して利用すれば、「一日平均増体重」、「検定終了時体重」、「屠殺前重量」の産肉形質の向上がみこめる。その程度は、172-Aハプロタイプ1個当たり約3%と推定できる。
(13)ウシグレリン受容体遺伝子の5'非翻訳領域における、増体形質に関連するマイクロサテライト領域は、他の生物種の当該領域には見られない(図9)。したがって、このマイクロサテライト多型および一塩基多型を組み合わせることにより、他の生物種と比較しても、黒毛和種の増体形質をより効率的に判定することが可能となる。
ウシグレリン受容体遺伝子5’フランキング領域(配列番号:1、2,204位〜2,703位)におけるマイクロサテライトとプライマーの位置を示す図である。 グレリン受容体遺伝子塩基配列(配列番号:1)および本発明の変異部位を示す図である。 図2−1の続きである。 図2−2の続きである。 図2−3の続きである。 図2−4の続きである。 図2−5の続きである。 グレリン受容体遺伝子のゲノム構造とプライマーセットの位置を示す図である。 プライマーセット04(配列番号:10および11)で増幅した5’フランキング領域とエキソン1の大部分の領域(584塩基対、配列番号:1、2,561位〜3,144位)に検出した翻訳開始店から上流7塩基(-7位)と下流(+70位)エキソン1内にある一塩基多型(SNPs)を示す図である。 PCR-SSP法で用いたプライマーの位置を示す図である。 配列番号:1の2,679位におけるSNPs(下向き矢印)と制限酵素MspIの認識部位を示す図である。 PCR-SSP法により、配列番号:1の2,679位におけるSNPsを判定した結果を示す図である。 RFLP法により、配列番号:1の2,679位におけるSNPsを判定した結果を示す写真である。 ウシ、ヒト、ラットおよびマウスのグレリン受容体遺伝子5'フランキング領域中の翻訳開始点から上流へ900塩基の配列(ウシ)および856塩基の配列(ヒト、ラットおよびマウス)を示す図である。ウシ(配列番号:1の1,804位〜2,703位部分)、ヒト(AF369786の1,799位〜2,667位部分、配列番号:32)、ラット(NW_047621.1の18,254,417位〜18,255,272位、配列番号:33)、マウス(NT_162143.3の11,609,174位〜11,610,029位、配列番号:34)。黒線はマイクロサテライト配列を示す。

Claims (12)

  1. 被検ウシについて、グレリン受容体遺伝子上の変異を検出することを特徴とする、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定する方法であって、以下の工程(a)から(d)の工程を含み、
    (a)被検対象となるウシから、DNAを抽出する工程
    (b)抽出したDNAにおいて、多型部位を含むDNA断片を増幅する工程
    (c)増幅したDNA断片を解析し、多型を検出する工程
    (d)(c)の工程において、検出された変異に基づき、産肉形質を決定する工程;
    ここで、
    i)ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から−275塩基から−232塩基(配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位)に相当する多型部位において、マイクロサテライト多型を検出し、グレリン受容体の相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子のアリル反復数が、21, 22, 23, 24, 26, 29 または33 である場合と比較して、アリル反復数が19である場合に、産肉量が多いと決定する、
    ii)ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から−275塩基から−232塩基(配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位)に相当する多型部位において、マイクロサテライト多型を検出し、グレリン受容体の相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子のアリル反復数が、19である場合と比較して、アリル反復数が21, 22, 23, 24, 26, 29 または33 である場合に、産肉量が少ないと決定する、
    iii)多型部位において、ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がCである場合と比較してAである場合に、産肉量が多いと決定する、または、
    iv)多型部位において、ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の塩基種がAである場合と比較してCである場合に、産肉量が少ないと決定する、
    前記方法。
  2. 産肉形質を決定するための対象形質が、枝肉重量、屠殺前重量、検定終了時体重、1日平均増体重、バラ厚、皮下脂肪厚、推定歩留のいずれかである、請求項1に記載の判定方法。
  3. 請求項1に記載の工程(b)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行なわれることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 請求項1に記載の工程(c)において、増幅されたDNA断片の長さを決定することにより、マイクロサテライト多型を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  5. 請求項1に記載の工程(c)において、増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することにより、マイクロサテライト多型を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  6. 請求項1に記載の工程(c)において、制限断片長多型(RFLP)を検出することにより、一塩基多型の存在を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  7. 制限酵素Msp Iを用いて、-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の一塩基多型を検出することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1に記載の工程(c)において、増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することにより、一塩基多型を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  9. 請求項1に記載の工程(c)において、一塩基多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするプローブにより、一塩基多型を検出することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  10. ウシグレリン受容体遺伝子の翻訳開始点から-7位(配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位)の多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するプローブであって、配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位を含む連続した部位と相補的な塩基配列からなるプローブ。
  11. 以下の(a)または(b)に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドであって、配列番号:1おける該多型部位を含む塩基配列と相補的な塩基配列からなり、該多型部位を挟み込むように設定された、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
    (a)配列番号:1に記載の塩基配列における2,697位の多型部位
    (b)配列番号:1に記載の塩基配列における2,429位から2,472位の配列に相当する多型部位
  12. 請求項10に記載のプローブ、または、請求項11に記載のプライマーを含む、ウシ黒毛和種の産肉形質を判定するためのキット。
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