JP5560366B1 - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】915MHzと2450MHzの両方のマイクロ波を加熱箱に照射できるマイクロ波加熱装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波加熱装置1は、915MHzマイクロ波を発生する915MHzマグネトロン10と、915MHzマグネトロン10で発生したマイクロ波電力を伝送する915MHz導波管20と、2450MHzマイクロ波を発生する2450MHzマグネトロン40と、2450MHzマグネトロン40で発生した2450MHzマイクロ波電力を伝送する2450MHz導波管50と、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40を駆動する高圧電源60と、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40の照射タイミング、加熱時間、又は出力電力を制御する制御装置70と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロ波電力を被加熱物に照射するマイクロ波加熱装置に関する。
マイクロ波電力を応用した加熱方法は、マイクロ波エネルギが被照射物の内部に直接伝達され、迅速で高効率の加熱を実現することができ
る。被加熱物を均一にマイクロ波加熱する場合、一般的には家庭用電子レンジで採用されている被加熱物を回転する機能のターンテーブル方式、あるいは金属加熱箱内に供給されたマイクロ波を撹乱させるスターラ方式が採用されている。
また、業務用、工業用電子レンジにおいては、加熱室内の異なる位置から複数のマイクロ波照射構造が提案されている。
特許文献1には、加熱室内の被加熱物の位置、形態等によって生じる加熱むらを改善するため、加熱室内上下面からマイクロ波照射できる構造とし、上下面側に配設されたマイクロ波発振デバイスであるマグネトロンから発生するマイクロ波出力を各々で調整し、その加減で被加熱物の均一加熱を改善する電子レンジが記載されている。
特許文献2には、被加熱物となる高温発熱体の昇温時間制御を加熱室下面側に2個のマイクロ波照射口を有する高温発熱体を用いる電子焼却炉が記載されている。同じ周波数帯の複数個のマグネトロンを搭載した場合、マイクロ波干渉が発生する場合がある。これを避けるため、特許文献2に記載の装置では、各々導波管の軸のなす角が90°以下としている。ここでは、2個のマグネトロンから発生したマイクロ波電力を合成するためのT型導波管を用いている。
マイクロ波発振デバイスであるマグネトロンは、例えば2450MHzの共振器設計された多分割空洞の陽極構造となっている。このため、複数個のマグネトロンが搭載された場合、互いのマグネトロン間でマイクロ波干渉する場合がある。マイクロ波干渉が発生すると、被加熱物へのマイクロ波照射量が減少し、結果的には加熱効率が低下する。また、一方のマグネトロンから照射したマイクロ波が他方のマグネトロンに吸収されると、他方のマグネトロンを破壊させることがある。
従来のマグネトロンにおいては、発振周波数として915MHzと、ISM(Industry Science Medical)バンドである2450MHzの2種類のものが実用化されている。市場においては、2450MHz又は915MHz帯を発振周波数とするマグネトロンが主流であり、特に2450MHzのものが多用されている。2450MHzのマグネトロンは、加工室及び被加熱物の大きさ、導波管サイズ等を小型化できる特徴を有することから、業務用、家庭用等の電子レンジのような加熱装置はもとより、半導体製造装置として、薄膜のドライエッチング用装置、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置にも使用されている。
特許文献3及び4には、915MHz帯を発振周波数とする高周波加熱源を固体素子を用いて構成した固体高周波発生部を備える高周波加熱装置が記載されている。しかし、特許文献3及び4には、915MHz帯を発振周波数とする固体素子についての具体的記載はない。
特開昭61−181093号公報 特開平4−098787号公報 特開昭58−194288号公報 特開昭58−161292号公報
被加熱物へのマイクロ波浸透深さは、周波数が低いほど深くなる傾向がある。2450MHzでは、915MHzのものと比べてマイクロ波浸透深さが浅いため、被加熱物の表面付近から加熱されやすいため厚みがある対象物については均一な内部加熱が得られない場合がある。以下、2450MHzを用いる電子レンジの内部加熱の問題点について説明する。
マイクロ波による被加熱物の発熱量は、周波数f、及び被加熱物の誘電損失係数(ε・tanδ)に比例する。また、被加熱物へのマイクロ波浸透深さは、f:周波数、ε:誘電体の比誘電率、tanδ:誘電体の誘電損失角に反比例する。マイクロ波電力半減深さDは、次式(1)で示される。
D=33200000/f・√ε・tanδ (m) …(1)
因みに、水(25℃)の場合は、2450MHzマイクロ波ではε=78、tanδ=0.12であり、マイクロ波電力半減深さDは、1.20mmである。水分の多い被加熱物では、その厚みがある場合は、内部加熱されるものの、被加熱物の表面側から加熱されることになり、内部均一加熱に対しては不十分である。
2450MHzマイクロ波よりも低い周波数、例えば915MHzマイクロ波では、ε=79、tanδ=0.035であり、上記式(1)からマイクロ波電力半減深さDは、約130mmとなる。マイクロ波電力半減深さDが深くなった分、内部均一加熱に有利である。しかしながら、915MHzマイクロ波の空間波長は、約330mmと大きい。また、915MHzマイクロ波を伝送する導波管の開口部寸法は、JIS形名WRJ−1の247.65×123.83が一般的である。導波管が大型化されるため、電子レンジの小型化が困難となっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、915MHzと2450MHzの両方のマイクロ波を加熱箱に照射できるマイクロ波加熱装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のマイクロ波加熱装置は、915MHzマイクロ波を発生する永久磁石タイプの915MHzマグネトロンと、前記915MHzマグネトロンで発生したマイクロ波電力を伝送する915MHz導波管と、2450MHzマイクロ波を発生する2450MHzマグネトロンと、前記2450MHzマグネトロンで発生した2450MHzマイクロ波電力を伝送する2450MHz導波管と、被加熱物を収納可能な内部空間を有し、前記915MHz導波管から伝送された915MHzマイクロ波電力と前記2450MHz導波管から伝送された2450MHzマイクロ波電力とを被加熱物に照射させる加熱箱と、を備え、前記915MHzマグネトロンの陽極構造と前記2450MHzマグネトロンの陽極構造とを共通化して構成し、前記陽極構造を有する前記915MHzマグネトロン及び前記2450MHzマグネトロンの陽極へ接続される陽極電源を共通化して備えることを特徴とする。
本発明によれば、915MHzと2450MHzの両方のマイクロ波を加熱箱に照射できるマイクロ波加熱装置を提供する。
図1は、本発明の実施形態に係るマイクロ波加熱装置の外観図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の機能ブロック図である。 本実施形態に係るマイクロ波加熱装置の概略構成を示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHz導波管の構成を示す斜視図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHz導波管の構成を示す図である。 上記実施形態に係る永久磁石型915MHzマグネトロンの構成を示す断面図である。 上記実施形態に係る永久磁石型915MHzマグネトロンにおける陽極部及び陰極部を含む部分の要部平面図である。 図7のA−A断面図である。 上記実施形態に係る永久磁石型915MHzマグネトロンにおける1枚の陽極ベインの構成例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。 上記実施形態に係る永久磁石型915MHzマグネトロンの発振スペクトラムの一例を示す図である。 マグネトロンの発振周波数(横軸)とマグネトロンの重量比(縦軸)との関係を示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHz導波管の周波数特性を示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置のマイクロ波電界分布のシミュレーション解析モデルを説明する図である。 図13のシミュレーション解析モデルによるマイクロ波電界分布を示す図である。 図14のシミュレーション結果を検証した実験結果を示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の2450MHzマイクロ波源を金属加熱箱の底面に設置し、マイクロ波照射した場合の被加熱物のマイクロ波吸収電力分布のシミュレーション結果を示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の被加熱物として水分99%の感温ゲル剤にマイクロ波照射した場合のマイクロ波吸収分布を示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の2450MHzマイクロ波と比較して915MHzマイクロ波の優位性を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波の加熱特性を比較して加熱特性比較表(表1)として示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の温度による水の半減深度を水の半減深度表(表2)として示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の水加熱を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の水加熱を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の図23は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の氷の解凍(解凍方法1)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、大量の氷を解凍後に加熱をする場合の氷の解凍(解凍方法2)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の温度による食品の半減深度を食品の半減深度表(表3)として示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、食品(牛肉)を解凍後すぐに調理する場合の食品(牛肉)の解凍(食品解凍方法1)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、食品(牛肉)を解凍後すぐに調理する場合の食品(牛肉)の解凍(食品解凍方法2)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、食品(牛肉)の生肉を加熱する場合の食品(牛肉)の加熱(食品加熱方法1)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、調理済み冷凍穀物・野菜を解凍後に加熱する場合の食品の加熱(食品加熱方法2)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、塩分濃度が大きな食品を加熱する場合の含塩食品の加熱(食品加熱方法3)を説明する図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の照射タイミングを模式的に示す図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の水及び氷を2450MHzマイクロ波で加熱の場合の概念図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の水及び氷を915MHzマイクロ波で加熱の場合の概念図である。 上記実施形態に係るマイクロ波加熱装置の水及び氷を2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波併用加熱の場合の概念図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱装置の外観図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。本実施形態のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する金属加熱箱内にマイクロ波発振デバイスからのマイクロ波電力を伝送する導波管を有する高周波加熱装置(工業用電子レンジ)に適用した例である。
図1に示すように、マイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10と、915MHzマグネトロン10で発生したマイクロ波電力を伝送する915MHz導波管20と、2450MHzマグネトロン40と、2450MHzマグネトロン40で発生した2450MHzマイクロ波電力を伝送する2450MHz導波管50と、被加熱物を収納可能な内部空間を有し、915MHz導波管20から伝送された915MHzマイクロ波電力と2450MHz導波管50から伝送された2450MHzマイクロ波電力とを被加熱物に照射させる金属加熱箱30と、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40を駆動する共通の高圧電源であるマグネトロン電源(高圧電源)60と、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40を制御する制御装置(制御部)70と、を備える。
制御装置70は、マイクロコンピュータ等により構成され、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40の照射タイミング、加熱時間、又は出力電力を制御する。制御装置70は、被加熱物の種別及び容積に基づいて、915MHzマグネトロン10又は2450MHzマグネトロン40のいずれかを単体、若しくは併用して制御する。
マイクロ波加熱装置1は、金属加熱箱30をテーブル80a上に載置し、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とマグネトロン電源(高圧電源)60と制御装置70とを内部に収容する筺体80を備える。
マイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40を備えるハイブリッド電子レンジである。
図2は、マイクロ波加熱装置1の機能ブロック図である。図1と同一構成部分には同一符号を付している。
図2に示すように、マイクロ波加熱装置1は、基本的には同一構造である915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とを備える。915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とは、同一構造を採るため陽極電源を同一(1台)にすることができる。本実施形態では、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40に、1台のマグネトロン電源(高圧電源)60を並列接続している。915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40には、電子放出用の陰極91と92とが接続される。なお、陰極91,92は、具体的には図6(詳細後記)の陰極フィラメント151である。
詳細は後述するが、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40の陽極電源を、1台のマグネトロン電源(高圧電源)60で兼用できるのは、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40の基本構成がほぼ同一構造を採るからである。さらに言えば、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とをほぼ同一構造で構成するためには、915MHzマグネトロン10側に特別な技術的特徴を導入する必要がある。因みに、915MHzマグネトロン10を、永久磁石タイプマグネトロンで構成することによってはじめて、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とをほぼ同一構造で構成することが可能になる。詳細は後記図6乃至図9により説明する。
図3は、本実施形態に係るマイクロ波加熱装置の概略構成を示す図である。図1及び図2と同一構成部分には同一符号を付している。
図3に示すように、マイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10と、915MHzマグネトロン10で発生したマイクロ波電力を伝送する915MHz導波管20と、2450MHzマグネトロン40と、2450MHzマグネトロン40で発生した2450MHzマイクロ波電力を伝送する2450MHz導波管50と、被加熱物を収納可能な内部空間を有し、915MHz導波管20から伝送された915MHzマイクロ波電力と2450MHz導波管50から伝送された2450MHzマイクロ波電力とを被加熱物に照射させる金属加熱箱30と、を備える。
上記915MHzマグネトロン10及び915MHz導波管20は、915MHzマイクロ波源15を構成する。915MHzマイクロ波源15は、金属加熱箱30の上面側に配置され、金属加熱箱30内にマイクロ波を照射する。
また、上記2450MHzマグネトロン40及び2450MHz導波管50は、2450MHzマイクロ波源45を構成する。2450MHzマイクロ波源45は、金属加熱箱30の下面側に配置され、2450MHzマイクロ波照射口50aを通して金属加熱箱30内にマイクロ波を照射する。
このように、マイクロ波加熱装置1は、915MHzと2450MHzの両方のマイクロ波を金属加熱箱30に照射できるマイクロ波加熱装置である。
<915MHzマグネトロン10>
915MHzマグネトロン10は、915MHzマイクロ波を発振出力するマイクロ波発振デバイスである。
915MHzマグネトロン10は、マグネトロンアンテナ58(詳細は後記図4及び図12参照)を出力部として備え、発生した915MHzマイクロ波をマグネトロンアンテナ58により放射して915MHz導波管20に伝送させる。後記するように、マグネトロンアンテナ58は、915MHz導波管20の所定位置に挿入される。マグネトロンアンテナ58の高さは、2450MHzマグネトロンのアンテナと同じ高さである。
<915MHz導波管20>
915MHz導波管20は、915MHzマグネトロン10と結合し、915MHzマイクロ波電力を金属加熱箱30に伝送する伝送回路である。915MHz導波管20は、方形導波管であり方形の開口部20aを有する。開口部20aの幅寸法及び高さ寸法、並びに導波管の奥行き寸法等は、それぞれ下記の特徴を有する。
915MHz導波管20は、開口部20aの幅寸法が915MHz遮断周波数に近接した165〜180mmである。また、915MHz導波管20は、開口部20aの高さ寸法が2450MHz導波管で採用されている45〜54.6mmである。したがって、例えば915MHz導波管20は、開口部20aの幅寸法及び高さ寸法が167mmW×54mmhである。
ここで、915MHz導波管20の開口部20aの高さ寸法は、2450MHz導波管50で採用されている45〜54.6mmと同じ寸法である。
また、915MHz導波管20は、開口部20aに対して直交する面20b(詳細は後記図4及び図5参照)の開口部20aと反対側(図4では右側)が、915MHzマグネトロン10の取付部となっている。この取付部には、915MHz導波管20の高さ寸法方向に、915MHzマグネトロン10のマグネトロンアンテナ(マイクロ波出力用アンテナ)58が挿入される。マグネトロンアンテナ58のアンテナ高さは、開口部20aの高さ寸法45〜54.6mm以下である。
また、915MHz導波管20は、開口部20aの反対側の導波管内部に、導波管内部に導入されたマイクロ波を開口部20a側に反射して導くための金属反射板21を備える。金属反射板21は、915MHz導波管20の内部に挿入されたマグネトロンアンテナ58の位置基準として、マイクロ波進行方向と反対側に130〜140mmの位置に取り付けられる。
なお、915MHz導波管20の奥行き寸法(全長)と、開口部20aからマグネトロンアンテナ58までの寸法は、任意である。
このように、915MHz導波管20は、一般的に採用されている915MHz導波管(導波管形名WRJ−1のJIS規格準拠)開口部寸法の247.65Wmm×123.83hmmと比較して、幅寸法で約67%、高さ寸法で約44%まで小型化されている。
<金属加熱箱30>
金属加熱箱30は、被加熱物を収納しうる内部空間を有し、その1辺の長さが915MHzマイクロ波の自由空間波長(約33cm)以上の直方体構造である。具体的には、金属加熱箱30は、1辺の長さが915MHzマイクロ波の自由空間波長以上(ここでは411mm)とした、411Wmm×235hmm×320Dmmの角型筒体形状である。このサイズ及び形状は、一般的な電子レンジと同じ基本形状である。金属加熱箱30は、被加熱物を出し入れするドアー(図示省略)が、411Wmm×235hmmの面に取り付けられる。
<2450MHzマグネトロン40>
2450MHzマグネトロン40は、2450MHzマイクロ波を発振出力するマイクロ波発振デバイスである。
2450MHz導波管50は、2450MHzマグネトロン40と結合し、2450MHzマイクロ波電力を金属加熱箱30に伝送する伝送回路である。2450MHz導波管50は、一般的に採用されているJIS形名WRJ−2であり、その開口部寸法であるマイクロ波照射口50aは、109.2Wmm×54.6hmmである。
[915MHz導波管20の構成]
図4は、915MHz導波管20の構成を示す斜視図である。図5は、図4の915MHz導波管20の構成を示す図であり、図5(a)はその上面図、図5(b)はその側面図である。
図4に示すように、915MHz導波管20は、金属加熱箱30(図3参照)内にマイクロ波を照射する開口部20aと、915MHzマグネトロン10が配置される面20bとを有する。開口部20aと反対側の面20bには、915MHzマグネトロン10(図3参照)が取り付けられ、当該取付位置には、915MHzマグネトロン10の同軸管外導体59に接続されたマグネトロンアンテナ58(後記図4参照)が挿入される。また、図5(a)(b)に示すように、915MHz導波管20は、開口部20aの反対側の導波管内部に、マイクロ波を開口部20a側に反射して導くための金属反射板(短絡板)21を有する。金属反射板21は、マグネトロンアンテナ58位置基準として、マイクロ波進行方向と反対側に130〜140mmの位置に取り付けられる。なお、金属反射板21は、マイクロ波進行方向と反対側の915MHz導波管20の底部(有底筒管の底部)であってもよい。
915MHz導波管20は、開口部20aの幅寸法Wが915MHz遮断周波数に近接した165〜180mm(例えば、167mm)、その高さ寸法hが2450MHz導波管で採用されている45〜54.6mm(例えば、54mm)である。また、915MHz導波管20は、マグネトロンアンテナ58から金属反射板21までの長さが130〜140mm(例えば、130mm)である。なお、開口部20aからマグネトロンアンテナ58までの長さは、例えば330mm、開口部20aから金属反射板21までの長さは、例えば460mmである。
[915MHzマグネトロン10の構成]
図6は、本発明の実施形態に係る永久磁石型915MHzマグネトロン10の構成を示す断面図である。
図6に示すように、915MHzマグネトロン10は、熱電子放出源となる陰極フィラメント(直熱形螺旋状陰極)151、複数枚の陽極ベイン(単に、ベインともいう)152、及び陽極円筒部(陽極シリンダ)153を備える。これらの陽極円筒部153、陽極ベイン152及び陰極フィラメント151の寸法及び配置等は、後述する特定の関係を保っている。
915MHzマグネトロン10は、円環状の永久磁石154,154a、磁極155,155a、ヨーク156,156a、アンテナリード157、円筒状のアンテナブロック158、絶縁体161、作用空間163、ストラップ164、棒状の上下封止金属166,167、上下陽極板168,168a、及び出力部169を備える。出力部169は、アンテナリード157及びアンテナブロック158を含んで構成されている。また、アンテナリード157とアンテナブロック158とは、銀ろう付け又はアーク溶接等の方法によって接合されている。
915MHzマグネトロン10は、磁気回路部170、上側エンドシールド(出力側エンドシールドともいう)171、下側エンドシールド(入力側エンドシールドともいう)172、陰極リードのセンターリード173、陰極リードのサイドリード74、入力側セラミック175、端子板176、陰極部178、陽極部179、及び排気管180を備える。
磁気回路部170は、磁気発生源である永久磁石154,154a及び磁極155,155a並びにヨーク156,156aを含んで構成されている。また、陰極部178は、熱電子放出源となる陰極フィラメント151及び上側及び下側エンドシールド171,172並びに陰極リード173,174等を含んで構成されている。また、陽極部179は、複数枚の陽極ベイン152及び陽極円筒部153と、ろう付け等で固着されるか、又は陽極円筒部153と共に押し出し成形により一体形成されている。
このような構成要素を有する915MHzマグネトロン10において、ヨーク156,156aは、磁気回路部170を構成する。また、ヨーク156,156aは、永久磁石154,154a、磁極155,155a、アンテナリード157、陰極部178及び陽極部179を収容する筐体でもあり、マイクロ波の出力側に配置され、図示せぬ外部機構との結合部材としても用いられる。その筐体は、一方のヨーク156が下面が開口した箱形を成し、他方のヨーク156aがその開口を塞ぐ蓋状を成して構成されている。また、ヨーク156とヨーク156a同士が、ネジ205でネジ止めされており、更にヨーク156が冷却機構177にネジ205aでネジ止めされている。
陽極円筒部153の上下には、軟鉄等の強磁性体から成る磁極155,155a及び円筒状の永久磁石154,154aが配置されている。永久磁石154,154aから発生した磁束は、磁極155,155aを通って陰極フィラメント151と陽極ベイン152との間に形成される作用空間163に入り、915MHzマグネトロン10の上下方向である軸芯方向に必要な直流磁界を与える。
この直流磁界により次のような作用を及ぼす。すなわち、915MHzマグネトロン10の本体軸芯が水平面に対して垂直に設置されている状態において、陰極フィラメント151から陽極ベイン152に向かって水平方向に飛ぶ電子に対して垂直方向(軸芯方向)に磁束が付与されると、電子にローレンツ力が加わる。このローレンツ力により電子が水平方向に螺旋状に旋回しながら飛ぶことになり、陽極ベイン152に高周波電界が形成される。
陰極フィラメント151は、直流の4kV〜8kVの負の高電圧の印加状態において電子を放出し、この電子は、上記のように電界及び磁界の作用を受けて螺旋運動しながら各陽極ベイン152に高周波電界を形成する。この形成された高周波電界は、アンテナリード157を通してアンテナブロック158から図示せぬ外部機器へ出力される。但し、上記で、直流の4kV〜8kVの負の高電圧としたのは、負の高電圧が8kV未満の場合は永久磁石154,154aの磁力が不足するため、現実的ではない。負の高電圧が4kVを超える場合は、十分な出力が得られにくく、実用的ではないという理由がある。
また、陰極フィラメント151は、電子放出特性及び加工性等を考慮して、一般的には酸化トリウム(ThO)を約1%含むタングステン線が用いられ、上側エンドシールド171と下側エンドシールド172及び陰極リード173,174で支持されている。陰極リード173,174は、耐熱性、加工性の観点から、一般的にはモリブデン(Mo)が採用され、入力側セラミック175の上面に銀ろう等でろう付けされた端子板176を介してチョークコイル181に接続されている。
915MHzマグネトロン10の下部には、チョークコイル181及び貫通コンデンサ182を支持するフィルターケース183と、このフィルターケース183を閉じる蓋体184とから成るフィルタ構造体185が取り付けられている。端子板176に接続されたチョークコイル181は、貫通コンデンサ182とでL−Cフィルタを構成し、陰極リード173,174から伝播されてくる低周波成分を抑制する。但し、高周波成分は、フィルターケース183とその蓋体184でシールドされる。また、陽極円筒部53の外周に設置された冷却機構177は、冷水が通る冷却水通路177aが内部に周回されて配設されており、その通過する冷水で915MHzマグネトロン10の作動に伴う熱を拡散させる。
また、排気管180は、陰極部178、陽極部179及び出力部169の一部等が封入されるマグネトロン真空管本体の内部の気体を抜くためのものである。気体を抜いて真空状態となった後、排気管180の先端が封印されるようになっている。
図7は、図6に示す陰極部178及び陽極部179を含む部分の要部平面図、図8は、図7のA−A断面図である。図9は、本実施形態の915MHzマグネトロン10における1枚の陽極ベイン52の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
図7に示すように、陽極円筒部153の内周側に、平面形状が長方形状の10枚の陽極ベイン152の末端が、均等に配置固定されている。更に、その固定位置から各陽極ベイン152の先端が陰極フィラメント151の中心に向かって逆放射状に突出して円形状に配列され、この円形状配列の各先端と陰極フィラメント151との間に作用空間163が形成されている。
更に、各陽極ベイン152の先端側には、ストラップ収納溝152aが形成され、ストラップ収納溝152aの上下方向の対向位置には切込み152bが形成されている。これらストラップ収納溝152a及び切込み152bは、図8に示すように、各陽極ベイン152に1つ置きに、すなわち交互に形成されており、これらストラップ収納溝152a及び切込み152bに円環状のストラップ164が嵌合されて組み込まれている。
ここで、図9(b)に示すように、ストラップ収納溝152aの深さはH3、切込み152bの深さはH2となっている。
但し、ストラップ164は、ストラップ収納溝152aに対しては隙間なく嵌合され、切込み152bに対しては両側と底面側とに隙間(ギャップ)ができるように嵌合される。すなわち、ストラップ収納溝152aと切込み152bとの幅及び深さH3,H2がそのような寸法に形成されている。そのストラップ164と切込み152bとのギャップは、後述のように静電容量Cの大きさと相関関係を有する。
図7に示す構造は多分割構造陽極構造と呼称され、10枚の陽極ベイン152で分割された空洞共振器となっている。個々の空洞共振器が構成する静電容量C及びインダクタンスLにより、共振周波数、つまり915MHzマグネトロン10の発振周波数が決まる。
インダクタンスLは、陽極円筒部153の内周側と円環状のストラップ164の外周側との間に位置する各陽極ベイン152間の三角形状の空洞の大きさで決まる。空洞が大きくなる程にインダクタンスLが大きくなる。つまり、陽極円筒部153の内径が大きくなる程に、三角形状の空洞が大きくなるのでインダクタンスLが大きくなる。
静電容量Cは、各陽極ベイン152におけるストラップ164の内周側に付き出した先端部同士の間のギャップで決まる。ギャップが小さいほどに静電容量Cが大きくなる。また、その先端部の互いに対向する部分の面積が大きいほどに、静電容量Cが大きくなる。つまり、図9(b)に示す陽極ベイン152の先端部の高さH1が高くなる程に先端部面積が大きくなって、静電容量Cも大きくなる。
更に、静電容量Cは、図8に示すように、ストラップ164と、切込み152bの両側及び底面側との間のギャップの大きさでも変化する。このギャップが小さいほどに静電容量Cが大きくなる。
陽極円筒部153の円周中心部に配置された陰極フィラメント151の上端は出力側エンドシールド171に固着され、下端は入力側エンドシールド172に固着されている。出力側エンドシールド171は棒状の陰極リード73に支持され、入力側エンドシールド172は棒状の陰極リード174に支持されている。
ここで、10枚の陽極ベイン152を有した915MHzマグネトロン10の各部寸法は、発振周波数が800乃至1000MHzを得るため、例えば下記のように定められている。
F(フィラメント外径)=9.2mm(図8参照)
G(陽極ベイン先端内径)=20mm(図8参照)
D1(陽極円筒部内径)=85mm(図8参照)
D2(陽極円筒部外径)=95mm(図8参照)
F/G〔(陰極フィラメント外径)/(陽極ベイン先端内径)〕=0.46(図8参照

L1(陽極ベイン全長)=32.5mm{図9(b)参照}
L2(陽極ベイン先端部テーパ部長さ)=4.6mm{図9(a)参照}
H1(陽極ベイン高さ)=24mm{図9(b)参照}
H2(ストラップ収納溝通過部高さ)=6.8mm{図9(b)参照}
H3(ストラップ収納溝ろう付け部高さ)=5.8mm{図9(b)参照}
T1(陽極ベイン厚さ)=8.0mm{図9(a)参照}
T2(陽極ベイン先端部厚さ)=5.0mm{図9(a)参照}
R1(ストラップ収納溝壁面曲率)=14.9mm{図9(a)参照}
R2(ストラップ収納溝壁面曲率)=20.5mm{図9(a)参照}
R3(ストラップ収納溝壁面曲率)=15.9mm{図9(c)参照}
R4(ストラップ収納溝壁面曲率)=19.8mm{図9(c)参照}
ストラップ外径:39.3mm(図8参照)
ストラップ内径:31.7mm(図8参照)
上記各寸法の陽極構造の915MHzマグネトロン10の発振周波数スペクトラムを図10に示す。
図10に示す発振周波数スペクトラムから明らかなように、この陽極構造であれば発振周波数はピークが914MHzであり、本発明の発振周波数の800乃至1000MHzの条件を満たしている。また、このときのマイクロ波出力は6kWである。
図11は、915MHzマグネトロン10の発振周波数(横軸)と915MHzマグネトロン10の重量比(縦軸)との関係を示す図である。図11は、発振周波数2450MHzのマグネトロンの重量を重量比100%とし、2450MHz以下の各発振周波数と、マグネトロンの重量比との関係を曲線MLで表してある。
従来のマグネトロン、例えば陽極ベインの枚数が14枚、発振周波数が2450MHz、マイクロ波出力が6kW(6kWクラス)の場合のマグネトロンの質量は2.7kg程度である。この従来のマグネトロンの質量と発振周波数との相対位置を図11に点aで示す。これを基準に発振周波数が915MHzのマグネトロンを実現させようとすると、陽極ベインの長さを7倍以上にする必要があり、その重量は図11の点bに位置する。
マグネトロンのような多空胴(上述した図7の各陽極ベイン152での分割空洞)を有する陽極構造の発振周波数fは、1つの空胴で構成されるインダクタンスLと静電容量Cに応じて次式(2)のように決まる。
f=1/2π√(LC) …(2)
この式(1)から、安定した発振周波数fを得るためには、空洞をある程度大きくする必要があることが分かる。このため、従来では陽極構造の大型化は避けられない。
一般的には、陽極ベインの厚さを薄くしてインダクタンスLを補正し、陽極ベインが薄くなったことによる熱的余裕度の補正を、陽極ベインの枚数を増やすことで対応している。例えば14枚の陽極ベインのマグネトロンでは、ベイン枚数が多いので、ベイン間の3角形状の空洞が小さくなる。これを大きくするために陽極円筒部153の径を大きくする必要がある。つまり、14枚の陽極ベインのマグネトロンでは、12枚の陽極ベインのマグネトロンよりも陽極構造が大きくなってしまう。
一方、12枚の陽極ベインで静電容量Cを大きくしようとしても、ベイン先端部間のサイズは0.5mm以下が限界であるため、構造的限界がある。このため、結果的には915MHzで発振するマグネトロンを実現させても、図11の点bのように、点aと比較して約3倍の大きさになってしまう。
但し、陽極ベイン152の先端部間隔は、極力狭くした方が静電容量Cが大きくなって、陽極ベイン152の先端部間の高周波電界を相対的に強くすることができ、負荷安定度は改善されることになる。
本実施形態のように、従来よりもベイン枚数が少なく、すなわち、陽極ベイン152を10枚とすれば、静電容量Cを変えずに、ベイン間空洞が大きくなってインダクタンスLが大きくなるので、その分、陽極円筒部153の径を小さくすることができる。また、インダクタンスLが大きくなると、発振周波数は下がって低周波となる。つまり、陽極ベイン152を10枚とすれば、小形の低周波(発振周波数800〜1000MHz)の915MHzマグネトロン10を実現することができる。
915MHzマグネトロン10として満足される実用的な各部寸法範囲は次の通りである。上記各寸法は一例であるが、種々の検討をした結果、800乃至1000MHzの発振周波数の915MHzマグネトロン10として満足される実用的な各部寸法範囲は次の通りである。
F(フィラメント外径)=8.0〜10.0mm(図8参照)
G(陽極ベイン先端内径)=17〜22mm(図8参照)
D1(陽極円筒内径)=70〜90mm(図8参照)
D2(陽極円筒部外径)=80〜100mm(図8参照)
F/G〔(陰極フィラメント外径)/(陽極ベイン先端内径)〕=0.36〜0.59
(図8参照)
L1(陽極ベイン全長)=30〜35mm{図9(b)参照}
H1(陽極ベイン高さ)=23〜25mm{図9(b)参照}
T1(陽極ベイン厚さ)=7.5〜8.5mm{図9(a)参照}
F/Gの値が0.36未満であると、発振効率が悪くなり実用的ではなくなる。0.59を超える値では、磁束密度が不足し、陽極電圧が上がりにくくなるため、現実的ではなくなる。(D2−D1)/2の結果の値が陽極円筒部153の厚さとなり、この厚さが5mm未満では陽極円筒部153が歪み易くなり、品質が悪くなる。5mmを超えても発振可能ではあるが、陽極円筒部53の冷却効率が悪くなるだけでなく、陽極円筒部153の価格が高くなったり、重量が重くなったりする等の問題が生じる。そこで、D1=70〜90mm、D2=80〜100mmとした。ここで、少なくともD2=80〜100mmとするのがよい。
一方、安定的な発振動作を維持すると共に、陽極円筒部53の径小化を図るための図8に示す陽極円筒内径D1と陽極ベイン先端内径Gとの比(D1/G)は、実験の結果、約4.2倍が適切である。また、陽極円筒部外径D2は、陽極円筒の機械的強度、放熱効率等を考慮して80〜100mmに決定される。
また、915MHzマグネトロン10は、上述したように多空胴共振構造である。このため、従来のようにベイン枚数が14枚のように多くなると、1つの空洞が小さくなる程に、空洞の形成誤差が空洞形状全体に反映される割合が大きくなってしまう。このため、個々の空洞共振器の形状バラツキが大きくなるので、発振周波数が不安定となる。
本実施形態の915MHzマグネトロン10のようにベイン枚数が10枚の場合、1つの空洞が大きいので、空洞の形成誤差が空洞形状全体に反映される割合が小さい。このため、個々の空洞共振器の形状バラツキが小さいので、発振周波数が安定する。言い換えれば、静電容量Cが一定でインダクタンスLが大きいので、個々の空洞共振器のバラツキが少なくなり、このため、発振周波数が安定する。
したがって、10枚の陽極ベイン52を用いた空胴数の少ない915MHzマグネトロン10の方が、従来のマグネトロンよりも発振周波数特性に優れている。なお、ベイン枚数がより少ない8枚の場合、空洞はより大きくなるが、入出力効率が悪くなり使用に耐えなくなってしまう。
このように、本実施形態の915MHzマグネトロン10は、熱電子放出源である陰極フィラメント151を含む陰極部178と、陽極円筒部153の内側に複数の陽極ベイン52を一定間隔離して円環状に配列した構造であり、陽極ベイン152同士の間に形成される空洞による空洞共振器を有する陽極部179と、空洞共振器に蓄えられるマイクロ波を外部へ送出する出力部169と、陰極部178、陽極部179及び出力部169の一部を内封する真空管本体の軸方向上下端に磁石を配設した磁気回路部170とを備える。そして、空洞共振器の数を10個、陰極部178の外径と陽極ベイン152先端の内径との比を0.36〜0.59、陽極円筒部153の外径を80〜100mmとした。更に、真空管本体の発振周波数が800乃至1000MHzとなる。
この構成によれば、陽極ベイン152の枚数を、従来の12枚よりも少ない10枚とした。このようにベイン枚数を10枚とすれば、静電容量Cを変えずに、ベイン間の空洞共振器が大となりインダクタンスLが大となるので、その分、陽極円筒部153の径を小さくすることができる。したがって、陽極部79の円形状の径を小さくすることができるので、マグネトロン全体を小型化することができる。
また、ベイン枚数が10枚の場合、1つの空洞が大きいので、空洞の形成誤差が空洞形状全体に反映される割合が小さい。このため、個々の空洞共振器の形状バラツキが小さいので、発振周波数が安定する。言い換えれば、静電容量Cが一定でインダクタンスLが大きいので、個々の空洞共振器のバラツキが少なくなり、このため、発振周波数が安定する。更に、インダクタンスLが大になると、発振周波数は下がって低周波となる。つまり、陽極ベイン152を10枚とすれば、小形の低周波(発振周波数800〜1000MHz)のマグネトロン100を実現することができる。
したがって、900MHz帯のマグネトロンを、従来の2450MHz帯のマグネトロンと略同一外径寸法及び略同一出力で提供することができる。
また、上記の磁石を、永久磁石54,54aとした。
この構成によれば、電磁石を用いないので電磁石励磁用の電源も不要となり、その分、電源のコストが下がる。また、電磁石を用いた場合、陰極部178、陽極部179、電磁石用の3つの電源が必要であり、各給電対象の作用動作を考えながら各電源を制御して作動させる必要があった。しかし、電磁石が無くなると、陰極部178と陽極部179の2つの電源のみとなるので、電源の作動制御がその分簡単になるという効果がある。
特に、1つの高圧電源で915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン10とを共通して駆動できるという、特別の効果がある。
また、陰極部178は、直流の4kV〜8kVの負の高電圧の印加状態において陽極部79へ電子を放出し、この電子放出に応じて当該陽極部179が高周波電界を形成してマイクロ波を出力するようにした。
この構成によれば、従来のように発信源に半導体デバイスを用いる場合よりも高出力化が容易であり、半導体デバイスを駆動させる高コストの電源よりも、低コストとすることができるといった効果がある。
以下、上述のように構成されたマイクロ波加熱装置1の915MHzマイクロ波源15の小型化について説明する。
本発明者らは、915MHzマイクロ波源15の小型化を阻害する要因の一つが、915MHz導波管20の開口部20a寸法(サイズ)の大きさにあると認識し、開口部20aをいかに小さくできるかを鋭意検討した。その結果、915MHzマイクロ波伝送の遮断周波数と開口部20aの幅W寸法とに特定の関係があることを見出した。また、マグネトロンアンテナ58を基準位置としたとき金属反射板21位置により伝送効率が変わることを見出した。
<開口部20aの幅寸法>
まず、開口部20aの幅寸法(以降、幅W寸法という)について説明する。
915MHz導波管20は、915MHzマイクロ波源15を構成する。915MHzマイクロ波源15は、金属加熱箱30の上面側に配置され、金属加熱箱30内にマイクロ波を照射する。
すなわち、マイクロ波を伝送する開口部20aの幅W寸法を167mmにした場合、915MHz導波管20の遮断波長は、2×167mm=334mmとなる。一方、915MHz導波管20は、915MHzの空間波長が、約330mmである。したがって、915MHz導波管20の遮断波長334mmは、915MHzの空間波長約330mmに近接しているので、915MHzマグネトロン10から照射した915MHzマイクロ波は効率良く伝送される。このように、915MHz導波管20の開口部20aの幅W寸法は、915MHzマイクロ波伝送の遮断周波数(約900MHz)に近接した当該遮断周波数の略半分の幅寸法とした。
<開口部20aの高さ寸法>
次に、開口部20aの高さ寸法(以降、高さh寸法という)について説明する。
一般に、マグネトロンで発生したマイクロ波を導波管内に伝送させるためのマグネトロンのアンテナ高さは、自由空間波長のλ/4である。2450MHzマイクロ波では、マグネトロンのアンテナ高さは、12.2cm×1/4≒30mmとなる。つまり、2450MHzマグネトロンでは、マグネトロンアンテナが導波管高さ方向に約30mm挿入される。
これに対して、915MHzマイクロ波では、330mm/4=82.5mmのアンテナ高さとなる。本実施形態では、図3乃至図12に示すように、915MHz導波管20高さは、2450MHz導波管高さと略同じ54.0mmとした。また、915MHzマグネトロン10のマグネトロンアンテナ58高さも2450MHzマグネトロンと同じ30mm程度となる。
したがって、915MHz導波管20の開口部20a寸法は、導波管形名WRJ−1のJIS規格247.65Wmm×123.83hmmと比較して、幅寸法で約67%、高さ寸法で約44%まで小型化されている。
<915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40のアンテナ高さ>
マグネトロンで発生したマイクロ波を導波管内に伝送させるためのマグネトロンのアンテナ高さは、自由空間波長のλ/4である。2450MHzマイクロ波では、12.2cm×1/4≒30mmである。このため、2450MHzマグネトロン40のマグネトロンアンテナ58を2450MHz導波管50の高さ方向に約30mm挿入する。また、915MHzマイクロ波では、330mm/4=82.5mmのアンテナ高さとなる。本実施形態では、915MHz導波管20高さは、2450MHz導波管50高さと略同じ54.0mmとした。915MHzマグネトロン10のアンテナ高さも2450MHzマグネトロン40と同じ30mm程度となる。
これにより、915MHz導波管20を小型化し、かつ915MHzマグネトロン10のアンテナ構造を2450MHzと共通化することができる。マグネトロンのアンテナ構造を共通化することで、マグネトロン製造コストの量産効果を得ることができる。
<伝送効率>
図4及び図5において、915MHz導波管20高さを54.0mm、マグネトロンアンテナ58高さを32mmとした場合の915MHzマイクロ波源15のマイクロ波伝送特性をシミュレーションから求めた。
915MHz導波管20に挿入されるマグネトロンアンテナ58の構造は、915MHzマグネトロン10の出力部169(図6参照)を想定する。同軸管外導体59の径を37φmm、内導体となるマグネトロンアンテナ58の径を18φmmの同軸管構造とする。また、915MHz導波管20内に挿入されるマグネトロンアンテナ58の深さ(挿入される部分の長さ)は、32mmとする。
図5に示すように、内導体であるマグネトロンアンテナ58から放射されるマイクロ波は、マイクロ波進行方向(金属加熱箱30方向)に向かって伝送する。このときの伝送効率は、マグネトロンアンテナ58からマイクロ波進行方向反対側の金属反射板(短絡板)21の距離(BP(バックプランジャ)寸法)に依存する。
図12は、915MHz導波管20の周波数特性を示す図である。図12は、図4及び図12のシミュレーションモデルにおける伝送効率のシミュレーション結果を示す。図12中、横軸は周波数f、縦軸は915MHzマイクロ波の伝送効率となる反射係数Γを示し、金属反射板21位置(BP寸法)をパラメータとしている。
金属反射板21位置(BP寸法)130.2〜140.2mmで反射係数Γを0.10まで最小化する。ここでは、金属反射板21位置が、90.2mm、100.2mm、130.2mm、140.2mm、150.2mmの各BP寸法における周波数f及び反射係数Γを示している。反射係数Γ=0はマイクロ波の100%伝送を、反射係数Γ=1はマイクロ波の0%伝送を表す。Γ=0でアンテナから放射されたマイクロ波はすべて金属加熱箱30内に供給され被加熱物に吸収される。Γ=1.0では、被加熱物に吸収されるマイクロ波電力が0であることを表す。f=900MHzでは、BP寸法に関わらずΓ=1となるが、これは導波管幅寸法で決まる導波管遮断周波数である。
ここで、本実施形態では、915MHz導波管20の遮断波長を、915MHzマイクロ波伝送の遮断周波数(約900MHz)に近接させるように、915MHz導波管20の開口部20aの幅寸法を決定する。具体的には、915MHz導波管20の開口部20aの幅寸法を167mmとすることで、915MHz導波管20の遮断波長を2×167=334mmとし、915MHzマイクロ波伝送の遮断周波数(約900MHz)に近接させている。
図12に示すように、金属反射板21位置(BP寸法)140.2mmの場合、反射係数Γ=0.10で915MHzマイクロ波が最も良く伝送され、金属反射板21位置(BP寸法)130.2mmの場合、反射係数Γ=0.12でそれに次ぐ。したがって、金属反射板21位置(BP寸法)を130〜140mmとした場合、伝送効率が良いことがシミュレーションにより確かめられた。
以下、上述のように構成されたマイクロ波加熱装置1の内部加熱について説明する。
<被加熱物のマイクロ波吸収電力の分布>
図13は、マイクロ波加熱装置1のマイクロ波電界分布のシミュレーション解析モデルを説明する図である。図14は、図13のシミュレーション解析モデルによるマイクロ波電界分布(シミュレーション結果)を示す図であり、図14(a)は、図13の水負荷Aを915MHzマイクロ波により加熱した場合のマイクロ波電界分布を、図14(b)は、図13の水負荷Bを915MHzマイクロ波により加熱した場合のマイクロ波電界分布をそれぞれ示す。また、図14(c)は、図13の水負荷Aを2450MHzマイクロ波により加熱した場合のマイクロ波電界分布を、図14(d)は、図13の水負荷Bを2450MHzマイクロ波により加熱した場合のマイクロ波電界分布をそれぞれ示す。なお、図13の()内数値は、2450MHzマイクロ波源45(図3参照)を使用した場合の解析モデル例である。
図13に示すように、金属加熱箱30の上面中央部に915MHzマイクロ波源15(図3参照)を設置し、金属加熱箱30内に被加熱物として水負荷1L×2個(容器:1Lビーカ)を入れて載置する。この水負荷A,Bサイズは、例えば102φmm×110hmmである。
915MHz導波管20又は2450MHz導波管50を介して金属加熱箱30内に915MHzマイクロ波又は2450MHzマイクロ波を照射する解析モデルについて、シミュレーションを行った。
図14(a)(b)に示すように、915MHzマイクロ波の場合、底面から1/3高さ位置に強いマイクロ波吸収部分が2個の水負荷A,Bに見られる。
一方、図14(c)(d)に示すように、2450MHzマイクロ波の場合は、マイクロ波照射面側である上面側に強いマイクロ波吸収が見られる。915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波のマイクロ波吸収分布の差は明らかである。この知見から、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用することにより、被加熱物に対し均一な内部加熱を実現できることになる。
上述したシミュレーション結果を検証するため、水負荷A,Bの代わりに、水分99%の感温ゲルを使い実動作試験を行った。感温ゲルは、温度の高い部分、つまりマイクロ波電界の強い場所から白濁化するものであり、被加熱物内のマイクロ波吸収分布調査に好適である。
図15は、被加熱物として水分99%の感温ゲル剤を採用し、実際にマイクロ波照射を行い、図14のシミュレーション結果を検証した実験結果を示す図である。図15(a)はその915MHzマイクロ波の場合の実験結果を、図15(b)はその2450MHzマイクロ波の場合の実験結果をそれぞれ示す。
図15(a)に示すように、915MHzマイクロ波では、負荷底面から1/3の位置で感温ゲル91が白濁化(網掛部分参照)している。
また、図15(b)に示すように、2450MHzマイクロ波では、マイクロ波照射面である上面側から感温ゲル91が白濁化(網掛部分参照)している。
以上により、図14のシミュレーション結果とほぼ同様な実験結果を得ることができた。
[検証例]
915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用するマイクロ波加熱装置1(図3参照)に適用した。マイクロ波加熱装置1は、例えば工業用電子レンジである。
図3の構造例の場合、2450MHzマイクロ波は金属加熱箱30下面から照射することになる。この場合のマイクロ波吸収分布シミュレーション結果を図16に、感温ゲル負荷実動作実験結果を図17に示した。
図16は、2450MHzマイクロ波源45を金属加熱箱30の底面に設置し、マイクロ波照射した場合の被加熱物のマイクロ波吸収電力分布のシミュレーション結果を示す図であり、図16(a)はその側面から見たマイクロ波吸収電力分布を、図16(b)はその上方から見たマイクロ波吸収電力分布をそれぞれ示す。
図17は、被加熱物として水分99%の感温ゲル剤にマイクロ波照射した場合のマイクロ波吸収分布を示す図であり、図16のシミュレーション結果を検証した実験結果を示す図である。
図16及び図17に示すように、感温ゲル91の白濁化(網掛部分参照)は照射面側である下面側から生じ、前記図14のシミュレーションと同じ結果となっている。
[適用例]
マイクロ波加熱装置2の915MHzマグネトロン10は、永久磁石タイプマグネトロンである。2450MHzマグネトロン40は、一般の電子レンジ用マグネトロン(800W)である。
基本構造は、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40は、共に同じである。発振周波数を決める陽極構造は、空洞共振器タイプであり、空洞のインダクタンスL、キャパシタンスCにより、915MHz又は2450MHzの共振器を設計する。例えば、前記図6に示した永久磁石タイプのマグネトロン構造を用いることができる。図6の陽極部179は、空洞共振器構造であり、915MHzマグネトロン10の場合、空洞のLを大きくするため、陽極部179の外径は90φmm程度である。また、2450MHzマグネトロン40の場合、陽極部179の外径は40φmm(800W出力)〜52φmm(6kW出力)である。なお、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40の永久磁石154,154a、陰極部178の仕様は同じである。
915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40では、空洞共振器の共振周波数が915MHzと2450MHzと大きく異なるため、両マグネトロンを同時動作させてもマイクロ波干渉は生じない。
陽極電圧が同じ915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40であれば、陽極電源1台でマグネトロンを並列接続し、同時動作させることができる。
次に、本実施形態に係るマイクロ波加熱装置1の特有の作用効果について説明する。
マイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40を備えるハイブリッド電子レンジである。
[マイクロ波加熱の特徴]
まず、マイクロ波加熱の特徴と915MHzマイクロ波加熱の優位性について述べる。
マイクロ波加熱は、マイクロ波を使用しない通常の外部加熱にはない下記特徴(1)〜(5)を有する。
(1)高速加熱:被加熱物全体が発熱する。すなわち、熱伝導等による拡散時間が無視できる。
(2)高効率加熱:マイクロ波は、光速で浸透し、被加熱物自体が発熱するので外部へのエネルギロスが少ない。
(3)高速応答:マイクロ波は、光速で浸透し、被加熱物自体が発熱するので高速な加熱が可能である。
(4)均一加熱:被加熱物全体が発熱し均一な温度分布となる。
(5)局所、選択加熱:物質により吸収するマイクロ波電力に違いがあり、マイクロ波帯及びその電力を適切に選定することにより局所、選択的加熱が可能である。
<マイクロ波の減衰>
マイクロ波が誘電体中を進むと、エネルギは減衰して熱に変換されていく。電波のエネルギが半減するマイクロ波電力半減深さDは、前記式(1)で示される。
ε・tanδを誘電損失係数と呼び、この値が大きいほど半減深度は浅くなる。
<マイクロ波による発生熱量>
マイクロ波により発生する熱量Pは、次式(3)で求められる。
P=5/9×10−12×ε・tanδ・f・E …(3)
前記式(1)と同様に、マイクロ波発生熱量Pは、ε・tanδ(誘電損失係数)が大きいほど発生熱量が大きくなる。すなわち、誘電損失係数が大きい場合、電磁波の吸収が良く、加熱され易くなる。また、周波数fが高いほど発生熱量も大きい。
[915MHzマイクロ波の優位性]
図18は、2450MHzマイクロ波と比較して915MHzマイクロ波の優位性を説明する図であり、(a)は各項目における2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波との比較表、(b)はこの比較表に示される特徴から技術的に期待される開発動向(展望)を示す。
例えば、図18(a)に示す項目「波長」、「マグネトロン発振効率」及び「照射室の大きさ」の比較内容から、図18(b)に示す(1)被加熱物の大型化、(2)均一性向上、(5)大口径プラズマ、及び(8)プラズマの安定化の向上が期待できる。また、図18(a)に示す項目「マグネトロン単管出力」から、図18(b)に示す(3)マグネトロンの大出力化が期待できる。同様に、図18(a)に示す項目「マグネトロン発振効率」から、図18(b)に示す(4)省エネが期待できる。
次に、これらの特徴を考慮し、2450MHz、915MHzマイクロ波の併用加熱特性について検討する。
図19は、2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波の加熱特性を比較して加熱特性比較表(表1)として示す図である。図19の加熱特性比較表(表1)において、◎印は加熱特性が最も良いマイクロ波又はその組合せを表し、○印は、加熱特性が次いで良いマイクロ波又はその組合せを表し、△印は加熱特性が良くないマイクロ波を表す。
図19の加熱特性比較表(表1)に示すように、2450MHzマイクロ波による加熱特性は、加熱対象が「水加熱」、「生牛肉加熱」、「含塩食品加熱」及び「冷凍穀物解凍・加熱」である場合に好適である。但し、加熱対象が「牛肉解凍・加熱」及び「食品乾燥」である場合には適していない。これに対して、915MHzマイクロ波による加熱特性は、加熱対象が「氷(解凍)」及び「冷凍穀物解凍」である場合に好適である。また、915MHzマイクロ波では、特に適さない加熱対象はない。
注目すべきは、図19の加熱特性比較表(表1)に示すように、加熱対象が「牛肉解凍・加熱」の場合である。2450MHzマイクロ波による加熱特性があまり適さない(△印参照)、915MHzマイクロ波による加熱特性が適(○印参照)であった。しかしながら、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用した場合には、加熱特性が最適(◎印参照)となり、2450MHzマイクロ波加熱が苦手としていた加熱対象「牛肉解凍・加熱」に好適に対応することができる。加熱対象が「食品乾燥」の場合についても同様に、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用することで、加熱特性が最適(◎印参照)となる。以上の知見は、本発明者らの実験等により初めて得られたものである。したがって、例えば加熱対象が「牛肉解凍・加熱」「食品乾燥」であることが分かっている場合、2450MHzマイクロ波加熱を915MHzマイクロ波加熱に切り替える(選択する)よりも、当初から2450MHzと915MHzマイクロ波併用加熱を選択することが好ましい。
また、基本的には、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用加熱した場合、加熱特性は良好である。しかしながら、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用加熱しなくても一方のマイクロ波のみで十分な加熱特性が得られることも判明した。例えば、図19の加熱特性比較表(表1)に示すように、加熱対象が「氷(解凍)」「冷凍穀物解凍」の場合、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用加熱しなくても915MHzマイクロ波加熱のみで良好な加熱特性が得られる。また、加熱対象が「冷凍穀物解凍・加熱」の場合、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用加熱しなくても2450MHzマイクロ波加熱のみで良好な加熱特性が得られる。さらに、加熱対象が「水加熱」「生牛肉加熱」「含塩食品加熱」の場合、2450MHzと915MHzマイクロ波を併用加熱する場合よりも2450MHzマイクロ波加熱のみ場合の方が良好な加熱特性となることも判明した(但し、加熱対象物の容積、温度、電力等の他の条件にもよる)。
次に、氷の解凍・加熱方法について検討する。
[水の加熱]
図20は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の温度による水の半減深度を水の半減深度表(表2)として示す図である。
図20に示すように、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波のいずれのマイクロ波についても温度の上昇に従い半減深度は深くなる。温度が上がるとより深くまで加熱できる。
<水を加熱する場合>
図21は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の水加熱を説明する図であり、(a)はその水加熱方法1を、(b)はその水加熱方法2をそれぞれ表している。図21中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図21の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図21に示すように、水を加熱する場合、915MHzマイクロ波の方が2450MHzマイクロ波より水の半減深度は深いので、915MHzマイクロ波により水加熱を行う。図21(a)に示すように、915MHzマイクロ波の方が表層のみでなく深くまで加熱可能であるため、915MHzマイクロ波により水加熱を行う。図21(a)の例では、内部の温度分布を考慮して、時間の経過に伴って915MHzマイクロ波の出力を少しずつ上げている。また、図21(b)の例では、内部の温度分布は考慮せずに加熱のみを行っている。915MHzマイクロ波の出力は一定としている。
<短時間で水を加熱する場合>
図22は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の水加熱を説明する図であり、(a)はその水加熱方法3を、(b)はその水加熱方法4をそれぞれ表している。図22中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図22の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図22(a)は、短時間で水を加熱する場合、2450MHzマイクロ波を用いた例である。図22(a)の例では、2450MHzマイクロ波を用いているため、表層の加熱が強く、加熱ムラは大きい。この例では、加熱ムラを緩和させるため、時間の経過に伴って2450MHzマイクロ波の出力を上げている。また、図22(b)の例では、915MHzマイクロ波に比べると加熱ムラは大きいものの、比較例として2450MHzマイクロ波の出力は一定としている。
[氷の解凍]
<氷を解凍する場合>
図23は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の氷の解凍(解凍方法1)を説明する図である。図23中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図23の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図23に示すように、氷を解凍する場合、915MHzマイクロ波により、過加熱を防ぎながら、低出力で解凍する。図23の例では、加熱開始時に915MHzマイクロ波の出力を大きくし、時間の経過に伴って915MHzマイクロ波の出力を下げている。
<大量の水を解凍後に加熱をする場合>
図24は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、大量の氷を解凍後に加熱をする場合の氷の解凍(解凍方法2)を説明する図である。図24中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図24の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図24に示すように、大量の氷を解凍後に加熱をする場合、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用する。図24の例では、加熱開始時に915MHzマイクロ波の出力を大きくし、時間の経過に伴って915MHzマイクロ波の出力を下げるとともに、解凍終了後には、915MHzマイクロ波を停止させ、かつ2450MHzマイクロ波を用いて、水を加熱する。この例では、加熱ムラを緩和させるため、時間の経過に伴って2450MHzマイクロ波の出力を少しずつ上げている。
次に、食品の解凍・加熱方法について検討する。
[食品(牛肉)の解凍]
図25は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の温度による食品の半減深度を食品の半減深度表(表3)として示す図である。ここでは食品として、牛肉を例に採る。
図25には、食品(牛肉)の温度毎の915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の半減深度が示されている。例えば、食品(牛肉)が4.5℃の場合、915MHzマイクロ波の半減深度は、−1.12cm、2450MHzマイクロ波の半減深度は、−18.2cmである。なお、食品(牛肉)が−51.1℃の場合、4.5℃の場合に比べて915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の半減深度は、いずれも深い(915MHzマイクロ波では−70cm、2450MHzマイクロ波では−46cm)。−51.1℃では、半減深度が深い(凍っている)、−17.7℃では既に溶けている状態である。これにより、食品(牛肉)においては、下記の解凍・加熱方法が提案できる。
<食品(牛肉)を解凍後すぐに調理する場合>
図26は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、食品(牛肉)を解凍後すぐに調理する場合の食品(牛肉)の解凍(食品解凍方法1)を説明する図である。図26中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図26の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図26に示すように、食品(牛肉)を解凍後すぐに調理する場合、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用する。図26の例では、加熱開始時に915MHzマイクロ波の出力を大きくし、時間の経過に伴って915MHzマイクロ波の出力を下げるとともに、解凍終了後には、915MHzマイクロ波を停止させ、かつ2450MHzマイクロ波を用いて、食品(牛肉)を加熱する。前記図25の食品の半減深度表(表3)に示すように、常温に近づくと、2450MHzマイクロ波の方が半減深度が深く有効であるので、2450MHzマイクロ波に切り替える(選択する)。
<食品(牛肉)を解凍のみする場合>
図27は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、食品(牛肉)を解凍後すぐに調理する場合の食品(牛肉)の解凍(食品解凍方法2)を説明する図である。図27中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図27の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図27に示すように、食品(牛肉)を解凍のみする場合、冷凍域では915MHzマイクロ波の方が半減深度が深く有効であるので、加熱開始時に915MHzマイクロ波の出力を大きくし、時間の経過に伴って915MHzマイクロ波の出力を下げる。そして、食品(牛肉)の温度が−17.5又はその近傍の温度で、915MHzマイクロ波を停止させる。
[食品の加熱]
<食品(牛肉)の生肉を加熱する場合>
図28は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、食品(牛肉)の生肉を加熱する場合の食品(牛肉)の加熱(食品加熱方法1)を説明する図である。図28中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図28の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図28に示すように、食品(牛肉)の生肉を加熱する場合、2450MHzマイクロ波を用いる。生肉の加熱には、2450MHzマイクロ波が有効である。2450MHzマイクロ波の出力は一定としている。
<調理済み冷凍穀物・野菜を解凍後に加熱する場合>
図29は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、調理済み冷凍穀物・野菜を解凍後に加熱する場合の食品の加熱(食品加熱方法2)を説明する図である。図29中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図29の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図29に示すように、調理済み冷凍穀物・野菜を解凍後に加熱する場合、調理済み冷凍穀物・野菜では、氷の影響が大きいため解凍後加熱のパターン(図26の食品解凍方法1)を用いる。すなわち、調理済み冷凍穀物・野菜を解凍後に加熱する場合、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用し、加熱開始時に915MHzマイクロ波の出力を大きくし、時間の経過に伴って915MHzマイクロ波の出力を下げるとともに、解凍終了後には、915MHzマイクロ波を停止させ、かつ2450MHzマイクロ波を用いて、調理済み冷凍穀物・野菜を加熱する。この例では、解凍後に加熱するので、時間の経過に伴って2450MHzマイクロ波の出力を少しずつ上げている。
<塩分濃度が大きな食品を加熱する場合>
図30は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の、塩分濃度が大きな食品を加熱する場合の含塩食品の加熱(食品加熱方法3)を説明する図である。図30中の網掛け部分は、該当マイクロ波による水加熱を表している。図30の縦軸は、該当マイクロ波における出力を、横軸は時間を示している。
図30に示すように、塩分濃度が大きな食品を加熱する場合、2450MHzマイクロ波を用いる。すなわち、塩分濃度が高い場合、915MHzマイクロ波の損失係数が大きいので、内部の温度分布を考慮して、2450MHzマイクロ波が有効であるとする。なお、2450MHzマイクロ波の出力は一定としている。
以上述べたように、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用することにより、水や食品等の解凍・加熱に対して有効な解凍・加熱方法を用いることができ、均一な内部加熱を実現できる。
図31は、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の照射タイミングを模式的に示す図である。図31の縦軸は、そのマイクロ波出力を、横軸はその照射タイミングと照射時間を示している。
図31に示すように、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の照射タイミングと照射時間を内容物により切替又は併用する。また、出力電力も可変できるようにしている。
ここで、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の照射タイミングと照射時間、及び出力電力を切り替え又は組合せできるのは、本実施形態に係るマイクロ波加熱装置1が、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40に印加する高圧電源を共通(陽極電源1台)としたからである。すなわち、図1に示すように、マイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とを並列接続し、陽極電源1台で両マグネトロンを同時動作可能であることによる。
次に、化学物質の加熱方法について検討する。
2450MHzと915MHz各マイクロ波の吸収性が良い物質を利用することにより、選択加熱的加熱が可能となる。例えば、エタノール等は、2450MHzマイクロ波より915MHzマイクロ波の方がマイクロ波吸収が良い。したがって、915MHzマイクロ波を優先して用いることが考えられる。
次に、加熱・解凍時間の基本概念について説明する。
図32乃至図34は、部分的過熱を防止して加熱したい場合において、加熱・解凍時間概念を説明する図である。図32は、水及び氷を2450MHzマイクロ波で加熱の場合の概念図、図33は、水及び氷を915MHzマイクロ波で加熱の場合の概念図、図34は、水及び氷を2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波併用加熱の場合の概念図である。図32乃至図34のX軸は加熱時間を、Y軸は被加熱物の大きさを、Z軸はマイクロ波出力を、それぞれ横軸は時間を示している。また、図32乃至図34中の網掛け部分は、該当マイクロ波による各被加熱物a〜a,b〜b毎の加熱・解凍を表している。
<水及び氷を2450MHzマイクロ波で加熱の場合>
図32は、水及び氷を部分的過熱を防止して加熱したい場合において、水及び氷を2450MHzマイクロ波で加熱する場合の加熱・解凍時間概念図である。
図32に示すように、被加熱物a〜a,b〜bは、被加熱物の大きさに応じて、要求される加熱時間とマイクロ波出力が変わる。例えば、加熱の場合、最も大きい被加熱物aは、被加熱物a,aよりも加熱時間がより長く掛る。同様に、解凍の場合、最も大きい被加熱物bは、被加熱物b,bよりも加熱時間がより長く掛る。なお、被加熱物aとb、被加熱物aとb、及び被加熱物aとbは、同一の被加熱物を加熱時と解凍時とで分けて表したものとしてもよい。
また、加熱時間を短縮しようとすると、被加熱物aは、被加熱物a,a1よりもマイクロ波出力をより大きくする。但し、上述したように、2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波とでは、半減深度と被加熱物の温度及び対象物により、解凍の可否及び効率が異なるので、前記図20乃至図31で述べた照射タイミングと照射時間、出力電力を用いる。
2450MHzマイクロ波による加熱では、表層の効率が非常に良い。しかし、表層でマイクロ波が吸収されてしまうので、被加熱物が大きく(深く)なると、深部を加熱できないので、温度分布を均一にするためには加熱時間が掛かることになる。図32では、被加熱物aは、被加熱物a,aよりも加熱時間がより長く掛っている。
解凍では、前記図20の水の半減深度表(表2)に示すように、マイクロ波の半減深度が深く、水との誘電損失係数が大きく異なる。このため、熱伝導時間を掛けて2450MHzマイクロ波を断続して照射する必要があり加熱時間が掛かる。図32では、被加熱物bは、被加熱物b,bよりも加熱時間がより長く掛っている。
<水及び氷を915MHzマイクロ波で加熱の場合>
図32は、水及び氷を部分的過熱を防止して加熱したい場合において、水及び氷を915MHzマイクロ波で加熱する場合の加熱・解凍時間概念図である。
915MHzマイクロ波による加熱では、2450MHzマイクロ波と比較した場合、前記図20の水の半減深度表(表2)に示すように、水において半減深度が深い。このため、温度分布を均一にできるので、加熱時間を短くすることができる。
解凍では、2450MHzマイクロ波と比較した場合、半減深度が深く、マイクロ波を断続照射するという前提で、照射時間(すなわち出力電力)を長くとることができる。例えば、図33の被加熱物aの出力(図33のP2参照)は、図32の被加熱物aの出力(図32のP1参照)よりも大きく(P2>P1)することができる。
<水及び氷を2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波併用加熱の場合>
図33は、水及び氷を部分的過熱を防止して加熱したい場合において、水及び氷を2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波併用加熱の場合の加熱・解凍時間概念図である。
2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波のそれぞれの長所を活かして、各マイクロ波を適当な照射タイミングで切替え、短時間で均一な加熱を可能にする。
例えば、図33の被加熱物aの加熱時間(図33のt2参照)は、図32の被加熱物aの加熱時間(図32のt1参照)よりも加熱時間を短く(t2<t1)することができる。換言すれば、915MHzマイクロ波を用いると、2450MHzマイクロ波を用いた場合と比較して、より短い加熱時間で温度分布が均一な加熱を得ることができる。
加熱では、被加熱物が小さい(少ない)場合は2450MHzマイクロ波を優先的に使用して加熱し、また被加熱物が大きい(深い)場合は915MHzマイクロ波を使用して加熱する。
図34に示すように、例えば、被加熱物aの加熱時間(図34のt3参照)は、図33の被加熱物aの加熱時間(図33のt2参照)よりも加熱時間をさらに短く(t3<t2<t1)することができる。
解凍では、前記図20の水の半減深度表(表2)に示すように、半減深度が深い915MHzマイクロ波を主に使用し、解凍後に2450MHzマイクロ波に切り替えて解凍・加熱をする(図24、図26、図29参照)。例えば、図34の被加熱物aの出力(図34のP3参照)は、図33の被加熱物aの出力(図33のP2参照)よりも大きく(P3>P2>P1)することができる。
ここで、2450MHzマイクロ波と915MHzマイクロ波の同時照射も可能である。
次に、マイクロ波加熱・誘電加熱の応用例とその特徴について簡単に説明する。
2450MHzマイクロ波加熱は、食品関係、木材関係、科学関係、窯業関係、鋳物関係、フィルム・紙関係、ゴム関係、インク・塗料関係、殺虫関係、医療関係、低温プラズマ関係、その外の各分野において応用されている。
915MHzマイクロ波加熱は、2450MHzマイクロ波加熱が使用されていた各分野のうち、例えば食品関係の「冷凍食品の解凍」、材木関係の「木材の加熱・乾燥」、窯業関係の「大型耐火物の加熱・乾燥」、その外の「配管を流れる水,スラリーへの加熱」に採用されている。
本実施形態に係るマイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40を備えるハイブリッド電子レンジであり、915MHzマイクロ波加熱を応用していた各分野、すなわち食品関係の「冷凍食品の解凍」、材木関係の「木材の加熱・乾燥」、窯業関係の「大型耐火物の加熱・乾燥」、その外の「配管を流れる水,スラリーへの加熱」に適用が可能である。
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ波加熱装置1は、915MHzマイクロ波を発生する915MHzマグネトロン10と、915MHzマグネトロン10で発生したマイクロ波電力を伝送する915MHz導波管20と、2450MHzマイクロ波を発生する2450MHzマグネトロン40と、2450MHzマグネトロン40で発生した2450MHzマイクロ波電力を伝送する2450MHz導波管50と、被加熱物を収納可能な内部空間を有し、915MHz導波管20から伝送された915MHzマイクロ波電力と2450MHz導波管50から伝送された2450MHzマイクロ波電力とを被加熱物に照射させる金属加熱箱30と、を備える。マイクロ波加熱装置1は、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40を駆動する高圧電源60と、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40の照射タイミング、加熱時間、又は出力電力を制御する制御装置70(図1参照)と、を備える。
915MHzマグネトロン10は、永久磁石タイプのマグネトロンである。また、915MHzマグネトロン10及び2450MHzマグネトロン40は、陽極構造が、空洞のインダクタンスL、キャパシタンスCを有する915MHz又は2450MHzの空洞共振器タイプであり、915MHzマグネトロン10の陽極部の外径は、空洞のインダクタンスLを大きくするため2450MHzマグネトロン40の陽極部の外径よりも大きく、かつ、
陰極部から放出された電子に磁束を付与する永久磁石を備える。
以上、915MHzマグネトロン10を、永久磁石タイプマグネトロンで構成することによって、915MHzマグネトロン10と2450MHzマグネトロン40とをほぼ同一構造で構成することが可能になった。
また、制御装置70は、被加熱物の種別及び容積に基づいて、915MHzマグネトロン10又は2450MHzマグネトロン40のいずれかを単体、若しくは併用して制御する。
この構成により、915MHzと2450MHzの両方のマイクロ波を加熱箱に照射できる工業用電子レンジを実現することができた。
本実施形態では、915MHz導波管20の小型化が実現できるので、2450MHz電子レンジの金属加熱箱30のサイズおいて、2450MHz導波管50と共に915MHz導波管20を実装して、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を供給することができる。また、2450MHz導波管50と同じアンテナ高さ寸法の915MHz導波管20使用して、915MHzマグネトロン10で発生した915MHzマイクロ波を効率よく金属加熱箱30に伝送することができる。
2450MHzのマイクロ波では、被加熱物の内部表面側から加熱されるため、厚物被加熱物では、均一な内部加熱ができない欠点があった。これに対して、本実施の形態では、マイクロ波浸透が深い915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波を併用することで均一な内部加熱を実現することできる。
例えば、図14に示すように、マイクロ波の浸透が深い915MHzマイクロ波では、被加熱物の内部から加熱処理できる一方、2450MHzマイクロ波では、被加熱物の表面付近から加熱が始まる。したがって、915MHzマイクロ波と2450MHzマイクロ波の照射で極めて優れた均一な内部加熱ができる。その結果、例えば種々の物質、質量の被加熱物に対し、均一な内部加熱を得ることができる。食品解凍もそのうちの一つである。
また、本実施形態によれば、915MHzマイクロ波源15(図3参照)の小型化が実現できるので、従来の2450MHz電子レンジの金属加熱箱30サイズおいて、915MHzマイクロ波を供給することができる。その結果、915MHzマイクロ波又は2450MHzマイクロ波を併用する家庭用又は工業用電子レンジに幅広く適用することができる。また、小型化を実現できることから、従来の2450MHz電子レンジと同様に使い勝手の面でも、優れたものとなっている。
なお、本発明は、上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜その構成を変更することができる。
例えば、マイクロ波を発振出力するマイクロ波発振デバイスとしては、クライストロン、ジャイトロンなどの電子管を用いたマイクロ波発生装置でもよい。また、導波管や加熱箱の材質、形状、構造などは一例であってどのようなものを適用してもよい。
上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1 マイクロ波加熱装置
10 915MHzマグネトロン
15 915MHzマイクロ波源
20 915MHz導波管
20a 開口部
21 金属反射板(短絡板)
30 金属加熱箱(加熱箱)
40 2450MHzマグネトロン
45 2450MHzマイクロ波源
50 2450MHz導波管
50a 2450MHzマイクロ波照射口
57 アンテナリード
58 マグネトロンアンテナ
59 同軸管外導体
60 マグネトロン電源(高圧電源)
70 制御装置(制御部)
80 筺体

Claims (10)

  1. 915MHzマイクロ波を発生する永久磁石タイプの915MHzマグネトロンと、
    前記915MHzマグネトロンで発生したマイクロ波電力を伝送する915MHz導波管と、
    2450MHzマイクロ波を発生する2450MHzマグネトロンと、
    前記2450MHzマグネトロンで発生した2450MHzマイクロ波電力を伝送する2450MHz導波管と、
    被加熱物を収納可能な内部空間を有し、前記915MHz導波管から伝送された915MHzマイクロ波電力と前記2450MHz導波管から伝送された2450MHzマイクロ波電力とを被加熱物に照射させる加熱箱と、を備え、
    前記915MHzマグネトロンの陽極構造と前記2450MHzマグネトロンの陽極構造とを共通化して構成し、
    前記陽極構造を有する前記915MHzマグネトロン及び前記2450MHzマグネトロンの陽極へ接続される陽極電源を共通化して備える
    ことを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  2. 前記陽極構造を有する前記915MHzマグネトロン及び前記2450MHzマグネトロンは、
    熱電子放出源を含む陰極部と、
    陽極円筒部の内側に複数の陽極ベインを一定間隔離して円環状に配列した構造であり、当該陽極ベイン同士の間に形成される空洞による空洞共振器を有する陽極部と、
    前記空洞共振器に蓄えられるマイクロ波を外部へ送出する出力部と、
    前記陰極部、前記陽極部及び前記出力部の一部を内封する真空管本体の軸方向上下端に磁石を配設した磁気回路部と
    を備え、
    前記空洞共振器の数が10個、前記陰極部の外径と前記陽極ベイン先端の内径との比が0.36〜0.59、前記陽極円筒部の外径が80〜100mmであり、前記真空管本体の発振周波数が800乃至1000MHzである
    ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 前記915MHzマグネトロン及び前記2450MHzマグネトロンは、
    陽極構造が、空洞のインダクタンス、キャパシタンスを有する915MHz又は2450MHzの空洞共振器タイプであり、前記915MHzマグネトロンの陽極部の外径は、前記空洞のインダクタンスを大きくするため前記2450MHzマグネトロンの陽極部の外径よりも大きく、かつ、
    陰極部から放出された電子に磁束を付与する永久磁石を備える
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  4. 前記915MHzマグネトロン及び前記2450MHzマグネトロンの照射タイミング、加熱時間、又は出力電力を制御する制御部、を備える
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
  5. 前記制御部は、前記被加熱物の種別及び容積に基づいて、前記915MHzマグネトロン又は前記2450MHzマグネトロンのいずれかを単体、若しくは併用して制御する
    ことを特徴とする請求項4に記載のマイクロ波加熱装置。
  6. 前記加熱箱は、その1辺の長さが915MHzマイクロ波の自由空間波長以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  7. 前記915MHz導波管は、開口部幅寸法が915MHz遮断周波数に近接した当該遮断周波数の略半分の幅寸法である
    ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  8. 前記略半分幅寸法は、915MHz遮断周波数に近接した165〜180mmである
    ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロ波加熱装置。
  9. 前記915MHz導波管の開口部の高さ寸法が、前記2450MHz導波管の開口部の高さ寸法と略同じである
    ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  10. 前記915MHz導波管の開口部の高さ寸法は、45〜54.6mmである
    ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロ波加熱装置。
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