[A.一実施形態]
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
1.全体及び各部の構成
(1)全体構成
図1は、この発明の一実施形態に係る能動型騒音制御装置12(以下「ANC装置12」と称する。)を搭載した車両10の概略的な構成を示す図である。車両10は、ガソリン車や電気自動車(燃料電池車を含む。)等の車両とすることができる。
車両10は、ANC装置12に加え、複数のサスペンション14と、サスペンション14に設けられた複数の加速度センサユニット16と、スピーカ18と、マイクロフォン20とを有する。
ANC装置12は、加速度センサユニット16からの加速度信号Sx、Sy、Szと、マイクロフォン20からの誤差信号eとに基づいて第2合成制御信号Scc2を生成する。第2合成制御信号Scc2は、図示しない増幅器で増幅された後、スピーカ18に出力される。スピーカ18は、第2合成制御信号Scc2に対応する打消音CSを出力する。
車両10の車室内に発生する振動騒音は、図示しないエンジンの振動に伴って生じる振動騒音(エンジンこもり音NZe)と、車両10の走行中に車輪22と路面Rとが接触し、車輪22が振動することに伴って生じる振動騒音(ロードノイズNZr)とを複合した振動騒音(複合騒音NZc)である。本実施形態のANC装置12によれば、複合騒音NZcのうちロードノイズNZrの成分を打消音CSが打ち消し、消音効果を得ることができる。
なお、ANC装置12には、ロードノイズNZrの消音機能に加え、エンジンこもり音NZeの消音機能を持たせることもできる。すなわち、ANC装置12に従前のエンジンこもり音用の構成(例えば、特許文献1)を併せ持たせることも可能である。
また、図1では図示していないが、加速度センサユニット16は4つ設けられており(図3参照)、各加速度センサユニット16は、4つの車輪22(左前輪、右前輪、左後輪、右後輪)に対応して設けられている。さらに、図1、図3及び図4では、スピーカ18及びマイクロフォン20をそれぞれ1つずつしか示していないが、発明の理解の容易化のためであり、ANC装置12の用途に応じて複数のスピーカ18及びマイクロフォン20を用いることもできる。その場合、その他の構成要素の数も適宜変更される。
(2)サスペンション14及び加速度センサユニット16
図2に示すように、各加速度センサユニット16は、サスペンション14の中でも、車輪22のホイール32に連結されたナックル30に設けられている。サスペンション14は、ナックル30に加え、連結部材38a、38bを介してナックル30及びボディ36に連結されたアッパーアーム34と、連結部材44a、44bを介してナックル30及びサブフレーム42に連結されたロアアーム40と、ダンパスプリング48を介してボディ36に連結され、連結部材50を介してロアアーム40に連結されたダンパ46とを有する。ボディ36とサブフレーム42は連結部材52を介して連結されている。また、ナックル30の内部には、図示しないエンジンから延びるドライブシャフト54が回転自在に挿入されている。
図3に示すように、各加速度センサユニット16は、振動加速度Axを検出する加速度センサ60xと、振動加速度Ayを検出する加速度センサ60yと、振動加速度Azを検出する加速度センサ60zとを有する。加速度センサ60xに検出される振動加速度Axは、車両10の前後方向(図1中、X方向)におけるナックル30の振動加速度[mm/s/s]を示す。加速度センサ60yに検出される振動加速度Ayは、車両10の左右方向(図2のY方向)におけるナックル30の振動加速度[mm/s/s]を示す。加速度センサ60zに検出される振動加速度Azは、車両10の上下方向(図1中、Z方向)におけるナックル30の振動加速度[mm/s/s]を示す。
各加速度センサユニット16は、各ナックル30で検出した振動加速度Ax、Ay、Azを示す加速度信号Sx、Sy、SzをANC装置12に出力する。ANC装置12では、アナログ/デジタル(A/D)変換した加速度信号Sx、Sy、Szを参照信号として打消音CSを生成する。以下では、加速度信号Sx、Sy、Szを参照信号Sbともいう。
(3)ANC装置12
(a)全体構成
ANC装置12は、スピーカ18からの打消音CSの出力を制御するものであり、マイクロコンピュータ56、メモリ58(図1)等を備える。マイクロコンピュータ56は、打消音CSを決定する機能(打消音決定機能)等の機能をソフトウェア処理により実行可能である。
図3は、ANC装置12の機能ブロック図である。図3に示すように、ANC装置12は、加速度センサ60x、60y、60z毎に設けられた制御信号生成部62と、加速度センサユニット16毎に設けられた第1加算器64と、第2加算器66を有する。制御信号生成部62、第1加算器64及び第2加算器66は、マイクロコンピュータ56及びメモリ58により構成される。
なお、本実施形態において、加速度センサ60x、60y、60zから出力される加速度信号Sx、Sy、Szはアナログ信号であり、ANC装置12におけるアナログ/デジタル変換器(図示せず)によりアナログ/デジタル(A/D)変換された後に制御信号生成部62に入力される。加えて、第2加算器66から出力されるデジタル信号としての第2合成信号Scc2は、ANC装置12におけるデジタル/アナログ変換器(図示せず)によりデジタル/アナログ(D/A)変換された後にスピーカ18に入力される。
また、説明の便宜のため、加速度センサユニット16毎の制御信号生成部62及び第1加算器64を制御信号生成ユニット68と呼ぶ。図3では、一番上の制御信号生成ユニット68のみ内部を示し、その他の制御信号生成ユニット68は内部を省略して示している。
(b)制御信号生成部62
図4は、制御信号生成部62の1つの機能ブロック図である。図4に示す制御信号生成部62は、加速度センサ60xに対応するものであるが、加速度センサ60y、60zに対応する制御信号生成部62も同様の構成を備える。
図4に示すように、制御信号生成部62は、適応フィルタ処理部72と、参照信号特性検出器74と、フィルタ特性調整部76とを有する。
適応フィルタ処理部72は、図示しないアナログ/デジタル変換器でA/D変換された加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)に基づいて適応フィルタ制御を行うものであり、適応フィルタ80と、第1バンドパスフィルタ82(以下「第1BPF82」という。)と、参照信号補正部84と、第2バンドパスフィルタ86(以下「第2BPF86」という。)と、フィルタ係数更新部88とを有する。なお、加速度センサ60xと適応フィルタ80及び第1BPF82との間には分岐点90が設けられている。
以下では、説明の便宜のため、分岐点90から適応フィルタ80に入力される参照信号Sbを第1参照信号Sb1と呼び、分岐点90から第1BPF82に入力される参照信号Sbを第2参照信号Sb2と呼ぶ。
適応フィルタ80は、例えば、FIR(Finite impulse response:有限インパルス応答)型又は適応ノッチ型のフィルタであり、第1参照信号Sb1に対してフィルタ係数Wrを用いた適応フィルタ処理を行って、ロードノイズNZrを低減するための打消音CSの波形を示す制御信号Scrを出力する。
第1BPF82は、第2参照信号Sb2に対してハイパスフィルタリング処理、ローパスフィルタリング処理及びゲイン調整処理を行って濾波参照信号Sbfとして出力する。本実施形態における第1BPF82は、高域側及び低域側それぞれの次数Oh1、Ol1及び遮断周波数fch1、fcl1を調整する機能を備えると共に、第2参照信号Sb2の振幅(ゲイン)を調整する機能も有する。
参照信号補正部84は、第1BPF82からの濾波参照信号Sbfに対して伝達関数処理を行うことで補正参照信号Srを生成する。補正参照信号Srは、フィルタ係数更新部88においてフィルタ係数Wrを演算する際に用いられる。また、伝達関数処理は、スピーカ18からマイクロフォン20への打消音CSの伝達関数C^(フィルタ係数)に基づき濾波参照信号Sbfを補正する処理である。この伝達関数処理で用いられる伝達関数C^は、スピーカ18からマイクロフォン20への打消音CSの実際の伝達関数Cの測定値又は予測値である。
第2BPF86は、マイクロフォン20からの誤差信号eに対してハイパスフィルタリング処理、ローパスフィルタリング処理及びゲイン調整処理を行って濾波誤差信号efとして出力する。第2BPF86は、高域側及び低域側それぞれの次数Oh2、Ol2及び遮断周波数fch2、fcl2を調整する機能を備えると共に、誤差信号eの振幅(ゲイン)を調整する機能も有する。
本実施形態における第2BPF86のフィルタ特性Cftr2は、第1BPF82のフィルタ特性Cftr1と同一である。すなわち、第2BPF86の高域側及び低域側それぞれの次数Oh2、Ol2及び遮断周波数fch2、fcl2は、第1BPF82の高域側及び低域側それぞれの次数Oh1、Ol1及び遮断周波数Ach1、Acl1と同一である。また、第2BPF86のゲイン(フィルタゲインG2)は、第1BPF82のゲイン(フィルタゲインG1)と同一である。
以下では、フィルタ特性Cftr1、Cftr2をまとめてフィルタ特性Cftrともいう。また、高域側の次数Oh1、Oh2をまとめて次数Ohと、低域側の次数Ol1、Ol2をまとめて次数Olと、高域側の遮断周波数Ach1、Ach2をまとめて遮断周波数Achと、低域側の遮断周波数Acl1、Acl2をまとめて遮断周波数Aclともいう。さらに、フィルタゲインG1、G2をまとめてフィルタゲインGともいう。
なお、第1BPF82及び第2BPF86のフィルタ特性Cftrは、加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)の信号特性に応じてフィルタ特性調整部76により調整される。詳細は、図6〜図15等を用いて後述する。
フィルタ係数更新部88は、フィルタ係数Wrを逐次演算・更新する。フィルタ係数更新部88は、適応アルゴリズム演算{例えば、最小二乗法(LMS)アルゴリズム演算}を用いてフィルタ係数Wrを演算する。すなわち、参照信号補正部84からの補正参照信号Srと第2BPF86からの濾波誤差信号efに基づいて、濾波誤差信号efの二乗(ef)2をゼロとするようにフィルタ係数Wrを演算する。フィルタ係数更新部88における具体的な演算については、例えば、特許文献1に記載のものを用いることができる。
なお、本実施形態では、フィルタ係数更新部88が演算するフィルタ係数Wrの更新量は、フィルタ特性調整部76によっても制御される(詳細は後述する。)。
参照信号特性検出器74は、参照信号生成部70からの参照信号Sbをフーリエ変換{ここでは、高速フーリエ変換(FFT)}し、その結果としてのスペクトルを示すスペクトル信号Ssをフィルタ特性調整部76に出力する。
フィルタ特性調整部76は、参照信号特性検出器74からのスペクトル信号Ssに基づいて第1BPF82及び第2BPF86のフィルタ特性Cftrを調整すると共に、フィルタ係数更新部88の動作を制御する(詳細は後述する。)。
(c)第1加算器64
各第1加算器64は、各制御信号生成部62から出力された制御信号Scrを合成し、第1合成制御信号Scc1を生成する。
(d)第2加算器66
第2加算器66は、各制御信号生成ユニット68の第1加算器64から出力された第1合成制御信号Scc1を合成し、第2合成制御信号Scc2を生成する。第2合成信号Scc2は、図示しないD/A変換器でD/A変換された後、スピーカ18に入力される。
(4)スピーカ18
スピーカ18は、ANC装置12(マイクロコンピュータ56)からの第2合成信号Scc2に対応する打消音CSを出力する。これにより、ロードノイズNZrの消音効果が得られる。
(5)マイクロフォン20
マイクロフォン20は、ロードノイズNZrと打消音CSとの誤差を残留騒音として検出し、この残留騒音を示す誤差信号eをANC装置12(マイクロコンピュータ56)に出力する。
2.打消音CSの生成
次に、本実施形態における打消音CSの生成の流れについて説明する。図5には、打消音CSを生成するフローチャートが示されている。
ステップS1において、各加速度センサユニット16の加速度センサ60x、60y、60zは、X軸方向の振動加速度Ax、Y軸方向の振動加速度Ay及びZ軸方向の振動加速度Azを検出し、振動加速度Ax、Ay、Azを示す加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)を生成する。
ステップS2において、適応フィルタ処理部72は、図示しないA/D変換器によりA/D変換された加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)と、マイクロフォン20からの誤差信号eとに基づき、適応フィルタ処理を実施することにより制御信号Scrを生成する。
ステップS3において、第1加算器64は、各制御信号生成部62の適応フィルタ処理部72から出力された制御信号Scrを合成して、第1合成制御信号Scc1を生成する。
ANC装置12は、上記ステップS1〜S3を、4つの加速度センサユニット16それぞれに対応して行う。
ステップS4において、第2加算器66は、各第1加算器64から出力された第1合成制御信号Scc1を合成して第2合成制御信号Scc2を生成する。
ステップS5において、スピーカ18は、第2合成制御信号Scc2に基づく打消音CSを出力する。なお、第2加算器66からスピーカ18に入力される際、第2合成制御信号Scc2は、図示しないD/A変換器によりD/A変換され且つ図示しない増幅器により振幅調整される。
ステップS6において、マイクロフォン20は、ロードノイズNZrを含む複合騒音NZcと打消音CSとの差を残留騒音として検出し、この残留騒音に対応する誤差信号eを出力する。この誤差信号eは、ANC装置12のその後の適応フィルタ処理で用いられる。
ANC装置12では、以上のステップS1〜S6を繰り返す。
3.参照信号特性検出器74及びフィルタ特性調整部76における処理
次に、参照信号特性検出器74及びフィルタ特性調整部76における処理について説明する。図6には、参照信号特性検出器74及びフィルタ特性調整部76における処理の第1フローチャートが示されており、図7には、参照信号特性検出器74及びフィルタ特性調整部76における処理の第2フローチャートが示されている。
ステップS11において、参照信号特性検出器74は、加速度センサ60x、60y、60zからの加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)を検出(受信)する。ステップS12において、参照信号特性検出器74は、参照信号Sbを高速フーリエ変換(FFT)し、その結果としてのスペクトルを示すスペクトル信号Ssをフィルタ特性調整部76に出力する。
続くステップS13〜S16は、第1BPF82及び第2BPF86のフィルタゲインGに関連した処理である。すなわち、ステップS13において、フィルタ特性調整部76は、スペクトル信号Ssが示すスペクトルに基づき、ANC装置12の制御周波数帯域Rfに含まれる各周波数の振幅のうち最大値(最大値Amax)[dB]を検出する。
ステップS14において、フィルタ特性調整部76は、最大値Amaxが目標範囲内であるか否かを判定する。前記目標範囲は、例えば、最大値Amaxの目標値である目標最大値Am_tar[dB]に正の所定値αを足したものを上限値(=Am_tar+α)とし、目標最大値Am_tarから所定値αを引いたものを下限値(=Am_tar−α)とする。このような目標範囲を用いることにより、最大値Amaxのばらつきが小さく安定的であるときは、後述するフィルタゲインGの調整を行わず、フィルタゲインGの調整に伴う適応フィルタ80のフィルタ係数Wrの更新停止も行わない。
最大値Amaxが目標範囲内である場合(S14:YES)、ステップS17に進む。最大値Amaxが目標範囲内でない場合(S14:NO)、ステップS15において、フィルタ特性調整部76は、変更フラグFLGを立てる。この変更フラグFLGは、適応フィルタ80のフィルタ係数Wrの更新停止の要否を示すためのものであり、変更フラグFLGが立っているとき、当該更新停止を行い、変更フラグFLGが降りているとき、当該更新停止を行わない(詳細は、ステップS27〜S33にて説明する。)。
続くステップS16において、フィルタ特性調整部76は、フィルタ特性変更信号Sfを用いて、第1BPF82及び第2BPF86のフィルタゲインGを調整する。本実施形態では、フィルタゲインGは、目標最大値Am_tarと最大値Amaxの差(Am_tar−Amax)により設定される(G←Am_tar−Amax)。
また、上記のように、最大値Amaxが目標範囲内に入るように制御することにより、適応フィルタ処理部72におけるダイナミックレンジを効果的に用いることができる。
例えば、ANC装置12における演算を12ビット演算器により行う場合、最大値Amaxが大き過ぎると、最大値Amaxは飽和し、最大値Amaxが小さ過ぎると、12ビット演算器のダイナミックレンジにおける不使用部分が大きくなってしまう。
また、このことは、最大値Amaxに限った話ではなく、第1BPF82及び第2BPF86のフィルタゲインGが高過ぎると、濾波参照信号Sbf又は濾波誤差信号efの値は飽和し、フィルタゲインGが低過ぎると、12ビット演算器のダイナミックレンジにおける不使用部分が大きくなってしまう。さらに、濾波参照信号Sbf及び濾波誤差信号efの値が飽和せず、濾波参照信号Sbf及び濾波誤差信号efに関してダイナミックレンジの不使用部分が小さくても、その後のフィルタ係数更新部88における演算で値の飽和やダイナミックレンジの不使用部分が大きくなる可能性もある。従って、これらのことを考慮し、実測値やシミュレーション値に基づき、最大値Amaxの目標範囲を設定することが可能である。
ステップS17〜S21は、第1BPF82及び第2BPF86のハイパスフィルタとしての機能(ハイパスフィルタリング機能)に関連した処理である。すなわち、ステップS17において、フィルタ特性調整部76は、スペクトル信号Ssに含まれるスペクトル情報のうちANC装置12の制御周波数帯域の下限値(制御周波数下限値fl)の80%の周波数(周波数fl_0.8)の振幅Al_0.8[dB]を検出する。
ステップS18において、フィルタ特性調整部76は、振幅Al_0.8とフィルタゲインG(すなわち、目標最大値Am_tarと最大値Amaxの差)との和S1(=Al_0.8+G)[dB]を算出する。和S1は、ステップS16のフィルタゲインGによる調整後の振幅Al_0.8を示す。
ステップS19において、フィルタ特性調整部76は、和S1がその目標値S1tar[dB]以下であるかどうか(絶対値でいえば、和S1が目標値S1tar以上であるかどうか。以下、同様)を判定する。このような判定を行うことにより、低域側の次数Ol及び遮断周波数fclを調整する必要性を判断する。
なお、ステップS17、S18において、制御周波数下限値flの振幅ではなく、制御周波数下限値flよりも低い周波数の振幅である振幅Al_0.8を用いるのは、制御周波数帯域Fr外での振幅を下げるためである。制御周波数帯域Fr外においていずれかの周波数の成分が特徴的に大きい場合、その周波数を調整指針用に設定してもよい。
また、一般的なハイパスフィルタと同様、低域側の遮断周波数fclでは、減衰効果が得られる。例えば、図8に示すように、遮断周波数fclでは、−3dBの減衰効果が得られる。また、次数が1次であれば、遮断周波数fclの半分の周波数fcl/2では、−9dBの減衰効果が得られる。
和S1が目標値S1tar以下である場合(S19:YES)、フィルタゲインGによる補正後の振幅Al_0.8は十分に小さいため、次数Ol及び遮断周波数fclの調整を行わずにステップS22に進む。和S1が目標値S1tar以下でない場合(S19:NO)、ステップS20において、フィルタ特性調整部76は、変更フラグFLGを立てる。この変更フラグFLGは、ステップS15におけるものと同じである。
続くステップS21において、フィルタ特性調整部76は、フィルタ特性変更信号Sfを用いて、第1BPF82及び第2BPF86の低域側の次数Ol及び遮断周波数fclを調整する。
図9には、低域側の次数Ol及び遮断周波数fclを調整するフローチャートが示されている。ステップS41において、フィルタ特性調整部76は、必要ゲインGl_reqを算出する。必要ゲインGl_reqは、ステップS16のフィルタゲインGによる補正後の周波数fl_0.8についてのゲインの不足を示し、目標値S1tarと和S1との差によりを定義される(Gl_req←S1tar−S1)。
ステップS42において、フィルタ特性調整部76は、必要ゲインGl_reqに応じて低域側の次数Olを更新する。
図10には、低域側の必要ゲインGl_reqと、次数O1と、遮断周波数fclを算出するための係数a1との関係を示すテーブル100が示されている。例えば、必要ゲインGl_reqが0dBである場合、次数Olはゼロである。必要ゲインGl_reqが−9dB以上0dB未満である場合、次数Olは1次である。必要ゲインGl_reqが−15dB以上−9dB未満である場合及び−27dB以上−21dB未満である場合、次数Olは2次である。必要ゲインGl_reqが−21dB以上−15dB未満である場合、次数Olは3次である。必要ゲインGl_reqと次数Olの関係は、シミュレーション値や実測値により好適な値を予め記憶しておく。なお、図10では、見易さを考慮して、例えば、「−3dB〜−6dB」のように、絶対値が小さいものを先に、絶対値が大きいものを後に記載している。また、左の値が「未満」であり、右の値が「以上」である。例えば、「−3dB〜−6dB」であれば、「−6dB以上−3dB未満」を意味する。
なお、次数Olが1次の場合、第1BPF82及び第2BPF86の低域側でのハイパスフィルタとしての機能における減衰傾度は、−6dB/octである。次数Olが2次の場合、減衰傾度は、−12dB/octである。次数Olが3次の場合、減衰傾度は、−18dB/octである。
図9のステップS43において、フィルタ特性調整部76は、制御周波数下限値flと必要ゲインGl_reqに応じて低域側の遮断周波数fclを更新する。具体的には、下記の式(1)を用いて新たな遮断周波数fclを算出する。
fcl=a1×fl×0.8 (1)
上記式(1)において、a1は、遮断周波数fclを更新するための係数であり、図10のテーブル100に基づいて設定される。例えば、必要ゲインGl_reqが0dBである場合、係数a1はゼロである。必要ゲインGl_reqが−3dB以上0dB未満である場合、係数a1は1である。必要ゲインGl_reqが−21dB以上−3dB未満である場合、係数a1は2である。必要ゲインGl_reqが−27dB以上−21dB未満である場合、係数a1は4である。
このように、必要ゲインG1_reqの絶対値が大きくなるほど、係数a1を大きくし、低域側の遮断周波数fclを高くする。これにより、遮断周波数fclが、通過周波数帯域fr内に入り込み、周波数fl_0.8における減衰効果を高めることができる。なお、必要ゲインGl_reqと係数a1の関係は、シミュレーション値や実測値により好適な値を予め記憶しておく。
図6に戻り、ステップS22〜S26は、第1BPF82及び第2BPF86の高域側でのローパスフィルタとしての機能(ローパスフィルタリング機能)に関連した処理である。すなわち、ステップS22において、フィルタ特性調整部76は、スペクトル信号Ssに含まれるスペクトル情報のうちANC装置12の制御周波数帯域の上限値(制御周波数上限値fh)の120%の周波数(周波数fh_1.2)の振幅Ah_1.2[dB]を検出する。
ステップS23において、フィルタ特性調整部76は、振幅Ah_1.2とフィルタゲインG(すなわち、目標最大値Am_tarと最大値Amaxの差)との和S2(=Ah_1.2+G)[dB]を算出する。和S2は、ステップS16のフィルタゲインGによる調整後の振幅Al_1.2を示す。
ステップS24において、フィルタ特性調整部76は、和S2がその目標値S2tar[dB]以下であるかどうかを判定する。このような判定を行うことにより、高域側の次数Oh及び遮断周波数fchを調整する必要性を判断する。
なお、ステップS23、S24において、制御周波数上限値fhの振幅ではなく、制御周波数fhよりも高い周波数の振幅である振幅Ah_1.2を用いる理由は、振幅Acl_0.8と同様、制御周波数帯域Fr外での振幅を下げるためである。制御周波数帯域Fr外においていずれかの周波数の成分が特徴的に大きい場合、その周波数を調整指針用に設定してもよい。
また、一般的なローパスフィルタと同様、高域側の遮断周波数fchでは、減衰効果が得られる。例えば、図11に示すように、遮断周波数fchでは、−3dBの減衰効果が得られる。また、次数Ohが1次であれば、遮断周波数fchの2倍の周波数2fchでは、−9dBの減衰効果が得られる。
和S2が目標値S2tar以下である場合(S24:YES)、フィルタゲインGによる補正後の振幅Ah_1.2は十分に小さいため、次数Oh及び遮断周波数fchの調整を行わずにステップS27(図7)に進む。和S2が目標値S2tar以下でない場合(S24:NO)、ステップS25において、フィルタ特性調整部76は、変更フラグFLGを立てる。この変更フラグFLGは、ステップS15、S20におけるものと同じである。
続くステップS26において、フィルタ特性調整部76は、フィルタ特性変更信号Sfを用いて、第1BPF82及び第2BPF86の高域側の次数Oh及び遮断周波数fchを調整する。
図12には、高域側の次数Oh及び遮断周波数fchを調整するフローチャートが示されている。ステップS51において、フィルタ特性調整部76は、必要ゲインGh_reqを算出する。必要ゲインGh_reqは、ステップS16のフィルタゲインGによる補正後の周波数fh_1.2についてのゲインの不足を示し、目標値S2tarと和S2との差によりを定義される(Gh_req←S2tar−S2)。
ステップS52において、フィルタ特性調整部76は、必要ゲインGh_reqに応じて高域側の次数Ohを更新する。
図13には、高域側の必要ゲインGh_reqと、次数Ohと、遮断周波数fchを算出するための係数a2との関係を示すテーブル102が示されている。例えば、必要ゲインGh_reqが0dBである場合、次数Ohはゼロである。必要ゲインGh_reqが−9dB以上0dB未満である場合、次数Ohは1次である。必要ゲインGh_reqが−15dB以上−9dB未満である場合及び−27dB以上−21dB未満である場合、次数Ohは2次である。必要ゲインGh_reqが−21dB以上−15dB未満である場合、次数Ohは3次である。必要ゲインGh_reqと次数Ohの関係は、シミュレーション値や実測値により好適な値を予め記憶しておく。
なお、次数Ohが1次の場合、第1BPF82及び第2BPF86のローパスフィルタとしての機能における減衰傾度は、−6dB/octである。次数Ohが2次の場合、減衰傾度は、−12dB/octである。次数Ohが3次の場合、減衰傾度は、−18dB/octである。
図12のステップS53において、フィルタ特性調整部76は、制御周波数上限値fhと必要ゲインGh_reqに応じて高域側の遮断周波数fchを更新する。具体的には、下記の式(2)を用いて新たな遮断周波数fchを算出する。
fch=a2×fh×1.2 (2)
上記式(2)において、a2は、遮断周波数fchを更新するための係数であり、図13のテーブル102に基づいて設定される。例えば、必要ゲインGh_reqが0dBである場合、係数a2はゼロである。必要ゲインGh_reqが−3dB以上0dB未満である場合、係数a2は1である。必要ゲインGh_reqが−21dB以上−3dB未満である場合、係数a2は0.5である。必要ゲインGl_reqが−27dB以上−21dB未満である場合、係数a2は0.25である。
このように、必要ゲインG2_reqの絶対値が大きくなるほど、係数a2を小さくし、遮断周波数fchを低くする。これにより、遮断周波数fchが、通過周波数帯域fr内に入り込み、制御周波数上限値fhにおける減衰効果を高めることができる。なお、必要ゲインGh_reqと係数a2の関係は、シミュレーション値や実測値により好適な値を予め記憶しておく。
図6から図7に移り、ステップS27〜S33は、フィルタゲインG、次数Oh、Ol及び遮断周波数fch、fclの変更の有無に伴う適応フィルタ80のフィルタ係数Wrの制御に関する処理である。すなわち、ステップS27において、フィルタ特性調整部76は、変更フラグFLGが立っているかどうかを判定する。いずれの変更フラグFLGも立っていない場合(S27:NO)、ステップS30に進む。変更フラグFLGが立っている場合(S27:YES)、フィルタゲインG、次数Oh、Ol及び遮断周波数fch、fclの少なくとも1つが変更されている。この場合、まずステップS28において、フィルタ特性調整部76は、立っている変更フラグFLGを全て降ろす。続くステップS29において、フィルタ特性調整部76は、図示しないタイマのカウント値CNTのカウントダウンを開始する。
当該カウント値CNTは、ステップS29で設定される初期値を、適応フィルタ80のタップ長又はそれより大きい値とする。カウント値CNTが初期値からゼロになるまでの時間は、フィルタゲインG、次数Oh、Ol及び遮断周波数fch、fclの変更に伴ってANC装置12の制御が不安定になることを避けるための時間に対応する。
すなわち、フィルタゲインG、次数Oh、Ol及び遮断周波数fch、fclのいずれかを変更した場合、第1BPF82から出力される濾波参照信号Sbf及び第2BPF86から出力される濾波誤差信号efは、当該変更に伴って値が跳ぶこととなる。この場合、当該変更の前後の不連続な信号でフィルタ係数Wrの更新を行ってしまい、意図しない打消音CSを発生してしまう可能性がある。
そこで、フィルタ特性調整部76は、フィルタ係数更新部88に対して更新停止信号Swを送信し、フィルタ係数Wrの更新を一時的に停止させる。但し、適応フィルタ80において、第1参照信号Sb1とフィルタ係数Wrの畳み込み演算は継続されたままである。これにより、上記のような意図しない打消音CSの発生を防止することが可能となる。
ステップS30において、フィルタ特性調整部76は、カウント値CNTがゼロであるかどうかを判定する。カウント値CNTがゼロでない場合(S30:NO)、ステップS31において、フィルタ特性調整部76は、フィルタ係数更新部88に対して更新停止信号Swを送信し、フィルタ係数Wrの更新を一時的に停止させる。但し、適応フィルタ80において、第1参照信号Sb1とフィルタ係数Wrの畳み込み演算は継続されたままである。
続くステップS32において、フィルタ特性調整部76は、カウント値CNTの値を1減少させ、ステップS30に戻る。
ステップS30においてカウント値CNTがゼロである場合(S30:YES)、ステップS33において、フィルタ特性調整部76は、フィルタ係数更新部88への更新停止信号Swの送信を停止し、フィルタ係数更新部88にフィルタ係数Wrの更新を許可する。これを受け、フィルタ係数更新部88は、フィルタ係数Wrの更新を再開する。
4.具体例
図14には、異なる路面(路面RA、RB)に対応した加速度センサ60zの加速度信号Sz(加速度信号SzA、SzB)のスペクトルと、第1BPF82及び第2BPF86で用いる各種数値の例が示されている。
図14において、加速度信号SzAは、路面RA(玉石路面)におけるものであり、加速度信号SzBは、路面RB(滑らかな凹凸路面)におけるものである。図14の例において、制御周波数帯域Rfにおける目標最大値Am_tarは、−10dBであり、目標値S1tarは、−20dBであり、目標値S2tarは、−30dBである。
図14の加速度信号SzAでは、制御周波数領域Rfにおける最大値Amは、4dBである。このため、図6のステップS16で調整されるフィルタゲインGは−14dBである(−14=−10−4)。また、加速度信号SzAでの振幅Al_0.8は、0dBである。このため、ステップS18で算出される和S1は、−14dBであり{−14=0+(−14)}、図9のステップS41で算出される必要ゲインGl_reqは、−6dBとなる{−6=−20―(−14)}。さらに、加速度信号SzAでの振幅Ah_1.2は、−8dBである。このため、ステップS23で算出される和S2は、−22dBであり{−22=−8+(−14)}、図12のステップS51で算出される必要ゲインGh_reqは、−8dBとなる{−8=−30−(−22)}。
ここで、低域側の必要ゲインGl_reqが−6dBであるため、次数Olは1次であり、係数a1は2である(図10参照)。さらに、高域側の必要ゲインGh_reqが−8dBであるため、次数Ohは2次であり、係数a2は0.5である(図13参照)。
一方、図14の加速度信号SzBでは、制御周波数領域Rfにおける最大値Amは、−14dBである。このため、図6のステップS16で調整されるフィルタゲインGは+4dBである{+4=−10−(−14)}。また、加速度信号SzAでの振幅Al_0.8は、−11dBである。このため、ステップS18で算出される和S1は、−7dBであり(−7=−11+4)、図9のステップS41で算出される必要ゲインGl_reqは、−13dBとなる{−13=−20−(−7)}。さらに、加速度信号SzAでの振幅Ah_1.2は、−27dBである。このため、ステップS23で算出される和S2は、−23dBであり(−23=−27+4)、図12のステップS51で算出される必要ゲインGh_reqは、−7dBとなる{−7=−30−(−23)}。
ここで、低域側の必要ゲインGl_reqが−13dBであるため、次数Olは2次であり、係数a2は4である(図10参照)。さらに、高域側の必要ゲインGh_reqが−7dBであるため、次数Ohは2次であり、係数a2は0.5である(図13参照)。
図15には、図14の加速度信号SzA、SzBに対応するフィルタ特性Cftr(フィルタ特性CftrA、CtfrB)の例が示されている。すなわち、フィルタ特性CftrAにおいて、フィルタゲインGAは、−14dBであり、低域側の次数Olは1次であり、遮断周波数fclは80Hzであり、高域側の次数Ohは1次であり、遮断周波数fchは、180Hzである。一方、フィルタ特性CftrBにおいて、フィルタゲインGBは、+4dBであり、低域側の次数Olは2次であり、遮断周波数fclは80Hzであり、高域側の次数Ohは1次であり、遮断周波数fchは、180Hzである。
図15からわかるように、フィルタ特性CftrAのフィルタゲインGAは、フィルタ特性CftrBのフィルタゲインGBよりも低い(減衰度が大きい)。これは、制御周波数帯域Rfにおいて、加速度信号SzAの振幅が、加速度信号SzBの振幅よりも大きいことに起因している。
5.本実施形態における効果
以上のように、本実施形態によれば、分岐点90と参照信号補正部84の間に配置された第1BPF82と、マイクロフォン20とフィルタ係数更新部88の間に配置され、第1BPF82と同等のフィルタ特性Cftrを持つ第2BPF86とを備える。このため、フィルタ係数更新部88に入力される2つの信号(補正参照信号Sr及び誤差信号e)の相関関係を変化させずに両信号の信号特性を調整することが可能となる。従って、第1BPF82及び第2BPF86により、ANC装置12の制御周波数帯域外の成分を除去することで、当該成分が適応制御に与える影響を低減し、消音性能を向上させることが可能となる。
また、第1BPF82は、分岐点90と参照信号補正部84の間に配置され、第2BPF86は、マイクロフォン20とフィルタ係数更新部88の間に配置される。このため、第1BPF82及び第2BPF86は、打消音CSの出力タイミングに直接関わる経路(加速度センサ60x、60y、60y、適応フィルタ80及びスピーカ18を結ぶ経路)上には配置されない。従って、第1BPF82及び第2BPF86に起因する遅延が当該経路に発生することはない。よって、当該遅延により打消音CSの出力が遅れることはなく、消音性能を維持することが可能となる。
本実施形態では、ANC装置12は、第1BPF82及び第2BPF86のフィルタ特性Cftrを加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)の信号特性に応じて調整するフィルタ特性調整部76を備える。これにより、路面入力に相関のある加速度信号Sx、Sy、Sz(参照信号Sb)の信号特性が変化する場合でも、当該変化に応じた制御をすることが可能となる。従って、路面入力特性に応じた制御が可能となり、路面入力特性が変化しても、制御安定性を維持することが可能となる。
フィルタ特性調整部76は、第1BPF82及び第2BPF86の制御周波数帯域Rf内における振幅の最大値Amaxが目標範囲内となるように第1BPF82及び第2BPF86のフィルタゲインGを調整する。これにより、例えば、制御周波数帯域Rf内における振幅の最大値Amaxがダイナミックレンジの範囲内に収まり且つダイナミックレンジの不使用領域が小さくなるように目標範囲を設定することで、ダイナミックレンジを有効活用できるようになり、フィルタ係数更新部88におけるフィルタ係数Wrの演算を精度良く行うことが可能となる。或いは、フィルタ係数更新部88におけるフィルタ係数Wrの演算値がダイナミックレンジの範囲内に収まり且つダイナミックレンジの不使用領域が小さくなるように最大値Amaxの目標範囲を設定することで、当該ダイナミックレンジを有効活用できるようになり、フィルタ係数更新部88におけるフィルタ係数Wrの演算を精度良く行うことが可能となる。
本実施形態において、フィルタ特性調整部76は、フィルタゲインGによる補正後の振幅Al_0.8を示す和S1が目標値S1tar以下となるように次数Ol及び遮断周波数fclを調整する。これにより、和S1が目標値S1tar以下であれば、振幅Acl_0.8の周波数成分が適応制御にほとんど影響を与えなくなるように目標値S1tarを設定することで、適切な次数Ol及び遮断周波数fclを設定することが可能となる。その結果、過度な演算を行うことなしに、すなわち、余分な遅延を伴うことなく不要な周波数成分を除去することが可能となる。
同様に、フィルタ特性調整部76は、フィルタゲインGによる補正後の振幅Ah_1.2を示す和S2が目標値S2tar以下となるように次数Oh及び遮断周波数fchを調整する。これにより、和S2が目標値S2tar以下であれば、振幅Ach_1.2の周波数成分が適応制御にほとんど影響を与えなくなるように目標値S2tarを設定することで、適切な次数Oh及び遮断周波数fchを設定することが可能となる。その結果、過度な演算を行うことなしに、すなわち、余分な遅延を伴うことなく不要な周波数成分を除去することが可能となる。
[B.この発明の応用]
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す構成を採ることができる。
上記実施形態では、4つの車輪22それぞれについて加速度センサユニット16を設けたが、そのうちのいずれかの車輪22にのみ加速度センサユニット16を設ける構成も可能である。また、上記実施形態では、各加速度センサユニット16において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3軸の方向の振動の振動加速度Ax、Ay、Azを検出したが、これに限らず、1軸もしくは2軸の方向又は4軸以上の方向の振動の加速度を検出してもよい。
上記実施形態では、振動加速度Ax、Ay、Azを加速度センサ60x、60y、60zにより直接検出したが、変位センサによりナックル30の変位[mm]を検出し、この変位に基づいて振動加速度Ax、Ay、Azを演算することもできる。同様に、荷重センサの検出値を用いて振動加速度Ax、Ay、Azを求めてもよい。さらに、例えば、車輪22の近傍に別のマイクロフォンを設け、当該マイクロフォンで振動騒音を検出し、当該振動騒音を示す信号を加速度信号Sx、Sy、Szの代わりに用いることもできる。
上記実施形態では、各加速度センサユニット16をナックル30に設けたが、ハブ等のその他の部位に設けることも可能である。
上記実施形態では、第1BPF82を分岐点90と参照信号補正部84の間に配置したが、これに限らず、図16に示すように、参照信号補正部84とフィルタ係数更新部88の間に第1BPF82を配置してもよい。この場合、第1BPF82は、参照信号補正部84が出力した補正参照信号Srに基づいて濾波補正参照信号Srfをフィルタ係数更新部88に出力する。
上記実施形態では、第1BPF82及び第2BPF86は、ハイパスフィルタとローパスフィルタの両方の機能を持たせたが、ハイパスフィルタ又はローパスフィルタのいずれか一方のみの機能を持たせてもよい。或いは、第1BPF82及び第2BPF86の代わりにバンドエリミネータフィルタを用いてもよい。