JP5556973B2 - 半導体ナノ粒子集積構造体 - Google Patents
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Description
本発明は発光輝度の高い半導体ナノ粒子集積構造体に関する。
バイオアッセイや病理診断において標識体として蛍光体を使用する場合、蛍光強度が大きいほど高いSN比が得られることから、蛍光強度が高い蛍光体が望まれている。これまで蛍光体として蛍光色素が使われてきたが、蛍光色素は有機材料であり、長時間励起光を照射すると輝度が低下していく、すなわち耐光性が悪いという問題があった。これに対し、耐光性の問題のない、無機材料で構造の簡単な半導体ナノ粒子を本分野に適用しようというのが現在の傾向である。半導体ナノ粒子は、半導体粒子をナノサイズに小さくすると、バンドギャップがバルクのものより小さくなり、その量子効果が強まる結果、蛍光が発生するというものである。現在までのところII-VI族の半導体ナノ粒子、CdSe、CdTe等、III-V族の半導体ナノ粒子、InP、GaP等、I-III-VI族CuInS2等の材料が開発されている。これらは発光効率を上げるため、これらの材料をコアとし、その外側をそれよりバンドギャップの大きいZnS等のシェルを形成することで電子の閉じ込め効果を向上し、半導体ナノ粒子自体の発光効率を上げることが行われている。
しかし、バイオアッセイでの高感度測定や病理診断における顕微鏡下での蛍光目視診断では、これら半導体ナノ粒子でも1粒子あたりの発光強度が不足するため、さらなる高輝度蛍光体粒子の開発が望まれている。
上記の問題を解決するため、半導体ナノ粒子を集積させて50〜1000nmの巨大粒子を形成することで、1粒子当たりの輝度を上げる方法が検討されている。
そのような巨大粒子を製造方法の一つとして、Stober法(非特許文献1参照)に基づくシリカ前駆体の加水分解反応を利用して、半導体ナノ粒子をシリカビーズ内に内包する方法が挙げられる。例えば、非特許文献2には、CdSe/ZnSからなる半導体ナノ粒子を、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)存在下テトラエチルオルソシリケート(TEOS)と反応させることによりシリカビーズ内に内包する試みが開示されている。
そのような巨大粒子を製造方法の一つとして、Stober法(非特許文献1参照)に基づくシリカ前駆体の加水分解反応を利用して、半導体ナノ粒子をシリカビーズ内に内包する方法が挙げられる。例えば、非特許文献2には、CdSe/ZnSからなる半導体ナノ粒子を、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)存在下テトラエチルオルソシリケート(TEOS)と反応させることによりシリカビーズ内に内包する試みが開示されている。
また、関連する別のアプローチとして、非特許文献3には、シリカコロイド結晶ビーズ表面にCdTeを積層させる方法として、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)とポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS)からなるPAH/PSS/PAH積層体と、CdTeからなる層とを交互に積層させる方法が開示されている。非特許文献3記載の発明は、シリカコロイド結晶ビーズの有する高い多孔性および高い表面積対体積比を利用して、発光強度を高めようとするものである。
W. Stober et al., Journal of Colloid and Interface Science, 26, p.62-69 (1968)
Ping Yang et al., J. Phys. Chem. C, 2010, 114, p.20962-20967
J. Li et al., Journal of Materials Chemistry 2009, 19, p.6492-6497
半導体ナノ粒子を集積させて巨大粒子を形成することで、1粒子当たりの輝度を上げる試みは、従来種々行われているものの、ただ単に半導体ナノ粒子を集積させるだけでは、集積した個数分の輝度が得られないことが知られている。
この理由の1つとして、以下のものが挙げられる。
半導体ナノ粒子およびその集積体は、一般的な有機蛍光体と同様、光エネルギーなどの形で外部からのエネルギーを受けて励起し、励起状態から基底状態に戻る過程で蛍光を発光する。このとき、蛍光発光に用いられるエネルギーは、通常、基底状態から励起状態に到るために外部から取得したエネルギーよりも小さいことから、発光波長は吸収波長よりも短くなる。ここで、半導体ナノ粒子の吸収・発光スペクトルの例として、図2に、コア/シェル型半導体ナノ粒子集積体として広く用いられているCdSe/ZnS半導体ナノ粒子集積体を構成するナノ粒子の吸収、発光スペクトルを示す。図2に示されるように、一般的な半導体ナノ粒子集積体を構成する半導体ナノ粒子において、吸収スペクトルと発光スペクトルとが一部重複する部分(斜線部)が存在する。このとき、発光極大波長近傍の波長における吸収スペクトルが、無視できないレベルに達している場合も多く、集積体内部で発光した光が集積体外部の量子ドットで吸収されてしまうと考えられる。このように半導体ナノ粒子を集積化しても期待された輝度の上昇が得られない効果を濃度消光と呼ぶ。
半導体ナノ粒子およびその集積体は、一般的な有機蛍光体と同様、光エネルギーなどの形で外部からのエネルギーを受けて励起し、励起状態から基底状態に戻る過程で蛍光を発光する。このとき、蛍光発光に用いられるエネルギーは、通常、基底状態から励起状態に到るために外部から取得したエネルギーよりも小さいことから、発光波長は吸収波長よりも短くなる。ここで、半導体ナノ粒子の吸収・発光スペクトルの例として、図2に、コア/シェル型半導体ナノ粒子集積体として広く用いられているCdSe/ZnS半導体ナノ粒子集積体を構成するナノ粒子の吸収、発光スペクトルを示す。図2に示されるように、一般的な半導体ナノ粒子集積体を構成する半導体ナノ粒子において、吸収スペクトルと発光スペクトルとが一部重複する部分(斜線部)が存在する。このとき、発光極大波長近傍の波長における吸収スペクトルが、無視できないレベルに達している場合も多く、集積体内部で発光した光が集積体外部の量子ドットで吸収されてしまうと考えられる。このように半導体ナノ粒子を集積化しても期待された輝度の上昇が得られない効果を濃度消光と呼ぶ。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、半導体ナノ粒子を集積化しても輝度の低下が少ない、高輝度の半導体ナノ粒子集積構造体を得ることを目的としている。
本発明に係わる上記課題は、以下の[1]〜[8]に示される手段によって解決される。
[1] 複数の第1の半導体ナノ粒子を集積してなる内部構造体と、
該内部構造体を被覆する、複数の第2の半導体ナノ粒子を集積してなる外部構造体と
を含み、
該第1の半導体ナノ粒子が、該第2の半導体ナノ粒子より小さいバンドギャップを有する半導体ナノ粒子集積構造体。
[1] 複数の第1の半導体ナノ粒子を集積してなる内部構造体と、
該内部構造体を被覆する、複数の第2の半導体ナノ粒子を集積してなる外部構造体と
を含み、
該第1の半導体ナノ粒子が、該第2の半導体ナノ粒子より小さいバンドギャップを有する半導体ナノ粒子集積構造体。
[2] 前記第1の半導体ナノ粒子が、
該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅相当分以上、前記第2の半導体ナノ粒子よりも小さいバンドギャップを有する前記[1]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅相当分以上、前記第2の半導体ナノ粒子よりも小さいバンドギャップを有する前記[1]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[3] 前記第1の半導体ナノ粒子が、
前記第2の半導体ナノ粒子よりも長い発光ピーク波長を有する前記[1]または[2]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
前記第2の半導体ナノ粒子よりも長い発光ピーク波長を有する前記[1]または[2]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[4] 前記第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長と、前記第2の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長との差が、該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅以上である前記[3]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[5] 前記第1の半導体ナノ粒子と、前記第2の半導体ナノ粒子が、ともにコア/シェル構造を有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[5] 前記第1の半導体ナノ粒子と、前記第2の半導体ナノ粒子が、ともにコア/シェル構造を有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[6] 前記第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分およびシェル部分が、前記第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分およびシェル部分とそれぞれ同一の材質から構成され、且つ、
該第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分が、該第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分よりも大きな体積平均径を有する
前記[5]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
該第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分が、該第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分よりも大きな体積平均径を有する
前記[5]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[7] 前記第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の体積平均径と、前記第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の体積平均径との差が、
該第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の発光ピーク波長の半値幅相当分以上である前記[6]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
該第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の発光ピーク波長の半値幅相当分以上である前記[6]に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
[8] 体積平均径が50〜1000nmの範囲である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
上記手段により、半導体ナノ粒子を集積化しても輝度の低下が少ない、高輝度の半導体ナノ粒子集積構造体を得ることができる。集積化粒子の外部側の半導体ナノ粒子が、内部半導体ナノ粒子からの発光を吸収しないため、高輝度の半導体ナノ粒子集積構造体が得られる。
以下、本発明について、図を参照しながら具体的に説明する。
〔半導体ナノ粒子集積構造体〕
本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は、
複数の第1の半導体ナノ粒子11を集積してなる内部構造体と、
該内部構造体を被覆する、複数の第2の半導体ナノ粒子14を集積してなる外部構造体と
を含み、
該第1の半導体ナノ粒子11が、該第2の半導体ナノ粒子14より小さいバンドギャップを有することを特徴とする。
〔半導体ナノ粒子集積構造体〕
本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は、
複数の第1の半導体ナノ粒子11を集積してなる内部構造体と、
該内部構造体を被覆する、複数の第2の半導体ナノ粒子14を集積してなる外部構造体と
を含み、
該第1の半導体ナノ粒子11が、該第2の半導体ナノ粒子14より小さいバンドギャップを有することを特徴とする。
本発明は、半導体ナノ粒子から発せられた蛍光の濃度消光を最小限に抑えるために、第1の半導体ナノ粒子11が、第2の半導体ナノ粒子14より小さいバンドギャップを有しているという点に最大の特徴がある。このことは、バンドギャップと波長とが、式E=hc/λ(E:エネルギー;h:プランク定数;c:光速;λ:波長)に基づき反比例する関係にあることからすると、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長が、第2の半導体ナノ粒子14より長いことを意味する。
本発明の概念を、図3を用いて説明する。
本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は、バンドギャップの異なる2つの半導体ナノ粒子、すなわち、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14を含んでいる。ここで、半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14のそれぞれについて、吸収・発光スパクトルを図3にまとめて示す。図3の例では、第1の半導体ナノ粒子11として発光ピーク波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子、および第2の半導体ナノ粒子14として発光ピーク波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用いた半導体ナノ粒子集積構造体10についての吸収・発光スペクトルが示されている。図3において、半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14は、それぞれ「集積体内部に配置されたナノ粒子」および「集積体外部に配置されたナノ粒子」と記載されている。ここで、発光ピーク波長λとバンドギャップEgはλ(nm)=1240/Eg(eV)の関係となることから、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14のバンドギャップは、それぞれ2.30eVおよび2.53eVとなる。このような半導体ナノ粒子集積構造体10においては、内部に存在する第1の半導体ナノ粒子11で発光した光子が2.30eVのエネルギーで、外部に存在する第2の半導体ナノ粒子14が吸収できるエネルギー2.53eVより小さいため、第2の半導体ナノ粒子14によって吸収されることなく、第1の半導体ナノ粒子11からの蛍光を外部に効率よく取り出せることとなる。
本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は、バンドギャップの異なる2つの半導体ナノ粒子、すなわち、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14を含んでいる。ここで、半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14のそれぞれについて、吸収・発光スパクトルを図3にまとめて示す。図3の例では、第1の半導体ナノ粒子11として発光ピーク波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子、および第2の半導体ナノ粒子14として発光ピーク波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用いた半導体ナノ粒子集積構造体10についての吸収・発光スペクトルが示されている。図3において、半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14は、それぞれ「集積体内部に配置されたナノ粒子」および「集積体外部に配置されたナノ粒子」と記載されている。ここで、発光ピーク波長λとバンドギャップEgはλ(nm)=1240/Eg(eV)の関係となることから、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14のバンドギャップは、それぞれ2.30eVおよび2.53eVとなる。このような半導体ナノ粒子集積構造体10においては、内部に存在する第1の半導体ナノ粒子11で発光した光子が2.30eVのエネルギーで、外部に存在する第2の半導体ナノ粒子14が吸収できるエネルギー2.53eVより小さいため、第2の半導体ナノ粒子14によって吸収されることなく、第1の半導体ナノ粒子11からの蛍光を外部に効率よく取り出せることとなる。
ここで、第1の半導体ナノ粒子11のバンドギャップと、第2の半導体ナノ粒子14のバンドギャップとの間にどの程度差を設けるかが問題となるが、吸収スペクトルはピーク波長から短波長側に存在することから、発光スペクトル換算で半値幅(FWHM:ピーク値の半分の値における全ピーク幅、すなわち、半値全幅)程度バンドギャップをずらしてやるのが効果的と考えられる。すなわち、本発明では、第1の半導体ナノ粒子11が、第2の半導体ナノ粒子14と比べて、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長の半値幅相当分以上小さいバンドギャップを有することが好ましい。これを発光ピーク波長の面から見ると、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長が、第2の半導体ナノ粒子14の発光ピーク波長と比べて、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長の半値幅以上長いことが好ましい。
ここで、本発明の概念がより良く理解されるよう、内側に存在する第1の半導体ナノ粒子11のバンドギャップをもとに、外側に位置する第2の半導体ナノ粒子14がどの程度のバンドギャップを有したらよいかについてより具体的に説明する。
第1の半導体ナノ粒子11における発光スペクトルにおいて、発光ピークについての半値幅が30nm程度であると仮定すると、第2の半導体ナノ粒子14が有すべきバンドギャップは下記のように計算できる。CdSe/ZnS半導体ナノ粒子の発光スペクトルとバンドギャップとの間には、λ(nm)=1240/Eg(eV)の関係が成り立つことから、第1の半導体ナノ粒子11における発光ピーク波長が540nmである場合、そのバンドギャップは2.30eVである。第2の半導体ナノ粒子14は第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長に対してその半値幅分だけ小さい発光ピーク波長を有すればよいことから、上記の場合において第2の半導体ナノ粒子14が有すべき発光ピーク波長は540−30=510nmとなる。これをバンドギャップの面から見ると、第2の半導体ナノ粒子14は、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長に対してその半値幅分だけ小さい発光ピーク波長に対応するバンドギャップ、すなわち、510nmに対応するバンドギャップを有していればよいので、Eg=1240/(540−30)=2.43eVとなる。したがって2.43eV以上のバンドギャップをもつ第2の半導体ナノ粒子14を外側におくことが、本発明の効果をより高くするために望ましい。発光波長をバンドギャップに置き換えるのは、上記の計算を行えば良い。
ところで、半導体ナノ粒子は、構成する半導体の材質を同一にしたときには、その発光波長は、粒径が大きくなるにつれて長くなる傾向がある。ここで、半導体ナノ粒子がコアシェル半導体ナノ粒子である場合、その発光波長は、そのコア部分の径(コア径)が大きくなるにつれて長くなる傾向がある。この傾向は、図4に示したCdSe/ZnS半導体ナノ粒子のコア径と発光波長との関係からも確認される。一方、半導体ナノ粒子は、構成する半導体の材質を同一にしたときには、そのバンドギャップは、粒径が大きくなるにつれて小さくなる傾向があり、半導体ナノ粒子がコアシェル半導体ナノ粒子である場合には、そのコア径が大きくなるにつれて小さくなる傾向がある。この傾向は、図5に示したCdSe/ZnS半導体ナノ粒子のコア径とバンドギャップとの関係からも確認される。したがって、第1の半導体ナノ粒子11と第2の半導体ナノ粒子14を同一半導体で構成した場合、第1の半導体ナノ粒子11が、第2の半導体ナノ粒子14より小さいバンドギャップを有するためには、第1の半導体ナノ粒子11の平均径が、第2の半導体ナノ粒子14の平均径よりも大きくなるように選べばよいことになる。特に、第1の半導体ナノ粒子11と、第2の半導体ナノ粒子14が、ともにコア/シェル構造を有する場合において、第1の半導体ナノ粒子11を構成するコア部分およびシェル部分が、第2の半導体ナノ粒子14を構成するコア部分およびシェル部分とそれぞれ同一の材質から構成されているときには、該第1の半導体ナノ粒子11を構成するコア部分が、該第2の半導体ナノ粒子14を構成するコア部分よりも大きな平均径を有することになる。ここで、本明細書において、「平均径」というときは、特に別の記載がない限り体積平均径をいう。
このような場合でも、前述したように、第2の半導体ナノ粒子14は第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長に対してその半値幅分だけ小さい発光ピーク波長を有すればよいことから、第2の半導体ナノ粒子14の粒径をそれに合わせて変えればよい。第1の半導体ナノ粒子11と、第2の半導体ナノ粒子14が、ともにコア/シェル構造を有する場合には、第2の半導体ナノ粒子14が第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長に対してその半値幅分だけ小さい発光ピーク波長を有するよう、第2の半導体ナノ粒子14のコア径を設定すればよいことになる。すなわち、第1の半導体ナノ粒子11を構成するコア部分の平均径と、前記第2の半導体ナノ粒子14を構成するコア部分の平均径との差が、第1の半導体ナノ粒子11を構成するコア部分の発光ピーク波長の半値幅相当分以上である。
このように第2の半導体ナノ粒子14のコア径を設定することは、図4に例示されるような特性曲線があれば可能である。今回、例としてあげているCdSe/ZnS半導体ナノ粒子の場合には、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長を540nmと仮定すると、そのコアサイズは、図4から3.7nmとなる。この場合に第2の半導体ナノ粒子14が有すべき発光ピーク波長は、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークにおける半値幅が30nmとすると、540-30nm=510nm相当となり、図4からこれに対応するコア径を3.4nmとすればよいことがわかる。
また、上記の例では第2の半導体ナノ粒子14のバンドギャップと、第1の半導体ナノ粒子11のバンドギャップとの差が、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークにおける半値幅分あればよいとしたが、あまり両者の差が大きすぎても、二つの発光ピークが重ならず、発光波長領域が広がり、検出の点で不利になると考えられる。そこで、単純化したモデルに基づき、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークと第2の半導体ナノ粒子14の発光ピークとが重なりうる範囲について検討する。ここで、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークと第2の半導体ナノ粒子14の発光ピークが、それぞれλ11およびλ14の中心波長を有し、互いに同程度のピーク高及びピーク幅を有しており、且つ、共に正規分布に従うピーク形状(ピーク広がりについての標準偏差σ)を有すると仮定する。
このような場合、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークについては、中心波長から片側3σずつの範囲内、すなわち波長がλ11±3σの範囲内にピークの99.7%が分布することになる。同様に、第2の半導体ナノ粒子14の発光ピークについても、波長がλ14±3σの範囲内にピークの99.7%が分布することになる。そうすると、これら2つの発光ピークが重なる条件として、第1の半導体ナノ粒子11についての波長がλ11±3σの範囲と、第2の半導体ナノ粒子14についての波長がλ14±3σの範囲と間に重複部分が存在すること、すなわち、ピーク間距離(λ11−λ14)とピーク幅の標準偏差σとが、下記式(1a)を満たす関係にあることが目安となる。
(λ11−λ14)≦6σ(=3σ+3σ) …(1a)
正規分布に従うピークでは、半値全幅(FWHM)が標準偏差の2.35倍(≒2×(2×ln2)1/2)にあることから、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークおよび第2の半導体ナノ粒子14の発光ピークにおける半値全幅がともにFHであると仮定すると、上記式(1a)は、さらに、下記式(1b)の形で表すこともできる。
正規分布に従うピークでは、半値全幅(FWHM)が標準偏差の2.35倍(≒2×(2×ln2)1/2)にあることから、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピークおよび第2の半導体ナノ粒子14の発光ピークにおける半値全幅がともにFHであると仮定すると、上記式(1a)は、さらに、下記式(1b)の形で表すこともできる。
(λ11−λ14)≦2.54FH(≒6×FH/2.35) …(1b)
すなわち、この2つの発光ピーク波長のピーク間距離(λ11−λ14)が、半値幅の2.54倍以内にあることが望ましい。
すなわち、この2つの発光ピーク波長のピーク間距離(λ11−λ14)が、半値幅の2.54倍以内にあることが望ましい。
これらのことを総合的に見ると、上述したように、本発明では、第1の半導体ナノ粒子11が、第2の半導体ナノ粒子14と比べて、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長の半値幅相当分以上小さいバンドギャップを有すること、すなわち、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長が、第2の半導体ナノ粒子14の発光ピーク波長と比べて、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長の半値幅以上長い(すなわち、FH≦(λ11−λ14)が成り立つ)ことが好ましいのであるから、上記ピーク間距離(λ11−λ14)は、全体として下記式(2)で表される関係にあることが好ましい。
FH≦(λ11−λ14)≦2.54FH …(2)
さらに、上記式(2)を、第1の半導体ナノ粒子11のバンドギャップEg11および第2の半導体ナノ粒子14のバンドギャップEg14を用いて表すと、上述したE=hc/λの関係を用いて、下記式(2')の関係が成り立つことになる。
さらに、上記式(2)を、第1の半導体ナノ粒子11のバンドギャップEg11および第2の半導体ナノ粒子14のバンドギャップEg14を用いて表すと、上述したE=hc/λの関係を用いて、下記式(2')の関係が成り立つことになる。
(hc)-1×FH≦(1/Eg11−1/Eg14)≦2.54(hc)-1×FH …(2')
つまり、ここで議論している単純化したモデルにおいては、「第1の半導体ナノ粒子が、該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅相当分以上、第2の半導体ナノ粒子よりも小さいバンドギャップを有する」ときには、
(hc)-1×FH≦(1/Eg11−1/Eg14)
の関係を満たしており、「第1の半導体ナノ粒子と第2の半導体ナノ粒子のバンドギャップの差が半値幅の2.54倍相当以内」であるときには、
(1/Eg11−1/Eg14)≦2.54(hc)-1×FH
の関係を満たしていることになる。
つまり、ここで議論している単純化したモデルにおいては、「第1の半導体ナノ粒子が、該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅相当分以上、第2の半導体ナノ粒子よりも小さいバンドギャップを有する」ときには、
(hc)-1×FH≦(1/Eg11−1/Eg14)
の関係を満たしており、「第1の半導体ナノ粒子と第2の半導体ナノ粒子のバンドギャップの差が半値幅の2.54倍相当以内」であるときには、
(1/Eg11−1/Eg14)≦2.54(hc)-1×FH
の関係を満たしていることになる。
・半導体ナノ粒子
本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する半導体ナノ粒子は、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14ともに、半導体ナノ粒子集積構造体10において、外部から与えられたエネルギーを受けて励起し、励起状態から基底状態に戻る過程で蛍光を発する役割を有する。
本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する半導体ナノ粒子は、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14ともに、半導体ナノ粒子集積構造体10において、外部から与えられたエネルギーを受けて励起し、励起状態から基底状態に戻る過程で蛍光を発する役割を有する。
ただ、本発明においては、第1の半導体ナノ粒子11は、第2の半導体ナノ粒子14より小さいバンドギャップを有する。ここで、第1の半導体ナノ粒子11が、第2の半導体ナノ粒子14よりも、第1の半導体ナノ粒子11の発光ピーク波長の半値幅相当分以上小さいバンドギャップを有していることが好ましい。
ここで、本発明で用いられる半導体ナノ粒子を構成する半導体は、可視領域から近赤外領域における蛍光発光を生じさせるようなバンドギャップを有する半導体が好ましく、具体的には、200〜700nmの範囲内の波長の紫外〜可視光により励起されたときに、400〜900nmの範囲内の波長の可視〜近赤外光の発光を示すことが好ましい。そのような半導体として、II−VI族、III−V族、III−VI族、IV属、IV−VI族およびI-III-VI属の無機半導体が好適に用いられる。ここで、II−VI族の無機半導体の好適な例として、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeが、III−V族の無機半導体の好適な例として、AlN、AlP、AlAs、GaN、GaP、GaAs、InN、InP、InAs、InGaP、InGaAsが、III−VI族の無機半導体の好適な例として、Al2Se3が、IV族の無機半導体の好適な例として、Si、Geが、IV−VI族の無機半導体の好適な例として、PbS、PbSe、PbTeが、I-III-VI属の無機半導体の好適な例として、CuInS2がそれぞれ挙げられる。
本発明で用いられる半導体ナノ粒子は、第1の半導体ナノ粒子1および第2の半導体ナノ粒子4ともに、全体として均一な構造を有していてもよいし、構成成分の組成が異なる2以上の構造を有していてもよいし、あるいは、構成成分の組成が位置によって連続的に変化する構造を有していてもよい。本発明においては、発光効率の高い点から、第1の半導体ナノ粒子1および第2の半導体ナノ粒子4のうちの、少なくともいずれか一方がコア/シェル構造を有することが望ましく、第1の半導体ナノ粒子1および第2の半導体ナノ粒子4がともにコア/シェル構造を有することが特に望ましい。
コアシェル型半導体ナノ粒子
本発明を構成する半導体ナノ粒子として、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子、すなわち、コアシェル型半導体ナノ粒子を使うことが望ましい。コアシェル型とは、後述する半導体素材を含有する粒子であって、コア部(芯部)とそれを被覆するシェル部(被覆部)で構成される多重構造を有する粒子であり、その粒径は、通常概ね20nm以下である。
本発明を構成する半導体ナノ粒子として、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子、すなわち、コアシェル型半導体ナノ粒子を使うことが望ましい。コアシェル型とは、後述する半導体素材を含有する粒子であって、コア部(芯部)とそれを被覆するシェル部(被覆部)で構成される多重構造を有する粒子であり、その粒径は、通常概ね20nm以下である。
(コア部形成素材)
本発明に係るコア部(「コア粒子」ともいう。)を形成するための素材としては、Si、Ge、InN、InP、GaAs、AlSe、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAs、CuInS2などの半導体又はこれらを形成する原料を用いることが出来る。本発明においては、特に、InP、CdTe、CdSe、CuInS2がより好ましく用いられる。本発明に係るコア部(「コア粒子」)の平均粒径に関しては、0.5〜15nmであることが好ましい。
本発明に係るコア部(「コア粒子」ともいう。)を形成するための素材としては、Si、Ge、InN、InP、GaAs、AlSe、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAs、CuInS2などの半導体又はこれらを形成する原料を用いることが出来る。本発明においては、特に、InP、CdTe、CdSe、CuInS2がより好ましく用いられる。本発明に係るコア部(「コア粒子」)の平均粒径に関しては、0.5〜15nmであることが好ましい。
(シェル部形成素材)
本発明に係るシェル部を形成するための素材としては、II−VI族、III−V族、IV族の無機半導体を用いることができる。例えば、Si、Ge、InN、InP、GaAs、AlSe、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAsなどの各コア形成無機材料よりバンドギャップが大きく、毒性を有さない半導体又はこれらを形成する原料が好ましい。より好ましくは、InP、CdTe、CdSe、CuInS2に対して、ZnSがシェルとして適用される。なお、本発明に係るシェル部は、コア粒子が部分的に露出して弊害を生じない限り、コア粒子の全表面を完全に被覆するものでなくてもよいし、シェル部のない半導体ナノ粒子であってもよい。本発明に係るコア/シェル構造半導体ナノ体粒子の平均粒径は1〜20nmであることが好ましい。
本発明に係るシェル部を形成するための素材としては、II−VI族、III−V族、IV族の無機半導体を用いることができる。例えば、Si、Ge、InN、InP、GaAs、AlSe、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAsなどの各コア形成無機材料よりバンドギャップが大きく、毒性を有さない半導体又はこれらを形成する原料が好ましい。より好ましくは、InP、CdTe、CdSe、CuInS2に対して、ZnSがシェルとして適用される。なお、本発明に係るシェル部は、コア粒子が部分的に露出して弊害を生じない限り、コア粒子の全表面を完全に被覆するものでなくてもよいし、シェル部のない半導体ナノ粒子であってもよい。本発明に係るコア/シェル構造半導体ナノ体粒子の平均粒径は1〜20nmであることが好ましい。
・内部構造体、外部構造体
本発明では、内部構造体は、複数の上記第1の半導体ナノ粒子11を集積してなり、外部構造体は、複数の上記第2の半導体ナノ粒子14を集積してなる。
本発明では、内部構造体は、複数の上記第1の半導体ナノ粒子11を集積してなり、外部構造体は、複数の上記第2の半導体ナノ粒子14を集積してなる。
本発明の第1の好適な態様において、本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は図1(a)に示されるような構造を有している。このとき、内部構造体は、複数の第1の半導体ナノ粒子11がマトリクス17によって内包された状態で集積されてなる半導体ナノ粒子集積体12の形態を有している。そして、この半導体ナノ粒子集積体12の表面を覆うように、複数の第2の半導体ナノ粒子14が集積されてなる第2の半導体ナノ粒子集積層が外部構造体として形成されている。
ここで、マトリクス17は、集積した第1の半導体ナノ粒子11を固定するためのバインダーとしての役割を有し、その材質として、シリカ、ポリメラミン、ポリスチレンなどが好適に用いられる。また、半導体ナノ粒子集積体12は、30〜500nm程度の平均径を有していることが好ましく、第1の半導体ナノ粒子11を粒子同士が触れ合わない程度になるべく多く内包していることが好ましい。
また、本発明の第2の好適な態様において、本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は図1(b)に示されるような構造を有している。このとき、内部構造体は、内部に、半導体ナノ粒子を含まない支持コア構造体16を含んでおり、且つ、この支持コア構造体16の表面を覆うように、複数の第1の半導体ナノ粒子11が集積されてなる第1の半導体ナノ粒子集積層が形成された形態を有している。そして、この内部構造体の表面を覆うように、複数の第2の半導体ナノ粒子14が集積されてなる第2の半導体ナノ粒子集積層が外部構造体として形成されている。
ここで、支持コア構造体16は、第1の半導体ナノ粒子集積層及び第2の半導体ナノ粒子集積層を形成するための土台としての役割を有するとともに、高い表面積対体積比を確保することによって発光強度を高める役割を有する。支持コア構造体16の材質として、シリカ粒子等の誘電体や、ポリメラミン、ポリスチレン等の高分子ポリマーなどが好適に用いられる。この支持コア構造体16は、30〜500nm程度の平均径を有していることが好ましい。
以上、本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10における好ましい態様を2つ例示したが、本発明で内部構造体および外部構造体が取り得る形態は、上記に例示された態様に示されたものに限られないことはいうまでもない。以上の例では、本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10として、内部構造体と外部構造体とをそれぞれ1つずつ有しているものを示したが、本発明では、この外部構造体を覆うように、半導体ナノ粒子を集積してなる第2の外部構造体がさらに形成されることにより、本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10が複数の外部構造体を有していてもよい。ここで、第2の外部構造体を構成する半導体ナノ粒子は、上記第2の半導体ナノ粒子14であってもよいし、第2の半導体ナノ粒子14よりもさらにバンドギャップの大きい第3の半導体ナノ粒子であってもよい。したがって、本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10は、内部から外部に向かって構成半導体ナノ粒子のバンドギャップが次第に大きくなるように、言い換えると、内部から外部に向かって構成半導体ナノ粒子の発光ピーク波長が次第に短くなるように、外部構造体が積層されていてもよい。内部構造体及びこれらの外部構造体が、構成半導体の材質が同一のコアシェル型半導体ナノ粒子からなる場合には、内部から外部に向かって構成半導体ナノ粒子のコア径が小さくなるように、外部構造体が積層されていてもよい。
本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10は、その平均径が50〜1000nmの範囲であることが好ましい。
また、本発明では、内部構造体と外部構造体との間、および、内部構造体の内部に支持コア構造体16が含まれる場合には、支持コア構造体16と第1の半導体ナノ粒子集積層との間に、結合層13を有していてもよい。このような結合層13が存在すると、内部構造体と外部構造体との結合、および、支持コア構造体16と第1の半導体ナノ粒子集積層との結合が強固になり好ましい。このような結合層13として、例えば、PAH(ポリアリルアミンハイドロクロライド)とPSS(ポリソジウム4-スチレンスルフォネイト)を、PAH、PSS、PAHの順に積層してなるPAH/PSS/PAH層を好適に用いることができる。
また、本発明では、内部構造体と外部構造体との間、および、内部構造体の内部に支持コア構造体16が含まれる場合には、支持コア構造体16と第1の半導体ナノ粒子集積層との間に、結合層13を有していてもよい。このような結合層13が存在すると、内部構造体と外部構造体との結合、および、支持コア構造体16と第1の半導体ナノ粒子集積層との結合が強固になり好ましい。このような結合層13として、例えば、PAH(ポリアリルアミンハイドロクロライド)とPSS(ポリソジウム4-スチレンスルフォネイト)を、PAH、PSS、PAHの順に積層してなるPAH/PSS/PAH層を好適に用いることができる。
さらに、本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10は、他の分子との結合に供される官能基を導入することを目的として、あるいは、親水性を向上させることを目的として、あるいは、半導体ナノ粒子集積構造体10を保護することを目的として、最外周部に表面層15をさらに有していてもよい。したがって、このような表面層15は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などの官能基を有するものであってもよい。例えば、PAH/PSS/PAH層を介してPAA(ポリアクリル酸)からなる層を設けることによってカルボキシル基を有する親水化層を表面層15として設けることができる。
・半導体ナノ粒子集積構造体10の製造方法
本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は、従来公知の方法を用いて製造することができる。
本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10は、従来公知の方法を用いて製造することができる。
具体的な方法として、液相法および気相法を挙げることができる。
液相法
本発明では、半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14の製造方法として、液相法を好適に用いることができる。液相法では、これらの半導体ナノ粒子を構成する各半導体は、対応半導体前駆体を適当な溶媒中で化学反応させることにより得られる。液相法に基づく製造方法としては、沈殿法、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法、などもナノ粒子を作製する上で優れた方法である(例えば、特開2002−322468号、特開2005−239775号、特開平10−310770号、特開2000−104058号公報等を参照。)。
液相法
本発明では、半導体ナノ粒子集積構造体10を構成する第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14の製造方法として、液相法を好適に用いることができる。液相法では、これらの半導体ナノ粒子を構成する各半導体は、対応半導体前駆体を適当な溶媒中で化学反応させることにより得られる。液相法に基づく製造方法としては、沈殿法、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法、などもナノ粒子を作製する上で優れた方法である(例えば、特開2002−322468号、特開2005−239775号、特開平10−310770号、特開2000−104058号公報等を参照。)。
ここで、上記内部構造体及び外部構造体を構成する、半導体ナノ粒子の集合体を、液相法により製造する場合においては、当該半導体の前駆体を還元反応により還元する工程を有する製造方法であることも好ましい。
また、液相法による反応に際しては、半導体前駆体の反応を界面活性剤の存在下で行う工程を有する態様が好ましい。また、形成した第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14(、および、該当する場合には、これらの半導体ナノ粒子を構成するコア部)が反応過程で不用意に凝集しないよう、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)などの安定剤の存在下で行う工程を有する態様が好ましい。なお、本発明で用いられる半導体前駆体は、上記の半導体材料として用いられる元素を含む化合物であり、たとえば半導体がSiの場合、半導体前駆体としてはSiCl4などが挙げられる。その他半導体前駆体としては、InCl3、P(SiMe3)3、ZnMe2、CdMe2、GeCl4、トリブチルホスフィンセレンなどが挙げられる。
半導体前駆体から所要の半導体に導く際の反応温度としては、半導体前駆体の沸点以上かつ溶媒の沸点以下であれば、特に制限はないが、70〜110℃の範囲が好ましい。
(還元剤)
半導体前駆体を還元する還元剤としては、従来周知の種々の還元剤を反応条件に応じて選択し用いることができる。本発明においては、還元力の強さの観点から、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec−C4H9)3)及び水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどの還元剤が好ましい。特に、還元力の強さから水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)が好ましい。
(還元剤)
半導体前駆体を還元する還元剤としては、従来周知の種々の還元剤を反応条件に応じて選択し用いることができる。本発明においては、還元力の強さの観点から、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec−C4H9)3)及び水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどの還元剤が好ましい。特に、還元力の強さから水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)が好ましい。
(溶媒)
半導体前駆体の分散用溶媒としては、従来周知の種々の溶媒を使用できるが、エチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、トルエン、デカン、ヘキサンなどの炭化水素類溶媒を使用することが好ましい。本発明においては、特に、トルエン等の疎水性の溶媒が分散用溶媒として好ましい。
半導体前駆体の分散用溶媒としては、従来周知の種々の溶媒を使用できるが、エチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、トルエン、デカン、ヘキサンなどの炭化水素類溶媒を使用することが好ましい。本発明においては、特に、トルエン等の疎水性の溶媒が分散用溶媒として好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、従来周知の種々の界面活性剤を使用でき、陰イオン、非イオン、陽イオン、両性界面活性剤が含まれる。なかでも第四級アンモニウム塩系である、テトラブチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はヘキサフルオロホスフェート、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)、またはトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドが好ましい。特に、テトラオクチルアンモニウムブロミドが好ましい。
界面活性剤としては、従来周知の種々の界面活性剤を使用でき、陰イオン、非イオン、陽イオン、両性界面活性剤が含まれる。なかでも第四級アンモニウム塩系である、テトラブチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はヘキサフルオロホスフェート、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)、またはトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドが好ましい。特に、テトラオクチルアンモニウムブロミドが好ましい。
なお、液相法による反応は、液中の溶媒を含む化合物の状態により大きく変化する。単分散性の優れたナノサイズの粒子を製造する際には、特に注意を要する必要がある。例えば、逆ミセル反応法では、界面活性剤の濃度や種類により、反応場となる逆ミセルの大きさや状態が変わってくるため、ナノ粒子が形成される条件が限られてしまう。したがって、界面活性剤と溶媒とを適切に組み合わせることが必要となる。
気相法
本発明では、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14の製造方法として、気相法を用いてもよい。気相法による製造方法としては、(1)対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電極放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(例えば特開平6−279015号公報参照。)、(2)電気化学的エッチングによって、原料半導体からなる陽極からナノ粒子を分離・除去する方法(例えば特表2003−515459号公報参照。)、(3)レーザーアブレーション法(例えば特開2004−356163号参照。)、(4)高速スパッタリング法(例えば特開2004−296781号参照。)などが用いられる。また、原料ガスを低圧状態で気相反応させて、粒子を含む粉末を合成する方法も、好ましく用いられる。
本発明では、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14の製造方法として、気相法を用いてもよい。気相法による製造方法としては、(1)対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電極放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(例えば特開平6−279015号公報参照。)、(2)電気化学的エッチングによって、原料半導体からなる陽極からナノ粒子を分離・除去する方法(例えば特表2003−515459号公報参照。)、(3)レーザーアブレーション法(例えば特開2004−356163号参照。)、(4)高速スパッタリング法(例えば特開2004−296781号参照。)などが用いられる。また、原料ガスを低圧状態で気相反応させて、粒子を含む粉末を合成する方法も、好ましく用いられる。
なお、半導体ナノ粒子の製造方法の概要については、上述したが、半導体ナノ粒子は発光波長を指定して、購入することもできる。後述する実施例では購入する場合を示す。
半導体ナノ粒子の集積化
本発明では、半導体ナノ粒子集積構造体10を構築する上で、上記半導体ナノ粒子(すなわち、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14)をそれぞれ集積化する必要がある。本発明では、上記液相法または気相法などの方法により第1の半導体ナノ粒子11を製造した後に、得られた第1の半導体ナノ粒子11を適当な方法により集積させることにより内部構造体を得、その後、上記液相法または気相法などの方法により第2の半導体ナノ粒子14を製造した後に、得られた第2の半導体ナノ粒子14を適当な方法により前記内部集積体表面に集積させることにより外部構造体を形成することができる。このとき、複数の第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14がそれぞれ相互に接触した状態で集まった集合体を、マトリクスの構築を行うことなくそのまま内部構造体および外部構造体としてそれぞれ用いてもよい。ただ、より強固な内部構造体及び外部構造体を得る観点からは、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14をそれぞれ適当な方法によって凝集させて一旦集積体前駆体とし、当該集積体前駆体に対して、上記液相法などの方法によってマトリクスの形成をそれぞれ行うことによって、内部構造体及び外部構造体をそれぞれ構築することが好ましい。ここで、「集積体前駆体」とは、複数の半導体ナノ粒子が相互に接触した状態で集まった集合体を指す。また、外部構造体を形成する際、内部構造体の表面に直接形成してもよいが、外部構造体と内部構造体との結合を強固にする観点からは、まず、内部構造体の表面に、従来公知の適当な方法により結合層13の構築を行ってから、当該結合層13の表面に外部構造体を構築することが好ましい。
半導体ナノ粒子の集積化
本発明では、半導体ナノ粒子集積構造体10を構築する上で、上記半導体ナノ粒子(すなわち、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14)をそれぞれ集積化する必要がある。本発明では、上記液相法または気相法などの方法により第1の半導体ナノ粒子11を製造した後に、得られた第1の半導体ナノ粒子11を適当な方法により集積させることにより内部構造体を得、その後、上記液相法または気相法などの方法により第2の半導体ナノ粒子14を製造した後に、得られた第2の半導体ナノ粒子14を適当な方法により前記内部集積体表面に集積させることにより外部構造体を形成することができる。このとき、複数の第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14がそれぞれ相互に接触した状態で集まった集合体を、マトリクスの構築を行うことなくそのまま内部構造体および外部構造体としてそれぞれ用いてもよい。ただ、より強固な内部構造体及び外部構造体を得る観点からは、第1の半導体ナノ粒子11および第2の半導体ナノ粒子14をそれぞれ適当な方法によって凝集させて一旦集積体前駆体とし、当該集積体前駆体に対して、上記液相法などの方法によってマトリクスの形成をそれぞれ行うことによって、内部構造体及び外部構造体をそれぞれ構築することが好ましい。ここで、「集積体前駆体」とは、複数の半導体ナノ粒子が相互に接触した状態で集まった集合体を指す。また、外部構造体を形成する際、内部構造体の表面に直接形成してもよいが、外部構造体と内部構造体との結合を強固にする観点からは、まず、内部構造体の表面に、従来公知の適当な方法により結合層13の構築を行ってから、当該結合層13の表面に外部構造体を構築することが好ましい。
これは以下のように行うことが出来る。
まず、第1の例として、上記第1の好適な態様に係る半導体ナノ粒子集積構造体10の製造方法を挙げる。まず、第1の半導体ナノ粒子11を適当なマトリクス17によって内包させることによって集積させることによって、内部構造体となる半導体ナノ粒子集積体12を構築する。本例では、マトリクス17を構成する材質としてシリカを好適に用いることができ、その場合、シリカからなるマトリクス17を構築する上で、非特許文献1記載の方法に基づくストーバー法を用いることができる。このような半導体ナノ粒子集積体12を構築する具体的な方法として、例えば非特許文献2記載の方法を挙げることができる。例えば、CdSe/ZnS半導体ナノ粒子をTOPOのトルエン溶液に分散させる。この溶液中にTEOSを加え、半導体ナノ粒子をシラン化する。エタノール、H2O、アンモニアを加え、還流することで20程度の半導体粒子を内包する50nm程度のシリカ球状体が半導体ナノ粒子集積体12として得られる。このシリカ球状体は、上記第1の好適な態様に係る半導体ナノ粒子集積構造体10における半導体ナノ粒子シリカ集積体にあたる。
まず、第1の例として、上記第1の好適な態様に係る半導体ナノ粒子集積構造体10の製造方法を挙げる。まず、第1の半導体ナノ粒子11を適当なマトリクス17によって内包させることによって集積させることによって、内部構造体となる半導体ナノ粒子集積体12を構築する。本例では、マトリクス17を構成する材質としてシリカを好適に用いることができ、その場合、シリカからなるマトリクス17を構築する上で、非特許文献1記載の方法に基づくストーバー法を用いることができる。このような半導体ナノ粒子集積体12を構築する具体的な方法として、例えば非特許文献2記載の方法を挙げることができる。例えば、CdSe/ZnS半導体ナノ粒子をTOPOのトルエン溶液に分散させる。この溶液中にTEOSを加え、半導体ナノ粒子をシラン化する。エタノール、H2O、アンモニアを加え、還流することで20程度の半導体粒子を内包する50nm程度のシリカ球状体が半導体ナノ粒子集積体12として得られる。このシリカ球状体は、上記第1の好適な態様に係る半導体ナノ粒子集積構造体10における半導体ナノ粒子シリカ集積体にあたる。
次に、その外側に、内側に集積した第1の半導体ナノ粒子11よりバンドギャップの大きい半導体ナノ粒子(すなわち、第2の半導体ナノ粒子14)を集積してなる第2の半導体ナノ粒子集積層を外部構造体として構築する(図1(a))。外部構造体は、従来公知の適当な方法によって構築することができるが、本例ではLayer by Layer法と呼ばれる成長法を好適に用いることができる。このような第2の半導体ナノ粒子集積層を構築する具体的な方法として、例えば、非特許文献3記載の方法を挙げることができる。この方法は、前記内部構造体の表面にPAH(ポリアリルアミンハイドロクロライド)とPSS(ポリソジウム4-スチレンスルフォネイト)とを用いてPAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を順次行うことによりPAH/PSS/PAH層を結合層13として形成し、このPAH/PSS/PAH層の表面に外部構造体を構築するものである。その具体的な手順を以下に例示する。
上記で作成したシリカ球状体をピラニア溶液(30%H2O2+70%H2SO4)で処理し、シリカ球状体を負に帯電させる。これとは別に、PAH(ポリアリルアミンハイドロクロライド)、PSS(ポリソジウム4-スチレンスルフォネイト)、およびPAA(ポリアクリル酸)をNaCl溶液中にそれぞれ溶解した液をそれぞれ作成する。そして、当該負に帯電したシリカ球状体に、PAH,PSS,PAAの各溶液を順次加えることによって、このシリカ球状体上にPAH/PSS/PAHの層を結合層13として形成し、シリカ中間構造体とする。次に、前記シリカ中間構造体を、メルカプトポロピオン酸でキャップしたCdSe/ZnS半導体ナノ粒子の水溶液中に分散させることで、内側に集積した第1の半導体ナノ粒子11よりバンドギャップの大きいCdSe/ZnSが集積されてなる第2の半導体ナノ粒子集積層を外部構造体として形成することができる。ここで、この段階で用いられるCdSe/ZnS半導体ナノ粒子は、第1の半導体ナノ粒子11として用いたCdSe/ZnS半導体ナノ粒子よりもバンドギャップの大きいCdSe/ZnS半導体ナノ粒子である。
以上に示した形態では、半導体ナノ粒子集積構造体10を、半導体ナノ集積体の内部をストーバー法、外部をレイヤーバイレイヤー法で形成したが、半導体ナノ粒子集積構造体10の製造方法は、このような方法に限定されるものではなく、他の方法で行なってもよい。
第2の例として、上記第2の好適な態様に係る半導体ナノ粒子集積構造体10の製造方法を挙げる。この態様では、半導体ナノ粒子集積構造体10は、シリカなどの適当な材質からなる、半導体ナノ粒子を含まない支持コア構造体16の表面に、上記した第2の半導体ナノ粒子集積層を形成するために用いたものと同様の方法により、まず、複数の第1の半導体ナノ粒子11が集積されてなる第1の半導体ナノ粒子集積層を形成して内部構造体を構築し、次いで、その表面に、第1の半導体ナノ粒子11よりもバンドギャップの大きい複数の第2の半導体ナノ粒子14が集積されてなる第2の半導体ナノ粒子集積層からなる外部構造体を構築することができる(図1(b))。このとき、第1の半導体ナノ粒子集積層および第2の半導体ナノ粒子集積層にあたって、レイヤーバイレイヤー法を好適に用いることができる。ここで、支持コア構造体16と第1の半導体ナノ粒子集積層との間、および第1の半導体ナノ粒子集積層と第2の半導体ナノ粒子集積層との間に、上記第1の例で上述したのと同様の方法により、PAH/PSS/PAH層などの結合層13を形成することが好ましい。
以上、本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体10の製造方法の例を示したが、本発明では、上記のように形成された外部構造体の表面に、半導体ナノ粒子を集積してなる第2の外部構造体をさらに形成してもよい。ここで、第2の外部構造体を構成する半導体ナノ粒子は、上記第2の半導体ナノ粒子14であってもよいし、第2の半導体ナノ粒子14よりもさらにバンドギャップの大きい第3の半導体ナノ粒子であってもよい。このような第2の外部構造体もまた、上記外部構造体と同様の方法により形成することができる。具体的には、上記の方法により形成された外部構造体の表面に、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を順次行うことによって新たなPAH/PSS/PAH層を形成してから、第2の外部構造体の原料となる半導体ナノ粒子を分散させた水溶液中に分散させる一連の工程を繰り返せば良い。
このように得られた半導体ナノ粒子集積構造体10は、そのまま用いてもよいが、さらに表面処理を行って、親水化層などの表面層15を形成してもよい。表面層15の形成は、上記外部構造体と同様、適当な従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、PAH/PSS/PAH層を形成してから、所要の表面層15の形成を行うことができる。例えば、表面層15として親水化層を形成する場合、表面層15が未だ形成されていない半導体ナノ粒子集積構造体の最外周部に対して、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を同様に順次行うことによって新たなPAH/PSS/PAH層を形成してから、PAA処理をさらに行うことによりPAA層を形成することができ、これによって、カルボキシル基を表面に有する半導体ナノ粒子集積構造体10を得ることができる。
〔本発明に係る半導体ナノ粒子集積構造体の応用〕
以下において、代表的な応用例について説明する。
・生体物質標識剤とバイオイメージング
本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10は、特にその用途に制限があるわけではないものの、生体物質標識剤の用途に好適に用いることができる。本発明に係る生体物質標識剤は、半導体ナノ粒子集積構造体10が、有機分子を介して分子標識物質と結合した構造を有している。ここで、標的(追跡)物質を有する生細胞もしくは生体に、本発明に係る生体物質標識剤を添加することで、標的物質と結合もしくは吸着し、当該結合体もしくは吸着体に所定の波長の励起光を照射し、当該励起光に応じて蛍光半導体微粒子から発生する所定の波長の蛍光を検出することにより、上記標的(追跡)物質の蛍光動態イメージングを行うことができる。
以下において、代表的な応用例について説明する。
・生体物質標識剤とバイオイメージング
本発明の半導体ナノ粒子集積構造体10は、特にその用途に制限があるわけではないものの、生体物質標識剤の用途に好適に用いることができる。本発明に係る生体物質標識剤は、半導体ナノ粒子集積構造体10が、有機分子を介して分子標識物質と結合した構造を有している。ここで、標的(追跡)物質を有する生細胞もしくは生体に、本発明に係る生体物質標識剤を添加することで、標的物質と結合もしくは吸着し、当該結合体もしくは吸着体に所定の波長の励起光を照射し、当該励起光に応じて蛍光半導体微粒子から発生する所定の波長の蛍光を検出することにより、上記標的(追跡)物質の蛍光動態イメージングを行うことができる。
すなわち、本発明に係る生体物質標識剤は、バイオイメージング法(生体物質を構成する生体分子やその動的現象を可視化する技術手段)に利用することができる。
半導体ナノ粒子集積体の親水化処理
上述した半導体ナノ粒子集積構造体10表面は、未だ表面処理を行っていない状態では、一般的には、疎水性であるため、例えば生体物質標識剤として使用する場合は、このままでは水分散性が悪く、半導体ナノ粒子集積体が凝集してしまう等の問題がある。そのため、半導体ナノ粒子集積構造体10の表面に親水化処理を行って、親水化半導体ナノ粒子集積構造体とすることが好ましい。
半導体ナノ粒子集積体の親水化処理
上述した半導体ナノ粒子集積構造体10表面は、未だ表面処理を行っていない状態では、一般的には、疎水性であるため、例えば生体物質標識剤として使用する場合は、このままでは水分散性が悪く、半導体ナノ粒子集積体が凝集してしまう等の問題がある。そのため、半導体ナノ粒子集積構造体10の表面に親水化処理を行って、親水化半導体ナノ粒子集積構造体とすることが好ましい。
親水化処理の方法としては例えば、表面に付着した親油性成分をピリジン等で除去した後に、半導体ナノ粒子集積構造体10の表面に表面修飾剤を化学的および/または物理的に結合させる方法がある。表面修飾剤としては、親水基として、カルボキシル基・アミノ基を持つものが好ましく用いられ、具体的にはメルカプトプロピオン酸、メルカプトウンデカン酸、アミノプロパンチオールなどがあげられる。具体的には、例えば、Ge/GeO2型ナノ粒子10-5gをメルカプトウンデカン酸0.2gが溶解した純水10ml中に分散させて、40℃、10分間攪拌し、シェルの表面を処理することで無機ナノ粒子のシェルの表面をカルボキシル基で修飾することができる。
(生体物質標識剤)
本発明に係る生体物質標識剤は、上述したように得られた親水化半導体ナノ粒子集積構造体と、分子標識物質と有機分子を介して結合させて得られる。
本発明に係る生体物質標識剤は、上述したように得られた親水化半導体ナノ粒子集積構造体と、分子標識物質と有機分子を介して結合させて得られる。
分子標識物質
本発明に係る生体物質標識剤は分子標識物質が目的とする生体物質と特異的に結合および/または反応することにより、生体物質の標識が可能となる。
本発明に係る生体物質標識剤は分子標識物質が目的とする生体物質と特異的に結合および/または反応することにより、生体物質の標識が可能となる。
当該分子標識物質としては、例えば、ヌクレオチド鎖、抗体、抗原、糖鎖及びシクロデキストリン等が挙げられる。ここで、分子標識物質としてトラスツズマブなどの抗体医薬を用いる場合、本発明に係る生体物質標識剤は、このような抗体医薬が認識するHER2などのガンマーカーが組織切片などに存在するかどうかを確認するための組織染色に用いることができる。
有機分子
本発明に係る生体物質標識剤は、上記親水化半導体ナノ粒子集積構造体と、分子標識物質とが有機分子により結合されている。当該有機分子としては半導体ナノ粒子集積体と分子標識物質とを結合できる有機分子であれば特に制限はないが、例えば、タンパク質中でも、アルブミン、ミオグロビンおよびカゼイン等、またタンパク質の一種であるアビジンをビオチンと共に用いることも好適に用いられる。上記結合の態様としては特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着および化学吸着等が挙げられる。結合の安定性から共有結合などの結合力の強い結合が好ましい。
本発明に係る生体物質標識剤は、上記親水化半導体ナノ粒子集積構造体と、分子標識物質とが有機分子により結合されている。当該有機分子としては半導体ナノ粒子集積体と分子標識物質とを結合できる有機分子であれば特に制限はないが、例えば、タンパク質中でも、アルブミン、ミオグロビンおよびカゼイン等、またタンパク質の一種であるアビジンをビオチンと共に用いることも好適に用いられる。上記結合の態様としては特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着および化学吸着等が挙げられる。結合の安定性から共有結合などの結合力の強い結合が好ましい。
具体的には、半導体ナノ粒子集積構造体10をメルカプトウンデカン酸で親水化処理した場合は、有機分子としてアビジンおよびビオチンを用いることができる。この場合上記親水化半導体ナノ粒子集積構造体のカルボキシル基はアビジンと好適に共有結合し、アビジンがさらにビオチンと選択的に結合し、ビオチンがさらに分子標識物質と結合することにより生体物質標識剤となる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1に係る半導体ナノ粒子集積構造体について、図6を用いて説明する。本実施例1は、バンドギャップエネルギーの異なる二つの半導体ナノ粒子のうちの一方が、半導体ナノ粒子集積体12としての半導体ナノ粒子シリカ集積体2中に内包された状態で内部構造体を構成しており、もう一方の半導体ナノ粒子を集積してなる外部構造体が、当該半導体ナノ粒子シリカ集積体2を覆うように形成されている態様を示すものである。
[実施例1]
実施例1に係る半導体ナノ粒子集積構造体について、図6を用いて説明する。本実施例1は、バンドギャップエネルギーの異なる二つの半導体ナノ粒子のうちの一方が、半導体ナノ粒子集積体12としての半導体ナノ粒子シリカ集積体2中に内包された状態で内部構造体を構成しており、もう一方の半導体ナノ粒子を集積してなる外部構造体が、当該半導体ナノ粒子シリカ集積体2を覆うように形成されている態様を示すものである。
CdSe/ZnS粒子は上記セクション「発明を実施するための形態」に記したように合成してもよいが、本実施例1では、エヴィデントテクノロジー社から購入したものを用いることができる。波長は490,520,540,560,580,600,620nmから選ぶことができ、本実施例1では第1の半導体ナノ粒子1として発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を集積して、半導体ナノ粒子シリカ集積体2を構築し、第2の半導体ナノ粒子4として490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を集積して外部構造体を構築する。
具体的には、非特許文献2を参考にして半導体ナノ粒子シリカ集積体2を形成する。まず発光波長540nmのCdSe/ZnS粒子を例えば、メタノール/2-プロパノール=3:1混合液中で析出させ遠心分離する。得られた半導体ナノ粒子をTOPO 0.1M (mol/L) のトルエン溶液に分散させ、15時間程度攪拌し、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いてCdSe/ZnS半導体ナノ粒子表面をシラン化する。エタノール、H2O、アンモニアを加え100℃で1時間還流する。半導体粒子、TEOS、トルエン、エタノール、H2O、NH3の比率は、モル比として各々 1、2.8×104、5.87×106、1.07×108、7.99×107、7.17×105 である。最後に30分遠心分離を行い、H2O中に再度分散させた。これによりCdSe/ZnS粒子を20個程度内包する、粒径50nm程度の半導体ナノ粒子シリカ集積体2が形成される。
次に、上記半導体ナノ粒子シリカ集積体2の外側に、レイヤーバイレイヤー法を用いてさらに第2の半導体ナノ粒子4としての発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を集積する。
具体的には、非特許文献3を参考にして行うことが出来る。すなわち、上記で作成した半導体ナノ粒子シリカ集積体2をピラニア溶液(30%H2O2+70%H2SO4)で処理して、負に帯電させる。次に0.5mol/LのNaCl溶液中に1mg/mL PAH(ポリアリルアミンハイドロクロライド)、PSS(ポリソジウム4-スチレンスルフォネイト)およびPAA(ポリアクリル酸)をそれぞれ溶解した各溶液を作成しておく。まず、PAH溶液を、当該負に帯電した半導体ナノ粒子シリカ集積体2の100個程度あたり0.5mL添加し、20分間吸収させ、その後4回水洗することにより、表面にPAH層を形成する。そして、PSS,PAHについても同様の処理をそれぞれ行うことによりPSS層及びPAH層をそれぞれ形成させる。これらの操作により、半導体ナノ粒子シリカ集積体2上に、結合層13として機能するPAH/PSS/PAHの層(以下、PAH/PSS/PAH層)3が形成される。その後、PAH/PSS/PAH層3が形成された半導体ナノ粒子シリカ集積体をメルカプトポロピオン酸0.8mmol/Lでキャップした第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)を分散させた0.2mLの水溶液中に分散させることで、半導体ナノ粒子シリカ集積体2上に、第1の半導体ナノ粒子1(発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)よりバンドギャップの大きい第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)が集積された外部構造体を形成されてなる半導体ナノ粒子集積構造体を得ることができる。第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)の層を複数積層化するには、この半導体ナノ粒子集積構造体に対して、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を順次行うことによって新たなPAH/PSS/PAH層を形成してから、再度第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)を分散させた水溶液中に分散させる一連の工程を繰り返せば良い。
得られた半導体ナノ粒子集積構造体に対する親水化処理は、この半導体ナノ粒子集積構造体の最外周部に対して、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を同様に順次行ってから、PAA処理をさらに行い、その後カルボキシル基を導入することにより行う。
[実施例2]
実施例2に係る半導体ナノ粒子集積構造体について、図7を用いて説明する。本実施例2は、バンドギャップエネルギーの異なる二つの半導体ナノ粒子含有層のほかに、支持コア構造体16としてシリカ粒子6をさらに含む態様を示すものである。ただ、このシリカ粒子6の外側に形成された半導体粒子含有層が、バンドギャップエネルギーの異なる2種類の半導体ナノ粒子含有層、すなわち、第1の半導体ナノ粒子集積層と、第2の半導体ナノ粒子集積層との2層からなる層である点で非特許文献3記載の発明と異なる。
実施例2に係る半導体ナノ粒子集積構造体について、図7を用いて説明する。本実施例2は、バンドギャップエネルギーの異なる二つの半導体ナノ粒子含有層のほかに、支持コア構造体16としてシリカ粒子6をさらに含む態様を示すものである。ただ、このシリカ粒子6の外側に形成された半導体粒子含有層が、バンドギャップエネルギーの異なる2種類の半導体ナノ粒子含有層、すなわち、第1の半導体ナノ粒子集積層と、第2の半導体ナノ粒子集積層との2層からなる層である点で非特許文献3記載の発明と異なる。
CdSe/ZnS粒子は例えば、エヴィデントテクノロジー社から購入したものを用いることができる。波長は490,520,540,560,580,600,620nmから選ぶことができ、本実施例2では、第1の半導体ナノ粒子1として発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子(発光ピークにおける半値幅:30nm)を集積して、内部構造体を構成する第1の半導体ナノ粒子集積層を構築し、第2の半導体ナノ粒子4として490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子をレイヤーバイレイヤー法で集積して、外部構造体となる第2の半導体ナノ粒子集積層を構築する。
内部構造体を構成する支持コア構造体16としては、例えばコアフロント社等で入手可能な水中に分散されているシリカ粒子6(60nm径)を用いることができる。このシリカ粒子6の外側に、レイヤーバイレイヤー法を用いて第1の半導体ナノ粒子1としての発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を集積する。
具体的には、上記実施例1と同様、非特許文献3を参考にして行うことが出来る。すなわち、上記シリカ粒子6をピラニア溶液(30%H2O2+70%H2SO4)で処理して、負に帯電させる。次に0.5mol/LのNaCl溶液中に1mg/mL PAH(ポリアリルアミンハイドロクロライド)、PSS(ポリソジウム4-スチレンスルフォネイト)およびPAA(ポリアクリル酸)をそれぞれ溶解した各溶液を作成しておく。まずPAH溶液を、当該負に帯電したシリカ粒子100個程度あたり0.5mL添加し、20分間吸収させ、その後4回水洗することにより、シリカ粒子6の表面にPAH層を形成する。そして、PSS,PAHについても同様の処理をそれぞれ行うことによりPSS層及びPAH層をそれぞれ形成させる。これらの操作により、シリカ粒子6上に、結合層13として機能するPAH/PSS/PAH層3が形成される。その後、PAH/PSS/PAH層3が形成されたシリカ粒子をメルカプトポロピオン酸0.8mmol/Lでキャップした第1の半導体ナノ粒子1(発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)を分散させた0.2mLの水溶液中に分散させることで、シリカ粒子上に、第1の半導体ナノ粒子1(発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)が集積された内部構造体を形成されてなるシリカ中間構造体を得ることができる。第1の半導体ナノ粒子1(発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)の層を複数積層化するには、このシリカ中間構造体に対して、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を順次行うことによって新たなPAH/PSS/PAH層を形成してから、再度第1の半導体ナノ粒子1(発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)を分散させた水溶液中に分散させる一連の工程を繰り返せば良い。
次に、上記シリカ中間構造体の外側に、レイヤーバイレイヤー法を用いてさらに第2の半導体ナノ粒子4としての発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を集積する。まず、上記で作成したシリカ中間構造体100個程度あたりに、上記実施例1と同様の方法により調製したPAH溶液を0.5mL添加して20分間吸収させ、その後4回水洗することにより、シリカ中間構造体表面にPAH層を形成する。そして、PSS,PAHについても同様の処理をそれぞれ行うことによりPSS層及びPAH層をそれぞれ形成させる。これらの操作により、上記シリカ中間構造体上にPAH/PSS/PAH層3が形成される。その後、PAH/PSS/PAH層3が形成されたシリカ中間構造体を、メルカプトポロピオン酸0.8mmol/Lでキャップした第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)を分散させた0.2mLの水溶液中に分散させることで、上記内部構造体を構成する半導体ナノ粒子1よりバンドギャップの大きい第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)が集積された外部構造体を形成されてなる半導体ナノ粒子集積構造体を得ることができる。第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)の層を複数積層化するには、この半導体ナノ粒子集積構造体に対して、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を順次行うことによって新たなPAH/PSS/PAH層を形成してから、再度第2の半導体ナノ粒子4(発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子)を分散させた水溶液中に分散させる一連の工程を繰り返せば良い。
得られた半導体ナノ粒子集積構造体に対する親水化処理は、この半導体ナノ粒子集積構造体の最外周部に対して、PAH層の形成、PSS層の形成およびPAH層の形成を同様に順次行うことによって新たなPAH/PSS/PAH層を形成してから、PAA処理をさらに行い、カルボキシル基を導入することにより行う。これにより、表面層5として、親水化層が形成される。
[比較例1]
外部構造体を構成する第2の半導体ナノ粒子4として、内部構造体を構成する第1の半導体ナノ粒子1と同じ、発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用いたことを除き、実施例2と同様の方法により半導体ナノ粒子集積構造体を得た。
外部構造体を構成する第2の半導体ナノ粒子4として、内部構造体を構成する第1の半導体ナノ粒子1と同じ、発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用いたことを除き、実施例2と同様の方法により半導体ナノ粒子集積構造体を得た。
[蛍光強度の比較]
上記実施例2および比較例1で得られた半導体ナノ粒子集積構造体を構成する半導体ナノ粒子についてのデータを表1に示す。ここで、実施例記載の半導体ナノ粒子集積構造体を構成する二種類のコアシェル型半導体ナノ粒子のバンドギャップの関係を図8に示すとともに、得られた半導体ナノ粒子集積構造体を構成するコアシェル型半導体ナノ粒子におけるコア径の定義を図9に示す。
上記実施例2および比較例1で得られた半導体ナノ粒子集積構造体を構成する半導体ナノ粒子についてのデータを表1に示す。ここで、実施例記載の半導体ナノ粒子集積構造体を構成する二種類のコアシェル型半導体ナノ粒子のバンドギャップの関係を図8に示すとともに、得られた半導体ナノ粒子集積構造体を構成するコアシェル型半導体ナノ粒子におけるコア径の定義を図9に示す。
第1の半導体ナノ粒子1、第2の半導体ナノ粒子4および半導体ナノ粒子集積構造体の粒径(体積平均径)は、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern Instruments社製、Zetasizer Nano S)を用いて、半導体ナノ粒子又は集積体作製直後(凝集前)の粒径分布を測定することにより求めた。なお、平均粒径(体積平均径)は、粒径分布のピーク(中心)位置の粒径とした。
また、実施例2および比較例1で得られた半導体ナノ粒子集積構造体の発光波長及び蛍光強度を表2に示す。第1の半導体ナノ粒子1および第2の半導体ナノ粒子4の両方に発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用いた比較例1(Eg2 − Eg1 = 2.30 − 2.30= 0 eV)における蛍光強度を100としたときに、第1の半導体ナノ粒子1として発光波長540nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用い、第2の半導体ナノ粒子4として発光波長490nmのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を用いた実施例2(Eg2 − Eg1 = 2.53 − 2.30 = 0.23 eV)では120程度の蛍光強度が得られている。このように蛍光強度に差が生じたのは、比較例1では図2のように、半導体ナノ粒子集積構造体の内部に位置するCdSe/ZnS半導体ナノ粒子から生じた蛍光の発光強度の3割程度が、半導体ナノ粒子集積構造体の表面付近に位置するCdSe/ZnS半導体ナノ粒子を構成するCdSeで吸収されるため、濃度消光が生じたが、本発明に係る実施例2ではこのような濃度消光を抑えることができたからであると推測している。
1・・・第1の半導体ナノ粒子
2・・・半導体ナノ粒子シリカ集積体
3・・・PAH/PSS/PAH層
4・・・第2の半導体ナノ粒子
5・・・表面層
6・・・シリカ粒子
10・・・本発明の半導体ナノ粒子集積構造体
11・・・第1の半導体ナノ粒子
12・・・半導体ナノ粒子集積体
13・・・結合層
14・・・第2の半導体ナノ粒子
15・・・表面層
16・・・支持コア構造体
17・・・マトリクス
2・・・半導体ナノ粒子シリカ集積体
3・・・PAH/PSS/PAH層
4・・・第2の半導体ナノ粒子
5・・・表面層
6・・・シリカ粒子
10・・・本発明の半導体ナノ粒子集積構造体
11・・・第1の半導体ナノ粒子
12・・・半導体ナノ粒子集積体
13・・・結合層
14・・・第2の半導体ナノ粒子
15・・・表面層
16・・・支持コア構造体
17・・・マトリクス
Claims (8)
- 複数の第1の半導体ナノ粒子を集積してなる内部構造体と、
該内部構造体を被覆する、複数の第2の半導体ナノ粒子を集積してなる外部構造体と
を含み、
該第1の半導体ナノ粒子が、該第2の半導体ナノ粒子より小さいバンドギャップを有する半導体ナノ粒子集積構造体。 - 前記第1の半導体ナノ粒子が、
該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅相当分以上、前記第2の半導体ナノ粒子よりも小さいバンドギャップを有する請求項1に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。 - 前記第1の半導体ナノ粒子が、
前記第2の半導体ナノ粒子よりも長い発光ピーク波長を有する請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。 - 前記第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長と、前記第2の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長との差が、該第1の半導体ナノ粒子の発光ピーク波長の半値幅以上である請求項3に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
- 前記第1の半導体ナノ粒子と、前記第2の半導体ナノ粒子が、ともにコア/シェル構造を有する請求項1〜4のいずれかに記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
- 前記第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分およびシェル部分が、前記第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分およびシェル部分とそれぞれ同一の材質から構成され、且つ、
該第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分が、該第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分よりも大きな体積平均径を有する
請求項5に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。 - 前記第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の体積平均径と、前記第2の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の体積平均径との差が、
該第1の半導体ナノ粒子を構成するコア部分の発光ピーク波長の半値幅相当分以上である請求項6に記載の半導体ナノ粒子集積構造体。 - 体積平均径が50〜1000nmの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の半導体ナノ粒子集積構造体。
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