(実施形態1)
本実施形態では、MEMSデバイスの一例として、MEMS光スキャナを例示する。
以下、本実施形態のMEMSスキャナについて図1〜図3を参照しながら説明する。
本実施形態のMEMSスキャナは、MEMSチップCと、MEMSチップCが実装された実装基板5とを備えている。
ここにおいて、MEMSチップCは、半導体基板であるSOI基板100を用いて形成され、外周形状が矩形状の枠状(ここでは、矩形枠状)の外側フレーム部10、外側フレーム部10の内側に配置され平面視矩形状のミラー面(光学要素)21が設けられた平面視矩形状の可動部20、および外側フレーム部10の内側で可動部20を挟む形で配置され外側フレーム部10と可動部20とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部(機械要素)30,30を有するデバイス本体(ミラー形成基板)1と、第1のガラス基板200を用いて形成されデバイス本体1においてミラー面21が設けられた一表面側に接合された表面側保護基板(第1のカバー基板)2と、第2のガラス基板300を用いて形成されデバイス本体1の他表面側に接合された裏面側保護基板(第2のカバー基板)3とを備えている。
ここで、デバイス本体1、表面側保護基板2および裏面側保護基板3の外周形状は矩形状であり、表面側保護基板2および裏面側保護基板3はデバイス本体1と同じ外形寸法に形成されている。
上述のデバイス本体1は、導電性を有する第1のシリコン層(活性層)100aと第2のシリコン層(シリコン基板)100bとの間に絶縁層(SiO2層)100cが介在する上述のSOI基板100をバルクマイクロマシニング技術などにより加工することによって形成してある。また、表面側保護基板2は、それぞれパイレックス(登録商標)ガラスなどからなる2枚のガラス板を厚み方向に重ねて接合することにより形成した第1のガラス基板200を用いて形成してあり、裏面側保護基板3は、パイレックス(登録商標)ガラスなどからなる第2のガラス基板300を加工することにより形成してある。なお、SOI基板100は、第1のシリコン層100aの厚さを30μm、第2のシリコン層100bの厚さを400μmに設定し、第1のガラス基板200および第2のガラス基板300の厚さは、0.5mm〜1.5mm程度の範囲で設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、半導体基板たるSOI基板100の一表面である第1のシリコン層10cの表面は(100)面としてある。また、デバイス本体1の外形サイズは数mm□程度であるが、特に限定するものではない。
デバイス本体1の外側フレーム部10は、SOI基板100の第1のシリコン層100a、絶縁層100c、第2のシリコン層100bそれぞれを利用して形成してあり、外側フレーム部10のうち第1のシリコン層100aにより形成された部位が表面側保護基板2の外周部と全周に亘って接合され、外側フレーム部10のうち第2のシリコン層100cにより形成された部位が裏面側保護基板3の外周部と全周に亘って接合されており、上記一表面側において外側フレーム部10に、可動部20を駆動する後述の駆動手段に電気的に接続される2つのパッド13,13が形成されている。各パッド13,13は平面視形状が円形状であり、第1の金属膜(例えば、Al膜など)により構成されている。なお、本実施形態では、外側フレーム部10が、デバイス本体1の周部を構成している。また、本実施形態では、各パッド13,13の膜厚を500nmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
また、デバイス本体1の可動部20および各捩りばね部30,30は、SOI基板100の第1のシリコン層100aを用いて形成されており、外側フレーム部10よりも十分に薄肉となっている。また、可動部20に設けられたミラー面21は、可動部20において第1のシリコン層100aにより形成された部位上に形成した第2の金属膜(例えば、Al膜など)からなる反射膜21aの表面により構成されている。なお、本実施形態では、反射膜21aの膜厚を500nmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
以下では、図3(a),(b),(c)それぞれの左下に示すように、平面視において一対の捩りばね部30,30の並設方向に直交する方向をx軸方向、一対の捩りばね部30,30の並設方向をy軸方向、x軸方向およびy軸方向に直交する方向をz軸方向として説明する。
上述のデバイス本体1は、一対の捩りばね部30,30がy軸方向に並設されており、可動部20が、外側フレーム部10に対して一対の捩りばね部30,30の回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対の捩りばね部30,30は、外側フレーム部10に対して可動部20が揺動自在となるように外側フレーム部10と可動部20とを連結している。言い換えれば、外側フレーム部10の内側に配置される可動部20は、可動部20から相反する2方向へ連続一体に延長された2つの捩りばね部30,30を介して外側フレーム部10に揺動自在に支持されている。ここで、一対の捩りばね部30,30は、両者のy軸方向に沿った中心線同士を結ぶ直線が、平面視で可動部20の重心を通るように形成されている。なお、各捩りばね部30,30は、厚み寸法(z軸方向の寸法)を30μm、幅寸法(x軸方向の寸法)を、5μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、可動部20およびミラー面21の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、外側フレーム部10の内周形状も矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。
上述のデバイス本体1は、可動部20において一対の捩りばね部30,30を結ぶ方向(一対の捩りばね部30,30の並設方向)に直交する方向(つまり、x軸方向)の両側に形成された櫛形状の可動電極(電気要素)22と、外側フレーム部10に形成され可動電極22の複数の可動櫛歯片22bに対向する複数の固定櫛歯片12bを有する櫛形状の固定電極(電気要素)12とで構成され静電力により可動部20を駆動する静電駆動式の駆動手段を備えている。なお、本実施形態では、駆動手段が、静電力により可動部20を駆動するものであるが、静電力によって可動部20を駆動する静電駆動式に限らず、電磁力によって可動部20を駆動する電磁駆動式でもよいし、圧電素子(電気機械要素)によって可動部20を駆動する圧電駆動式でもよい。
上述の固定電極12,12は、平面視形状が櫛形状であり、櫛骨部12aが外側フレーム部10のうちy軸方向に沿った枠片部において第1のシリコン層100aにより形成された部位の一部により構成されており、櫛骨部12aにおける可動部20との対向面(外側フレーム部10におけるy軸方向に沿った内側面)には、第1のシリコン層100aの一部からなる多数の固定櫛歯片12bが一対の捩りばね部30,30の並設方向に沿って列設されている。一方、可動電極22,22は、可動部20における固定電極12の櫛骨部12a側の櫛骨部22a,22aの側面(可動部20におけるy軸方向に沿った側面)において、第1のシリコン層100aの一部により構成され固定櫛歯片12bにそれぞれ対向する多数の可動櫛歯片22bが上記並設方向に列設されている。ここで、櫛形状の固定電極12と櫛形状の可動電極22とは、櫛骨部12a,22aが互いに対向し、固定電極12の各固定櫛歯片12bが可動電極22の櫛溝に入り組んでおり、固定櫛歯片12bと可動櫛歯片22bとが、y軸方向において互いに離間しており、固定電極12と可動電極22との間に電圧が印加されることにより、固定電極12と可動電極22との間に互いに引き合う方向に作用する静電力が発生する。なお、y軸方向における固定櫛歯片12bと可動櫛歯片22bとの間の隙間は、例えば、5μm〜20μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
デバイス本体1の外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部位には、一方のパッド13(図1における右側のパッド13b)が固定電極12,12に電気的に接続されるとともに他方のパッド13(図1における左側のパッド13a)が可動電極22,22に電気的に接続され、且つ、固定電極12,12と可動電極22,22とが電気的に絶縁されるように、複数のスリット10a,10a,10aが絶縁層100cに達する深さで形成されている。ここで、本実施形態では、各スリット10a,10a,10aをトレンチとし、各スリット10a,10a,10aの平面視形状を外側フレーム部10の外側面側に開放されない形状とすることで、外側フレーム部10にスリット10a,10a,10aを形成した構造を採用しながらも、外側フレーム部10と第1のカバー基板2との接合性が低下するのを防止し、外側フレーム部10と表面側保護基板2と裏面側保護基板3とで囲まれる空間からなる気密空間の気密性を確保している。なお、各パッド13,13は、外部からの給電用に設けられたものであり、各パッド13の材料としては、第1のシリコン層100aに対してオーミック接触が可能な材料であり、且つ、ボンディングワイヤ6のボンディングが可能な材料を採用すればよく、例えば、AuやAl、Al−Siなどを採用すればよい。
外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部分は、上述のスリット10a,10a,10aを形成することにより、一端部が可動部20の外側面に連続一体に連結された各捩りばね部30,30それぞれの他端部が内側面に連続一体に連結された2つのアンカー部11aa,11abと、一方のアンカー部11aaと一方のパッド13aが形成された矩形状の島部11acと、上記一方のアンカー部11aaと島部11acとをつなぐ平面視L字状の導電部11adとで構成される第1の導電性構造体11aが、可動部20の可動電極22,22と同電位になり、残りの部分からなり他方のパッド13bが形成された第2の導電性構造体11bが固定電極12,12と同電位になる。
表面側保護基板2は、上述のように第1のガラス基板200を用いており、第1のガラス基板200の厚み方向に貫通して各パッド13,13それぞれを露出させる2つの貫通孔202,202が形成されている。ここにおいて、表面側保護基板2の各貫通孔202,202は、各パッド13,13それぞれを全周に亘って露出させる大きさであり、デバイス本体1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。ここで、表面側保護基板2の各貫通孔202,202は、サンドブラスト法により形成してあるが、サンドブラスト法に限定するものではなく、貫通孔202,202の形状によってはドリル加工法やエッチング法などを適宜採用してもよい。
本実施形態のMEMS光スキャナでは、各パッド13,13の平面視形状を直径が0.5mmの円形状としてあり、各貫通孔202,202のデバイス本体1側での開口径が0.5mmよりも大きくなるようにしてあるが、各パッド13,13の直径は特に限定するものではなく、また、必ずしも円形状とする必要はなく、例えば、正方形状としてもよいが、貫通孔202,202の開口径を小さくするうえでは円形状の方が正方形状よりも好ましい。
ここにおいて、各パッド13,13の一部が厚み方向において表面側保護基板2に重なる場合には、パッド13,13の厚みの影響で接合性や気密性が損なわれて製造時の歩留まり低下や、動作安定性の低下、経時安定性の低下の原因となる懸念があり、外側フレーム部10の幅寸法(外側フレーム部10の外側面と内側面との距離)を増大させる必要が生じてMEMSチップCの小型化が制限されてしまうことが考えられる。
これに対して、本実施形態のMEMSスキャナでは、表面側保護基板2が各パッド13,13と重なることがなく、表面側保護基板2と外側フレーム部10との間にパッド13,13の一部が介在することもないので、表面側保護基板2とデバイス本体1の外側フレーム部10との接合が各パッド13,13により妨げられるのを防止することができるから、パッド13,13の厚みの影響で接合性や気密性が損なわれるのを防止することができ、外側フレーム部10の幅寸法を増大させずに歩留まりの向上による低コスト化を図れるとともに、動作安定性の低下、経時安定性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態のMEMS光スキャナでは、デバイス本体1の外側フレーム部10と表面側保護基板2と裏面側保護基板3とで囲まれる気密空間を真空とすることで、低消費電力化を図りつつ可動部20の機械振れ角を大きくすることが可能となるので、上記気密空間を真空とするとともに、裏面側保護基板3におけるミラー形成基板1との対向面において外側フレーム部10に接合される部位よりも内側の適宜部位(上記気密空間に臨む部位)にゲッタ4を配置してある。なお、ゲッタ4としては、非蒸発型ゲッタが好ましく、例えば、Zrを主成分とする合金やTiを主成分とする合金などにより形成すればよい。
ところで、表面側保護基板2の基礎となる第1のガラス基板200は、デバイス本体1との対向面に可動部20の変位空間を確保する変位空間形成用凹部(以下、第1の変位空間形成用凹部と称する)201を有しているが、上述のように2枚のガラス板を接合して形成されており、デバイス本体1に近い側に配置するガラス板(以下、第1のガラス板と称する)において第1の変位空間形成用凹部201に対応する部位に厚み方向に貫通する開孔部を形成するとともにデバイス本体1から遠い側に配置するガラス板(以下、第2のガラス板と称する)を平板状としてあるので、1枚のガラス基板を用いて当該ガラス基板にサンドブラスト加工などにより第1の変位空間形成用凹部201を形成する場合に比べて、第1の変位空間形成用凹部201の内底面を滑らかな表面とすることができ、第1の変位空間形成用凹部201の内底面での拡散反射、光拡散、散乱損失などを低減できる。なお、表面側保護基板2は、MEMSデバイスの光学要素(本実施形態では、ミラー面21)で扱う光(本実施形態では、走査対象の光)に対して透明な基板を用いて形成すればよく、可視光から近赤外光の波長域の光を扱う場合には、ガラス基板を用いることが好ましく、赤外光を扱う場合にはシリコン基板を用いることが好ましい。ここにおいて、光学要素で光を扱うとは、対象の光を反射することに限らず、例えば、対象の光を受光して光電変換することや、発光素子からなる光学要素から光を放射させることも含む概念である。
裏面側保護基板3は、第2のガラス基板300を用いて形成されており、第2のガラス基板300におけるデバイス本体1側の一表面に、凹部301を形成してあり、当該凹部301が、可動部20の変位空間を確保するための第2の変位空間形成用凹部を兼ねるとともにゲッタ4の収納部を兼ねている(凹部301の内底面上にフィルム状のゲッタ4を配置してある)が、半導体基板を構成するSOI基板100の第2のシリコン層100bの厚みなどによっては、厚み方向の両面を平面状としてもよい。ここにおいて、第2のガラス基板300の上記一表面に凹部301を形成する場合は、例えば、サンドブラスト法などにより形成すればよい。また、裏面側保護基板3についても、表面側保護基板2と同様、2枚のガラス板を接合して形成してもよく、デバイス本体1に近い側に配置するガラス板(以下、第3のガラス板と称する)において凹部301に対応する部位に厚み方向に貫通する開孔部を形成するとともにデバイス本体1から遠い側に配置するガラス板(以下、第4のガラス板と称する)を平板状としてもよい。なお、裏面側保護基板3は、光を透過させる必要がないので、第2のガラス基板300に限らず、デバイス本体1との接合が容易で且つ半導体基板(SOI基板100)の材料であるSiとの線膨張率差が小さな材料により形成された基板であればよく、例えば、シリコン基板を用いて形成してもよく、この場合の凹部301は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して形成すればよい。
なお、上述の各ガラス基板200,300のガラス材料としては、デバイス本体1との接合が容易で且つ半導体基板(SOI基板100)の材料であるSiとの線膨張率差が小さな硼珪酸ガラスが好ましく、例えば、コーニング社のパイレックス(登録商標)やショット社のテンパックス(登録商標)などを採用すればよいが、硼珪酸ガラスに限らず、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどを採用してもよい。また、本実施形態では、表面側保護基板2および裏面側保護基板3の厚さを0.5mm〜1.5mm程度の範囲で設定し、第1の変位空間形成用凹部201および凹部301の深さを300μm〜800μmの範囲で設定してあるが、これらの数値は一例であり、可動部20のz軸方向への変位量に応じて適宜設定すればよく(つまり、可動部20の回動運動を妨げない深さであればよく)、特に限定するものではない。
次に、本実施形態のMEMS光スキャナの動作について簡単に説明する。
本実施形態のMEMS光スキャナでは、一対のパッド13,13を通して、対向する可動電極22と固定電極12との間に可動部20を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、可動電極22・固定電極12間に静電力が発生し、可動部20がy軸方向の軸回りで回動する。しかして、本実施形態のMEMS光スキャナでは、可動電極22・固定電極12間に所定の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20を揺動させることができる。
ここで、上述の可動部20は、内部応力に起因して、静止状態でも水平姿勢(xy平面に平行な姿勢)ではなく、きわめて僅かであるが傾いているので、例えば、可動電極22・固定電極12間にパルス電圧が印加されると、静止状態からであっても、可動部20に略垂直な方向(z軸方向)の駆動力が加わり、可動部20が一対の捩りばね部30,30を回動軸として当該一対の捩りばね部30,30を捩りながら回動する。そして、可動電極22・固定電極12間の駆動力を、可動櫛歯片22bと固定櫛歯片12bとが完全に重なりあうような姿勢となったときに解除すると、可動部20は、慣性力により、一対の捩りばね部30,30を捩りながら回動し続ける。そして、可動部20の回動方向への慣性力と、一対の捩りばね部30,30の復元力とが等しくなったとき、当該回動方向への可動部20の回動が停止する。このとき、可動電極22・固定電極12間に再びパルス電圧が印加されて静電力が発生すると、可動部20は、一対の捩りばね部30,30の復元力と可動電極22および固定電極12により構成される駆動手段の駆動力により、それまでとは逆の方向への回動を開始する。可動部20は、駆動手段の駆動力と一対の捩りばね部30,30の復元力とによる回動を繰り返して、一対の捩りばね部30,30を回動軸として揺動する。
本実施形態のMEMS光スキャナでは、可動部20と一対の捩りばね部30,30とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、可動部20が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(xy平面に平行な水平面を基準としたときの傾き)が大きくなる。なお、可動電極22・固定電極12間への電圧(駆動電圧)の印加形態や周波数は特に限定するものではなく、例えば、可動電極22・固定電極12間に印加する電圧を正弦波電圧としてもよい。
以下、本実施形態のMEMS光スキャナにおけるMEMSチップCの製造方法について図4を参照しながら説明するが、(a)〜(d)は図3(a)のA−B’断面に対応する部分の概略断面を示している。
まず、半導体基板であるSOI基板100の上記一表面側に所定膜厚(例えば、500nm)の金属膜(例えば、Al膜)をスパッタ法や蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行い、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることにより各パッド13,13および反射膜21aを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図4(a)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、各パッド13,13と反射膜21aとの材料および膜厚を同じに設定してあるので、各パッド13,13と反射膜21aとを同時に形成しているが、各パッド13,13と反射膜21aとの材料や膜厚が相違する場合には、各パッド13,13を形成するパッド形成工程と反射膜を形成する反射膜形成工程とを別々に設ければよく、パッド形成工程と反射膜形成工程との順序はどちらが先でもよい。
上述の各パッド13,13および反射膜21aを形成した後、SOI基板100の上記一表面側で、第1のシリコン層100aのうち可動部20、一対の捩りばね部30,30、外側フレーム部10、固定電極12,12、可動電極22,22に対応する部位を覆うようにパターニングされた第1のレジスト層130をマスクとして、第1のシリコン層100aを絶縁層100cに達する深さ(第1の所定深さ)までエッチングすることにより第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程(表面側パターニング工程)を行うことによって、図4(b)に示す構造を得る。要するに、第1のシリコン層パターニング工程は、半導体基板であるSOI基板100を上記一表面から第1の所定深さまでエッチングする表面側パターニング工程を構成している。第1のシリコン層パターニング工程での第1のシリコン層100aのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性の高いエッチングが可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第1のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
上述の第1のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の上記一表面側の第1のレジスト層130を除去してから、SOI基板100の上記一表面側の全面に第2のレジスト層131を形成し、続いて、SOI基板100の他表面側で、第2のシリコン層100bのうち外側フレーム部10に対応する部位以外を露出させるようにパターニングされた第3のレジスト層132をマスクとして、第2のシリコン層100bを絶縁層100cに達する深さ(第2の所定深さ)までエッチングすることにより第2のシリコン層100bをパターニングする第2のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図4(c)に示す構造を得る。要するに、第2のシリコン層パターニング工程は、半導体基板であるSOI基板100を上記他表面から第2の所定深さまでエッチングする裏面側パターニング工程を構成している。第2のシリコン層パターニング工程での第2のシリコン層100bのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性が高く垂直深堀が可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
上述の第2のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の絶縁層100cにおいて外側フレーム部10と可動部20との間の部位、可動電極22,22と固定電極12,12との間の部位を、SOI基板100の上記他表面側からエッチングする絶縁層パターニング工程を行うことでデバイス本体1を形成してから、第2のレジスト層131および第3のレジスト層132を除去し、その後、デバイス本体1と、表面側保護基板2および裏面側保護基板3とを陽極接合などにより接合する接合工程を行うことによって、図4(d)に示す構造のMEMSチップCを得る。
ここにおいて、接合工程では、デバイス本体1のミラー面21を保護する観点から、表面側保護基板2とデバイス本体1とを接合する第1の接合過程を行ってから、デバイス本体11と裏面側保護基板3とを接合する第2の接合過程を行うことが好ましい。ここで、第1の接合過程では、先ず、第1のガラス基板200に第1の変位空間形成用凹部201や各貫通孔202,202および後述の溝部203,203を形成した表面側保護基板2とデバイス本体1とを重ねた積層体を、所定真空度(例えば、10Pa以下)の真空中で所定の接合温度(例えば、300℃〜400℃程度)に加熱した状態で、第1のシリコン層100aと表面側保護基板2との間に表面側保護基板2側を低電位側として所定電圧(例えば、400V〜800V程度)を印加し、この状態を所定の接合時間(例えば、20分〜60分程度)だけ保持すればよい。また、第2の接合過程では、上述の第1の接合過程に準じて、第2のシリコン層100bと裏面側保護基板3との陽極接合を行う。なお、デバイス本体1と表面側保護基板2および裏面側保護基板3を接合する接合方法は、陽極接合に限らず、例えば、常温接合法などでもよい。また、第1のシリコン層パターニング工程の後に、SOI基板100と表面側保護基板2とを接合し、その後、第2のシリコン層パターニング工程、絶縁層パターニング工程を行うことでデバイス本体1を形成し、その後、デバイス本体1と裏面側保護基板3とを接合するようにしてもよい。
以上説明したMEMSチップCの製造方法では、接合工程が終了するまでの全工程をデバイス本体1、表面側保護基板2および裏面側保護基板3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMSチップCを複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMSチップCに分割する分割工程を行うようにしている。要するに、本実施形態におけるMEMSチップCの製造方法では、デバイス本体1を複数形成した第1のウェハと、表面側保護基板2を複数形成した第2のウェハおよび裏面側保護基板3を複数形成した第3のウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からデバイス本体1の外形サイズに分割するようにしているので、表面側保護基板2および裏面側保護基板3の平面サイズをデバイス本体1の外形サイズに合わせることができるから、小型のMEMSチップCの量産性を高めることができる。
また、上述の実装基板5は、MEMSチップCの各パッド13それぞれが各別の金属細線からなるボンディングワイヤ6を介して電気的に接続される複数の導体パターン(電極)502が一表面側に形成されている。ここで、ボンディングワイヤ6を構成する金属細線としては、例えば、Au細線や、1%Si−Al線、1%Mg−Al線などAl−Si細線を用いることができるが、導電性に優れたAu細線が好ましい。また、導体パターン502の材料は、耐酸化性の高い金属であれば特に限定するものではないが、ボンディングワイヤ6との接合性の観点からAuが好ましい。
また、実装基板5は、プリント配線板などの配線基板(回路基板)に対して2次実装するにあたって、表面実装できるように、側面(側面に形成された切欠部の内面)と裏面とに跨って連続する導体パターン(端子パターン)からなる外部接続電極504が形成されており、上記配線基板に2次実装する場合に半田フィレットを形成でき、実装強度の向上を図れる。なお、各導体パターン502と外部接続電極504とを電気的に接続する配線用導体パターン503も形成されているが、導体パターン502と外部接続電極504とが連続して形成されるような配置にすれば、配線用導体パターン503は設ける必要はない。なお、外部接続電極504および配線用導体パターン503の材料は、導体パターン502と同様、Auが好ましい。
ところで、MEMSチップCの表面側保護基板2は、上述のように、デバイス本体1の各パッド13それぞれを全周に亘って露出させる複数(ここでは、2つ)の貫通孔202が形成されているが、さらに、各貫通孔202それぞれに各別に連通するととともに貫通孔202側とは反対側が開放されデバイス本体1のパッド13と実装基板5の導体パターン502とを電気的に接続するボンディングワイヤ6を通す複数(ここでは、2つ)の溝部203が形成されている。ここにおいて、実装基板5の各導体パターン502は、MEMSチップCにおけるデバイス本体1の対応するパッド13(ボンディングワイヤ6を介して電気的に接続さるパッド13)との距離が短くなるように配置されており、溝部203は、1対1で対応するパッド13と導体パターン502との並び方向に沿って走るように形成されている。溝部203の深さ寸法は、当該溝部203に通したボンディングワイヤ6が、表面側保護基板2の表面を含む平面から突出しないようにボンディングワイヤ6を退避させる(隠す)ことができる値であればよい。さらに、溝部203について説明すれば、デバイス本体1の構造によっては、溝部203を表面側保護基板2の厚み方向に貫通する形で形成してもよいが、デバイス本体1と表面側保護基板2との接合面積や、MEMSチップC内部の気密性の観点から、貫通していないことが好ましく、溝部203の深さ寸法は、貫通孔203の長さ寸法よりも200μm〜400μm程度小さいことが好ましい。特に本実施形態では、図1における左側のパッド13(13a)の周りに、スリット10aの一部が形成されているので、気密性を確保するために、少なくとも、図1における左側の溝部203は、表面側保護基板2の厚み方向に貫通しない形で形成する必要がある。なお、溝部203の幅寸法は、ボンディングワイヤ6を通すことができる寸法であればよく、本実施形態では、表面側保護基板2の表面における貫通孔202の開口径よりも小さな値に設定してあるが、幅寸法は特に限定するものではない。また、溝部203の開口形状も特に限定するものではなく、溝部203の内側面がテーパ面となっていてもよい。また、表面側保護基板2の溝部203は、ドリル加工法により形成してあるが、これに限らず、例えば、サンドブラスト法やエッチング法などにより形成してもよく、表面側保護基板2の材料や溝部203の所望の開口形状に応じて適宜採用すればよい。
また、実装基板5は、中央部に、導体パターン502を含む平面よりも凹んだ凹部501が形成されており、当該凹部501の内底面にMEMSチップCが搭載されているので、凹部501の深さ寸法を適宜設定することにより、デバイス本体1の厚み方向に沿った方向におけるパッド13と導体パターン502との高低差を低減でき、ボンディングワイヤ6が溝部203の両端で表面側保護基板2に接触するのを防止することができる。ここで、凹部501の深さ寸法は、MEMSチップCの裏面からパッド13表面までの高さに応じて適宜設定すればよく、例えば、数百μm〜1mm程度の範囲で適宜設定すればよい。言い換えれば、実装基板5の凹部501の深さ寸法を適宜設定することにより、デバイス本体1の厚み方向に沿った方向におけるパッド13と導体パターン502との高低差を調整することができる。なお、MEMSチップCは、実装基板5に対して、ダイボンド材を用いて接着されている(ダイボンドされている)。ダイボンド材としては、例えば、樹脂系のダイボンド材(例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂など)を採用すればよいが、実装基板5の凹部501の内底面からパッド13表面までの高さ寸法の精度を高めるために例えば多数の球状のスペーサを混ぜた樹脂を用いてもよい。また、実装基板5は、セラミック基板により形成されているが、特にセラミック基板に限定するものではない。
ところで、本実施形態のMEMSデバイスでは、図2(b)に示すように、デバイス本体1の厚み方向(図2(b)における上下方向)において、デバイス本体1のパッド13の表面が、実装基板5の導体パターン502の表面よりも所定長さ(例えば、200μm〜500μm程度)だけ低い位置となるように実装基板5の凹部501の深さ寸法を設定することが好ましく、このような構成にすることで、ボンディングワイヤ6が、溝部203の両端で表面側保護基板2に接触するのを防止することができ、良好なワイヤボンディングを実現することができる。さらに、良好なワイヤボンディングを実現するためには、溝部203の深さ寸法よりも、表面側保護基板2の表面における貫通孔202の開口径を大きくすることが好ましい。
本実施形態のMEMSデバイスの製造にあたっては、上述のMEMSチップCの製造方法により製造されたMEMSチップCを実装基板5に接着することで実装基板5に搭載するチップ搭載工程を行い、その後、MEMSチップCにおけるデバイス本体1のパッド13と実装基板5の導体パターン502とをボンディングワイヤ6を介して電気的に接続するワイヤボンディング工程を行うようにすればよく、当該ワイヤボンディング工程において、ボンディングワイヤ6を表面側保護基板2の溝部203に通すようにしている。
以上説明した本実施形態のMEMSデバイス(MEMSスキャナ)によれば、表面側保護基板2は、デバイス本体1の各パッド13それぞれを全周に亘って露出させる複数の貫通孔202が形成され、且つ、各貫通孔202それぞれに各別に連通するととともに貫通孔202側とは反対側が開放されデバイス本体1のパッド13と実装基板5の導体パターン502とを電気的に接続するボンディングワイヤを通す複数の溝部203が形成されているので、表面側保護基板2の表面よりもボンディングワイヤ6が突出するのを防止することができ、デバイス本体1に不要な応力がかかるのを抑制しつつ、外部物体との接触によるボンディングワイヤ6の破損を防止することが可能となる。
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、MEMSチップCにおいて、デバイス本体1の周部を構成する外側フレーム部10と表面側保護基板2と裏面側保護基板3とで囲まれた空間が気密空間であり、しかも、表面側保護基板2が各パッド13と重なることがなく、表面側保護基板2とデバイス本体1との間に各パッド13の一部が介在することもないので、表面側保護基板2とデバイス本体1との接合が各パッド13により妨げられるのを防止することができるから、各パッド13の厚みの影響で接合性や気密性が損なわれるのを防止することができ、デバイス本体1の小型化を図れるとともに、動作安定性の低下、経時安定性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、MEMSチップCの上記気密空間を真空雰囲気としてあり、裏面側保護基板3において上記気密空間に臨む部位にゲッタ4が配置されているので、上記気密空間の真空度を高めることができるとともに、上記気密空間の真空度の変化を抑制することができ、真空度の変化に起因したデバイス特性(本実施形態では、可動部20の機械振れ角)の変化を防止することができる。なお、MEMSチップCの構造によっては、表面側保護基板2において上記気密空間に臨む部位にゲッタ4を配置するようにしてもよいし、表面側保護基板2と裏面側保護基板3の両方にゲッタ4を配置するようにしてもよい。
ところで、上述のMEMSデバイスにおいて、図5に示すように、各溝部203それぞれに各別に充填されボンディングワイヤ6を保護する樹脂からなる複数の保護部7を設けてもよい。なお、保護部7の材料である樹脂としては、熱硬化型ものを用いているが、熱硬化型に限らず、紫外線硬化型のものや、紫外線・熱併用硬化型のものを用いてもよい。
図5の構成のMEMSデバイスでは、ボンディングワイヤ6を少量の樹脂により保護することができ、しかも、貫通孔202が樹脂溜まりとしての機能を有することとなり、樹脂が表面側保護基板2の表面上に広がるのを抑制することが可能となる。なお、保護部7の形成にあたっては、ディスペンサなどを利用して溝部203に樹脂を充填すればよい。
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、SOI基板100の第1のシリコン層100aにより各捩りばね部30,30を形成してあるので、半導体基板としてシリコン基板を用いる場合に比べて各捩りばね部30,30の厚み寸法の精度を高めることができ、可動部20と一対の捩りばね部30,30とで構成される振動系の共振周波数の精度を高めることができる。
(実施形態2)
本実施形態では、MEMSデバイスの一例として、実施形態1と同様、MEMS光スキャナを例示する。
以下、本実施形態のMEMS光スキャナについて図6〜図8を参照しながら説明する。
本実施形態のMEMS光スキャナの基本構成は実施形態1と略同じであって、可動部20および裏面側保護基板3などの構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態では、可動部20が、外側フレーム部10に一対の捩りばね部30,30(以下、第1の捩りばね部30,30と称する)を介して揺動自在に支持された枠状(ここでは、矩形枠状)の可動フレーム部23と、可動フレーム部23の内側に配置されミラー面21が設けられた平面視矩形状のミラー部24と、可動フレーム部23の内側でミラー部24を挟む形で配置され可動フレーム部23とミラー部24とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部25,25(以下、第2の捩りばね部25,25と称する)とを有している。
第2の捩りばね部25,25は、第1の捩りばね部30,30の並設方向(y軸方向)とは直交する方向(x軸方向)に並設されている。要するに、可動部20は、一対の第2の捩りばね部25,25がx軸方向に並設されており、ミラー部24が、可動フレーム部23に対して一対の第2の捩りばね部25,25の回りで変位可能となっている(x軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対の第2の捩りばね部25,25は、可動フレーム部23に対してミラー部24が揺動自在となるように可動フレーム部23とミラー部24とを連結している。言い換えれば、可動フレーム部23の内側に配置されるミラー部24は、ミラー部24から相反する2方向へ連続一体に延長された2つの第2の捩りばね部25,25を介して可動フレーム部23に揺動自在に支持されている。ここで、一対の第2の捩りばね部25,25は、両者のx軸方向に沿った中心線同士を結ぶ直線が、平面視でミラー部24の重心を通るように形成されている。なお、各第2の捩りばね部25,25は、厚み寸法(z軸方向の寸法)を30μm、幅寸法(y軸方向の寸法)を、30μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、ミラー部24およびミラー面21の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、可動フレーム部23の内周形状も矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。
上述の説明から分かるように、ミラー部24は、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りの回動と、一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りの回動とが可能である。要するに、ミラー部24のミラー面21が、2次元的に回動可能に構成されている。ここにおいて、可動部20は、可動フレーム部23における表面側保護基板2側とは反対側に一体に設けられ可動フレーム部23を支持する枠状の支持体29を備えており、当該支持体29が可動フレーム部23と一体に回動可能となっている。
そこで、裏面側保護基板3は、第2のガラス基板300におけるデバイス本体1側の上記一表面に、可動部20の変位空間を確保するための第2の変位空間形成用凹部301を形成してある。
また、本実施形態では、外側フレーム部10に、3つのパッド13,13,13が平面視において一直線上に並ぶように略等間隔で並設されており、表面側保護基板2に、各パッド13,13,13それぞれを各別に露出させる3つのテーパ状の貫通孔202,202,202が貫設され、各貫通孔202ごとに貫通孔202に連通する溝部203が形成されている。
また、本実施形態のMEMS光スキャナにおけるデバイス本体1は、実施形態1と同様、可動部20において一対の第1の捩りばね部30,30を結ぶ方向(一対の第1の捩りばね部30,30の並設方向)に直交する方向(つまり、x軸方向)の両側に形成された櫛形状の可動電極22,22(以下、第1の可動電極22,22と称する)と、外側フレーム部10に形成され第1の可動電極22,22の複数の可動櫛歯片22bに対向する複数の固定櫛歯片12bを有する櫛形状の固定電極12,12(以下、第1の固定電極12,12と称する)とを備えているだけでなく、さらに、ミラー部24において一対の第2の捩りばね部25,25を結ぶ方向(一対の第2の捩りばね部25,25の並設方向)に直交する方向(つまり、y軸方向)の両側に形成された櫛形状の第2の可動電極27,27と、可動フレーム部23に形成され第2の可動電極27,27の複数の可動櫛歯片27bに対向する複数の固定櫛歯片26bを有する櫛形状の第2の固定電極26,26とを備えており、第1の可動電極22,22と第1の固定電極12,12との組、第2の可動電極27,27と第2の固定電極26,26との組、それぞれが静電力により可動部20を駆動する静電駆動式の駆動手段を構成している。
上述の第2の固定電極26,26は、平面視形状が櫛形状であり、櫛骨部26aが可動フレーム部23の一部により構成されており、櫛骨部26aにおけるミラー部24との対向面(可動フレーム部23におけるx軸方向に沿った内側面)には多数の固定櫛歯片26bが一対の第2の捩りばね部25,25の並設方向に沿って列設されている。一方、第2の可動電極27,27はミラー部24の一部により構成されており、第2の固定電極26,26の櫛骨部26a,26a側の側面(ミラー部24におけるx軸方向に沿った側面)には、固定櫛歯片26bにそれぞれ対向する多数の可動櫛歯片27bが上記並設方向に列設されている。ここで、櫛形状の第2の固定電極26と櫛形状の第2の可動電極27とは、櫛骨部26a,27aが互いに対向し、第2の固定電極26の各固定櫛歯片26bが第2の可動電極27の櫛溝に入り組んでおり、固定櫛歯片26bと可動櫛歯片27bとが、x軸方向において互いに離間しており、第2の固定電極26と第2の可動電極22との間に電圧が印加されることにより、第2の固定電極26と第2の可動電極27との間に互いに引き合う方向に作用する静電力が発生する。なお、x軸方向における固定櫛歯片26bと可動櫛歯片27bとの間の隙間は、例えば、2μm〜5μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
デバイス本体1は、外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部位に複数のスリット10a,10a,10aを形成するとともに、可動部20の可動フレーム部23において第1のシリコン層100aにより形成された部位に複数のスリット20a,20a,20a,20aを形成することにより、3つのパッド13,13,13のうち図6における真ん中のパッド13(13b)が第1の固定電極12,12と電気的に接続されて同電位となり、右側のパッド13(13a)が第1の可動電極22,22および第2の可動電極26,26と電気的に接続されて同電位となり、左側のパッド13(13c)がミラー部24の第2の可動電極27,27と電気的に接続されて同電位となっている。
ここで、外側フレーム部10の複数のスリット10a,10a,10aは絶縁層100cに達する深さで形成されている。本実施形態においても、実施形態1と同様、各スリット10a,10a,10aをトレンチとし、各スリット10a,10a,10aの平面視形状を外側フレーム部10の外側面側に開放されない形状とすることで、外側フレーム部10にスリット10a,10a,10aを形成した構造を採用しながらも、外側フレーム部10と表面側保護基板2との接合性が低下するのを防止し、外側フレーム部10と表面側保護基板2と裏面側保護基板3とで囲まれる空間の気密性を確保している。
また、可動部20における可動フレーム部23の各スリット20a,20a,20a,20aは、トレンチとしてあり、SOI基板100の絶縁層100cの一部と第2のシリコン層100bの一部とで構成される上述の支持体29における絶縁層100cに達する深さに形成してある。要するに、本実施形態では、可動フレーム部23に複数のスリット20a,20a,20a,20aを形成した構成を採用しながらも支持体29により可動フレーム部23を支持しているので、可動フレーム部23と支持体29とが、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りで一体に回動可能となっている。ここにおいて、支持体29は、可動フレーム部23のうち各固定櫛歯片26bおよび各可動櫛歯片22bを除く部位を覆う枠状(矩形枠状)に形成されている(図8参照)。また、可動フレーム部23の複数のトレンチ20a,20a,20a,20aは、支持体29を含めた可動部20の重心が、平面視において一対の第1の捩りばね部30,30のy軸方向に沿った中心線を結ぶ直線の略真ん中に位置するように形状設計してある。しかして、可動部20が一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りでスムーズに揺動し、反射光のスキャンが適正に行われる。なお、本実施形態では、支持体29において第2のシリコン層100bにより構成される部位の厚さを外側フレーム部10において第2のシリコン層100bにより構成される部位と同じ厚さに設定してあるが、同じに限らず、厚くしてもよいし薄くしてもよい。
本実施形態のMEMS光スキャナでは、例えば、第1の可動電極22および第2の固定電極26が電気的に接続されたパッド13aの電位を基準電位として、第1の固定電極12および第2の可動電極27それぞれの電位を周期的に変化させることにより、可動部20を一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りで回動させることができるとともに、ミラー部24を一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りで回動させることができる。要するに、一対のパッド13b,13aを通して、対向する第1の固定電極12と可動電極22との間に可動部20を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に静電力が発生し、可動部20がy軸方向の軸回りで回動し、また、一対のパッド13a,13cを通して、対向する第2の固定電極26と第2の可動電極27との間にミラー部24を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に静電力が発生し、ミラー部24がx軸方向の軸回りで回動する。しかして、本実施形態のMEMS光スキャナでは、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に所定の第1の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20全体を揺動させることができ、さらに、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に所定の第2の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20のミラー部24を揺動させることができる。なお、本実施形態におけるデバイス本体1は、外側フレーム部10と表面側保護基板2とで囲まれた空間側において、第1のシリコン層100aの反射膜21aが形成されていない部位の表面に、シリコン酸化膜111a(図9(f)参照)が形成されている。
本実施形態のMEMS光スキャナでは、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に、可動部20と一対の第1の捩りばね部30,30とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、可動部20が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(xy平面に平行な水平面を基準としたときの傾き)が大きくなる。また、本実施形態のMEMS光スキャナでは、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に、ミラー部24と一対の第2の捩りばね部25,25とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、ミラー部24が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(可動フレーム部23における表面側保護基板2側の表面に平行な面を基準としたときの傾き)が大きくなる。
以下、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法について図9を参照しながら説明するが、(a)〜(d)は図6のA−B断面に対応する部分の概略断面を示している。
まず、半導体基板であるSOI基板100の上記一表面側および上記他表面側それぞれに熱酸化法などによりシリコン酸化膜111a,111bを形成する酸化膜形成工程を行うことによって、図9(a)に示す構造を得る。
その後、SOI基板100の上記一表面側のシリコン酸化膜111aのうち可動部20において反射膜21aの形成予定領域以外の部分、第1の捩りばね部30,30などに対応する部位などが残るようにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図9(b)に示す構造を得る。
その後、SOI基板100の上記一表面側に所定膜厚(例えば、500nm)の金属膜(例えば、Al膜など)をスパッタ法や蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行い、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることにより各パッド13,13および反射膜21aを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図9(c)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、各パッド13,13と反射膜21aとの材料および膜厚を同じに設定してあるので、各パッド13,13と反射膜21aとを同時に形成しているが、各パッド13,13と反射膜21aとの材料や膜厚が相違する場合には、各パッド13,13を形成するパッド形成工程と反射膜を形成する反射膜形成工程とを別々に設ければよい。
上述の各パッド13,13および反射膜21aを形成した後、SOI基板100の上記一表面側で、第1のシリコン層100aのうち可動フレーム部23、ミラー部24、一対の第1の捩りばね部30,30、一対の第2の捩りばね部25,25、外側フレーム部10、第1の固定電極12,12、第2の可動電極22,22、第2の固定電極26,26、第2の可動電極27,27に対応する部位を覆うようにパターニングされた第1のレジスト層130をマスクとして、第1のシリコン層100aを絶縁層100cに達する深さ(第1の所定深さ)までエッチングすることにより第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程(表面側パターニング工程)を行うことによって、図9(d)に示す構造を得る。第1のシリコン層パターニング工程での第1のシリコン層100aのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性の高いエッチングが可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第1のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
上述の第1のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の上記一表面側の第1のレジスト層130を除去してから、SOI基板100の上記一表面側の全面に第2のレジスト層131を形成し、続いて、SOI基板100の他表面側で、第2のシリコン層100bのうち外側フレーム部10、支持体29に対応する部位以外を露出させるようにパターニングされた第3のレジスト層132をマスクとして、第2のシリコン層100bを絶縁層100cに達する深さ(第2の所定深さ)までエッチングすることにより第2のシリコン層100bをパターニングする第2のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図9(e)に示す構造を得る。第2のシリコン層パターニング工程での第2のシリコン層100bのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性が高く垂直深堀が可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
上述の第2のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の絶縁層100cの不要部分をSOI基板100の上記他表面側からエッチングする絶縁層パターニング工程を行うことでデバイス本体1を形成し、続いて、第2のレジスト層131および第3のレジスト層132を除去し、その後、デバイス本体1と、表面側保護基板2および裏面側保護基板3とを陽極接合などにより接合する接合工程を行うことによって、図9(f)に示す構造のMEMSチップCを得る。ここにおいて、接合工程では、デバイス本体1のミラー面21を保護する観点から、表面側保護基板2とデバイス本体1とを接合する第1の接合過程を行ってから、デバイス本体1と裏面側保護基板3とを接合する第2の接合過程を行うことが好ましい。なお、第1のシリコン層パターニング工程の後に、SOI基板100と表面側保護基板2とを接合し、その後、第2のシリコン層パターニング工程、絶縁層パターニング工程を行うことでデバイス本体1を形成し、その後、デバイス本体1と裏面側保護基板3とを接合するようにしてもよい。
ところで、本実施形態におけるMEMSチップCの製造方法では、微細周期構造形成工程が終了するまでの全工程をデバイス本体1、表面側保護基板2および裏面側保護基板3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMS光スキャナを複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMS光スキャナに分割する分割工程を行うようにしている。要するに、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法では、デバイス本体1を複数形成した第1のウェハと、表面側保護基板2を複数形成した第2のウェハおよび裏面側保護基板3を複数形成した第3のウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体の各表面側保護基板2における各デバイス本体1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより各微細周期構造を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からデバイス本体1の外形サイズに分割するようにしているので、表面側保護基板2および裏面側保護基板3の平面サイズをデバイス本体1の外形サイズに合わせることができるから、微細周期構造を備えた小型のMEMS光スキャナを簡易なプロセスで製造することができ、また、量産性を高めることができる。
以上説明した本実施形態のMEMS光スキャナでは、実施形態1と同様、接合工程が終了するまでの全工程をデバイス本体1、表面側保護基板2および裏面側保護基板3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMSチップCを複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMSチップCに分割する分割工程を行うようにしている。
以上説明した本実施形態のMEMSデバイス(MEMSスキャナ)によれば、実施形態1と同様、表面側保護基板2は、デバイス本体1の各パッド13それぞれを全周に亘って露出させる複数の貫通孔202が形成され、且つ、各貫通孔202それぞれに各別に連通するととともに貫通孔202側とは反対側が開放されデバイス本体1のパッド13と実装基板5の導体パターン502とを電気的に接続するボンディングワイヤを通す複数の溝部203が形成されているので、表面側保護基板2の表面よりもボンディングワイヤ6が突出するのを防止することができ、デバイス本体1に不要な応力がかかるのを抑制しつつ、外部物体との接触によるボンディングワイヤ6の破損を防止することが可能となる。
また、上述のMEMSデバイスにおいて、図10に示すように、各溝部203それぞれに各別に充填されボンディングワイヤ6を保護する樹脂からなる複数(ここでは、3つ)の保護部7を設けてもよく、ボンディングワイヤ6を少量の樹脂により保護することができ、しかも、貫通孔202が樹脂溜まりとしての機能を有することとなり、樹脂が表面側保護基板2の表面上に広がるのを抑制することが可能となる。
ところで、上記各実施形態では、MEMSデバイスの一例としてMEMS光スキャナについて例示したが、MEMSデバイスは、MEMS光スキャナに限らず、例えば、加速度センサやジャイロセンサ、マイクロリレー、振動エネルギを電気エネルギに変換する振動式の発電デバイス、圧電層の厚み方向の縦振動モードを利用する共振子を備えたBAW(Bulk Acoustic Wave)共振装置、赤外線センサなどでもよい。