JP5551354B2 - 糖アルコールの製造方法 - Google Patents

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本発明は、糖アルコールの製造方法に関する。
マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコールは、天然中に多く存在する糖質であることが知られている。また、これらの糖アルコールは、しょ糖などよりカロリーが低く、虫歯の原因にならない、血糖値に影響を与えない、褐変反応を生じにくく熱に対して強い、などといった特徴を持つ。そのため、糖アルコールは食品、医薬品、化粧品、工業分野において広く利用されており、その有用性および安全性は明らかである。
また、アラビトールは、発酵調味料やキノコ子実体中に存在することが知られており、コク味に関与している糖アルコールとして知られている。さらに、アラビトールは、食品添加物として利用されているキシリトールの原料としても注目されている。
マンニトール、アラビトール等の糖アルコールは、ブドウ糖、ショ糖などを原料として水素添加したり、微生物を用いて発酵することにより製造されている。糖アルコールの製造、特に微生物を用いた糖アルコールの製造において、微生物の増殖や物質変換の原材料として、炭素源や窒素源を必要とする。この原材料に上記の炭素源や窒素源を含むが産業上そのままでは適当な用途がないいわゆる余剰物質を用いることができれば、これらの処理にかかるエネルギー低減、廃棄による環境汚染の低減といった、環境負荷の少ない糖アルコールの生産を行うことができる。更に、産業上余剰とされる物質は、安価な原材料であるという大きなメリットがある。
また、近年、化石燃料に代わり、再生可能なバイオディーゼルの生産が欧州などにおいて盛んに行われてきている。バイオ燃料の製造時には、油脂由来のグリセリン等が副生され、その余剰が問題となっている。このグリセリン等の副生物を利用した糖アルコール等の有用物質生産は、現在強く求められている物質生産の形態の一つである。その為にも、余剰物質を利用した有用物質生産の可能性を広げていくことは、社会にとって急務である。
本発明は、環境負荷が少なく、安全性の高い糖アルコールの製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、前記方法に用いる微生物の提供を目的とする。
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、食酢等の醸造に用いられているグルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属菌が糖アルコール生産能を有することを見い出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明は、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属に属する糖アルコール生産菌を、資化可能な炭素源を含む培地に培養し、培養液中に糖アルコールを生成させることを特徴とする糖アルコールの製造方法に関する。
また、本発明は、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)に属し、資化可能な炭素源からの糖アルコール生産能を有する微生物に関する。
本発明によれば、環境負荷が少なく、安全性の高い糖アルコールの製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記方法に用いる微生物を提供することができる。
以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき詳細に説明する。
本発明の糖アルコールの製造方法は、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属に属する糖アルコール生産菌を、資化可能な炭素源を含む培地に培養し、培養液中に糖アルコールを生成させることを特徴とする。
本発明者等は、糖アルコール生産能を有する微生物の探索を行った。その結果、グルコンアセトバクター属に属する微生物が糖アルコール生産能を有することを見い出した。
グルコンアセトバクター属に属する微生物は自然界に広く存在する微生物である。また、グルコンアセトバクター属に属する微生物は、醸造酢、アルコール飲料、ナタデココ、こんにゃく等の食品製造に用いられている。そのため、グルコンアセトバクター属に属する微生物は環境に対する負荷が少なく、安全性が高いことが知られている。
このようなグルコンアセトバクター属に属する微生物を用いる本発明の糖アルコールの製造方法は、環境負荷が少なく、安全性の高いものである。
本発明の糖アルコールの製造方法に用いられる微生物は、糖アルコールを生成することができるグルコンアセトバクター属に属するものであれば特に制限はない。
本発明の糖アルコールの製造方法において、配列番号3に示す塩基配列、又は配列番号3に示す塩基配列と16SrRNA遺伝子の塩基配列に基づく分子系統学上同等の塩基配列、を含む16SrRNA遺伝子を有し、以下の菌学的性質を示す、糖アルコールの生産能を有するグルコンアセトバクター属に属する微生物を用いることが好ましい。
(菌学的性質)
(1)グラム染色性 陰性
(2)菌の形状 桿形
(3)酸素に対する態度 好気性
(4)酢酸菌用培地での生育性 生育する
(5)カタラーゼ反応 陽性
(6)オキシダーゼ反応 陰性
(7)乳酸塩酸化 陰性
(8)エタノール酸化 陽性
(9)マンニトール酸化 陰性
なお、本発明における「酢酸菌用培地」とは、グルコンアセトバクター属等の酢酸菌に通常用いられる培地であれば特に制限はない。酢酸菌用培地の例としては、例えば、ポテトエキス10%、グルコース1%、エタノール0.5%、ペプトン0.3%、酵母エキス0.5%、CaCO30.5%、寒天1.5%を含む寒天培地等が挙げられる(微生物の分離法,R&Dプランニング,1986,p.454等参照)。
本発明の糖アルコールの製造方法に用いられる微生物は、糖アルコール生産能を有するグルコンアセトバクター属に属する微生物の中でも糖アルコール生成能が高いグルコンアセトバクター・エスピー(Gluconacetobacter sp.)T-3株であることが、更に好ましい。なお、グルコンアセトバクター・エスピーT-3株は、2008年8月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1つくばセンター中央第6)に、受託番号 FERM P-21641として寄託された。
本発明に用いることができる微生物は、例えば、グリセリン類縁化合物資化性菌の中から取得することが出来る。グリセリン類縁化合物としてグリセリンカーボネート等が挙げられるが、これに制限するものではない。これら資化性菌を、例えば、グリセリンを唯一の炭素源とするYeast Nitrogen Base(Difco社製)で培養することで、本発明に用いることができる微生物を見い出すことができる。
本発明の糖アルコールの製造方法に特に好ましく用いることができるグルコンアセトバクター・エスピー(Gluconacetobacter sp.)T-3株(受託番号 FERM P-21641)の菌学的性質は、以下の通りである。
(a)培養的性質
1.酢酸菌用培地(ポテトエキス10%(w/v)、グルコース1%(w/v)、エタノール0.5%(w/v)、ペプトン0.3%(w/v)、酵母エキス0.5%(w/v)、CaCO30.5%(w/v)、寒天1.5%(w/v)):30℃、2日間で良好に生育
2.グルコースを5%含有するYeast Nitrogen Base(YNB)寒天培地における生育:30℃、2日間で良好に生育
3.350培地(0.5%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)グルコース、0.5%(w/v)マンニトール、0.1%(w/v)MgSO4・7H2O、0.5%(v/v)エタノール、pH6.6-7.0)における生育:30℃、2日間で良好に生育
4.804培地(0.5%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)グルコース、0.1%(w/v)MgSO4・7H2O)における生育:30℃、2日間で良好に生育
(b)形態的性質
グルコースを5%含有するYNB寒天培地における、30℃、48時間培養後のコロニー形態を示す。
1.直径:1.0-2.0mm
2.色調:淡黄色
3.形状:円形
4.隆起状態:レンズ状
5.周縁:全縁
6.表面形状:スムーズ
7.透明度:不透明
8.粘稠度:バター様
(c)生理学的性質
1.生育温度試験
37℃ 生育する
45℃ 生育せず
2.カタラーゼ反応:陽性
3.オキシダーゼ反応:陰性
4.嫌気状態での生育:陰性
5.乳酸塩酸化:陰性
6.エタノール酸化性:陽性
7.GYC培地における水溶性褐色色素の産生:陰性
8.酸化試験
マンノース 陽性
アラビノース 陽性
ガラクトース 陽性
グルコース 陽性
キシロース 陽性
ソルビトール 陰性
フラクトース 陰性
マルトース 陰性
サッカロース 陰性
ソルボース 陰性
グリセロール 陰性
マンニトール 陰性
9.資化試験
エタノール 陽性
酢酸ナトリウム 陽性
グリセリン 陽性
ソルビトール 陽性
乳酸ナトリウム 陰性
10.最適生育温度範囲:27〜34℃
11.最適生育pH範囲:5.5〜7.0
12.生育可能上限温度:37℃
13.生育可能pH範囲:3.6〜7.5
(d)化学分類学的性質
グルコンアセトバクター・リケファシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)(X75617.1)の16SrRNAとの間で99.2%、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)IF2-6株(AF127412.1)の16SrRNAとの間で99.3%、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)IF9701株(AF127411.1)の16SrRNAとの間で99.2%、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)SRI1951株(AF127404.1)の16SrRNAとの間で99.1%の同一性を有する。
(e)その他の特徴
上記に示した性質は、グルコンアセトバクター・エスピーT-3株が、グルコンアセトバクターであることを支持するが、これらの性質と完全に一致する菌種はグルコンアセトバクター属の中に見当たらないことから、グルコンアセトバクター・エスピーであると同定される。
本発明の糖アルコールの製造方法において、グルコンアセトバクター属に属し、16SrRNA遺伝子が、グルコンアセトバクター・エスピーT-3株の16SrRNAが有する配列番号3に示す塩基配列と16SrRNAの塩基配列に基づく分子系統学上同等の塩基配列を含むと共に前記の菌学的性質を示し、資化可能な炭素源からの糖アルコール生産能を有する微生物を用いることができる。
分子系統樹に基づいて生物や遺伝子の進化を研究する手法は、分子系統学として確立されている(例えば、木村資生編分子進化学入門(培風館)第164〜184頁、「7分子系統樹の作り方とその評価」参照)。16SrRNA遺伝子の塩基配列に基づく分子系統樹は、対象の微生物の16SrRNA遺伝子の塩基配列を、菌学的性質から同微生物と同種又は類縁と推定される公知の微生物の16SrRNA遺伝子の塩基配列とともに、多重アラインメント及び進化距離の計算を行い、得られた値に基づいて系統樹を作成することにより、得ることができる。分子系統樹の作成に用いる公知の微生物の16SrRNA遺伝子の塩基配列は、既存のデータベースの相同性検索によっても、取得することができる。ここで、進化距離とは、ある遺伝子間の座位(配列の長さ)あたりの変異の総数をいう。
ここで、分子系統学上同等とは、前記分子系統樹において同属と認められる微生物を指すが、その中でも、16SrRNA遺伝子の塩基配列の相同性が97%以上であればより類縁であり、98.7%以上であれば同一種である可能性が高く、99%以上ではほぼ同一種であると認められる。
上記のようなグルコンアセトバクター属に属する微生物を、資化可能な炭素源を含む培地に好気的条件下で培養することにより、同培養液中に糖アルコールを生成させることができる。グルコンアセトバクター属に属する微生物は単独で使用することができるが、任意の1種又は2種以上の微生物を同時に使用してもよい。
本発明において、培地は、通常液体培地が用いられる。資化可能な炭素源としては、グルコンアセトバクター属に属する微生物を好気的に培養したときに糖アルコールを生成するものであれば特に制限されないが、グリセリン、グルコース、フルクトース、シュクロース等が挙げられ、グリセリンが好ましい。
また、本発明の製造方法において、資化可能な炭素源としては前記の化合物が所定量含まれるものであればよく、この点を満たせば、特に制限はない。バイオ燃料の製造時に生じるグリセリン等の副産物も資化可能な炭素源として用いることもできる。これらの物質を資化炭素源とするときは、余剰物質処理にかかるエネルギー低減、廃棄による環境汚染の低減といった副次的な効果もあり、環境負荷の少ない糖アルコールの製造を行うことができる。更に、これらの物質は安価な原材料であるので、コストの面でも大きなメリットがある。これら副生物等を用いる場合は、そのまま用いることができるし、通常の方法によりグリセリン等の炭素源を分離、精製して用いてもよい。
資化可能な炭素源の培地中における量的割合としては、糖アルコールを産生する範囲であれば特に制限はないが、2.5〜10g/dlの範囲で使用されることが望ましい。資化可能な炭素源は段階的に追添することもできる。
さらに、必要に応じて微生物の生育に必要な窒素源、無機塩類、各種の有機物、無機物、界面活性剤あるいは通常用いられる消泡剤などを添加することができる。窒素源、無機塩類、その他の栄養源等の培地成分も、必要に応じて追添することができる。
グルコンアセトバクター属に属する微生物の培地へ接種は、例えば、生理食塩水に懸濁したグルコンアセトバクター属に属する微生物を生産培地に直接摂取する方法や、生産培地にグルコンアセトバクター属に属する微生物を1白金耳直接接種することにより行うことができる。
本培養の培養温度は、グルコンアセトバクター属に属する微生物が生育しうる範囲内、即ち通常25〜37℃で行われるが、好ましくは27〜34℃の範囲である。また、培地のpHは通常3.6〜7.5、好ましくは5.5〜7.0の範囲で調節される。培養期間は使用する培地の種類および炭素源の濃度により異なり、通常24時間から14日間程度である。本発明における培養は、培地の栄養源が最大限に利用され、かつ培養液中に生成する糖アルコールの蓄積量が最大に達した時点で培養を終了させることが好ましい。
なお、培養液中の糖アルコールの種類及び生成量は高速液体クロマトグラフィー、LC−MSなどの通常の方法を用いて速やかに測定することができる。本発明により得られた糖アルコールは、当該分野において通常使用されている周知の手段、例えばろ過、遠心分離、真空濃縮、イオン交換または吸着クロマトグラフィー、溶媒抽出、蒸留、結晶化などの操作を必要に応じて適宜組み合わせて用いることにより、培養液中から採取できるが、これらの方法に特に制限されることはない。
本発明により、マンニトール、アラビトールなどの糖アルコールを製造することができる。なお、炭素源の種類、微生物の培養条件等を適宜調整することで、製造する糖アルコールの種類を調整することができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
試験例
(1)菌株の取得
0.85%(w/v)食塩水5mLに土壌(栃木県芳賀郡市貝町の土壌)を適量加え、撹拌し、静置後、pH4.5に調整した3.35%(w/v)YNB(Difco社製)、1.0%(w/v)グリセロール1,2-カーボネート(東京化成社製、濾過滅菌)、10mMKH2PO4(和光純薬社製)、3.0%(w/v)Bacto Ager(Difco社製)からなる寒天培地に適量塗抹し、30℃にて3〜5日間培養した。生育してきた菌株をモノコロニー化し、T-3株を取得した。
(2)菌株の同定
形態観察並びにBARROWらの方法(G.I.BARROW and R.K.A.FELTHAM: Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria,3rd edition,1993,Cambridge University Press参照)に基づきカタラーゼ反応、オキシダーゼ反応試験を行った。その結果、T-3株がグラム陰性菌で、胞子を形成しない運動性を有する桿菌(0.7-0.9×1.5-2.0μm)で、嫌気条件下で生育せず酢酸菌用の培地で良好に生育すること、37℃で生育するが45℃では生育しないこと、カタラーゼ反応に対し陽性を示し、オキシダーゼ反応に対し陰性を示すことがわかった。
SWINGら(J.SWING,M.GILLIS and K.KERSTERS: Phenotypic Identification of Acetic Acid Bacteria,1992 参照)及びYamada(Y.YAMADA,Y.OKADA and K.KONDO: Isolation and characterization of “polarly flagellated intermediate strains” in acetic acid bacteria,J.Gen.Appl.Microbiol.,1976,22,pp.237-245参照)らを参考にし、酸産生、資化性などの各試験を行ったところ、乳酸塩を分解せず、エタノールを酸化し、GYC培地で水溶性褐色色素を産生せず、マンノース、アラビノース及びグルコースを酸化し、乳酸ナトリウムを資化しない性質を示した。
生理・生化学試験の結果からは、グルコンアセトバクター属であることを支持するが、一致した菌種は認められなかった。
T-3株の染色体DNAを鋳型とし、5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’(配列番号1)及び5’-GGCTACCTTGTTACGACTT-3’(配列番号2)をプライマーとして、常法に従いPCRを行い、16SrRNAをコードする領域を増幅させた。得られた増幅断片の塩基配列を解読し、16SrRNAの部分配列(配列番号3:1413塩基)を決定した。
解読した配列と相同性のある配列をBLAST検索したところ、グルコンアセトバクター・リケファシエンス(X75617.1)の16SrRNAとの間で99.2%、グルコンアセトバクター・サッカリIF2-6株(AF127412.1)の16SrRNAとの間で99.3%、グルコンアセトバクター・サッカリIF9701株(AF127411.1)の16SrRNAとの間で99.2%、グルコンアセトバクター・サッカリSRI1951株(AF127404.1)の16SrRNAとの間で99.1%の同一性を有しており、T-3株はグルコンアセトバクター属の菌株と近縁種であることが示された。
以上の結果から、T-3がグルコンアセトバクター属に属するグルコンアセトバクター・エスピーであると同定した。
実施例1 マンニトールの製造
YNB培地(10%グリセリン、6.7%YNB(Difco社製))にグルコンアセトバクター・エスピーT-3株を1白金耳植菌し、11日間振盪培養(30℃、250rpm)した。培養液を遠心分離(12000rpm、20分)し、上清画分を分画した。
培養液上清中に含まれる化合物の分析は、有機酸分析用イオン排除型ポリマーカラムICSep ION-300(Transgenomic社製)を用い、日立LaChrom Elite装置(HITACHI社)にて行った。サンプルを溶離液(0.1%(v/v)ギ酸溶液)で適宜希釈し、流速0.4mL/min、溶離液0.1%(v/v)ギ酸、カラム温度50℃、サンプル注入量10μL、分析時間40minの条件にてHPLCを行い、RI検出器及びUV検出器(HITACHI社)にて分析した。分析サンプルはいずれもDISMIC-13CP Cellulose Acetate 0.2μm(ADVANTEC社製)にてフィルター濾過処理して用いた。
その結果、YNB培地には存在しない物質の特徴的なピーク(溶離時間15.06分)が認められた。この特徴的なピークと、HPLCによる溶離時間が既知のマンニトールのピークとを比較したところ、溶離時間が一致した。
前記特徴的なピークについてLC-MS分析を行った。LC-MSによる解析は、有機酸分析用イオン排除型ポリマーカラムICSep ION-300、溶離液に0.1%(v/v)酢酸を用い、流速0.5mL/min、カラム温度40℃、サンプル注入量5μL、ESIイオン化条件下(検出器:esquire 3000 plus、BRUKER社製)で行った。その結果を図1に示す。図1に示すように、前記特徴的なピークが、マンニトールのピークと一致することが判明した。
以上の結果より、本発明により、マンニトールを製造することができた。
実施例2 アラビトールの製造
0.5%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)グルコース、0.1%(w/v)MgSO4・7H2Oからなる804培地(pH6.6-7.0)、及び0.5%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)グルコース、0.5%(w/v)マンニトール、0.1%(w/v)MgSO4・7H2O、0.5%(v/v)エタノールからなる350培地(pH6.6-7.0)(何れもフィルター濾過除菌)にて30℃、4日間培養したグルコンアセトバクター・エスピーT-3株を集菌し、5%グリセリン溶液で洗浄後に、600nmの吸光度が6.3-8.3となるように菌液を5%グリセリン溶液で調製した。得られた菌懸濁液を5日間振盪培養(30℃、250rpm)し、遠心分離により上清画分を調製した。検出器をCorona CAD荷電化粒子検出器(ESA社製)に変更した以外は実施例1と同様にHPLC分析を行った。その結果、溶離時間19.59分に804培地および350培地には存在しない物質の特徴的なピークを確認した。比較用に、溶離時間が既知のアラビトール(0.01%(w/v))を同様の条件にてHPLC分析したところ、溶離時間が一致した。なお、各試料の溶離時間19.59分でのピークの面積を下記表1に示す。
以上の結果より、本発明により、アラビトールを製造することができた。
Figure 0005551354
実施例3 アラビトール生産量のグリセリン濃度依存性
実施例2に示した804培地及び、グルコースの代わりに所定濃度のグリセリンを用いた804改変培地−0、0.5、1、2.5、5および10を用いて、実施例2と同様にアラビトールを製造し、グルコンアセトバクター・エスピーT-3株のアラビトール生産性を比較した。
各培地に生理食塩水に懸濁したグルコンアセトバクター・エスピーT-3株を同量植菌し、30℃、11日間振盪(250rpm)培養し、遠心分離培養上清画分を実施例2に従って、HPLC分析を行った。その結果を表2に示す。なお、表2には、培地中のグリセリン濃度と、培養終了後のグリセリン濃度を併せて示す。
Figure 0005551354
表2に示すように、グルコンアセトバクター・エスピーT-3株を用いてアラビトールを製造することができ、そのアラビトール生産量は、グリセリン濃度の増加に伴い増加していた。この結果から、本発明によれば、グリセリンを資化可能な炭素源としてアラビトールを製造するできることがわかった。
図1(a)は、実施例1における培養液の上清のLC-MS分析の結果を示す図であり、図1(b)は、比較用マンニトールのLC-MS分析の結果を示す図である。

Claims (4)

  1. グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属に属する糖アルコール生産菌を、資化可能な炭素源を含む培地に培養し、培養液中に糖アルコールを生成させることを特徴とする糖アルコールの製造方法であって、
    前記グルコンアセトバクター属に属する糖アルコール生産菌がグルコンアセトバクター・エスピー(Gluconacetobacter sp.)T-3株(FERM P-21641)であり、
    前記資化可能な炭素源がグリセリン、グルコース、フルクトース及びシュクロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記糖アルコールがマンニトール又はアラビトールである、
    糖アルコールの製造方法
  2. 前記資化可能な炭素源がグリセリンである、請求項1記載の糖アルコールの製造方法。
  3. グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)に属し、資化可能な炭素源からの糖アルコール生産能を有する微生物であって、
    前記微生物がグルコンアセトバクター・エスピー(Gluconacetobacter sp.)T-3株(受託番号 FERM P-21641)であり、
    前記資化可能な炭素源がグリセリン、グルコース、フルクトース及びシュクロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記糖アルコールがマンニトール又はアラビトールである、
    微生物
  4. 前記資化可能な炭素源がグリセリンである、請求項記載の微生物。
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