JP5549027B2 - 粒子状ナノ炭素材料の製造方法及び電子放出素子並びに面発光素子 - Google Patents

粒子状ナノ炭素材料の製造方法及び電子放出素子並びに面発光素子 Download PDF

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Description

本発明は、強度補強材料、電子放出素子材料、電池の電極材料、電磁波吸収材料、触媒材料又は光学材料としての応用が期待される粒子状ナノ炭素材料製造方法及び電子放出素子並びに面発光素子に関する。
さらに、本発明は電子デバイスにおいて、強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子(フィールドエミッタ)に係り、より詳しくは例えば光プリンタ,電子顕微鏡,電子ビーム露光装置などの電子発生源や電子銃として、照明ランプの超小型照明源として又は平面ディスプレイを構成するアレイ状のフィールドエミッタアレイの面電子源として有用な電子放出素子に関する。さらに、この電子放出素子を電子源として用い、例えばディスプレイ、バックライト、照明に利用される面発光素子などの電子デバイスに関する。
ナノ炭素材料は、炭素のsp2混成軌道で構成された、ナノメーター(nm)サイズの微細形状を有することから、従来の材料を凌駕する特性を有し、また従来の材料にはない特性を有しており、強度補強材料、電子放出素子材料、電池の電極材料、電磁波吸収材料、触媒材料又は光学材料など、次世代の機能性材料としての応用が期待されている。
カーボンナノチューブ等のナノ炭素材料の合成方法として、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法等が知られている(非特許文献1,2参照)。これらの方法のうち、アーク放電法、レーザーアブレーション法やプラズマ化学気相成長法は非平衡反応であるため、非晶質成分を生成しやすく、一般的に生成するカーボンナノチューブの収率が低く、生成したカーボンナノチューブの直径や種類が一様でないことが知られている。
一方、精製が不要な程度の高純度カーボンナノチューブを合成することができ、収率が非常に高い合成方法が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている方法は、固体基板と有機液体が急激な温度差を有して接触することから生じる特異な界面分解反応に基づくことから、有機液体中の固液界面接触分解法と呼ばれている。
図8を参照して特許文献1の方法を説明する。図8は有機液体中の固液界面接触分解法で用いられる合成装置を模式的に示している。図8に示す合成装置は、メタノール等の有機液体60を収容する液体槽61と、有機液体60を沸点以下に保持するため液体槽61の外側を囲むように設けた水冷手段62と、導電性の基板63を保持し、かつ基板63に電流を流すための電極64を有する基板ホルダー65と、液体槽61から蒸発する有機液体蒸気を冷却凝縮して液体槽61に戻す水冷パイプ66からなる凝縮手段67と、有機液体蒸気と空気との接触を防止するために窒素ガスを導入する窒素ガス導入バルブ68と、液体槽61を密閉する蓋69とから構成される。
図8に示す合成装置を用いて有機液体中の固液界面接触分解を行なう場合、導電性のシリコン基板上にFe、Co、Ni等の遷移金属薄膜を積層し、この基板を水素プラズマに晒すか又は遷移金属薄膜を熱酸化することによって、基板63上に高密度に分布するよう触媒微粒子を担持させ、この基板63を基板ホルダー65に保持し、基板ホルダー65を介して基板63に電流を流すことで基板63を加熱する。これにより、基板63と有機液体60とが急激な温度差を有して接触することから特異な界面分解反応が生じ、触媒微粒子上にカーボンナノチューブが合成される。この方法によれば、基板垂直方向に配向した高密度・高配向カーボンナノチューブを合成することができる(特許文献1)。
ところで、電子ディスプレイデバイスとして陰極線管が広く用いられているが、陰極線管は、電子銃のカソードから熱電子を放出させるためにエネルギー消費量が大きく、また、構造的に大きな容積を必要とするなどの課題があった。このため、熱電子ではなく冷電子を利用して、全体としてエネルギー消費量を低減させ、しかもデバイス自体を小形化した平面型のディスプレイが求められ、更に近年ではそのような平面型ディスプレイに高速応答性及び高解像度が強く求められている。
かかる冷電子を利用する平面型ディスプレイの構造として、高真空の平板セル中に微小な電子放出素子をアレイ状に配したものが有望視されている。そのために使用する電子放出素子として、電界放射現象を利用した電界放射型の電子放出素子が注目されている。この電界放射型の電子放出素子は、物質に印加する電界の強度を上げると、その強度に応じて物質表面のエネルギー障壁の幅が次第に狭まり、電界強度が107V/cm以上の強電界となると、物質中の電子がトンネル効果によりそのエネルギー障壁を突破できるようになり、そのため物質から電子が放出されるという現象を利用している。この場合、電場がポアッソンの方程式に従うために、電子を放出する部材、即ちエミッタに電界が集中する部分を形成すると、比較的低い引き出し電圧で効率的に冷電子の放出を行なうことができる(非特許文献1,2)。
上記電子放出素子に対し、近年、エミッタ材料としてナノ炭素材料が注目されている。ナノ炭素材料の中で最も代表的なカーボンナノチューブは、炭素原子が規則的に配列したグラフェンシートを丸めた中空の円筒状であり、その外径はnmオーダーで、長さは通常0.5〜数10μmの非常にアスペクト比の高い微小な物質である。そのため、先端部分には電界が集中しやすく高い電子放出能が期待される。また、カーボンナノチューブは、化学的、物理的安定性が高いという特徴を有するため、動作真空中の残留ガスの吸着や反応が生じ難く、イオン衝撃や電子放出に伴う発熱に対して損傷を受け難い特性を有している。
カーボンナノチューブをエミッタ材料として利用する場合は、ペースト化し印刷法により基板上に塗布して用いられる場合が多い。例えば、特許文献2には、スクリーン印刷によるエミッタ形成法が開示されている。このエミッタ形成法は、先ずカソード電極を基板上に所定ピッチでストライプ状に形成し、さらにカーボンナノチューブを含んだペーストをスクリーン印刷によりカソード電極上に四角形や円形などの形状に孤立した形でカソード電極と同じピッチに形成する。次いで、カーボンナノチューブを含んだ樹脂層の間に絶縁層をスクリーン印刷し、その後大気雰囲気中で焼成する。これにより、カーボンナノチューブを含む樹脂層の樹脂成分が分解し、カーボンナノチューブが露出してエミッタ部が形成される。最後に、グリッド電極を絶縁層上に形成して電子放出素子を作製する。
上述のようなエミッタの作製に用いるペーストは、一般的には、カーボンナノチューブに、溶剤、分散剤、接着剤としてのガラスフリット、フィラーなどを加え、これらの分布状態が均一になるように混合・分散を行なう。混合後に濾過を行ない、溶剤と樹脂とからなるビヒクル中に混ぜ込みペースト化する。このペーストをよく混合して分散状態を高めた後に濾過してカーボンナノチューブペーストとして完成する。そして上記プロセスで得られたカーボンナノチューブペーストを基板上に印刷し、乾燥及び焼成によりビヒクルを酸化分解させてカーボンナノチューブ膜が得られる。
特開2003?12312号公報 特開2003−272517号公報 C. A. Spindt: J. Appl. Phys., 39, 3504 (1968) K. Betsui: Tech. Dig. IVMC., (1991) p26
しかしながら、上記特許文献1に開示された固液界面接触分解法では、合成時の基板温度と生成物の構造や物性との関係について詳細は明らかになっていない。
また、ナノ炭素材料の実用用途によっては、高配向に限らず、比較的平坦な膜状が求められる場合もある。例えば、従来非晶質炭素材料である活性炭が利用されている二次電池やキャパシタや燃料電池では、結晶性が高くかつ表面積が大きい炭素材料が好適である。また、電子放出素子に利用する場合においても、より平坦性の高い膜状の形態の方が、デバイス化の際に加工プロセス適性が高い。しかしながら、このような用途に適した膜状でかつ結晶性が高い、すなわち実用性の高いナノ炭素材料は見出されていない。
本発明は上記課題に鑑み、結晶性が高く、表面積が大きくかつ平坦性の高い新規な粒子状ナノ炭素材料製造方法を提供することを第一の目的としている
さらに、本発明の第の目的は、上記製造方法で形成した粒子状ナノ炭素材料を用いた電子デバイス、例えば、高信頼性の電子放出素子及び面発光素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、詳細な実験研究を進めた結果、上述した固液界面接触分解法において合成時の基板温度によって基板上に生成するナノ炭素材料の構造、形態及び物性の特徴が大きく異なることを見出した。即ち、基板を750℃から950℃の範囲で加熱して合成を行なうと、グラファイト成分を含む粒子状の構造、つまり表面の平坦性が高くかつ表面積が大きい形態を持つナノ炭素材料が生成することが判明した。その再現性は非常に高く、触媒の有無及び触媒を用いた場合でも触媒の種類に依存せず上記ナノ炭素材料を生成することを見出した。得られた粒子状ナノ炭素材料は、組成分析の結果から、非晶質成分の非常に少ないグラファイト結晶成分からなっていることが明らかとなった。また、物性の一例として電子放出特性を評価した結果、低電圧でのエミッション開始及び非常に安定なエミッション電流が得られることが明らかとなった。以上のことから本発明を完成させるに至ったものである。
上記第一の目的を達成するため、本発明の粒子状ナノ炭素材料の製造方法は、基体の表面に遷移金属又は遷移金属化合物を担持し、基体を電極の間に保持して有機液体中に沈め、有機液体中で基体を、750℃以上900℃以下の範囲で加熱することで、グラファイト結晶成分を含む炭素から成り、粒径が5nm〜50nm、厚さが10nm〜300nmの粒子状の構造を有する粒子状ナノ炭素材料を基体上に合成することを特徴とする。
本発明の上記製造方法で合成した粒子状ナノ炭素材料は、ナノチューブのグラフェンシートと同様のグラファイト成分からなる高結晶性の炭素で構成され、膜状でかつ粒子状の形態を持つため、ナノチューブより平坦かつ高密度の新規材料である。非晶質の活性炭と異なり、広い表面積を持ちながら高い結晶性を持つ物質であるので、構造材料又は機能材料として応用する場合、活性炭より非常に高い信頼性を得ることができる。
本発明の上記製造方法で得られる粒子状ナノ炭素材料複合体は、基体とこの基体上に設けたナノ炭素材料とから成り、ナノ炭素材料が、グラファイト結晶成分を含む炭素から成りかつ粒子状の炭素構造を有しており、粒子状の炭素の粒径が5nm〜50nm、厚さが10nm〜300nmであ
上記粒子状ナノ炭素材料複合体は、基体上に本発明の粒子状ナノ炭素材料を有して一体化しているので、電子デバイスなど基体上に構築するデバイスへ応用することができる。ナノチューブの場合と比べ、基体としての基板との固着性が高く、加工プロセス及びデバイス化後においても、基板から剥離することがなく信頼性が高い。
本発明の粒子状ナノ炭素材料の製造方法は有機液体中で基体を加熱することで、グラファイト結晶成分を含む炭素から成り粒子状の構造を有する粒子状ナノ炭素材料を基体上に合成することを特徴とする。
本発明の粒子状ナノ炭素材料の製造方法では、反応場における豊富な炭素原料濃度と高い温度勾配とを利用した固液界面反応で粒子状ナノ炭素材料が合成可能である。基体の表面に触媒が存在しなくても粒子状ナノ炭素材料を生成できるが、触媒が担持されていることで、成長の種となる核の発生が生じやすく、より簡便に粒子状ナノ炭素材料が合成することができる。
基体の加熱温度は上記の750℃以上900℃以下の範囲であることが好ましい。グラファイト成分はより合成温度が高い方が生成しやすいが、実験の結果、750℃以上950℃以下の範囲で粒子状ナノ炭素材料の成長速度が大きいからである。
特に、遷移金属は鉄又はコバルトであることが好ましい。触媒が鉄、コバルトである場合、特に核発生がし易く、合成反応がより高速に進行する。
有機液体はメタノールであることが好ましい。メタノールを用いることで比較的低温で
反応が容易に起こり、低コストで粒子状ナノ炭素材料を製造することができる。
粒子状ナノ炭素材料のラマンスペクトルは、好ましくは、1580cm −1 にピークを有している。
上記第の目的を達成するため、本発明の粒子状ナノ炭素材料を用いて電子デバイスとし、例えば、電子放出素子として、基体とこの基体上に本発明の粒子状ナノ炭素材料の製造方法により合成した粒子状ナノ炭素材料とを含み、この粒子状ナノ炭素材料がグラファイト成分を含む炭素から成りかつ粒子状の構造を有し、強電界により電子を放出するように構成することができる。
上記構成において、基体は、好ましくは、絶縁性基体と絶縁性基体上に設けられた導電層とからなる。
面発光素子は、上記記載の電子放出素子を用いたエミッタと、蛍光体が設けられたアノード電極とを含み、エミッタとアノード電極とが対向配置され、エミッタとアノード電極との間隙が真空に保持され、強電界により電子を放出して蛍光体から面発光することを特徴とする。
本発明の電子放出素子では、エミッタの材料として粒子状ナノ炭素材料を用いることで、エミッタ材料が極微小突起をもつため電界が集中し易く比較的低電圧で電子を放出し、かつ結晶性が高く基体から剥離しないため、非常に安定で信頼性の高い電子放出特性を得ることができる。基体とナノ炭素材料とが一体化しているため、電子放出素子材料となるナノ炭素材料をペースト化せず、直接基体又は導電層上に固定することができる。これで、ペースト化の際にエミッタとなるナノ炭素材料に有機バインダー又は無機バインダーが介在せず残留することもないため、電子放出特性の劣化を避けることができる。
さらに、本発明の電子デバイスは、面発光素子として、基体に導電層と粒子状ナノ炭素材料とが順に設けられ、この粒子状ナノ炭素材料がグラファイト成分を含む炭素から成りかつ粒子状の構造を有するエミッタと、蛍光体が設けられたアノード電極とを含み、エミッタとアノード電極とが対向配置され、エミッタとアノード電極との間隙が真空に保持され、強電界により電子を放出して蛍光体から面発光することを特徴とする。
本発明の電子デバイスでは、安定なエミッションを得ることができることから、高輝度でかつ非常に安定で信頼性の高い発光特性を有する面発光素子とすることができる。
本発明の粒子状ナノ炭素材料によれば、結晶性が高くかつ平坦性が高くまた表面積が大きいため、キャパシタ、電池、燃料電池における電極材料で活性炭の代わりに、一般的な二次電池における電極材料として又は構造材料や電子放出材料として使用することで、良好な実用物性および信頼性を得ることができる。
本発明の粒子状ナノ炭素材料の製造方法によれば、有機液体中で基板を加熱することで、簡便かつ高速で、しかも精製プロセスの一切不要な高純度の粒子状ナノ炭素材料を合成することができるため、製造コストの低減が可能となる。
本発明の粒子状ナノ炭素材料複合体によれば、表面の平坦性が高くかつ基体との密着性の高いナノ炭素材料が基体と一体化していることから、電子放出素子等のデバイスへ適用する場合、デバイスの加工などのプロセス適性および信頼性を実現できる。
本発明の電子デバイスとしての電子放出素子によれば、エミッタ材料が極微小突起を持つため電界が集中し易く、低電圧での動作が実現する。粒子状ナノ炭素材料が基体と一体化しているため基板からの剥離がなく、結晶性が高いため高安定で信頼性の高い特性を得ることができる。バインダーフリーのため、特性の劣化もない。
本発明の電子デバイスとしての面発光素子は、本発明の電子放出素子を搭載しているので、簡便な二極間構造であっても、輝度が高くかつ面内バラツキがない信頼性の高い高品質の素子とすることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
最初に、本発明の粒子状ナノ炭素材料及びその複合体について説明する。図1は本発明の粒子状ナノ炭素材料複合体10の構成を模式的に示す断面図である。粒子状ナノ炭素複合体10は、図1に示すように、基体11上に粒子状ナノ炭素材料12が形成されている。粒子状ナノ炭素材料12の粒径は5nm〜50nmであり、その厚さは10nm〜300nmであり、何れもnmオーダーの寸法を有している。
基体11として、例えば950℃以上の高温においても耐熱性をもつ材質からなっていればよく、材料としてシリコンや金属及びそれらの化合物を挙げることができる。図1では、基体11上に直接粒子状ナノ炭素材料12が存在する場合を示しているが、基体11上に金属又は金属化合物を介在させて粒子状ナノ炭素材料が設けられていてもよい。
粒子状ナノ炭素材料12は、少なくともグラファイト成分からなる粒子状の構造を持ったナノ炭素材料から構成されている。表面にはナノオーダーの突起を多数有し、粒子状又は花びら状に多数面が露出しているため表面積は広い。
なお、用途により、基体11と粒子状ナノ炭素材料12との間に導電層又は抵抗層を介在してもよい。
次に、図2を参照して本発明の粒子状ナノ炭素材料の製造方法を説明する。
図2は、粒子状ナノ炭素材料12の製造に用いる合成装置20を模式的に示している。合成装置20は、メタノール等の有機液体15を収容する液体槽21と、有機液体15を沸点以下に維持するため液体槽21の外側を囲むように設けた水冷手段22と、基体11を保持しつつ基体11に電流を流すための電極23及び24を有する基板ホルダー25及び26とを備え、液体槽21の上側には蓋27を取り外し可能に設けられている。基体11が、有機液体15の液面に対して平行となるように配置されてもよい。基板ホルダー25を有機液体に対して出し入れするために、図示しない基板ホルダー25の移動手段を備えている。
なお、図8に示した合成装置のように、凝縮手段や窒素ガス導入バルブ(何れも図2には示していない。)も備え、凝縮手段の水冷パイプで液体槽21から蒸発する有機液体の蒸気を冷却凝縮して液体槽21に戻したり、窒素ガス導入バルブから窒素ガスを導入して有機液体蒸気と空気との接触を防止するよう構成されていてもよい。
図2に示す合成装置20を用いて以下のステップを経ることで、本発明の粒子状ナノ炭素材料を合成することができる。
第1ステップとして、基体11上にスパッタ法等により遷移金属又は遷移金属化合物を担持する。
第2ステップとして、この基体11を基板ホルダー25,26で支持された電極23及び24の間に保持させ、有機液体15中に沈め、電極23,24間に電流を流すことで基体11を通電加熱しながら所定の温度範囲内で所定時間保持する。
基板温度を750℃から950℃までの範囲の所定の温度に保つことで、基体11に粒子状ナノ炭素材料12が生成する。
基板温度を750℃から950℃の範囲とすることで、成長速度を速めて粒子状ナノ炭素材料12を生成することができる。基体として単結晶シリコン基板などの各種基板を用いることができ、遷移金属としては鉄(Fe),コバルト(Co)等を用い得る。有機溶媒としてはメタノールなどのアルコールや炭化水素などを用いることができる。
次に、本発明の電子デバイスとしての電子放出素子を説明する。
図3は、本発明の電子放出素子30の構成を模式的に示す断面図である。本発明の電子放出素子30は、導電性の基体31と、この基体31上に設けた粒子状ナノ炭素材料32と、粒子状ナノ炭素材料32に対向させて粒子状ナノ炭素材料32と所定の間隔を有するよう設けたアノード電極33と、を含んで構成される。直流電源34の−極を基体31に直流電源34の+極側をアノード電極33にそれぞれ配線35で接続し、導電性の基体31とアノード電極33との間に直流電圧を印加することで、粒子状ナノ炭素材料32表面より電子を放出する。
図3に示す電子放出素子30において導電性の基体31の代わりに絶縁性の基体を用いる場合には、絶縁性基体上でアノード電極33との対向面側に導電層を設けることで、同様に電子放出素子を構成してもよい。
図4は本発明の面発光素子40を模式的に示す断面図である。本発明の面発光素子40は、図4に示すように、導電性基体41に粒子状ナノ炭素材料42が設けられてなるエミッタ43と、別の基体44に導電性膜45が設けられたアノード電極46と、このアノード電極46のエミッタ側に設けられた蛍光体47とを含み、エミッタ43とアノード電極46とが対向配置され、エミッタ43とアノード電極46との電極間隔を保つためのスペーサ48を介在させ、エミッタ43とアノード電極46とスペーサ48とで囲まれた間隙が真空に保持されてなる。ここで、導電性基体41の代わりに絶縁性基体上に導電層を施した構造でもよい。
直流電源49の−極を導電層又は導電性基体41に、直流電源49の+極側をアノード電極46にそれぞれ配線50で接続し、導電層又は導電性基体41とアノード電極46との間に直流電圧を印加することで、強電界により粒子状ナノ炭素材料42から電子(図のeで模式的に示している。)が放出され(図に矢印で模式的に示している。)、この放出された電子が蛍光体47に衝突することで発光する。
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
実施例1の粒子状ナノ炭素材料複合体を作製した。具体的には、先ず、基体となる低抵抗シリコン基板上に、7Paのアルゴン雰囲気中でコバルトターゲットを放電電流35mAで3分、スパッタすることにより、コバルトを5nm堆積した。
次に、粒子状ナノ炭素材料を下記の条件にて合成した。
原料有機液体:メタノール(純度99.9%、沸点64.7℃)
合成条件:基板温度900℃、合成時間10分。
図5は、実施例1で作製した低抵抗シリコン基板上の生成物の走査電子顕微鏡(SEM)像を示す図で、(A)は倍率が5千倍、(B)は倍率が10万倍である。電子の加速電圧は15kVである。
図5から明らかなように、粒子状の構造を持つナノ構造の物質がシリコン基板上に生成していることが分かる。粒子状ナノ炭素材料12の粒径は5nm〜50nmであり、その厚さは10nm〜300nmで、何れもnmオーダーの寸法を有している。
実施例1で得た生成物のレーザーラマン分光分析を行なった。
図6は、実施例1で製造した粒子状ナノ炭素材料のレーザーラマンスペクトルを示す図である。横軸はラマンシフト(cm−1)であり、縦軸は強度(任意目盛)である。
図6から明らかなように、グラファイト結晶成分を示す1580cm −1 のピークが明確に確認でき、粒子状ナノ炭素材料がグラファイト結晶成分からなることが判明した。さらに、粒子状ナノ炭素材料12の粒径は5nm〜50nmであり、その厚さは10nm〜300nmであり、何れもnmオーダーの寸法を有していることが分かった。
実施例1で合成した粒子状ナノ炭素材料複合体を用いて、実施例2の電子放出素子30を作製した。
電子放出素子となる粒子状ナノ炭素材料複合体を高真空チャンバー中に設置してエミッタ電極とし、このエミッタに対向するようにアノード電極33を配置した。アノード電極33は、ガラス基板上に設けた透明電極(ITO:インジウム・スズ・酸化膜)からなる。電子放出素子の導電層と透明電極との間に電圧を印加し、その間に流れる電流を計測して、電子放出特性を測定した。なお、素子面積は3mm×3mmであり、エミッタ及びアノードとの間隔、つまり、電極間隔(ギャップ)は0.1mmとした。
図7は、実施例2で作製した電子放出素子の電子放出特性を示す図である。図7において、横軸は電界強度(V/μm)であり、縦軸は電流密度(A/cm2)である。図7から明らかなように、実施例2の電子放出素子の電子放出特性においては、電界強度が約1.8V/μmで急激に立ち上がっていることが分かる。また、電流は非常に安定であることが分かった。
実施例2で作製した電子放出素子を用い、スペーサを介在させ、透明電極上に蛍光体を塗布したアノードを対向させて真空封止することで、実施例3の面発光素子40を作製した。蛍光体は酸化亜鉛と亜鉛とからなる(ZnO:Zn)。電子放出素子の導電層と透明電極との間に電圧を印加したところ、蛍光体が50mm×50mmのエリアで均一に発光することを確認した。
上記実施例1〜3では、触媒としてコバルトを使用したが、触媒として鉄を使用した場合や何ら触媒を使用しない場合でも、粒子状ナノ炭素材料を生成でき、同様に電子放出素子を作製して同様の特性を得た。ただし、触媒がない場合、合成の初期過程に多少時間が必要であった。
本発明は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能でありそれらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
本発明の粒子状ナノ炭素材料は、グラファイト成分を持つ結晶でありながら、ナノチューブより平坦な表面ながら極微小突起を有し、また、活性炭と同様の広い表面積を有するため、構造材料、電気二重層キャパシタ、燃料電池又は一般的な二次電池の電極材料として、さらには、特にエミッタ材料として使用することができる。
本発明の粒子状ナノ炭素材料複合体の構成を模式的に示す断面図である。 粒子状ナノ炭素材料の製造に用いる合成装置を模式的に示す図である。 本発明の電子放出素子の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の面発光素子を模式的に示す断面図である。 実施例1で作製した低抵抗シリコン基板上の生成物の走査電子顕微鏡(SEM)像を示す図で、(A)は倍率が5千倍、(B)は倍率が10万倍である。 実施例1で製造した粒子状ナノ炭素材料のレーザーラマンスペクトルを示す図である。 実施例2で作製した電子放出素子の電子放出特性を示す図である。 従来の固液界面接触分解法による合成装置を模式的に示す図である。
符号の説明
10:粒子状ナノ炭素材料複合体
11,31,41,44:基体
12,32,42:粒子状ナノ炭素材料
15:有機液体
20:合成装置
21:液体槽
22:水冷手段
23,24:電極
25,26:基板ホルダー
27:蓋
30:電子放出素子
33,46:アノード電極
34,49:直流電源
35,50:配線
40:面発光素子
43:エミッタ
45:導電性膜
47:蛍光体
48:スペーサ

Claims (7)

  1. 基体の表面に遷移金属又は遷移金属化合物を担持し、
    上記基体を電極の間に保持して有機液体中に沈め、
    上記有機液体中で基体を、750℃以上900℃以下の範囲で加熱することで、
    グラファイト結晶成分を含む炭素から成り、粒径が5nm〜50nm、厚さが10nm〜300nmの粒子状の構造を有する粒子状ナノ炭素材料を上記基体上に合成することを特徴とする、粒子状ナノ炭素材料の製造方法。
  2. 前記遷移金属が鉄又はコバルトであることを特徴とする、請求項に記載の粒子状ナノ炭素材料の製造方法。
  3. 前記有機液体がメタノールであることを特徴とする、請求項に記載の粒子状ナノ炭素材料の製造方法。
  4. 前記粒子状ナノ炭素材料のラマンスペクトルは、1580cm −1 にピークを有していることを特徴とする、請求項1に記載の粒子状ナノ炭素材料の製造方法。
  5. 基体と該基体上に前記請求項1〜4の何れかに記載の粒子状ナノ炭素材料の製造方法により合成した粒子状ナノ炭素材料とを含み、強電界により電子を放出することを特徴とする、電子放出素子
  6. 前記基体は、絶縁性基体と該絶縁性基体上に設けられた導電層とからなることを特徴とする、請求項5に記載の電子放出素子。
  7. 前記請求項5又は6に記載の電子放出素子を用いたエミッタと、蛍光体が設けられたアノード電極とを含み、
    上記エミッタと上記アノード電極とが対向配置され、上記エミッタと上記アノード電極との間隙が真空に保持され、強電界により電子を放出して上記蛍光体から面発光することを特徴とする、面発光素子
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