JP5547550B2 - 含水系潤滑油組成物 - Google Patents

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本発明は、良好な熱安定性と優れた難燃性を併せ持った含水系潤滑油組成物に関するものである。
油圧装置は産業界に広く取り入れられ、生産性の向上に貢献している。これらの油圧装置には油圧作動油が動力伝達媒体として使用されているが、高温の熱源付近や電気スパークが生じる機器の近くなどでは、防災への配慮から水―グリコール系作動液を始めとした各種作動油が用いられている。
作動液には、熱やせん断に対して液性状の変化が少なく、長期に亘りその性状を適正な範囲に維持させることが望まれている。
水−グリコール系作動液はその作動油としての性能を維持するため濃縮液の補充等によりpH等を定期的に管理しながら使用することが一般的である。このため、水−グリコール系作動液の使用においては、そのメンテナンス・性能維持に手間、コストを削減することが課題とされ、液の長寿命化による労力の低減が求められている。
含水系潤滑油の性能向上技術としては、例えば、特定構造のポリオキシアルキレングリコールジエーテル化合物、特定構造のポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物、特定構造のポリオキシプロピレングリコールモノエーテル化合物及び特定構造の脂肪酸塩を含有する含水系作動液組成物(
特許文献1参照) 、グリセロールボレートと塩基との中和生成物を含有する水− グリコール系難燃性作動液( 特許文献2参照) 、特定構造のアルキル化モルホリンを含有する水−グリコール系難燃性作動液(
特許文献3参照) などが挙げられる。
特許第3233490 号公報 特許第2646308号公報 特開2007−39569号公報
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、含水系潤滑油の長期の使用に亘り、熱劣化による酸生成を抑制することによってpHの低下の少ない優れた熱安定性を有する含水系潤滑油組成物を提供するものである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定構造のグリコールを特定量含ませ、さらに特定のポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体を特定量含ませることにより、水―グリコール系作動液の耐熱性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表される1,3−プロパンジオールを15〜70質量%、及び平均分子量が3,000〜40,000のポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体を5 〜40質量%有し、該ポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体におけるポリオキシアルキレン部分がエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドの共重合体からなり、かつエチレンオキサイドに基づく繰り返し単位/ 他のアルキレンオキサイドに基づく繰り返し単位のモル比が25/75〜80/20であることを特徴とする水―グリコール系作動液を提供するものである。
HO−CH−CH−CH−OH (1)
また、本発明は、上記水―グリコール系作動液において、前記ポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体の平均分子量が5,000〜35,000の範囲である水―グリコール系作動液を提供するものである。
また、本発明は、上記水―グリコール系作動液において、前記エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドの共重合体におけるエチレンオキサイドに基づく繰り返し単位/
他のアルキレンオキサイドに基づく繰り返し単位のモル比が50/50〜80/20である水―グリコール系作動液を提供するものである。
本発明の水―グリコール系作動液は、熱安定性に優れており、長期の使用に亘り、そのメンテナンスを軽減することができる。
本発明の水―グリコール系作動液に使用される1,3−プロパンジオールは、前記一般式(1)で表わされる化合物である。
1,3−プロパンジオールの含有量は、水―グリコール系作動液全量に対して15〜70質量%の範囲で、水―グリコール系作動液が目標とする粘度となるように任意に設定することが好ましい。水―グリコール系作動液の目標とする粘度は、任意に設定できるが、40℃
動粘度が15.0 〜 115mm/secであることが好ましく、17.0 〜 50.0mm/secであることがさらに好ましく、17.0〜30.0mm/secであることが特に好ましい。
1,3−プロパンジオールの含有量は、水―グリコール系作動液全量に対して15〜70質量%であるが、特に好ましくは20〜65質量%である。含有量が15質量%未満では他の添加剤の溶解性が低下し、耐摩耗性が不足する可能性がある。また、70質量%を超えた1,3−プロパンジオールを含む場合には含水系潤滑油のメリットである難燃性が十分に発揮されない可能性がある。
上記含有量は、他の添加剤等の含有により、上記範囲において適量が異なるが、本1,3−プロパンジオールを含む水―グリコール系作動液が、“ JIS K2514( 潤滑油酸化安定度試験方法)”の第6項(回転ボンベ式酸化安定度試験方法)で規定される試験器を用いた安定性試験において、試験前後のpH、ギ酸量、酢酸量などの変化量が少なくなる添加量を選ぶことができる。なお、本試験の試験条件は、例えば、試験液量;80g、触媒;なし、試験温度;120℃、封入酸素圧;620kPa(@25℃)、試験時間18Hrである。
上記試験条件においては例えばpH変化量が、試験前後変化で好ましくは±2.0、特に好ましくは±1.0であり、また、例えば酢酸の増加量が試験後で好ましくは10ppm以下、ギ酸の増加量が好ましくは180ppm以下、特に好ましくは100ppm以下であるように添加されればよい。
本発明の水―グリコール系作動液は、液中に水分を含む。水の含有量は、水―グリコール系作動液全量に対して13〜85質量%が好ましく、25〜80質量%が好ましく、特に好ましくは32〜75質量%である。含有量が13質量%未満では水―グリコール系作動液のメリットである難燃性が十分に発揮されない可能性がある。また、85質量%を超えた水を含む場合には他の添加剤の溶解性が低下し、耐摩耗性が不足する可能性がある。
本発明の水―グリコール系作動液は、増粘剤を含有する
増粘剤としては、水溶性のポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体を使用することができる。具体的には、水溶性EO/プロピレンオキサイド(PO)共重合体などのEOと他のアルキレンオキサイドの共重合体、多価アルコールEOとPOとの共重合体又はEOと他のアルキレンオキサイド(例えば、1,2−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、α−オレフィンオキサイドなどの炭素数4以上のアルキレンオキサイド)との共重合体を付加して得られる化合物、もしくはそれらのアルキルエーテル誘導体が挙げられる。
このアルキルエーテル誘導体中のアルキルエーテル基におけるアルキル基の炭素数は、1〜4が好ましく、1〜3が特に好ましい。炭素数が4を超えた場合、ポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体の水に対する溶解性が不足する可能性がある。
水溶性のポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体の具体例としては、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレントリオール、ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル、ポリオキシアルキレングリコールジエーテル等が挙げられる。
EOと他のアルキレンオキサイドの共重合体、又は多価アルコールへの付加物としてのEOと他のアルキレンオキサイドの共重合体は、EOに基づく繰り返し単位/
他のアルキレンオキサイドに基づく繰り返し単位のモル比が25/75〜80/20であ、50/50〜80/20であることがより好ましく、65/35〜80/20であることが特に好ましい。EOのモル比が少な過ぎると含水系作動液組成物への溶解性が不足する場合がある。また、EOと他のアルキレンオキサイドの共重合体の付加様式は、ランダム付加であってもブロック付加であってもよい。また、これらのEOと他のアルキレンオキサイドの共重合体において、他のアルキレンオキサイドは、炭素数3〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、炭素数3〜4のアルキレンオキサイドがより好ましく、POが特に好ましい。
水溶性のポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体の平均分子量は3,000〜40,000の範囲であり、5,000
〜 35,000の範囲がより好ましい。平均分子量が3,000より低い場合には、本来の目的である増粘効果が小さく配合量を増やす必要が生じることから、相対的にグリコール類の配合比が少なくなり、系の溶解性が変わるため好ましくない。また、分子量が40,000を超えると、増粘剤の熱やせん断に対する安定性が損なわれる恐れがあり、また増粘剤が分解した際の性状変化が大きくなることから好ましくない。
増粘剤の含有量は、水―グリコール系作動液全量に対して5 〜40質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
本発明の水―グリコール系作動液においては、通常含水系潤滑油に用いられる成分である潤滑剤、気相および液相防錆剤、アルカリ化剤、金属不活性化剤、pH調整剤、消泡剤、着色剤および任意の添加剤を必要に応じて、配合することができる。
潤滑剤としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、芳香族脂肪酸、ダイマー酸などが挙げられる。これらの脂肪酸は1
種単独で用いても良いし、2 種以上を混合使用してもよい。
液相または気相防錆剤としては、例えば、モルホリン、アルキル化モルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3 −
アミノ− 1 − プロパノール、1 − アミノ− 2 − プロパノール、3 − メトキシプロピルアミン、3 − エトキシプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、シクロヘキシルアミン、N -メチルエタノールアミン、N -メチルジエタノールアミン、N -エチルエタノールアミン、N -エチルジエタノールアミン、N -n -ブチルエタノールアミン、N -n -ブチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、N - (β -アミノエチル)エタノールアミン、1 , 4 − ビス( 2 −
ヒドロキシエチル) イミダゾリン、ヒドロキシエチルピペラジン、2 − メチルピペラジン、2 , 5 − ジメチルピペラジン、2 , 6 − ジメチルピペラジンなどの有機アミンおよびその誘導体、カルボン酸アルカリ金属塩などが挙げられる。これらの液相あるいは気相防錆剤は1
種単独で用いても良いし、2種以上を混合使用してもよい。
pH調整剤としては、上記の気相または液相防錆剤として挙げたものに加え、例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物が挙げられる。これらp
H 調整剤の配合により、作動液のpHを8〜11程度に調整することが好ましい。pHが低すぎると液中に存在する潤滑剤の溶解性が不足し、スラッジ化する恐れがある。また、pHが高すぎると水―グリコール系作動液の耐摩耗性能の低下を生じる場合がある。
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5
− メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾールおよびそれらのアルカリ金属塩又はアミン塩などのベンゾトリアゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾールおよびそのアルカリ金属塩等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物などが、着色剤としては、例えば、アルコール系着色剤、金属系着色剤などが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明をする。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
(作動液の評価)
上記作動液の安定性について、回転ボンベ式酸化安定度試験器を用いて安定性の評価を行った。この試験器は“ JIS
K2514( 潤滑油酸化安定度試験方法)”の第6項に規定されるものである。試験後液のpHおよび酢酸、ギ酸の変化により評価を行った。変化量が少ないほど作動液の安定性が優れる。試験条件は下記のとおりである。
試験液量; 80g
触媒 ; なし
試験温度; 120℃
封入酸素圧; 620 kPa ( @25℃ )
試験時間; 18Hr
(実施例1〜3)
表1に示された成分を、表1に示された配合量で混合して含水系潤滑油組成物を調製した。その調製された含水系潤滑油組成物を用いて上記試験により、評価した。
(比較例1〜4)
表1に示された成分を、表1に示された配合量で混合して含水系潤滑油組成物を調製した。その調製された含水系潤滑油組成物を用いて上記試験により、評価した。
実施例および比較例に用いた増粘剤はポリオキシエチレン/オキシプロピレングリコールで、EOに基づく繰り返し単位/POに基づく繰り返し単位のモル比は75/25のランダム共重合体、平均分子量が29,000のものである。
なお、表1において、水の配合量がバランスと表示されているのは、各成分の配合量の合計量が100質量%になるように、調整して決定された水の配合量であるという意味である。
Figure 0005547550
本発明の含水系潤滑油組成物は、水−グリコール系作動液として適用できるが、それ以外に、W / O エマルション型およびO / W エマルション型作動液、圧延油、鍛造油、引抜き油、切削油などにも適用できる。

Claims (3)

  1. 1,3−プロパンジオールを15〜70質量%、及び平均分子量が3,000〜40,000のポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体を5 〜40質量%有し、該ポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体におけるポリオキシアルキレン部分がエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドの共重合体からなり、かつエチレンオキサイドに基づく繰り返し単位/ 他のアルキレンオキサイドに基づく繰り返し単位のモル比が25/75〜80/20であることを特徴とする水―グリコール系作動液
  2. 前記ポリオキシアルキレンポリオールまたはそのアルキルエーテル誘導体の平均分子量が5,000〜35,000の範囲である請求項1記載の水―グリコール系作動液
  3. 前記エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドの共重合体におけるエチレンオキサイドに基づく繰り返し単位/ 他のアルキレンオキサイドに基づく繰り返し単位のモル比が50/50〜80/20である請求項1又は2に記載の水―グリコール系作動液
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