JP5545172B2 - 結晶性ポリイミドの製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、テトラカルボン酸あるいはそのアルキルエステル体(アルキル基は炭素数1〜5)とジアミンとからなるナイロン塩型モノマーを、第一段階として固相重合を行った後、続いて第二段階において貧溶媒中で、固相重合温度より高い温度において懸濁重合させるポリイミドの製造方法である。
さらに本発明は、ピロメリット酸と脂肪族環を有するジアミンとから得られる下記(1)〜(3)の性状を有するポリイミドである。
(1)示差走査型熱量計で測定される20℃/minにおける降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以上である。
(2)25℃において濃硫酸(96%)20mlに0.1g以上溶解する。
(3)濃硫酸(96%)を溶媒として用い、濃度0.5g/dl、30℃で測定した対数粘度の値が1.0dl/g以上である。
例えば、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、ピロメリット酸、3, 3’,4, 4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸等が推奨され、それらのアルキルエステル体を使用することも可能である。これらのうち、ピロメリット酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が好適に使用できる。
例えば、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(3-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,6-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、シロキサンジアミン類、4, 4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等が推奨される。これらのうち、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等が好適に使用できる。
(1)示差走査型熱量計で測定される20℃/minにおける降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以上である。
(2)25℃において濃硫酸(96%)20mlに0.1g以上溶解する。
(3)濃硫酸(96%)を溶媒として用い、濃度0.5g/dl、30℃で測定した対数粘度の値が1.0dl/g以上である。
μ=ln(ts/t0)/C
t0: 溶媒の流れる時間
ts : 希薄高分子溶液の流れる時間
C : 0.5g/dl
反応器中でピロメリット酸(三菱ガス化学製)70.0g(0.28mol)をメタノール(三菱ガス化学製)/水=1/1の混合溶媒500ml中に溶解し65℃とした。1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学製)39.2g(0.28mol)をメタノール/水=1/1の混合溶媒300mlに溶解させたものを反応器中に滴下し、発熱がとまった後に室温まで冷却した。析出してきた結晶をろ過し、80℃で加熱乾燥し、ナイロン塩型モノマー(ナイロン塩型モノマー1)102g(収率93%)を得た。イミド化開始温度は210℃、イミド化完結温度は249℃であった。
得られたナイロン塩型モノマー1、150gを熱風乾燥機の中に入れ、空気雰囲気下で220℃まで昇温した。220℃まで昇温してから1時間後に反応物を取り出し、3lオートクレーブ中に投入した。
さらに貧溶媒として2-(2-メトキシエトキシ)エタノール(キシダ化学製)1200gとイオン交換水300gを加え、密閉した後に、窒素置換を行った。250℃まで昇温し、ゲージ圧2.2MPaとなったところから2時間反応を行った後、回収、ろ過、洗浄を行い、さらに乾燥機で140℃、2時間乾燥を行い、116gのポリイミド1を得た。このポリイミド1をDSC測定した結果、昇温1度目にはTmが400℃に観測されるのみであり、Tg、Tcは観測されなかった(高い結晶化度を有している)。冷却時にはTcが340℃(発熱量18.6J/g)に観測され、高い結晶性を有していることが確認された。また、昇温2度目ではTgが260℃、Tmが400℃に観測された。また、対数粘度を測定したところ、1.6dl/gであった。
ナイロン塩型モノマー1を固相重合のみを行った場合の比較例を以下に示す。
ナイロン塩型モノマー1、150gを加熱乾燥機の中に入れ、窒素雰囲気下とした後に250℃まで昇温した。2時間後に反応物を取り出し(ポリイミド1-2)、物性を評価した。対数粘度はポリイミド1-2が濃硫酸にも不溶化するため測定が不可能であった。DSC測定では昇温1度目にはTgが260℃、Tcが340℃、Tmが400℃に観測されるがTc、Tmは微弱なものであった。また、冷却時にTcは観測されなかった。昇温2度目では昇温1度目同様のピークが観測された。本発明の製造方法である実施例1で得られたポリイミド1に比べ結晶性、溶解性に顕著な差が見られた。
ピロメリット酸二無水物(三菱ガス化学製) 196g(0.899mol)とイソプロピルアルコール(関東化学製) 505gを3lオートクレーブ中に投入した。80℃、3時間、加熱攪拌した後、50℃まで冷却した。冷却後、シリンジによって1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン128g(0.899mol)とイオン交換水 252gを導入し、220℃まで昇温した後、2時間攪拌した。室温まで冷却後、回収、ろ過、洗浄を行い、さらに真空乾燥機で100℃、18時間乾燥を行い、243gのポリイミド1-3を得た。DSC測定した結果、昇温1度目ではTg、Tcが観測されず、Tmが400℃であった。冷却時にはTcは観測されず、また、昇温2度目においてもTc、Tmは観測されずに、Tgのみが観測されたため、本発明の製造方法で得られたポリイミド1に比べ結晶性の顕著な差が確認された。対数粘度は、1.7dl/gであった。
反応器中でピロメリット酸5.16g(0.0443mol)をメタノール30ml中に溶解した。ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(セラニーズケミカルズ品)7.50g(0.0443mol)をメタノール30mlに溶解させたものを反応器中に滴下し、発熱がとまった後に室温まで冷却した。得られた溶液をエタノール(関東化学製)300ml中に滴下して固体を析出させ、ろ過によって回収した。回収した固体をエタノール/水=2/1混合溶媒95mlによって再結晶し、析出してきた結晶をろ過した後、80℃で加熱乾燥し、目的とするナイロン塩型モノマー(ナイロン塩型モノマー2)4.43g(収率35%)を得た。イミド化開始温度は204℃、イミド化完結温度は241℃であった。
得られたナイロン塩型モノマー2、1.0gを加熱乾燥機の中に入れ、窒素雰囲気下とした後に220℃まで昇温した。220℃まで昇温してから1時間後に反応物を取り出し、20mlオートクレーブ中に投入した。
さらに貧溶媒として2-(2-メトキシエトキシ)エタノール8gとイオン交換水1gを加え、密閉した後に、窒素置換を行った。250℃まで昇温し、ゲージ圧1.5MPaとなったところから2時間反応を行った後、回収、ろ過、洗浄を行い、さらに乾燥機で180℃、2時間乾燥を行い、ポリイミド2を得た。このポリイミド2をDSC測定した結果、昇温一度目ではTg、Tcは観測されずTmが360℃に観測されたことから結晶化したポリイミドが得られたことが確認された。冷却時にはTcは観測されず、昇温二度目にはTgのみが272℃に観測された。また、対数粘度を測定したところ、0.74dl/gであった。
ナイロン塩型モノマー2を固相重合のみを行った場合の比較例を以下に示す。ナイロン塩型モノマー2を使用した以外は比較例1と同様の方法でポリイミド2-2を合成し、物性を評価した。対数粘度はポリイミドが濃硫酸にも不溶化するため測定が不可能であった。DSC測定では昇温一度目、冷却時、昇温二度目の各段階においても、Tgが270℃に観測されるのみでありTm、Tcは存在せず、本発明の製造方法で得られたポリイミド2に比べ結晶性、溶解性に顕著な差が見られた。
反応器中でピロメリット酸5.0g(0.0197mol)をメタノール40ml中に溶解した。1,6-ヘキサメチレンジアミン(和光純薬製)2.3g(0.0197mol)をメタノール40mlに溶解させたものを反応器中に滴下し、ナイロン塩型モノマーを析出させ、発熱がとまった後に室温まで冷却した。得られた固体をろ過によって回収し、80℃で2時間乾燥した。回収した固体を水60ml、90℃まで加熱し溶解させ再結晶を行った。ろ過によって結晶を回収し、80℃で加熱乾燥し、目的とするナイロン塩型モノマー(ナイロン塩型モノマー3)6.9g(収率95%)を得た。イミド化開始温度は237℃、イミド化完結温度は267℃であった。
ナイロン塩型モノマー3を用い、固相重合温度を230℃とした以外は実施例2と同様の方法で合成を行い、ポリイミド3を得た。得られたポリイミド3をDSC測定した結果、昇温一度目ではTg、Tcは観測されずTmが455℃に観測された。冷却時には389℃にピークトップを持つTc(発熱量21.5J/g)ピークが観測された。昇温2度目にはTgは観測されず、Tmが413℃に観測された。また、対数粘度を測定したところ、2.1dl/gであった。
ナイロン塩型モノマー3を固相重合のみを行った場合の参考例を以下に示す。ナイロン塩型モノマー3を使用した以外は比較例1と同様の方法でポリイミド3-2を合成し、物性を評価した。濃硫酸に溶解させたものを対数粘度測定したところ、0.94dl/gと本発明の製造方法で得られたポリイミド3に比べ顕著な差が見られた。DSC測定した結果、昇温一度目ではTg、Tcは観測されずTmが455℃に観測され、冷却時には389℃にピークトップを持つTc(発熱量15.3J/g)が観測された。昇温2度目にはTgは観測されず、Tmが413℃に観測された。熱的性質は本発明の製造方法によるポリイミド3と同等のものであることが確認された。
ピロメリット酸二無水物1.50g(0.00687mol)とイソプロピルアルコール10.0gを20mlオートクレーブ中に投入した。80℃、3時間、加熱攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、1,6-ヘキサメチレンジアミン0.799g(0.00687mol)とイオン交換水 5.0gを導入し、220℃まで昇温した後、2時間攪拌した。室温まで冷却後、回収、ろ過、洗浄を行い、さらに真空乾燥機で100℃、18時間乾燥を行い、1.60g(収率89%)のポリイミド3-3を得た。ポリイミド3-3を濃硫酸に溶解させようとしたところ不溶化し、本発明の製造方法で得られたポリイミド3に比べ顕著な差が見られた。DSC測定した結果、分解温度と融点が極端に近かったため、正確な熱物性を得ることができなかった。
Claims (2)
- ピロメリット酸と脂肪族環を有するジアミンとから得られる下記(1)〜(3)の性状を有するポリイミド。
(1)示差走査型熱量計で測定される20℃/minにおける降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以上である。
(2)25℃において濃硫酸(96%)20mlに0.1g以上溶解する。
(3)濃硫酸(96%)を溶媒として用い、濃度0.5g/dl、30℃で測定した対数粘度の値が1.0dl/g以上である。 - 脂肪族環を有するジアミンが1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである請求項1記載のポリイミド。
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