JP5544995B2 - 熱交換器 - Google Patents

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Description

本発明は、水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器に関するものであり、水と冷媒とを熱交換して水を加熱するヒートポンプ式給湯器に搭載される水冷媒熱交換器に用いて好適である。
特許文献1に開示されているように、一般的な水冷媒熱交換器は、水流路を内部に形成する水側チューブおよび冷媒流路を内部に形成する冷媒側チューブの構成材料として、水道水環境下において耐食性実績のあるCu金属を採用している。しかし、Cu金属は高価であるとともに、微細化加工が困難なため、例えば、微細多穴チューブを形成できず、水冷媒熱交換器の小型高性能化が困難である。
これに対して、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器は、水側チューブをCu金属で構成し、冷媒側チューブをAl金属で構成している。これによると、冷媒側チューブをCu金属よりも安価なAl金属で構成しているので、低コスト化が可能となる。さらに、Al金属は微細化加工が可能なため、押出加工による微細多穴チューブの製造が可能となり、冷媒チューブを微細多穴チューブで構成することで、水冷媒熱交換器の小型高性能化が可能となる。
また、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器では、一方のチューブの外面に、他方のチューブと同じ金属からなるメッキ層を形成しており、このメッキ層を間にして相互にメカニカルに接触させている。これは、Cu金属とAl金属との異種金属同士が接触する場合、水分等の電解質溶液の付着によって異種金属接触腐食(電食)が生じ、Al金属からなる冷媒チューブに穴があいて冷媒漏れが起きてしまうので、両接触面を同じ金属とすることで、この電食の防止を図ったものである。なお、異種金属が接触していない場合でも、異種金属間に水分等が存在すると異種金属間での電気化学反応により腐食が生じる。
また、水冷媒熱交換器ではないが、Al金属とCu金属とを金属的に接合する技術が特許文献3、4に開示されている。
特許第3954891号公報 特許第3796172号公報 特開2001−87866号公報 特開2004−1069号公報
しかし、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器では、水側チューブと冷媒側チューブとをメカニカルに接触させているだけであるため、両者の間に隙間が存在する等の理由により、接触部での熱抵抗が大きく、熱交換性能が悪くなってしまうという問題がある。
なお、特許文献3、4には電食の防止については記載されておらず、特許文献3、4に開示の接合技術を、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器に適用しようとしても、異種金属間での接合のため、冷媒側チューブに腐食が生じる恐れがある。
本発明は上記点に鑑みて、水側チューブの母材としてCu金属を用い、冷媒側チューブの母材としてAl金属を用いた水冷媒熱交換器において、冷媒側チューブの腐食による穴あきを防止しつつ、従来よりも熱交換性能を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水側チューブ(20)母材(21)の表面にAl金属層(22)が直接形成されることにより、水と冷媒との熱交換部位での外面全体に、Al金属層(22)が形成されており、
水側チューブ(20)と冷媒側チューブ(30)とは、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材を用いたろう接によって金属的に接合されていることを特徴としている。
これによると、水側チューブの外面に、冷媒側チューブの母材と同じAl金属で構成されたAl金属層を形成しており、両チューブの接合を同種金属間で行っているので、両チューブ間での異種金属による電食の発生を防止でき、冷媒側チューブの腐食による穴あきを防止できる。
そして、両チューブをろう接によって金属的に接合しているので、両チューブをメカニカルに接触させている場合と比較して、接続箇所での熱抵抗を格段に小さくでき、熱交換性能を向上させることができる。
さらに、水側チューブ(20)と冷媒側チューブ(30)とのろう接では、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材を用いているので、ろう接の際に、水側チューブの外面に形成したAl金属層が溶融しないようにすることができる。
請求項1に記載の発明においては、ろう接の際に用いる溶加材として、請求項に記載のように、水側チューブと冷媒側チューブとの接合部を構成する金属の自然電位がAl金属よりも低くなるものを用いることが好ましい。
これにより、仮に、冷媒側チューブ外面と接合部とにわたって水分が存在して電食が生じても、冷媒側チューブを構成するAl金属の方が接合部を構成する金属よりも自然電位が高いので、冷媒側チューブが腐食しないようにできる。
また、請求項1、2に記載の発明においては、請求項に記載のように、Al金属層(22)は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工もしくは同時押出加工、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いた金属加工または母材の外面への溶射によって形成されたものであることが好ましい。さらに、これらのうちでは、溶射による形成が好ましく、同時引抜加工もしくは同時押出加工や、クラッド材を用いた金属加工がより好ましい。これは、Al金属層をメッキで形成することもできるが、溶射で形成した方が、メッキで形成した場合と比較して、欠陥部の発生を抑制でき、同時引抜加工、同時押出加工、クラッド材を用いた金属加工によって形成した方がさらに欠陥の発生を抑制できるからである。これにより、欠陥部からの水分の浸入による母材とAl金属層との間で生じる電食を抑制できる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
本発明の第1実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図である。 図1中の水冷媒熱交換器の正面図である。 図2中のIII−III線断面図である。 第2実施形態における水冷媒熱交換器の断面図である。 第3実施形態における水冷媒熱交換器の断面図である。 (a)、(b)、(c)は、それぞれ、第4実施形態における水冷媒熱交換器の正面図、水側チューブの断面図、冷媒側チューブの断面図である。 (a)、(b)、(c)は、それぞれ、第4実施形態の変形例における水冷媒熱交換器の正面図、水側チューブの断面図、冷媒側チューブの断面図である。 第5実施形態における水冷媒熱交換器の断面図である。 第6実施形態における水冷媒熱交換器の断面図である。 (a)、(b)、(c)は、それぞれ、第7実施形態における水冷媒熱交換器の正面図、水側チューブの断面図、冷媒側チューブの断面図である。 (a)、(b)、(c)は、それぞれ、第7実施形態の変形例における水冷媒熱交換器の正面図、水側チューブの断面図、冷媒側チューブの断面図である。 (a)、(b)は、それぞれ、他の実施形態における水冷媒熱交換器の正面図および断面図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る熱交換器をヒートポンプ式給湯器の水冷媒熱交換器に適用したものである。図1に、本実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図を示す。
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯器は、給湯水を貯留する貯湯タンク10、貯湯タンク10内の給湯水を循環する水循環通路11、および、給湯水を加熱するためのヒートポンプサイクル装置12を備えている。
貯湯タンク10は、高温の給湯水を長時間保温することができる温水タンクである。貯湯タンク10に貯留された給湯水は、貯湯タンク10の上部に設けられた出湯口10aから出湯され、台所や風呂等に給湯される。貯湯タンク10内の下部に設けられた給水口10bから水道水が補給されるようになっている。
水循環通路11には、給湯水を循環させる電動水ポンプ13が配置されており、給湯水は、貯湯タンク10下部の給湯水出口10c→電動水ポンプ13→水冷媒熱交換器15→貯湯タンク10上部の給湯水入口10dの順に流れる。
ヒートポンプサイクル装置12は、電動圧縮機14、水冷媒熱交換器15、膨張弁16、蒸発器17等を順次配管接続したものであり、周知の冷凍サイクルを構成している。
水冷媒熱交換器15は、給湯水が流れる水流路15aと、電動圧縮機14吐出後の高温高圧の冷媒が流れる冷媒流路15bとを有し、給湯水と電動圧縮機14吐出後の高温冷媒との間で熱交換させて、給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。
次に、本実施形態の水冷媒熱交換器15の具体的構造について説明する。図2に水冷媒熱交換器15の正面図を示し、図3に図2中のIII−III線断面図を示す。
図2、3に示すように、水冷媒熱交換器15は、水流路15aが内部に形成された水側チューブ20と、冷媒流路15bが内部に形成された冷媒側チューブ30とを備えている。
図2に示すように、本実施形態の水冷媒熱交換器15は、複数本(本例では2本)の水側チューブ20が螺旋状に巻き付けられた形状であって、冷媒側チューブ30が水側チューブ20に螺旋状に巻きつけられた形状となっている。
水側チューブ20の両端部には、複数の水流路へ水を分配させ、または、複数の水流路から流出の水を集合させる水側ヘッダ20aが設けられている。同様に、冷媒側チューブ30の両端部には、複数の冷媒流路へ冷媒を分配させ、または、複数の冷媒流路から流出の冷媒を集合させる冷媒側ヘッダ30aが設けられている。
水側チューブ20は、水道水環境下での耐食性が高いCu金属製であり、冷媒側チューブ30はAl金属製である。
具体的には、図3に示すように、水側チューブ20は、横断面が円形状であり、1つの水流路15aが内部に形成されている円筒チューブである。水側チューブ20は、母材(心材)21としてCu金属が用いられており、その外面にAl金属層22が形成されている。なお、母材は、チューブを主に構成する材料であり、少なくともチューブの内面を形成している。
Al金属層22は、水側チューブ20の横断面において、水側チューブ20の外面全体に形成されており、Cu金属からなる母材21を完全に覆っている。
また、Al金属層22は、水と冷媒との間の熱交換が行われる熱交換部位(熱交換コア部)、すなわち、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とが接続されている範囲に形成されている。なお、熱交換部位以外については、Al金属層22を形成したり、省略したりしても良い。
水側チューブ20は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成されたものである。なお、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いたプレス加工等の金属加工をしたり、Cu金属で形成されたチューブの外面にAl金属を溶射したりして、水側チューブ20を形成しても良い。
一方、冷媒側チューブ30は、横断面が扁平形状であって、1つのチューブ内に複数の冷媒流路15bが形成された微細多穴チューブである。冷媒側チューブ30は、母材31としてAl金属が用いられており、Al金属材料の押出加工または引抜加工によって形成されたものである。
なお、冷媒側チューブ30は、その外面にAl−Zn合金等からなる犠牲腐食層32が形成されている。犠牲腐食層32は、Al製のチューブ表面にZn溶射等によって形成される。この犠牲腐食層32は、冷媒側チューブ30の母材31よりも腐食し易い材料構成とすることで、母材31の腐食を防止するためのものであるが、省略しても良い。
そして、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とは、ろう接によって金属的に接合されている。すなわち、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とが接触した状態で、接合部40によって両者が接合している。
因みに、「ろう接」とは、例えば「接続・接合技術」(東京電機大学出版局)に記載されているように、溶加材(ろう材やはんだ)を用いて母材を接合する技術を意味する。融点が450℃以上の溶加材を用いて接合するときをろう付けと言い、その際の溶加材をろう材と呼び、融点が450℃未満の溶加材を用いて接合するときをはんだ付けと言い、その際の溶加材をはんだと呼ぶ。
本実施形態では、ろう接に用いる溶加材として、AlとCuとの共晶温度である548℃よりも融点が低く、かつ、水側チューブ20と冷媒側チューブ30との接合部40を構成する金属の自然電位がAl金属よりも低くなるものを用いる。このような溶加材としては、例えば、Zn金属、Sn金属が挙げられる。
ここで、Alの融点ではなく、AlとCuとの共晶温度よりも低い温度とするのは、ろう接の際の加熱によって、水側チューブ20の母材21とAl金属層22との間で金属原子が拡散するためである。これにより、ろう接の際に、水側チューブ20のAl金属層22が溶融しないようにすることができる。
また、接合部40を構成する金属の自然電位がAl金属よりも低くなっていれば、仮に、冷媒側チューブ30の母材31を構成するAl金属と接合部40を構成する金属とにわたって水分が存在して電気化学反応が生じても、自然電位が低い接合部が腐食し、冷媒側チューブ30の母材31が腐食しないようにできる。この結果、冷媒側チューブ30の腐食による穴あきを防止することができる。なお、Sn金属は単体ではAl金属よりも自然電位が高いが、Sn金属を溶加材としてろう接したときの接合部は、SnとAlとが拡散してSn/Al合金となっており、このSn/Al合金は、Al金属よりも自然電位が低くなる。
次に、本実施形態の主な特徴について説明する。
(1)本実施形態の水冷媒熱交換器15は、水側チューブ20を主にCu金属で構成し、冷媒側チューブ30をCu金属よりも安価なAl金属で構成しているので、両方のチューブをCu金属で構成する場合と比較して、低コスト化が可能となる。
また、Al金属は微細化加工が可能なため、押出加工等による微細多穴チューブの製造が可能である。ここで、チューブ内に同じ冷媒流量を流す場合、チューブ内に1つの冷媒流路が形成されている場合よりも、複数の冷媒流路が形成されている方が、冷媒流路の流路断面積が小さくなるので、冷媒と水との間での熱交換性能が向上する。また、複数本のチューブを別体で形成するよりも、1つのチューブで形成した方が、チューブ全体のサイズを小さくできる。よって、冷媒側チューブ30を微細多穴チューブで構成することで、水冷媒熱交換器の小型高性能化が可能となる。
(2)Cu金属とAl金属とを接触させた場合、電解質溶液が存在すると、異種金属による電食が生じ、両金属のうち自然電位が低いAl金属に腐食が生じてしまう。
これに対して、本実施形態では、母材21がCu金属で構成された水側チューブ20の外面全体に、Al金属層22を形成している。そして、水側チューブ20を、このAl金属層22を介して、母材31がAl金属である冷媒側チューブ30と接合している。
このように、水側チューブ20と冷媒側チューブ30との接合を同種金属間で行っているので、両チューブ間での異種金属による電食の発生を防止でき、冷媒側チューブ30の腐食による穴あきを防止できる。
なお、冷媒側チューブ30の外面に犠牲腐食層32を形成していない場合、冷媒側チューブ30の母材(Al金属)31と水側チューブ20のAl金属層22とを接合しているので、水側チューブ20と冷媒側チューブ30との接合を同種金属間で行っている。また、冷媒側チューブ30の外面に犠牲腐食層32を形成している場合、この犠牲腐食層32を介して、冷媒側チューブ30の母材(Al金属)31と水側チューブ20のAl金属層22とが接合されるので、同種金属間で接合されていると言える。
また、Cu金属とAl金属とをろう接する場合、両方の金属に対して良好な接合が得られる溶加材を選択しなければならないが、本実施形態によると、Al金属と良好に接合する溶加材を選定すれば良いので、ろう接による接合が容易となる。
また、本実施形態と異なり、Cu金属とAl金属とを、直接、ろう接によって金属的に接合した場合、両者の接合部には、金属原子の拡散によって、ろう接に用いた溶加材の金属成分とCuまたはAlとの合金の他に、CuとAlとの合金(Al/Cu合金)が形成される。このAl/Cu合金は脆いことから、このCu金属とAl金属とを、直接、ろう接によって金属的に接合した場合では、チューブ同士の良好な接合が得られないという問題がある。
これに対して、本実施形態では、Al金属とAl金属とをろう接によって金属的に接合(犠牲腐食層32がある場合は、Al金属とAl/Zn合金とを接合)するので、接合部40にAl/Cu合金が形成されるのを防止でき、チューブ同士の良好な接合が得られる。
(3)本実施形態の水冷媒熱交換器15は、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とをろう接によって金属的に接合しているので、両チューブをメカニカルに接触させている特許文献2に記載の技術と比較して、接続箇所での熱抵抗を格段に小さくできる。この結果、両チューブ間の熱伝導量を多くできるので、熱交換性能を向上させることができる。
(4)ところで、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器では、一方のチューブの外面に、他方のチューブと同じ金属からなるメッキ層を形成していた。一般に、メッキ層は欠陥を多く有しており、その欠陥部分では、チューブの母材がメッキ層から露出した状態となる。このため、その欠陥部分に水分が浸入すると、チューブの母材とメッキ層との間で異種金属による電食が生じてしまう。
これに対して、本実施形態では、水側チューブ20をCu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成している。これにより、水側チューブ20の外面に形成されたAl金属層22は、メッキ層と比較して欠陥が少ないか、ほとんど欠陥が存在しないので、水側チューブ20の母材21とAl金属層22との間での異種金属による電食が生じるのを抑制できる。
なお、水側チューブ20をCu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いた金属加工によって形成した場合や、溶射によって母材の外面にAl金属層22を形成した場合においても、同様の効果が得られる。ただし、Al金属層22の形成については、同時引抜加工または同時押出加工を行う場合や、クラッド材を用いる場合の方が、溶射よりも好ましい。これらの場合の方が溶射よりも欠陥の発生を抑制できるからである。
また、特許文献2には、Cu製の水側チューブとAl製の冷媒側チューブのうち、冷媒側チューブの外面にCuメッキ層を形成した水冷媒熱交換器が記載されている。このため、Cuメッキ層の欠陥部分に水が浸入すると、冷媒側チューブの母材(Al金属)とCuメッキ層との間で異種金属による電食が生じる。
ここで、異種金属接触腐食では、カソード側の金属と電解質溶液との接触面積が大きい場合、アノード側の金属の腐食量が多くなる傾向がある。このことから、冷媒側チューブの外面にCuメッキ層を形成した場合では、最外面に位置するCuメッキ層がカソード側となり、Cuメッキ層の露出面積が大きいので、アノード側のAl金属の腐食量が多くなり、冷媒側チューブに、冷媒流路に達する程の穴あきが発生し易いという問題がある。
これに対して、本実施形態では、水側チューブ20と冷媒側チューブ30のうち、水側チューブ20の外面にAl金属層22を形成している。このため、AL金属層22に欠陥が生じたとしても、カソード側となるCu金属表面は、Al金属層22でほとんど覆われており、Cu金属の露出面積が小さいため、アノード側のAl金属の腐食量が少ない。したがって、水側チューブ20のAl金属層22に腐食が生じたとしても、その腐食量が少ないので、冷媒側チューブ30まで腐食がほとんど生じないので、冷媒側チューブ30に冷媒流路まで達する程の穴あきは発生しない。
(第2実施形態)
図4に本実施形態における水冷媒熱交換器の断面図を示す。以下では、第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、水側チューブ20において、母材21とAl金属層22との間に中間金属層23を形成している。中間金属層23は、母材21およびAl金属層22とは異なる金属で構成されている。中間金属層23を構成する金属としては、Alとの共晶温度が、AlとCuとの共晶温度(548℃)よりも高い金属を用いることが好ましく、例えば、Fe金属が挙げられる。
本実施形態では、ろう接に用いる溶加材として、中間金属層23を構成する金属とAlとの共晶温度よりも融点が低いものを用いるが、AlとCuとの共晶温度である548℃よりも融点が高いものを用いることができる。
(第3実施形態)
図5に本実施形態における水冷媒熱交換器の断面図を示す。
第1実施形態では、冷媒側チューブ30が微細多穴チューブであったが、本実施形態では、冷媒側チューブ30は横断面が楕円形状で1つの冷媒流路15bが内部に形成されたものである。冷媒側チューブ30は母材31のみによって構成されている。
一方、水側チューブ20も横断面が楕円形状で1つの水流路15aが内部に形成されている。水側チューブ20は、第1実施形態と同様の製法によって形成されたものである。
そして、水冷媒熱交換器は、1本の水側チューブ20と、1本の冷媒側チューブ30とが互いに平行に配置された形状となっている。このように、水側チューブ20、冷媒側チューブ30の形状や、水冷媒熱交換器の形状を変更することができる。
また、本実施形態では、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とがろう接によって金属的に接合されており、両者の接合は、接合部40を介して、水側チューブ20のAl金属層22と、冷媒側チューブ30のAl金属との間で行われている。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
図6(a)に本実施形態における水冷媒熱交換器の正面図を示し、図6(b)に図6(a)中の水側チューブの断面図を示し、図6(c)に図6(a)中の冷媒側チューブの断面図を示す。
本実施形態では、水側チューブ20と冷媒側チューブ30の両方とも、横断面円形状であって、1つの流路15a、15bが内部に形成された円筒チューブとし、水冷媒熱交換器15を、直線形状(直管)の水側チューブ20の外面に、冷媒側チューブ30を螺旋状に巻きつけた形状としている。
本実施形態においても、図6(b)に示すように、水側チューブ20は、母材21の外側にAl金属層22が形成されている。この水側チューブ20は、第1実施形態と同様の製法によって形成されたものである。そして、第1実施形態と同様に、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とがろう接によって金属的に接合されており、両者の接合は、水側チューブ20外面のAl金属層22と、冷媒側チューブ30のAl金属との間で行われている。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、図7(a)、(b)、(c)は、それぞれ、本実施形態の変形例における水冷媒熱交換器の正面図、水側チューブの断面図、冷媒側チューブの断面図である。図6に示す水冷媒熱交換器15では、冷媒側チューブ30として円筒チューブを用いたが、図7(c)に示すように、冷媒側チューブ30として微細多穴チューブを用いることもできる。
(第5実施形態)
図8に本実施形態における水冷媒熱交換器の断面図を示す。本実施形態の水冷媒熱交換器15は、水側チューブ20と冷媒側チューブ30の形状が第1実施形態で説明した図2に示すものと同じ形状であるが、水側チューブ20と冷媒側チューブ30の横断面での構成が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる点を説明する。
図8に示すように、冷媒側チューブ30は、第1実施形態と同様に微細多穴チューブであるが、その外面全体にCu金属層33が形成されている。この冷媒側チューブ30は、母材31としてAl金属が用いられており、Al金属材料の押出加工または引抜加工によってチューブを形成した後、溶射等によってCu金属層33を形成したものである。
一方、水側チューブ20は、Cu金属からなる母材21のみで構成されており、外面はCu金属で形成されている。
そして、Cu金属層33を介して、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とがろう接によって金属的に接合されている。すなわち、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とが接触した状態で、接合部50によって両者が接合している。
本実施形態では、ろう接に用いる溶加材として、AlとCuとの共晶温度である548℃よりも融点が低く、かつ、水側チューブ20と冷媒側チューブ30との接合部50を構成する金属の自然電位がCu金属よりも低くなるものを用いる。このような溶加材としては、例えば、Zn金属、Sn金属が挙げられる。
これにより、ろう接の際に、冷媒側チューブ30のCu金属層33が溶融しないようにすることができるとともに、仮に、冷媒側チューブ30の外面と接合部50を構成する金属との間に水分が存在して電食が生じても、自然電位が低い接合部50が腐食し、冷媒側チューブ30が腐食しないようにできる。
以上の通り、本実施形態の水冷媒熱交換器15は、母材31がAl金属で構成された冷媒側チューブ30の外面全体にCu金属層33を形成し、冷媒側チューブ30のCu金属層33と、Cu金属で構成された水側チューブ20とをろう接によって接合している。
このように、水側チューブ20と冷媒側チューブ30との接合を同種金属間で行っているので、両チューブ間での異種金属による電食の発生を防止でき、冷媒側チューブ30の腐食による穴あきを防止できる。
また、本実施形態では、冷媒側チューブ30のCu金属層33を溶射によって形成しているので、メッキで形成した場合と比較して、欠陥部の発生を抑制でき、欠陥部からの水分の浸入による母材(Al金属)31とCu金属層33との間で生じる電食を抑制できる。
(第6実施形態)
図9に本実施形態における水冷媒熱交換器の断面図を示す。
本実施形態は、第5実施形態の水冷媒熱交換器15を、第3実施形態の形状に変更したものである。すなわち、冷媒側チューブ30は横断面が楕円形状で1つの冷媒流路15bが内部に形成されたものである。同様に、水側チューブ20も横断面が楕円形状で1つの水流路15aが内部に形成されている。
このため、本実施形態では、冷媒側チューブ30を、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成することができる。なお、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いたプレス加工等の金属加工をしたり、Al金属で形成されたチューブの外面にCu金属を溶射したりして、冷媒側チューブ30を形成しても良い。ただし、Cu金属層33に発生する欠陥を抑制するという観点では、同時引抜加工または同時押出加工を行う場合や、クラッド材を用いる場合の方が、溶射よりも好ましい。
また、本実施形態では、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とがろう接によって金属的に接合されており、両者の接合は、接合部50を介して、水側チューブ20を構成するCu金属と、冷媒側チューブ30外面のCu金属層との間で行われている。これにより、本実施形態においても、第5実施形態と同様の効果が得られる。
(第7実施形態)
図10(a)に本実施形態における水冷媒熱交換器の正面図を示し、図10(b)に図10(a)中の水側チューブの断面図を示し、図10(c)に図10(a)中の冷媒側チューブの断面図を示す。
本実施形態は、第5実施形態の水冷媒熱交換器15を、第4実施形態と同様に、直管の水側チューブ20の外面に、冷媒側チューブ30を螺旋状に巻きつけた形状に変更したものである。
本実施形態においても、図10(c)に示すように、冷媒側チューブ30は、母材31の外側にCu金属層33が形成されている。この冷媒側チューブ30は、第6実施形態と同様の製法によって形成される。そして、第5実施形態と同様に、水側チューブ20と冷媒側チューブ30とがろう接によって金属的に接合されており、両者の接合は、水側チューブ20のCu金属と、冷媒側チューブ30外面のCu金属層33との間で行われている。これにより、本実施形態においても、第5実施形態と同様の効果が得られる。
また、図11(a)、(b)、(c)は、それぞれ、本実施形態の変形例における水冷媒熱交換器の正面図、水側チューブの断面図、冷媒側チューブの断面図である。図10に示す水冷媒熱交換器15では、冷媒側チューブ30として円筒チューブを用いたが、図11(c)に示すように、第5実施形態と同様に、冷媒側チューブ30として微細多穴チューブを用いることもできる。
(他の実施形態)
(1)図12(a)、(b)に、他の実施形態における水冷媒熱交換器の正面図および断面図を示す。上述の各実施形態の水冷媒熱交換器を、図12に示すように、サーペンタイン形状とすることもできる。
この水冷媒熱交換器15では、水側チューブ20は、図12(a)の左右方向で折り返しながら上下方向に蛇行しており、冷媒側チューブ30は、図12(a)の紙面垂直方向で折り返しながら上下方向に蛇行している。
また、水側チューブ20は、図12(b)に示すように、横断面が円筒形状の円筒チューブであり、母材としてCu金属が用いられている。冷媒側チューブ30は、微細多穴チューブであって、母材としてAl金属が用いられている。
そして、両チューブの一方の外面全体に、他方の母材と同じ金属で構成された金属層が形成されており、両チューブは、ろう接によって金属的に接合されている。
(2)金属的に接合することで熱抵抗を低減するという観点では、上述の各実施形態において、水側チューブ20もしくは冷媒チューブ30の外面に他方の母材と同じ金属層22、33を形成する手法としてメッキを用いても良い。
(3)上述の各実施形態のように、水側チューブ20および冷媒側チューブ30は、流路を形成していれば、どのような形状にも変更可能である。
(4)上述の各実施形態では、ヒートポンプ式給湯器に用いられる水冷媒熱交換器に本発明を適用したが、他の用途に用いられる水冷媒熱交換器においても、本発明を適用できる。
15 水冷媒熱交換器
15a 水流路
15b 冷媒流路
20 水側チューブ
21 水側チューブの母材
22 Al金属層
30 冷媒側チューブ
31 冷媒側チューブの母材
33 Cu金属層
40 接合部
50 接合部

Claims (3)

  1. 水流路(15a)が内部に形成され、内面を形成している母材(21)としてCu金属が用いられた水側チューブ(20)と、
    冷媒流路(15b)が内部に形成され、内面を形成している母材(31)としてAl金属が用いられた冷媒側チューブ(30)とを備え、
    水と冷媒との間で熱交換させる熱交換器(15)において、
    前記水側チューブ(20)前記母材(21)の表面にAl金属層(22)が直接形成されることにより、水と冷媒との熱交換部位での外面全体に、前記Al金属層(22)が形成されており、
    前記水側チューブ(20)と前記冷媒側チューブ(30)とは、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材を用いたろう接によって金属的に接合されていることを特徴とする熱交換器。
  2. 前記水側チューブ(20)と前記冷媒側チューブ(30)との接合部(40)を構成する金属は、Al金属よりも自然電位が低いことを特徴とする請求項に記載の熱交換器。
  3. 前記Al金属層(22)は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工もしくは同時押出加工、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いた金属加工または母材の外面への溶射によって形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
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