JP5542310B2 - プラスチックの熱分解装置 - Google Patents

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本発明は、プラスチックの熱分解方法、熱分解装置及び残渣冷却装置に関する。
従来、プラスチックを連続油化する方法として、400℃に加熱した乾留炉内に投入する方法が提案されている。この方法では、プラスチックを乾留して得られる生成油は、炭素数が20より大きい重油成分が中心である。しかし、炭素数が20以下の引火点の低い揮発性に富む成分も含有されているため、重油として使用することは安全面から望ましくない。しかも、この方法による生成油は、保存中に一部ワックス化してしまうため、燃料油としてはそのまま使用することは難しい。
特許文献1は、可燃性の廃プラスチックなどの有機物処理材料を、高温で処理する熱分解炉内に安全かつ効率的に連続投入できるようにした熱分解処理装置に関する。この熱分解装置は、有機物処理材料を熱分解処理する熱分解炉と、内部にスクリューフィーダを有した材料投入装置と、材料投入ホッパーとを備えている。
特開2007−332222号公報
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、プラスチック,特に廃プラスチックの熱分解によって、燃料や石油化学原料として利用価値の高い軽質油を主成分とする生成物を回収可能なプラスチックの熱分解方法、熱分解装置及び残渣冷却装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、廃プラスチックの処理について鋭意検討した結果、プラスチックを熱分解する過程の温度を所定の方式に従って制御することによって生成される油の品質を向上させることが出来ることを見出し、本発明を究明するに至った。具体的には、次のとおりである。
本発明に係るプラスチックの熱分解装置は、プラスチックを加熱して熱分解するプラスチックの熱分解装置であって、プラスチックを投入し、溶融する材料投入装置と、この材料投入装置の一部が挿着され,溶融したプラスチックを熱分解して熱分解ガスを回収する熱分解炉と、バーナーからの熱風を前記熱分解炉の外側に送る熱風循環ラインとを備え、前記材料投入装置は、前記熱分解炉内まで延出した内筒と、この内筒の一端側に設けられた材料投入口と、内筒の内部に配置された,材料投入口側から材料排出口側にかけて徐々に間隔が狭くなる回転羽根とを備え、前記熱風循環ラインは、前記バーナーから熱風を前記熱分解炉の外側に導入することにより、前記投入されたプラスチックを前記材料投入装置の内筒において溶融させ、および前記溶融したプラスチックを前記熱分解炉において熱分解させることを特徴とする
本発明に係るプラスチックの熱分解装置は、前記熱分解炉で排出される粉末状のプラスチック残渣を収容する水槽をさらに備えていることを特徴とする。
本発明によれば、プラスチック,特に廃プラスチックの熱分解によって、燃料や石油化学原料として利用価値の高い軽質油を主成分とする生成物を回収可能なプラスチックの熱分解方法、熱分解装置及び残渣冷却装置が得られる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、プラスチックの熱分解方法は、上述したように、200〜300℃の範囲でのプラスチックの溶融工程と、溶融したプラスチックの400〜500℃の範囲で熱分解による熱分解ガス回収工程を含んでいる。このように、溶融工程と回収工程を区分することにより、溶融工程での溶融物の温度上昇が緩やかになり、プラスチックの炭素−炭素結合が十分に切断することができ、熱分解工程で低分子量の炭化水素化合物が生成し易くなる。
本発明において、プラスチックの熱分解装置は、上述したように、材料投入装置と、熱分解炉を備え、材料投入装置は内筒と材料投入口と回転羽根とを備え、更に材料投入装置はその一部が熱分解炉に挿入されている。ここで、回転羽根を材料投入口側から材料排出口側にかけて徐々に間隔が狭くなる構成にすることにより、内筒内の原料の充填率を上げることができるとともに、溶融物の搬送を効率的に行うことができ、更に材料投入装置が熱分解炉に挿入されていることにより、その熱により搬送される材料が溶け、溶融物によるマテリアルシールで材料投入装置と熱分解炉との隔離を実現することができ、材料投入口から空気が入ることを防ぐことができる。
本発明においては、上記熱分解炉で排出される粉末状のプラスチック残渣を収容する水槽を備えていることが好ましい。一般に、熱分解炉から排出される残渣は高温であり、かつ粉状であるので、そのまま廃棄すると粉塵を発生する恐れがある。そこで、水を収容した残渣受けピット等の水槽に残渣を投入することにより、直接冷却を行うと同時に水分を含ませることにより粉塵の発生を防ぐことができる。
次に、本発明の実施形態を、図1及び図2を参照して説明する。但し、図1はプラスチックの熱分解装置のシステムを示す図であり、図2は同システムの一構成である熱分解装置の概略的な説明図である。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
図中の符番1は、プラスチックの熱分解装置である。熱分解装置1は、廃プラスチックを投入し、溶融する材料投入装置2と、この材料投入装置2の一部が挿着され,溶融したプラスチックを熱分解して熱分解油及び熱分解ガスを回収する熱分解炉3から構成されている。材料投入装置2は、熱分解炉3まで延出した内筒4と、この内筒4の一端側に設けられた材料投入口5と、内筒4の内部に配置された回転羽根としてのスパイラルスクリュー6とを備えている。熱分解炉3は、横型の熱分解炉本体7と、この熱分解炉本体7に収容されたセラミックボール8と、熱分解炉本体7の一部を囲む筐体9を備えている。
スパイラルスクリュー6は、材料投入口側(図中左端)から材料排出口側(図中右端)にかけて徐々に間隔が狭くなるように構成されている。スパイラルスクリュー6は、軸受10に支持された回転軸11に軸支され、第1の減速機12により回転する。但し、図1では、便宜上、スパイラルスクリュー6の間隔は同じように、また一部のみ図示されている。材料投入装置2の内筒4の一端部(右端部)は傾斜して開放され、廃プラスチックを溶融した溶融物が熱分解炉本体7の途中で落下するようになっている。熱分解炉3の熱分解炉本体7は、第2の減速機13により回転する。前記筐体9にはブロワ14を介装した熱風循環ライン15が接続されている。該ライン15は、熱風の入口15a及び出口15bを有している。前記筐体9には、エジェクタ16が接続されている。なお、図2中の符番17は内筒4と熱分解炉本体7間のリング状の回転部シール材、符番18a,18b,18c,18dは熱分解炉本体7と筐体9間のリング状の回転部シール材、符番19a,19bは回転部受ローラを示す。
前記熱分解炉3の筐体9には、熱分解炉3で生じた粉状の残渣を直接冷却する残渣受けピット(残渣冷却装置)20が接続されている。この残渣受けピット20には、水21が収容されている。熱分解炉1から排出される残渣は400℃程度と高温であり、かつ粉状であるので、粉塵を発生する恐れがある。そこで、本発明では、残渣受けピット20に残渣を投入し、直接冷却を行うと同時に水分を含ませることにより粉塵の発生を防ぐものである。
前記熱風循環ライン15には、バーナー22が接続されている。前記エジェクタ16とバーナー22とは、途中に分離タンク(水封方式)23を配置したオフガス循環ライン24により接続されている。分離タンク23には、該分離タンク23の上澄みの油のみ回収する分解油タンク25が接続されている。前記エジェクタ16には、三方弁26を介装した水循環ライン27を介して第1の冷却器28aが接続されている。三方弁26には、分解油循環ライン29を介して第2の冷却器28bが接続されている。
前記分解油タンク25には、分解油ポンプ30を介装したライン31aを介してエマルジョン化装置32が順次接続されている。分離タンク23には、水循環ポンプ33を介装したライン31bを介してエマルジョン化装置32に接続されている。なお、図1中の符番34は排気塔、符番35a,35b,35c,35d,35e,35fは夫々バルブを示す。また、図2中の符号Aは熱風エリア(不可動)、Aは分解エリア(可動)、Aは挿入エリア(不可動)を示し、符番36はレベル計を示す。
こうした構成の熱分解装置の作用は次のとおりである。
即ち、まず、材料投入装置2の材料投入口5から廃プラスチック等の原料を投入する。投入された原料は、バーナー22からの熱風により内筒4内で200〜300℃に加熱されて溶融され、スパイラルスクリュー6の回転に伴って、内筒4の左端側から右端側に移動する。原料の溶融物は、内筒4の開放された端部から熱分解炉本体7に収容されたセラミックボール8の領域に落下する。ここで、溶融物は、熱分解炉本体7の外周部の熱風エリアAにバーナー22から熱風が導入されることにより、400〜500℃に加熱されて熱分解し、熱分解油及び熱分解ガスが回収される。セラミックボール8は熱分解炉本体7の回転により、熱分解炉本体7の内壁面のデコーキングを行うとともに、分解工程の残渣を粉砕して粉状の残渣を残渣受けピット20に落下させる。
熱分解により生じた熱分解ガスは、エジェクタ16にて凝縮され(熱分解油)、分離タンク23に一旦収容される。該分離タンク23は水冷方式のため、凝縮液は水と分解油に分離され、上澄みの油のみ分解油タンク25に回収する。分離タンク23内の水および分解油タンク25内の熱分解油は夫々冷却器28a,28bを経由し、冷却された後、エジェクタ16にて噴霧液となり、循環利用される。分離タンク23および分解油タンク25では、適宜、水および熱分解油をエマルジョン化装置32に導いてエマルジョン化させ、バーナー22の燃料として使用する。
更に、内筒4内での溶融工程での作用について詳述する。
プラスチックは、炭素原子が数千から数万の単位で鎖状に連結した高分子であるが、加熱処理を施すと炭素−炭素結合がランダムに開烈して、炭素数1〜44の炭化水素ガスが生成し、プラスチックから放出される。プラスチックは400℃以上の温度で分解ガスが進行するため、プラスチックをいきなり400℃以上の温度で分解ガス化が進行するため、プラスチックをいきなり400〜500℃程度の熱分解炉に投入すると、溶融状態における滞留時間が短いため、十分に炭素−炭素結合が切断されることなくガス化してしまう。そのため、熱分解によって生成する炭化水素ガスは炭素数が20より大きいものが主成分となるため、冷却して回収した生成油は炭素数が20より大きい重油となる。さらに、上記生成油には炭素数20以下の引火点が低い軽質油も一部含まれるため、安全面から重油として使用することは難しい。また、炭素数が20より大きい炭化水素ガスは不安定であるため、分解後直ちに再結合して残渣となり、結果として残渣の発生が多くなってしまう。
燃料や石油化学原料として利用価値の高い炭素数20以下の軽質油を主成分として回収するには、溶融状態においてプラスチックの炭素−炭素結合を十分に切断する必要がある。そこで、本実施形態においては、内筒4の溶融工程で、プラスチックの温度が200〜300℃の範囲に滞留させて溶融状態にしている。
プラスチックの炭素−炭素結合の切断は200℃以上で進行し、特に250〜300℃の範囲では、溶融状態のプラスチック内部で炭素−炭素結合の切断が進行する。従って、炭素−炭素結合が切断される200℃〜分解ガス化が進行する400℃、更に好ましくは250〜300℃の範囲で温度を維持することによって、炭素−炭素結合の切断が十分に行われ、分解ガス化温度に加熱した熱分解工程において低分子量の炭化水素化合物が生成し易くなり、動粘度が20cSt以下で炭素数が20以下の成分の生成油を得ることができる。
また、内筒4内での溶融工程に関連して、次のような作用も生じる。
材料投入装置2は、スパイラルスクリュー6が材料投入口側から材料排出口側にかけて徐々に間隔が狭くなるように構成されているので、内筒4内の原料の充填率を上げることができるが、更に材料投入装置2はその一部が熱分解炉3に挿入されており、材料排出口側に近づくにつれて熱によりプラスチックの溶融が始まる。
これにより、溶融物が材料投入装置2と熱分解炉3とを隔離するマテリアルシートとして作用することになり、材料投入口5から空気が入ることを防ぐことができる。
上記実施形態に係る熱分解装置によれば、以下に述べる効果を有する。
(1)従来、常温の固形プラスチックを熱分解炉へ投入し、一気に分解温度まで加熱し分解させる方式がある。この場合、分解工程の温度上昇が急なため、十分な炭素−炭素結合の切断が行われておらず、熱分解によって生成する炭化水素ガスは炭素数が20より大きいものが主成分となるため、冷却して回収して生成油は炭素数20以上の重油で動粘度が500cSt以上のワックス状のものとなると同時に、残渣の発生量が多くなる。
これに対し、本実施形態では、材料投入装置2では熱風循環ライン15からの熱風を利用して、内筒4の主として外側から200〜300℃に加熱して溶融状態にするため、分解工程の温度上昇が緩やかになる。従って、プラスチックの炭素−炭素結合が十分に切断することができ、熱分解工程で低分子量の炭化水素化合物が生成し易くなり、動粘度が20cSt以下で炭素数が20以下の成分の生成油を得ることができると同時に、残渣の発生を少なくすることができる。
(2)熱分解装置1の材料投入装置2において、スパイラルスクリュー6が、材料投入口側(図中左端)から材料排出口側(図中右端)にかけて徐々に間隔が狭くなるように構成されているので、内筒4内の原料の充填率を上げることができるとともに、原料による溶融物の搬送を効率的に行うことができる。更に、材料投入装置2が熱分解炉3に挿入されていることにより、その熱により搬送される材料が溶け、溶融物によるマテリアルシールで材料投入装置2と熱分解炉3との隔離を実現することが出来、材料投入口5からの空気が入ることを防ぐことができる。
(3)熱分解炉3の回転可能な熱分解炉本体7内にセラミックボール8が収容されているので、熱分解炉本体7を熱分解炉本体7の回転により、熱分解炉本体7の内壁面のデコーキングを行うことができるとともに、分解工程の残渣を粉砕して炉内からの排出が容易になる。
(4)熱分解炉3から排出される残渣は400℃程度と高温であり、かつ粉状であるので、粉塵を発生する恐れがある。しかし、上記実施形態では、水を収容した残渣受けピット20に残渣を投入し、直接冷却を行うと同時に水分を含ませることにより粉塵の発生を防ぐことができる。
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。具体的には、残渣受けピット(残渣冷却装置)は熱分解装置の一構成として説明しているが、必ずしも残渣受けピットを設ける必要はないし、上述した構成のものに限らない。また、上記実施形態では原料として廃プラスチックを用いた場合について述べたが、必ずしもこれに限定されない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] プラスチックを加熱して熱分解するプラスチックの熱分解方法であって、200〜300℃の範囲でプラスチックを溶融する工程と、溶融したプラスチックを400〜500℃の範囲で熱分解して熱分解ガスを回収する工程とを備えたことを特徴とするプラスチックの熱分解方法。
[2] プラスチックを加熱して熱分解するプラスチックの熱分解装置であって、プラスチックを投入し、溶融する材料投入装置と、この材料投入装置の一部が挿着され,溶融したプラスチックを熱分解して熱分解ガスを回収する熱分解炉を備え、前記材料投入装置は、前記熱分解炉まで延出した内筒と、この内筒の一端側に設けられた材料投入口と、内筒の内部に配置された,材料投入口側から材料排出口側にかけて徐々に間隔が狭くなる回転羽根とを備えていることを特徴とするプラスチックの熱分解装置。
[3] [2]記載の熱分解炉で排出される粉末状のプラスチック残渣を収容する水槽を備えていることを特徴とする残渣冷却装置。
本発明の実施形態に係るプラスチックの熱分解装置のシステムを示す図。 図1のシステムの一構成である熱分解装置の概略的な説明図。
符号の説明
1…熱分解装置、2…材料投入装置、3…熱分解炉、4…内筒、5…材料投入口、6…スパイラルスクリュー(回転羽根)、7…熱分解炉本体、8…セラミックボール、9…筐体、15…熱風循環ライン、16…エジェクタ、20…残渣受けピット(残渣冷却装置)、22…バーナー、23…分離タンク、24…オフガス循環ライン、25…分解油タンク、27…水循環ライン、28a,28b…冷却器、29…分解油循環ライン、32…エマルジョン化装置。

Claims (2)

  1. プラスチックを加熱して熱分解するプラスチックの熱分解装置であって、
    プラスチックを投入し、溶融する材料投入装置と、この材料投入装置の一部が挿着され,溶融したプラスチックを熱分解して熱分解ガスを回収する熱分解炉と、バーナーからの熱風を前記熱分解炉の外側に送る熱風循環ラインとを備え、
    前記材料投入装置は、前記熱分解炉内まで延出した内筒と、この内筒の一端側に設けられた材料投入口と、内筒の内部に配置された,材料投入口側から材料排出口側にかけて徐々に間隔が狭くなる回転羽根とを備え、
    前記熱風循環ラインは、前記バーナーから熱風を前記熱分解炉の外側に導入することにより、前記投入されたプラスチックを前記材料投入装置の内筒において溶融させ、および前記溶融したプラスチックを前記熱分解炉において熱分解させることを特徴とするプラスチックの熱分解装置。
  2. 前記熱分解炉で排出される粉末状のプラスチック残渣を収容する水槽をさらに備えていることを特徴とする請求項記載のプラスチックの熱分解装置。
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