以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、レーザ干渉測長器100は、レーザ光を反射させる一対の反射部材としての一対のコーナーキューブ3,4を備えている。一対のコーナーキューブ3,4は、基体34に固定されて一定距離に保持されている。図1中、移動体33は、例えば移動ステージ(Xステージ)であり、一対のコーナーキューブ3,4の間を矢印x方向に直線移動するものである。そして、レーザ干渉測長器100は、レーザ光の干渉を利用して、基体34に対して移動する移動体33の変位量を測定するものである。なお、反射部材がコーナーキューブ3,4の場合について説明するが、反射部材が直角ミラーの場合であってもよい。
また、レーザ干渉測長器100は、測定用レーザ光源としての測定用レーザ発振器26と、補正用レーザ光源としての補正用レーザ発振器27と、測定用干渉計51と、補正用干渉計52と、演算処理手段としての演算処理装置60と、を備えている。この演算処理装置60は、集光器28,29と、光路差測定装置30,31と、演算装置32と、からなる。なお、図1中、測定用レーザ光は、実線で示し、補正用レーザ光は、破線で示している。測定用レーザ光の光路は、少なくともその一部が空気中を通過するように設定されている。なお、本明細書において空気とは、空気を含む気体一般のことを示す。補正用レーザ光の一方の光路は、同一光路上(重なっている)を通過する。図1においては、便宜上僅かにずらして作図しているが、実際には重なっている。しかし、全てが同一光路でなくとも、空気の屈折率変化が大きいと思われる光路が共通であれば(重なっていれば)、本発明の効果は十分に得ることが可能である。測定用レーザ発振器26、測定用干渉計51及び集光器28は、移動体33に載置固定されている。また、補正用レーザ発振器27、補正用干渉計52及び集光器29は、一対のコーナーキューブ3,4に対して相対的に移動しないように、基体34に固定されている。
本実施形態においては、コーナーキューブ3,4、補正用レーザ発振器27、補正用干渉計52及び集光器29は基体34に固定され、測定用レーザ発振器26、測定用干渉計51及び集光器28は移動体33に載置されている。この構成のほか、図8に示すように、コーナーキューブ3,4、補正用レーザ発振器27、補正用干渉計52及び集光器29を移動体33に載置して可動させ、測定用レーザ発振器26、測定用干渉計51及び集光器28を基体34等に固定するようにしてもよい。
測定用レーザ発振器26は、互いに直交した2成分の直線偏光(S偏光及びP偏光)からなる測定用レーザ光を、移動体33の移動方向(矢印x方向)と直交する方向に出射する。測定用干渉計51は、測定用レーザ発振器26に対向し、一対のコーナーキューブ3,4間を移動するように配置されている。測定用レーザ発振器26及び集光器28と測定用干渉計51とは、移動体33の移動方向と直交する方向に並設されている。測定用干渉計51は、偏光ビームスプリッタ1、1/4波長板5、及び反射部材としての平面ミラー7からなる。そして、偏光ビームスプリッタ1、1/4波長板5及び平面ミラー7は、測定用レーザ発振器26から出射される測定用レーザ光の進行方向に沿って順次隣接して配設されている。偏光ビームスプリッタ1は、互いに直交した2成分の直線偏光のうち、P偏光は透過させ、S偏光は直角に反射させるものである。そして、この偏光ビームスプリッタ1は、一対のコーナーキューブ3,4の間に配置されている。
また、補正用レーザ発振器27は、コーナーキューブ4の近傍に配置され、互いに直交した2成分の直線偏光(S偏光及びP偏光)からなる補正用レーザ光を、移動体33の移動方向と直交する方向に出射する。補正用干渉計52は、補正用レーザ発振器27に対向し、一対のコーナーキューブ3,4の間であって、コーナーキューブ4の反射面に隣接して配置されている。補正用レーザ発振器27及び集光器29と補正用干渉計52とは、移動体33の移動方向と直交する方向に並設されている。この補正用干渉計52は、偏光ビームスプリッタ2、1/2波長板9、1/4波長板6及び反射部材としての平面ミラー8からなる。そして、偏光ビームスプリッタ2、1/4波長板6及び平面ミラー8は、補正用レーザ発振器27から出射される補正用レーザ光の進行方向に沿って順次配設されている。偏光ビームスプリッタ2は、一対のコーナーキューブ3,4の間であって、一方のコーナーキューブ(本実施形態においてはコーナーキューブ4)の反射面に隣接配置されている。そして、1/2波長板9は、偏光ビームスプリッタ2に対してコーナーキューブ4と反対側であって偏光ビームスプリッタ2に隣接して配置されている。
ここで、本実施形態では、測定用干渉計51は、測定用レーザ発振器26から入射した測定用レーザ光を第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とに分割し、各測定用レーザ光成分を一対のコーナーキューブ3,4のそれぞれに照射する。そして、測定用干渉計51は、コーナーキューブ3,4のそれぞれで反射して戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とを干渉させて測定用干渉光を生成する。つまり、基体34と移動体33との間を1回往復して戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2を干渉させて測定用干渉光を生成する。具体的には、測定用干渉計51の偏光ビームスプリッタ1が、入射した測定用レーザ光を第一の測定用レーザ光成分p1(S偏光)と第二の測定用レーザ光成分p2(P偏光)とに分割する。そして、測定用干渉計51の偏光ビームスプリッタ1が、戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2を干渉させて測定用干渉光を生成する。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ1が測定用レーザ光分割手段及び測定用干渉光生成手段として機能する。ここで、移動体33が移動した場合や空気の屈折率が変化した場合には、両方の測定用レーザ光成分p1,p2の光路長が変化する。
これに対し、補正用干渉計52は、補正用レーザ発振器27から入射した補正用レーザ光を第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とに分割する。そして、各補正用レーザ光成分のうち、第一の補正用レーザ光成分p3は、一対のコーナーキューブ3,4の間を往復させ、第二の補正用レーザ光成分p4は、空気中を通過させずに参照光とする。そして、第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とを干渉させて補正用干渉光を生成する。具体的には、補正用干渉計52の偏光ビームスプリッタ2が、入射した補正用レーザ光を第一の補正用レーザ光成分p3(P偏光)と第二の補正用レーザ光成分p4(S偏光)とに分割する。そして、補正用干渉計52の偏光ビームスプリッタ2が、戻ってきた第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4を干渉させて補正用干渉光を生成する。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ2が補正用レーザ光分割手段及び補正用干渉光生成手段として機能する。ここで、空気の屈折率が変化した場合には、第一の補正用レーザ光成分p3の光路長は変化するが、第二の補正用レーザ光成分p4の光路長は空気中を通過しないので変化しない。
演算処理装置60の集光器28は、入射した測定用干渉光を光電変換して得られる測定用干渉信号を光路差測定装置30に出力する。光路差測定装置30は、入力した測定用干渉信号に基づき、第一の測定用レーザ光成分p1の光路長と第二の測定用レーザ光成分p2の光路長との差分(光路長差)を示す光路差信号を演算装置32に出力する。演算装置32は、入力した光路差信号に基づき、リセット時点からの光路長差の変化を示す測定値を求める。ここで、リセット時点とは、基準となる時点であり、このリセット時点における移動体33の位置が基準位置となる。したがって、測定用干渉計51は、移動体33が基準位置からどれだけ変位したか(変位量)を求めるために使用されるものである。
また、演算処理装置60の集光器29は、入射した補正用干渉光を光電変換して得られる補正用干渉信号を光路差測定装置31に出力する。光路差測定装置31は、入力した補正用干渉信号に基づき、第一の補正用レーザ光成分p3の光路長と第二の補正用レーザ光成分p4(参照光)の光路長との差分を示す補正用信号を演算装置32に出力する。なお、参照光は空気中を通過しないので、空気中の光路長は0である。演算装置32は、入力した補正用信号に基づき、第一の補正用レーザ光成分p3が通過した空気屈折率のリセット時点からの変化を示す補正値を求める。
そして、演算装置32は、補正値で測定値の空気屈折率の変化による誤差を補正し、この補正した光路長差を示す補正測定値を用いて移動体33の基準位置(リセット時点)からの変位量を演算する。つまり、演算装置32は、光路差測定装置30及び光路差測定装置31から出力される測定出力を基に、空気の屈折率の変化の影響を補正した移動体33の変位量を演算している。
以下、各部の動作について具体的に説明する。本実施形態においては、図1における、L1およびL2の部分(往路、復路とも)が空気中である場合について説明する。まず、測定用干渉計51において偏光ビームスプリッタ1に入射した測定用レーザ光のうち、第一の測定用レーザ光成分p1(S偏光)は、入射方向と直交する方向(移動体33の移動方向と平行な方向)であって一方のコーナーキューブ3側に反射する。また偏光ビームスプリッタ1に入射した第二の測定用レーザ光成分p2(P偏光)は入射方向に透過する。この偏光ビームスプリッタ1により、測定用レーザ光は二つの光成分に分割される。そして、偏光ビームスプリッタ1を透過した第二の測定用レーザ光成分p2は、平面ミラー7で折り返すことで1/4波長板5を2回通過してS偏光となる。次いで、第二の測定用レーザ光成分p2は、偏光ビームスプリッタ1に再度入射して、第一の測定用レーザ光成分p1とは反対方向(他方のコーナーキューブ4側)に反射される。これにより、第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とは、偏光ビームスプリッタ1において互いに離反する方向に反射されることとなる。このように偏光ビームスプリッタ1において互いに離反する方向に反射した各測定用レーザ光成分は、移動体33の移動方向と平行な方向に進行し、その延長上に配置されている一対のコーナーキューブ3,4のそれぞれに向けて照射される。
そして、第一の測定用レーザ光成分p1は、空気中の光路を通過して一方のコーナーキューブ3で反射する。この一方のコーナーキューブ3で反射した第一の測定用レーザ光成分p1は、空気中の光路を通過して偏光ビームスプリッタ1に戻ってくる。この偏光ビームスプリッタ1に戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1は、S偏光であるので、偏光ビームスプリッタ1で直角に、測定用レーザ発振器26から測定用レーザ光を入射した入射面側に反射される。また、第二の測定用レーザ光成分p2は、空気中の光路を通過した後、1/2波長板9を通過することでP偏光となり、偏光ビームスプリッタ2を透過してコーナーキューブ4で反射する。そして、コーナーキューブ4で反射した第二の測定用レーザ光成分p2は、再度偏光ビームスプリッタ2を透過し、次いで1/2波長板9を通過してS偏光となり、空気中の光路を通過して偏光ビームスプリッタ1に戻ってくる。このようにして偏光ビームスプリッタ1に戻ってきた第二の測定用レーザ光成分p2は、S偏光であるので、偏光ビームスプリッタ1で直角に、1/4波長板5側に反射し、平面ミラー7で折り返すことで1/4波長板5を2回通過してP偏光となる。そして、P偏光となった第二の測定用レーザ光成分p2は、偏光ビームスプリッタ1を透過(直進)する。
第一の測定用レーザ光成分p1は、偏光ビームスプリッタ1で反射し、第一の光路を通過して偏光ビームスプリッタ1に戻ってくる。第二の測定用レーザ光成分p2は、偏光ビームスプリッタ1で反射し、第二の光路を通過して偏光ビームスプリッタ1に戻ってくる。この第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とが偏光ビームスプリッタ1で合流した際に干渉し、測定用干渉光が生成される。したがって、測定用干渉計51はコーナーキューブ3,4の間で移動体33の変位を測定する差動型のダブルパス干渉計として機能する。
ここで、第一の光路は、第一の測定用レーザ光成分p1が空気中を経由して通過する光路であり、偏光ビームスプリッタ1及びコーナーキューブ3の配置によって形成される。即ち、第一の光路は、偏光ビームスプリッタ1で反射した第一の測定用レーザ光成分p1が、コーナーキューブ3で反射して、偏光ビームスプリッタ1に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ1及びコーナーキューブ3が、第一の測定用レーザ光成分p1が第一の光路を通過するように配置された第一の反射手段として機能する。
また、第二の光路は、第二の測定用レーザ光成分p2が空気中を経由して通過する光路であり、偏光ビームスプリッタ1、コーナーキューブ4及び平面ミラー7の配置によって形成される。即ち、第二の光路は、偏光ビームスプリッタ1で反射した第二の測定用レーザ光成分p2が、コーナーキューブ4、平面ミラー7で反射して、偏光ビームスプリッタ1に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ1、コーナーキューブ4及び平面ミラー7が、第二の測定用レーザ光成分p2が第二の光路を通過するように配置された第二の反射手段として機能する。そして、第一の光路及び第二の光路は、基体34に対する移動体33の変位に応じて光路長が変化する。
一方、補正用干渉計52において偏光ビームスプリッタ2に入射した補正用レーザ光のうち、第一の補正用レーザ光成分p3(P偏光)は入射方向に透過する。また、第二の補正用レーザ光成分p4(S偏光)は、入射方向と直交する方向(移動体33の移動方向と平行な方向)であって他方のコーナーキューブ4側に反射する。これにより、補正用レーザ光は二つの光成分に分割される。そして、偏光ビームスプリッタ2を透過した第一の補正用レーザ光成分p3は、平面ミラー8で折り返すことで1/4波長板6を2回通過してS偏光となる。次いで、第一の補正用レーザ光成分p3は、偏光ビームスプリッタ2に再度入射して、第二の補正用レーザ光成分p4とは反対方向(一方のコーナーキューブ3側)に反射される。これにより、第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とは、偏光ビームスプリッタ2において互いに離反する方向に反射されることとなる。このように偏光ビームスプリッタ2において互いに離反する方向に反射した各補正用レーザ光成分は、移動体33の移動方向と平行な方向に進行し、その延長上に配置されている一対のコーナーキューブ3,4のそれぞれに向けて照射される。
第二の補正用レーザ光成分p4は、参照光であり、偏光ビームスプリッタ2で反射し、空気中を通過せずに、第四の光路を通過してコーナーキューブ4で反射して偏光ビームスプリッタ2に戻ってくる。コーナーキューブ4で反射して偏光ビームスプリッタ2に戻ってきた第二の補正用レーザ光成分p4は、S偏光であるので、偏光ビームスプリッタ2で直角に、補正用レーザ発振器27から測定用レーザ光を入射した入射面側に反射される。つまり、第二の補正用レーザ光成分p4は、参照光であり、空気中を通過せずに他方のコーナーキューブ4で反射して戻ってくるので、光路長が変動することはない。偏光ビームスプリッタ2で反射した第一の補正用レーザ光成分p3は、第三の光路を通過して偏光ビームスプリッタ2に戻ってくる。つまり、第一の補正用レーザ光成分p3は、1/2波長板9を通過することでP偏光となり、空気中の光路を通過し、偏光ビームスプリッタ1を透過して、更に空気中の光路を通過した後、一方のコーナーキューブ3で反射する。そして、コーナーキューブ3で反射した第一の補正用レーザ光成分p3は、空気中の光路を通過し、再度偏光ビームスプリッタ1を透過して、更に空気中の光路を通過した後、1/2波長板9を通過してS偏光となって偏光ビームスプリッタ2に戻ってくる。このようにして偏光ビームスプリッタ2に戻ってきた第一の補正用レーザ光成分p3は、S偏光であるので、偏光ビームスプリッタ2で直角に1/4波長板6側に反射し、平面ミラー8で折り返すことで1/4波長板6を2回通過してP偏光となる。そして、P偏光となった第一の補正用レーザ光成分p3は、偏光ビームスプリッタ2を透過(直進)する。そして、各コーナーキューブ3,4で反射して偏光ビームスプリッタ2に戻ってきた第一の補正用レーザ光成分p3と参照光である第二の補正用レーザ光成分p4は偏光ビームスプリッタ2で合流した際に干渉し、補正用干渉光が生成される。
ここで、第三の光路は、第一の補正用レーザ光成分p3が通過する光路であり、第一の光路及び第二の光路における空気中を通過する部分と重なる光路部分を含むように、偏光ビームスプリッタ2、コーナーキューブ3及び平面ミラー8の配置によって形成される。即ち、第三の光路は、偏光ビームスプリッタ2で反射した第一の補正用レーザ光成分p3が、コーナーキューブ3で反射して、偏光ビームスプリッタ2に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ2、コーナーキューブ3及び平面ミラー8が、第一の補正用レーザ光成分p3が第三の光路を通過するように配置された第三の反射手段として機能する。
また、第四の光路は、第二の補正用レーザ光成分p4が参照光として空気中を経由しない光路であり、偏光ビームスプリッタ2及びコーナーキューブ4の配置により形成される。即ち、第四の光路は、偏光ビームスプリッタ2で反射した第二の補正用レーザ光成分p4が、コーナーキューブ4で反射して、偏光ビームスプリッタ2に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ2及びコーナーキューブ4が、第二の補正用レーザ光成分p4が第四の光路を通過するように配置された第四の反射手段として機能する。
コーナーキューブ3,4及び補正用干渉計52は基体34に固定されているので、移動体33(偏光ビームスプリッタ1)が移動しても、第一の補正用レーザ光成分p3がコーナーキューブ3,4の間の空気中を通過する実際の距離は一定である。したがって、第一の補正用レーザ光成分p3が一対のコーナーキューブ3,4の間の空気中を往復する光路長(光学的距離)は、空気の屈折率の変動のみの要因で変動する。したがって、補正用干渉計52は、コーナーキューブ3,4の間の空気の屈折率の変化を検出するシングルパス干渉計として機能する。
ここで、偏光ビームスプリッタ1にて二分割された各測定用レーザ光成分は、コーナーキューブ3,4のそれぞれで反射して偏光ビームスプリッタ1に戻ってくるが、往路と復路とで空気中の光路が僅かにずれている。すなわち、第一の測定用レーザ光成分p1は、一方のコーナーキューブ3で180°偏向し、入射光(往路)と反射光(復路)とで互いに平行であるが、往路と復路とで光路が僅かにずれている。同様に、第二の測定用レーザ光成分p2は、他方のコーナーキューブ4で180°偏向し、入射光(往路)と反射光(復路)とで互いに平行であるが、往路と復路とで光路が僅かにずれている。そして、各測定用レーザ光成分の空気中の光路の往路同士が、測定用干渉計51の偏光ビームスプリッタ1を挟んで一直線上に形成され、各測定用レーザ光成分の空気中の光路の復路同士が偏光ビームスプリッタ1を挟んで一直線上に形成されている。
そこで本実施形態では、第一の補正用レーザ光成分p3を測定用干渉計51の偏光ビームスプリッタ1を透過させることで、第一の補正用レーザ光成分p3の空気中の光路の往路と、二つの測定用レーザ光成分p1,p2の空気中の光路の復路とを一致させている。また、第一の補正用レーザ光成分p3を測定用干渉計51の偏光ビームスプリッタ1を透過させることで、コーナーキューブ3で反射した第一の補正用レーザ光成分p3の空気中の光路の復路と、二つの測定用レーザ光成分の空気中の光路の往路とを一致させている。これにより、第一の補正用レーザ光成分p3は、第一の光路及び第二の光路の空気中を通過する部分と重なる光路部分を通過することになる。つまり、各測定用レーザ光成分の空気中の光路と同一の光路を通過する。
本第1実施形態においては、コーナーキューブ3,4の間で、測定用干渉計51と補正用干渉計52の空気中の光路が一致するため、空気の屈折率の補正の誤差要因となる屈折率分布の影響を平均化することが可能となり、測定精度が向上する。
以下に屈折率分布の影響を平均化する仕組みを述べる。なお、図1において、測定用干渉計51の測長方向をX軸とする2次元直交座標X−Yを定義する。本第1実施形態では、図1において、測定用干渉計51と補正用干渉計52との共通する光路のY軸上の位置をY1、Y2とする。また測定用干渉計51とコーナーキューブ3,4の間の空気が存在する部分の距離をL1、L2とする。ここで、測定用干渉計51と補正用干渉計52をリセット時点からのY軸上の位置Y1の光路上において空気屈折率の変化がΔn1、Y軸上の位置Y2の光路上において空気屈折率の変化がΔn2の場合について説明する。なお、移動体33は、基準位置から移動していないものとする。
本第1実施形態の測定用干渉計51は差動型のダブルパス干渉計であるため、光路が真空である場合の距離Li(i=1,2)とした状態で、空気の屈折率の変化による測定用干渉計51における各測定用レーザ光成分p1,p2の光路長変化は次式で表される。
光路差測定装置30は、各測定用レーザ光成分p1,p2が通過した第一の光路と第二の光路との光路長の差分に対応する光路差信号を演算装置32に出力する。そして、演算装置32は、入力した光路差信号に基づいて、リセット時点からの2つの測定用レーザ光成分p1,p2の光路長差の変化(移動体33の光学的距離の変化)を示す測定値を求める。ここで、光路が真空である場合の測定用干渉計51の各測定用レーザ光成分p1,p2の光路長(実際の距離)は2×Liである。したがって、数1より測定用干渉計51に誤差として反映される屈折率変化は、Y軸上の位置Y1、Y2における屈折率変化Δn1、Δn2の平均値(Δn1+Δn2)/2となることがわかる。
次に、補正用干渉計52において、第一の補正用レーザ光成分p3が通過した第三の光路の光路長変化は次式で表される。
光路差測定装置31は、各補正用レーザ光成分p3,p4が通過した第三の光路と第四の光路との光路長の差分に対応する光路差信号を演算装置32に出力する。第二の補正用レーザ光成分p4(参照光)は、空気中を通過しないので、空気中の光路長変化は0である。したがって、各補正用レーザ光成分p3,p4が通過した第三の光路と第四の光路との光路長差の変化は数2である。演算装置32は、補正用信号に基づいて、2つの補正用レーザ光成分p3,p4の光路長差、即ち第一の補正用レーザ光成分p3が通過した第三の光路の光路長がリセット時点からどれだけ変化したかを求め、その結果から、空気屈折率の変化を示す補正値を求める。ここで、光路が真空である場合の補正用干渉計52の第一の補正用レーザ光成分p3の光路長(実際の距離)は2×(L1+L2)であり、一定の値である。つまり、(L1+L2)は、一定値なので、光路長の変化は、空気屈折率の変化に起因するものである。したがって、数2より補正用干渉計52に反映される空気屈折率の変化は、Y軸上の位置Y1、Y2における屈折率変化Δn1、Δn2の平均値(Δn1+Δn2)/2となる。なお、(L1+L2)の値は、予め演算装置32に設定されている。
したがって、補正用干渉計52の測定出力から算出される屈折率変化を示す補正値は平均値(Δn1+Δn2)/2となる。つまり、平均値(Δn1+Δn2)/2が、演算装置32において求められる、第一の補正用レーザ光成分p3が通過した空気の屈折率の変化に対応する補正値である。
演算装置32は、光路差測定装置30から入力した光路差信号に基づいて求めた測定値を、光路差測定装置31から入力した補正用信号に基づいて求めた補正値で補正(除算)することにより移動体33のリセット時点からの変位量を演算する。これにより、空間的な空気の屈折率分布が存在する場合にも、屈折率分布の影響を平均化することにより屈折率補正の誤差が低減され、測定精度が向上する。
以上、本第1実施形態によれば、各測定用レーザ光成分p1,p2の光路と第一の補正用レーザ光成分p3の光路とを一致させたので、演算処理装置60により移動体33の変位量を演算する際に、空気屈折率の変化の差異による誤差が低減する。したがって、移動体33の変位量の測定精度が向上し、これにより、移動体33の位置決め精度が向上する。
なお、本実施形態においては、図1における、L1及びL2の部分(往路、復路とも)が空気中である場合について説明したが、これに限らず、第一の光路又は第二の光路の一部が空気中を通過する形態においても本発明の効果を得ることができる。
[第2実施形態]
次に、図2に示す第2実施形態のレーザ干渉測長器100Aについて説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。レーザ干渉測長器100Aは、一対の反射部材における一方の反射部材としての平面ミラー18と、他方の反射部材としてのダイクロイックミラー15と、を備えている。一対のミラー15,18は、基体34に固定されて一定距離に保持されている。移動体33は、一対のミラー15,18の間を矢印x方向に直線移動するものである。そして、レーザ干渉測長器100Aは、レーザ光の干渉を利用して、移動する移動体33の変位量を測定するものである。また、レーザ干渉測長器100Aは、測定用レーザ光源としての測定用レーザ発振器26Aと、測定用干渉計51Aと、補正用レーザ光源としての補正用レーザ発振器27Aと、補正用干渉計52Aと、を備えている。なお、図2中、測定用レーザ光は、実線で示し、補正用レーザ光は、破線で示している。また、図2において、測定用レーザ光と補正用レーザ光とは、空気中の光路が実際には重なっているものであるが、便宜上僅かにずらして作図している。測定用レーザ発振器26A、測定用干渉計51A及び集光器28は、移動体33に載置固定されている。また、補正用レーザ発振器27A、補正用干渉計52A及び集光器29は、一対のミラー15,18に対して相対的に移動しないように、基体34に固定されている。
本実施形態においては、一対のミラー15,18は、基体34に固定され、測定用レーザ発振器26A、測定用干渉計51A及び集光器28は、移動体33に載置したが、これに限定するものではない。一対のミラー15,18を移動体33に載置して可動させ、測定用レーザ発振器26A、測定用干渉計51A及び集光器28を基体34等に固定してもよい。
測定用レーザ発振器26Aは、互いに直交した2成分の直線偏光(S偏光及びP偏光)からなる測定用レーザ光を、移動体33の移動方向(矢印x方向)と直交する方向に出射する。補正用レーザ発振器27Aは、ダイクロイックミラー15の近傍に配置され、互いに直交した2成分の直線偏光からなる補正用レーザ光を、移動体33の移動方向と直交する方向に出射するが、測定用レーザ光とは異なる周波数に設定されている。
測定用干渉計51Aは、測定用レーザ発振器26Aに対向し、一対のミラー15,18間を移動するように配置されている。測定用レーザ発振器26Aと測定用干渉計51Aとは、移動体33の移動方向と直交する方向に並設されている。測定用干渉計51Aは、偏光ビームスプリッタ10、入射角が45°の平面ミラー11、1/4波長板12、及び入射角が45°の一対のダイクロイックミラー13,14からなる。そして、偏光ビームスプリッタ10、1/4波長板12及びダイクロイックミラー13は、測定用レーザ発振器26Aから出射される測定用レーザ光の進行方向に沿って順次隣接して配設されている。平面ミラー11は、偏光ビームスプリッタ10に対してダイクロイックミラー15側に、移動体33の移動方向に沿って偏光ビームスプリッタ10に隣接して配置されている。ダイクロイックミラー14は、ダイクロイックミラー13に対してダイクロイックミラー15側に、移動体33の移動方向に沿ってダイクロイックミラー13に隣接して配置されている。これにより、平面ミラー11とダイクロイックミラー14とは、移動体33の移動方向と直交する方向に1/4波長板12を挟んで配置されたこととなる。そして、一対のダイクロイックミラー13,14は、一対のミラー15,18の間に配置されている。ここで、ダイクロイックミラー13,14,15は、測定用レーザ光は反射し、測定用レーザ光とは異なる周波数の補正用レーザ光は透過するものである。すなわち、測定用レーザ発振器26Aにて出射される測定用レーザ光は、ダイクロイックミラー13,14,15で反射する周波数に設定されている。また、補正用レーザ発振器27Aにて出射される補正用レーザ光は、ダイクロイックミラー13,14,15で透過する周波数に設定されている。
一方、補正用干渉計52Aは、補正用レーザ発振器27Aに対向し、ダイクロイックミラー15の測定用レーザ光の反射面とは反対側の面に隣接して配置されている。補正用レーザ発振器27Aと補正用干渉計52Aとは、移動体33の移動方向と直交する方向に並設されている。この補正用干渉計52Aは、偏光ビームスプリッタ16、1/4波長板17,19、平面ミラー20からなる。そして、偏光ビームスプリッタ16、1/4波長板19及び平面ミラー20は、補正用レーザ発振器27Aから出射される補正用レーザ光の進行方向に沿って順次配設されている。偏光ビームスプリッタ16は、1/4波長板17を介してダイクロイックミラー15の測定用レーザ光の反射面とは反対側の面に隣接して配置されている。
ここで、本第2実施形態では、測定用干渉計51Aは、測定用レーザ発振器26Aから入射した測定用レーザ光を互いに離反する方向に二分割して各測定用レーザ光成分p1,p2を一対のミラー15,18のそれぞれに照射する。そして、測定用干渉計51Aは、ミラー15,18のそれぞれで反射して戻ってきた各測定用レーザ光成分p1,p2を干渉させて測定用干渉光を生成する。つまり、基体34と移動体33との間を1回往復して戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2を干渉させて測定用干渉光を生成する。具体的には、偏光ビームスプリッタ10が、入射した測定用レーザ光を第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とに分割する。そして、偏光ビームスプリッタ10が、戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2を干渉させて測定用干渉光を生成する。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ10が測定用レーザ光分割手段及び測定用干渉光生成手段として機能する。
また、補正用干渉計52Aは、補正用レーザ発振器27Aから入射した補正用レーザ光を第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とに分割する。そして、各補正用レーザ光成分のうち、第一の補正用レーザ光成分p3は、一対のミラー15,18の間を往復させ、第二の補正用レーザ光成分p4は、空気中を通過させずに参照光とする。そして、第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とを干渉させて補正用干渉光を生成する。具体的には、偏光ビームスプリッタ16が、入射した補正用レーザ光を第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とに分割する。そして、偏光ビームスプリッタ16が、戻ってきた第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4を干渉させて補正用干渉光を生成する。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ16が補正用レーザ光分割手段及び補正用干渉光生成手段として機能する。
以下、各部の動作について具体的に説明する。まず、測定用干渉計51Aにおいて偏光ビームスプリッタ10に入射した測定用レーザ光のうち、第一の測定用レーザ光成分p1(P偏光)は、測定用レーザ光の入射方向に透過する。第二の測定用レーザ光成分p2(S偏光)は、入射方向と直交する方向であって、平面ミラー11側に反射する。この偏光ビームスプリッタ10により、測定用レーザ光は二つの測定用レーザ光成分p1,p2に分割される。
偏光ビームスプリッタ10を透過した第一の測定用レーザ光成分p1は、1/4波長板12を通過して円偏光となり、ダイクロイックミラー13で平面ミラー18側に直角に反射される。また、偏光ビームスプリッタ10で反射した第二の測定用レーザ光成分p2は、平面ミラー11にてダイクロイックミラー14側に反射される。次いで、第二の測定用レーザ光成分p2は、1/4波長板12を通過して円偏光となった後、ダイクロイックミラー14にて反射して第一の測定用レーザ光成分p1とは反対方向(ダイクロイックミラー15側)に反射される。これにより、第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とは、一対のダイクロイックミラー13,14において互いに離反する方向に反射されることとなる。このように一対のダイクロイックミラー13,14において互いに離反する方向に反射した各測定用レーザ光成分は、移動体33の移動方向と平行な方向に進行し、その延長上に配置されている一対のミラー15,18のそれぞれに向けて照射される。
そして、第一の測定用レーザ光成分p1は、空気中の光路を通過して平面ミラー18に垂直に入射して反対方向に反射する。この平面ミラー18で反射した第一の測定用レーザ光成分p1は、再度空気中の同一光路(共通光路)を通過してダイクロイックミラー13に戻ってくる。ダイクロイックミラー13に戻ってきた第一の測定用レーザ光成分p1は、ダイクロイックミラー13で偏光ビームスプリッタ10側に直角に反射され、1/4波長板12を通過してS偏光となり、偏光ビームスプリッタ10で直角に反射される。
また、ダイクロイックミラー14で反射した第二の測定用レーザ光成分p2は、空気中の光路を通過した後、ダイクロイックミラー15に垂直に入射して反対方向に反射する。そして、ダイクロイックミラー15で反射した第二の測定用レーザ光成分p2は、再度空気中の同一光路を通過してダイクロイックミラー14に戻ってくる。ダイクロイックミラー14に戻ってきた第二の測定用レーザ光成分p2は、ダイクロイックミラー14で平面ミラー11側に直角に反射され、1/4波長板12を通過してP偏光となり、平面ミラー11で直角に反射した後、偏光ビームスプリッタ10を透過する。つまり、第一の測定用レーザ光成分p1は、ダイクロイックミラー13で反射し、第一の光路を通過して戻ってくる。第二の測定用レーザ光成分p2は、ダイクロイックミラー14で反射し、第二の光路を通過して戻ってくる。この第一の測定用レーザ光成分p1と第二の測定用レーザ光成分p2とが偏光ビームスプリッタ10で合流した際に干渉し、測定用干渉光が生成される。したがって、測定用干渉計51Aはミラー15,18の間で移動体33の変位を測定する差動型のダブルパス干渉計として機能する。
ここで、第一の光路は、第一の測定用レーザ光成分p1が空気中を経由して通過する光路であり、偏光ビームスプリッタ10、ダイクロイックミラー13及び平面ミラー18の配置によって形成される。即ち、第一の光路は、偏光ビームスプリッタ10を透過し、ダイクロイックミラー13で反射した第一の測定用レーザ光成分p1が、平面ミラー18で反射して、偏光ビームスプリッタ10に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ10、ダイクロイックミラー13及び平面ミラー18が、第一の測定用レーザ光成分p1が第一の光路を通過するように配置された第一の反射手段として機能する。
また、第二の光路は、第二の測定用レーザ光成分p2が空気中を経由して通過する光路であり、偏光ビームスプリッタ10、平面ミラー11、ダイクロイックミラー14及びダイクロイックミラー15の配置によって形成される。即ち、第二の光路は、偏光ビームスプリッタ10、平面ミラー11及びダイクロイックミラー14で反射した第二の測定用レーザ光成分p2が、ダイクロイックミラー15で反射して、偏光ビームスプリッタ10に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ10、平面ミラー11、ダイクロイックミラー14及びダイクロイックミラー15が、第二の測定用レーザ光成分p2が第二の光路を通過するように配置された第二の反射手段として機能する。そして、第一の光路及び第二の光路は、基体34に対する移動体33の変位に応じて光路長が変化する。
一方、補正用干渉計52Aにおいて偏光ビームスプリッタ16に入射した補正用レーザ光のうち、第一の補正用レーザ光成分p3(S偏光)は、入射方向と直交する方向(移動体33の移動方向と平行な方向)であってミラー15,18側に反射する。第二の補正用レーザ光成分p4(P偏光)は入射方向に透過する。これにより、補正用レーザ光は二つの光成分に二分割される。そして、偏光ビームスプリッタ16を透過した第二の補正用レーザ光成分p4は、平面ミラー20で折り返すことで1/4波長板19を2回通過してS偏光となる。次いで、第二の補正用レーザ光成分p4は、偏光ビームスプリッタ16に再度入射して、第一の補正用レーザ光成分p3とは反対方向(集光器29側)に反射される。これにより、第一の補正用レーザ光成分p3と第二の補正用レーザ光成分p4とは、偏光ビームスプリッタ16において互いに離反する方向に反射される。
第二の補正用レーザ光成分p4は、参照光であり、偏光ビームスプリッタ16を透過し、空気中を通過せずに第四の光路を通過して平面ミラー20で反射して偏光ビームスプリッタ16に戻ってくる。戻ってきた第二の補正用レーザ光成分p4は、偏光ビームスプリッタ16にて集光器29側に反射されるので、光路長が変動することはない。偏光ビームスプリッタ16で反射した第一の補正用レーザ光成分p3は、第三の光路を通過して偏光ビームスプリッタ16に戻ってくる。つまり、第一の補正用レーザ光成分p3は、1/4波長板17を通過することで円偏光となり、ダイクロイックミラー15を透過して、空気中の光路を通過する。次いで、第一の補正用レーザ光成分p3は、一対のダイクロイックミラー14,13を順次透過して、更に空気中の光路を通過した後、平面ミラー18に垂直に入射して反対方向に反射する。
そして、平面ミラー18で反射した第一の補正用レーザ光成分p3は、再度空気中の同一光路を通過し、再度一対のダイクロイックミラー13,14を順次透過して、再度空気中の同一光路を通過した後、ダイクロイックミラー15を透過する。このダイクロイックミラー15を透過した第一の補正用レーザ光成分p3は、1/4波長板17を通過してP偏光となって偏光ビームスプリッタ16に戻ってくる。このようにして偏光ビームスプリッタ16に戻ってきた第一の補正用レーザ光成分p3は、P偏光であるので、偏光ビームスプリッタ16をそのまま透過(直進)する。そして、ミラー15,18間を往復して偏光ビームスプリッタ16に戻ってきた第一の補正用レーザ光成分p3と参照光である第二の補正用レーザ光成分p4は、偏光ビームスプリッタ16で合流した際に干渉し、補正用干渉光が生成される。
ここで、第三の光路は、第一の補正用レーザ光成分p3が通過する光路であり、第一の光路及び第二の光路における空気中を通過する部分と重なる光路部分を含むように、偏光ビームスプリッタ16及び平面ミラー18の配置によって形成される。即ち、第三の光路は、偏光ビームスプリッタ16で反射した第一の補正用レーザ光成分p3が、平面ミラー18で反射して、偏光ビームスプリッタ16に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ16及び平面ミラー18が、第一の補正用レーザ光成分p3が第三の光路を通過するように配置された第三の反射手段として機能する。
また、第四の光路は、第二の補正用レーザ光成分p4が参照光として空気中を経由しない光路であり、偏光ビームスプリッタ16及び平面ミラー20の配置により形成される。即ち、第四の光路は、偏光ビームスプリッタ16を透過した第二の補正用レーザ光成分p4が、平面ミラー20で折り返し、偏光ビームスプリッタ16に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ16及び平面ミラー20が、第二の補正用レーザ光成分p4が第四の光路を通過するように配置された第四の反射手段として機能する。
ミラー15,18及び補正用干渉計52Aは基体34に固定されているので、移動体33が移動しても、第一の補正用レーザ光成分p3がミラー15,18の間の空気中を通過する実際の距離は一定である。したがって、第一の補正用レーザ光成分p3が一対のミラー15,18の間の空気中を往復する光路長(光学的距離)は、空気の屈折率の変動のみの要因で変動する。したがって、補正用干渉計52Aは、一対のミラー15,18の間の空気の屈折率の変化を検出するシングルパス干渉計として機能する。
ここで、偏光ビームスプリッタ10にて二分割され、一対のダイクロイックミラー13,14にて互いに離反する方向に反射された各測定用レーザ光成分は、ミラー15,18のそれぞれで反射して、同一光路を通過してミラー13,14に戻ってくる。したがって、各測定用レーザ光成分の往路と復路とで空気中の光路が一致する。また、各測定用レーザ光成分の空気中の光路が一対のダイクロイックミラー13,14を挟んで一直線上に形成されている。また、第一の補正用レーザ光成分p3は、平面ミラー18で反射して折り返すので、往路と復路とで空気中の光路が一致する。
そこで、本実施形態では、第一の補正用レーザ光成分p3を測定用干渉計51Aのダイクロイックミラー13,14を透過させることで、第一の補正用レーザ光成分p3の空気中の光路と、二つの測定用レーザ光成分p1,p2の空気中の光路とを一致させている。これにより、第一の補正用レーザ光成分p3は、第一の光路及び第二の光路の空気中を通過する部分と重なる光路部分を通過することになる。つまり、各測定用レーザ光成分p1,p2の空気中の光路と同一の光路を通過する。
このように、本第2実施形態では、各レーザ光成分において往路と復路とを一致させ、両測定用レーザ光成分p1,p2の光路と第一の補正用レーザ光成分p3とを一致させている。これにより、演算処理装置60により移動体33の変位量を演算する際に、空気の屈折率の変化の影響が低減され、より空気屈折率の変化の差異による誤差を低減させることができる。したがって、移動体33の変位量の測定精度が向上し、これにより、移動体33の位置決め精度が向上する。
[第3実施形態]
次に、図3に示す第3実施形態のレーザ干渉測長器100Bについて説明する。なお、本第3実施形態において、上記第1、第2実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。図3において測定用レーザ光を実線、補正用レーザ光を破線で示す。また、図3において、測定用レーザ光と補正用レーザ光とは、空気中の光路が実際には重なっているものであるが、便宜上僅かにずらして作図している。本第3実施形態において、上記第2実施形態と異なるのは、一対の反射部材である。すなわち、一方の反射部材は、コーナーキューブ22であり、他方の反射部材は、入射角を45°とした一対のダイクロイックミラー23,24で構成されている。これに伴い、補正用干渉計52Bは、更に、偏光ビームスプリッタ16における1/4波長板17側の面とは反対側の面に隣接して配置されたコーナーキューブ21を備えている。
本実施形態では、第一の光路は、偏光ビームスプリッタ10、ダイクロイックミラー13及びコーナーキューブ22の配置によって形成される。即ち、第一の光路は、偏光ビームスプリッタ10を透過し、ダイクロイックミラー13で反射した第一の測定用レーザ光成分p1が、コーナーキューブ22で反射して、偏光ビームスプリッタ10に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ10、ダイクロイックミラー13及びコーナーキューブ22が、第一の測定用レーザ光成分p1が第一の光路を通過するように配置された第一の反射手段として機能する。
また、第二の光路は、偏光ビームスプリッタ10、平面ミラー11、ダイクロイックミラー14、ダイクロイックミラー23及びダイクロイックミラー24の配置によって形成される。即ち、第二の光路は、偏光ビームスプリッタ10、平面ミラー11及びダイクロイックミラー14で反射した第二の測定用レーザ光成分p2が、ダイクロイックミラー24及びダイクロイックミラー23で反射して、偏光ビームスプリッタ10に戻るまでの光路である。従って、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ10、平面ミラー11、ダイクロイックミラー14、ダイクロイックミラー23,24が、第二の測定用レーザ光成分p2が第二の光路を通過するように配置された第二の反射手段として機能する。そして、第一の光路及び第二の光路は、基体34に対する移動体33の変位に応じて光路長が変化する。
また、第三の光路は、第一の光路及び第二の光路における空気中を通過する部分と重なる光路部分を含むように、偏光ビームスプリッタ16及びコーナーキューブ22の配置によって形成される。即ち、第三の光路は、偏光ビームスプリッタ16で反射した第一の補正用レーザ光成分p3が、コーナーキューブ22で反射して、偏光ビームスプリッタ16に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ16及びコーナーキューブ22が、第一の補正用レーザ光成分p3が第三の光路を通過するように配置された第三の反射手段として機能する。
また、第四の光路は、偏光ビームスプリッタ16、平面ミラー20及びコーナーキューブ21の配置により形成される。即ち、第四の光路は、偏光ビームスプリッタ16を透過した第二の補正用レーザ光成分p4が、平面ミラー20及びコーナーキューブ21で折り返し、偏光ビームスプリッタ16に戻るまでの光路である。したがって、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ16、平面ミラー20及びコーナーキューブ21が、第二の補正用レーザ光成分p4が第四の光路を通過するように配置された第四の反射手段として機能する。
ところで、ダイクロイックミラーはビーム入射角によって特性が変化するため、ビーム入射角を指定して製作する必要がある。そして、45°入射のダイクロイックミラーは、液晶プロジェクターに用いられるなど産業上の需要が多いため、一般的に入手しやすい。したがって、他方の反射部材を、上記第2実施形態の90°入射角のダイクロイックミラーの代わりに、45°入射角の一対のダイクロイックミラー23,24とすることで、製作コストが抑えられる利点がある。そして、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏するものである。
なお、本実施形態においては、一対のコーナーキューブ21,22は、基体34に固定され、測定用レーザ発振器26A、測定用干渉計51A及び集光器28は、移動体33に載置したが、これに限定するものではない。一対のコーナーキューブ21,22を移動体33に載置して可動させ、測定用レーザ発振器26A、測定用干渉計51A及び集光器28を基体34等に固定してもよい。
[第4実施形態]
次に、図4に示す第4実施形態のレーザ干渉測長器100Cについて説明する。なお、本第4実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。本第4実施形態では、レーザ干渉測長器100Cは、上記第1実施形態の構成に加え、更に、光路増倍手段としての複数(本実施形態では6つ)のコーナーキューブ25を備えたものである。複数(6つ)のコーナーキューブ25のうち、半分(3つ)のコーナーキューブ25は、コーナーキューブ3と測定用干渉計51との間の光路に配置される。残りの半分(3つ)のコーナーキューブ25は、コーナーキューブ4と測定用干渉計51との間の光路に配置される。つまり、コーナーキューブ3と測定用干渉計51との間の光路に配置されるコーナーキューブ25の個数と、コーナーキューブ4と測定用干渉計51との間の光路に配置されるコーナーキューブ25の個数とが同一数量に設定されている。そして、各光路に配置した3つのコーナーキューブ25は、移動体33と基体34とに分配配置される。そして、移動体33は、基体34に配置した、コーナーキューブ3と測定用干渉計51との間の光路のコーナーキューブ25と、コーナーキューブ4と測定用干渉計51との間の光路のコーナーキューブ25との間を移動するようになっている。
第一の光路及び第二の光路は、それぞれ、基体34と移動体33との間を複数回往復する。第一の光路は、偏光ビームスプリッタ1で反射した第一の測定用レーザ光成分p1が、3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、コーナーキューブ3で反射して、再度3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、偏光ビームスプリッタ1に戻るまでの光路である。第二の光路は、偏光ビームスプリッタ1で反射した第二の測定用レーザ光成分p2が、3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、コーナーキューブ4で反射して、再度3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、偏光ビームスプリッタ1に戻るまでの光路である。第三の光路は、偏光ビームスプリッタ2で反射した第一の補正用レーザ光成分p3が、6つのコーナーキューブ25で複数回往復し、コーナーキューブ3で反射して、再度6つのコーナーキューブ25で複数回往復し、偏光ビームスプリッタ2に戻るまでの光路である。これにより、測定用干渉計51と補正用干渉計52をマルチパス化し、両干渉計51,52の測定分解能を向上させたものである。
図4には測定用干渉計を差動型の8パス干渉計、補正用干渉計を4パス干渉計とした例を示している。図4の測定用干渉計51と一対のコーナーキューブ3,4との間の光路は、上記第1実施形態に示した光路と比較して、光路長が4倍に増倍(延長)されるため、移動体33の変位測定分解能が4倍となる。同様に、補正用干渉計52と、コーナーキューブ4との間の光路は、上記第1実施形態に示した光路と比較して、光路長が4倍に増倍(延長)されるため、空気の屈折率の補正分解能も4倍となる。なお、本第4実施形態では、補正用干渉計52及び一対のコーナーキューブ3,4も移動体33に載置固定されているが、移動体33が移動しても、一対のコーナーキューブ3,4間を補正用レーザ光が通過する実際の距離は一定である。すなわち、コーナーキューブ3,4は、一定距離に保持されたこととなる。そして、移動体33は、一対のコーナーキューブ3,4の間の光路を移動することとなる。以上、本第4実施形態では、干渉計のパス数を増加し、マルチパス干渉計とすることにより、さらに上記第1実施形態よりも、変位測定分解能と屈折率補正分解能を向上させることが可能である。
本実施形態においては、測定用干渉計51、補正用干渉計52、一対のコーナーキューブ3,4、及び一部のコーナーキューブ25は移動体33に載置され、残りのコーナーキューブ25が基体34等に固定されるようになっているが、これに限定するものではない。測定用干渉計51、補正用干渉計52、一対のコーナーキューブ3,4、及び一部のコーナーキューブ25を基体34等に固定し、残りのコーナーキューブ25を移動体に載置し、可動するように構成しても良い。
[第5実施形態]
次に、図5に示す第5実施形態のレーザ干渉測長器100Dについて説明する。なお、本第5実施形態において、上記第2実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。本第5実施形態では、レーザ干渉測長器100Dは、上記第2実施形態の構成に加え、更に、光路増倍手段としての複数(本実施形態では6つ)のコーナーキューブ25を備えたものである。これら複数のコーナーキューブ25の配置は上記第4実施形態と同様である。
第一の光路及び第二の光路は、それぞれ、基体34と移動体33との間を複数回往復する。第一の光路は、ダイクロイックミラー13で反射した第一の測定用レーザ光成分p1が、3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ミラー18で反射して、再度3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ダイクロイックミラー13に戻るまでの光路である。第二の光路は、ダイクロイックミラー14で反射した第二の測定用レーザ光成分p2が、3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ミラー15で反射して、再度3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ダイクロイックミラー14に戻るまでの光路である。第三の光路は、偏光ビームスプリッタ16で反射した第一の補正用レーザ光成分p3が、6つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ミラー18で反射して、再度6つのコーナーキューブ25で複数回往復し、偏光ビームスプリッタ16に戻るまでの光路である。これにより、測定用干渉計51Aと補正用干渉計52Aをマルチパス化し、両干渉計51A,52Aの測定分解能を向上させたものである。
図5には測定用干渉計を差動型の8パス干渉計、補正用干渉計を4パス干渉計とした例を示している。図5の測定用干渉計51Aと一対のミラー15,18との間の光路は、上記第2実施形態に示した光路と比較して、光路長が4倍に増倍(延長)されるため、移動体33の変位測定分解能が4倍となる。同様に、補正用干渉計52Aと、平面ミラー18との間の光路は、上記第2実施形態に示した光路と比較して、光路長が4倍に増倍(延長)されるため、空気の屈折率の補正分解能も4倍となる。なお、本第5実施形態では、補正用干渉計52A及び一対のミラー15,18も移動体33に載置固定されているが、移動体33が移動しても、一対のミラー15,18間を補正用レーザ光が通過する実際の距離は一定である。すなわち、一対のミラー15,18は、一定距離に保持されたこととなる。そして、移動体33は、一対のミラー15,18の間の光路を移動することとなる。以上、本第5実施形態では、干渉計のパス数を増加し、マルチパス干渉計とすることにより、さらに上記第2実施形態よりも、変位測定分解能と屈折率補正分解能を向上させることが可能である。
本実施形態においては、測定用干渉計51A、補正用干渉計52A、一対のミラー15,18、及び一部のコーナーキューブ25は移動体33に載置し、残りのコーナーキューブ25を基体34等に固定するように構成したが、これに限定するものではない。測定用干渉計51A、補正用干渉計52A、一対のミラー15,18、及び一部のコーナーキューブ25を基体34等に固定し、残りのコーナーキューブ25を移動体に載置するように構成してもよい。
[第6実施形態]
次に、図6に示す第6実施形態のレーザ干渉測長器100Eについて説明する。なお、本第6実施形態において、上記第3実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。本第6実施形態では、レーザ干渉測長器100Eは、上記第3実施形態の構成に加え、更に、光路増倍手段としての複数(本実施形態では6つ)のコーナーキューブ25を備えたものである。これら複数のコーナーキューブ25の配置は上記第4、第5実施形態と同様である。
第一の光路及び第二の光路は、それぞれ、基体34と移動体33との間を複数回往復する。第一の光路は、ダイクロイックミラー13で反射した第一の測定用レーザ光成分p1が、3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、コーナーキューブ22で反射して再度3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ミラー13に戻るまでの光路である。第二の光路は、ダイクロイックミラー14で反射した第二の測定用レーザ光成分p2が、3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ミラー23,24で反射して再度3つのコーナーキューブ25で複数回往復し、ダイクロイックミラー14に戻るまでの光路である。第三の光路は偏光ビームスプリッタ16で反射した第一の補正用レーザ光成分p3が6つのコーナーキューブ25で複数回往復し、コーナーキューブ22で反射して再度6つのコーナーキューブ25で複数回往復し、偏光ビームスプリッタ16に戻るまでの光路である。これにより、測定用干渉計51Aと補正用干渉計52Bをマルチパス化し、両干渉計51A,52Bの測定分解能を向上させたものである。
図6には測定用干渉計を差動型の8パス干渉計、補正用干渉計を4パス干渉計とした例を示している。図6の測定用干渉計51Aとコーナーキューブ22及びダイクロイックミラー23,24との間の光路は、上記第3実施形態に示した光路と比較して、光路長が4倍に増倍(延長)されるため、移動体33の変位測定分解能が4倍となる。同様に、補正用干渉計52Bと、コーナーキューブ22との間の光路は、上記第3実施形態に示した光路と比較して、光路長が4倍に増倍(延長)されるため、空気の屈折率の補正分解能も4倍となる。なお、本第6実施形態では、補正用干渉計52B並びにコーナーキューブ22及びダイクロイックミラー23,24も移動体33に載置固定されているが、移動体33が移動しても、これらミラー間を補正用レーザ光が通過する実際の距離は一定である。そして、移動体33は、コーナーキューブ22とダイクロイックミラー23,24との間の光路を移動することとなる。以上、本第6実施形態では、干渉計のパス数を増加し、マルチパス干渉計とすることにより、さらに上記第3実施形態よりも、変位測定分解能と屈折率補正分解能を向上させることが可能である。
本実施形態においては、測定用干渉計51A、補正用干渉計52B並びにコーナーキューブ22、ダイクロイックミラー23,24、及び一部のコーナーキューブ25が移動体33に載置され、残りのコーナーキューブ25を基体34等に固定するように構成した。この構成のほか、測定用干渉計51A、補正用干渉計52B並びにコーナーキューブ22、ダイクロイックミラー23,24、及び一部のコーナーキューブ25を基体34等に固定され、残りのコーナーキューブ25を移動体に載置するように構成してもよい。
[第7実施形態]
次に、第7実施形態の加工装置および加工方法について図7を参照しながら説明する。図7は本発明の加工装置の斜視図である。図7に示す加工装置としての工作機械において、ベース61上にYスライダ62が、不図示のリニアモータ等の駆動手段によってY方向に移動可能に保持されている。Yスライダ62上にXスライダ63が、不図示のリニアモータ等の駆動手段によってX方向に移動可能に保持されている。Xスライダ63上に配置されている不図示の保持具に、被加工物65が保持されている。また、ベース61上にZスライダ64が、不図示のリニアモータ等の駆動手段によってZ方向に移動可能に保持されている。Zスライダ64に支持されている工具支持具66aにより工具66が支持されている。
Yスライダ62のベース61に対する相対位置(リセット時点からの変位量)が、Yスライダ62に固定された測定用干渉計511およびベース61に固定された補正用干渉計521を有するレーザ干渉測長器1001によって計測される。このレーザ干渉測長器1001は、上記第1実施形態のレーザ干渉測長器であるが、これに限定するものではなく、上記第2〜第6実施形態のレーザ干渉測長器であってもよい。Yスライダ62とベース61の関係は、上述した実施形態における移動体と基体との関係である。すなわち、移動体がYスライダ62に対応し、基体がベース61に対応する。Yスライダ62は、Xスライダ63及び不図示の保持具を介して被加工物65を支持している。
同様にXスライダ63のYスライダ62に対する相対位置(リセット時点からの変位量)が、Xスライダ63に固定された測定用干渉計512およびYスライダ62に固定された補正用干渉計522を有するレーザ干渉測長器1002によって計測される。このレーザ干渉測長器1002は、上記第1実施形態のレーザ干渉測長器であるが、これに限定するものではなく、上記第2〜第6実施形態のレーザ干渉測長器であってもよい。Xスライダ63とYスライダ62の関係は、上述した実施形態における移動体と基体との関係である。すなわち、移動体がXスライダ63に対応し、基体がYスライダ62に対応する。Xスライダ63は、不図示の保持具を介して被加工物65を支持している。
また、Zスライダ64のベース61に対する相対位置(リセット時点からの変位量)が、Zスライダ64に固定された測定用干渉計513およびベース61に固定された補正用干渉計523を有するレーザ干渉測長器1003により計測される。このレーザ干渉測長器1003は、上記第1実施形態のレーザ干渉測長器であるが、これに限定するものではなく、上記第2〜第6実施形態のレーザ干渉測長器であってもよい。Zスライダ64とベース61の関係は、上述した実施形態における移動体と基体との関係である。すなわち、移動体がZスライダ64に対応し、基体がベース61に対応する。Zスライダ64は、工具支持具66aを介して工具66を支持している。
本実施形態においては、Yスライダ62のベース61に対する相対位置をレーザ干渉測長器1001で測定し、その測定値に基づいて、不図示のリニアモータ等の駆動手段をPID制御等の制御手法によって駆動する。これにより、Yスライダ62がベース61に対し位置決めされる。具体的に説明すると、被加工物65が支持されたYスライダ62のベース61に対する変位に応じて光路長が変化する第一の光路を、第一の測定用レーザ光成分71が通過する。また、被加工物65が支持されたYスライダ62のベース61に対する変位に応じて光路長が変化する第二の光路を、第二の測定用レーザ光成分72が通過する。また、第一の光路及び第二の光路における空気中を通過する部分と重なる光路部分を含む第三の光路を、第一の補正用レーザ光成分73が通過する。また、空気中を経由しない第四の光路を、参照光としての第二の補正用レーザ光成分(不図示)が通過する。そして、第一の測定用レーザ光成分71と第二の測定用レーザ光成分72とを干渉させて得られる測定用干渉光に基づき、第一の光路と第二の光路との光路長差のリセット時点からの変化を示す測定値を求める(第一の演算工程)。更に、第一の補正用レーザ光成分73と不図示の第二の補正用レーザ光成分とを干渉させて得られる補正用干渉光に基づき、第三の光路における光路部分の空気屈折率のリセット時点からの変化を示す補正値を求める(第二の演算工程)。そして、測定値を補正値で補正して、Yスライダ62のリセット時点からの変位量を演算する(第三の演算工程)。このように、Yスライダ62のベース61に対する相対位置は、測定用干渉計511の測定値に含まれる空気屈折率変化による誤差を、補正用干渉計521によって補正することで、高精度に測定される。測定用干渉計511から照射される第一の測定用レーザ光成分71は、補正用干渉計521から照射される第一の補正用レーザ光成分73と空気中において共通の光路を通過するため、空気屈折率変化による測定誤差を極めて高精度に補正することができる。したがってYスライダ62を空気屈折率変化の影響を受けずに高精度に位置決めすることが可能である。
同様にXスライダ63、Zスライダ64も、レーザ干渉測長器1002,1003の測定値に基づき高精度に位置決めされる。従って本実施形態においては、工具66を支持したZステージ及び被加工物65を支持したXYステージを、レーザ干渉測長器1001,1002,1003を用いて高精度に位置決めすることができる。これにより、工具66と被加工物65の相対位置を高精度に制御し、被加工物65を高精度に加工することができる。また工具66と被加工物65の配置を交換しても加工を行うことができる。
次に、レーザ干渉測長器を用いた加工装置が行う加工の具体例を、図7を用いて説明する。第1の加工例として、レンズ金型の切削加工を説明する。工具66をスピンドルに取付けられた先端丸形状のダイアモンドバイト、被加工物65を鉄系の母材の上に無電界ニッケルメッキを施した金型材とする。スピンドルの回転によりバイトを高速旋回させ、金型材をXY方向、バイトをZ方向に走査する。バイトの切込み量をレーザ干渉測長器の位置測定値に基づき高精度に制御しながら切削加工を行うことにより、レンズ金型を高精度に加工できる。また第2の加工例として、レンズの研磨加工を説明する。工具66をウレタンパッドなどの研磨工具、被加工物65をレンズ母材とし、研磨液中でレンズ母材に対し研磨工具を軽微な荷重で押し付けながら走査することにより、研磨加工を行うことができる。加工装置が適用可能な加工方法は、切削、研削、研磨、ウォータージェット加工などの噴射加工、プラズマ加工、放電加工、電子ビーム加工、レーザ加工、露光などの、工具又は被加工物の少なくとも一方を機械的に位置決めする工程を含む全てである。