JP5540289B2 - 熱電発電デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献7には、最大発電量を得るために外部負荷とのインピーダンス整合を考慮した熱電発電素子が示されているが、しかし、この文献では、p型とn型の特性の違いを避けるために同一素子(p型のみあるいはn型のみ)で実現させているだけである。同一素子(p型のみあるいはn型のみ)で形成した場合には、pn型に比べて変換ロスが大きく、また、同一素子における技術は、本質的にpn型で最大発電量を得ることに利用することはできない。
また、特許文献8、9には、最大発電量を得るためには外部負荷とのインピーダンス整合を考慮して、熱電発電素子と負荷の間に最大電力追尾制御装置(MPPT:Maximum Power Point Tracking)を別途設ける方法が示されているが、これらの文献では、熱源の温度変化や外部負荷の変動に伴うパワーロスを、制御技術によって回避するものであるから、pn型で最大発電量を得る本質的な解決手段を示したものではない。
また、特許文献10には、pn型において、p型とn型の特性の違いを避ける技術が示されているが、しかし、これはp型、n型にそれぞれ異種金属電極を付けているだけであるから、pn型で最大発電量を得る本質的な解決手段を示したものではない。
また、特許文献11には、AD法(エアロゾルデポジション法)を用いて製造した熱電発電デバイスが示されているが、これは従来法では焼結や成膜が難しい熱電材料であっても、AD法を用いれば熱電発電デバイスを作製することができることを示しただけにすぎない。
一例として、熱電発電デバイスの実用化の目安とされるエネルギー変換効率10%以上を高温側(TH)300℃、低温側(TC)20℃の環境を提案するデバイスで実現する場合を考察する。
エネルギー変換効率ηは次式で表される。
η={(TH−TC)/TH}×
[{(1+ZT)1/2−1}/{(1+ZT)1/2+TC/TH}]=10%
ここで、T=(TH+TC)/2
すなわち、TH=300℃、TC=20℃の場合、上式を満たすためには無次元性能指数(ZT)≧0.93でなければならない。
よって、電子による熱伝導率(κC)とフォノンによる熱伝導率(κP)、導電率(σ)を用いると、ZTは次式で表される。
ZT={σS2/(κC+κP)}×T=S2/(L+κP/σT)≧0.93
ここで、L=2.45×10−8V2K−2(ローレンツ数)
となる。仮に、BiTe系材料と同程度の熱電性能を有するセラミックス系熱電材料を考えた場合、|S|=200μV/K、σ=105S/mを代入すると、以下のような低い熱伝導率を実現させる必要がある。
300℃における熱伝導率は、おおよそκP≦1.06W/mK
20℃における熱伝導率は、おおよそκC≦0.54W/mK
一方、AD膜で形成した熱電材料膜の粒径を20nm、バルクの熱電材料セラミックスの粒径を100μmと仮定すると、1mmの範囲内でAD膜は50000回、バルクセラミックスは10回の粒界によるフォノン散乱が生じる。フォノンによる熱伝導率(κP)は角振動数を持つフォノンの熱容量への寄与をc、フォノンの群速度をνP、フォノンの平均自由行程をlP(英子文字のエルに添え字のP)とすると次式で表される。
κP=(1/3)×cνPlP
すなわち、AD法で成膜したAD膜はバルクセラミックスに比べ、フォノン散乱による最大1/5000の熱伝導率の低減が期待される。
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、AD法で成膜したpn型の熱電発電デバイスであって、小型軽量化を行いつつ、熱電発電特性が異なるp型とn型とを組み合わせ、各種熱電変換材料の効率に対応した最適で高効率の、最大発電量を簡単に得ることができる熱電発電デバイス及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明は、p型熱電材料をAD法により成膜した5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体であるp型素子と、n型熱電材料をAD法により成膜した5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体であるn型素子とを備えたpn型の熱電発電デバイスにおいて、p型素子及びn型素子は全て同じ素子形状であり、p型とn型のゼーベック効果により生じる電流を等しくするために、p型、n型をそれぞれnp個、nn個並列接続した物を直列に繋ぎ1ユニットとして、このユニットを直列や並列に組み合わせることにより、接続される外部負荷とのインピーダンス整合をとって最大発電量を得るように選定することを特徴とする。
また、本発明は、上記熱電発電デバイスにおいて、さらに、各素子を同じ短冊形状にして、素子間を柔軟性の高い材料で繋ぐことにより、各素子に応力をかけずに柔軟性を確保することを特徴とする。
また、本発明は、p型熱電材料を5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体となるようにAD法により成膜してp型素子を形成するとともに、n型熱電材料を5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体となるようにAD法により成膜してn型素子を形成するpn型の熱電発電デバイスの製造方法において、p型素子及びn型素子は全て同じ素子形状であり、p型素子の数npとn型素子の数nnとの比を、接続される外部負荷とのインピーダンス整合をとって最大発電量を得るように選定することを特徴とする。
また、本発明は、p型熱電材料を5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体となるようにAD法により成膜してp型素子を形成するとともに、n型熱電材料を5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体となるようにAD法により成膜してn型素子を形成するpn型の熱電発電デバイスの製造方法において、p型素子及びn型素子は全て同じ素子形状であり、p型とn型のゼーベック効果により生じる電流を等しくするために、p型、n型をそれぞれnp個、nn個並列接続した物を直列に繋ぎ1ユニットとして、このユニットを直列や並列に組み合わせることにより、接続される外部負荷とのインピーダンス整合をとって最大発電量を得るように選定することを特徴とする。
また、本発明は、上記熱電発電デバイスの製造方法において、さらに、各素子を同じ短冊形状にして、素子間を柔軟性の高い材料で繋ぐことにより、各素子に応力をかけずに柔軟性を確保することを特徴とする。
また、AD法を用いれば、熱伝導率が非常に小さな同じ素子形状のp型及びn型熱電素子を、所望の素子寸法で、かつ、狭ピッチで形成できるので、従来、pn型において、熱電発電特性が異なるp型熱電材料とn型熱電材料から構成される熱電発電モジュールの最大発電量をp型とn型の素子断面積の違いにより実現させていた代わりに、本発明では、p型素子とn型素子の素子数の組み合わせによって実現できる。同じ形状の素子を組み合わせ発電特性を揃え最大発電量を得ている。また素子を短冊形状にして並べ、素子間を柔軟性の高い材料で繋ぐことにより、各素子に応力をかけずに柔軟性を確保することでき、パイプ等へ巻き付けて利用することが可能である。また、接続する外部負荷とのインピーダンス整合も、本発明では、素子数を組み合わせることによって実質的に実現できる。
また、従来の熱電発電素子と負荷の間に、たとえば特許文献8、9に記載されているようなMPPTを別途設ける方法も適用することが可能である。
V=(Sp−Sn)ΔT
となり、Rをデバイスの内部抵抗、RLを外部負荷とすると、流れる電流Iは、
I=V/(RL+R)
=(Sp−Sn)ΔT/(RL+R)
=(Sp−Sn)ΔT/{R(1+m)} (ここで、m=RL/R)
となり、発電力Pは、
P=I2RL
={(Sp−Sn)2ΔT2/R}×{m/(1+m)2}
となる。
R=1.019×10−5×(0.2×10−3)/(10×10−3×1×10−3)
=2.04×10−4Ω
となり、BiTeのゼーベック係数を、おおよそ|S|=200μV/Kとすると、1℃の温度差(温度差の値は、摂氏と絶対温度とでかわらない)に対して発生する電圧は、V=200μVとなる。
上記短冊形状の単一素子を1万個ならべると、発生する電圧はV=200μV×10000=2Vとなり、このときの内部抵抗Rは、各デバイスの接触抵抗を無視すると、R=2.04×10−4Ω×10000=2.04Ωとなる。起電力2V、内部抵抗2.04Ωの電源に最適な外部負荷は2.04Ωであるから、流れる電流は、I=2/(2.04+2.04)=0.5Aとなり、外部負荷による最大仕事量はW=2V×0.5A=1Wである。なお、幅1mmの短冊形状を10000個並べると、素子間の間隔を無視すれば10mの長さになる。
Qp−max=Vp1Ip1
Qn−max=Vn1In1
である。
しかし、両素子の最大電力が得られる電流値は異なっているため(Ip1≠In1)、p型熱電素子とn型熱電素子を組み合わせて図1のpn型として用いる場合、両素子に共通の電流(Ip2=In2)を流して得られる最大発電量は、
Qp=Vp2Ip2
Qn=Vn2In2
の和となるため、素子が単独で存在した場合の最大発電量から期待される値(Qp−max+Qn−max)よりも小さくなってしまう。すなわち、
Qp+Qn<Qp−max+Qn−max
である。
上記を確かめるべくp型材料であるCa層状酸化物と、n型材料であるLaペロブスカイト酸化物、それぞれのバルクセラミックスを用意し、バルクセラミックスの両端に最大100℃程度の温度差を設けて最大電力を計測した。その結果、p型材料において内部抵抗15.8Ω、開放電圧14.07mVであり、外部負荷1.805Ω、起電圧7.153mV、起電流3.962mAのとき最大電力28.34μWが得られた。また、n型材料において内部抵抗3.01Ω、開放電圧2.44mVであり、外部負荷0.41286Ω、起電圧1.2450mV、起電流2.156mAのとき最大電力2.6842μWが得られた。すなわち、p型とn型を直列接続した場合、28.34μW+2.6842μW=31.024μWの発電量が期待される。しかし、実際にはpn型において内部抵抗18.8Ω、開放電圧16.53mVであり、外部負荷2.401Ω、起電圧8.2580mV、起電流3.435mAのとき最大電力28.366μWが得られ、期待される最大発電量より小さくなってしまう(図3参照)。
図3の実験結果に示すように、p型素子とn型素子のV−I特性に大きな差がある場合は、性能の低いn型素子側(この場合はLa側)は、ゼーベック効果による発電を行うと同時に、性能の高いp型素子側(この場合はCa側)による発電電力により、ベルチェ効果、および抵抗成分としても働くことになり、性能を著しく低下させる(図4参照)。これはpn型として用いた場合の電流量がn型単一で用いた場合よりも電流量が多いため、その過剰電流量がn型素子の内部で材料抵抗による電圧降下やペルチェ効果によって損失を引き起こし、発電効率が著しく悪くなってしまうからである。すなわち、pn型で上記損失をできるだけ抑制しながら最大発電量を得るためには、pn型を用いて外部負荷に対してインピーダンス整合をとると同時に、p型素子とn型素子のゼーベック効果による電流量をできるだけ同じ量にする必要がある。
そこで、従来一般には、図2に示したように熱電発電特性が異なるp型熱電材料とn型熱電材料から構成されるpn型熱電発電モジュールにおいて、図5に示したように、p型熱電素子(図面中で面積の大きい右側の素子)のn型熱電素子に対する相対的な電流に対する断面積を増加させて異形とし、図6に示すようにp型熱電素子に流れる実効的な電流量を増やしてIp1=In1となるようにすることが行われていた。しかし、断面積の増加は元々バルキーな熱電発電素子のフレキシビリティーをさらに悪化し、熱分布へのフィッティングも非常に困難となる。なお、n型あるいはp型のみの単一素子でデバイスを構成することも考えられているが、単一素子を用いたデバイスでは電極による熱伝導によって熱電素子内での温度差が付きにくく、そもそも大きな発電量が期待できない。
なお、本発明ではAD法により成膜したp型とn型の素子を用いるが、他の製造プロセスやバルクプロセスにより形成した、p型とn型の素子数を調整することによって最大発電量を得ても良い。また、金属や合金系やコンポジット系(複合材料系)の膜状あるいはバルク状材料を用いたり、それらとセラミックス系の膜状あるいはバルク材料を組み合わせて用いて、p型とn型の素子数を調整することによって最大発電量を得ても良い。また、本発明は300℃以下の低温度域の熱を使用しているが、300℃以上の中・高温度域の熱を使用しても良い。また、本発明ではp型とn型の素子数を調整することによって、ゼーベック効果を用いた熱電発電の発電性能の最大化を行っているが、ゼーベック効果の逆の現象であるペルチェ効果を用いた熱電冷却の冷却性能の最大化に使用しても良い。
本発明の熱電発電デバイスは、同じ素子形状に成膜されたp型素子とn型素子のp型とn型の素子数の比を調整したものであるが、熱電発電素子の素子数の合計が100個に制限されている場合の発電量を例にとって、図8〜10を参照しながら説明する。
図8は、熱電発電素子の素子数が100個に制限されている場合の等価回路を示す。p型素子の数がnp個、n型素子の数がnn個で、素子の個数は100個に制限されているのでnp+nn=100とする。rp、Vpは、それぞれ、p型素子の内部抵抗、起電力を表し、rn、Vnは、それぞれ、n型素子の内部抵抗、起電力を表す。r0は外部負荷、I0は外部負荷に流れる電流、V0は外部負荷両端の電圧を表す。
そうすると、
V0=r0I0
=Vp−(rp/np)I0+Vn−(rn/nn)I0
となる。また、
{r0+(rp/np)+(rn/nn)}I0=Vp+Vn
であるから、I0は、
I0=(Vp+Vn)/{r0+(rp/np)+(rn/nn)}
となる。したがって、発電量W0は、
W0=V0I0
=r0I0 2
=r0×(Vp+Vn)2/{r0+(rp/np)+(rn/nn)}2
となる。ここで、np+nn=100であるから、
W0=r0×(Vp+Vn)2/[r0+(rp/np)+{rn/(100−np)}]2
と表すことができる。
rp=0.21Ω
Vp=0.15mV
n型素子の特性、
rn=7.4Ω
Vn=1.3mV
のものを用いた場合には、上記W0の式から、W0、r0、npを3軸とした3次元グラフは図9に示すようになり、図9を等高線グラフ(高さがW0)で表したものが図10のようになる。図9及び10から、外部負荷が0.1Ωにおいて
なお、上記素子特性をバルクセラミックスで得るには、バルクセラミックスの電流に対する断面積は、p型、n型共に5×5mm程度を要し、一列に並べて素子間のピッチを1mmとすると60cm程度の長さになる。しかし、AD法により成膜したAD膜であれば、1mm×10mm×0.2mm(厚み)の短冊状の素子形状で素子間のピッチを0.1mmで形成すると、11cm程度の長さに収まる。
また上記の例ではp型熱電素子数が15個、n型熱電素子数が85個にて最大発電量が得られることから、その比であるp型3個、n型17個で1ユニットを形成し、このユニットを直列や並列に組み合わせることにより、接続される外部負荷とのインピーダンス整合をとって最大発電量を得ることが可能である。
図11は図3の実験結果と回路シミュレーションした結果を示している。シミュレーションにおいて、接触抵抗を0.1Ωとした場合、極めて実験値と一致するシミュレーション結果が得られた。次に図11のシミュレーション結果をもとに、実験結果のようにp型素子(ここではCaと記載)とn型素子(ここではLaと記載)のV−I特性に大きな差がある場合、たとえば電流量が大きいp型素子を2個並列接続した場合(ここではCa(2)と記載)でも、電流量が小さいn型素子が1個直列接続されることによって(ここではLa(1)−Ca(2)と記載)pn型の最大発電量が低下し、n型素子を使った効果が得られていない(図12参照)。
これは、p型素子に流れる電流は、n型素子にも流れようとするので、本来n型素子が流せる電流量を超えてしまい、その差分によってn型素子の材料抵抗による電圧降下が起こるからである。
さらに、n型素子に流れる過剰の電流によってペルチェ効果が働き、n型素子内には本来の温度差よりも小さな温度差しか形成されなくなり、結果的にpn型熱電デバイスとしての発電量を低下させてしまう。
図13は図11のシミュレーション結果をもとに、実験結果のようにp型素子(ここではCaと記載)とn型素子(ここではLaと記載)のV−I特性に大きな差がある場合、たとえば電流量が小さいn型素子を2個並列接続した場合の電流量(ここではLa(2)と記載)はp型素子1個の電流量(ここではCa(1)と記載)とほぼ同じとなり、そのうえで並列接続したn型素子とp型素子を直列接続した結果(ここではLa(2)−Ca(1)と記載)、p型素子とn型素子を1個ずつ直列接続した場合(ここではLa(1)−Ca(1)と記載)よりも大きな最大発電量が得られている。つまり、p型素子に流れる電流量とn型素子に流れる電流量を同じ、すなわち、外部負荷に対するインピーダンス整合だけでなく、p型素子とn型素子に流れる電流量の整合も取ることによって、たとえp型素子とn型素子のV−I特性に大きな差がある場合でもpn型熱電デバイスにおいて効率よく最大発電量が得られる。
Claims (1)
- p型熱電材料を5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体となるようにAD法により成膜してp型素子を形成するとともに、n型熱電材料を5〜500nmの粒径を持つ微結晶構造体となるようにAD法により成膜してn型素子を形成するpn型の熱電発電デバイスの製造方法において、
前記熱電発電デバイスの使用環境における熱入力側と放熱側の温度差及び接続される外部負荷は予め所与であって、
p型素子及びn型素子は全て同じ素子形状であり、
p型素子、n型素子をそれぞれnp個、nn個並列接続したものを直列に繋ぎ1ユニットとし、該ユニットを直列や並列に組み合わせて予め所与の外部負荷と接続されるものであり、
前記ユニットを直列や並列に組み合わせて予め所与の外部負荷と接続した際に予め所与の熱入力側と放熱側の温度差でp型とn型のゼーベック効果により生じる電流が等しくなるように前記np個及びnn個を選定するとともに、
前記ユニットの直列や並列に組み合わせにより、接続される予め所与の外部負荷とのインピーダンス整合をとることで最大発電量を得るように前記ユニットの直列や並列の組み合わせを選定することを特徴とする熱電発電デバイスの製造方法。
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