JP5536460B2 - 保護用ヘルメット - Google Patents

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Description

本発明は、軍用、法の執行、および他の用途に有用な保護用ヘルメットに関する。
保護用ヘルメットはよく知られている。そのヘルメットは軍用および非軍用の用途に用いられてきた。後者の例には、法の執行での使用、スポーツでの使用、および他のタイプの安全ヘルメットが含まれる。軍用および法の執行での使用に用いられる保護用ヘルメットは特に弾道抵抗性(ballistic resistant)である必要がある。
現在最も普及している軍用ヘルメットはアラミド繊維から作られており、通常はいくつかの層のアラミド繊維が樹脂性物質、例えばフェノール樹脂と一緒になった形である。アラミド繊維で作られたヘルメットは、例えば米国特許第4,199,388号、米国特許第4,778,638号および米国特許第4,908,877号において開示されている。そのヘルメットは概して申し分なく機能するが、それらはかなり重い。
低減された重量を有し、脅威となる発射物に対する向上した弾道抵抗をも有する保護用ヘルメットを提供するのが望ましいであろう。
米国特許第4,199,388号 米国特許第4,778,638号 米国特許第4,908,877号
本発明に従って、シェルを含み、シェルが外側から内側に向って次のものを含む成形されたヘルメットが提供される:
第1の複数の繊維層、繊維層は第1樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;および
第1の複数の繊維層に付着した第2の複数の繊維層、その第2の複数の繊維層は第2樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;ただし、第1の複数の繊維層の繊維がポリオレフィン繊維を含む場合は第2の複数の繊維層の繊維はアラミド繊維を含み、その第1の複数の繊維層の繊維がアラミド繊維を含む場合は第2の複数の繊維層の繊維はポリオレフィン繊維を含む。
また、本発明に従って、シェルを含み、シェルが外側から内側に向って次のものを含む成形ヘルメットが提供される:
第1の複数の繊維層、繊維層は第1樹脂母材中のガラス繊維を含む;
第1の複数の繊維層に付着した第2の複数の繊維層、第2の複数の繊維層は第2樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;および
第2の複数の繊維層に付着した第3の複数の繊維層、第3の複数の繊維層は第3樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;ただし、第2の複数の繊維層の繊維がポリオレフィン繊維を含む場合は第3の複数の繊維層の繊維はアラミド繊維を含み、第2の複数の繊維層の繊維がアラミド繊維を含む場合は第3の複数の繊維層の繊維はポリオレフィン繊維を含む。
さらに本発明に従って、次の工程を含むヘルメットのシェルを作る方法が提供される:
第1の複数の繊維層を型に供給し、繊維層は第1樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;
第2の複数の繊維層を型に供給し、第2の複数の繊維層は第2樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;ただし、第1の複数の繊維層の繊維がポリオレフィン繊維を含む場合は第2の複数の繊維層の繊維はアラミド繊維を含み、第1の複数の繊維層の繊維がアラミド繊維を含む場合は第2の複数の繊維層の繊維はポリオレフィン繊維を含む;ならびに
第1の複数の繊維層および第2の複数の繊維層に熱および圧力を加え、それにより第1の複数の繊維層は第2の複数の繊維層に付着し、それにより完全なヘルメットシェルが作られる。
さらにもっと本発明に従って、次の工程を含むヘルメットのシェルを作る方法が提供される:
第1の複数の繊維層を型に供給し、繊維層は第1樹脂母材中のガラス繊維を含む;
第2の複数の繊維層を型に供給し、第2の複数の繊維層は第2樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;
第3の複数の繊維層を型に供給し、第3の複数の繊維層は第3樹脂母材中の高テナシティ繊維の網状構造を含み、高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;ただし、第2の複数の繊維層の繊維がポリオレフィン繊維を含む場合は第3の複数の繊維層の繊維はアラミド繊維を含み、第2の複数の繊維層の繊維がアラミド繊維を含む場合は第3の複数の繊維層の繊維はポリオレフィン繊維を含む;ならびに
第1の複数の繊維層、第2の複数の繊維層および第3の複数の繊維層に熱および圧力を加え、第1の複数の繊維層は第2の複数の繊維層に付着し、第2の複数の繊維層は第3の複数の繊維層に付着し、それにより完全なヘルメットシェルが作られる。
2個の別々のセットの高強度繊維の繊維の網状構造を用いることにより、より軽い重量のヘルメットを製造できることが分かっている。さらに、第3のセットのガラス繊維の繊維の網状構造を用いることにより、ヘルメットのコストをかなり低減することができる。本発明のヘルメットは優れた弾道抵抗性を有し、発射物を変形させることができ、砕けたまたは変形した発射物を受け止めることができる。本ヘルメットは弾道保護に必要な保護システムを提供するが、非弾道的な用途にも用いることができる。
好ましくは、2種類の複数の層から作られた構造では、外層はアラミド繊維から作られ、内層は高テナシティポリオレフィン繊維(より好ましくは、高テナシティポリエチレン繊維)から作られる。3種類の構成要素のヘルメット物質では、外層はガラス繊維の複数の層から作られ、中間層は好ましくはアラミド繊維の複数の層から作られ、内層は好ましくは複数の高テナシティポリオレフィン繊維(より好ましくは、高テナシティポリエチレン繊維)から作られる。
本発明の保護用ヘルメットは、高強度アラミドの繊維の網状構造の複数の層および高強度ポリオレフィンの繊維の網状構造の複数の層を含む。上述したように、それらはガラス繊維の網状構造の複数の層も含んでいてよい。
本発明の目的に関して、繊維は細長い物体であり、その長さ寸法は幅および厚さの横断寸法よりもはるかに大きい。従って、繊維という用語にはモノフィラメント、マルチフィラメント、リボン、ストリップ、ステープルおよび他の形の切られた、切断されたまたは不連続の繊維ならびに規則的または不規則な横断面を有する同様のものが含まれる。用語”繊維”には、複数の前述のもののいずれかまたはその組み合わせが含まれる。ヤーンは多くの繊維またはフィラメントからなる連続的なストランド(strand)である。
本明細書で用いられる用語”高テナシティ繊維”は、約7g/dと等しいまたはそれより大きいテナシティを有する繊維を意味する。好ましくは、これらの繊維はASTM D2256により測定される少なくとも約150g/dの初期引張モジュラスおよび少なくとも約8J/gの破壊エネルギー(energy to break)を有する。本明細書で用いられる用語”初期引張モジュラス”、”引張モジュラス”および”モジュラス”は、ヤーンに関してASTM 2256により、エラストマーまたは母材物質に関してASTM D638により測定される弾性率を意味する。
好ましくは、高テナシティ繊維は約10g/dと等しいまたはそれより大きい、より好ましくは約15g/dと等しいまたはそれより大きい、さらにもっと好ましくは約20g/dと等しいまたはそれより大きい、最も好ましくは約25g/dと等しいまたはそれより大きいテナシティを有する。
本発明において有用な繊維の横断面は広く異なっていてよい。それらは横断面が円形、平たい形、または横長な形(oblong)であってよい。それらは、フィラメントの直線軸または縦軸から突き出た1個またはより多くの規則的または不規則なローブ(lobe)を有する不規則または規則的なマルチローバル(multi−lobal)横断面であってもよい。繊維は実質的に円形、平たい形、または横長な形の横断面であるのが特に好ましく、繊維は実質的に円形の横断面であるのが最も好ましい。
本発明で用いられる高テナシティ繊維のヤーンは、例えば、約50〜約5000デニール、より好ましくは約200から約5000デニールまで、さらにもっと好ましくは約650から約3000デニールまで、最も好ましくは約800から約1500デニールまでのようないずれかの適切な繊度であってよい。
本発明の繊維の網状構造は、好ましくは織られた、編まれたまたは不織ファブリックの形である。好ましくは、高テナシティ繊維の複数の層の層中の繊維の少なくとも約50重量%が高テナシティ繊維である。より好ましくは、高テナシティ繊維の複数の層の層中の繊維の少なくとも約75重量%が高テナシティ繊維である。最も好ましくは、高テナシティ繊維の複数の層の層中の全てまたは実質的に全ての繊維が高テナシティ繊維である。
本発明に従えば、ヘルメットシェルは異なる弾道物質の層から作られる。好ましくは、1つのタイプの高テナシティ繊維から作られた1つのグループの繊維層が存在し、第2のタイプの高テナシティ繊維から作られた第2のグループの繊維層が存在する。これらの繊維はアラミド繊維またはポリオレフィン繊維のどちらかである。ポリオレフィン繊維は好ましくは高テナシティポリエチレン繊維および/または高テナシティポリプロピレン繊維である。最も好ましくは、ポリオレフィン繊維は、伸切り鎖ポリエチレン繊維または高配向高分子量ポリエチレン繊維としても知られる高テナシティポリエチレン繊維である。本発明において有用なアラミドおよびポリオレフィン繊維が知られており、優れた弾道抵抗特性を有する。
米国特許第4,457,985号は概して高分子量ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維を論じており、この特許の開示をそれが本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する。ポリエチレン繊維の場合、適切な繊維は、重量平均分子量が少なくとも約150,000、好ましくは少なくとも約100万、より好ましくは約200万〜約500万である繊維である。その高分子量ポリエチレン繊維は溶液中で紡糸されてよく(米国特許第4,137,394号および米国特許第4,356,138号を参照)、または溶液から紡糸されてゲル構造となるフィラメントであってよく(米国特許第4,413,110号、ドイツ国公報第3,004,699号および英国特許第2051667号を参照)、またはポリエチレン繊維はローリングおよび延伸プロセスにより製造されてよい(米国特許第5,702,657号を参照)。本明細書で用いられるポリエチレンという用語は、主に線状ポリエチレン物質を意味し、それは100主鎖炭素原子あたり約5修飾単位を越えない少量の鎖分岐またはコモノマーを含んでいてよく、それらはそれらと混合された約50重量パーセントを越えない1種類以上の重合性添加物、例えばアルケン−1−ポリマー類、特に低密度ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリブチレン、一次モノマー類としてモノ−オレフィン類を含むコポリマー類、酸化ポリオレフィン類、グラフトポリオレフィンコポリマー類およびポリオキシメチレン類、または低分子量添加物、例えば抗酸化剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、着色剤および一般的に組み込まれるそれらと同様のものも含んでいてよい。
高テナシティポリエチレン繊維は商業的に入手可能であり、Morristown,New Jersey,U.S.A.のHoneywell International Inc.によりSPECTRA(登録商標)の商標の下で売られている。他の出所からのポリエチレン繊維を用いてもよい。
形成技法、延伸比および温度、ならびに他の条件によって、これらの繊維に様々な特性を与えることができる。ポリエチレン繊維のテナシティは少なくとも約7g/d、好ましくは少なくとも約15g/d、より好ましくは少なくとも約20g/d、さらにもっと好ましくは少なくとも約25g/d、最も好ましくは少なくとも約30g/dである。同様に、Instron引張試験機械により測定される繊維の初期引張モジュラスは、好ましくは少なくとも約300g/d、より好ましくは少なくとも約500g/d、さらにもっと好ましくは少なくとも約1,000g/d、最も好ましくは少なくとも約1,200g/dである。初期引張モジュラスおよびテナシティに関するこれらの最も高い値は、通常は溶液成長またはゲル紡糸プロセスを用いることによってのみ得ることができる。フィラメントの多くは、それからそれらが作られるポリマーの融点よりも高い融点を有する。従って、例えば、約150,000、約100万および約200万の分子量の高分子量ポリエチレンは通常はバルクの状態で138℃の融点を有する。これらの物質から作られた高配向ポリエチレンフィラメントは、約7℃から約13℃まで高い融点を有する。従って、融点のわずかな上昇は、フィラメントの結晶完全性およびバルクポリマーと比べてより高い結晶配向性を反映している。
同様に、重量平均分子量が少なくとも約200,000、好ましくは少なくとも約100万、およびより好ましくは少なくとも約200万の高度に配向した高分子量ポリプロピレン繊維を用いてよい。その伸切り鎖ポリプロピレンは、無理なくよく配向したフィラメントへと、上記に参照した様々な参考文献で定められた技法により、および特に米国特許第4,413,110号の技法により作られてよい。ポリプロピレンはポリエチレンよりもかなり結晶性の低い物質でありペンダントメチル基を含むため、ポリプロピレンを用いて得られるテナシティの値は、ポリエチレンに関する対応する値よりも通常はかなり低い。従って、適切なテナシティは好ましくは少なくとも約8g/d、より好ましくは少なくとも約11g/dである。ポリプロピレンについての初期引張モジュラスは好ましくは少なくとも約160g/d、より好ましくは少なくとも約200g/dである。ポリプロピレンの融点は通常は配向プロセスにより数度上昇し、その結果ポリプロピレンフィラメントは好ましくは少なくとも168℃、より好ましくは少なくとも170℃の主な融点を有する。上記のパラメーターについての特に好ましい範囲は、好都合なことに最終的な品物に向上した性能を与えることができる。上記のパラメーター(モジュラスおよびテナシティ)についての好ましい範囲と結びついた少なくとも約200,000の重量平均分子量を有する繊維を用いることで、最終的な品物に都合よく向上した性能を与えることができる。
アラミド繊維の場合、芳香族ポリアミド類から作られた適切な繊維は米国特許第3,671,542号に記述されており、これを本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に援用する。好ましいアラミド繊維は少なくとも約20g/dのテナシティ、少なくとも約400g/dの初期引張モジュラスおよび少なくとも約8J/gの破壊エネルギーを有し、特に好ましいアラミド繊維は少なくとも約20g/dのテナシティおよび少なくとも約20J/gの破壊エネルギーを有するであろう。最も好ましいアラミド繊維は少なくとも約20g/dのテナシティ、少なくとも約900g/dのモジュラスおよび少なくとも約30J/gの破壊エネルギーを有するであろう。例えば、適度に高いモジュラスおよびテナシティの値を有するポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントは、弾道抵抗性複合材料を作るのに特に有用である。初期引張モジュラスおよびテナシティの値としてそれぞれ500g/dおよび22g/dを有するKevlar(登録商標)29、ならびに1000g/dおよび22g/dを有するKevlar(登録商標)49が例である。他の例はdu Pontから400、640および840デニールで入手可能なKevlar(登録商標)129およびKM2、ならびにTeijinからの1000デニールを有するTwaron(登録商標)T2000である。他の製造業者からのアラミド繊維も本発明において用いることができる。ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)のコポリマー類、例えばコ−ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド3,4’オキシジフェニレンテレフタルアミド)を用いてもよい。du PontによりNomex(登録商標)の商品名の下で売られているポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維も本発明の実行において有用である。様々な供給者からのアラミド繊維を本発明において用いてよい。
高強度繊維は網状構造であり、これは好ましくは織られた、編まれたまたは不織ファブリック(例えば一方向に配向した繊維、またはランダムな配向でフェルト化された繊維のパイル)の形である。あらゆる織り方のパターンの織ファブリック、例えば平織り(plain weave)、バスケット織り(basket weave)、綾織り(twill)、繻子織り(satin)、三次元織りファブリック、およびそれらのいくつかの変形のいずれかを用いてよい。平織りファブリックが好ましく、より好ましいのは等しい縦糸および横糸の番手を有する平織りファブリックである。
それぞれのグループの繊維層における繊維の網状構造は、好ましくは同じファブリック形式(例えば、織られた、編まれたまたは不織)である。あるいは、それぞれのグループの繊維層の層中にファブリックのタイプの混合が存在してもよい。好ましい1態様において、両方の繊維のグループにおける繊維層は全て織ファブリックの形である。
1態様において、ファブリックは好ましくは縦糸および横糸の両方の方向においてインチあたり約15〜約55個の末端(cmあたり約5.9〜約21.6個の末端)を有し、より好ましくはインチあたり約17〜約45個の末端(cmあたり約6.7〜約17.7個の末端)を有する。ヤーンは好ましくは約375から約1300までの繊度を有する。結果として、織ファブリックの重量は好ましくは平方ヤードあたり約5〜約19オンス(約169.5〜約644.1g/m)であり、より好ましくは平方ヤードあたり約5〜約11オンス(約169.5〜約373.0g/m)である。そのファブリックの例は、SPECTRA(登録商標)ファブリックスタイル902、903、904、952、955および960と名付けられたファブリックである。他の例には、バスケット織りで作られたファブリック、例えばSPECTRA(登録商標)ファブリックスタイル912が含まれる。アラミドファブリックの例は、Kevlar(登録商標)ファブリックスタイル704、705、706、708、710、713、720、745、および755ならびにTwaron(登録商標)ファブリックスタイル5704、5716、および5931と名付けられたファブリックである。上記のファブリックは、例えばAnderson,South Carolina,USAのHexcelから入手することができる。当業者は理解するであろうが、ここで記述したファブリックの構造は単に例示的なものであり、本発明をそれに限定することを意図するものではない。
上述したように、ファブリックは編まれたファブリックの形であってよい。ニット構造は互いにかみ合うループからなる構造で、4種類の主なタイプはトリコット(tricot)、ラッセル(raschel)、ネット(net)および配向した構造である。ループ構造の性質により、最初の3種類のカテゴリーのニットは、それらが繊維の強度を完全には利用しないため、適切ではない。しかし、配向して編まれた構造は、極細の編み目(fine denier knitted stitches)により適所に保持されたまっすぐなインレイヤーン(inlaid yarn)を用いている。ヤーンは、ヤーンへの交錯効果(interlacing effect)により織ファブリックに見られるけん縮効果(crimp effect)がなく完全にまっすぐである。ヤーン中のこれらのレイド(laid)は、技術者の要求によって単軸、二軸または多軸方向に配向させることができる。荷重を支えるヤーンにおけるレイイング(laying)に用いられる特定のニット設備は、ヤーンが貫通されないようなものであるのが好ましい。
あるいは、繊維の網状構造の層のグループの高強度ファブリックは、不織ファブリック、例えば一方向に配向した繊維、またはランダムな配向でフェルト化された繊維のパイルの形であってよい。一方向に配向した繊維を用いた場合、好ましくはそれらはクロスプライ配列で用いられており、ここで繊維の1つの層が1つの方向を向いており、繊維の第2の層が第1の繊維から90°の方向を向いている。個々のパイルが一方向に配向した繊維である場合、連続するパイルは好ましくは互いに対して例えば0°/90°、0°/90/0°/90、または0°/45°/90°/45°/0°の角度で、または他の角度で回転している。繊維の網状構造がフェルトの形である場合、それらはニードルパンチフェルトであってよい。フェルトはランダムに配向した繊維の不織の網状構造であり、好ましくはそれの少なくとも1種類は不連続な繊維、好ましくは約0.25インチ(0.64cm)から約10インチ(25cm)までの範囲の長さを有するステープル繊維である。これらのフェルトは当分野で知られるいくつかの技法により、例えばカーディング(carding)または流体レイイング(fluid laying)、メルトブローイング(melt blowing)およびスピンレイイング(spin laying)により作られてよい。繊維の網状構造は、例えばニードルパンチング、ステッチボンディング(stitch−bonding)、水交絡(hydro−entanglement)、空気交絡(air entanglement)、スパンボンド(spun bond)、スパンレース(spun lace)もしくはそれらと同様のものにより機械的に、例えば接着剤を用いて化学的に、または繊維と点の結合もしくはより低い融点を有するブレンド繊維を用いて熱的に固化される。好ましい固化法はニードルパンチング単独またはそれに続く他の方法の1種類である。好ましいフェルトはニードルパンチフェルトである。
繊維層は樹脂母材中にある。繊維のパイルのための樹脂母材は、望ましい特徴を有する多様なエラストマー性および他の物質から作られてよい。1態様において、その母材に用いられるエラストマー性物質は、ASTM D638により測定される約6,000psi(41.4MPa)と等しいまたはそれより低い初期引張モジュラス(弾性率)を持つ。より好ましくは、エラストマーは約2,400psi(16.5MPa)と等しいまたはそれより低い初期引張モジュラスを有する。最も好ましくは、エラストマー性物質は約1,200psi(8.23MPa)と等しいまたはそれより低い初期引張モジュラスを有する。これらの樹脂性物質は一般には本来熱可塑性であるが、熱硬化性物質も有用である。
好ましくは、樹脂母材は硬化させた際に高い引張モジュラス、例えばASTM D638により測定される少なくとも約1x10psi(6895MPa)を有するように選択されてもよい。その物質の例は、例えば米国特許第6,642,159号において開示されており、その開示を本明細書と矛盾しない程度まで本明細書に特別に援用する。
複合材料層中の樹脂母材物質の繊維に対する割合は、最終用途によって広く異なってよい。樹脂母材物質は、繊維および樹脂母材の総重量の好ましくは約1から約98重量パーセントまでであり、より好ましくは約5から約95重量パーセントまでであり、さらにもっと好ましくは約5から約40重量パーセントまでであり、最も好ましくは約10から約25重量パーセントまでである。上記の百分率は固化したファブリックに基づいている。
熱可塑性および熱硬化性樹脂類を含む多様な物質を樹脂母材として利用してよく、後者が好まれる。例えば、次の物質のいずれかを用いてよい:ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレンコポリマー類、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー類、ポリスルフィドポリマー類、熱可塑性ポリウレタン類、ポリウレタンエラストマー類、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、フタル酸ジオクチルまたは当分野で周知の他の可塑剤を用いた可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー類、ポリ(イソブチレン−コ−イソプレン)、ポリアクリル酸類、ポリエステル類、ポリエーテル類、フッ素エラストマー類、シリコーンエラストマー類、熱可塑性エラストマー類、およびエチレンのコポリマー類。熱硬化性樹脂類の例には、炭素−炭素飽和溶媒、例えばメチルエチルケトン、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサン、エチルアセトン、およびそれらの組み合わせに可溶性の樹脂が含まれる。熱硬化性樹脂類の中には、ビニルエステル類、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー類、フタル酸ジアリル、フェノールホルムアルデヒドのようなフェノール樹脂類、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリウレタン樹脂類、およびそれらの混合物、およびそれらと同様のものがある。前記の米国特許第6,642,159号において開示されている樹脂類が含まれる。好ましい熱硬化性樹脂類には、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類、ビニルエステル樹脂類、ウレタン樹脂類およびポリエステル樹脂類、およびそれらの混合物が含まれる。ポリエチレン繊維ファブリックに好ましい熱硬化性樹脂類には、少なくとも1種類のビニルエステル、フタル酸ジアリル、および場合によりビニルエステル樹脂を硬化させるための触媒が含まれる。
エラストマー性物質の1つの好ましいグループは、共役ジエン類のブロックコポリマー類およびビニル芳香族コポリマー類である。ブタジエンおよびイソプレンが好ましい共役ジエンエラストマー類である。スチレン、ビニルトルエンおよびt−ブチルスチレンは好ましい共役芳香族モノマー類である。ポリイソプレンを含むブロックコポリマー類を水素化して飽和炭化水素エラストマーセグメントを有する熱可塑性エラストマー類を製造することができる。ポリマー類はR−(BA)(x=3〜150)のタイプの単純なトリ−ブロックコポリマー類であってよい;ここでAはポリビニル芳香族モノマーからのブロックであり、Bは共役ジエンエラストマーからのブロックである。好ましい樹脂母材はイソプレン−スチレン−イソプレンブロックコポリマー、例えばKraton Polymer LLCから入手可能なKraton(登録商標)D1107イソプレン−スチレン−イソプレンブロックコポリマーである。本発明において有用な他の樹脂母材は熱可塑性ポリウレタン、例えば水中に分散したポリウレタン樹脂類のコポリマー混合物である。
樹脂物質は充填剤、例えばカーボンブラック、シリカ等と混ぜ合わせてよく、油類で増量してよく、硫黄、過酸化物、金属酸化物または放射硬化システムにより、ゴム技術者に周知の方法を用いて加硫してよい。異なる樹脂類のブレンドを用いてもよい。
好ましくは、複数の繊維層のそれぞれの中の樹脂母材は、他の複数(plurality or pluralities)の繊維層中の樹脂母材と同じまたは一緒に使用できるもののどちらかである。”一緒に使用できる”により、樹脂の化学的性質がそれぞれのプリプレグ樹脂が同じ成形圧力、温度および成形期間の下で処理できるものであることを意味する。これは、2種類以上の複数の異なる繊維の繊維層があるかどうかに関わらず、ヘルメットシェルが1サイクルで成形できることを確実にする。
上述したように、本発明の特定の観点において、ガラス繊維の複数の繊維層が、好ましくはヘルメットシェルの外層として用いられる。これらの層は樹脂母材中にある繊維層としても作られる。
ガラス繊維層に有用な樹脂類は、高テナシティ繊維層に関して上述したものと同じであり、他の層に関して上記で示したものと同じ量で繊維層に存在してよい。本発明において、TypesEおよびSの繊維を含む様々なタイプのガラス繊維を用いてよい。ガラス繊維層は、様々なファブリックの形、例えば高テナシティ繊維層に関して上述した、織られた、編まれたおよび不織(一方向およびランダムにフェルト化されたものの両方)ファブリックタイプで存在してもよい。織られた繊維ガラスのファブリックの例は、スタイル1528、3731、3733、7500、7532、7533、7580、7624、7628および7645と名付けられたファブリックであり、これらはHexcelから入手可能である。
繊維ガラスはアラミドおよびポリエチレンファブリックのコストと比べてごくわずかしかコストがかからないため、繊維ガラスプリプレグを用いることによりヘルメットのコストをかなり低減させることができる。ガラス繊維層は最も堅く、高度に研磨性である。従って、それらはヘルメットの外層に配置されるのが望ましい。アラミド繊維層は優れた弾道抵抗および適正な裏面の変形を有し、3セクションの複合材料のヘルメットの中央のセクションとして使用するのに特に適している。ポリエチレンファブリックの複合材料は比較的柔軟であり、成形されると最も研磨性が低く、最も低い重量および特定の発射物に対する最も高い弾道抵抗を有する。ポリエチレンファブリックは、ヘルメットの3セクションの内側として使用するのに特に適している。あるいは、3セクションヘルメットにおいて、ポリエチレン層は中央のセクションであってよく、アラミド層は複合材料ヘルメットの内側のセクションとして用いられてよい。
ヘルメットが2セクションのみの高テナシティ繊維層から作られる場合、好ましくは外側のセクションはアラミド層から作られ、内側のセクションはポリエチレン層から作られるが、これはもし望まれれば逆にすることができる。
好ましくは、複数の繊維層のそれぞれはプリプレグファブリックを作るために成形の前に樹脂母材でコートされ、または含浸される。通常、本発明の繊維層は好ましくは、最初に繊維の網状構造を構築し(例えば、織ファブリック層を用いて出発する)、次いで網状構造を母材組成物でコートすることにより作られる。本明細書で用いられる用語”コートする”は、個々の繊維が繊維を取り囲む母材組成物の連続的な層または繊維の表面上の母材組成物の不連続な層のどちらかを有する繊維の網状構造を表現する広い意味で用いられている。前者の場合において、繊維は完全に母材組成物中に完全に埋め込まれていると言うことができる。コートするおよび含浸するという用語は、本明細書において交換可能であるように用いられている。型の中にある間に樹脂母材を樹脂なしの繊維層に加えることも可能であるが、樹脂コーティングの均一性を制御するのが難しいため、これはそれほど望ましくない。
母材樹脂組成物はいずれかの適切なやり方、例えば溶液、分散液または乳濁液で繊維層の上に加えてよい。次いで母材でコートされた繊維の網状構造を乾燥させる。母材樹脂の溶液、分散液または乳濁液はフィラメント上に吹き付けてよい。あるいは、繊維層構造は浸漬により、またはロールコーターもしくはそれと同様の手段により水溶液、分散液または乳濁液でコートしてよい。コートした後、コートされた繊維層を、次いで乾燥のためにオーブンを通過させてよく、ここでコートされた繊維の網状構造の層(layer or layers)は母材組成物中の水または他の液体を蒸発させるのに十分な熱に晒される。コートされた繊維の網状構造は、次いで支持ウェブ(carrier web)上に置かれてよく、これは紙もしくはフィルムの支持体であることができ、またはファブリックは母材樹脂でコートされる前に最初に支持ウェブ上に置かれてよい。支持体およびファブリック層(layer or layers)を含む樹脂母材は、次いで既知のやり方で連続したロールの中に巻き上げることができる。
繊維の網状構造は様々な方法により構築されてよい。一方向に整列した繊維の網状構造の場合、高テナシティフィラメントのヤーンの束はクリールから供給され、ガイドおよび1個以上のスプレッダーバーを通り、平行化コーム(collimating comb)の中へ導かれた後母材物質でコートされてよい。平行化コームはフィラメントを同一平面上に、および実質的に一方向の方式で整列させる。
ファブリック層を樹脂母材でコートした後、好ましくは層を既知のやり方で固化させてプリプレグを作る。”固化する”により、母材物質および繊維の網状構造の層を組み合わせて単一の統一された層とすることを意味する。固化は乾燥、冷却、加熱、圧力またはそれらの組み合わせにより起こることができる。
複数の繊維層のそれぞれのセクション中の層の数は、望まれるヘルメットのタイプ、望まれる性能および望まれる重量によって広く異なってよい。例えば、複数の繊維層のそれぞれのセクション中の層の数は、約2から約40層まで、より好ましくは約2から約25層まで、最も好ましくは約2から約15層までの範囲であってよい。複数の繊維層のそれぞれのセクション中の層の数は異なっていてよく、または同じであってもよい。層はあらゆる適切な厚さであってよい。例えば、複数の繊維層のセクションのそれぞれの層は、約1ミルから約40ミルまで(25〜1016μm)、より好ましくは約3ミルから約30ミルまで(76〜762μm)、最も好ましくは約5ミルから約20ミルまで(127〜508μm)の厚さを有していてよい。それぞれの複数の繊維の網状構造のそれぞれの層の厚さは、同じまたは異なっていてよい。
同様に、複数の繊維層のそれぞれのセクション中のそれぞれの層の重量は広く異なっていてよいが、普通はヘルメット全体の重量が着用者の快適さおよび保護に関して許容できる範囲内であるように選択される。例えば、複数の繊維層のそれぞれのセクション中のそれぞれの層の重量は約5から約200グラムまで、より好ましくは約10から約100グラムまで、最も好ましくは約20から約75グラムまでの範囲であってよい。また、それぞれの複数の繊維の網状構造のそれぞれの層の重量は同じまたは異なっていてよい。2セクションの複数の繊維層を有するシェルの1つの例では、第1の複数の繊維層の総重量は約200(好ましくは約400)から約600グラムまでの範囲であり、第2の複数の繊維層の総重量は対応して約600から約200(好ましくは約400)グラムまでの範囲である。
層の重量比は必要に応じて異なっていてよい。2セクションのみの高テナシティファブリックから作られたヘルメットシェルに関して、アラミドを含む層はヘルメットシェルの総重量に基づいて約20から約80重量パーセントまでの量で存在してよく、より好ましくは約35から約65重量パーセントまで、最も好ましくは約45から約55重量パーセントまでである。対応して、ポリオレフィンを含む層はヘルメットシェルの総重量に基づいて約80から約20重量パーセントまで、より好ましくは約65から約35重量パーセントまで、最も好ましくは約55から約45重量パーセントまでの量で存在してよい。
本発明で用いられる3セクションのファブリックから作られたヘルメットシェルに関して、ガラス繊維を含む層はヘルメットシェルの総重量に基づいて約5から約65重量パーセントまで、より好ましくは約10から約50重量パーセントまで、最も好ましくは約20から約40重量パーセントまでの量で存在してよく;アラミドを含む層は約5から約65重量パーセントまで、より好ましくは約10から約50重量パーセントまで、最も好ましくは約20から約40重量パーセントまでの量で存在してよく;ポリオレフィンを含む層は約5から約65重量パーセントまで、より好ましくは約10から約50重量パーセントまで、最も好ましくは約20から約40重量パーセントまでの量で存在してよい。その3セクションのファブリックから作られたヘルメットシェルの1つの例において、第1、第2および第3の複数の繊維層のそれぞれの総重量は、約250から約400グラムまでの範囲の重量を有する。
軍用の用途において広く用いられてきた1つのタイプのヘルメットは、頭文字PASGT(地上軍のための個人甲冑システム(Personnel Armor System for Ground Troops))で知られる。望ましくは、そのような中型のヘルメットは約750から約1500グラムまで、より好ましくは約800から約1100グラムまでの範囲の重量を有する。
本発明のヘルメットシェルを作るため、2種類以上のタイプの繊維の網状構造のプリプレグを型に加える。2個だけのセクションまたはプリプレグを用いる場合、好ましくは樹脂母材中のアラミド繊維の望まれる数の個々の層を適切な型の中に、ヘルメットシェルの外側のセクションになるような位置に置く。型はあらゆる望まれるタイプのもの、例えばマッチドダイ(matched die)型であってよい。次に、高テナシティポリエチレン繊維の望まれる数の個々の層を型の中に置き、それらがヘルメットシェルの内側のセクションとなるように配置する。確かに、その順番はどの繊維層がヘルメットの外層となることを望まれるかにより逆にしてよい。望ましくは、樹脂はそれが型の中に置かれた際にべとつかないように選択される。これは、個々の層が互いの上を滑り、型を完全に満たして望ましいヘルメットの形を作ることを可能にする。個々の層の樹脂(resin or resins)が層の間で必要とされる接着を提供するため、高テナシティ繊維の個々の層または層のグループの間で接着剤を用いる必要はない。しかし、もし望まれるなら別の接着層(layer or layers)を用いてもよい。
完全におよび均一に型を満たし、かつ全ての層が正しい配向で置かれるように注意を払うべきである。これはヘルメットシェルのすみずみまで均一な性能であることを確実にする。もしハイブリッド物質の合わせた体積がヘルメットの型が扱えるよりも大きいなら、型が閉まらず、従ってヘルメットは成形されないであろう。もしハイブリッド物質の合わせた体積が型の体積よりも小さいなら、型は閉まるであろうが成形圧の不足により物質は成形されないであろう。
一度型に望ましい数およびタイプの繊維層を正しく入れたら、ヘルメットシェルは望ましい成形条件の下で成形できるであろう。これらの条件は、アラミドファブリックの個別の層およびポリエチレンファブリックの個別の層を成形するのに用いられる条件に類似している。例えば、成形温度は約65から約250℃まで、より好ましくは約90から約330℃まで、最も好ましくは約120から約320℃までの範囲であってよい。クランプ成形圧は、例えば約10から約500トンまで(10.2〜508メートルトン)、より好ましくは約50から約350トンまで(50.8〜356メートルトン)、最も好ましくは約100から約200トンまで(102〜203メートルトン)の範囲であってよい。成形時間は約5から約60分間まで、より好ましくは約10から約35分間まで、最も好ましくは約15から約25分間までの範囲であってよい。
望ましい成形条件の下で、熱硬化性樹脂の場合は繊維の網状構造中に存在する樹脂(resin or resins)は硬化する。これは、個々の層および層のグループが強力に結合して、完全な一体成形として望ましいヘルメットの形状となる結果をもたらす。それぞれのセットのファブリックの熱硬化性樹脂は、それらの接触面において樹脂の交差結合により結合すると信じられている。熱可塑性樹脂に関しては、ヘルメットは樹脂の軟化温度以下に冷却され、次いで型から押し出される。また、熱および圧力の下で、熱可塑性樹脂はファブリック層の間を流れ、完全な一体成形をもたらす結果になる。冷却の間、成形圧は維持される。成形された製品はその後型から取り出され、もし必要であれば一部が切り整えられる。
1つのタイプの高強度繊維の網状構造の第1の積層(stack)および異なる繊維から作られた高強度繊維の網状構造の第2の積層を有するのが好ましいが、繊維層の一方または両方の積層中にそれぞれの繊維のタイプの層が含まれることも可能である。これらは繰り返しまたは繰り返しでないパターンで交互に並んでいてよい。しかし、それぞれの積層は単一のタイプの高テナシティ繊維物質から作られるのが好ましい。
3種類のプリプレグの異なるタイプの場合では、ヘルメットは好ましくは最初にガラス繊維ファブリック層を型の中に入れ、次いでアラミドファブリック層を入れ(もしそれらが構造の中央のセクションとなるならば)、最後にポリオレフィンファブリック層を入れる(もしそれらがヘルメットシェルの内側のセクションとなるならば ことにより作られる。また、3種類の異なるタイプのプリプレグを入れる順番は、どのプリプレグがヘルメットシェルの外層、中央の層および内層にあることを望まれるかによって異なることができる。
複合材料の構造において用いられるファブリックは、比較的薄いが非常に強固である。個々のファブリック層の好ましい厚さは、約1から約36ミルまで(25〜911μm)、より好ましくは約5から約28ミルまで(127〜711μm)、最も好ましくは約10から約23ミルまで(254〜584μm)である。
下記の限定的でない実施例は、本発明のより完全な理解をもたらすために提示される。本発明の原理を図説するために述べられる特定の技法、条件、物質、割合および報告されるデータは例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。別途記載しない限り、全てのパーセントは重量によるものである。
実施例1
高テナシティアラミド繊維の層および高テナシティポリエチレン繊維の層からヘルメットシェルを作った。アラミド繊維は、平織り、インチあたり31×31末端(cmあたり12掛ける12末端)の構造であるKevlar(登録商標)織ファブリック、スタイル705の層の形であった。ファブリック層は6.8oz./sq.yd.(231g/sq.m)の重量および12ミル(305μm)の厚さを有する。それぞれのファブリック層は、下記のようにビニルエステル樹脂(Ashland ChemicalからのDerakane411−45樹脂)でコートされた。樹脂溶液は工業用溶媒、例えばアセトンで希釈し、硬化剤を添加することにより製造された。ファブリックをフレームに載せて均一な張力を維持し、完全に樹脂混合物により覆われるようにファブリックを溶液の中に浸漬する。コートされたファブリックを、1%未満の揮発性物質の含有量を得るのに十分な時間の間75℃以下の熱の下で乾燥させた。次いでプリプレグファブリックを、互いと直接接触するのを避けるための剥離フィルムまたは紙と共にロール上に巻きつける。乾燥の後、ファブリック層上の樹脂の含有量は15.2重量パーセントであった。
ポリエチレン繊維は、平織り、インチあたり21×21末端(cmあたり8.3×8.3末端)の構造であるSpectra(登録商標)ファブリックスタイル903の層の形であった。ファブリック層は7oz./sq.yd.(237g/sq.m)の重量および20ミル(508μm)の厚さを有する。ポリエチレンファブリックは、アラミドファブリックで用いたものと同じビニル樹脂を用いて、同じ技法によりコートされた。乾燥の後のファブリック上の樹脂の含有量は15.3パーセントであった。
ヘルメットシェルを17層のアラミドファブリックおよび13層のポリエチレンファブリックから成形した。シェルの形状はPASGT成形であり、ヘルメット成形の厚さは0.310インチ(7.8mm)であった。ファブリック層は、それぞれのヘルメット中に3個の7インチ(17.8cm)の頭頂ホイール(crown wheel)を有するピンホイールパターンの形であった。頭頂パイルは、頭頂領域において厚さを補うために用いられるより小さな直径のピンホイールである。頭頂以外の領域は、ヘルメットの形によりファブリックの重複を有する。アラミド層は、アラミド層がヘルメットシェルの外側にあるような方向でそれぞれ型の中に置かれた。ポリエチレン層は、ヘルメットシェルの内側にあるようにアラミド層の上部に置かれた。ヘルメットは190トン(193メートルトン)のクランプ圧で、250°F(121℃)において15分間の加熱、続いて220°F(104℃)までの15分間の冷却で成形された。得られたヘルメットは、1035グラムの切り整えたシェルの重量(trim shell weight)を有していた。
ヘルメットを、MIL−STD−662F規格の下で、MIL−P−46593A規格に従う17グレインの発射物を模した小片(FSP)を用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表1に示す。それぞれのヘルメット構造に関してV50速度を示す。V50速度は、発射物が50%の貫通確率を有する速度である。
実施例2
ヘルメットは、下記の違いを伴って実施例1におけるように成形した。3セットのファブリックを用いた。外層はHexcelからの繊維ガラスの織ファブリックスタイル7628で、これは平織り、インチあたり17×12末端(cmあたり6.7×4.7末端)の構造である。ファブリック層は6.0oz./sq.yd.の重量および6.8ミル(172μm)の厚さを有していた。それぞれのファブリック層はアラミドファブリックおよびポリエチレンファブリックで用いたものと同じビニルエステル樹脂で、同じ技法を用いてコートされた。乾燥の後、ファブリック層上の樹脂の含有量は10.1重量パーセントであった。
ヘルメットシェルは外層として10層のガラスファブリック、中間層として12層のアラミドファブリック、および内層として12層のポリエチレンファブリックから成形された。同じ中型のPASGTシェル形状のマッチ−ダイ型を用いた。ヘルメットは実施例1と同じ条件の下で成形した。ヘルメットは1112グラムの切り整えた重量を有していた。
ヘルメットを、MIL−STD−662F規格の下で、MIL−P−46593A規格に従う17グレインのFSPを用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表1に示す。
実施例3(比較用)
ヘルメットシェルを、実施例1で用いたポリエチレンファブリックの層のみから作った。合計25層のポリエチレンファブリックを型に入れ、ヘルメットを実施例1と同じ条件の下で成形した。切り整えたシェルの重量は849グラムであった。
ヘルメットを、MIL−STD−662F規格の下で、MIL−P−46593A規格に従う17グレインのFSPを用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表1に示す。
実施例4(比較用)
ヘルメットシェルを、実施例1で用いたアラミドファブリックの層のみから作った。合計33層のアラミドファブリックを型に入れ、ヘルメットを実施例1と同じ条件の下で成形した。切り整えたシェルの重量は1103グラムであった。
ヘルメットを、MIL−STD−662F規格の下で、MIL−P−46593A規格に従う17グレインのFSPを用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表1に示す。
表1
Figure 0005536460
*=比較例
単一成形の弾道ヘルメットシェルにおける2種類の弾道物質の使用は、高テナシティポリエチレン繊維のみから、またはアラミド繊維のみから作られた比較用のヘルメットシェルよりも高い17グレインのFSP発射物に対する弾道抵抗を提供していることが分かる。加えて、単一成形の弾道ヘルメットシェルにおける3種類の弾道物質の使用は、17グレインのFSP発射物に対して最も高い弾道抵抗を提供している。後者のヘルメットのコストは単一の物質の高価なヘルメットと比べるとかなり低減されており、かつ単一の物質のヘルメットの顕著な弾道抵抗を犠牲にすることなく成し遂げられる。
加えて、マッチダイ型を交換する必要のない2種類または3種類の弾道物質のヘルメットシェルの成形のプロセスは、弾道ヘルメットの設計のための様々な物質の選択にさらなる選択肢を提供する。さらに、単一繊維タイプのヘルメットシェルの製造に用いられるものと同じ型を、本発明の複数物質のヘルメットシェルの製造に用いることができる。
実施例5
ヘルメットシェルを、実施例1と同じやり方で、同じ数のアラミドファブリック層および同じ数のポリエチレンファブリック層を用いて、アラミドファブリック層を外側にして作った。
ヘルメットシェルは実施例1と同じ条件の下で成形された。切り整えたシェルの重量は1039グラムであった。
ヘルメットを、発射物として9mmフルメタルジャケット(FMJ)の124グレインの銃弾を用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表2に示す。
実施例6
ヘルメットシェルを、実施例2と同じやり方で、同じ数の繊維ガラスファブリック層、アラミドファブリック層およびポリエチレンファブリック層を用いて作った。ヘルメットシェルは実施例1と同じ条件の下で、ガラス繊維ファブリック層を外側に、アラミドファブリック層を中間に、ポリエチレンファブリック層を内側にして作った。切り整えたシェルの重量は1122グラムであった。
ヘルメットを、発射物として9mmフルメタルジャケット(FMJ)の124グレインの銃弾を用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表2に示す。
実施例7(比較用)
ヘルメットシェルを、実施例1で用いたポリエチレンファブリックの層のみから作った。合計25層のポリエチレンファブリックを型に入れ、ヘルメットを実施例1と同じ条件の下で成形した。切り整えたシェルの重量は853グラムであった。
ヘルメットを、発射物として9mmフルメタルジャケット(FMJ)の124グレインの銃弾を用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表2に示す。
実施例8(比較用)
ヘルメットシェルを、実施例1で用いたアラミドファブリックの層のみから作った。合計33層のアラミドファブリックを型に入れ、ヘルメットを実施例1と同じ条件の下で成形した。切り整えたシェルの重量は1098グラムであった。
ヘルメットを、発射物として9mmフルメタルジャケット(FMJ)の124グレインの銃弾を用いて弾道性能を試験した。結果を下記の表2に示す。
表2
Figure 0005536460
*=比較例
単一成形の弾道ヘルメットシェルにおける2種類の弾道物質の使用は、高テナシティポリエチレンのみから、またはアラミド繊維のみから作ったヘルメットシェルの弾道抵抗と比較して十分な9mmFMJの銃弾に対する弾道抵抗を提供し、許容できる裏面の変形をも有していることが分かる。加えて、単一成形の弾道ヘルメットシェルにおける3種類の弾道物質の使用は、高テナシティポリエチレンのみから、またはアラミド繊維のみから作ったヘルメットシェルと比較した場合に、9mmFMJの銃弾に対してかなりの弾道抵抗を提供する。さらに、3種類の弾道物質のヘルメットシェルは非常に低い裏面の変形を有し、従ってさらに裏面による外傷を低減させるであろう。3種類の弾道物質のヘルメットシェルのコストは単一の物質の高価なヘルメットと比べるとかなり低減されており、かつ単一の物質のヘルメットシェルと比べると望ましい弾道抵抗を犠牲にすることなく成し遂げられる。
本発明のヘルメットは、優れた弾道抵抗、さらに衝撃抵抗および構造上の剛性を有する。それらは一般的に用いられるヘルメットよりも軽い重量で製造することができる。本ヘルメットは軍用および非軍用の用途において、例えば法の執行におけるヘルメット、スポーツ用ヘルメット、および他のタイプの安全ヘルメットとして有用である。
このように本発明をかなり完全に詳細に記述したが、その詳細に厳密に固執する必要はなく、付記した特許請求の範囲により定められる本発明の範囲内に全て入るさらなる変更および修正が当業者の心に浮かんでよいことは理解されるであろう。

Claims (1)

  1. シェルを含む成形されたヘルメットであって、そのシェルが外側から内側に向って次のものを含むヘルメット:
    第1の複数の繊維層、その繊維層は第1樹脂母材中に完全に埋め込まれている高テナシティ繊維の網状構造を含み、その高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;前記第1の複数の繊維層の高テナシティ繊維の網状構造は、織られたファブリックの形である
    その第1の複数の繊維層に付着した第2の複数の繊維層、その第2の複数の繊維層は第2樹脂母材中に完全に埋め込まれている高テナシティ繊維の網状構造を含み、その高テナシティ繊維はポリオレフィン繊維またはアラミド繊維を含む;ただし、その第1の複数の繊維層のその繊維がアラミド繊維を含み、その第2の複数の繊維層のその繊維はポリオレフィン繊維を含む;および
    第3樹脂母材中に完全に埋め込まれているガラス繊維を含む第3の複数の繊維層、その第3の複数のガラス繊維層がそのシェルの外側に位置している
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