発明の詳細な説明
本発明は多発性嚢胞腎疾患関連タンパク質-1(PKD1)遺伝子変種および変異体を同定する組成物および方法、ならびに被験者中のPKD1関連障害を診断する組成物および方法を提供するものである。本発明の開示以前には、変異に対して完全なPKD1遺伝子を選択的に試験する可能性は、ヒトの16番染色体上にPKD1遺伝子が存在することを含む、PKD1遺伝子およびPKD1遺伝子相同体の高い配列相同性のために妨げられていた。本明細書に開示するように、完全なPKD1遺伝子の試験に対してプローブおよびプライマーとして有用となるポリヌクレオチドが、現在開発されている。従って、本発明は、PKD1変異の検出に有用であり、且つPKD1関連障害の診断が可能な、PKD1遺伝子およびPKD1遺伝子変異体のポリヌクレオチドおよびそのオリゴヌクレオチド部分を提供するものである。
常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)は、常染色体優性遺伝に典型的な伝達様式を示し、影響を受けた個体のそれぞれの子孫は、典型的には、原因遺伝子を遺伝する確率を50%有する。関連する研究により、原因遺伝子は、αグロブリン群の近傍の16番染色体の短いアーム上に存在することが示され、この遺伝子座はPKD1と命名された(Reedersら、Nature、317:542、1985)。他のPKD関連遺伝子(例えばPKD2)も存在するが、PKD1の欠失により、影響を受けたファミリーの約85〜90%において、ADPKDが引き起こされると推測される(Parfreyら、New Eng. J. Med. 323:1085〜1090、1990;Petersら、Contrib Nephrol. 97:128〜139、1992)。
PKD1遺伝子は、具体的には、染色体の16p13.3位に、特に、マーカーのATPLとCMM65(D16S84)の間にある約600kbの間隔を有して位置している。この領域は、しばしば転写された配列に隣接するCpG島に富み、この領域には、少なくとも20個の遺伝子が含まれると想定されている。PKD1遺伝子の正確な位置は、この領域に関係する14kb RNA転写を妨害する転座を有する、影響を受けたメンバーを有するADPKDファミリーを見出すことにより正確に示されていた(ヨーロッパPKDコンソーシアム、Cell、77:881、1994)。
図1に図示されたPKD1遺伝子のゲノム構造(配列番号:1;付録A参照;参照として本明細書に組み入れられるGenBankアクセッション番号L39891も参照)は、約50kb以上にわたって広がり、46個のエクソンを有し、イントロン21および22(図1において「CCTCCTCCT」で示される)にそれぞれ対応する約2.5kbおよび0.5kbの2つの大きなポリピリミジン領域により二分されている。5'UTRの前に始まり、エクソン34(図1、点線領域)で終了すると考えられる遺伝子の複製部分は、遺伝子の5'末端の約3分の2を占め、ヒトゲノムにおいて、高い類似性で転写される様式において数回重複している(Germinoら、Genomics 13:144〜151、1992;European Chromosome 16 Tuberous Sclerosis Consortium、1993、Cell 75:1305〜1315)。コードされたPKD1ポリペプチドを配列番号:2に示す(付録A参照;参照として本明細書に組み入れられるGenBankアクセッション番号P98161も参照)。配列番号:2は、GenBankアクセッション番号L39891(GenBank AAB59488参照)をコードするアミノ酸配列とは同一ではなく、おそらく、PKD1遺伝子配列に由来するコードされたPKD1ポリペプチドを推定する際のエラーによると認識される。一方、野生型PKD1ポリペプチド配列を、配列番号:2に示す(GenBankアクセッション番号P98161)。
本発明は、プライマー対の一つになりうる、PKD1遺伝子特異的プライマーを提供するものである。本発明のプライマーは、5'領域および隣接するPKD1特異的3'領域を含み、5'領域はPKD1遺伝子配列またはPKD1遺伝子配列およびPKD1遺伝子相同配列とハイブリダイズしうるヌクレオチド配列を有し、且つ3'領域はPKD1遺伝子配列のみと選択的にハイブリダイズし、PKD1遺伝子相同配列とは特にハイブリダイズしないヌクレオチド配列を有する。ただし、本発明のプライマーは、配列番号:11、18、52または60に記載の配列を有してはいない。このように、本発明のプライマーは、配列番号:3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112および113のいずれかに記載の配列、ならびに配列番号:3〜51および配列番号:61〜113のいずれかと実質的に同一である配列を有することができ、配列は、5'領域がPKD1遺伝子配列またはPKD1遺伝子配列およびPKD1遺伝子相同配列とハイブリダイズすることができ、3'領域がPKD1遺伝子配列と選択的にハイブリダイズするが、PKD1遺伝子相同配列とハイブリダイズせず、且つ、本明細書において配列は、他の配列を特に排除するものではない。
本発明で開示するとおり、本発明のプライマーは、配列番号:1を、GenBankアクセッション番号AC002039、AC010488、AC040158、AF320593、およびAF320594(各々が参照として本明細書に組み入れられる;Bogdanovaら、Genomics 74:333〜341、2001参照)に含まれるPKD1遺伝子相同体とともに整列させる段階、および配列が相違する可能性を有する領域を同定する段階、さらに、少なくとも約10個のヌクレオチドと対合(match)し、対合した領域の3'末端またはその隣接部分と誤対合(mismatch)し、PKD1特異的プライマーとして選択する段階により、調製することができる(実施例1参照;Phakdeekitcharoenら、前記、2000も参照)。このようなプライマーはPKD1遺伝子およびPKD1遺伝子相同体とハイブリダイズすることができるが、プライマーがPKD1遺伝子相同体にハイブリダイズする場合に3'領域の1つまたは複数のヌクレオチドとは誤対合するため、伸張産物はPKD1遺伝子にハイブリダイズして生産されるのみであるので、このようなプライマーを「PKD1特異的プライマー」という。選択されたオリゴヌクレオチドがPKD1特異的プライマーであることの確証は、本明細書で開示した方法(実施例1)または当技術分野に公知の方法を用いて行うことができる。例えば、プライマーが、本発明のPKD1特異的プライマーであることを決定するための単純で直接的な方法は、PKD1遺伝子配列とPKD1遺伝子相同配列を含む、推定PKD1特異的プライマーおよび鋳型を用いて、プライマーの伸張または増幅反応を行い、PKD1遺伝子相同体の鋳型ではなく、PKD1遺伝子の鋳型から生産される単一の伸張産物または増幅産物を検出することである。この方法または他の方法を用いてPKD1特異的プライマーとして同定される配列は、Watnickら(前記、1999)により記載される各種の対照実験を実施することにより確かめることができ、例えば、PKD1遺伝子を有する細胞から得られる増幅産物と、必要な場合には、PKD1遺伝子を有していないがPKD1遺伝子相同体を有する放射線雑種細胞系、145.19を用いて生産される産物と比較することにより行うことができる。
PKD1特異的プライマーとして有用であると考えられるヌクレオチド配列が、本明細書で定義するPKD1特異的プライマーの条件に合致するヌクレオチド配列であることを確証するため、例えば、BLASTサーチ、または他のアルゴリズムを用いてヒトゲノムDNAデータベースと比較することもできる。例えば、推定PKD1特異的プライマーは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))において調査することができる。すなわち、www(world wide web)にアクセスし、「Blast」をオプションで選択し、その後、「Search for short nearly exact matches」を選択し、調査すべき配列に入り、さらに、デフォルトサーチアルゴリズム(ワードサイズ7)を用い、すべての非重複性のGenBank+EMBL+DDBJ+PDB配列を含み、EST、SST、GSSまたはHTGS配列を含まない「nr」データベースを探索する。アウトプットは、上位から10番目までの適合のみを示すように制限することができる。
本発明のPKD1特異的プライマーでは、5'領域は、少なくとも約10個の連続するヌクレオチド、一般的には少なくとも約12個のヌクレオチド、通常では約14個から約18個のヌクレオチドを有する。加えて、プライマーの3'領域は、少なくとも一つの3'末端ヌクレオチドを含み、少なくとも約2〜6個のヌクレオチド、特に約2〜4個のヌクレオチドの配列を含むことができる。3'領域が単一の3'末端ヌクレオチドである場合、プライマーは、プライマーの5'領域とハイブリダイズすることができるPKD1遺伝子のヌクレオチド配列の5'および隣接するヌクレオチドと同一であり、プライマーの5'領域とハイブリダイズすることができるPKD1相同体のヌクレオチド配列の5'および隣接するヌクレオチドと異なるように選択され、即ち、誤対合ヌクレオチドが挙げられる。PKD1特異的プライマーの3'領域が2つまたはそれ以上のヌクレオチドを含む場合、1つまたは複数のヌクレオチドは誤対合しうる。誤対合ヌクレオチドは、3'末端ヌクレオチドを含むことができるが、含む必要はなく、1つまたは複数の誤対合ヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドを含まないときは、プライマーは、PKD1遺伝子相同体にハイブリダイズしない場合に伸張されない。
本発明のPKD1特異的プライマーとしては、約2043位から4209位のヌクレオチド、約17907位から22489位のヌクレオチド、約22218位から26363位のヌクレオチド、約26246位から30615位のヌクレオチド、約30606位から33957位のヌクレオチド、約36819位から37140位のヌクレオチド、約37329位から41258位のヌクレオチド、および約41508位から47320位のヌクレオチドから選択される配列番号:1に記載のヌクレオチド配列の、約50個のヌクレオチドおよびそれに隣接するヌクレオチドのヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることができるプライマーが例示される。本発明のプライマーとしては、配列番号:3〜10、12〜17、19〜51、および61〜113のいずれかが例示され、配列番号:3〜51および61〜113のいずれかと実質的に同一の配列を有していてもよく、且つ配列は、本明細書で開示されたPKD1特異的プライマーの条件に合致し、配列番号:11、18、52および60のいずれかに記載の配列ではない。
プライマーが、配列番号:3〜51および61〜113の一つと、少なくとも約80%または約85%、一般的には少なくとも約90%、通常では少なくとも約95%、特に少なくとも約99%の配列の同一性を有し、且つプライマーが5'領域および隣接するPKD1特異的3'領域を含み、5'領域はPKD1遺伝子配列またはPKD1遺伝子配列およびPKD1遺伝子相同配列とハイブリダイズしうるヌクレオチド配列を有し、3'領域はPKD1遺伝子配列のみと選択的にハイブリダイズし、PKD1遺伝子相同配列とは特にハイブリダイズしないヌクレオチド配列を含み、ただし、本明細書に定義されるように、本発明のプライマーは、配列番号:11、18、52または60に記載の配列を含まない場合に、プライマーは、配列番号:3〜51および61〜113のいずれかと「実質的に同一である」と考えられる。このように、本発明のプライマーは、1または2〜3であるが、4または5以下であって、配列番号:3〜51および61〜113に記載のプライマーより多いか、より少数のヌクレオチドを含むことができる。ただし、プライマーが、本発明で定義する機能条件に合致している必要がある。
本発明はさらにプライマー対を提供するものである。一つの態様としては、本発明のプライマー対は、本明細書で開示するフォワードおよびリバースPKD1特異的プライマーを含む。例えば、本発明のプライマー対は、約2043位から4209位のヌクレオチド、約17907位から22489位のヌクレオチド、約22218位から26363位のヌクレオチド、約26246位から30615位のヌクレオチド、約30606位から33957位のヌクレオチド、約36819位から37140位のヌクレオチド、約37329位から41258位のヌクレオチド、約41508位から47320位のヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含む、配列番号:1の部分を増幅させることができる。通常、本発明に係るプライマー対は、約10キロベースまたはそれより短く、一般的には約7500ベースまたはそれより短く、特定に約6キロベースまたはそれより短い増幅産物を生産することができる。本発明のプライマー対としては、配列番号:3〜18から選択されるフォワードプライマーおよびリバースプライマーが例示され、約0.3キロベース〜約5.8キロベースのPKD1特異的増幅産物を生産するのに用いられうる、例えば配列番号:3および4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、配列番号:9および10、配列番号:11および12、配列番号:13および14、配列番号:15および16、配列番号:17および18、ならびに配列番号:9および113のいずれかである。
本明細書に記載するように、8つのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー対のセットは、PKD1遺伝子の複製領域内のエクソンとこれらに隣接するイントロンのすべてを含む、PKD1特異的増幅産物を調製するのに用いることができる。開示されたプライマーのヌクレオチド配列、および配列番号:1から、以下のことが認識できる:PKD1特異的な第1の増幅産物の調製に有用な付加的なPCRプライマー対は、例示されたプライマーおよびプライマー対を基にすることができるが、例示されたプライマーの片方または両方の末端で1つまたは数個の付加的なヌクレオチド(配列番号:1に基づく)を含むことができ、または、例示されたプライマーにおいて1つまたは数個のヌクレオチドを欠失していてもよく、および、これらのプライマー対の有用性は、本明細書で開示されているPKD1特異的増幅産物に由来するプライマーまたは改変したプライマーを用いて生産された増幅産物を比較することで決定することができる。このように、例えば、配列番号:3および4に基づくプライマー対は、配列番号:2に記載の約2043〜4209位のヌクレオチドを含むPKD1特異的増幅産物を生産するのに用いることができ、「配列番号:2に記載の約2043〜4209位のヌクレオチド」の「約」とは、増幅に用いるプライマー対が、配列番号:3および4と同一または実質的に同一であることを意味する。
したがって、本発明は、配列番号:3〜18に記載のヌクレオチド配列を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むプライマー対;配列番号:3および4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、配列番号:9および10、配列番号:11および12、配列番号:13および14、配列番号:15および16、配列番号:17および18、ならびに配列番号9および113に例示されたプライマー対;ならびにPKD1特異的増幅産物の調製に有用なプライマー対である、例示されたプライマーに基づくプライマーまたは例示されたプライマーに由来するプライマーを含む実質的に同一のプライマーを提供するものである。配列番号:9および10、ならびに配列番号:11および12に示されるプライマー対は、これらのプライマーを用いて生産されるPKD1特異的増幅産物を有するとされ、Phakdeekitcharoenら(前記、2000)に記載されている。
例示された特定のプライマーおよび特定のプライマー対は、本発明の範囲に含まれるとは考えないことを認識しなければならない。例えば、配列番号:11に記載のプライマーは、米国特許第6,017,717号に記載され(参照として本明細書に組み入れられる;24段、配列番号:15)。および、配列番号:18に記載のプライマーは、Watnickら(参照として本明細書に組み入れられるHum. Mol. Genet. 6:1473〜1481、1997、1479頁;KG8R25)に記載され、したがって、これらはいずれも本発明のプライマーではない。しかし、配列番号:11および18に記載のプライマーセットは、本発明のプライマー対の範囲に含まれ、また、各種の開示または例示されたプライマー対、例えば、配列番号:11および12、配列番号:17および18に記載のプライマー対セット、ならびに2つまたはそれ以上のプライマー対の組み合わせ、例えば、配列番号:11および12並びに配列番号:13および14の組み合わせを含む。
配列番号:9および10に記載のプライマーは、Watnickら(本明細書に参照として組み入れられるAm. J. Hum. Genet. 65:1561〜1571、1999)に記載されており、このため、望ましい場合には、例えば、本発明のプライマーの範囲内のプライマーとして、本発明の特定な態様から特に除外されうる。しかしながら、プライマー対として、配列番号:9および10の組み合わせは、Watnickら(前記、1999)に記載はないことを認識すべきである。また、配列番号:49〜51および61〜105は、Watnickら(前記、1999)に記載されているが、本発明の特定の態様からは特に除外しうる。
ここに提供されたものを除き、本発明に係るプライマーは、配列番号:3〜51および61〜113のいずれかに例示され、ならびに配列番号:3〜51および61〜113に基づくかまたは由来するオリゴヌクレオチドプライマーと実質的に同一であるものも同様である。しかしながら、配列番号:12に記載されたプライマーは、Watnickら(本明細書に参照として組み入れられるMol. Cell
2:247〜251、1998、250頁
にTWR2と命名されたプライマーと実質的に類似し、さらに、配列番号:10に記載されたプライマーは、米国特許第6,071,717号
における配列番号:13と実質的に同一である。このように、配列番号:52または60のヌクレオチド配列を有するプライマーは、それぞれ、配列番号:12または10に記載されたプライマーの配列と実質的に同一の配列を有するプライマーの範囲に含まれるプライマーから、特に除外される。
本発明は、さらに、本明細書に記載された変異を含む単離された変異型PKD1ポリヌクレオチド、またはそのオリゴヌクレオチド部分を提供するものである。ここで、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリペプチドに対して用いられる「単離された」または「精製された」という用語は、物質が普通に天然に見出されたもの以外の形態であることを意味している。このように、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが細胞中に天然に存在している場合、単離ポリヌクレオチドまたは精製ポリペプチドは、通常結合している物質から、少なくとも一部分が分離されものでりうる。一般的には、単離ポリヌクレオチドまたは精製ポリペプチドでは、組成物成分が少なくとも約5〜10%、通常では20〜50%、特に約50〜75%、好ましくは約90〜95%またはそれ以上の割合で含まれた状態で存在する。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを単離する方法は、当技術分野に公知の通常用いられる方法である。
単離中またはそれに引き続いて、ポリヌクレオチドは、例えば融合タンパク質を形成するための突然変異生成研究、または宿主中のポリヌクレオチドの増幅もしくは発現のため、DNA分子のような他のポリヌクレオチドと結合することができる。単独で、またはベクターのような他のポリヌクレオチドと結合した単離ポリヌクレオチドを、培養物または生体全体中の宿主細胞中に導入することができる。培養物または生物全体中の宿主細胞に導入した場合、このようなポリヌクレオチドは、天然に存在する形態ではないため、やはり「単離された」と考える。同様に、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびポリペプチドは、培地配合物(ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリペプチドを、例えば細胞もしくは組成物中に導入するための溶液、または天然には存在しない組成物の化学反応もしくは酵素反応のための溶液)のような組成物中に存在することができ、本明細書で用いられる用語の意味の範囲内で、依然として単離ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリペプチドである。単離ヌクレオチド配列は、ゲノムまたは他の天然に存在する細胞中のDNA分子に直接に連続的であるヌクレオチド配列と連続していないポリヌクレオチドでありうる。したがって、組換えポリヌクレオチドとは、ベクター、自立的に複製するプラスミドもしくはウイルス中、またはPKD1ポリペプチドを通常発現しない原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれたポリヌクレオチドを含むことができる。
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」等の用語は、2つまたはそれ以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の重合体を意味している。ポリヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)であってもよく、一本鎖もしくは二本鎖のDNAまたはRNAであってもよく、または二本鎖のDNA:RNAハイブリッドであってもよい。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、例えば、イノシンまたはトリチル化塩基のような1つまたは複数の修飾された塩基を含むことができる。重合体中でヌクレオチドに連結する結合は、通常、ホスホジエステル結合であるが、例えば、ホスホロチオエート結合、チオエステル結合などを含むヌクレオチドと連結するのに通常用いられる他の結合であってもよい。ポリヌクレオチドは化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形態であってもよい。
本明細書で用いられる「変異型PKD1ポリヌクレオチド」という用語は、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列と比較したきに1または2〜3個のヌクレオチドが変化したヌクレオチド配列を意味する。ヌクレオチドの変化は、欠失、挿入、置換であってもよく、PKD1ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドの読み枠中に変化がないようなサイレントであってもよく、またはアミノ酸変化もしくはポリヌクレオチド中への停止コドンの挿入の結果により生じる変化であってもよく、またはPKD1ポリヌクレオチドの転写もしくは翻訳によるヌクレオチド配列の変化、例えば、mRNAへのPKD1遺伝子の転写における改変されたスプライシングの結果による変化(実施例2参照)であってもよい。本明細書に記載するように、変異型PKD1ポリヌクレオチドは、多型変種であってもよく、これは配列番号:1に関し、1または2〜3個のヌクレオチド以外が変化し、PKD1ポリペプチドをコードしたものであり、特にADPKDなどのPKD1関連障害と相互関係はないか、またはADPKDなどのPKD1関連障害と相互関係のある1つまたは複数の変異を含む変異型PKD1ポリヌクレオチドであってもよい(実施例2参照)。
議論の便宜および参考文献のフレームとして用いるため、配列番号:1に記載のPKD1ヌクレオチド配列は、「野生型PKD1ポリヌクレオチド」または「野生型PKD1遺伝子」配列と呼び、同様に、配列番号:2に記載のポリペプチドは「野生型PKD1ポリペプチド」と呼ぶ。しかしながら、個体における野生型PKD1遺伝子配列(即ち配列番号:1)の存在が個体中のADPKDの不在と関係しているので、配列番号:1の多型変種も、ADPKDまたは他のPKD1関連障害を示さない個体中に見出されることに留意する必要がある。「変種(variant)」または「多型変種」は、ADPKDのようなPKD1関連障害の徴候または症状の性質と関係のない変異型PKD1ヌクレオチド配列(配列番号:1に関する)を意味するものとして使用される。変種PKD1ポリヌクレオチドは、例えば、コードされたアミノ酸における変化により生じたものではないヌクレオチド置換、例えば、野生型および変異体コドンがともにスレオニン(T1558T)をコードするG4885A、野生型および変異体コドンがともにセリン(S1949S;実施例2参照、Phakdeekitcharoenら、前記、2000参照)をコードするC6058Tのようなサイレント変異が含まれる。これらは、疾患と分離されないものであるか、または影響を受けていない個体のパネル中に見出されるものである。このように、「変異型PKD1ポリヌクレオチド」という用語は、PKD1関連障害に関係しないPKD1変種を含むとともに、PKD1関連障害に関連するもしくは関係する変異型PKD1ポリヌクレオチドを広く含むと認識すべきである。
変種PKD1ポリヌクレオチド配列を含む、変異型PKD1ポリヌクレオチド配列としては、例えば、配列番号:1に記載される配列を実質的に含むが、474位がTであるヌクレオチド、487位がAであるヌクレオチド、3110位がCであるヌクレオチド、3336位のヌクレオチドが欠失した3336位のヌクレオチドに対応する位置、3707位がAであるヌクレオチド、4168位がTであるヌクレオチド、4885位がAであるヌクレオチド、5168位がTであるヌクレオチド、6058位がTであるヌクレオチド、6078位がAであるヌクレオチド、6089位がTであるヌクレオチド、6195位がAであるヌクレオチド、6326位がTであるヌクレオチド、7205位から7211位のヌクレオチドが欠失した7205位から7211位のヌクレオチドに対応する位置、7376位がCであるヌクレオチド、7535位と7536位の間にGCGヌクレオチド配列が挿入された7535位から7536位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列、7415位がTであるヌクレオチド、7433位がTであるヌクレオチド、7696位がTであるヌクレオチド、7883位がTであるヌクレオチド、8021位がAであるヌクレオチド、8159位から8160位のヌクレオチドが欠失した8159位から8160位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列、8298位がGであるヌクレオチド、9164位がGであるヌクレオチド、9213位がAであるヌクレオチド、9326位がTであるヌクレオチド、9367位がTであるヌクレオチド、10064位がAであるヌクレオチド、10143位がGであるヌクレオチド、10234位がCであるヌクレオチド、もしくは10255位がTであるヌクレオチドにおいて変異を有するか、またはそれらの組み合わせ(実施例2参照、表3、4参照)で変異を有する。本発明の変異型PKD1ポリヌクレオチドとしては、さらに、配列番号:2を実質的に有するPKD1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むが、A88V、W976R、G1166S、V1956E、R1995H、R2408C、D2604N、L2696R、R2985G、R3039C、V3285I、H3311R変異またはそれらの組み合わせを含み、さらに、例えば、挿入による配列番号:2の2441位および2442位のアミノ酸残基の間のGly残基の付加を有し、または、そうでなければ3001位のアミノ酸をコードしていた配列番号:1の位置に停止コドンが存在することにより配列番号:2の3000位のアミノ酸を終結させるポリペプチドを含む(表4、実施例2参照)。
本発明に係る変異型PKD1ポリヌクレオチドの更なる例としては、例えば、本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列の相補体またはそのオリゴヌクレオチド部分と、高ストリンジェントな条件下(例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate:SDS)、1mM EDTA中で、65℃にてフィルターに結合性のDNAをハイブリダイゼーションし、68℃にて0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄する(Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Green Publishing Associates Inc.、およびJohn Wiley & Sons, Inc.、New York 1989)、および補足ページ2.10.3;Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:Laboratory manual)」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)、これらは、本明細書に参照として組み入れられる)で、選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列が挙げられ、または、配列番号:2に記載のPKD1ポリペプチドを実質的にコードするポリヌクレオチドであって、1つまたは複数の変異を有するもの、またはそのようなポリヌクレオチドに対応するRNAが挙げられる。
配列番号:1に記載のPKD1ポリヌクレオチドまたは配列番号:2に記載のポリペプチド配列と「実質的に同一」なポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列とは、配列番号:1または配列番号:2に記載のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と、それぞれ少なくとも80%または85%、通常では少なくとも約90%、特に少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約99%の同一性を有することをいう。しかしながら、PKD1遺伝子配列中の変異は、切断されたPKD1ポリペプチドの発現、またはPKD1ポリペプチドの発現が完全に失われた結果起こりうることを認識すべきである。このように、変異型PKD1ポリヌクレオチドは、配列番号:1と実質的に同一であるものとして同定される一方で、コードされたポリペプチドと同様の比較が必ずしも可能とならない場合がある。本発明の一つの局面においては、配列番号:1または2と実質的に同一であるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、変異を有する1つまたは複数の部位において変化すると考えられ、例えば、前述の段落に記載の変異型PKD1ポリヌクレオチド中に存在する変異が挙げられる。配列の同定は、配列解析ソフトウェアを用いて行うことができる(例えば、ジェネティックコンピューターグループの配列解析ソフトウェアパッケージ(ウイスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、1710 University Avenue、Madison WI 53705)が挙げられる)。
本発明のポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分は、例えば、増幅反応のためのプローブまたはプライマーとして有用でありうる。なお、変異型PKD1ポリヌクレオチドにおける「オリゴヌクレオチド部分」とは、全長ポリヌクレオチドより短い変異型PKD1ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を意味する。一般に、プローブまたはプライマーとして有用なポリヌクレオチドは、少なくとも約10個、通常では約15〜30個、またはそれ以上のヌクレオチドを含む(実施例、表1、2参照)。ポリヌクレオチドは、適当な任意の方法で調製することができ、例えば、適当なポリヌクレオチドの制限酵素消化による方法;自動化合成法を含む、ホスホトリエステル法(Narangら、1979、Meth. Enzymol. 68:90〜99)、ホスホジエステル法(Brownら、1979、Meth. Enzymol. 68:109〜151)、ジエチルホスホラミダイト法(Beaucageら、1981、Tetrahedron Lett. 22:1859〜1862)、トリエステル法(Matteucciら、1981、J. Am. Chem. Soc. 103:3185〜3191)などの方法を用いる直接的な化学合成法;または固体担持法(例えば、米国特許第4,458,066号参照)が含まれる。これに加え、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、本明細書で開示され、または当技術分野において公知の組換えDNA法を用いて調製することもできる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号:1に関し、474位のヌクレオチドがTであるか、487位のヌクレオチドがAであるか、3110位のヌクレオチドがCであるか、8298位のヌクレオチドがGであるか、9164位のヌクレオチドがGであるか、9213位のヌクレオチドがAであるか、9326位のヌクレオチドがTであるか、9367位のヌクレオチドがTであるか、10064位のヌクレオチドがAであるか、10143位のヌクレオチドがGであるか、10243位のヌクレオチドがCであるか、もしくは10255位のヌクレオチドがTであることを除き、またはこれらの置換の組み合わせを含むオリゴヌクレオチドを除き、配列番号:1と実質的に同一の配列を含む、変異型PKD1ポリヌクレオチド部分を含むことができる。このように、本明細書で開示するように、オリゴヌクレオチドは、いかなる長さであってもよく、1つまたは複数の上記変異を含むことができる。
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、本明細書で記載のとおり、変異型PKD1ポリヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズすることが可能である。このようなオリゴヌクレオチドは、野生型PKD1ポリヌクレオチド(即ち、配列番号:1)には、実質的には全くハイブリダイズしない。本明細書中に記載の「選択的にハイブリダイズする」という用語は、オリゴヌクレオチド(またはポリヌクレオチド)プローブが、選択された配列にハイブリダイズするが、高い相関のあるヌクレオチド配列にはハイブリダイズしない能力を意味する。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドは、変異型PKD1ポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするが、配列番号:1に記載の配列に対応する配列には実質的にハイブリダイズしない。このように、配列番号:1へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、通常、前記の背景を有しておらず、また、いくつかのハイブリダイゼーションが起こるとしても、変異型PKD1ポリヌクレオチドで起こるハイブリダイゼーションの少なくとも約10分の1より少ない。
さらに、「ハイブリダイズ」という用語は、相補的に結合することができる2つのヌクレオチド配列であり、本明細書においても、通常理解されている意味で使用される。本明細書中でも記載のとおり、本発明のプライマーは、PKD1遺伝子とハイブリダイズすることができ、PKD1遺伝子相同体とハイブリダイズしてもよいが、通常、PKD1遺伝子またはPKD1遺伝子相同体以外のヌクレオチド配列とは実質的にハイブリダイズしない。選択的なハイブリダイゼーションが可能な、望ましいハイブリダイゼーションの条件は、含まれる配列の長さ、相対的G:C含量、塩濃度等に部分的には基づいている、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変更することにより得ることができる(Sambrookら、前記、1989)。高ストリンジェントな条件であるハイブリダイゼーション条件は、選択的なハイブリダイゼーションを行う場合に適用され、本発明のプライマーまたはプライマー対のハイブリダイゼーションのために、PKD1遺伝子またはPKD1遺伝子相同体に適用することができ、例えば、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、約37℃(14個のヌクレオチドのDNAプローブ)、約48℃(17個のヌクレオチドのDNAプローブ)、約55℃(20個のヌクレオチドのDNAプローブ)、および約60℃(23個のヌクレオチドのDNAプローブ)で洗浄する段階を含む。本明細書に記載するように、変異型PKD1ポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、変異型PKD1ポリヌクレオチドを野生型PKD1ポリヌクレオチドと区別する手段を提供するものである。
本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、対象となる特定のPKD1変種またはPKD1変異体のスクリーニングのプローブとして用いることができる。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、変異型PKD1ポリヌクレオチド配列を含む、PKD1ポリヌクレオチド配列のPKD1ポリヌクレオチド調節反応および増幅反応において有用なものとなりうる、PKD1アンチセンス分子を含む。さらに、このようなオリゴヌクレオチドは、PKD1遺伝子調節のためのリボザイムまたは3重らせん配列の一部として用いることもできる。またさらに、このようなオリゴヌクレオチドは、診断法に用いる構成要素として用いることができ、これにより、PKD1転写レベルの決定、あるいは、ADPKDを誘発する対立遺伝子の存在を検出することができる。さらに、このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、他の種からPKD1相同体をスクリーニングおよび同定するために用いることができる。
「プライマー」または「PCRプライマー」という用語は、プライマー伸張に適切な条件下に置かれたときに、DNA合成の開始点として作用することができる単離された天然または合成オリゴヌクレオチドを意味する。プライマー伸張産物の合成は、適切な温度において適当な緩衝液中で、ヌクレオシド三リン酸およびポリメラーゼの存在下で開始される。プライマーは、複数のプライマーを含み、例えば、合成される標的領域の片方または両末端に関する情報には曖昧性(ambiguity)がある。例えば、核酸配列がタンパク質配列から決定される場合、このタンパク質配列をコードする核酸配列の合成のために調製したプライマーは、遺伝子コードの縮重を基にして、全ての可能なコドンの変化を表す配列を含むプライマーの集団を含むことができる。この集団中の1つまたは複数のプライマーは、標的配列または標的配列に隣接する配列に末端が相同性を有すると考えられる。同様に、保存領域が、集団において重要なレベルで多型を示す場合、プライマー混合物は、隣接する配列を増幅するように調製される。
PCR増幅の間、対象となる標的配列に隣接するプライマー対は、標的配列の増幅に用いられる。プライマー対は、標的配列の5'末端にハイブリダイズするフォワードプライマー、および標的配列の3'末端にハイブリダイズするリバースプライマーを典型的に含有する。ここで記載されるものを除き、本発明のプライマーは、配列番号:3〜51および61〜113に記載の配列を有するものが例示される(表1、表2を参照のこと)。フォワードプライマーとしては、例えば、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47および49が例示され、リバースプライマーとしては、例えば、配列番号:4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50が例示される。本発明に係るプライマー対は、増幅産物の産出を可能とする少なくとも1つのフォワードプライマーおよび少なくとも1つのリバースプライマーを含み、増幅産物が配列番号:3〜18、配列番号:19〜51、および61〜113に記載のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、長い範囲(long-range)のPKD1特異的増幅産物またはこのような増幅産物のネスティド増幅産物でありうる。ここで、前記フォワードプライマーは、標的ポリヌクレオチド配列に関係するリバースプライマーの5'(上流)にあり、プライマーは、増幅産物が産生されるのに十分に近接している。
融合タンパク質をコードする核酸配列は、産生可能であり、発現制御配列に機能的に結合しうる。このような融合タンパク質および組成物は、抗体の開発、または対象となるペプチドおよびポリペプチドの産出と精製に有用である。「機能的に結合する」という用語は、記載された構成要素が、それらが意図する様式で、それらに機能を付与する関係にある場合の、近接した位置にあることをいう。例えば、コード配列に機能的に結合した発現制御配列は、コード配列の発現が発現制御配列に適合する条件下で行われるようにライゲーションされ、この場合、2つの機能的に結合したコード配列は同じ読み取り枠にあり、従って、これらは融合タンパク質をコードするようにライゲーションされる。
「発現制御配列」という用語は、機能的に結合された核酸配列の発現を制御する核酸配列を意味する。発現制御配列が転写および核酸配列の翻訳を適正なものとして、制御および調節する場合に、発現制御配列は、核酸配列に機能的に結合している。このように、発現制御配列は、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の直前の開始コドン(即ち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、遺伝子がmRNAに適切な翻訳を行うようにする正しい読取り枠の維持、および停止コドンを含みうる。制御配列は、最小限で、その存在が発現に影響を与える要素を含み、その存在が、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列に有利である付加的な要素を含むこともできる。発現制御配列は、プロモーターを含むことができる。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、融合タンパク質をコードしうる組換え核酸分子部分を含むことができる。ポリヌクレオチドまたは組換え核酸分子は、発現ベクターとなりうるベクターであって、プラスミド、ウイルスなどに由来するベクターに挿入することができる。発現ベクターは、一般的には、複製起点、プロモーター、およびベクターを含む形質転換細胞の表現型を選択するための1つまたは複数の遺伝子を含む。本発明で用いるのに適したベクターとしては、特に制限されないが、例えば、細菌での発現のためのT7-ベース発現ベクター(Rosenbergら、Gene 56:125、1987)、哺乳動物細胞での発現のためのpMSXND発現ベクター(LeeおよびNathans、J. Biol Chem. 263:3521、1988)、昆虫細胞での発現のためのバキュロウイルス由来ベクターなどが挙げられる。
ベクターの選択は、本発明の方法で用いられる、ポリヌクレオチド配列の大きさおよび宿主細胞に依存する。このように、本発明で用いられるベクターとしては、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、ファージミド、ウィルス(例えば、レトロウィルス、パラインフルエンザウィルス、ヘルペスウィルス、レオウイルス、パラミクソウィルスなど)、またはそれらの選択された部分(例えば、コートタンパク質、スパイクグリコタンパク質、キャプシドタンパク質など)が挙げられる。例えばコスミドとファージミドは、これらのベクターが、大きなポリヌクレオチドを安定的に増幅することができるので、分析あるいは修飾される特定の核酸配列が大きい場合でも一般に用いることができる。コスミドおよびファージミドは、配列番号:1に記載のPKD1ポリヌクレオチドまたは変異型PKD1ポリヌクレオチドの発現または操作に特に適している。
酵母では、構成的または誘導性のプロモーターを含む多数のベクターが用いられうる(Ausubelら、前記、1989;Grantら、Meth. Enzymol. 153:516〜544、1987; Glover、「DNAクローニング第II巻(DNA Cloning、Vol. II)」、IRL Press、Whashington D. C.、第3章、1986; Bitter、Meth. Enzymol. 152:673〜684、1987;および「酵母サッカロミセスの分子生物学(The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces)」、Strathernら編、Cold Spring Harbor Press、第I巻および第II巻、1982)。ADHまたはLEU2のような構造的酵母プロモーター、またはGALのような誘導性プロモーターも用いることができる(「酵母のクローニング(Cloning in Yast)」第3章、Rothstein、「DNAクローニング第II巻、実践的方法(DNA Cloning Vol.II、A Practical Approach)」、Glover編、IRL Press、1986)。または、ベクターは、酵母染色体中への外来DNA配列の組込みを促進するために用いることができる。発現ベクターの構築およびトランスフェクション細胞中の遺伝子の発現は、当技術分野において公知の分子クローニング技術を用いることができる(Sambrookら、前記、1989;Ausubelら、前記、1989参照)。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、インビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。
ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、ベクター中に含ませることができ、細胞の形質転換またはトランスフェクションにより、細胞中に導入することができる。「形質転換」または「トランスフェクション」とは、新規のDNAの組み込みの後、細胞に引き起こされる永久的(安定的)または一過性の遺伝的変化を意味する。細胞が哺乳動物細胞の場合、永久的な遺伝的変化は、一般的に、細胞のゲノムへDNAを導入することにより行われる。
形質転換細胞または宿主細胞としては、組換えDNA技術により、本発明のポリヌクレオチド配列またはその断片が導入された、いかなる原核細胞または真核細胞(またはその祖先)であってもよい。宿主細胞の形質転換は、当業者において公知の通常の技術により行うことができる。宿主が、大腸菌のような原核生物の場合、DNAの取り込み可能なコンピテント細胞は、指数増殖期後に回収され、その後、当技術分野に公知のCaCl2法もしくはMgCl2、またはRbClを用いて処理された細胞から調製することができる。形質転換は、宿主細胞のプロトプラスト形成またはエレクトロポレーションにより行うことができる。
宿主が真核生物の場合、トランスフェクション法としては、リン酸カルシウム共沈;マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームに封入されたプラスミドの挿入、もしくはウィルスベクターの使用などの従来の機械的方法;または他の公知の方法が挙げられる。一つの方法としては、シミアンウィルス40(SV40)またはウシ乳頭腫ウィルスなどの、真核生物ウィルスベクターを一過性的に感染、または真核生物を形質転換させ、タンパク質を発現させる方法が使用される(真核生物ウィルスベクター(Eukaryotic Viral Vectors)、Cold Spring Harbor Laboratory、Gluzmanら、1982)。真核生物宿主は、本明細書で記載されるような宿主細胞として用いられることが好ましい。真核細胞としては、酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))またはヒト細胞を含む哺乳動物細胞であってもよい。
多様な宿主発現ベクター系が、配列番号:1のようなPKD1ポリヌクレオチド配列、配列番号:1をコードする配列、または変異型PKD1ポリヌクレオチドを発現するために用いることができる。このような宿主発現系は、対象となるヌクレオチド配列が生産され、続いて精製される媒体となるものであり、至適なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクションされたときに、PKD1変種、変異型ポリペプチド、またはインサイチューでそれらのペプチド部分を含む、PKD1タンパク質を発現させることができる細胞ともなるものである。このような細胞としては特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる:PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分(野生型、変種、または他の変異体)を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌(B.subtilis));PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分(野生型、変種、または他のPKD1変異体)を含む、組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia));PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分(野生型、PKD1変種、または他の変異体)を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスまたはタバコモザイクウイルス)を感染したか、または変異型PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分を含む、組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3)などが挙げられる。
細菌系では、多くの発現ベクターを、発現するPKD1タンパク質(野生型、変種、または他のPKD1変異体)に意図される用途に応じて、都合のよいように選択することができる。例えば、PKD1関連疾患もしくは障害の同定もしくは診断に使用されうる抗体、またはペプチドライブラリーをスクリーニングするための抗体を産生するために、高レベルで容易に精製される融合タンパク質産物の発現を誘導するベクターが望ましい。このようなベクターとしては、特に限定されないが、例えば、融合タンパク質を製造するようなlacZコード領域のインフレームでベクターに個別にライゲーションされうるPKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分(野生型、変種、または他の変異体)における、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら、1983、EMBO J. 2:1971);pINベクター(InouyeおよびInouye、Nucl. Acids Res. 13:3101〜3109、1985; Van HeekeおよびSchuster、J. Biol. Chem. 264:5503〜5509、1989)などが含まれる。pGEXベクターはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)で融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するのに用いることもできる。通常、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着した後、遊離のグルタチオンの存在下に溶出して、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化したPKD1タンパク質、変種、または変異体がGST部分から解離するように、トロンビンまたはファクターXaプロテアーゼ開裂部位を含むように設計される。
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)核多核体ウイルス(AcNPV)が外来遺伝子を発現するベクターとして用いられる。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペラダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で成長する。PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリへドリン遺伝子)に個別にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリへドリンプロモーター)の制御下に置かれる。PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分の挿入は、ポリへドリン遺伝子の不活性化および非閉塞組換えウイルス(即ち、ポリへドリン遺伝子によりコードされた蛋白様の外被(proteinaceous coat)を失ったウイルス)の製造により、成功させることができる。これらの組換えウイルスを、挿入された遺伝子が発現するスポドプテラ・フルギペラダ細胞に感染させるために用いる(Smithら、1983、J. Virol. 46:584;米国特許第4,215,051号を参照のこと)。
哺乳動物宿主細胞では、多くのウイルスを基にした発現系を用いることができる。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合は、PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分は、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列(tripartite leader sequence)などのアデノウイルス転写/翻訳制御複合体にライゲーションされうる。このキメラ遺伝子は、その後、インビトロまたはインビボでの組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入することができる。E1またはE3領域のようなウイルス性ゲノムの非必須領域における挿入により、生存可能で、感染された宿主中のPKD1タンパク質(例えば、野生型、変種、またはその変異体)の発現可能な組換えウイルスが得られる(LoganおよびShenk、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655〜3659、1984)。挿入されたPKD1配列の有効な翻訳には、特定の開始シグナルが必要とされうる。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。自己の開始コドンおよび隣接配列を含む完全なPKD1ポリヌクレオチドが適切な発現ベクターに挿入される場合、付加的な翻訳制御シグナルは必要とされない。しかしながら、PKD1配列の一部だけが挿入される場合、例えば、ATG開始コドンを含む、外因性の翻訳制御シグナルが与えられなければならない。さらに、開始コドンは、完全な挿入物の翻訳を確実にする所望のコード配列の読み枠による段階になければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは天然および合成の多くの起源でありうる。発現の効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写終結などの含有により強化することができる(Bittnerら、Meth. Enzymol. 153:516〜544、1987を参照のこと)。
これらに加えて、宿主細胞系統を、挿入された配列の発現を調節、または特定の様式で発現したポリペプチドを修飾し処理することで、選択することができる。このような、タンパク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、開裂)は、タンパク質の機能にとって重要となりうる。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後の処理および修飾に対する特徴的で特異的なメカニズムを有している。適切な細胞系または宿主系を、発現された外来タンパク質の正しい修飾と処理を確実にするために選択することができる。このため、第1の転写、グリコシル化、およびポリペプチドのリン酸化を適切に処理するための、細胞機構有する真核生物宿主細胞が用いられる。このような哺乳動物宿主細胞は、特に限定されないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38などが含まれる。
これまで長い間、組換えタンパク質の高収率生産、安定的発現が望まれていた。例えばPKD1の野生型、変種、または変異体を含むPKD1タンパク質を安定的に発現する細胞系を設計することができる。複製のウイルス性起点を含む発現ベクターを用いるよりは、宿主は、適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、および/またはエンハンサー配列、転写終結因子、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーにより制御されたDNAにより形質転換可能である。外来DNAの導入の後、設計された細胞は、富化培地中で1〜2日間、その後、選択培地に切り換えて増殖させることができる。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対して耐性を与え、細胞は、プラスミドがその染色体に安定的に組み込まれることが可能となり、増殖して、細胞系でクローニングされ、増幅されうる病巣を形成する。この方法は、PKD1変種または変異型ポリペプチドを発現する細胞系を設計するのに有効に用いられる。このような設計された細胞系は、変種または変異型PKD1ポリペプチドの内因性の活性に影響を与える化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用となりうる。このような設計された細胞系は、特定の影響または非特定の影響を有する因子における違いを識別するに有効となりうる。特に、変異型細胞系は、主要な機能を欠いており、種々の変異はインビボアッセイ法を用いる主要な機能のドメインを同定するのに用いることができる。
選択系には、特に限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223、1977)、ヒポキサチン-グアニン ホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026、1962)、アデニン ホスホリボシルトランフフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817、1980)の遺伝子が含まれ、これらはそれぞれ、tk-、hgprt-またはaprt-細胞に用いることができる。また、代謝拮抗物質耐性は、メトトレキサートに対して耐性を与えるdhfr(Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 3567、1980; O'Hareら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1572、1981);マイコフェノリック酸に対する耐性を与えるgpt(MulliganおよびBerg、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072、1981);アミノグリコシドG-418に対する耐性を与えるneo(Colberre-Garapinら、J. Mol. Biol. 150:1、1981)、ハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerreら、Gene 30:147、1984)遺伝子に対する選択を基礎として用いることができる。したがって、本発明は、コード配列またはプライマーの発現を誘導する調節要素に関係して機能的に作用するいかなる先行配列をも含む発現ベクターを含む、変異型PKD1ポリヌクレオチド、もしくはそのオリゴヌクレオチド部分、または、1つもしくは複数のプライマーまたはそれらの相補体を含むベクターを提供するものである。また適当な場合には、本発明は、先行配列のいずれかを単独で、またはポリヌクレオチドをコードしたポリペプチドの発現を誘導することができる調節要素を機能的に結合するものを含む宿主細胞を提供する。
本明細書に記載された変異型PKD1ポリヌクレオチド配列に加えて、ヒト以外の種を含む、本発明の変異型PKD1ポリヌクレオチドの相同体を、当技術分野に公知の分子生物学的技術により同定し、単離することができる。また、ヒトPKD1ポリヌクレオチドの、変異型PKD1対立遺伝子および付加的な正常対立遺伝子は、本発明の方法を用いて同定することができる。さらに、PKD1ポリペプチド(配列番号:2)の1つまたは複数のドメインと広範囲に相同性を有するタンパク質をコードする、ヒトゲノム中の遺伝子の他の遺伝子座に遺伝子を存在させることができる。このような遺伝子は、本発明に係る方法により関係する変種および変異体を含めて、同定されうる。
変異型PKD1ポリヌクレオチド配列の相同体は、例えば、配列番号:3〜51、好ましくは配列番号:3〜18から選択するか、または配列番号:2に記載のPKD1ポリペプチドのアミノ酸配列もしくは本明細書に記載された変異体を基礎にして設計されたプライマープールを変性させた、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;米国特許第4,683,202号、参照として本明細書に組み入れられる)を行って単離することができる。反応のための鋳型は、ヒトもしくは非ヒト細胞系、またはPKD1対立遺伝子もしくはPKD1相同体を発現するものとして知られる組織から調製されたmRNAの逆転写により得られるcDNAとすることができる。PCR産物は、増幅された配列が、PKD1の配列またはPKD変異型ポリヌクレオチド配列であることを確認するため、多くの方法(例えば、ネスティドPCRによりさらに操作する)でサブクローニングされ、配列決定または操作される。PCR断片は、増幅された断片を標識し、核酸ライブラリー(例えば、バクテリオファージcDNAライブラリー)をスクリーニングして、全長PKD1 cDNAクローン(変異型PKD1ポリヌクレオチド配列を含むクローンを含む)を単離するために用いることができる。一方、標識された断片は、ゲノムライブラリーをスクリーニングするために用いることができる(クローニング方法の総説、例えばSambrookら、前記、1989;Ausubelら、前記、1989を参照のこと)。
本発明はまた、精製された変異型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分を提供する。本明細書に記載のとおり、変異型PKD1ポリペプチドは、配列番号:2と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:2のアミノ酸の欠失、付加(挿入)、置換による変異を含み、または配列番号:2が切断されている。このような変異としては、配列番号:2に関し、A88V、W967R、G1166S;V1956E;R1995H;R2408C;D2604N;L2696R、R2985G、R3039C、V3285I、またはH3311Rの変異、挿入のために配列番号:2のアミノ酸残基2441位と2442位の間へGly残基が付加すること、または、そうでなければ3001位のアミノ酸をコードしていた配列番号:1の位置に停止コドンが存在するために、配列番号:2の3000位のアミノ酸で、切断されたPKD1ポリペプチドが終結すること、ならびにこれらの変異の組み合わせを有する変異型PKD1ポリペプチドが含まれる(表4参照)。
変異型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分は1つまたは複数の例示される変異を含むことができる。本明細書で用いられるように、配列番号:2または変異型PKD1ポリペプチドのペプチド部分の例としては、全長野生型PKD1ポリペプチドより少ないアミノ酸を含む、配列番号:2の連続するアミノ酸配列、または本明細書で記載される変異を含む配列番号:2の連続するアミノ酸配列が挙げられる。通常、PKD1ポリペプチドまたは変異型PKD1ポリペプチドにおけるペプチド部分は、配列番号:2において、それぞれがペプチド結合またはその修飾形で結合した少なくとも約5つのアミノ酸(またはアミノ酸誘導体もしくは修飾アミノ酸)を含み、通常では少なくとも約8つ、特に少なくとも約10個のアミノ酸を含み、12個または13個以上のアミノ酸を含むことができる。特に、ペプチドが変異型PKD1ポリペプチドにおけるペプチド部分である場合、ペプチドは、配列番号:2に関する変異体アミノ酸を含む。
本発明に係る変異型PKD1ポリぺプチドおよびそのペプチド断片は、配列番号:2に記載の配列と実質的に同一の配列を有するとともに、以下の変異、またはその組み合わせを有するPKD1ポリペプチドまたはペプチドを含む:A88V、W967R、L2696R、R2985G、R3039C、V3285I、もしくはH3311R、または、そうでなければ3001位のアミノ酸をコードしていた位置に停止コドンが存在するために(配列番号:2に関して)3000位のアミノ酸で変異型PKD1ポリペプチドの終結が生じた変異。野生型PKD1ポリペプチド(配列番号:2)は、4303個のアミノ酸残基を有し、約467キロダルトン(kDa)の推定分子量を有する。さらに本発明は、配列番号:2に関して切断された変異型PKD1ポリペプチドを含み、例えば、コードされたPKD1ポリペプチドの不完全な終結の結果生ずるG9213Aによる配列番号:1の変異が挙げられる(実施例2参照)。このような切断された産物は、ADPKDのようなPKD1関連障害に関連しうる(表4参照)。
配列番号:2に関する1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を含みうる変種PKD1ポリペプチドを含む、野生型PKD1ポリペプチドと機能的に等価であるPKD1ポリペプチドであるが、それにもかかわらず配列番号:2により与えられるものと識別不能の表現形によって生じるPKD1ポリペプチドも、本発明に含まれる。このようなアミノ酸置換は、例えば、通常、含まれる残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、または両親媒性などの類似性により生じる。例えば、負電荷アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正電荷アミノ酸としては、リジン、アルギニンが含まれ;類似の親水性の価数を有する非電荷の極性ヘッド基を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが含まれる。しかしながら、多くの場合、ヌクレオチド置換はサイレントであり、コードされたPKD1ポリペプチドに変化がない(実施例2参照)。このような変種PKD1ポリヌクレオチドは、配列番号:1(配列番号:2)と実質的に同一の変種PKD1ポリヌクレオチド配列によりコードされたものが例示され、表3で示されるG487A(A92A)、C9367T(G3052G)、T10234C(L3341L)、およびG10255T(R3348R)(実施例2参照)、ならびにC9494T(L3095L)を含む(をコードする)。
ADPKD症状を引き起こす、配列番号:2に記載のPKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分と実質的に同一の変異型PKD1ポリペプチドおよびそのペプチド部分も、本発明の範囲に含まれる。このような変異型PKD1ポリペプチドおよびそのペプチド部分は、優性変異型PKD1ポリペプチド、またはそのような変異型PKD1ポリペプチドと機能的に等価なポリペプチドに関連するPKD1を含むことができる。変異型PKD1ポリペプチド配列の例としては、A88V、W967R、L2696R、R2985G、R3039C、V3285IもしくはH3311Rのような1つまたは複数のアミノ酸置換を有するか、または3000位のアミノ酸の後ろで切断される、配列番号:2と実質的に同一のポリペプチド配列が含まれる。変異型PKD1ポリペプチドにおけるペプチド部分の長さは、3、6、9、12、20、50、100個またはそれ以上のアミノ酸残基であり、上記と同一の変異の少なくとも1つを含む。
PKD1野生型もしくは変異体ポリペプチド、またはそのペプチド部分は、以下で述べるように天然資源から精製することができ、化学合成可能であり、または組換えにより発現させることができる。例えば、当業者は、配列番号:2(例えば、3110残基を含む)に記載のPKD1ポリペプチドの変異部分に対応するペプチド断片を合成することができ、合成されたペプチド断片を使用して、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を製造することができる。合成ポリペプチドまたはペプチドは、化学合成により調製することができ、例えば、公知の固相化学ペプチド合成法(例えば、Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85:2149〜2154、1963;StewartおよびYoung、「固相ペプチド合成法第2版(Solid Phase Peptide Synthesis, Second ed.)」、Pierce Chemical Co.、Rockford、Ill.、pp11〜12)が挙げられ、さらに市販の実験用ペプチド設計合成キット(Cambridge Research Biochemicals)を用いることができる。このような市販の実験用キットは、通常、Geysenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998(1984)の開示に従って用いることができ、それぞれが単一のプレートに結合する、複数のロッドまたはピンの先端上にペプチドを合成することができる。このような系を用いる場合、ロッドまたはピンのプレートは、そのピンまたはロッドの先端に適切なアミノ酸を接着または定着させるための溶液を含む、ウェルまたはレザバーに対応する第2のプレートに転換および挿入される。ロッドまたはピンの先端を適切な溶液中に転換または挿入するというような工程を繰り返すことにより、アミノ酸は所望のペプチドに構築される。
多くの利用可能なFMOCペプチド合成系を利用することができる。例えば、ポリペプチドまたは断片の組み立ては、アプライドバイオシステム社(Applied Biosistems Inc.)モデル431A自動ペプチド合成機を用いて固体支持体上で行うことができる。このような装置により、直接的に合成または他の公知の技術と組み合わせて連続断片を合成して、本発明のペプチドを速やかに入手する方法が提供される。したがって、ポリペプチドおよびペプチドの化学合成法は、当業者に公知のものであり、例えば、ペプチドは、固相法により合成され、樹脂から分離され、調製用の高速液体クロマトグラフィーで精製することができる(Creighton、1983、「タンパク質:構造と分子の原理(Proteins:Structures and Molecular Principles)」、W. H. Freeman & Co.、N.Y.、pp.50〜60参照)。合成ペプチド組成物は、アミノ酸分析または配列決定により確認することができ、例えば、エドマン(Edman)分解法を用いることができる(Creighton、1983、前記、pp.34〜49参照)。このように、PKD1ポリペプチド、変種、変異体の断片は、化学的に合成可能である。ペプチドは、次に、例えば、PKD1関連障害(例えばADPKD)の診断とともに、PKD1変種および変異体の検出に有用な抗体の製造に用いることができる。
本発明の変種または変異体を含むPKD1ポリペプチドまたはペプチドは、当技術分野に公知のタンパク質分離技術を用いて天然資源から実質的に精製(例えば、細胞から精製)することができる。このような方法を用いることにより、PKD1ポリペプチドから、他のタンパク質、糖タンパク質および他の天然資源中に通常見出される巨大分子の少なくとも約90%(重量を基にする)、さらに少なくとも約99%を取り除くことができる。このような精製技術としては、特に限定されないが、硫酸アンモニウム沈殿、分子ふるいクロマトグラフィー、および/またはイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。さらに、PKD1ポリペプチド、変種、または変異体は、PKD1ポリペプチド、変種、または変異体と特異的に結合することができる抗体を固定化した免疫吸着カラムを用いる免疫親和性クロマトグラフィーにより精製することもできる。このような抗体はモノクローナルまたはポリクローナルを起源とすることができる。例えば、変異型PKD1ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、野生型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチドに結合しない。PKD1ポリペプチドがグリコシル化されている場合、グリコシル化のパターンを、例えば、レクチンクロマトグラフィーを介した精製経路の一部に用いることができる。
PKD1ポリペプチド、その変種、または変異体を精製することができる細胞起源には、例えばノーザンおよび/またはウェスタンブロット分析によってPKD1ポリヌクレオチド、変種、または変異配列を発現することが示されている細胞が含まれる。好ましくは、そのような細胞起源は、例えば腎尿細管上皮細胞を含む腎細胞、ならびに胆管細胞、骨格筋細胞、肺胞上皮細胞、胎盤細胞、線維芽細胞、リンパ芽球、腸上皮細胞、および内皮細胞である。その他の起源には、体液、または被験者から得たオルガネラ調製物のような分画された細胞もしくは組織が含まれる。本発明において用いられる体液の例は、血液、血清、血漿、尿、粘膜、および唾液である。組織または細胞試料もまた、本発明に使用することができる。試料は、細胞吸引または生検試料の外科的採取のような多くの方法によって得ることができる。
本発明のPKD1ポリペプチド、変種、または変異体は、細胞から分泌されうる。PKD1ポリペプチドまたは変異体のそのような細胞外型は、好ましくは上記の任意の技術を用いて細胞というよりはむしろ、組織全体から精製することができる。上記の細胞のようなPKD1発現細胞はまた、当業者に周知の条件下で細胞培養によって増殖させることができる。次に、PKD1ポリペプチドまたはその変異体を、上記の任意の技術を用いて細胞培地から精製することができる。
PKD1ポリペプチド、変種、または変異体はさらに、当技術分野で周知の技術と組み合わせて上記のPKD1ヌクレオチド配列、変種、および変異体を用いて、組換えDNA技術によって産生することができる。または、PKD1ポリペプチド、またはそのペプチド断片をコードすることができるRNAを、例えば自動または半自動化合成機を用いて化学合成することができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」、1984、ゲイト(Gait)編、IRL出版、オックスフォードを参照のこと)。
本明細書に記載のアッセイ系における構成要素として用いる場合、変異型PKD1ポリペプチドまたはペプチドは、PKD1ポリペプチドと抗体または核酸配列とのあいだに形成された複合体の検出を促進するために、直接または間接的に標識することができる。125Iのような放射性同位元素、基質に暴露すると検出可能な色のシグナルまたは光を発生するビオチン-アビジン、または西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素標識系を含むが、これらに限定されない多様な適した任意の標識系を用いることができる。
本発明はまた、望ましい場合には、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,891,628号に記載の抗体、または米国特許第5,891,628号に記載のようなPKD1変異体に特異的に結合する抗体を除外できることを除き、PKD1変異体またはPKD1変種に特異的に結合する抗体を提供する。変異型PKD1ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、診断または治療試薬として有用であり、したがって、例えば、ADPKDを有する、またはADPKDを有するリスクがある被験者を同定するための診断アッセイ法において用いることができ、キットとして提供すると特に都合がよい。
本明細書において用いられるように、抗体および抗原またはそのエピトープ部分に関連して用いる場合に「特異的に結合する」という用語は、抗体および抗原(またはエピトープ)が少なくとも約1×10-7、一般的に少なくとも約1×10-8、通常では少なくとも1×10-9、および特に少なくとも約1×10-10またはそれ未満の解離常数を有することを意味する。所望の特異性を有する抗体を同定および選択する方法は周知であり、当技術分野において日常的に行われる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、ハーロウ&レーン(Harlow and Lane、「抗体:実験マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバー出版、1988を参照のこと)。
1つまたは複数のPKD1ポリペプチドエピトープ、特に変異型PKD1ポリペプチドに対して独自のエピトープに特異的に結合することができる抗体を産生する方法は、本明細書に開示され、またはそうでなければ当技術分野で周知である。そのような抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(mAb)となることができ、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、および例えばFab断片、F(ab')2断片またはFab発現ライブラリーによって産生された断片を含む、上記の任意のもののエピトープ結合断片となりうる。そのような抗体は、例えば生体試料中に存在しうるPKD1ポリペプチド、もしくは変種PKD1ポリペプチドを含む変異型PKD1ポリペプチドの検出に用いることができ、または異常なPKD1活性を阻害するために用いることができる。このように、抗体はADPKD治療方法の一部としてのみならず、例えば、PKD1ポリペプチドの有無または量を検出するための診断方法において利用することができる。
PKD1変種またはPKD1変異体を含むPKD1に結合する抗体を産生するために、PKD1ポリペプチド、変異型ポリペプチド、変種、またはその部分を注射することによって、様々な宿主動物を免疫化することができる。そのような宿主動物には、ウサギ、マウス、およびラットが含まれうるが、これらに限定されない。フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのような無機質ゲル、リゾレシチン、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメットゲラン桿菌)またはコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)のようなおそらく有用なヒトアジュバントを含むがこれらに限定されない様々なアジュバントを用いて、宿主の種に応じて免疫応答を増加させることができる。
本発明の変異型PKD1ポリペプチド、そのペプチド部分に結合する抗体は、免疫化する抗原として無傷のポリペプチドまたは関係する小型ペプチドを含む断片を用いて調製することができる。動物を免疫化するために用いられるポリペプチドまたはペプチドは、翻訳されたcDNAまたは化学合成に由来することができ、望ましい場合には担体タンパク質に結合させることができる。ペプチドに化学的に連結させることができるそのような一般的に用いられる担体には、キーホールリンペットヘモシアニン、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン、破傷風毒素、および上記のまたはそうでなければ当技術分野で既知の他の担体が含まれる。次に、連結したポリペプチドまたはペプチドを用いて動物を免疫化し、抗血清を回収することができる。望ましい場合には、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、例えばそれに対する抗体を作製するポリペプチドまたはペプチドが結合するマトリックスに結合させて、そこから溶出させることによって、精製することができる。ポリクローナル抗体と共にモノクローナル抗体の精製および/または濃縮に関して免疫学において一般的に用いられる様々な技術を用いることができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、コリガン(Coligan)ら、「免疫学の現行プロトコール(Current Protocols in Immunology)」、9章、ウィリーインターサイエンス、1991年を参照のこと)。
抗イディオタイプ技術を用いて、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を産生することができる。例えば、第1のモノクローナル抗体に対して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、第1のモノクローナル抗体によって結合されるエピトープの像である高度可変領域に結合ドメインを有すると思われる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびに変異型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分に特異的に結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の断片が含まれる。
ポリクローナル抗体の調製は当業者に周知である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、グリーン(Green)ら、ポリクローナル抗血清の作製(Production of Polyclonal Antisera)、「免疫化学プロトコール(Immunochemical Protocols)」、マンソン(Manson)編、1〜5頁(ヒュマナ出版、1992年);コリガン(Coligan)ら、ウサギ、ラット、マウス、およびハムスターにおけるポリクローナル抗血清の産生(Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters)、「免疫学の現行プロトコール(Current Protocols in Immunology)」、2.4.1章(1992)を参照のこと)。モノクローナル抗体の調製は同様に従来の方法である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、コーラー&ミルスタイン(Kohler and Milstein)、Nature 256:495、1975を参照のこと;同様に、コリガン(Coligan)ら、上記、第2.5.1〜2.6.7章を参照のこと;およびハーロウ(Harlow)ら、上記、1988年を参照のこと)。簡単に説明すると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注入して、血清試料を採取することによって抗体産生の有無を確認し、脾臓を採取してBリンパ球を得て、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマをクローニングして、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、ハイブリドーマ培養から抗体を単離することによって得ることができる。
モノクローナル抗体は、多様なよく確立された技術によって、ハイブリドーマ培養から単離および精製することができる。そのような単離技術には、プロテインAセファロースによるアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィー(コリガン(Coligan)ら、第2.7.1〜2.7.12章および第2.9.1〜2.9.3章;バーンズ(Barnes)ら、免疫グロブリンG(IgG)の精製(Purification of Immunogloblin G)、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、第10巻、79〜104頁(ヒュマナ出版、1992年)を参照のこと)。モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞のインビトロおよびインビボ複製は当業者に周知である。インビトロでの複製は、選択的に、仔ウシ胎児血清のような哺乳類血清または微量元素および正常マウス腹腔滲出細胞、脾細胞、骨髄マクロファージのような増殖を維持する補助物質を加えた、ダルベッコ改変イーグル培地またはRPMI 1640培地のような適した培地において行うことができる。インビトロでの産生によって、比較的純粋な抗体調製物が提供され、所望の抗体が大量に得られるように規模を拡大することができる。大規模なハイブリドーマ培養は、エアリフト型リアクター、連続攪拌リアクター、または固定もしくは捕獲細胞培養における均一な懸濁培養によって行うことができる。インビボでの複製は、抗体産生腫瘍を増殖させるために、親細胞と組織適合性の哺乳類、すなわち同系マウスに細胞クローンを注入することによって行うことができる。選択的に、動物には炭化水素、特にプリスタンテトラメチルペンタデカンのような油を注射前にプライミングする。1〜3週間後、所望のモノクローナル抗体が動物の体液から回収される。
本明細書に開示の抗体の治療的応用もまた、本発明の一部である。例えば、本発明の抗体は、ヒトより下の霊長類抗体に由来することができる。治療的に有用な抗体をヒヒにおいて作製する一般的な技術は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、ゴールデンバーグら(Goldenberg、国際公開公報第91/11465号、1991年);ロスマンら(Losman、Int. J. Cancer 46:310、1990)に見ることができる。
抗PKD1抗体はまた、「ヒト化」モノクローナル抗体に由来しうる。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖からのマウス相補性決定領域をヒト可変領域ドメインに移入し、次にマウス相対物のフレームワーク領域においてヒト残基を置換することによって産生する。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を用いれば、マウス定常領域の免疫原性に関連した起こりうる問題が回避される。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングする一般的な技術は、例えば参照として本明細書に組み入れられる、オーランディら(Orlandi、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833、1989)に記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を産生する技術は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、ジョーンズ(Jones)ら、Nature 321:522、1986;リークマン(Riechmann)ら、Nature 332:323、1988;ベルホーエン(Verhoeyen)ら、Science 239:1534、1988;カーター(Carter)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285、1992;サンドゥ(Sandhu)、Crit. Rev. Biotech. 12:437、1992;およびシンガー(Singer)ら、J. Immunol. 150:2844、1993に記載されている。
本発明の抗体はまた、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーから単離したヒト抗体断片に由来しうる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、バーバス(Barbas)ら、「方法:酵素学の方法との比較(Methods:A Comparison to Methods in Enzymology)」、第2巻、119頁、1991;ウィンター(Winter)ら、Ann. Rev. Immunol. 12:433、1994を参照のこと)。ヒト免疫グロブリンファージライブラリーを産生するために有用なクローニングおよび発現ベクターは、例えばストラタジーン社(ラホヤ、カリフォルニア州)から得ることができる。
さらに、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体に由来することができる。そのような抗体は、抗原の投与に反応して特異的ヒト抗体を産生するように「操作されている」トランスジェニックマウスから得られる。この技術において、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子の要素を、内因性の重鎖および軽鎖遺伝子の標的化破壊を含む胚肝細胞株に由来するマウス株に導入する。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は、グリーンら(Green、Nature Genet. 7:13(1994));ロンバーグら(Lonberg、Nature 368:856(1994));タイラーら(Taylor、Int. Immunol. 6:579(1994))に記載されている。
本発明の抗体断片は、抗体のタンパク質分解加水分解、または断片をコードするDNAの大腸菌における発現によって調製することができる。抗体断片は従来の方法によって抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって、F(ab')2と呼ばれる5S断片を提供することによって産生することができる。この断片は、チオール還元剤、および選択的に、ジスルフィド結合の切断によるスルフヒドリル基のためのブロッキング基を用いてさらに切断することができ、3.5S Fab'一価断片を生じる。または、ペプシンを用いる酵素的切断は、2つの一価Fab'断片とFc断片を直接産生する。これらの方法は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、ゴールデンバーグ(Goldenberg)の米国特許第4,036,945号、および第4,331,647号、およびそこに含まれる参考文献に記載されている(同様に、ニソンホフ(Nisonhoff)ら、Arch. Biochem. Biophys. 89:230、1960;ポーター(Porter)、Biochem. J. 73:119、1959;エーデルマン(Edelman)ら、Meth. Enzymol. 1:422、1967;およびコリガン(Coligan)ら、2.8.1〜2.8.10章および2.10.1〜2.10.4章も参照のこと)。重鎖を分離して一価の軽重鎖断片、断片のさらなる切断を生成するような、抗体を切断するその他の方法、またはその他の酵素的化学的もしくは遺伝的技術もまた、断片が無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、用いることができる。
Fv断片は、VHとVL鎖との会合を含むが、これは例えば非共有結合となりうる(インバー(Inbar)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2659、1972を参照のこと)。可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって結合することができ、グルタルアルデヒドのような化学物質によって架橋することもできる(サンドゥ(Sandhu)、上記、1992)、またはVHおよびVL鎖を含むFv断片は、ペプチドリンカーによって結合することができる。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって結合したVHおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製する。構造遺伝子を発現ベクターに挿入し、これをその後大腸菌のような宿主細胞に導入する。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドによってポリペプチド鎖を合成する。sFvを産生する方法は、例えば、ウィットロウら(Whitlow、「方法:酵素学の方法との比較(Methods:A Comparison to Meth. Enzymol.)」、2:97、1991);バードら(Bird、Science 242:423、1988);ラドナーら(Ladner 、米国特許第4,946,778号);パックら(Pack、BioTechnology 11:1271、1993);およびサンドゥ(Sandhu、上記、1992)によって記載されている。
抗体断片のもう一つの形は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小の認識単位」)は、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAからの可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を用いることによって調製される(例えば、ラリック(Larrick)ら、「方法:酵素学の方法との比較(Methods:A Comparison to Meth. Enzymol.)」、2:106、1991を参照のこと)。
変異型PKD1ポリヌクレオチドまたはそのオリゴヌクレオチド部分、および変異型PKD1ポリペプチドまたはペプチドに対して作製した抗体のような試薬を利用する多様な方法を用いることができる。特に、そのような試薬は、PKD1変異の有無、例えば疾患組織に存在するが、対応する非疾患組織と比較または相対させると、大きく減少したレベルで存在する分子を検出するために用いることができる。
本明細書に記載の方法は、例えば、PKD1遺伝子または変異型PKD1ポリヌクレオチドの少なくとも一つの特異的オリゴヌクレオチド部分、プライマー対、または本明細書に開示の抗PKD1抗体試薬を含む診断キットとなりうる、予め包装されたキットを利用することによって行うことができ、これらはPKD1異常を示す被験者を診断するために、またはADPKDを含むPKD1関連障害を検出するために臨床の状況において都合よく用いることができる。PKD1ポリヌクレオチドが発現される任意の組織を本発明の診断方法に用いることができる。
分析すべき組織からの核酸は、当技術分野で周知の方法を用いて単離することができ、または診断方法は、生検または切除によって被験者からさらに精製せずに得ることができる組織切片(固定または凍結された切片)について直接行うことができる。本発明のオリゴヌクレオチド配列は、そのようなインサイチュー技法に関してプローブまたはプライマーとして用いることができる(ヌオボ(Nuovo)、1992、「PCRインサイチューハイブリダイゼーション:プロトコールと応用(PCR in situ hybridization:protocols and applications)」、レイブン出版、ニューヨーク州)。例えば、本発明の診断方法において有用なオリゴヌクレオチドプローブには、少なくとも10個の隣接するヌクレオチドを有し、配列番号:1の一部と実質的に同一であって;且つ474位がTであるヌクレオチド;487位がAであるヌクレオチド;3110位がCであるヌクレオチド;8298位がGであるヌクレオチド;9164位がGであるヌクレオチド;9213位がAであるヌクレオチド;9326位がTであるヌクレオチド;9367位がTであるヌクレオチド;10064位がAであるヌクレオチド;10143位がGであるヌクレオチド;10234位がCであるヌクレオチド;10255位がTであるヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含む配列を有するヌクレオチド配列が含まれる。本発明において有用なプライマーには、配列番号:3〜18および配列番号:19〜51、および61〜112に記載のプライマーが含まれる。そのようなプライマーは隣接して、変異型PKD1ポリヌクレオチドの1つまたは複数の変異したヌクレオチドを含む配列を増幅するために用いることができる。
RNAまたはDNAのいずれかであるPKD1ポリヌクレオチド配列は、PKD1発現の異常を検出するために、生体試料のハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイ法、例えばそのいずれもがハイスループット分析に容易に適合できる変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC;温度調節ヘテロ二本鎖クロマトグラフィーとも呼ばれる)、または構造感受性ゲル電気泳動(CSGE)のような方法による異常の検出を含む、サザンもしくはノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーションアッセイ法を含む一本鎖構造多形(SSCP)分析、またはポリメラーゼ連鎖反応分析において用いることができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、クリステンセン(Kristensen)ら、BioTechniques 30:318〜332、2001;ロイング(Leung)ら、BioTechniques 30:334〜340、2001を参照のこと)。そのような分析によって、PKD1ポリヌクレオチドの発現パターンにおける定量的な異常を明らかにすることができ、PKD1変異が例えば広範囲の欠失、または染色体転位の結果である場合、PKD1異常のより定量的な局面を明らかにすることができる。
変異型PKD1ポリヌクレオチドを検出する診断方法は、例えば、分析すべき組織試料に由来する核酸と、本発明の1つもしくは複数の標識したオリゴヌクレオチドプローブ、または本発明のプライマーもしくはプライマー対とを、標的分子内でその相補的配列とこれらの試薬との特異的アニーリングにとって都合のよい条件下で、接触させてインキュベートする段階を含みうる。インキュベーション後、存在する場合には、アニーリングしていないオリゴヌクレオチドを除去して、プローブまたはプライマーと標的組織からの核酸とのハイブリダイゼーションを検出する。そのような検出法を用いて、標的組織核酸を、例えば膜のような固相支持体、またはマイクロタイタープレートもしくはポリスチレンビーズのようなプラスチック表面に固定することができる。この場合、インキュベーション後、アニーリングしていない標識核酸試薬は容易に除去される。残っているアニーリングした標識核酸試薬の検出は当技術分野で周知の標準的な技術を用いて行う。
本発明のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーはまた、アレイ上に並べたチップのような固相マトリックスに会合させることができ、このようにしてハイスループットな手段が提供される。多数のオリゴヌクレオチドプローブの微小アレイ(DNAチップ)は、様々な応用にとって有用である。したがって、PKD1変種または変異体を診断または検出する方法は、PKD1ポリヌクレオチドおよびそこに含まれる変異の検出を分析するためにDNAチップを用いて行うことができる。DNAチップ上での大規模分析の方法論はハシアら(Hacia、Nature Genet. 14:441〜447、1996;米国特許第6,027,880号、参照として本明細書に組み入れられる;同様にクリステンセン(Kristensen)ら、上記、2001を参照のこと)によって記載されている。ハシア(Hacia)らが記述したように、長さがそれぞれ約20ヌクレオチドであるヌクレオチド96,000個以上のオリゴヌクレオチドの高密度アレイを、光方向化学合成を用いて単一のガラスまたはシリコンチップに固定する。オリゴヌクレオチドプローブの数および設計により、配列中のおそらくあらゆる塩基を変化に関して調べることができる。
チップに適用されたポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、配列変化を含むことができ、これはその集団に起こることがまだ知られていない変異を同定するために用いることができるか、または本明細書に開示された変異を含む、起こることが既知の変異のみとなりうる(実施例2参照)。チップに適用できるオリゴヌクレオチドの例には、少なくとも10個の隣接するオリゴヌクレオチドを含み、配列番号:1の一部と実質的に同一である配列を有し;且つ474位がTであるヌクレオチド;487位がAであるヌクレオチド;3110位がCであるヌクレオチド;3336位のヌクレオチドが欠失している3336位のヌクレオチドに対応する位置;3707位がAであるヌクレオチド;4168位がTであるヌクレオチド;4885位がAであるヌクレオチド;5168位がTであるヌクレオチド;6058位がTであるヌクレオチド;6078位がAであるヌクレオチド;6089位がTであるヌクレオチド;6195位がAであるヌクレオチド;6326位がTであるヌクレオチド;7205位〜7211位のヌクレオチドが欠失している7205位〜7211位のヌクレオチドに対応する位置;7376位がCであるヌクレオチド;7535位と7536位のヌクレオチドの間にGCGヌクレオチド配列が挿入されている7535位〜7536位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列;7415位がTであるヌクレオチド;7433位がTであるヌクレオチド;7696位がTであるヌクレオチド;7883位がTであるヌクレオチド;8021位がAであるヌクレオチド;8159位〜8160位のヌクレオチドが欠失している8159位〜8160位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列;8298位がGであるヌクレオチド;9164位がGであるヌクレオチド;9213位がAであるヌクレオチド;9326位がTであるヌクレオチド;9367位がTであるヌクレオチド;10064位がAであるヌクレオチド;10143位がGであるヌクレオチド;10234位がCであるヌクレオチド;10255位がTであるヌクレオチド;またはそれらの組み合わせを含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
オリゴヌクレオチドプローブをチップ上にハイブリダイズする前に、試験試料を単離、増幅、および標識する(例えば蛍光マーカー)。次に、試験ポリヌクレオチド試料を固定したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。固定したプローブに対する配列に基づく技術の強度を定量して参照配列と比較する。得られた遺伝子情報を分子診断に用いることができる。分子診断におけるDNAチップの一般的な用途は既知の変異に関するスクリーニングである。
DNAチップ方法論の他に、DNA分析に適合させた機器を用いる方法によって、PKD1変異を検出する開示の方法、およびADPKDを診断する開示の方法を商業化することができる。例えば、質量分析による遺伝子タイピングを用いることができ、またはマトリックス支援レーザー脱離飛行時間型(matrix-assisted laser desorption time of flight:MALDI-TOF)質量分析を、一塩基対および短いタンデムリピート変異および変種配列の大量を遺伝子タイピングするために用いることができる。例えば、プライマーの一つに結合したビオチンによる変異の領域のPCR増幅を行って、その後増幅したDNAをストレプトアビジンビーズに固定することができる。変種または変異体部位に隣接するプライマーのハイブリダイゼーションを行って、その後dNTPsおよびddNTPsの存在下で変種または変異体部位を超えるDNAポリメラーゼによる伸長を行う。配列に従って適切に設計すると、これによってごく少数のさらなる塩基の付加が起こる(ブラウン、リトル、コスター(Braun、Little、Koster)、1997)。次に、DNAを処理して未使用のヌクレオチドおよび塩を除去し、短いプライマーと変異体部位を変性によって除去して、圧電ピペットを用いてシリコンウェハに移す。プライマーと変種または変異体部位の質量を、遅延抽出MALDI-TOF質量分析によって決定する。配列における一塩基対およびタンデムリピート変種は、その質量によって容易に決定される。この最終段階は非常に迅速で、アッセイあたり5秒を必要とするに過ぎず、これらの段階は全て自動で行うことができ、1日あたり20,000個の遺伝子タイピングを行う能力を有する。この技術は迅速で、極めて正確であり、如何なる変種または変異にも応用でき、一塩基対および短いタンデムリピート変種の双方を同定することができ、調べるべき変種または変異配列の付加または除去は、些細な費用で数秒のうちに行うことができる。
変異型PKD1ポリヌクレオチドの検出に関するもう一つの診断方法は、例えば、PCR(米国特許第4,683,202号を参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(バラニー(Barany)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189〜193、1991a)、自律的配列複製(グアテリ(Guatelli)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874〜1878、1990)、転写増幅系(コウ(Kwoh)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173〜1177、1989)、Q-ベータレプリカーゼ(リザルディ(Lizardi)ら、BioTechnology 6:1197、1988)、または任意のその他のRNA増幅法による増幅の後に、増幅産物を検出することを含む。本発明は、ADPKDを診断するためのこれまでの困難を克服するために用いることができる試薬、方法、および組成物を提供する。
本明細書に記載のプライマー対と方法を用いて、エクソン1および22を含むPKD1遺伝子の完全な複製されたセグメントをゲノムDNAから増幅し、連続した8個の長さ(約0.3 kb〜5.8 kbの大きさ)の増幅産物を生じさせることができる(表1;同様に図1も参照のこと)。広範囲に分散したPKD1特異的プライマーを利用することにより、PKD1特異的増幅を結合させる手段が提供され、様々なプライマーの組み合わせを用いる能力により、望ましい場合には、より長いまたはより短い増幅産物を生じる手段が提供される。例えば、プライマーBPF13およびKG8R25によって増幅される最も長いPKD1断片(表1;配列番号:17および18をそれぞれ参照のこと)は、PKD1特異的プライマー、KG85R25(配列番号:18)と共にフォワードネステッドプライマーF32
を用いて、ならびにBPF13(配列番号:17)および第2の特異的プライマー31R
を用いて2つのより短いセグメントに分けることができる。
本明細書に開示のプライマーの多くは、PKD1遺伝子のイントロン配列と共に存在するが、配列番号:16のような他の配列はコード配列に存在することを認識しなければならない。そのためcDNA分子は、例えば、配列番号:16のようなプライマーと、配列番号:16に対して5'または3'に位置する適当な第2のプライマーとを用いて、RNA分子の逆転写によって標的RNA分子から得ることができる。この態様において、PKD1 RNAは、例えば腎組織、徐核末梢血球細胞、および線維芽細胞を含む、野生型PKD1が発現されることが知られている任意の組織から単離することができる。次に、cDNA内の標的配列を、PCR増幅反応等のような核酸増幅反応の鋳型として用いる。増幅産物は、例えば、放射性または蛍光標識ヌクレオチド等を用いて、および適当な検出系を用いて、またはエチジウムブロマイド染色およびゲル電気泳動によって可視化することができるように増幅産物の有意な量を産生することによって、検出することができる。
細胞または組織試料からを含む被験者からのゲノムDNAを、長い範囲のPKD1特異的増幅産物を作製するための鋳型として用いることができる。ゲノムDNAを単離する方法は、周知であり、日常的に行われる(サムブルック(Sambrook)ら、上記、1989を参照のこと)。ゲノムPKD1 DNAの増幅は例えば、PKD1遺伝子のエクソンおよびイントロンの分析を可能にすることを含む、cDNA増幅法に対して利点を有する。そのため、イントロンまたはエクソン配列のいずれかに関連する対象となる標的配列を増幅して特徴付けすることができる。対象となる標的配列は、PKD1関連障害または疾患に相関するそれらの変異を含む、変異を含む、または変異を含むと考えられるPKD1遺伝子の任意の配列または遺伝子座である。
標的配列に隣接するプライマーを用いて、十分な回数のPCRサイクルを行って、標的配列に対応するPKD1特異的増幅産物を提供する。望ましい場合には、例えばネステッドPCR反応を行うことによって、さらなる増幅を行うことができる。ゲノムDNAからPKD1特異的な第1の増幅産物を作製するために有用なプライマーの例には、配列番号:3および4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、配列番号:9および10、配列番号:11および12、配列番号:13および14、配列番号:15および16、ならびに配列番号:17および18に例示した配列を有するプライマー対が含まれる。PKD1特異的な第1の増幅産物はさらに、配列番号:19および20、配列番号:21および22、配列番号:23および24、配列番号:25および26、配列番号:27および28、配列番号:29および30、配列番号:31および32、配列番号:33および34、配列番号:35および36、配列番号:37および38、配列番号:39および40、配列番号:41および42、配列番号:43および44、配列番号:45および46、配列番号:47および48、配列番号:49および50、配列番号:51および61に示すプライマー対、ならびに表2において配列番号:62〜96、113、および97〜112として示す連続したプライマーを用いて形成されたプライマー対を含む、標的配列に対して特異的なネステッドプライマーを用いてさらに増幅することができる。
増幅された標的配列は、本明細書に開示の、またはそうでなければ当技術分野で既知の様々な周知の方法の任意のものを用いて配列番号:1に関する変化(すなわち変異)を調べることができる。例えば、増幅産物は、特に単一または少数の増幅産物を調べる場合には、日常的なDNA配列決定法を用いて単純に配列決定することができる。しかし、DNA配列決定は、配列決定技術が改善してハイスループットスクリーニングアッセイ法により適合性となるにつれて、本発明の方法に従って変異を検出する方法としてより貴重となると思われる。さらに、DNA配列において変異の有無を検出するために有用な方法には、例えばDHPLC(ヒュバー(Huber)ら、Nucl. Acids Res.21:1061〜10666、1993;リウ(Liu)ら、Nucl. Acids. Res. 26:1396〜1400、1998;チョイ(Choy)ら、Ann. Hum. Genet. 63:383〜391、1999;エリス(Ellis)ら、Hum. Mutat. 15:556〜564、2000、参照として本明細書に組み入れられる;同様に、クリステンセン(Kristensen)ら、上記、2001も参照のこと);一本鎖構造分析(SSCA;オリタ(Orita)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766〜2770、1989);変性勾配ゲル電気泳動(DGGS;シェフィールド(Sheffield)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:232〜236、1989);RNアーゼ保護アッセイ法;対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO;ハンデリン&シュバー(Handelin and Shuber)、「ヒト遺伝子学の現行プロトコール(Current Protocols in Human Genetics)」、補則16(ジョンウィリー&サンズインク、1998)、9:9.4.1〜9.4.8章);大腸菌mutSタンパク質のようなヌクレオチド誤対合を認識するタンパク質の使用;および対立遺伝子特異的PCRが含まれる。
対立遺伝子特異的PCRに関して、特定の変異とその3'でハイブリダイズするプライマーを用いる。対立遺伝子特異的PCRのために用いることができるプライマーの例には、配列番号:1において少なくとも10個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが含まれ、その3'末端に、474位がTであるヌクレオチド;487位がAであるヌクレオチド;3110位がCであるヌクレオチド;8298位がGであるヌクレオチド;9164位がGであるヌクレオチド;9213位がAであるヌクレオチド;9326位がTであるヌクレオチド;9367位がTであるヌクレオチド;10064位がAであるヌクレオチド;10143位がGであるヌクレオチド;10234位がCであるヌクレオチド;10255位がTであるヌクレオチドを有する。特定の変異が存在しない場合、増幅産物は認められない。増幅不応性変異系(ARMS)もまた用いることができる(欧州特許出願番号第0332435号;ニュートン(Newton)ら、Nucl. Acids. Res. 17:2503〜2516、1989を参照のこと)
SSCA、DGGEおよびRNアーゼ保護方法において、明確な電気泳動バンドが現れる。SSCAでは、配列の変化により一本鎖の分子内塩基対形成の差が引き起こされるために、異なる様式で移動するバンドが検出される。RNアーゼ保護は、変異体ポリヌクレオチドを2つまたはそれ以上のより小さい断片に切断することを含む。DGGEは、変性勾配ゲルを用いて、野生型配列と比較して変異配列の移動速度の差を検出する。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドアッセイ法において、特異的配列を検出するオリゴヌクレオチドを設計し、アッセイ法は、ハイブリダイゼーションシグナルの有無を検出することによって行う。mutSアッセイ法において、タンパク質は、変異体と野生型配列のあいだにヘテロ二本鎖におけるヌクレオチド誤対合を含むタンパク質に限って結合する。
変性勾配ゲル電気泳動は、フィッシャー&レーマン(Fischer and Lerman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:1579〜83、1983);マイヤースら(Myers、Nucl. Acids. Res. 13:3111〜3129、1985);レーマンら(Lerman、「ホモ・サピエンスの分子生物学(Molecular Biol. of Homo Sapiens)」、コールドスプリングハーバー研究所(1986)、285〜297頁)によって示されるように、DNA断片の融解挙動と変性勾配ゲル電気泳動とを用いることに基づいている。一塩基置換のために異なるDNA断片は、DNA変性剤である尿素とホルムアミドの増加勾配を含むポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動によって互いに分離することができる。一塩基対のみが異なる二つの同一のDNA断片は、一定速度でポリアクリルアミドゲルの中をまず移動すると思われる。それらが変性剤の臨界的な濃度の中を移動する際に、断片内の特定のドメインが融解して、部分的に変性したDNAを産生する。ドメインの融解は、移動度の突然の減少を伴う。移動度の減少が認められる変性勾配ゲルにおける位置は、そのドメインの融解温度に対応する。融解ドメイン内の一塩基置換によって融解温度の差が起こるために、2つのDNA断片の部分的変性は、ゲル内の異なる位置で起こるであろう。したがって、DNA分子は、融解温度における非常に小さい差に基づいて分離することができる。このDGGEに対するさらなる改善は、米国特許第5,190,856号においてボレセン(Borresen)によって開示されるように行われている。さらに、最初のDGGE分析の後に、同定された産物をクローニング、精製して、DGGEによって二回目の分析を行う。
変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC;クリステンセン(Kristensen)ら、上記、2001)およびハイスループット構造感受性ゲル電気泳動(HTCSGD;ロイング(Leung)ら、上記、2001)は、方法がハイスループット分析に容易に適合されることから、変異型PKD1ポリヌクレオチド配列を検出する特に有用な方法である。さらに、これらの方法は、これまで知られていない変異を同定すると共に既知の変異を検出するために適している。そのため、これらの検出方法は、臨床診断の状況において用いるために採用することができる。例えば、DHPLCは、変性特性に変化を示すものを同定するために、大量の試料、例えば96ウェルマイクロタイタープレート形式を用いて調製した96個の試料を迅速にスクリーニングすることができる。そのような変化が同定されれば、変化した変性特性を示す試料中のPKD1ポリヌクレオチドが変異型PKD1ポリヌクレオチドであるという確認は、望ましい場合にはDNA配列分析によって行うことができる。
変異型PKD1ポリヌクレオチドに対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブはまた、被験者から得た体液、細胞もしくは組織、またはオルガネラ調製物のような細胞分画を含む生体試料中の変異型PKD1ポリヌクレオチドを検出するために用いることができる。変異型PKD1ポリヌクレオチドを同定するために試料として有用な細胞起源には、例えば、腎尿細管上皮細胞を含む腎細胞、胆管細胞、骨格筋細胞、肺胞上皮細胞、胎盤細胞、線維芽細胞およびリンパ球が含まれる。変異型PKD1ポリヌクレオチドを同定するための試料として有用な体液には、例えば、全血、または血清もしくは血漿分画、尿、粘液、および唾液が含まれる。組織または細胞試料のような生体試料は、例えば、細胞吸引、生検、またはその他の外科的技法を含む、臨床の状況において日常的に用いられる任意の方法によって得ることができる。
オリゴヌクレオチドプローブは、試料中の変異型PKD1ポリヌクレオチドに対する結合を検出することができる化合物によって標識することができる。検出可能な化合物は、例えば非常に感度のよい検出手段を提供する放射性標識、または蛍光、発光、化学発光、もしくは酵素的に検出可能な標識等のような非放射性標識となりうる(例えば、マシューズ(Matthews)ら、Anal. Biochem. 169:1〜25、1998を参照のこと)。
検出方法は直接または間接法となりうる。間接的な検出方法は、例えば、ジゴキシゲニンまたはビオチンのようなハプテンまたはリガンドによって標識されるオリゴヌクレオチドプローブを用いることを含みうる。ハイブリダイゼーション後、標的プローブ二本鎖を、抗体またはストレプトアビジン複合体の形成によって検出し、これは西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等のような酵素をさらに含みうる。そのような検出系は、日常的な方法を用いて調製することができ、または市販の起源から得ることができる。例えば、GENIUS検出系(ベーリンガーマンハイム社)は、DNAの変異分析にとって有用であり、オリゴヌクレオチドプローブのタグとしてジゴキシゲニンを、そしてタグをつけたプローブの存在を同定するための試薬として抗ジゴキシゲニン抗体アルカリホスファターゼ結合体を用いる間接法を提供する。
直接検出法は、例えば蛍光標識オリゴヌクレオチド、ランタニドキレート標識オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド酵素結合体を利用することができる。蛍光標識の例には、フルオレセイン、ローダミン、およびフタロシアニン色素が含まれる。ランタニドキレートの例には、ユーロピウム(Eu3+)またはテルビウム(Tb3+)の複合体が含まれる。オリゴヌクレオチド酵素結合体は、標的特異的オリゴヌクレオチドを用いる場合、それらは非常に感度のよい検出を提供することから点突然変異を検出するために特に有用である。オリゴヌクレオチド酵素結合体は、多くの方法によって調製することができる(ジャブロンスキ(Jablonski)ら、Nucl. Acids. Res. 14:6115〜6128、1986;リ(Li)ら、Nucl. Acids. Res. 15:5275〜5287、1987;ゴシュ(Ghosh)ら、Bioconjugate Chem. 1:71〜76、1990)。これらの結合体を用いた標的核酸の検出は、フィルターハイブリダイゼーション法、またはビーズに基づくサンドイッチハイブリダイゼーションによって行うことができる(イシイ(Ishii)ら、Bioconjugate Chem. 4:34〜41、1993)。
標識したオリゴヌクレオチドプローブを検出する方法は当技術分野で周知であり、特定の標識に依存するであろう。放射性同位元素の場合、検出はオートラジオグラフィー、シンチレーション計数、または燐による造影によって行う。ハプテンまたはビオチン標識の場合、検出は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはアルカリホスファターゼのようなレポーター酵素に結合した抗体またはストレプトアビジンによって行い、これを次に酵素的手段によって検出する。蛍光体またはランタニドキレート標識の場合、蛍光シグナルは、時間分解モードによって、もしくは時間分解モードによらず、または自動マイクロタイタープレートリーダーを用いて、分光蛍光計によって測定することができる。酵素標識の場合、検出は色または色素沈着によって、例えば、アルカリホスファターゼの場合にはp-ニトロフェノールホスフェートまたは5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼの場合には3,3'-ジアミノベンジジンNiCl2、アルカリホスファターゼの場合には、4-メチルウンベリルフェリルホスフェートによる蛍光、またはアルカリホスファターゼジオキセタン基質LumiPhos 530(ルミゲンインク、デトロイト、ミシガン州)、またはAMPPDおよびCSPD(トロピクスインク)による化学発光によって行う。化学発光検出は、X線もしくはポラロイドフィルムによって行うことができ、またはアルカリホスファターゼ標識プローブに関する有用な検出様式である単光子計数ルミノメーターを用いることによって、行うことができる。
変異分析はまた、標的DNAまたはRNA分子上で互いに直ちに隣接してアニーリングするオリゴヌクレオチド配列のライゲーションに基づく方法によって行うことができる(ウ&ワラック(Wu and Wallac)、Genomics 4:560〜569、1989;ランドレン(Landren)ら、Science 241:1077〜1080、1988;ニッカーソン(Nickerson)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8923〜8927、1990;バラニー(Barany)、上記、1991a)。リガーゼを介した共有結合は、オリゴヌクレオチドが正確に塩基対を形成した場合に限って起こる。標的増幅のために熱安定なTaqリガーゼを含むリガーゼ連鎖反応(LCR)およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ法(OLA)は、応答信号を有する変異遺伝子座にとって特に有用である。反応温度が上昇することから、ライゲーション反応を高ストリンジェンシーで行うことができる(バラニー(Barany)、PCR Methods and Applications 1:5〜16、1991b;グロスマン(Grossman)ら、Nucl. Acids. Res. 22:4527〜4534、1994、参照として本明細書に組み入れられる)。
DNAにおける点突然変異の分析はまた、PCRおよびその変法を用いることによって行うことができる。誤対合は、完全に対合したプライマーの結合が好ましい場合には、ハイブリダイゼーション条件下で、競合的オリゴヌクレオチドプライミングによって検出することができる(ギブス(Gibbs)ら、Nucl. Acids. Res. 17:2347〜2448、1989)。増幅不応性の変異系技術(ARMS)において、プライマーは内部または3'残基のいずれかで標的配列と完全な対合、または誤対合を有するように設計することができる(ニュートン(Newton)ら、上記、1989)。適当な条件では、完全にアニーリングしたオリゴヌクレオチドのみがPCR反応のプライマーとして機能することができ、このようにして、正常な配列と変異配列とを区別する方法が提供される。
標的核酸における一塩基変異の検出は、配列特異的オリゴヌクレオチドを用いて異なるハイブリダイゼーション技術によって都合よく行うことができる(サグス(Suggs)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6613〜6617、1981;コナー(Conner)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:278〜282、1983;サイキ(Saiki)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230〜6234、1989)。変異は、誤対合プローブと比較して完全に対合したプローブのより高い熱安定性に基づいて診断することができる。ハイブリダイゼーション反応は、標的核酸がニトロセルロース膜またはナイロン膜に固定され、オリゴヌクレオチドプローブによってプロービングされるフィルターに基づく様式で行うことができる。サザンブロット、スロットブロット、逆ドットブロット、溶液ハイブリダイゼーション、固相支持体に基づくサンドイッチハイブリダイゼーション、ビーズに基づく、シリコンチップに基づく、およびマイクロタイターウェルに基づくハイブリダイゼーション様式を含む、任意の既知のハイブリダイゼーション様式を用いることができる。
もう一つの方法は、サンドイッチハイブリダイゼーション法による変異配列の検出である。この方法において、固相支持体に固定された一般的な捕獲オリゴヌクレオチドを用いて、変異体および野生型標的核酸を非相同DNA/RNAから分離して、レポーター標識によってタグをつけた特異的オリゴヌクレオチドプローブによって検出する。捕獲オリゴヌクレオチドはマイクロタイターウェルまたはビーズに固定することができる(ジンジェラス(Gingeras)ら、J. Infect. Dis. 164:1066〜1074、1991;リッチェン(Richen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:11241〜11245、1991)。
PKD1ポリヌクレオチド配列における特異的変異に関して生体試料の分析のためのもう一つの方法(例えば、変異型PKD1ポリヌクレオチド、またはそのオリゴヌクレオチド部分)は、複合プライマー伸長法である。この方法において、プライマーが疑われる変異の3'でハイブリダイズするように、プライマーは、変異を含むことが疑われる核酸とハイブリダイズする。プライマーは、1〜3個のデオキシヌクレオシド三燐酸の混合物の存在下で伸長し、デオキシヌクレオシド三燐酸を停止させる三つの鎖の一つは、野生型の伸長産物、変異DNA由来伸長産物、およびそれぞれのプライマーが異なる長さとなるように選択される。これらの段階は、PCR、またはRT-PCRのように繰り返すことができ、次に、得られたプライマー伸長産物およびプライマーを分子量に基づいて分離し、それによって変異DNA由来伸長産物を同定することができる。
本発明の一つの局面において、OLAは、PKD1ポリヌクレオチド配列の定量的変異分析に応用される(グロスマン(Grossman)ら、上記、1994)。本発明のこの態様において、熱安定リガーゼ触媒反応を用いて、蛍光標識した一般的なプローブを対立遺伝子特異的プローブに結合させる。後者のプローブは、ライゲーション産物に独自の電気泳動移動度を与える非ヌクレオチド移動度修飾因子によって配列がコードされる。
野生型または変異型PKD1配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドは、その5'末端で異なるオリゴマーヌクレオチドまたは非オリゴヌクレオチド修飾因子テールによって合成することができる。ヌクレオチド修飾因子の例は、イノシンまたはチミジン残基であり、非ヌクレオチド修飾因子の例には、ペンタエチレンオキサイド(PEO)およびヘキサエチレンオキサイド(HEO)単量体単位が含まれる。非ヌクレオチド修飾因子が好ましく、最も好ましくはPEOを用いてプローブを標識する。DNA鋳型が存在する場合、熱安定DNAリガーゼは、蛍光標識を有する一般的なプローブに対する正常および変異プローブのライゲーションを触媒する。PEOテールは、電気泳動ゲルにおけるライゲーション産物の移動度を修飾する。PEOテールと蛍光体標識(TETおよびFAM(5-カルボキシ-フルオレセイン誘導体))、HEXおよびJOE(6-カルボキシ-フルオレセイン誘導体)、ROX(6-カルボキシ-x-ローダミン)、またはTAMRA(N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシ-ローダミン;パーキンエルマー社、ABI部門、フォスターシティ、カリフォルニア州)とを組み合わせると、ライゲーション産物に対する独自の電気泳動特徴を提供することによってサイズおよび色に基づいて多数の分析を行うことができる。産物は、電気泳動によって分離して、野生型および変異産物に関連した蛍光強度を用いて、ヘテロプラズモン性を定量する。このように、野生型配列および変種を含む変異配列を、ライゲーション産物のサイズおよび蛍光強度に基づいて検出して定量する。この方法はさらに、単一のライゲーション反応において多数のPKD1ポリヌクレオチド変異を定量的に検出するように形成することができる。
誤対合検出または変異分析はまた、誤対合特異的DNAインターカレート剤を用いて行うことができる。そのような物質は、誤対合を有する部位でインターカレートした後、ポリアクリルアミドもしくはアガロースゲル上での可視化または電気触媒を行う。したがって、PKD1ポリヌクレオチド配列は、PKD1変異に対して特異的なプローブ、またはPKD1ポリヌクレオチドとプローブとがハイブリダイズするような条件下で、特異的変異を有する領域に関して野生型であるプローブに対して特異的なプローブと接触させることができる。次に、ハイブリダイズした配列を誤対合インターカレート剤と接触させ、例えばゲル上で分離する。ゲル上で可視化したバンドは、誤対合を有する配列に対応する。プローブが野生型プローブである場合、誤対合は、標的PKD1配列が誤対合を含む場合に起こると考えられる。プローブが変異した配列に特異的である場合、誤対合は標的PKD1配列が野生型である場合に存在するが、プローブ配列が同じ変異を含むPKD1配列とハイブリダイズする場合には、ハイブリダイズしたまたは二本鎖配列は誤対合を含まないと考えられる。
OLAを用いたPKD1変異の定量的分析に関して、オリゴヌクレオチドプローブは好ましくは、分光的に識別可能な特徴を提供する蛍光体標識によって標識する。一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、5'オリゴマーPEOテールによって標識する。そのような5'標識オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、標準的なホスホロアミダイト化学を用いて自動合成機を用いて行うことができる。樹脂から切断して水酸化アンモニウムによって脱保護した後、(PEO)n-オリゴヌクレオチドを、逆相HPLCによって精製することができる。3'-FAMまたはTET色素(パーキンエルマー社)を有するオリゴヌクレオチドおよび5'-ホスフェートを合成して、グロスマンら(Grossman、上記、1994)の技法によって精製することができる。5'-PEO標識プローブは、サイズによって電気泳動的に、および蛍光体標識のスペクトル特徴の双方によって、ライゲーションしたプローブ産物の区別を容易にするために異なる長さの5'-PEOテールを有するように合成することができる。
オリゴヌクレオチドプローブは、ADPKDのようなPKD1関連障害を示すことができる変異型PKD1ポリヌクレオチドを同定するために用いることができる。好ましくは、プローブは、474位がTであるヌクレオチド;487位がAであるヌクレオチド;3110位がCであるヌクレオチド;8298位がGであるヌクレオチド;9164位がGであるヌクレオチド;9213位がAであるヌクレオチド;9326位がTであるヌクレオチド;9367位がTであるヌクレオチド;10064位がAであるヌクレオチド;10143位がGであるヌクレオチド;10234位がCであるヌクレオチド;10255位がTであるヌクレオチドから選択される、配列番号:1の1つまたは複数のヌクレオチドの位置に対して特異的である。OLAアッセイ法のためのオリゴヌクレオチドプローブは、ライゲーション反応を約40℃〜60℃の温度範囲、典型的に約45℃〜約55℃で行うことができるように、隣接ヌクレオチド法により典型的に約40℃〜50℃、一般的に約48℃の計算された融解温度を有するように設計される(ブレスラウア(Breslaur)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9373〜9377、1986)。野生型および変種を含む変異型オリゴヌクレオチドプローブは、PEOオリゴマーテールとTETおよびFAMのようなフルオレセイン色素との様々な組み合わせによって合成することができる。移動度修飾因子と蛍光体標識とをこのように組み合わせると、単一のライゲーション反応において2つまたはそれ以上のPKD1ヌクレオチド部位のモニタリングを可能にする電気泳動的に独自のライゲーション産物が供給される。
一つの態様において、被験者におけるPKD1関連障害を診断する方法は、PKD1関連障害を有することが疑われる被験者からの核酸試料において、請求項3に記載のプライマー対である第1のプライマー対とPKD1ポリヌクレオチドの一部を増幅して、第1の増幅産物を得る段階;第1の増幅産物のネスティド増幅を行うために適している少なくとも1つの第2のプライマー対と第1の増幅産物を増幅して、ネスティド増幅産物を得る段階;およびPKD1関連障害に関連した変異の存在によってPKD1関連障害が示され、それによって被験者におけるPKD1関連障害が診断される、ネスティド増幅産物がPKD1関連障害に関連する変異を有するか否かを決定する段階によって行われる。方法は、配列番号:3および4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、配列番号:9および10、配列番号:11および12、配列番号:13および14、配列番号:15および16、ならびに配列番号:17および18;ならびにそれらの組み合わせから選択される第1のプライマー対と、配列番号:19および20、配列番号:21および22、配列番号:23および24、配列番号:25および26、配列番号:27および28、配列番号:29および30、配列番号:31および32、配列番号:33および34、配列番号:35および36、配列番号:37および38、配列番号:39および40、配列番号:41および42、配列番号:43および44、配列番号:45および46、配列番号:47および48、配列番号:49および50、配列番号:51および61;配列番号:62および63;配列番号:64および65;配列番号:66および67;配列番号:68および69;配列番号:70および71;配列番号:72および73;配列番号:74および75;配列番号:76および77;配列番号:78および79;配列番号:80および81;配列番号:82および83;配列番号:84および85;配列番号:86および87;配列番号:88および89;配列番号:90および91;配列番号:92および93;配列番号:94および95;配列番号:96および113;配列番号:97および98;配列番号:99および100;配列番号:101および102;配列番号:103および104;配列番号:105および106;配列番号:107および配列番号:108;配列番号:109および110、または配列番号:111および112、ならびにそれらの組み合わせから選択される第2のプライマー対とを用いて行うことができる。
もう一つの態様において、被験者におけるPKD1関連障害を診断する方法は、PKD1関連障害を有することが疑われる被験者からの核酸試料において、第1のプライマー対とPKD1ポリヌクレオチドの一部を増幅して、第1の増幅産物を得る段階;第2のプライマー対と第1の増幅産物を増幅して、第2の増幅産物を得る段階;および変異が、配列番号:1において、3110位のヌクレオチドがCであり;3336位のヌクレオチドが欠失しており;3707位のヌクレオチドがAであり;5168位のヌクレオチドがTであり;6078位のヌクレオチドがAであり;6089位のヌクレオチドがTであり;6326位のヌクレオチドがTであり;7205位〜7211位のヌクレオチドが欠失しており;7415位のヌクレオチドがTであり;7433位のヌクレオチドがTであり;7883位のヌクレオチドがTであり;または8159位〜8160位のヌクレオチドが欠失しており;8298位のヌクレオチドがGであり;9164位のヌクレオチドがGであり;9213位のヌクレオチドがAであり;または9326位のヌクレオチドがTであり;10064位のヌクレオチドがAであり;または7535位と7536位のヌクレオチドの間にGCGヌクレオチドが挿入されており、またはそれらの組み合わせである、第2の増幅産物の変異を検出することによって、被験者におけるPKD1関連障害を診断する段階によって行われる。
本発明はまた、PKD1関連障害を有する、または有するリスクがある被験者を特定する方法を提供する。そのような方法は、例えば、プライマー対によるPKD1ポリヌクレオチドの増幅に適した条件下で本発明の少なくとも一つのプライマー対を、被験者からの試料における核酸分子と接触させ、それによってPKD1特異的増幅産物を生じる段階;および変異が存在しなければ、被験者がPKD1関連障害を有しない、またはPKD1関連障害のリスクを有しないと同定され、変異が存在すれば、被験者がPKD1関連障害を有する、またはPKD1関連障害のリスクを有すると同定される、PKD1関連障害を示す変異の有無に関して増幅産物を調べる段階を含むことによって行うことができる。プライマー対は、例えば、配列番号:3および4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、配列番号:9および10、配列番号:11および12、配列番号:13および14、配列番号:15および16、ならびに配列番号:17および18から選択することができる。PKD1関連障害は、常染色体優性腎嚢胞疾患、後天性嚢胞疾患、またはその他のPKD1関連障害となりえて、被験者は例えば、脊椎動物、特にヒト被験者となりうる。
そのような方法は、ハイスループット様式に特に適合させることができ、望ましい場合にはPKD1特異的増幅産物を、第2のプライマー対によるPKD1特異的増幅産物のネスティド増幅に適した条件下で、少なくとも1つの第2のプライマー対に接触させ、それによってネスティド増幅産物を生成する段階、次に、PKD1関連障害を示す変異の有無に関してネスティド増幅産物を試験する段階を含みうる。第2のプライマー対は、PKD1特異的増幅産物のネスティド増幅に適した任意のプライマー対ともなりえて、例えば、プライマー対は、配列番号:19および20、配列番号:21および22、配列番号:23および24、配列番号:25および26、配列番号:27および28、配列番号:29および30、配列番号:31および32、配列番号:33および34、配列番号:35および36、配列番号:37および38、配列番号:39および40、配列番号:41および42、配列番号:43および44、配列番号:45および46、配列番号:47および48、配列番号:49および50、配列番号:51および61;配列番号:62および63;配列番号:64および65;配列番号:66および67;配列番号:68および69;配列番号:70および71;配列番号:72および73;配列番号:74および75;配列番号:76および77;配列番号:78および79;配列番号:80および81;配列番号:82および83;配列番号:84および85;配列番号:86および87;配列番号:88および89;配列番号:90および91;配列番号:92および93;配列番号:94および95;配列番号:96および113;配列番号:97および98;配列番号:99および100;配列番号:101および102;配列番号:103および104;配列番号:105および106;配列番号:107および配列番号:108;配列番号:109および110、または配列番号:111および112、ならびにそれらの組み合わせから選択される。
変異の有無に関して増幅産物を調べることは、核酸分子を調べるための様々な周知の方法を用いて行うことができる。例えば、増幅産物のヌクレオチド配列を決定して、これを配列番号:1の対応するヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と比較することができる。増幅産物はまた、増幅産物の融解温度を測定する段階、および配列番号:1の対応するヌクレオチド配列の融解温度に対して融解温度を比較する段階によって調べることができる。融解温度は例えば、変性高速液体クロマトグラフィーを用いて決定することができる。
ネスティド増幅を行う場合、方法は、PKD1特異的増幅産物を少なくとも1つの第2のプライマー対セットに接触させる前に、ゲノムDNAによってPKD1特異的増幅産物の汚染を除去するように向けられる段階を含みうる。例えば、PKD1特異的増幅産物の汚染は、PKD1特異的増幅産物を希釈することによって減少させることができる。
PKD1関連障害を示す変異は、例えば、3110位のヌクレオチドがCであり;8298位のヌクレオチドがGであり;9164位のヌクレオチドがGであり;9213位のヌクレオチドがAであり;9326位のヌクレオチドがTであり;もしくは10064位のヌクレオチドがAであり;3336位のヌクレオチドが欠失している、配列番号:1と実質的に同一であるヌクレオチド配列;3707位のヌクレオチドがAであり;5168位のヌクレオチドがTであり;6078位のヌクレオチドがAであり;6089位のヌクレオチドがTであり;6326位のヌクレオチドがTであり;7205位〜7211位のヌクレオチドが欠失しており;7415位のヌクレオチドがTであり:7433位のヌクレオチドがTであり;7883位のヌクレオチドがTであり;または8159位〜8160位のヌクレオチドが欠失しており;または7535位と7536位のヌクレオチドの間にGCGヌクレオチド配列が挿入されている、配列番号:1と実質的に同一であるヌクレオチド配列となりうる。
例えばPKD1特異的増幅産物またはネスティド増幅産物を含む本発明の方法に従って産生された増幅産物となりうる増幅産物におけるPKD1関連障害を示す変異の有無を検出する段階に従って回収されたデータは、例えば、被験者がPKD1関連障害のリスクがあるか否かを決定することを容易にする形状にフォーマットすることができる。そのため、データは被験者がPKD1関連障害のリスクを有するか否かを示す報告書にフォーマットすることができる。報告書は例えば、コンピューターのランダムアクセスまたは読み出し専用メモリに含まれる書式を含む様々な如何なる書式ともなりえて、またはディスケット、CD、DVD、磁気テープに保存してもよく;コンピューターのモニターのようなビジュアルディスプレイまたはブラウン管もしくは液晶ディスプレイに示してもよく;または紙に印刷してもよい。さらに、報告書にフォーマットすることができるデータは、情報に関心を抱くまたは関与するユーザーに伝達することができる。データまたは報告書は、例えば、データまたは報告書の書式に応じて、インターネットによって、ファクシミリまたは郵便によって都合のよい媒体を用いて伝達することができる。
変異型PKD1ポリヌクレオチドを含むことが疑われる試料を、オリゴヌクレオチドを変異型PKD1オリゴヌクレオチドと選択的にハイブリダイズさせる条件下で、本発明のオリゴヌクレオチドに接触させる段階;およびオリゴヌクレオチドと変異型PKD1ポリヌクレオチドとの選択的ハイブリダイゼーションを検出し、それによって試料中の変異型PKD1ポリヌクレオチド配列の有無を検出する段階によって、試料中の変異型PKD1ポリヌクレオチドの存在を検出する方法も同様に提供される。もう一つの態様において、例えば、抗体を変異型PKD1ポリペプチドに特異的に結合させる条件下で、変異型PKD1ポリペプチドを含むことが疑われる試料を本発明の抗体と接触させる段階、および試料中の抗体と変異型PKD1ポリペプチドとの特異的結合を検出し、それによって、試料中の変異型PKD1ポリペプチドの存在を検出する段階によって、試料中における変異型PKD1ポリペプチドの存在を検出する方法が提供される。変異型PKD1ポリペプチドは、例えば、実質的に配列番号:2に記載され、A88V、W967R、L2696R、R2985G、W3001X 、R3039C、V3285I、H3311Rの変異、またはそれらの組み合わせを有する配列を有しうる(同様に、表4を参照のこと)。
野生型もしくは変異型PKD1ポリペプチド、またはそのペプチド部分に特異的に結合することができる抗体もまた、ADPKD診断試薬として用いることができる。そのような試薬は、変異型PKD1ポリペプチドまたはPKD1タンパク質の異常な細胞内位置の検出を含む、異常なPKD1タンパク質の発現またはPKD1タンパク質発現の異常なレベルを検出することができる診断方法を提供する。例えば、野生型PKD1タンパク質と比較した変異型PKD1タンパク質の大きさ、電気的陰性、または抗原性の差を検出することができる。
変異型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分を検出するための診断方法は、例えば、変異型PKD1ポリペプチドのエピトープが抗PKD1特異的抗体(例えば、抗変異型PKD1特異的抗体)との相互作用によって検出される免疫アッセイ法を含みうる。例えば、変異型PKD1ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、野生型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチドに結合しない。それに対して抗体を作製することができるPKD1の特定のエピトープには、配列番号:2と実質的に同一であり、88位がVであるアミノ酸残基;967位がRである残基;2696位がRである残基;2985位がGである残基;3039位がCである残基;3285位がIである残基;または3311位がRである残基;または3001位の残基が存在せず、変異型PKD1ポリペプチドが、コードされた変異型PKD1ポリヌクレオチドに停止コドンが存在することにより切断される場合に、3000位のアミノ酸残基を含むC末端ペプチドを含む、少なくとも5個のアミノ酸を有するペプチドが含まれる。
上記のような抗体または抗体断片は、本発明において有用であり、例えば、野生型または変異型PKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分の存在を定量的または定性的に検出するために用いることができる。これは、例えば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光測光検出と組み合わせた蛍光標識抗体(下記参照)を用いて、免疫光度技術によって行うことができる。
本発明において有用な抗体(またはその断片)は、さらに、PKD1ポリペプチド、ペプチド、その変種、またはその変異体をインサイチューで検出するために、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡において、組織学的に用いることができる。検出は、被験者から組織学標本を採取して、それを本発明の標識抗体に適用することによって行うことができる。ADPKDを示すことが疑われる組織から組織学試料を採取することができる。抗体(または断片)は、好ましくは、標識抗体(または断片)を生体試料に重層することによって適用する。そのような技法を用いることによって、調べた組織におけるPKD1ポリペプチドの存在のみならず、その分布も決定することが可能である。そのようなインサイチュー検出を得るために、本発明を用いて、当業者は、任意の多様な組織学的方法(染色技法など)を改変することができることを容易に認識すると思われる。
野生型または変異体PKD1ポリペプチドまたはそのペプチド部分の免疫アッセイ法は典型的に、体液、組織抽出物、新鮮に採取した細胞、または組織培養においてインキュベートした細胞のような生体試料を、PKD1ポリペプチド、変異型PKD1ポリペプチド、およびそのペプチド部分を同定することができる検出可能に標識した抗体の存在下でインキュベートする段階、ならびに当技術分野で周知の多くの技術によって、結合した抗体を検出する段階を含む。生体試料は、ニトロセルロースのような固相支持体もしくは担体、または細胞、細胞粒子、もしくは可溶性タンパク質を固定することができるその他の固相支持体に接触させて、それらの上に固定することができる。次に、支持体を適した緩衝液によって洗浄した後、検出可能に標識した変異型PKD1特異的抗体による処理を行うが、好ましくは作製したを認識する抗体には、配列番号:2と実質的に同一であり、88位がVであるアミノ酸残基、967位がRである残基;2696位がRである残基;2985位がGである残基;3039位がCである残基;3285位がIである残基;または3311位がRである残基;または3001位の残基が存在せず、変異型PKD1ポリペプチドが、コードされた変異型PKD1ポリヌクレオチドに停止コドンが存在することにより切断されている3000位のアミノ酸残基を含むC末端ペプチドを含む、少なくとも5個のアミノ酸を有するペプチドが含まれる(同様に、表4を参照のこと)。次に、固相支持体を緩衝液によって2回洗浄して未結合の抗体を除去することができ、固相支持体上の結合した標識の量は、標識に関して特異的な従来の手段によって検出することができる。
「固相支持体」または「担体」は、抗原または抗体に結合することができる任意の支持体でありうる。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、およびマグネタイトが含まれる。担体の性質は、本発明の目的に関してある程度可溶性、または不溶性のいずれかとなりうる。支持体材料は、連結した分子が抗原または抗体に結合することができる限り、実質的に如何なる可能性のある構造的立体配置も有しうる。このように、支持体の立体配置は、ビーズのように球状、または試験管の内表面もしくは棒の外表面のような円柱状となりうる。または、表面は、シート、試験片等のように平坦となりうる。当業者は、抗体または抗原に結合するために多くの他の適した担体を認めており、または日常的な実験を用いることによって同じことを確認することができると思われる。
抗変異型PKD1抗体の所定のロットの結合活性は、周知の方法に従って決定することができる。当業者は、日常的な実験を用いることによって、それぞれの定量にとって操作的で最適なアッセイ法条件を決定することができると思われる。変異型PKD1特異的抗体が検出可能に標識される方法の一つは、抗体を酵素に結合させて、酵素免疫アッセイ法において酵素標識抗体を用いることである(EIA;ボラー(Voller)、「酸素結合免疫吸着アッセイ法(The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」;Diagnostic Horizons 2:1〜7、1978;微生物アソシエーツクオータリー出版、ウォーカースビル、メリーランド州);ボラー(Voller)ら、J. Clin. Pathol. 31:507〜520、1978;バトラー(Butler)、Meth. Enzymol. 73:482〜523、1981;マジオ(Maggio)編、「酵素免疫アッセイ法(Enzyme Immunoassay)」、CRC出版、ボカラートン、フロリダ州、1980;イシカワ(Ishikawa)ら編、「酵素免疫アッセイ法(Enzyme Immunoassay)」、カガクショイン、東京、1981)。抗体に結合する酵素は、例えば分光光度計、分光蛍光系、または視覚的手段によって検出することができる化学部分を産生するような方法で、適当な基質、好ましくは発色基質と反応すると思われる。
抗体を検出可能に標識するために用いることができる酵素には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-燐酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれるがこれらに限定されない。検出は、酵素の色素発生基質を用いる比色法によって行うことができる。検出はまた、同様に調製した標準物質と比較して基質の酵素反応の程度の視覚的な比較によって行うことができる。さらに、検出は、例えば、抗体または抗体断片を放射性標識する段階、および放射性免疫アッセイ法(RIA;例えば、ワイントラウブ(Weintraub)、「放射性免疫アッセイ法の原理、放射性リガンドアッセイ技術の7日間訓練コース(Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques)」、内分泌学会、1986年3月、参照として本明細書に組み入れられる)を用いてPKD1野生型または変異体ペプチドを検出する段階を含む、多様な他の免疫アッセイ法の任意のものを用いて行うことができる。放射性同位元素は、γカウンターもしくはシンチレーションカウンターを用いるような手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
抗体はまた、蛍光化合物によって標識することができる。蛍光標識した抗体を適当な波長の光に暴露する場合、次にその存在を蛍光によって検出することができる。最も一般的に用いられる蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、およびフルオレスカミンである。抗体は152Eu、またはランタノイドシリーズの他の金属のような蛍光放出金属を用いて検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化群を用いて、抗体に結合させることができる。
抗体はまた、化学発光化合物にそれを連結させることによって検出可能に標識することができる。次に、化学発光タグをつけた抗体の存在を、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することによって決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩および蓚酸エステルである。同様に、生物発光化合物を用いて本発明の抗体を標識することができる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の有効性を増加させる生物系において認められる化学発光のタイプである。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識の目的にとって重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンである。
インビトロ系は、本発明の変異型PKD1ポリヌクレオチドを結合させることができる化合物を同定するために設計することができる(例えば、配列番号:1と実質的に同一である配列を有し、C474T;G487A;T3110C;T8298G;A9164G;G9213A;C9326T;C9367T;G10064A;A10143G;T10234G;またはG10255Tのような変異を有するポリヌクレオチド)。そのような化合物には、例えばランダムペプチドライブラリーの形でのD型および/またはL型アミノ酸で構成されたペプチド(例えば、ラム(Lam)ら、Nature 354:82〜84、1981を参照のこと)、例えば、ランダムもしくは部分的縮重の定方向ホスホペプチドライブラリーの形でのホスホペプチド(例えば、ソンヤン(Songyang)ら、Cell 72:767〜778、1993)、抗体、および小型または大型の有機または無機分子が含まれるがこれらに限定されない。同定された化合物は、例えば、PKD1タンパク質、変種、または変異体の活性を調節するために有用となりうる。例えば、本発明の変異型PKD1ポリペプチドは、PKD1タンパク質の生物機能を形成するために有用となりうる。そのような変異体は、正常なPKD1相互作用を破壊する化合物を同定するためのスクリーニングにおいて利用することができ、またはそのような相互作用をそれ自身破壊することができる。
変異型PKD1タンパク質に結合する化合物を同定するために用いられるアッセイ法の原理は、変種を含む変異体となりうるPKD1タンパク質と試験化合物との反応混合物を二つの化合物が相互作用するために十分な条件および時間で調製する段階、その後相互作用産物(複合体)を単離する段階、または反応混合物における複合体を検出する段階を含む。そのようなアッセイ法は、不均一または均一な様式において行うことができる。不均一なアッセイ法は、PKD1または試験物質を固相に結合させ、反応終了時に固相に結合したPKD1試験物質複合体を検出することを含む。均一なアッセイ法では、反応全体を液相で行う。いずれのアプローチにおいても、反応物質を加える順序は、調べる化合物に関する異なる情報を得るために変化させることができる。
さらに、タンパク質とタンパク質の相互作用に適した方法を、本発明の変異体または変種PKD1ポリペプチドに基づいて新規PKD1細胞または細胞外タンパク質相互作用を同定するために用いることができる。例えば、用いることができるいくつかの従来の方法は、同時免疫沈降、架橋、および勾配またはクロマトグラフィーカラムを通しての同時精製である。さらに、標的タンパク質と相互作用するタンパク質をコードする遺伝子が同時に同定される方法を用いることができる。これらの方法には、例えばλgtライブラリーの抗体プロービングと類似の方法で、このタンパク質を用いて、標識した標的タンパク質による発現ライブラリーのプロービングすることが含まれる。インビボでタンパク質相互作用を検出するそのような一つの方法は、酵母のツー・ハイブリッド系である。この系の一つが記載されており(チエン(Chien)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578〜9582、1991)、市販の試薬を用いて行うことができる(クロンテック社、パロアルト、カリフォルニア州)。
本発明のPKD1ポリペプチド(例えば変種または変異体)は、インビボで1つまたは複数の細胞または細胞外タンパク質と相互作用することができる。そのような細胞タンパク質は、本明細書において「結合パートナー」と呼ばれる。そのような相互作用を破壊する化合物は、PKD1ポリペプチド、特に変異型PKD1ポリペプチドの活性を調節するために有用となりうる。そのような化合物には、例えば、抗体、ペプチド、ペプチド模倣物等のような分子が含まれる。
ADPKD症状が、異常な活性を有するPKD1ポリペプチドを産生するPKD1ポリヌクレオチド内の変異に関連している場合(例えば、T3110C;T8298G;A9164G;G9213A;C9326T;G10064A等で変異を有する配列番号:1;実施例2を参照のこと)、したがって、そのような活性を破壊すると同定された化合物は、異常なPKD1活性を阻害して、それぞれ、ADPKD1関連症状またはADPKD疾患を減少または治療することができる(表4を参照のこと)。例えば、変異型PKD1ポリペプチドと細胞または細胞外タンパク質、例えばPKD2遺伝子産物との相互作用を破壊するが、正常なPKD1タンパク質の相互作用には実質的な影響を及ぼさない化合物を同定することができる。そのような化合物は、正常なPKD1タンパク質を含むアッセイ法において相互作用を破壊する化合物の有効性を、変異型PKD1ポリペプチドを含むアッセイ法、例えばツー・ハイブリッドアッセイ法の有効性とを比較することによって同定することができる。
PKD1タンパク質、好ましくは変異型PKD1タンパク質とその細胞または細胞外タンパク質結合パートナーとの相互作用を妨害する化合物を同定するために用いられるアッセイ系の基本原理は、PKD1タンパク質と結合パートナーとを含む反応混合物を、2つのタンパク質が相互作用または結合して、このように複合体を形成するために十分な条件および期間で調製することを含む。阻害活性に関して化合物を調べるために、反応を試験化合物の存在下または非存在下で行う、すなわち試験化合物は、反応混合物に予め含めることができるか、またはPKD1とその細胞もしくは細胞外結合パートナーを加えた後に一度に加えることができる;対照は試験化合物を含まずに、またはプラセボと共にインキュベートする。次に、PKD1タンパク質と細胞または細胞外結合パートナーとの如何なる複合体の形成も検出する。対照反応において複合体または相互作用が形成されるが、試験化合物を含む反応混合物では形成されなければ、化合物がPKD1タンパク質と結合パートナーとの相互作用を妨害することを示している。上記のように、試験化合物と正常なPKD1タンパク質とを含む反応混合物内での複合体形成または成分の相互作用も同様に、試験化合物と変異型PKD1タンパク質とを含む反応内で複合体形成または成分の相互作用を比較することができる。この比較は、変異体の相互作用を破壊するが、正常なPKD1タンパク質の相互作用は破壊しない化合物を同定するために望ましい場合には重要となりうる。
上記のアッセイ系において同定された化合物を含むがこれらに限定されない任意の結合化合物を、抗ADPKD活性に関して調べることができる。常染色体優性障害であるADPKDは、野生型PKD1対立遺伝子の過小発現、またはほとんどもしくは全くPKD1活性を示さないPKD1ポリペプチドの発現を含みうる。そのような場合、たとえPKD1ポリペプチドが存在しても、存在する正常なPKD1ポリペプチドの全体的なレベルは不十分であり、ADPKD症状が起こる。そのため、正常なPKD1ポリペプチドの発現レベルがADPKD症状が改善されるレベルまで増加することは有用となると考えられる。さらに、この用語は、細胞における正常なPKD1活性のレベルが、ADPKD症状が改善されるレベルまで増加することを意味しうる。
PKD1発現、合成および/または活性を阻害する同定された化合物を、腎嚢胞疾患を治療するために治療的に有効な用量で患者に投与することができる。治療的に有用な用量とは、それによって腎嚢胞疾患の症状の改善を得るために十分な化合物の量を意味する。そのような化合物の毒性および治療的有効性は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的技法によって決定することができる。毒性と治療効果のあいだの用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表記することができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を用いることができるが、非感染細胞に対する起こりうる障害を最小限にして、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を罹患組織部位に標的化する送達系を設計するために注意しなければならない。
細胞培養アッセイ法および動物試験から得たデータはヒトにおける使用のために用量範囲を決定するために用いることができる。そのような化合物の用量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を示さないED50を含む循環濃度の範囲内である。用量は、用いる投与剤形および利用する投与経路に依存してこの範囲内で変化しうる。本発明の方法において用いられる如何なる化合物に関しても、治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイ法から最初に推定することができる。用量は、細胞培養において決定したIC50(すなわち、症状の半最大阻害を得る試験化合物の濃度)を含む循環中の血漿濃度範囲が得られるように、動物モデルにおいて決定することができる。そのような情報を用いて、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。用量を最適にするために用いることができるさらなる要因には、例えば、年齢、体重、および患者が同様に示しうる可能性があるさらなる障害と共に、ADPKD症状の重症度のような要因を含めることができる。当業者は、上記の要因に基づいて適当な用量を決定することができると思われる。
本発明に従って用いられる薬学的組成物は、1つまたは複数の生理的に許容される担体または賦形剤を用いて従来の方法で調製することができる。このように、化合物およびその生理的に許容される塩および溶媒化合物は、吸入(口または鼻のいずれかから)、または経口、頬、非経口、または直腸投与によって投与するために調製することができる。
経口投与の場合、薬学的組成物は、例えば、結合剤(例えば、予めゼラチン処理したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース、または燐酸水素カルシウム);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸エステルナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような、薬学的に許容される賦形剤と共に、従来の手段によって調製した錠剤またはカプセル剤の形となりうる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングすることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液の形となりえて、またはそれらは使用前に水もしくは他の適した溶媒によって溶解するための乾燥製品として存在しうる。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用油脂);乳化剤(例えばレシチンまたはアカシア);非水性溶媒(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、もしくは精留した植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)のような薬学的に許容される添加剤と共に従来の手段によって調製することができる。調製物はまた、適当な場合には、緩衝塩、着香料、着色料、および甘味料を含みうる。
経口投与のための調製物は、活性化合物の制御された放出が得られるように製剤化することができる。バッカル剤を投与する場合、組成物は、従来の方法で製剤化した錠剤またはトローチ剤の形となりうる。
吸入によって投与する場合、本発明に従って用いられる化合物は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適した気体のような適した噴射剤を用いて、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー剤形において送達することが都合がよい。加圧式エアロゾルの場合、用量単位は、一定量を送達するための弁を提供することによって決定することができる。化合物と、乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤とを含む、吸入器において用いるための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジを、製剤化することができる。
化合物は、例えば大量注射または連続注入による、注射によって非経口投与するために調製することができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば、保存剤を添加したアンプルまたは多用量容器の形となりうる。組成物は、油性または水性溶媒中での懸濁液、溶液、または乳剤のような形となりえて、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような処方用物質を含みうる。または、活性成分は、使用前に適した溶媒、例えば滅菌発熱物質不含水によって溶解するための粉末の形となりうる。組成物はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む、坐剤または浣腸のような直腸組成物に調製することができる。
先に記載した処方の他に、化合物はまた、デポー調製物として調製することができる。そのような長時間作用型の製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)、または筋肉内注射によって投与することができる。このように、例えば、化合物は、適したポリマー、疎水性物質(例えば、許容される油中での乳剤として)、もしくはイオン交換樹脂と共に、または水溶性の低い誘導体、例えば、水溶性の低い塩として調製することができる。
組成物は、望ましい場合には、活性成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含むパックまたはディスペンサー装置の形状となりうる。パックは例えば、金属もしくはプラスチックホイル、またはブリスタパックを含みうる。パックまたはディスペンサー装置は、投与説明書を添付することができる。
または、ADPKDは、PKD1タンパク質の異常な変異体型の産生によって引き起こされうるが、この変異体型は、正常な対立遺伝子産物を妨害するか、または新規機能を細胞に導入し、次に変異体表現型に至る。例えば、変異型PKD1タンパク質は、細胞の内部または外部でシグナルを遅らせるために必要な物質の結合に関して野生型タンパク質と競合することができる。
抗ADPKD活性を示す化合物を同定するための細胞に基づく、および動物モデルに基づくアッセイ法もまた、本発明に含まれる。変異型PKD1ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1に記載の配列と実質的に同一であり、C474T;G487A;T3110C;T8298G;A9164G;G9213A;C9326T、C9367T;G10064A;A10143G;T10234G;G10255T等の1つまたは複数の変異を有する配列;実施例2を参照のこと)を含み、これらを発現する細胞は、変異型PKD1ポリペプチドをコードし、このように、ADPKDに関連する細胞表現型を示すが、これらを用いて抗ADPKD活性を有する化合物を同定することができる。そのような細胞には、変異体を発現する、または正常および変異型PKD1ポリペプチドの双方を発現する天然に存在する、または操作された細胞からなる細胞株が含まれうる。そのような細胞には、初代および不死化ヒト腎尿細管細胞を含む腎上皮細胞、MDCK細胞、LLPCK1細胞、およびヒト腎癌細胞が含まれるがこれらに限定されない。野生型または変異体タンパク質をコードするPKD1ポリヌクレオチド配列によって細胞を形質転換する方法は上記の通りである。
ADPKD様細胞表現型を示す細胞を、暴露した細胞において抗ADPKD1活性を誘発するために十分な濃度と十分な時間、抗ADPKD活性を示すことが疑われる化合物に暴露することができる。暴露後、細胞を調べて、1つまたは複数のADPKD様細胞表現型が野生型の非ADPKD表現型により類似するように変化しているか否かを決定する。
上記のアッセイ法において追跡することができる細胞表現型では、膜タンパク質の先端/基底外側分布に差を認める。例えば、正常(すなわち、非ADPKD)腎尿細管は、インサイチューおよび培養において、既定の条件で、細胞表面マーカーの先端/基底外側分布の特徴的なパターンを有する。ADPKD腎細胞は、対照的に、正常な分布と比較して部分的に逆の先端/基底外側極性を反映する分布パターンを示す。例えば、ナトリウム-カリウムATPアーゼは一般的に、腎上皮細胞の基底外側の膜に認められるが、同様に、インビボで嚢胞性上皮および培養したADPKD細胞の双方では、ADPKD上皮細胞の先端表面にも認めることができる(ウィルソン(Wilson)ら、Am. J. Physiol. 260:F420〜F430、1991)。正常な細胞とADPKD罹患細胞において極性の変化を示すもう一つのマーカーは、EGF受容体であり、これは通常基底外側に存在するが、ADPKD細胞では、先端表面に誤って存在する。そのような先端/基底外側マーカー分布表現型は、例えば、対象となるマーカーに対して特異的抗体を用いて、標準的な免疫組織学技術によって追跡することができる。
PKD1の機能に関するアッセイ法にはまた、上皮細胞増殖の脱調節が嚢胞の形成における重要な段階となりうるため、細胞の増殖またはアポトーシスの速度の測定が含まれうる。嚢胞は、過増殖および高アポトーシスである上皮細胞が内側に並ぶ液体に満ちた構造である(イーバン(Evan)ら、Kidney International 16:743〜750、1979;コバックス&ゴンバ(Kovacs and Gomba)、Kidney Blood Press. Res. 21:325〜328、1998;ラノックス(Lanoix)ら、Oncogene 13:1153〜1160、1996;ウー(Woo)、New Engl. J. Med. 333:18〜25、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。嚢胞上皮は、PCNA染色によって測定すると、インビボで高い分裂速度を有し(ナダスディ(Nadasdy)ら、J. Am. Soc. Nephrol. 5:1462〜1468、1995、参照として本明細書に組み入れられる)、他の増殖マーカーの発現レベルが増加する(クリンゲル(Klingel)ら、Amer. J. Kidney Dis. 19:22〜30、1992、参照として本明細書に組み入れられる)。さらに、ADPKD嚢胞腎からの培養細胞は、インビトロでの増殖速度が増加していた(ウィルソン(Wilson)ら、Kidney Int. 30:371〜380、1986;ウィルソン(Wilson)、Amer. J. Kidney Dis. 17:634〜637、1991、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。
さらに、腎嚢胞疾患の齧歯類モデルの研究において、天然に存在する型のPKDを有する動物の嚢胞に沿って並ぶ上皮細胞は、ヒトADPKDにおいて報告されたものと類似の異常を示した(ハーディング(Harding)ら、1992;ラマスブ(Ramasubbu)ら、J. Am. Soc. Nephrol. 9:937〜945、1998;ランキン(Rankin)ら、J. Cell Physiol. 152:578〜586、1992;ランキン(Rankin)ら、In Vitro Cell Devel. Biol. Anim. 32:100〜106、1996、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。その上、c-mycまたはSV-40ラージT抗原のいずれかのトランスジェニック過剰発現を有するマウスはPKDを発症した(ケリー(Kelly)ら、J. Am. Soc. Nephrol. 2:84〜97、1991;トルーデル(Trudel)ら、Kidney Int. 39:665〜671、1991、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。同様に、上皮細胞における組換え全長PKD1の発現は、増殖速度を減少させ、血清ストレプトアビジンのような刺激を与えた場合に、またはアポトーシスを刺激することが知られているUV光に対する暴露した場合に、アポトーシスに対する抵抗性を誘導した(ボレッタ(Boletta)ら、Mol. Cell. 6:1267〜1273、2000、参照として本明細書に組み入れられる)。そのため、例えば、JAK2、STAT1/3、PI3キナーゼ、p21、およびAKTを含むPKD1発現によって活性化される生化学経路は、PKD1活性の代用マーカーを提供することができる。
上皮細胞が管を形成する傾向は、PKD1の機能に関するなおもう一つのアッセイ法を提供する。インビボにおいて、PKDは腎尿細管、膵管、および胆管の嚢胞形質転換を特徴とする。インビトロでは、全長PKD1が発現されると、MDCK細胞において自然発生的な管形成を誘導する(ボレッタ(Boletta)ら、上記、2000)。このモデル系では、組換え野生型の全長PKD1を発現しない対照MDCK細胞は、肝細胞増殖因子またはコラーゲン中で懸濁培養した線維芽細胞条件培地によって処置しなければ嚢胞構造を形成した。対照的にPKD1の全長野生型組換え型を発現するMDCK細胞は、このようにして培養した場合では、外因性因子の非存在下でも管を形成した。そのため、このモデル系を用いて、PKD1タンパク質に結合して活性化するリガンドを同定し、治療物質によって活性化されるために標的化される経路を決定し、且つPKD1機能に及ぼす配列変種の影響を評価することができる。
さらに、PKD1ポリペプチドの機能に関するアッセイ法は、ADPKDと後天性嚢胞疾患のラットモデルの双方における試験(カロン(Carone)ら、Kidney International 35:1034〜1040、1989)がそのような構成要素における変化を示すという点において、例えば、プロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチン等のような細胞外マトリックス(ECM)成分の測定を含む。このように、正常なECMをより完全に模倣する細胞外マトリックス環境を作製する役に立つ如何なる化合物も、ADPKD症状の改善能を調べるための候補として見なすべきである。
さらに、本発明は、上述の結合アッセイ法において同定された化合物のような化合物のADPKD動物モデルにおける疾患の予防または阻害能を測定するために用いることができる。腎嚢胞疾患に関して、いくつかの天然に存在する変異が動物において認められており、当技術分野においてADPKDのモデルとして容認され、PKD1タンパク質と相互作用する化合物の影響をアッセイ法するための試験系を提供する。これらのモデルの中で、ハン:SPRDラットモデルは、常染色体優性モデル系を提供し(例えば、カスパレイト・リッティングハウセン(Kaspareit-Rittinghausen)ら、Vet. Path. 26:195、1989)、いくつかの劣性変異も同様に利用できる(リーダース(Reeders)、Nature Genetics 1:235、1992)。さらに、PKD1またはPKD2遺伝子が破壊されているノックアウトマウスが利用でき、ADPKDの遺伝子型の関連するモデル系を提供する。そのため、PKD1およびPKD2ノックアウトマウスは、インビトロでPKD1タンパク質と相互作用する化合物のインビボ有効性を確認するために有用となりうる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、ウ(Wu)ら、Nat. Genet. 24:75〜78、2000;キム(Kim)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:1731〜1736、2000;ル(Lu)ら、Nat. Genet. 21:160〜161、1999;ウ(Wu)ら、Cell 93:177〜188、1998;ル(Lu)ら、Nat. Genet. 17:179〜181、1997を参照のこと)。
本明細書に開示の1つまたは複数の変異型PKD1ポリペプチド配列に関連するADPKD様症状を示す動物モデルはまた、トランスジェニック動物を作製するための周知の方法と組み合わせてPKD1ポリヌクレオチド配列を利用することによって操作することができる。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、ヤギ、ならびにヒト以外の霊長類、例えば、ヒヒ、リスザル、およびチンパンジーを含むがこれらに限定されない如何なる種の動物もそのようなADPKD動物モデルまたはトランスジェニック動物を作製するために用いることができる。ADPKD症状に至るPKD1変異がPKD1タンパク質レベルを減少させるか、または無効なPKD1タンパク質の産生を引き起こす場合(例えば、PKD1変異が、W3001Xのように優性機能喪失変異、すなわち3000位のアミノ酸残基の後で切断されるか、またはT3110C変異である場合;同様に表4も参照のこと)、様々な方法を用いて、ADPKD様症状を示す動物モデルを作製することができる。
本発明はまた、無脊椎動物、脊椎動物および哺乳類を含むヒト以外のトランスジェニック生物を提供する。本発明の目的に関して、これらの動物は、そのような動物が異種DNA配列、または動物に対して通常外因性である1つもしくは複数のさらなるDNA配列(本明細書において集合的に「導入遺伝子」と呼ぶ)が、動物の胚細胞の染色体に組み入れられている場合に「トランスジェニック」であると呼ぶ。トランスジェニック動物(その子孫を含む)はまた、体細胞の染色体に組み入れられた導入遺伝子を有する。
本発明のトランスジェニック動物を作製するために様々な方法を用いることができる。概して、そのような3つの方法を用いることができる。そのような一つの方法において、前核段階の胚(「一細胞胚」)を雌性動物から採取して、導入遺伝子を胚にマイクロインジェクションするが、この場合導入遺伝子は、得られた成熟動物の胚細胞と体細胞の双方の染色体に組み入れられると考えられる。そのようなもう一つの方法において、胚幹細胞を単離して、電気穿孔、プラスミドトランスフェクション、またはマイクロインジェクションによって導入遺伝子をその中に組み入れた後に、幹細胞をそれらがコロニーを形成して生殖系列に関与する胚に再導入する。哺乳類種のマイクロインジェクション法は、米国特許第4,873,191号に記載されている。
さらにもう一つのそのような方法において、胚細胞に、導入遺伝子を含むレトロウイルスを感染させ、それによって胚の染色細胞がその染色体に導入遺伝子を組み入れる。トランスジェニックを作製すべき動物がトリである場合、トリ受精卵は一般的に卵管において、最初の20時間のあいだに細胞分裂を行うため、受精卵の前核にマイクロインジェクションすることは、前核に到達することができないために困難である。したがって、一般的に先に記述したトランスジェニック動物を作製するための方法の中では、トリ種には米国特許第5,162,215号に記載されているように、レトロウイルス感染が好ましい。しかし、トリ種にマイクロインジェクションを用いる場合、ラブ(Love)らの方法(Biotechnology、12、1994)を利用することができ、この場合、前回の産卵の約2時間半後に屠殺した雌鶏から胚を得て、導入遺伝子を胚盤の細胞質にマイクロインジェクションして、胚を成熟するまで宿主の殻の中で培養する。トランスジェニックすべき動物がウシまたはブタである場合、卵が不透明であるために、マイクロインジェクションは妨害され、それによって核を従来の微分干渉位相差顕微鏡によって同定することが困難になる。この問題を克服するために、卵をまず遠心して前核を分離すると、より見やすくすることができる。
本発明のヒト以外のトランスジェニック動物には、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジおよびトリ動物が含まれる(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、七面鳥)。そのようなヒト以外のトランスジェニック動物は、導入遺伝子をヒト以外の動物の生殖系列に導入することによって作製される。様々な発達段階での胚標的細胞を用いて導入遺伝子を導入することができる。胚標的細胞の発達段階に応じて、様々な方法を用いる。受精卵はマイクロインジェクションの最適な標的である。遺伝子移入の標的として受精卵を用いることは、ほとんどの場合、注入したDNAが初回分裂前に宿主遺伝子に組み入れられるという点において大きな利点を有する(ブリンスター(Brinster)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438〜4442、1985)。その結果、ヒト以外のトランスジェニック動物の全ての細胞が、組み入れられた導入遺伝子を有すると思われる。これは一般的に、胚細胞の50%が導入遺伝子を有することから、創始動物の子孫への導入遺伝子の効率的な伝達に反映されると考えられる。
「トランスジェニック」という用語は、細胞の全ての中に外因性の遺伝物質を含む動物を記述するために用いられる。トランスジェニック動物は、生殖に用いられる細胞内に外因性の遺伝物質を含む2匹のキメラ動物を交配させることによって作製することができる。得られた子孫の25%がトランスジェニック、すなわちその細胞の全ての双方の対立遺伝子において外因性の遺伝物質を含む動物となると考えられる。得られた動物の50%は一つの対立遺伝子内に外因性の遺伝物質を含み、25%は外因性の遺伝物質を含まないと考えられる。
本発明の実践において有用なマイクロインジェクション法において、導入遺伝子を、ゲル電気泳動によって消化して、如何なるベクターDNAも含まないように精製する。導入遺伝子は、転写に関係して、最終的に構成的な発現が得られる細胞タンパク質と相互作用する機能的に会合したプロモーターを含むことが好ましい。この点において有用なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)、およびヘルペスウイルスと共に、メタロチオネイン、骨格アクチン、P-エノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCK)、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、DHFR、およびチミジンキナーゼをコードする遺伝子のプロモーターが含まれる。ラウス肉腫ウイルスのようなウイルスの長末端反復(LTRs)のプロモーターも同様に用いることができる。トランスジェニックにすべき動物がトリである場合、好ましいプロモーターには、ニワトリベータグロビン遺伝子、ニワトリライソザイム遺伝子、およびトリ白血病ウイルスのプロモーターが含まれる。胚幹細胞のプラスミドトランスフェクションにおいて有用な構築物は、転写、スプライスアクセプター、終結およびポリアデニルシグナル、およびリボソーム結合部位を刺激して転写を可能にするエンハンサー要素のような当技術分野で周知のさらなる調節要素を用いると思われる。
レトロウイルス感染症も同様に用いて上記のようにヒト以外の動物に導入遺伝子を導入することができる。発達途中のヒト以外の胚をインビトロで胚盤胞段階まで培養することができる。この際、割球がレトロウイルス感染の標的となりうる(ヤニク(Jaenich)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:1260〜1264、1976)。割球の効率的な感染は、透明帯を除去する酵素処理によって得られる(ホーガン(Hogan)ら、「マウス胚の操作(Manipulating the Mouse Embryo)」、コールドスプリングハーバー研究所出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1986)。導入遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクター系は、典型的に、導入遺伝子を有する複製欠損レトロウイルスである(ヤーナー(Jahner)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6927〜6931、1985;ファンデルプッテン(Van der Putten)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6148〜6152、1985)。トランスフェクションは、割球をウイルス産生細胞の単層上で培養することによって容易かつ効率よく得られる(ファンデルプッテン(Van der Putten)、上記;スチュワート(Stewart)ら、EMBO J. 6:383〜388、1987)。または、感染は、後期の段階で行うことができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞を割腔に注入することができる(ヤーナー(Jahner)ら、Nature 298:623〜628、1982)。創始動物のほとんどは、組み込みがヒト以外のトランスジェニック動物を形成する細胞のサブセットのみに起こることから、導入遺伝子に関してモザイクとなると考えられる。さらに、創始動物は、ゲノムの異なる位置で導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を含むことができ、これは一般的に子孫において分離すると思われる。さらに、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルス感染によって、効率は低いものの、導入遺伝子を生殖系列に導入することも可能である(ヤーナー(Jahner)ら、上記、1982)。
導入遺伝子導入のための第3のタイプの標的細胞は、胚幹(ES)細胞である。ES細胞は、インビトロで培養した着床前胚から得て、胚と融合したものである(エバンス(Evans)ら、Nature 292:154〜156、1981;ブラッドレー(Bradley)ら、Nature 309:255〜258、1984;ゴスラー(Gossler)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9065〜9069、1986;およびロバートソン(Robertson)ら、Nature 322:445〜448、1986)。導入遺伝子は、DNAトランスフェクションによって、またはレトロウイルスを介する形質導入によってES細胞に効率よく導入することができる。次に、そのような形質転換したES細胞を、ヒト以外の動物に由来する胚盤胞と組み合わせることができる。その後、ES細胞は、胚でコロニーを形成して、得られたキメラ動物の生殖系列に関与する(総説に関しては、ヤーニッシュ(Jaenisch)、Science 240:1468〜1474、1988を参照のこと)。
導入遺伝子は人工的に細胞に挿入され、その細胞から発達する生物のゲノムの一部となる任意のDNA片でありうる(すなわち、安定的に組み入れられた、または安定的な生殖体外要素として)。そのような導入遺伝子には、トランスジェニック生物に対して部分的または完全に異種である遺伝子(すなわち、異物)となりうる、または生物の内因性遺伝子に対して同種である遺伝子を表しうる。この定義には、DNAに転写され、次にゲノムに組み入れられるRNA配列を提供することによって作製した導入遺伝子が含まれる。本発明の導入遺伝子には、変異型PKD1ポリペプチド、例えば、配列番号:2と実質的に同一なアミノ酸配列を有し、且つA88V、W967R、L2696R、R2985G、R3039C、V3285I、H3311Rの変異、またはそれらの組み合わせを有するポリペプチドをコードし;3000位のアミノ酸で終結する(本明細書において「X」が停止コドンを示す、「W3000X」とも呼ばれる;表4も参照のこと)切断型PKD1ポリペプチドをコードするDNA配列が含まれ;ヒト以外のトランスジェニック動物において発現させることができる、センス、アンチセンス、およびドミナントネガティブをコードするポリヌクレオチドが含まれる。本明細書において用いられる「トランスジェニック」という用語にはまた、初期胚または受精卵のインビトロ操作によって、または特定の遺伝子ノックアウトを誘導するためのトランスジェニック技術によって、ゲノムが変化している任意の生物が含まれる。本明細書において用いられる「遺伝子ノックアウト」という用語には、当業者に周知の任意のトランスジェニック技術によって得られる、インビボで完全にまたは部分的に機能を喪失する遺伝子の標的化破壊を意味する。一つの態様において、遺伝子ノックアウトを有するトランスジェニック動物は、相同的組換えによって非機能的にすべき遺伝子に標的化される挿入によって、標的遺伝子が非機能的となっている動物である。
本発明にはまた、PKD1ポリペプチドにおけるヘテロ接合変異、またはポリペプチドの機能もしくは発現の部分的阻害を有する動物が含まれる。当業者は、特定の変異またはアンチセンス分子がPKD1発現を部分的に阻害することができるか否かを容易に決定することができると思われる。例えば、インビトロ試験は、始めに、野生型との比較することにより望ましくなりうる(例えば、発現の減少を調べるためのノーザンブロットの比較)。胚にトランスフェクトした胚幹細胞をマイクロインジェクションして、コロニーを形成させるか、または導入遺伝子を含むレトロウイルスによって感染させた後(トリ種における本発明の実践を除く、本明細書において他でも扱う)、胚を仮親の雌性動物の卵管に着床させる。導入遺伝子特異的プローブを用いる血液試料のサザンブロット分析によって、子孫に導入遺伝子が組み込まれたか否かを調べる。PCRはこの点において特に有用である。陽性子孫(P0)を交配させて、子孫(P1)を作製し、これを組織試料のノーザンブロット分析によって導入遺伝子発現に関して分析する。
内因性PKD1関連遺伝子の発現と、類似の種の導入遺伝子の発現とを区別するために、マーカー遺伝子断片を構築物において導入遺伝子の3'非翻訳領域に含めることができ、ノーザンブロットプローブをマーカー遺伝子断片に関してプロービングするために設計することができる。PKD1ポリペプチドの血清レベルはまた、PKD1発現レベルを決定するために、トランスジェニック動物において測定することができる。トランスジェニック生物を作製する方法はまた、例えば、生物が異なる無関係な遺伝子またはポリペプチドに関してトランスジェニックである、既に作製されたトランスジェニック生物の胚に導入遺伝子を挿入する方法を含みうる。
本発明のトランスジェニック生物は、例えば、多嚢胞腎疾患、またはPKD1関連疾患または障害を調べるための生物を作製するために、ならびに多嚢胞腎疾患、PKD1関連障害および遺伝子を阻害または調節する物質または薬剤を同定するために非常に有用である。変異型ヒトPKD1ポリヌクレオチドの発現は、例えば標準的なノーザンブロット分析によってアッセイすることができ、変異型ヒトPKD1ポリペプチドの産生は、例えば、変異型ヒトPKD1ポリペプチドに対して作製した抗体を用いてその存在を検出することによってアッセイすることができる。変異型ヒトPKD1ポリペプチドを発現することが判明したそれらの動物は、ADPKD様症状の発症に関して観察することができる。
上記のように、ADPKDの動物モデルは、ヒトPKD1ポリヌクレオチド内の変異に対応する内因性PKD1遺伝子のコピーに変異を含む動物を操作することによって作製することができる。そのような方法を利用して、本明細書に記載のような技術を用いてPKD1相同体を関係する動物から同定して、クローニングすることができる。1つまたは複数の変異を、上記のように、ヒトPKD1ポリヌクレオチド内の変異に対応するそのようなPKD1相同体に操作することができる(例えば、配列番号:2に記載され、A88V、W967R、L2696R、R2985G、W3001X、R3039C、V3285I、H3311Rの変異、またはその任意の組み合わせを有するアミノ酸配列の変異が起こる;表4も参照のこと)。本明細書に開示のように、そのような操作された対応するPKD1相同体によって産生された変異型ポリペプチドは、変異型ヒトPKD1タンパク質によって示される活性と実質的に類似である異常なPKD1活性を示しうる。次に、操作されたPKD1相同体を、上記のような技術を用いて関係する動物のゲノムに導入することができる。したがって、配列番号:2に記載され、A88V、W967R、L2696R、R2985G、W3001X、R3039C、V3285I、H3311Rの変異、またはそれらの組み合わせを有する変異型PKD1ポリペプチドの発現に関連したモデルを含む、本明細書に記載したADPKD動物モデルの任意のものを用いて、化合物のADPKD症状改善能を調べることができる(実施例2および表4を参照のこと)。
上記のように、ADPKDを引き起こすPKD1ポリヌクレオチドにおける変異は、ADPKD症状の形成に至る異常な活性を示すPKD1タンパク質の型を産生することができる。多様な技術を利用して、そのような変異型PKD1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現、合成、または活性を阻害することができる。例えば、上記のアッセイ法によって同定された化合物のような、阻害活性を示す化合物を、ADPKD症状を改善するために本発明に従って用いることができる。そのような分子には、小型、および大型の有機分子、ペプチドおよび抗体が含まれるがこれらに限定されない。さらに、PKD1ポリヌクレオチドの発現を阻害するアンチセンスおよびリボザイム分子(例えば、変異型PKD1ポリヌクレオチド)もまた用いて、異常なPKD1活性を阻害することができる。そのような技術を下記に記載する。さらにもう一つの態様において、異常なPKD1活性を阻害するために三重ヘリックス分子を用いることができる。
抗ADPKD活性を示しうる化合物は、アンチセンス、リボザイム、および三重ヘリックス分子である。そのような分子は、PKD1ポリペプチドの発現または合成を調節することによって、変異型PKD1活性を減少または阻害するように設計することができる。そのような分子を産生および使用するための技術は、当業者に周知である。
二本鎖干渉RNA分子は、標的遺伝子の発現を阻害するために特に有用である。例えば、遺伝子の発現を阻害して、得られたポリペプチドの活性を阻害するために、二本鎖RNA分子を標的細胞または生物に注入することができる。そのような二本鎖RNA分子は、いずれかのRNA鎖のみより発現を阻害するために有効であることが判明している(ファイア(Fire)ら、Nature 19:391(6669):806〜11、1998)。
障害がPKD1ポリペプチドの異常な発現(例えば、タンパク質の過剰発現、または変異型の発現)に関連する場合、PKD1ポリペプチド(例えば、野生型、変種または変異型PKD1ポリペプチド)の翻訳を直接妨害する治療アプローチが可能である。または、類似の方法論を用いて遺伝子活性を調べることができる。例えば、アンチセンス核酸、二本鎖干渉RNA、またはリボザイムを用いて、PKD1 mRNA配列に結合させる、またはそれを切断させることができる。アンチセンスRNAまたはDNA分子は、標的遺伝子のRNAメッセージに特異的に結合し、その遺伝子のタンパク質産物の発現を中断させる。アンチセンスは、細胞が翻訳することができない二本鎖分子を形成するメッセンジャーRNAに結合する。約15〜25ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらが容易に合成され、アンチセンスRNA分子のように阻害作用を有することから、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。さらに、鉄結合エチレンジアミン四酢酸(EDTA-Fe)のような化学反応基を、アンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させて、ハイブリダイゼーション部位でRNAの切断を引き起こすことができる。アンチセンス核酸は、特異的mRNA分子の少なくとも一部と相補的であるDNA分子またはRNA分子である(ワイントラウブ(Weintraub)、Scientific American 262:40、1990)。細胞において、アンチセンス核酸は、対応するmRNAとハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。細胞は、二本鎖であるmRNAを翻訳しないため、アンチセンス核酸はmRNAの翻訳を妨害する。少なくとも約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーもまた、それらが標的PKD1ポリペプチド産生細胞に導入された場合に問題を生じる可能性が低いことから好ましい。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するためにアンチセンス法を用いることは、当技術分野で周知である(マーカス&サクラ(Marcus-Sakura)、Anal. Biochem. 172:289、1988)。
転写を失速させるためにオリゴヌクレオチドを用いることは、オリゴマーが二本鎖DNAの周囲を巻いて、三重ヘリックスを形成することから、三本鎖ストラテジーとして知られている。したがって、これらの三本鎖化合物は、選択した遺伝子上で独自の部位を認識するように設計することができる(マヘール(Maher)ら、Antisense Res. and Devel. 1:227、1991;ヘレン(Helene)、Anticancer Drug Design 6:569、1991)。
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと類似の方法で、他の一本鎖RNAの特異的切断能を有するRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の改変によって、RNA分子における特異的ヌクレオチド配列を認識してこれを切断する分子を操作することが可能である(セシュ(Cesh)、J. Amer. Med. Assn. 260:3030、1988)。この方法の主な利点は、それらが配列特異的であるために、特定の配列を有するmRNAのみが不活化されるという点である。
リボザイムには二つの基本型、すなわち、テトラヒメナ型(ハッセルホフ(Hasselhoff)、Nature 334:585、1988)および「ハンマーヘッド」型が存在する。テトラヒメナ型リボザイムは、長さが4塩基である配列を認識するが、「ハンマーヘッド」型リボザイムは、長さが11〜18塩基の塩基配列を認識する。認識配列の長さが長ければ、配列が標的mRNA種に限って起こる確率はより大きくなる。その結果、ハンマーヘッド型リボザイムは、特異的mRNA種を不活化するためにテトラヒメナ型リボザイムより好ましく、18塩基認識配列は、より短い認識配列より好ましい。遺伝子のインビボ翻訳を阻害するためにアンチセンスおよびリボザイム法をこのように用いることおよびその他のように用いることは、当技術分野で既知である(例えば、デメスマーカー(De Mesmaeker)ら、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:343、1995;ゲヴィルツ(Gewirtz)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:3161、1996b;スタイン(Stein)、Chem and Biol. 3:319、1996)。
任意の潜在的なRNA標的内での特異的リボザイム切断部位も、リボザイム切断部位に関して標的分子を走査することによって当初同定され、それには以下の配列が含まれる:GUA、GUUおよびGUC。同定されれば、切断部位を含む標的遺伝子領域に対応する約15〜30リボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適にしうる二次構造のような、予想される構造特徴に関して評価することができる。候補標的の適切性はまた、リボヌクレアーゼ保護アッセイ法を用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するその到達性を調べることによって評価することができる。
本明細書に記載のアンチセンス、リボザイム、または三重ヘリックス分子は、本発明の変異型PKD1対立遺伝子によって産生されたmRNAの翻訳を減少または阻害することができる可能性がある。PKD1活性の実質的に正常なレベルが細胞において確実に維持されるために、正常なPKD1活性を示すPKD1ポリペプチドをコードして発現する核酸分子を、アンチセンス、リボザイム、または三重ヘリックス治療に対して感受性がある配列を含まない細胞に導入することができる。そのような配列は、下記の方法のような遺伝子治療法によって導入することができる。または、細胞または組織PKD1活性の必須のレベルを維持するために、細胞または組織に正常なPKD1タンパク質を同時投与することが好ましくなりうる。
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA分子、リボザイム分子および三重ヘリックス分子は、DNAおよびRNA分子の合成に関する技術分野で既知の如何なる方法によっても調製することができる。これらには、例えば固相ホスホロアミダイト化学合成のような、当技術分野で周知のオリゴデオキシヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを化学合成するための技術が含まれる。または、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写によって作製することができる。そのようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターのような適当なRNAポリメラーゼプロモーターを組み入れる多様なベクターに組み入れることができる。または、用いるプロモーターに応じて、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を細胞株に安定的に導入することができる。
DNA分子に対する様々な周知の改変を、細胞内安定性および半減期を増加させる手段として導入することができる。可能性がある改変には、分子の5'もしくは3'末端またはその双方に対するリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドの隣接する配列の付加、またはオリゴデオキシリボヌクレオチド骨格内でのホスホジエステラーゼ結合よりむしろホスホロチオエートまたは2'-O-メチル結合を用いることが含まれるが、これらに限定されない。
上記のように、ADPKDを引き起こすPKD1ポリヌクレオチドにおける変異は、PKD1ポリヌクレオチドの発現レベルを低下させることができるか、または不活性もしくは実質的に不活性なPKD1タンパク質を産生させうる。いずれにせよ、その結果は、PKD1が通常発現される組織または細胞における正常なPKD1活性の全体的なレベルの低下である。次に、このより低いレベルのPKD1活性は、ADPKD症状に至る。このように、そのようなPKD1変異は、優性機能喪失変異を示す。例えば、配列番号:1に記載される配列を有し、G9213Aの変異を有するポリヌクレオチドは、PKD1の早期停止が起こる。
例えば、ADPKD症状を改善するために十分なレベルの正常なPKD1タンパク質を、そのような症状を示す患者または変異型PKD1ポリヌクレオチドを有する患者に投与することができる。さらに、正常なPKD1タンパク質をコードするDNA配列を、ADPKD症状を示す患者に直接投与することができるか、または本明細書において同定されたPKD1変異を有すると診断されているが、まだ症状を発症していない場合には、ADPKD症状を予防もしくは減少するために投与することができる。そのような投与は、ADPKD症状が改善されるようなPKD1タンパク質レベルを生じるために十分な濃度となりうる。
さらに、これらのタイプの変異を有する被験者は、遺伝子置換療法によって治療することができる。正常なPKD1ポリヌクレオチドのコピーを、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ウシ乳糖腫ウイルス、またはプラスミドのような非ウイルスベクターを含むがこれらに限定されないウイルスまたは非ウイルスベクターを用いて、細胞、腎細胞に挿入することができる。さらに、DNAを哺乳類細胞に導入するために、当業者によってしばしば用いられる技術を利用することができる。例えば、電気穿孔、DEAEデキストランを介するDNA移入、DNA銃、リポソーム、直接注入等を含むがこれらに限定されない方法を用いて、組換えベクターを宿主細胞に移入することができる。または、DNAを、細胞内部に通常標的化されるタンパク質との結合によって細胞に移入することができる。例えば、DNAは、通常ウイルス粒子を標的となる宿主細胞に標的化するウイルスタンパク質に結合させることができる。
遺伝子全体またはポリペプチドを投与することは、ADPKD症状の出現を回避するために必ずしも必要ではない。「ミニ遺伝子」治療アプローチを用いることはまた、そのようなADPKD症状を改善するために役立つ(ラゴット(Ragot)ら、Nature 3:647、1993;ダンクレー(Dunckley)ら、Hum. Mol. Genet. 2:717〜723、1993を参照のこと)。ミニ遺伝子系は、部分的、または活性な、または実質的に活性なPKD1ポリペプチドをコードするPKD1コード領域の一部を利用する。このように、ミニ遺伝子系は、ADPKD症状を改善することができるPKD1ポリペプチドの一部をコードする正常なPKD1ポリヌクレオチドのその部分のみを利用し、したがって、全長遺伝子治療アプローチより有効かつさらに効率的なADPKD治療を示すことができる。そのようなミニ遺伝子を細胞に挿入して、全長遺伝子置換に関して上記の技法によって利用することができる。PKD1ミニ遺伝子が導入される細胞は、好ましくは腎細胞のような、ADPKDによって影響を受ける細胞である。または、ミニ遺伝子が持続的に安定的に発現され、ADPKD症状を改善するポリペプチドを産生する限り、如何なる適した細胞にもPKD1ミニ遺伝子をトランスフェクトすることができる。
ADPKD症状を改善するための治療的ミニ遺伝子は、少なくとも一つのPKD1ポリペプチドペプチドドメイン、特に配列番号:2のペプチド部分と実質的に同一であり、表4に示す変異、例えば、A88V、W967R、L2696R、R2985G、W3001X 、R3039C、V3285I、またはH3311Rの変異を有するアミノ酸配列を有するドメインをコードするヌクレオチド配列を含みうる。そのようなPKD1ポリペプチドをコードするミニ遺伝子は、PKD1ポリヌクレオチド配列(配列番号:1)を用いて合成および/または操作することができる。
本発明のアッセイ法において用いられる材料は、理想的には、キットの調製物に適している。そのようなキットは、それぞれの容器が方法において用いられる個々の要素の一つを含む、バイアル、試験管等のような1つまたは複数の容器手段を含む担体手段を含みうる。容器手段の一つは、検出可能に標識される、または標識することができるプローブを含みうる。そのようなプローブは、少なくとも10個の連続するヌクレオチドを含み、以下を含む配列番号:1の断片の配列を有するオリゴヌクレオチドとなりうる:474位がTであるヌクレオチド;487位がAであるヌクレオチド;3110位がCであるヌクレオチド;8298位がGであるヌクレオチド;9164位がGであるヌクレオチド;9213位がAであるヌクレオチド;9326位がTであるヌクレオチド;9367位がTであるヌクレオチド;10064位がAであるヌクレオチド;10143位がGであるヌクレオチド;10234位がCであるヌクレオチド;10255位がTであるヌクレオチド(実施例2も参照のこと)。
本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドプローブを含むキットは、例えば、試料中の変異型PKD1ポリヌクレオチドの存在を定量的に同定するのみならず、特異的に強く結合する(ハイブリダイズする)配列の出現を調べるためにプローブの結合の程度を定量し、それによってPKD1に関連した障害を有するまたは障害の素因を有する被験者である可能性を示すために有用となりうる。キットが標的核酸を検出するために核酸ハイブリダイゼーションを利用する場合、キットはまた、標的核酸配列を増幅するための試薬を含む容器を有しうる。変異標的配列を増幅することが望ましい場合、これは、標的ヌクレオチド配列に隣接する隣接領域の同定に基づくオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行うことができる。例えば、表1および表2において下記に記載したプライマーのようなプライマーを、本発明のキットに含めることができる。キットはまた、オリゴヌクレオチドに結合または組み入れることができ、そしてオリゴヌクレオチドの同定を促進することができる酵素、蛍光、または放射性核種の標識のようなレポーター手段を含む溶液を含みうる。
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって制限するものとして解釈されることはない。
本発明は、5kb〜10kbのPKD1ポリヌクレオチドセグメントを産生するために長い範囲のPCR(long-range PCR)において広く間隔をあけたPKD1特異的結合プライマーを用いることに基づく。適当に希釈した後、PCR産物は、多様な方法の任意のものを用いて変異スクリーニングのための鋳型として使用することができる。したがって、多くの変異がPDK1関連障害を有するファミリーにおいて同定されている。
多くのPKD1特異的プライマーを用いて、5'非翻訳領域からイントロン34まで及び、エクソン1およびエクソン22を含む複製領域における全てのエクソンを含む、約0.3〜5.8 kbの大きさの8個の鋳型を作製した(実施例1)。これらの試薬を用いて、アジア人のPKD1家族47例を評価した(実施例2)。変種ヌクレオチド配列は、PKD1ポリヌクレオチド配列全体に認められた。
タイ人41例および韓国人6例のADPKD家族を調べた。血液バンクにおいて採取した健康なタイ人の献血者50人からの試料を正常な対照とした。ゲノムDNAを、市販のキット(ピュアジーン、ゲントラ)または標準的なフェノール・クロロホルム法を用いて、新鮮な全血から、または5年までの間保存されていた凍結した全血のいずれかから抽出した。N23HAおよび145.19細胞株の場合(Cell 77:881〜894、1994;ゲルミノ(Germino)ら、Am. J. Hum. Genet. 46:925〜933、1990;セッチェリーニ(Ceccherini)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:104〜108、1992、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる;またワトニック(Watnick)ら、上記、1997も参照のこと)、ピュアジーンDNA単離キットを用いて、ゲノムDNAを単離した。
実施例1
長い範囲(long-range)の特異的鋳型
PKD1の複製された部分を増幅するために用いることができるPKD1特異的プライマーを作製および確認するために、二部の方法を用いた。PKD1(配列番号:1)の配列を、ゲンバンク(アクセッション番号AC002039)に存在する2つの相同体と並置して、可能性がある配列の差を同定した。候補プライマーは、PKD1の特異性を最大限にするために、誤対合がオリゴヌクレオチドの3'末端に、または3'末端に隣接して存在するように設計した。
プライマーは、ヒト16p13.3のみを含み、したがってヒトPKD1(145.19、放射線ハイブリッド)を含む、または16p13.3を欠損してヒトPKD1相同体のみを含む(N23HA)齧歯類-ヒト体細胞ハイブリッドを用いて特異性を調べた。図2は、プライマー対BPF6およびPKD1特異的プライマーBPR6を用いたこの方法の代表的な例を示す。このプライマーは、ヒト総ゲノムDNAまたは145.19 DNAを鋳型として用いた場合に限って、表示の条件で正しい長さ(4.5 kb)の産物を増幅した。かなり短い産物を得るためにBPR6を非特異的プライマー28Fと組み合わせて用いた場合にも類似の結果が得られた。
最終的な対照として、増幅した産物が存在しないことを、N23HAを鋳型として用いて総ヒトゲノムDNAおよび145.19 DNAを用いて得られた結果がプライマーの特異性によるものであり、その他の原因の結果(すなわち、DNAの質またはヒト/齧歯類鋳型の比の差)ではないことを確認した。BPF6からの距離がBPR6と同じ距離に存在する相同体に関して特異的なプライマー(BPR6HG)を設計して、これを用いて対応するPKD1の長さの範囲の産物と同じ大きさの特異的バンドを増幅した。予想されるように、正しい大きさの産物は、N23HAおよび総ゲノムDNAの双方から増幅されたが、145.19からは増幅されなかった。
全体で8個のプライマー対を用いて、大きさの範囲が約0.3 kb〜5.8 kbまでの一連の鋳型を作製することができ、これには、PKD1の複製された部分における全てのエクソンおよびその隣接するイントロン配列が含まれた(エクソン1〜34)。表1には、各産物の詳細を要約し、各プライマーの配列、そのそれぞれの遺伝子内での位置、その予想される大きさ、その増幅のために最適なアニーリング温度および伸長時間が含まれる。図1は、全体的な遺伝子構造に関して各産物の相対的な位置を示す。エクソン1およびその隣接する配列は、評価することが特に難しかったことに注目すべきである。プライマー設計は、高度の相同性および領域における極端なGCの偏りによって大きく制限された。広く間隔を空けたプライマー(対象となるセグメントよりかなり大きい断片を作製するため)とGC融解系との組み合わせを用いて、これらの障害を回避した。
〔表1〕 PKD1遺伝子のエクソン1〜34に由来する長い範囲の特異的鋳型のためのオリゴヌクレオチドプライマー
Tm−アニーリング温度;ET−伸長時間;*−PKD1特異的プライマー
BPR12プライマー配列における太字は、PKD1と相同体との区別を増強するためにCからAへの意図的な置換を示す。
それぞれの長い範囲(long-range:LR)の鋳型に関して用いたプライマー配列、アニーリング温度、および伸長時間に関する特定の詳細を表1に提供する(表1および表2の全ての配列を左から右の方向に5'から3'で示す)。エクソン1(下記参照)を除いて、ゲノムDNA 300 ng〜400 ngを各LR産物に関する鋳型として用いた。長い範囲のPCR増幅は以下のように、パーキンエルマー9600サーマルサイクラーにおいて実施した:95℃で3分間の変性の後に、95℃で20秒間の変性、各プライマー対に関して特異的な温度および時間でのアニーリングおよび伸長を含む二段階プロトコール35サイクル(表1)。72℃で10分間の最終的な伸長を各プログラムに含めた。総PCR容積は、rTh DNAポリメラーゼXL(シータス、パーキンエルマー社)4UおよびMgOAc2の最終濃度0.9 mMを用いて50 μlであった。製造元によって推奨されるホットスタートプロトコールを最初の増幅サイクルに用いた。エクソン1LR産物(T1)に関して、ゲノムDNA 500 ngを用いてLRを作製した。長い範囲のPCR増幅は以下のように改変した:95℃で1分間の変性の後に、95℃で30秒間の変性、69℃で7分間のアニーリング、および伸長の二段階サイクルを35回行った。総PCR容積は、アドバンテージ-GCゲノムポリメラーゼ(クロンテック社)1μl、1.5 M GCメルトおよびMgOAc2の最終濃度1.1 mMを用いて50 μlであった。
長い範囲の鋳型を連続希釈して(1:104または1:105)、ゲノムの汚染を除去した後、200〜400 bpのエクソン断片のネスティドPCRの鋳型として用いた。エクソン1〜12およびエクソン22に関して、全体で17個の新規プライマー対を作製した。それぞれの新規の対の配列およびPCR条件を表2に要約する。エクソン13〜21および23〜34に関するプライマー配列およびPCR条件は、参照として本明細書に組み入れられる、ワトニックら(Watnick、Am. J. Hum. Genet. 65:1561〜1571、1999);およびワトニックら(Watnick、Hum. Mol. Genet. 6:1473〜1481、1997)に記載されている。イントロンに基づくプライマーは、コンセンサススプライシング部位から約30〜50 bp離れて位置した。約400 bpより大きいエクソンを350 bpより小さい、またはこれに等しい重複する断片に分割した。一本鎖構造多形分析を標準的なプロトコールを用いて実施した。SSCA分析は、5%グリセロールを加えた8%ポリアクリルアミドゲルを用いて行った。放射標識したPCR産物をローディング緩衝液によって希釈して、95℃で5分間加熱することによって変性した後、氷中に入れてからローディングして、室温でゲルで泳動させた。ゲルを400 Vで一晩泳動させ、乾燥させて、室温でX-Omat XARフィルム(コダック社)上に載せた。SSCAによって検出された異常に移動したバンドをゲルから切り出して、100μlの滅菌水で一晩溶出させた。溶出した産物を同じプライマーセットを用いて再増幅し、セントリコン-100カラム(アミコン)を用いて精製した後、配列を決定した。
〔表2〕 変異を検出するために使用されるネスティドプライマー
制限酵素切断部位を変化させると予想される変種を、再増幅した産物の制限酵素消化分析によって確認した。変化が制限酵素切断部位を変化させなかった場合、疑われる点突然変異と組み合わせた場合に新しい制限酵素切断部位を作製する誤対合を有するプライマーを設計した。以下のプライマーの組み合わせを利用した:
可能であれば、疾患の表現型を有する変種の分離を調べた。正常なハプロタイプ上でミスセンスの変化を決定できない場合(そしてこのように、正常な変種である場合)、変異を正常な対照者50人のパネルに関して調べた。
実施例2
変異のスクリーニング
新しいPKD1特異的産物を、アジアの家族47例のそれぞれの罹患メンバー1人から作製し、これをエクソン1〜12および22〜34の変異検出のための鋳型として用いた。表2は、個々のエクソンおよびその隣接するイントロン配列のネスティド増幅のために用いるプライマー対に関する配列およびPCR条件を記載する。長さが>400塩基対のセグメントに関して重複する対を設計した。
全体で13個の新規変種を、上記の条件を用いてSSCAによって検出した。2個は病原性変異である可能性が非常に高く、4個は正常では認められないミスセンス置換をコードすると予想され、7個は正常変種である(表3を参照のこと)。
最初の病原性変異は、エクソン25における9213位でのGからAへの転位であり、これはナンセンスコドンが起こると予想される(W3001X)。その存在を、酵素Mae Iを用いる制限酵素切断分析によって確認したところ、疾患と共に分離することが判明した。この変種は、卵の凝膠体(REJ)受容体ドメインのカルボキシル末端近傍でタンパク質を切断すると予想される。W3001X変異によって、膜貫通要素、介在ループ、およびカルボキシル末端の全てを欠失する大きく切断された産物が得られた。第2の変異(T3110C)は、PKDリピートの一つの重要な位置で非保存的アミノ酸置換(W967R)が起こると予想される。変異は、それが発見された家族に独特であり、正常なタイ人の染色体100個以上のスクリーニングにおいて認められなかった。W967Rミスセンス変異は、PKDドメイン3の二次構造を破壊すると予想される。CC'ループ領域内のWDFGDGS(配列番号:58)モチーフは、PKDドメインの最も保存された配列である。トリプトファンが、C鎖の末端でのターンの最初の残基において置換され、16個中14個のPKDドメインにおいて保存されている。その上、これは、マウスおよびフグのポリシスチン-1において進化的に保存されている。
〔表3〕 タイ人集団におけるPKD1遺伝子において同定された変異
*−疾患と共に分離:0−分離に関して調べることができない;NC−正常対照;HG−相同体の1コピーに存在;ADP−対立遺伝子特異的プライマー
これらの病原性変異は、1041位のアミノ酸以降でフレームシフトが起こる(FS1041)、エクソン13におけるG3336の欠失(△G3336);それぞれがナンセンス停止に至る、エクソン15におけるC4168T(Q1653X)、C6089T(Q1960X)、およびC6326T(Q2039X)変異;FS2331が起こる、エクソン16における△G7205〜G7211;ナンセンス停止が起こるエクソン18におけるC7415T(R2402X)変異;ナンセンス停止が起こる、エクソン19におけるC7883T(Q2558X)変異;およびFS2649が起こる、エクソン21における△C8159〜T8160変異を含み、これまでに同定された病原性変異に加えられる(ファクディーキッチャローエン(Phakdeekitcharoen)ら、上記、2000)。さらに、エクソン15におけるG3707A(G1166S)およびT6078A(V1956E)ミスセンス変異、およびエクソン18におけるC7433T(R2408C)ミスセンス変異およびG7535とG7536のあいだのGCGトリヌクレオチドの挿入(エクストラGly2422)を含む、可能性がある病原性変異が同定されている(ファクディーキッチャローエン(Phakdeekitcharoen)ら、上記、2000)。
家族の一つに独自のさらに4つの変異も同様に同定された(表3を参照のこと)。変異体は疾患と共に分離し、100個以上の正常なタイ人染色体のスクリーニングにおいて認められなかった。4つの変種中3つが非保存的アミノ酸置換となると予想される。それらの2つ(A9164G、C9326T)は、単一の家族の同じ対立遺伝子に存在する(RAMA87)。そのため、これらの変異は、正常な、民族的に対合した染色体には認められないこと、疾患と共に分離すること、そしてその結果非保存的置換が起こることを含めて、疾患を生じる変異を予想するいくつかの基準を満たす。
一例において、ヘテロ二本鎖パターンが標準的なアガロース電気泳動によるプロバンドのエクソン22の産物に関して発見された。ヘテロ二本鎖のパターンは、疾患と共に分離し、この新規変種が8298位でのTからGへの変換の結果であることがその後決定された。この変異は、タンパク質配列の2696位でロイシンの代わりにアルギニンに置換すると予想される。この非保存的置換は、REJドメイン内に存在する。興味深いことに、R3039C置換は、ポリシスチン-1、His(3047)-Leu-Thr-Ala(3050)(配列番号:59)の新しく記載された推定のタンパク質分解切断部位近傍で起こる。フグおよびマウスポリシスチン-1の対応する位置ではそれぞれ、グルタミン酸とアルギニンが存在し、この位置での非極性残基のあまり重要でない役割を示唆している。
正常変種の可能性がある7個のヌクレオチド置換もまた同定された。2つは、それらが発見された家族において疾患と共に分離しないミスセンス変種である。C474T置換は、最初のロイシンリッチリピート(LRR)における88位でバリンからアラニンへの保存的置換が起こる。アミノ酸は種において保存されず、LRR構造を破壊しないと予想される。第2のミスセンス変種、A10143Gは、TM2とTM3のあいだの最初の細胞外ループ内で3311位でヒスチジンの代わりにアルギニンに置換する。これもまた、その同一性がこの位置で進化的に保存されていない残基を含む保存的変化である。他の5個の変種は、サイレントヌクレオチド置換であり、これはそれらが認められる家系に独自のものであり、100個の正常な染色体より多くは認められなかった。これらの変種は、領域における遺伝子スプライシングに影響を及ぼすことによって病原性となりうる。エクソン30の正常な変種の2個、すなわちA10143G(H3311R)およびT10234C(L3341L)は、単一のPLD1ハプロタイプにおいて共に集団を形成した。興味深いことに、双方の変種はまた、相同体の少なくとも一つに存在し、このことは、これらのPKD1変種の起源としてのこれまでの遺伝子変換事象を示唆している。PKD1関連障害に関連しないように思われるさらなるPKD1変種には、エクソン15における2つのサイレント変異、すなわちG4885A(T1558T)およびC6058T(S1949S)とミスセンス変異G6195A(R1995H);エクソン17におけるサイレントT7376C(L2389L)変異;エクソン18におけるサイレントC7696T(C2495C)変異;ならびにエクソン20におけるミスセンスG8021A(D2604N)変異が含まれる(ファクディーキッチャローエン(Phakdeekitcharoen)ら、上記、2000)。
表4は、タイ人家族17例の発端者の臨床知見を要約する。ADPKD患者の遺伝子型および表現型を示す。白人集団の研究に基づいて、変異の約15%がPKD1遺伝子の非複製部分に局在すると推定されている。同じ頻度がタイ人集団にも当てはまれば(患者を非反復部分における変異に関してスクリーニングしなかった)、本研究は、非複製領域に存在する全ての変異の約45%〜54%を同定した。この検出率はおそらく、DHPLC(クリステンセン(Kristensen)ら、上記、2001)、HTCSGD(ロイング(Leung)ら、上記、2001)等のようなより感度のよい検出方法を用いて増加させることができる。
〔表4〕 タイ人ADPKD1における遺伝子型と表現型
HT−高血圧症;Renal. insuff.−腎不全;Herat Valve. Abnorm.−心臓弁の異常;Brain Aneur.−脳の動脈瘤;*−ファクディーキッチャローエン(Phakdeekitcharoen)ら、上記、2000。
本発明は、上記の実施例を参照にして記述してきたが、改変および変更も本発明の精神および範囲内に含まれると理解される。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。