JP5535501B2 - 白金ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はナノサイズの多面体形状をもつ白金ナノ粒子を担体に製造させる担持方法に関する。
近年、多面体形状をもつ白金ナノ粒子は、無定形の白金ナノ粒子に比較し、触媒活性等の性能が優れていることが知られている。そこで、文献1および2によれば、白金錯体を用い、液相還元法により白金ナノ粒子を合成させる際に、ポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として用い、ポリアクリル酸イオンを白金結晶核の(100)面へ選択的に吸着させ、(100)の成長を抑制し、逆に、白金結晶核の(111)面への成長を促すことにより、反応活性が高い(100)面をもつ多面体形状の白金ナノ粒子を合成させる技術が開示されている。このものでは、ポリアクリル酸ナトリウムは、これを構成する側鎖のカルボニル基が白金結晶核の(100)面に吸着することでキャッピング剤として働くとされている。
文献3は、ポリアクリル酸ナトリウムおよびヨウ化ナトリウム(NaI)を添加し、反応活性が高い(100)面をもつ多面体形状の白金粒子を製造する技術が開示されている。
Chemistry of Materials,8(1996) 1161-1163 Electrochimica Acta,52(2006) 1632-1638 燃料電池,5(2006) 69-72
上記した技術は、ポリアクリル酸ナトリウムを、凝集抑制効果のあるキャッピング剤として使用している。しかしポリアクリル酸ナトリウムは、高い粘性をもつため、簡単に洗い落とすことが困難である。また白金種結晶の結晶面に対する選択吸着特性が十分であるとはいえない。よって多面体形状の白金粒子の収率を高めるためには限界がある。更にポリアクリル酸ナトリウムが白金ナノ粒子に残留するため、白金ナノ粒子が本来有する触媒性能等の性能が低下するおそれがある。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、キャッピング剤としてポリアクリル酸ナトリウムを使用することを廃止し、コスト低減を図りつつ、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムが残留する不具合を抑え、多面体形状の白金粒子の収率を高めた状態で担体に担持でき、白金ナノ粒子が本来有する触媒性能等の性能を確保するのに有利な白金ナノ粒子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、多面体形状の白金ナノ粒子の製造方法について長年にわたり開発を進めている。そして、本発明者は、キャッピング剤としてポリアクリル酸ナトリウムを使用することを廃止しつつ、ハロゲン元素のうちの少なくとも1種と白金とを含む原料と、担体とを準備する準備工程と、原料と担体とが共存していると共にポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない状態において、原料を還元剤で還元させる還元工程とを実施すれば、不定形の白金ナノ粒子に比較して反応活性が高い多面体形状(立方体形状,14面体形状)をなす白金ナノ粒子を担体に脱離しないように担持させ得ることを知見し、本発明方法を完成させた。
多面体形状をなす白金ナノ粒子が得られる理由としては、現段階では必ずしも明確ではないものの、白金ナノ粒子の種結晶である核の特定の結晶面に、陰イオンであるアニオン種(ハロゲン元素)が吸着し、吸着した面の成長が抑制されると共に、他の特定の結晶面の成長が促進されることが影響しているものと推察される。
すなわち、様相1に係る白金ナノ粒子の製造方法は、ハロゲン元素のうちの少なくとも1種とアルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1種を含む第1化合物と、白金化合物の溶液と、担体とからなる混合物を準備する準備工程と、混合物にポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない状態において、混合物を還元剤で還元して白金ナノ粒子を担体に担持させる還元工程とを実施する。そして混合物は、白金化合物における白金1モルに対して第1化合物が0.1〜10モルの範囲内である白金ナノ粒子の製造方法である。
ここで、様相1に係る原料としては、単独の化合物としても良く、複数の化合物を混合させた混合物としても良く、ハロゲン元素のうちの少なくとも1種とアルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1種を含む第1化合物と、白金化合物の溶液との混合物であっても良い。原料はハロゲン化合物を含むことができる。ハロゲン化合物としては、ヨウ化物、塩化物および臭化物のうちの1種または2種以上が挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム(KI),ヨウ化ルビジウム(RbI),ヨウ化セシウム(CsI),ヨウ化リチウム(LiI),ヨウ化ナトウム(NaI)のうちの1種または2種以上が挙げられる。塩化物としては、塩化カリウム(KCl),塩化ルビジウム(RbCl),塩化セシウム(CsCl),塩化リチウム(LiCl),塩化ナトリウム(NaCl)のうちの1種または2種以上が挙げられる。臭化物としては、臭化カリウム(KBr),臭化ナトリウム(NaBr),臭化セシウム(CsBr),臭化リチウム(LiBr)のうちの1種または2種以上が挙げられる。
好ましくは、原料は、ハロゲン元素のうちの少なくとも1種と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの少なくとも1種とを含むことができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、ナトリウム(Na),カリウム(K),ルビジウム(Rb),セシウム(Cs),ベリリウム(Be),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)のうちの1種または2種以上を含むことができる。ここで、ナトリウム(Na),カリウム(K),ルビジウム(Rb),セシウム(Cs)はアルカリ金属である。ベリリウム(Be),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)はアルカリ土類金属である。本発明方法によれば、製造された白金ナノ粒子は多面体形状、殊に立方体形状をなしている。白金ナノ粒子は、単独粒子で、ナノレベルのサイズの粒径をもつ白金粒子を意味する。
好ましくは、上記した原料は白金化合物を含むことができる。白金化合物としては白金塩の溶液が挙げられ、殊に、白金塩化物の溶液が挙げられる。白金塩化物としては、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸カリウム、四塩化白金酸カリウム、塩化白金、六塩化白金酸六水和物のうちの1種または2種以上が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上使用しても良い。更に白金化合物としては、ヨウ化白金酸、臭化白金酸、フッ化白金酸が挙げられ、更に、これらのそれぞれのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
本発明方法は、ハロゲン元素のうちの少なくとも1種と白金とを含む原料と担体とが共存すると共にポリアクリル酸ナトリウムが含まれていないとする。この状態で、原料を還元剤で還元して白金ナノ粒子を形成する還元工程を実施する。これにより多面体形状(特に立方体)をなす白金ナノ粒子が得られる、その理由としては、現段階では必ずしも明確ではないものの、白金ナノ粒子の種結晶の特定の結晶面にハロゲン元素が吸着するため、他の特定の結晶面の成長が促進されることが影響しているものと推察される。なお、反応活性が良い多面体形状をもつ白金ナノ粒子は、無定形の白金ナノ粒子に比較して、触媒活性等の性能が良いとされている。
本発明方法によれば、多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体の表面を下地として成長するため、白金ナノ粒子がカーボン担体から脱離することが抑えられる。
本発明方法によれば、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止している。なおポリアクリル酸ナトリウムは、そのカルボニル基が白金種結晶の(100)面に選択的に吸着するため(100)面の面成長が抑制され、立方体の白金ナノ粒子を形成できると考えられていたが、実際的には、白金種結晶の(111)面にも吸着する確率が高いため、結果として、どの面でも同程度に面成長が抑制され、立方体の白金ナノ粒子の他に、不定形状の白金ナノ粒子も形成される。
本発明方法によれば、上記したように高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止しているため、洗浄処理および洗浄コストを簡素化できる。更に、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムが残留する不具合を抑え、多面体形状の白金粒子の回収率を高めると共に、多面体形状の白金ナノ粒子が本来有する触媒性能等の性能を確保するのに有利となる。
実施例1に係り、白金ナノ粒子を示す電子顕微鏡写真(TEM)である。 実施例2に係り、白金ナノ粒子を示す電子顕微鏡写真(TEM)である。 実施例3に係り、白金ナノ粒子を示す電子顕微鏡写真(TEM)である。 実施例4に係り、白金ナノ粒子を示す電子顕微鏡写真(TEM)である。 実施例5に係り、白金ナノ粒子を示す電子顕微鏡写真(TEM)である。 実施例6に係り、白金ナノ粒子を示す電子顕微鏡写真(TEM)である。 塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対してヨウ化カリウム(KI)のモル数を変化させたときにおける収率の変化を調べた試験結果を示すグラフである。 カーボン担体(カーボンブラック)の単位表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)のモル数を変化させたときにおける収率の変化を調べた試験結果を示すグラフである。
代表的な製造方法としては、ハロゲン元素を含むと共にアルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの少なくとも1種を含むハロゲン化合物(ヨウ化物、塩化物および臭化物のうちの1種または2種以上)と、所定の濃度の白金錯体を有する白金錯体溶液とを混合して原料を形成できる。白金錯体溶液の濃度は、白金錯体の組成、要請される白金ナノ粒子のサイズ、白金ナノ粒子の凝集度等によっても相違するが、例えば、10−2M〜10−8Mとすることができる。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。
白金錯体の組成、要請される白金ナノ粒子のサイズ、白金ナノ粒子の凝集度等によっても相違するが、ヨウ化物は、白金錯体のモル数の1〜150倍のモル数、更には、5〜100倍のモル数、殊に10〜70倍のモル数、20〜40倍のモル数をもつことができる。同様に、塩化物は、白金錯体のモル数の1〜150倍のモル数、更には、5〜100倍のモル数、殊に10〜70倍のモル数、20〜40倍のモル数をもつことができる。臭化物についても同様とすることができる。
白金ナノ粒子を担持させる担体としては、カーボンでもよく、セラミックスでも良い。カーボンとしてはカーボンブラック等のカーボン微粒子、カーボンナノチューブ、カーボン繊維等が挙げられる。カーボンブラックとしてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックが例示される。セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア等の公知のセラミックスが挙げられる。
担体1グラムあたりの担体の比表面積としては、用途に応じて、20〜3000m,30〜2000m,40〜1000m,50〜500mが例示される。この場合、上限値としては、2000m,1000m,500m,100m等が例示される。この上限値と組み合わせ得る下限値としては、20m,30m,40m,100m等が例示される。担体の比表面積が大きいときには、ハロゲン化合物のモル数を増加させることが好ましい。
準備工程(混合工程)および還元工程は、操業がやり易いように室温付近において行うことができるが、適宜変更することもできる。例えば2〜80℃、5〜60℃、または10〜30℃の温度範囲とすることが可能である。但し温度はこれに限定されるものではない。
還元工程は、前記した原料と担体とが共存すると共にポリアクリル酸ナトリウムを含有しない状態で、原料を還元剤で還元して白金ナノ粒子を形成することが好ましい。還元剤としては水素が挙げられる。従って、還元工程は、原料に水素ガスを吹き込むバブリングにより行われることが好ましい。還元工程は室温で行うことができる。還元工程の時間としては白金錯体を還元できる時間であれば、特に限定されるものではない。白金錯体の組成、要請される白金ナノ粒子のサイズ、白金ナノ粒子の凝集度、供給する水素ガスの流量等によっても相違するが、還元工程の時間としては、例えば、1分〜100時間、殊に5分〜50時間の範囲内、1時間〜20時間の範囲内とすることができる。但し時間はこれに限定されるものではない。
さて、本出願人は、還元工程において、原料における白金1モルに対して、ハロゲン化合物のモル数が増加されると、かえって白金ナノ粒子の収率が低下することを知見した(図7参照)。そこで、還元工程において、原料における白金1モルに対して、ハロゲン化合物のモル数は0.05〜30モルの範囲内に設定されることが好ましい。殊に、0.08〜15モルの範囲内、0.08〜10モルの範囲内に設定されることが好ましい。
また本出願人は、担体の単位表面積(1m)でみると、担体の単位表面積(1m)あたりハロゲン化合物のモル数が過剰であると、かえって多面体形状の白金ナノ粒子の収率が低下することを知見した(図8参照)。そこで、担体の単位表面積(1m)あたり、ハロゲン化合物のモル数は0.02〜0.7モルの範囲内に設定されることが好ましい。殊に、0.03〜0.4モルの範囲内、0.08〜0.3モルの範囲内、殊に、0.08〜0.2モルの範囲内が好ましい。
還元工程の後、所定時間放置することが好ましい。放置は大気雰囲気あるいは場合によっては加圧雰囲気で行うことができる。放置により、白金錯体のイオンの還元反応を更に進行させることができる。放置時間としては特に限定されるものではなく、白金錯体の組成、要請される白金ナノ粒子のサイズ、白金ナノ粒子の凝集度、供給する水素ガスの流量、要請される生産性等によっても相違するが、例えば、1分間〜200時間、10分〜100時間、1時間〜20時間が挙げられる。多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体の表面を下地として成長するため、白金ナノ粒子がカーボン担体から脱離することが抑えられる。
製造された白金ナノ粒子は、1個の状態で、多面体形状をなしている。殊に、立方体形状(実質的な立方体形状を含む)または14面体形状をなしていることが好ましい。
好ましくは、製造された多面体状の白金ナノ粒子は1個で70ナノメートル以下、60ナノメートル以下、50ナノメートル以下のサイズをもつ。更に好ましくは、白金ナノ粒子は1個で40ナノメートル以下、30ナノメートル以下、20ナノメートル以下、10ナノメートル以下のサイズをもつ。白金ナノ粒子は単結晶とすることができるが、単結晶でなくても良い。なお、製造された白金ナノ粒子同士は、互いに非接触状態で分離していることが好ましいが、場合によっては、複数個が凝集している二次粒子の形態でも良い。二次粒子の粒径は150ナノメートル以下のサイズ、あるいは、80ナノメートル以下のサイズ、あるいは、70ナノメートル以下、50ナノメートル以下、30ナノメートル以下、10ナノメートル以下のサイズをもつことが好ましい。様相1の発明方法は、ポリアクリル酸ナトリウム(以下、PAAともいう)を廃止している。『廃止』とは、ポリアクリル酸ナトリウムを使用しないことをいう。
[実施例1]
本発明の実施例1について説明を加える。所定の容積(300cc)の純水と、12.45ミリグラム(3.0E−5モル)の塩化白金酸カリウム(KPtCl,錯化合物,イオン性白金化合物)と、4.18ミリグラム(8.4E−5モル)のヨウ化カリウム(KI,ハロゲン化合物)と、13.67ミリグラムのカーボン担体(カーボンブラック,電気化学工業株式会社製,商品名:デンカブラック,約50m/1グラム)とを用意した。なお、3.0E−5モルは、3.0×10−5モルを意味する。
純水にカーボン担体を分散させた後、塩化白金酸カリウム(KPtCl)を純水に加えて分散させた。その後、ヨウ化カリウム(KI)を加えて分散させた。これによりカーボン担体を含む混合物(原料)を形成した。混合物を形成する雰囲気は大気雰囲気とした。ここで混合物において、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル濃度は1.00×10−4Mであり、ヨウ化カリウム(KI)のモル濃度は8.40×10−5Mである。Mは容積モル濃度であり、溶液1リットル(1L,1dm)あたりの溶質のモル数を表す溶液の濃度を意味する。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。添加されるヨウ化カリウム(KI)は、白金錯体モル数(塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPtのモル数)の0.84倍のモル数をもつ。すなわち、モル比で、Pt:KI=1:0.84である。
300ミリリットル/分間の条件で水素ガスをこの混合物(30℃)に所定時間(10分間)吹き込んでバブリングし、水素還元工程を行った。白金錯イオンの水素還元により、白金ナノ粒子の核生成が起きると考えられる。その後、この混合物を密閉した状態で、一昼夜(10時間)放置して保持工程を行い、白金ナノ粒子を含む白金担持カーボンを作製した。白金担持カーボンは、カーボン担体に白金を担持させたものである。更に作製した白金担持カーボンについて、透過型電子顕微鏡(TEM,日本電子社製,型式JEM−2000EX)で白金ナノ粒子の形態および粒径を調べた。粒径はTEMの撮影写真における基準サイズに基づいた。図1は白金ナノ粒子の例を基準サイズと共に示す。図1に示すように、立方体または実質的に立方体の形状を有する多面体形状の白金ナノ粒子のほとんどがカーボン担体の表面に担持されていた。多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体の表面を下地として成長するため、白金ナノ粒子がカーボン担体から脱離することが抑えられていた。
得られた白金ナノ粒子の結晶構造をXRD測定により調べたところ、立方晶系の回折パターンが得られ、立方体形状であることが確認された。更に、得られた白金ナノ粒子をTEM像により求めた原子間隔に基づいても、露出結晶面は(100)面であることが確認された。なお、カーボン担体に担持されていた白金ナノ粒子の粒径は20ナノメートル以下であり、殊に3〜10ナノメートル程度と極めて微小であった。白金ナノ粒子は単結晶であると推定される。
更に図1から理解できるように、複数の白金ナノ粒子の凝集度は極めて少なく、多数の多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子が互いに独立した状態でカーボン担体の表面に存在していた。このため、燃料電池の膜電極接合体などにおける電極触媒として使用するとき、触媒性能が向上すると考えられる。
本実施例によれば、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止している。従って、洗浄処理を簡素化でき、洗浄コストも低減できる。更に、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムが白金ナノ粒子に残留する不具合を抑えることができ、多面体形状の白金粒子の収率を高めると共に、多面体形状の白金ナノ粒子が本来有する触媒性能等の性能を確保するのに有利となる。
本実施例において、ポリアクリル酸ナトリウムを使用せずとも、多面体形状として立方体形状をなす白金ナノ粒子が得られる理由としては、必ずしも明確ではないものの、次のように推察される。すなわち、白金錯イオンの水素還元により、白金ナノ粒子の核生成が起きる。このとき、白金ナノ粒子の核は、通常、表面エネルギの最も安定な多面体構造(14面体)を採ると考えられる。ここで、14面体は、(100)面と(111)面とが組み合わさった表面構造を採ると考えられる。白金ナノ粒子が核成長するとき、ヨウ化物(ハロゲン化物)が系内に存在していると、ハロゲン元素であるヨウ素が白金結晶核の(100)面へ選択的に吸着し、白金の結晶核の(100)面の表面自由エネルギがより低下し、(100)面の成長が抑制され、逆に、白金の結晶核の(111)面への成長を促し、その結果、<111>軸方向が優先的に面成長し、最終的に、粒子形状が(100)面で囲まれた立方体型をもつ白金ナノ粒子が生成されるものと考えられる。
白金は立方晶系(面心立方構造,fcc構造)を有すると考えられる。(100)面は、(111)面に比較して原子が疎に配列しているため、表面エネルギが高く、触媒活性等の性能が高いと考えられている。白金ナノ粒子が立方体を構成したときには、白金ナノ粒子の全ての表面が(100)面で取り囲まれると考えられる。従って、多面体形状をもつ白金ナノ粒子は、他の形状(球体など)に比較して、触媒活性等の性能が良いと考えられている。
[実施例2]
本実施例は基本的には実施例1と同様である。所定の容積(300cc)の純水と、12.45ミリグラム(3.0E−5モル)の塩化白金酸カリウム(KPtCl)と、40.00ミリグラム(8.0E−4モル)のヨウ化カリウム(KI)と、13.67ミリグラムのカーボン担体(カーボンブラック)とを用意した。
純水にカーボン担体を分散させた後、塩化白金酸カリウム(KPtCl)を純水に加えて分散させた。その後、ヨウ化カリウム(KI)を加えて分散させた。これによりカーボン担体を含む混合物(原料)を形成した。混合物を形成する雰囲気は大気雰囲気とした。ここで混合物において、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル濃度は1.00×10−4Mであり、と、ヨウ化カリウム(KI)のモル濃度は8.03×10−4Mである。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。添加されるヨウ化カリウム(KI)は、白金錯体モル数(塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル数)の8.03倍のモル数をもつ。すなわち、モル比で、Pt:KI=1:8.03である。
その後、実施例1と同様な条件で水素ガスをこの混合物に所定時間(10分間)吹き込んでバブリングし、水素還元工程を行った。その後、この混合物を密閉した状態で、一昼夜(10時間)放置して保持工程を行い、白金ナノ粒子を含む白金担持カーボンを作製した。作製した白金担持カーボンについて、透過型電子顕微鏡で白金ナノ粒子の形態および粒径を調べた。粒径はTEMの撮影写真における基準サイズに基づいた。図2は白金ナノ粒子の例を基準サイズと共に示す。図2に示すように、多面体として立方体形状をなす白金ナノ粒子がカーボン担体に担持されていた。多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体の表面を下地として成長するため、白金ナノ粒子がカーボン担体から脱離することが抑えられていた。
カーボン担体に担持されていた白金ナノ粒子の粒径は20ナノメートル以下であり、殊に3〜8ナノメートル程度、4〜6ナノメートル程度と極めて微小であった。白金ナノ粒子は単結晶であると推定される。更に図2から理解できるように、複数の白金ナノ粒子の凝集度は極めて少なく、多数の多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子が互いに独立した状態でカーボン担体の表面に存在していた。このため、燃料電池の膜電極接合体などにおける電極触媒として使用するとき、触媒性能が向上すると考えられる。
本実施例によれば、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止している。従って、洗浄処理を簡素化でき、洗浄コストも低減できる。更に本実施例によれば、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムが白金ナノ粒子に残留する不具合を抑えることができ、多面体形状の白金粒子の収率を高めると共に、白金ナノ粒子が本来有する触媒性能等の性能を確保するのに有利となる。
[実施例3]
本実施例は基本的には実施例1と同様である。所定の容積(300cc)の純水と、12.45ミリグラム(3.0E−5モル)の塩化白金酸カリウム(KPtCl)と、2.00ミリグラム(4.0E−5モル)のヨウ化カリウム(KI)と、13.67ミリグラムのカーボン担体(カーボンブラック)とを用意した。
純水にカーボン担体を分散させた後、塩化白金酸カリウム(KPtCl)を純水に加えて分散させた。その後、ヨウ化カリウム(KI)を加えて分散させて混合物(原料)を形成した。ここで混合物において、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル濃度は1.00×10−4Mであり、ヨウ化カリウム(KI)のモル濃度は4.00×10−5Mである。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。添加されるヨウ化カリウム(KI)は、白金錯体モル数(塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル数)の0.4倍のモル数をもつ。すなわち、モル比で、Pt:KI=1:0.40である。
その後、実施例1と同様な条件で水素ガスをこの混合物に所定時間(10分間)吹き込んでバブリングし、水素還元工程を行った。その後、実施例1と同様に保持工程を行い、白金ナノ粒子を含む白金担持カーボンを作製した。作製した白金担持カーボンについて、透過型電子顕微鏡で白金ナノ粒子の形態および粒径を調べた。粒径はTEMの撮影写真における基準サイズに基づいた。図3は白金ナノ粒子の例を基準サイズと共に示す。図3に示すように、多面体形状として立方体形状を有する白金ナノ粒子がカーボン担体に担持されていた。多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体の表面を下地として成長するため、白金ナノ粒子がカーボン担体から脱離することが抑えられていた。
カーボン担体に担持されていた白金ナノ粒子の粒径は20ナノメートル以下であり、殊に3〜10ナノメートル程度、4〜6ナノメートル程度と極めて微小であった。白金ナノ粒子は単結晶であると推定される。更に図3から理解できるように、複数の白金ナノ粒子の凝集度は極めて少なく、多数の多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子が互いに独立した状態でカーボン担体の表面に存在していた。このため、燃料電池の膜電極接合体などにおける電極触媒として使用するとき、触媒性能が向上すると考えられる。
本実施例によれば、実施例1,2と同様に、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止している。従って、洗浄処理を簡素化でき、洗浄コストも低減できる。更に本実施例によれば、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムが白金ナノ粒子に残留する不具合を抑えることができ、多面体形状の白金粒子の収率を高めると共に、白金ナノ粒子が本来有する触媒性能等の性能を確保するのに有利となる。
[実施例4]
本実施例は基本的には実施例1と同様である。所定の容積(300cc)の純水と、12.45ミリグラム(3.0E−5モル)の塩化白金酸カリウム(KPtCl)と、79.70ミリグラム(1.6E−3モル)のヨウ化カリウム(KI)と、13.67ミリグラムのカーボン担体(カーボンブラック)とを用意した。
純水にカーボン担体を分散させた後、塩化白金酸カリウム(KPtCl)を純水に加えて分散させた。その後、ヨウ化カリウム(KI)を加えて分散させた。これによりカーボン担体を含む混合物(原料)を形成した。ここで混合物において、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル濃度は1.00×10−4Mであり、と、ヨウ化カリウム(KI)のモル濃度は1.60×10−3Mである。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。添加されるヨウ化カリウム(KI)は、白金錯体モル数(塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル数)の16.00倍のモル数をもつ。すなわち、モル比で、Pt:KI=1:16.00である。
その後、実施例1と同様な条件で水素ガスをこの混合物に吹き込んでバブリングし、水素還元工程を行い、その後、実施例1と同様に保持工程を行い、白金ナノ粒子を含む白金担持カーボンを作製した。作製した白金担持カーボンについて、透過型電子顕微鏡で白金ナノ粒子の形態および粒径を調べた。粒径はTEMの撮影写真における基準サイズに基づいた。図4は白金ナノ粒子の例を基準サイズと共に示す。図4に示すように、立方体の形状を有する多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体に担持されていた。多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体の表面を下地として成長するため、白金ナノ粒子がカーボン担体から脱離することが抑えられていた。
カーボン担体に担持されていた白金ナノ粒子の粒径は20ナノメートル以下であり、殊に3〜10ナノメートル程度、4〜6ナノメートル程度と極めて微小であった。白金ナノ粒子は単結晶であると推定される。更に図4から理解できるように、複数の白金ナノ粒子の凝集度は極めて少なく、多数の多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子が互いに独立した状態でカーボン担体の表面に存在していた。このため、燃料電池の膜電極接合体などにおける電極触媒として使用するとき、触媒性能が向上すると考えられる。
本実施例によれば、実施例1〜3と同様に、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止している。
[実施例5]
本実施例は基本的には実施例1と同様である。所定の容積(300cc)の純水と、12.45ミリグラム(3.0E−5モル)の塩化白金酸カリウム(KPtCl)と、124.50ミリグラム(2.5E−3モル)のヨウ化カリウム(KI)と、13.67ミリグラムのカーボン担体(カーボンブラック)とを用意した。
純水にカーボン担体を分散させた後、塩化白金酸カリウム(KPtCl)を純水に加えて分散させた。その後、ヨウ化カリウム(KI)を加えて分散させて混合物(原料)を形成した。ここで混合物において、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル濃度は1.00×10−4Mであり、と、ヨウ化カリウム(KI)のモル濃度は2.50×10−3Mである。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。添加されるヨウ化カリウム(KI)は、白金錯体モル数(塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル数)の25.00倍のモル数をもつ。すなわち、モル比で、Pt:KI=1:25.00である。
その後、実施例1と同様な条件で水素ガスをこの混合物に吹き込んでバブリングし、水素還元工程を行い、その後、実施例1と同様に保持工程を行い、白金ナノ粒子を含む白金担持カーボンを作製した。作製した白金担持カーボンについて、透過型電子顕微鏡で白金ナノ粒子の形態および粒径を調べた。粒径はTEMの撮影写真における基準サイズに基づいた。図5は白金ナノ粒子の例を基準サイズと共に示す。図5に示すように、立方体または実質的に立方体の形状を有する多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体に担持されていた。カーボン担体に担持されていた白金ナノ粒子の粒径は20ナノメートル以下であり、殊に3〜10ナノメートル程度、4〜6ナノメートル程度と極めて微小であった。白金ナノ粒子は単結晶であると推定される。更に図5から理解できるように、複数の白金ナノ粒子の凝集度は少なく、多数の多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子が互いに独立した状態でカーボン担体の表面に存在していた。このため、燃料電池の膜電極接合体などにおける電極触媒として使用するとき、触媒性能が向上すると考えられる。
本実施例によれば、実施例1〜4と同様に、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤および凝集抑制剤として使用することを廃止している。
[実施例6]
本実施例は基本的には実施例1と同様である。所定の容積(300cc)の純水と、12.45ミリグラム(3.0E−5モル)の塩化白金酸カリウム(KPtCl)と、249.0ミリグラム(5.0E−3モル)のヨウ化カリウム(KI)と、13.67ミリグラムのカーボン担体とを用意した。
純水にカーボン担体を分散させた後、塩化白金酸カリウム(KPtCl)を純水に加えて分散させた。その後、ヨウ化カリウム(KI)を加えて分散させて混合物を形成した。ここで混合物において、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル濃度は1.00×10−4Mであり、ヨウ化カリウム(KI)のモル濃度は5.00×10−3Mである。この混合物にはポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない。添加されるヨウ化カリウム(KI)は、白金錯体モル数(塩化白金酸カリウム(KPtCl)のモル数)の50.00倍のモル数をもつ。すなわち、モル比で、Pt:KI=1:50.00である。
その後、実施例1と同様な条件で水素ガスをこの混合物に吹き込んでバブリングし、水素還元工程を行い、その後、実施例1と同様に保持工程を行い、白金ナノ粒子を含む白金担持カーボンを作製した。作製した白金担持カーボンについて、透過型電子顕微鏡で白金ナノ粒子の形態および粒径を調べた。粒径はTEMの撮影写真における基準サイズに基づいた。図6は白金ナノ粒子の例を基準サイズと共に示す。図6に示すように、立方体または実質的に立方体の形状を有する多面体形状の白金ナノ粒子がカーボン担体に担持されていた。カーボン担体に担持されていた白金ナノ粒子の粒径は20ナノメートル以下であり、殊に3〜10ナノメートル程度、4〜6ナノメートル程度と極めて微小であった。白金ナノ粒子は単結晶であると推定される。更に図6から理解できるように、複数の白金ナノ粒子の凝集度は極めて少なく、多数の多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子が互いに独立した状態でカーボン担体の表面に存在していた。このため、燃料電池の膜電極接合体などにおける電極触媒として使用するとき、触媒性能が向上すると考えられる。
本実施例によれば、実施例1〜5と同様に、高い粘性をもつポリアクリル酸ナトリウムをキャッピング剤として使用することを廃止している。
[ヨウ化カリウム(KI)の濃度と収率との関係]
(収率特性)
図7の特性線W1は、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対して、ハロゲン化合物であるヨウ化カリウム(KI)のモル数を変化させたときにおいて、多面体形状として立方体の白金ナノ粒子収率の変化を調べた試験結果を示す。収率とは、生成された白金ナノ粒子のうち、立方体形状の白金ナノ粒子が形成されている粒子数の%を意味する。
図7の特性線W1に示すように、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対して、ヨウ化カリウム(KI)のモル数が過剰であれば、かえって収率が低下する。すなわち、ヨウ化カリウム(KI)のモル数が少めの方が、かえって収率が高くなる。この理由としては、現時点では必ずしも明確ではないものの、次のように考えられる。すなわち、ヨウ化カリウムはカーボン担体(カーボンブラック)の表面に吸着されるため、カーボン担体の表面におけるヨウ化カリウム(KI)の濃度は系内において高くなる。このため、溶液全体におけるヨウ化カリウム(KI)のモル数自体が少なくても、カーボン担体(カーボンブラック)の表面におけるヨウ化カリウム(KI)が機能するためと推察される。もし、カーボン担体の表面におけるヨウ化カリウム(KI)の濃度が過剰になれば、Ptの種結晶の(100)面の他に、(111)面にもヨウ化カリウムが吸着し、多面体形状の白金ナノ粒子の成長が妨げられるものと考えられる。
図7の特性線W1によれば、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対して、ヨウ化カリウム(KI)を0.05〜25モルの範囲内であれば、収率を10%以上確保でき、良好である。更に、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対してヨウ化カリウム(KI)を0.08〜15モルの範囲内であれば、収率を25%以上確保できる。更にまた、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対してヨウ化カリウム(KI)を0.1〜11モルの範囲内であれば、収率を60%以上確保できる。更にまた、塩化白金酸カリウム(KPtCl)1モルに対してヨウ化カリウム(KI)を0.1〜10モルの範囲内であれば、収率を80%以上確保できる。
図7の特性線W2は、塩化白金酸カリウム(KPtCl)のPt1モルに対してヨウ化カリウム(KI)のモル数を変化させたときにおいて、多面体形状(立方体形状)をなす白金ナノ粒子の粒子径を調べた試験結果を示す。図7の特性線W2に示すように、塩化白金酸カリウム(KPtCl)1モルに対してヨウ化カリウム(KI)を増加させれば、白金ナノ粒子の粒子径が低下する傾向が得られた。なお、白金ナノ粒子の粒径が過少であるのは好ましくなく、3ナノメートルまたは4ナノメートル以上が良好とは考えられている。
[カーボン担体の表面積とヨウ化カリウム(KI)の濃度と収率との関係]
ハロゲン化合物であるヨウ化カリウムはカーボン担体に吸着されると考えられるため、カーボン担体の表面積はカーボン担体の表面付近におけるヨウ化カリウム(KI)の濃度に影響し、ひいては多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子の収率に影響すると考えられる。
図8の特性線X1は、カーボン担体(カーボンブラック)の表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)を変化させたときにおいて、多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子の収率の変化を調べた試験結果を示す。ヨウ化カリウムはカーボン担体に吸着されるため、図8の特性線X1に示すように、カーボン担体の表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)を0.01〜0.7モルの範囲内にすれば、収率を10%以上確保できる。更に、カーボン担体の単位表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)を0.02〜0.5モルの範囲内にすれば、収率を15%以上確保できる。更にまた、カーボン担体の単位表面積あたりヨウ化カリウム(KI)を0.08〜0.4モルの範囲内にすれば、収率を50%以上確保できる。更にまた、カーボン担体の単位表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)を0.05〜0.2モルの範囲内にすれば、収率を80%以上確保できる。
なお、図8の特性線X2は、カーボン担体の単位表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)のモル数を変化させたときにおける多面体形状(立方体形状)の白金ナノ粒子の粒子径を調べた試験結果を示す。図8の特性線X2に示すように、カーボン担体の単位表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)のモル数を増加させれば、白金ナノ粒子の成長が抑えられ、その粒子径が低下し、且つ、カーボン担体の単位表面積(1m)あたりヨウ化カリウム(KI)のモル数を低下させれば、多面体形状の白金ナノ粒子の粒子径が確保される傾向が得られた。
[他の試験]
本発明者は、ハロゲン化合物であるヨウ化物として、ヨウ化カリウム(KI)以外にも,ヨウ化ルビジウム(RbI)を用いて同様な条件で試験を行い、ほぼ同様な多面体形状の白金ナノ粒子が作製されることを、本発明者は確認した。更に、ハロゲン化合物として、ヨウ化セシウム(CsI),ヨウ化リチウム(LiI),ヨウ化ナトウム(NaI)をそれぞれ用いて、同様な条件で試験を行い、多面体形状をなす白金ナノ粒子が作製されることを確認した。
更に、ハロゲン化合物としてアルカリ金属の塩化物および臭化物にも着目し、塩化カリウム(KCl),塩化ルビジウム(RbCl),塩化セシウム(CsCl),塩化リチウム(LiCl),塩化ナトリウム(NaCl)、アルカリ金属の臭化物として、臭化カリウム(KBr),臭化ナトリウム(NaBr),臭化セシウム(CsBr),臭化リチウム(LiBr)を用いて、多面体形状をなす白金ナノ粒子が作製されることを本発明者は試験により確認した。
但し、この試験では、上記したヨウ化物,塩化物,臭化物の一方と、塩化白金酸カリウム(KPtCl)の溶液とを混合させた混合物(カーボン担体およびポリアクリル酸ナトリウムを含まず)について、水素のパブリングにより水素還元工程を実施例と同様に実施した。この試験においても、多面体形状の白金ナノ粒子が生成されることが確認されている。
[その他]
本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。必要に応じて、混合物または塩化白金酸カリウム(KPtCl)の溶液に超音波振動を入力させても良い。水素還元工程においては、300ミリリットル/分の条件で水素ガスを混合物に10分間吹き込んでバブリングしているが、水素ガスの単位時間あたりの供給流量は、これに限定されるものではなく、50〜3000ミリリットル/分等と、混合物の容積などの要因に応じて変更できる。吹き込み時間は10分間に限定されるものではなく、5分間、20分間、40分間等のように適宜変更できる。
本発明は、例えば、燃料電池の電極触媒、改質装置の改質触媒、CO低減反応用の触媒、COシフト反応用の触媒、排気ガス浄化装置に保持される触媒等に利用することができる。

Claims (8)

  1. ハロゲン元素のうちの少なくとも1種とアルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1種を含む第1化合物と、白金化合物の溶液と、担体とからなる混合物を準備する準備工程と、
    前記混合物にポリアクリル酸ナトリウムが含まれていない状態において、前記混合物を還元剤で還元して白金ナノ粒子を前記担体に担持させる還元工程と、を実施し
    前記混合物は、前記白金化合物における白金1モルに対して前記第1化合物が0.1〜10モルの範囲内である、白金ナノ粒子の製造方法。
  2. 請求項1において、前記第1化合物は、ナトリウム(Na),カリウム(K),ルビジウム(Rb),セシウム(Cs),ベリリウム(Be),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)のうちの1種または2種以上を含む白金ナノ粒子の製造方法。
  3. 請求項1または2において前記混合物は、前記担体の単位表面積(1m)あたりの前記第1化合物が0.05〜0.8モルの範囲内である白金ナノ粒子の製造方法
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記白金化合物は塩化白金酸カリウム(KPtClである、白金ナノ粒子の製造方法。
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項において、前記還元工程は、前記混合物に水素ガスを吹き込むバブリングにより行われる白金ナノ粒子の製造方法。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項において、前記白金ナノ粒子は多面体形状をなしている白金ナノ粒子の製造方法。
  7. 請求項1〜6のうちのいずれか一項において、前記第1化合物は、ヨウ化物、塩化物および臭化物のうちの1種または2種以上を含む、白金ナノ粒子の製造方法。
  8. 請求項7において、前記第1化合物はヨウ化物である、白金ナノ粒子の製造方法。
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