JP5535021B2 - グラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
前記第一圧延体または第二圧延体の一方の圧延体が硬度D10以上D95以下であり、他方の圧延体が硬度D77以上であることを特徴とする請求項1記載のグラファイトフィルムの製造方法に関する(請求項2)、
前記原料グラファイトフィルムのJIS C2151に記載の巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法に関する(請求項3)、
前記原料グラファイトフィルムの密度が1.9g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法に関する(請求項4)、ものである。
である。
本発明において、硬度の測定は、JIS K6253(ISO 7619)に記載のプラスチック用のタイプDデュロメータにて測定できる。
本発明で使用する原料グラファイトフィルムは特に制限されず、例えば、高分子焼成タイプでも天然黒鉛タイプのグラファイトフィルムでもよい。原料グラファイトフィルムは、発泡させていることが好ましく、その密度は1.9g/cm3以下、好ましくは1.6g/cm3以下、更に好ましくは1.3g/cm3以下であるとよい。密度が1.9g/cm3以下であれば、グラファイト層間にわずかな空間が存在するために、折り曲げ時にかかる歪を逃がすことができ、さらに圧延処理などの圧縮処理を施すことにより柔軟性を付与することができる。また、密度が1.9g/cm3以下であれば、圧延の際に原料グラファイトフィルムの歪を逃がすことができるために折れシワも発生しにくい。
密度が小さい原料グラファイトフィルムほど層間に空間を多く有しており、言い換えれば、発泡の程度の大きな原料グラファイトフィルムである。
本発明の圧延処理とは、図2のように原料グラファイトフィルムを第一圧延体と第二圧延体の間を通過させて圧縮し、柔軟性を付与する処理である。第一圧延体及び第二圧延体の少なくとも一方の圧延体がロール形状であることが好ましく、ロールを回転させることで連続的に圧延体間を通過させることができる。
本発明では、原料グラファイトフィルムを圧延することで、柔軟性に優れたグラファイトフィルムが得られる。圧延の程度としては、密度が1.3g/cm3以上、好ましくは1.5g/cm3以上、更に好ましくは1.7g/cm3以上になるように圧延するとよい。密度が1.3g/cm3以上になるように圧延すれば、柔軟性を有するグラファイトフィルムとなる。
本発明で使用する圧延装置は特に制限されないが、例えば、クリアランス式の圧延装置や圧力式の圧延装置を挙げることができる。クリアランス式の圧延装置は、第一圧延体と第二圧延体を備えており、さらに圧延体間のクリアランスを調節する機構を備えていることが好ましい。圧力式の圧延装置は、第一圧延体と第二圧延体を備えており、さらに圧延体同士の接触圧力を調節する機構を備えていることが好ましい。
本発明の第一圧延体、第二圧延体とは、原料グラファイトフィルムを圧縮するためのロール形状または板形状の部材である。第一圧延体、第二圧延体の少なくとも一方はロール形状であることが好ましく、第一圧延体/第二圧延体の形状の組み合わせとしては、図3の31、32のようにロール形状/ロール形状、ロール形状/板形状、板形状/ロール形状、が挙げられる。ロール形状/ロール形状の組み合わせは、ロールの回転速度を調整することで、圧延体同士の摩擦をなくすことができ、グラファイトフィルムを傷つけることなく圧延できるため好ましい。
本発明の第一圧延体または第二圧延体の少なくとも一方の硬度が、D10以上D95以下、好ましくはD40以上D90以下、更に好ましくはD60以上D85以下であるとよい。第一圧延体または第二圧延体の少なくとも一方の硬度がD10以上であれば、原料グラファイトフィルムを十分に圧縮することができ、柔軟性を付与できる。また、第一圧延体または第二圧延体の少なくとも一方の硬度がD95以下であれば、原料グラファイトフィルムの歪を逃がすことができ、折れシワを発生させずに圧延処理を実施できる。
また、本発明の硬度がD10以上D95以下である少なくとも一方の圧延体がロール形状であると、原料フィルムの歪を逃がし易いために好ましい。
本発明の圧延体の材質は特に限定されないが、金属製、樹脂製、セラミック製紙製、木製などが挙げられる。
本発明の第一圧延体または第二圧延体の少なくとも一方の硬度が、D10以上D95以下であり、他方の硬度は特に制限はないが、好ましくはD30以上、より好ましくはD50以上、更にはD60以上、更にはD70以上、D77以上、D90以上、特に好ましくはD95以上であるとよい。他方の硬度がD30以上であれば、原料グラファイトフィルムを圧縮することができ、柔軟性を付与できる。特には、他方の硬度がD77以上であれば、原料グラファイトフィルムを十分に圧縮することができ、柔軟性の非常に優れたグラファイトフィルムが得られる。
本発明の第一圧延体と第二圧延体間のクリアランスとは、図4のように第一圧延体と第二圧延体間の隙間を指す。本発明のクリアランスは、第一圧延体及び第二圧延体に基準を設け、基準間の距離を計測することで測定できる。本発明でクリアランス0μm(本発明では「ゼロ点」ともいう。)とは、圧延体同士接触することによって変形しておらず、本来の圧延体の形状で圧延体同士を接触させた状態をいう。本発明の圧延体は圧延体間での接触圧力で変形する場合があるため、ゼロ点の設定時には注意する必要がある。第一圧延体と第二圧延体に設ける基準は、当業者がクリアランス0μmを測定できるような各圧延体上の点であれば適宜設定することができるが、例えば図4のように第一圧延体と第二圧延体がロール形状である場合には、ロールの中点を基準として第一圧延体と第二圧延体の中点間の距離44を測定することが好ましい。本発明では、第一圧延体と第二圧延体の基準間の距離44をゼロ点から10μm広げた状態をクリアランス+10μm、第一圧延体と第二圧延体の中点間の距離44をゼロ点から10μm狭めた状態をクリアランス−10μmという。また、例えば圧延体が板形状の場合には、原料グラファイトフィルムと接触する面と反対の面に基準を設けてゼロ点を測定することもできる。
本発明の圧延処理におけるライン速度とは、圧延体間を通す原料グラファイトフィルムの搬送速度を指す。ライン速度の高速化は生産性の観点から重要であるが、一般的にはライン速度を高速化すればグラファイトフィルムの折れシワや裂けのような不具合を助長してしまう傾向にある。
ライン速度が1m/min以上であると生産性がよくなり、20m/min以下であると折れシワや裂けのような不具合を生じずに圧延を行うことができる。
本発明の圧延処理において、原料グラファイトフィルムの圧延体間への供給方法としては、ロール形状を有する一方の圧延体に原料グラファイトフィルムを接触させながら供給するとよい。図5の52に示すように、フラット性が悪い原料グラファイトフィルムを圧延体間に供給すると、圧延体がフィルムの凹凸を巻き込み、折れシワが発生しやすい。図5の53のように、圧延体に接触させながら原料グラファイトフィルムを供給することで、折れシワを発生させないように圧延できるので好ましい。
本発明の圧延処理においては、折れシワや裂け不良を抑制するために圧延体間へ供給する原料グラファイトフィルムへ加える張力が重要な要素である。この張力は、好ましくは3g/cm以上400g/cm以下、より好ましくは5g/cm以上200g/cm以下、更に好ましくは10g/cm以上80g/cm以下である。3g/cm以上400g/cm以下であると、折れシワや裂けのような不具合を生じずに圧延を行うことができる。
更に、原料グラファイトフィルムのたるみやa値を制御すれば、裂け不良を抑制しながら圧延処理を実施できる。
JIS C2151記載のフィルムの“たるみ”(以下、「たるみ」または「Zgs」という。)のあるフィルムは、フィルムを引っ張ったとき、フィルムの一部がその範囲で通常のフィルムの高さ以下となる。フィルムのたるみは、ある一定の長さのフィルムを巻き戻し、図7のように1500mm離れた2本の平行な棒に直角方向に載せ、中央部で均一な懸垂線からの偏差を測定する。例えばフィルムのMD方向に均一に張力を加えた場合、フィルムにたるみがあるとたるみ部分には力が加わりにくい。即ち、フィルムの端部にたるみがある場合、端部へ力が加わりにくく裂けを抑制できる。
本発明の原料グラファイトフィルムは、(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下であることが原料グラファイトフィルムの裂け抑制の視点から好ましい。図8にa値の模式図を示した。フィルムの裂け不良はフィルムの端部から発生するため、フィルムの裂け易さは端部のたるみであるa値に影響される。a値は、より好ましくは10mm以上45mm以下、さらに好ましくは20mm以上40mm以下である。a値が5mm以上であると、捩れや張力に対して端部へかかる応力が分散されるため裂け不良を抑制できる。
a値が大きいと、折れシワが発生しやすくなるが、本発明のように圧延体の硬度及びクリアランスを制御することによって、折れシワの発生を抑制しながら圧延処理を実施できる。
本発明の原料グラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における第7.3.2項に記載の曲がりは、10mm以下であることが好ましい。図9に曲がりの模式図を示した。本発明の原料グラファイトフィルムの曲がりは、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下であるとよい。曲がりが10mm以下であると、連続的に圧延処理を実施する際に蛇行が少なく、原料グラファイトフィルムの長さが長くても折れシワ抑制しながら圧延処理することができる。
本発明の原料グラファイトフィルムの幅(TD方法の長さ)が広くなると、圧延を施しにくくなる。幅が100mm以上、さらに150mm以上、特には200mm以上になると、折れシワが発生しやすいが、本発明の圧延体の硬度、クリアランスを制御することによって、折れシワを抑制して圧延処理を実施できる。
本発明の原料グラファイトフィルムのたるみの大きさは、原料グラファイトフィルムの幅Ugsと相関がある。原料グラファイトフィルムの幅が小さいと、たるみは小さくなる。したがって、本発明では原料グラファイトフィルムの幅当たりのたるみZgs/Ugsを平坦性の指標できる。本発明の原料グラファイトフィルムのJIS C2151に記載の巻取り性評価におけるたるみZgsを幅Ugsで除したZgs/Ugsは0.5以下、好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.20以下である。Zgs/Ugsが0.5以下である、本発明の圧延体の硬度、クリアランスを制御することによって、折れシワを抑制して圧延処理を実施できる。
本発明の原料グラファイトフィルムの長さは特に制限されないが、長いほど張力を一定に加えやすいために好ましい。本発明の原料グラファイトフィルムの長さは1m以上、好ましくは5m以上、更に好ましくは10m以上であるとよい。
本発明の原料グラファイトフィルムの厚みは特に制限されない。本発明の原料好ましくは15μm以上1000μm以下、より好ましくは30μm以上500μm以下、更に好ましくは50μm以上200μm以下である。15μm以上1000μm以下であれば、原料グラファイトフィルムのコシが強く、圧延体に凹凸が巻き込まれにくいため、折れシワが発生しにくい。
<圧延後のグラファイトフィルムの柔軟性>
グラファイトフィルムの柔軟性は、MIT耐屈曲試験にて実施した。15×100mmの試験片3枚を、図11の113、114、115点から抜き出した。図11の113、114、115はグラファイトフィルムの中間地点で、113、115は端から5mmの場所、114は113と115の中間である。東洋精機(株)製のMIT耐揉疲労試験機型式Dを用いて、試験荷重100gf(0.98N)、速度90回/分、折り曲げクランプの曲率半径Rは2mmでおこなった。23℃の雰囲気下、折り曲げ角度は左右へ135度で切断するまでの折り曲げ回数を測定した。3枚の試験片を用いて測定し、平均値が10000回以上を5、5000回以上10000回未満を4、1000回以上5000回未満を3、100以上1000回未満を2、100回未満を1と評価し表1〜5に記載した。
図1のような、圧延後のグラファイトフィルムの折れシワについて評価した。グラファイトフィルムの全長にわたり、長さ5mm以上の折れシワの個数を数え、単位長さ(1m)あたりのシワの個数として換算した。1mあたりのシワの個数が、0.01個/m未満は5、0.01個/m以上0.05個/m未満は4、0.05個/m以上〜0.2個/m未満は3、0.2個/m以上〜1個/m未満は2、1個/m以上は1とした。
グラファイトフィルムの裂けを評価した。グラファイトフィルムの全長さにわたり、図10のような、両端部から30mm以内(TD方向)に発生した長さ5mm以上の裂け不良を数え、単位長さ(1m)あたりの裂け不良の数として換算した。1mあたりの裂け不良が、0.01個/m未満は5、0.01個/m以上0.05個/m未満は4、0.0.05個/m以上〜0.2個/m未満は3、0.2個/m以上〜1個/m未満は2、1個/m以上は1とした。
グラファイトフィルムの厚みムラを評価した。グラファイトフィルムのMD方向の中間地点(図11の113、114、115付近)のTD方向を5mm間隔で厚み測定を実施し、厚みの最大値と最小値の差を測定した。厚みの差が1μm未満は5、1μm以上3μ未満は4、3μm以上5μ未満は3、5μm以上10μ未満は2、10μm以上を1とした。
なお、厚みの測定方法は後述の方法にしたがって実施した。
原料グラファイトフィルムの平坦性の評価は、JIS C2151に記載のフィルムの巻取り性評価に基づくたるみ測定で、たるみの大きさを室温(23℃)にて測定した。
(試験片) 試験片は、原料グラファイトフィルムのロールから新しく約2mの長さを引き出したものとする。このとき試験片を取り出す場所は、ロールの巻きの中央付近からとする。
つまり、100mの巻きであれば、巻き終わりから50m付近から試験片を3枚取り出す。試験片を取り出せない長さ2m未満のシート状のサンプルについては、試験は未実施とした。
(装置について) 装置について次に説明する(図7)。
自由に回転する2本の金属製ロール及びこの2本のロールを平行に支える堅固な架台を有する。各ロールは、直径が100mm±10mmで、長さが試験するフィルムの最大幅が十分に載せられるものを準備する。2本のロールの軸は同一水平面にあり、互いに1500mm±15mmの間隔を置いて0.1度以内(すなわち、ロールの長さ1mについて1.8mm以内)で平行な状態に固定する。ロールは、円筒度0.1mm以内の円筒状とし、表面は適切ななし地仕上げ(研磨仕上げではない)ものとする。
架台の反対側の端で、2本目のロール(ロール2)から自由に垂れ下がったフィルムにおもり又はばね付きクランプを固定できるようにする。おもり又はばね荷重は、フィルムの幅1cm当たり50gをかけ、フィルムの幅方向にできるだけ均一に張力を加えられるように調節できるものとする。あるいは、テンションロールに巻きつけて、幅1cm当たり50gの、均一な張力を加えてもよい。
2本のロール間の中央部でロールに平行な線に沿って、2本のロール間の平面と下に下がったフィルムとの距離を測定するための器具を準備する。測定に用いる器具は、長さ1525mm以上の鋼製直定規及び1mm目盛りの付いた長さ150mmの鋼製物差しとする。又は、フィルムの位置を自動的に又は半自動的に示すような複雑な器具を用いてもよい。
鋼製直定規及び目盛り付きの鋼製物差しを用いて、2本のロールの中央部で幅方向に沿ってフィルムを確認する。
原料グラファイトフィルムのa値の測定も、前述したJIS C2151記載のたるみ測定と同様の状態にフィルムをセットしてから実施した。図8のように、最端部の懸垂線からのたるみの長さを測定し、次に、最端部から30mm地点の懸垂線からのたるみの長さを測定した。その後、(最端部のたるみ)から(最端部から30mm地点のたるみ)を引いた。左右に対して同様の計測を実施し、その平均値を1回の測定値とした。端部のたるみの値は、3枚の試験片に対して実施し、3枚の試験片の中央値を結果として表に記載した。試験片の採取場所はたるみ測定と同様である。
ある一定の長さのフィルムを巻き戻して平面上に置き、そのフィルムの両エッジについて直線からの偏差をそれぞれ測定する。
(装置)装置について次に説明する。(図9)
幅が試験するフィルムの最大幅より十分大きく、長さが1500mm±15mmで、両端の平行度が0.1度以内(又は、テーブルの幅1m当たり1.8mm以内)のものを使用する。適切な材質で表面を(梨)地仕上げをした(研磨仕上げしていない)平らで水平なものを使用する。テーブルの長さがこれより長い場合は、テーブルの表面に1500mm±15mm間隔で平行な2本の標線を明確に描く。標線の平行度は0.1度以内(標線の長さ1m当たり1.8mm以内)とする。
テーブル表面に載せたフィルムを平らにするための柔らかいブラシ。
長さが1525mm以上の鋼製のもの。
長さが150mmで1mm間隔の目盛りが付いた鋼製のもの。
同じ方法で、フィルムのもう一方のエッジと直定規との偏差d2を測定する。
試験片の曲がりの値は、基準線の間隔の中央で、フィルムの両側におけるミリメートルで表した直定規のエッジとフィルムのエッジとの偏差の和(d1+d2)とする。さらに、他の2枚の試験片についてこの方法を繰り返す。(d1+d2)=Rgsである。
原料グラファイトフィルムの幅Ugsは、図12のポイント121、122、123の幅を23℃で測定し、平均値を表に記載した。なお、121、123はフィルムの端より50mm地点であり、122は121と123の中間地点である。
原料グラファイトフィルムの平均引裂荷重の測定は、JISK7128記載のトラウザー引裂試験法により実施した。実際の測定では、図11の3点から、150mm×50mmの試験片を抜き出した。各サンプルに75mmの切れ目を入れ、オートグラフを用い、試験速度200mm/minにて試験を実施し、平均引裂荷重を測定した。3点の測定の平均値を測定値とした。平均引裂荷重は、SIMAZU製のオートグラフ(型番:AG−10TB)を使用し、50Nのロードセル(型番:SBL−50N)を使用した。
グラファイトフィルムの厚みの測定方法としては、ハイデンハイン(株)から入手可能な厚みゲージ(HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温23℃の恒温室にて測定した。
原料グラファイトフィルムの密度は、10cm角の原料グラファイトフィルムの重量(g)を原料グラファイトフィルムの縦(10cm)、横(10cm)、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出した。
圧延体の硬度の測定は、JIS K6253(ISO 7619)記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方に従って実施した。JIS K6253に定められた形状の押針を、定められたばねの力で試験片表面に押し付け、そのときの押針の押し込み深さから得られる硬さを測定した。具体的には、高分子計器株式会社より入手可能なアスカーゴム硬度計D型を使用して、室温23℃の恒温室にて測定した。試験数は5回実施し、その中央値を表に記載した。
a=(最端部のたるみ)−(最端部から30mm地点のたるみ)
b=(圧延体と原料グラファイトフィルムの接触開始点)−(圧延体の中心点)−(圧延体同士の接点)のなす角度
・原料グラファイトフィルム3(GS3)
厚さ75μm、幅230mm、長さ5.5mのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を、図13のように、外径100mm、長さ300mmの円筒状の黒鉛製内芯131に巻き付け、内径130mmの外筒132を被せた。この容器を電気炉内に横向きにセットした。1400℃まで1℃/minの昇温条件で炭化処理を行った。次に、得られたロール状の炭化フィルム143を外径100mmの内芯141に、図14のようにセットして、この容器を、横向きに黒鉛化炉内にセットし(支え142により内芯を浮かせた状態)、2900℃まで2℃/minの昇温条件で黒鉛化処理を実施した。さらに得られたグラファイトフィルムをφ100の円筒状の芯に巻き直して、再び2900℃まで加熱して、2回目の黒鉛化処理を実施した。巻き直す程度を調節し、たるみ=20mm、a値=10mm、曲がり=<2mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS3を調製した。
2900℃まで0.5℃/minの昇温条件で黒鉛化処理をおこなったこと以外はGS3と同様にして、たるみ=20mm、a値=10mm、曲がり=<2mm、厚み=38μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.80g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS1を調製した。
2900℃まで1℃/minの昇温条件で黒鉛化処理をおこなったこと以外はGS3と同様にして、たるみ=20mm、a値=10mm、曲がり=<2mm、厚み=44μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.56g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS2を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS1と同様にして、たるみ=35mm、a値=25mm、曲がり=<2mm、厚み=38μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.80g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS4を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS2と同様にして、たるみ=35mm、a値=25mm、曲がり=<2mm、厚み=44μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.56g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS5を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=35mm、a値=25mm、曲がり=<2mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS6を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS1と同様にして、たるみ=65mm、a値=45mm、曲がり=<2mm、厚み=38μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.80g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS7を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS2と同様にして、たるみ=65mm、a値=45mm、曲がり=<2mm、厚み=44μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.56g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS8を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=65mm、a値=45mm、曲がり=<2mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS9を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=35mm、a値=0mm、曲がり=<2mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS10を調製した。
2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=35mm、a値=5mm、曲がり=<2mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS11を調製した。
1回目の黒鉛化の際に図15のように縦置きで熱処理したこと、2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=35mm、a値=25mm、曲がり=5mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS12を調製した。
1回目の黒鉛化の際に図のように縦置きで熱処理したこと、2回目の黒鉛化処理前に黒鉛芯に巻き直す程度を調節したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=35mm、a値=25mm、曲がり=10mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS13を調製した。
厚さ50μm、幅230mm、長さ5.5mのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を使用したこと以外は、GS3と同様にして、たるみ=20mm、a値=10mm、曲がり=<2mm、厚み=38μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS14を調製した。
厚さ75μm、幅230mm、長さ330mmのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を250mm×350mm×厚み10mmの黒鉛板2枚の間に挟んで炭化処理及び黒鉛化処理を実施したこと、2回目の黒鉛化処理を実施しなかったこと以外はGS3と同様にして、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=0.3m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS15を調製した。
硫酸を含浸した天然黒鉛粉を400℃にて発泡させ、圧延ロールで仮圧縮成型し、たるみ=20mm、a値=10mm、曲がり=<2mm、厚み=60μm、幅=200mm、長さ=5m、密度1.14g/cm3、平均引裂荷重=0.01NのGS16を作製した。
200mm幅×5mのGS3を、株式会社サンクメタル製2ton精密ロールプレス(クリアランス式)にて圧延した。第一圧延体はφ200×幅250mm、SKD11製(硬度D95より大)の金属ロール、第二圧延体はφ200×幅250mm、硬度D77のウレタンロールを取り付けた。圧延体間のクリアランスは、−200μmに調整し、原料グラファイトフィルムにMD方向に30g/cmの張力を加え、b=120度となるように第二圧延体に接触させながら、GS3を圧延体間に供給した。ライン速度は2m/minで実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体に硬度D90のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体に硬度D50のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体に硬度D20のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に硬度D77のウレタンロールを、第二圧延体にSKD11製(硬度D95より大)の金属ロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に奥行250×幅250mm×厚み100mm、SKD11製の金属板(硬度D95より大)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体に奥行250×幅250mm×厚み100mm、硬度D77のウレタン板を使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
圧延体間のクリアランスを±0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
ロール間のクリアランスを−50μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
ロール間のクリアランスを−100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
ロール間のクリアランスを−300μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS10を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS12を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS13を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
株式会社サンクメタル製10ton精密ロールプレス(圧力式)を使用し、1tonの荷重を加えたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
6tonの荷重を加えたこと以外は、実施例25と同様にして圧延処理した。
得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に硬度D77のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に硬度D30のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に硬度D50のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に硬度D60のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第一圧延体に硬度D70のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS14を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
b=0度となるように第二圧延体に接触させながら、GS3を圧延体間に供給したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
b=10度となるように第二圧延体に接触させながら、GS3を圧延体間に供給したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムにMD方向に張力を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムにMD方向に10g/cmの張力を加えこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムにMD方向に100g/cmの張力を加えこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
ライン速度は10m/minで実施したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×0.3mのGS15を用いてこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
原料グラファイトフィルムに200mm幅×5mのGS16を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体にSKD11製(硬度D95より大)の金属ロールを使用したこと、圧延体間のクリアランスを50μmと調整したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
圧延体間のクリアランスを30μmと調整したこと以外は、比較例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
圧延体間のクリアランスを0μmと調整したこと以外は、比較例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
圧延体間のクリアランスを−100μmと調整したこと以外は、比較例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
圧延体間のクリアランスを−200μmと調整したこと以外は、比較例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
圧延体間のクリアランスを30μmと調整したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体にSKD11製(硬度D95より大)の金属ロールを使用したこと、0.1tonの荷重を加えたこと以外は、実施例24と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。表1に示す。
第二圧延体にSKD11製(硬度D95より大)の金属ロールを使用したこと、1tonの荷重を加えたこと以外は、比較例7同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体にSKD11製(硬度D95より大)の金属ロールを使用したこと、6tonの荷重を加えたこと以外は、比較例7同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
第二圧延体に硬度D10未満のウレタンロールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして圧延処理を実施した。得られたグラファイトフィルムの各種物性を測定した。
表1に示すように、圧延体の少なくとも一方が、硬度D10以上D95以下の圧延装置を使用してグラファイトフィルムを製造した実施例1〜実施例5、実施例8〜実施例11、実施例26〜実施例30は、折れシワの発生を抑制しながら柔軟性を付与できた。一方、比較例1、比較例6、比較例10は、折れシワは発生しなかったものの柔軟性が極めて悪く、比較例2〜比較例4は、柔軟性は付与できたものの折れシワが発生した。
第二圧延体の硬度の条件のみが異なる、実施例1〜実施例4、比較例4、比較例10を比較すると、第二圧延体の硬度が小さくなると、折れシワが発生しにくくなる一方で柔軟性が悪くなる傾向にあることがわかった。これは、圧延体の硬度が小さいと、原料グラファイトフィルムのたるみを逃がしてくれるために折れシワが抑制されるが、押し圧が弱くなるために柔軟性が悪くなるためである。圧延体の少なくとも一方が、硬度D10以上D95以下の圧延装置を使用した実施例1〜実施例4は、折れシワの発生を抑制しながら柔軟性を有するグラファイトフィルムを得ることができた。特に、第一圧延体の硬度がD40以上D90以下の範囲にある実施例1〜実施例3は、折れシワ、厚みムラがなく、柔軟性に非常に優れたグラファイトフィルムが得られた。比較例4は、両圧延体とも硬度が高すぎるために、折れシワが多発し、比較例8は、第二圧延体の硬度が低すぎるために、柔軟性が十分に発現できなかった。
次に、第二圧延体の硬度をD77とし、第一圧延体の硬度のみを変更した実施例1、実施例26〜実施例30を比較する。一方の圧延体の硬度D10以上D95以下の場合、他方の硬度は高いほど柔軟性に優れることがわかった。特に他方の圧延体の硬度がD77以上の範囲にある、実施例1、実施例26は折れシワが発生することなく、柔軟性に非常に優れたグラファイトフィルムが得られた。
両圧延体の硬度は同じで場所を入れ替えた実施例1と実施例5を比較すると、同様の結果が得られたために、圧延体の硬度が重要であり、圧延体の配置は関係ないことがわかった。
<圧延体間のクリアランスについて>
第二圧延体に硬度D77の樹脂ロールを使用し、クリアランスを変更した実施例1、実施例8〜実施例11、比較例6を比較する。少なくとも一方が硬度D10以上D95以下の圧延体を使用した場合、実施例1、実施例8〜実施例11のではクリアランスを0μm以下に調整すると、折れシワが発生することなく、柔軟性を有するグラファイトフィルムを得ることができた。特に圧延体間のクリアランス−100μm以下の範囲にある、実施例1、実施例10、実施例11は、折れシワの発生がなく柔軟性が非常に優れたグラファイトフィルムが得られた。第二圧延体に硬度D77の樹脂ロールを使用し、クリアランスを0μm以下に調整した場合は、僅かなクリアランスのズレも、硬度D10以上D95以下の圧延体が緩和してくれるためにクリアランスの調整も容易であり、厚みムラも非常に小さなグラファイトフィルムが得られた。一方、比較例4はクリアランスが30μmであったために、原料グラファイトフィルムを十分に圧縮できず、柔軟性に乏しいグラファイトフィルムが得られた。
次に、両圧延体ともに硬度D95より大きい金属ロールを使用し、クリアランスをそれぞれ変更した比較例1〜比較例5を比較する。クリアランス50μmの比較例1は、原料グラファイトフィルムを十分に圧縮できず、柔軟性に乏しいグラファイトフィルムが得られた。一方、比較例2〜比較例5は、柔軟性は付与できたものの折れシワが多発した。以上のように、両圧延体ともに硬度D95より大きい場合は、折れシワを抑制して柔軟性を付与するためのクリアランスの調整が非常に困難であることがわかった。
原料グラファイトフィルムの密度が1.80g/cm3でたるみが異なる実施例2、実施例14、実施例17を比較する。実施例2はたるみが20mmと小さいために、折れシワが発生し難かったが、実施例14、実施例17とたるみが35mm、65mmと大きくなるにつれ、折れシワが発生しやすくなった。これは、たるみが大きいと圧延体間に原料グラファイトフィルムを伸ばして供給できないため、たるみが巻き込まれてしまうために発生する。たるみが20mm以上40mm以下の範囲にある実施例1、実施例12〜16は、特に折れシワの発生が少なかった。
次に、原料グラファイトフィルムのたるみが65mmと同じで、密度が異なる実施例13〜実施例15を比較する。同様のたるみを有するにもかかわらず密度が小さいほど、折れシワ不良を抑制して、柔軟性が非常に優れたグラファイトフィルムが得られることがわかった。折れシワの発生が少ない理由は、密度が小さく原料グラファイトフィルムは、歪を逃がしながら圧延できるからである。特に、密度が1.3g/cm3以下の範囲にある実施例15は、たるみが65mmと大きいにも関わらず、折れシワ不良を劇的に抑えることができた。
原料グラファイトフィルムのa値のみを変更した実施例16、実施例20、実施例21を比較する。a値が大きいほど、圧延時に原料グラファイトフィルムの端部に加わる応力が小さくなるために、裂け不良が少なくなった。特に、a値が10mm以上45mm以下の範囲にある実施例16と実施例21は裂け不良がすくなかった。
原料グラファイトフィルムの曲がりのみを変更した実施例16、実施例22、実施例23を比較する。曲がりが小さいほど、折れシワ不良が少なくなった。曲がりの大きいものは、圧延時にフィルムが蛇行しやすく折れシワが発生したと考えられる。特に、曲がりが3mm以下の範囲にある実施例16は折れシワ不良が発生しなかった。
原料グラファイトフィルムの厚みのみ異なる実施例1と実施例31を比較する。原料グラファイトフィルムの厚みが厚いほどコシが強く、圧延体間へシワなく原料グラファイトフィルムを供給できるために、折れシワ不良が発生しにくかった。
シート状の原料グラファイトフィルムを用いた実施例38とその他の条件が同じである実施例1を比較する。シート状の原料グラファイトフィルムのたるみなどは測定できなかったが、フラット性は非常に高かった。しかしながら、シート状の原料グラファイトフィルムは、長尺の原料グラファイトフィルムより均一に張力を加えながら圧延体間に供給することができなかったために、折れシワが発生する場合があった。
原料グラファイトフィルムが天然黒鉛シートを用いた実施例39も同様に圧延処理にて柔軟性が付与できた。ただし、高分子焼成タイプのものと比較してMIT試験の結果は悪かった。
原料グラファイトフィルムの圧延体への抱き角度bのみを変更した実施例1、実施例32、実施例33を比較する。bが大きいほど折れシワが発生しにくいことがわかった。これは、図6のように圧延体に抱かせることによって、たるみを伸ばしながら圧延体間に供給できるためである。
原料グラファイトフィルムの圧延体へ供給する際の張力のみを変更した実施例1、実施例34〜実施例36を比較する。張力が大きいほど折れシワを抑制できるが、100g/cmの張力を加えた実施例36は裂けが増加した。10g/cm以上80g/cm以下の範囲にある実施例1、実施例36は、折れシワ及び裂けを抑制しながら柔軟性を付与できたために特にすぐれる。
ライン速度の高速化は生産性の観点から重要であるが、ライン速度の高速化はグラファイトフィルムの折れシワや裂けのような不具合を助長してしまう。実際に、実施例1と実施例37を比較すると、ライン速度を10m/minまで速めた実施例37は、折れシワや裂け不良が増加した。
第二圧延体の硬度がD77で、第一圧延体の硬度がD95より大きい圧延体を使用し、圧延体の形状が異なる実施例1、実施例6、実施例7を比較する。圧延体の形状がロール形状/ロール形状であっても、ロール形状/板形状であっても、折れシワを抑制して柔軟なグラファイトフィルムを得ることができた。ただし、D77の硬度の圧延体が板状で有る実施例7のみ僅かに折れシワが発生した。以上の結果より圧延体の硬度が重要であり、圧延体の形状は特には関係ないことがわかった。
圧力式の圧延装置を使用した実施例24、実施例25、比較例7〜比較例9について比較する。圧力式の圧延装置を使用する場合は、実質押しきった状態(つまりクリアランス0μm以下)で圧延処理を実施するために、少なくとも一方が硬度D10以上D95以下の圧延体を使用しなければ、折れシワが発生する。実際に、両圧延体ともに硬度D95より大きい金属ロールを使用した比較例7〜比較例9ではどのような圧力条件でも折れシワが多発したのに対し、第二圧延体にD77の樹脂ロールを使用した実施例24、25は折れシワを抑制して柔軟なグラファイトフィルムを得ることができた。
12 MD方向
13 折れシワ
21 第一圧延体
22 第二圧延体
23 原料グラファイトフィルム
24 側面図
25 正面図
31 ロール形状/ロール形状の組み合わせ
32 ロール形状/板形状の組み合わせ
41 クリアランス
42 第一圧延体の基準
43 第二圧延体の基準
44 第一圧延体と第二圧延体の基準間の距離
51 原料グラファイトフィルム
52 圧延体に非接触で原料グラファイトフィルムを供給
53 圧延体に接触させながら原料グラファイトフィルムを供給
61 (圧延体と原料グラファイトフィルムの接触開始点)−(圧延体の中心点)−(圧延体同士の接点)のなす角度b
62 圧延体と原料グラファイトフィルムの接触開始点
63 圧延体の中心点
64 圧延体同士の接点
71 ロール1
72 ロール2
73 原料グラファイトフィルム
74 懸垂線
75 たるみ
81 最端部のたるみ
82 最端部から30mm地点のたるみ
91 テーブル
92 原料グラファイトフィルム
93 定規の位置
101 グラファイトフィルムの裂け不良
111 原料グラファイトフィルムの圧延機への通し終わり
112 原料グラファイトフィルムの圧延機への通し始め
113 採取ポイント1
114 採取ポイント2
115 採取ポイント3
121 幅測定ポイント1
122 幅測定ポイント2
123 幅測定ポイント3
131 円筒状の黒鉛製円筒芯
132 外筒
133 円筒芯に巻かれたポリイミドフィルム
134 通気性を持たせるための開口部
141 円筒状の黒鉛製円筒芯
142 支え
143 炭化フィルム
151 架台
Claims (3)
- 第一圧延体または第二圧延体の一方の圧延体が硬度D10以上D95以下であり、他方の圧延体が硬度D77以上であり、
第一圧延体及び第二圧延体の少なくとも一方の圧延体がロール形状であり、
第一圧延体と第二圧延体間のクリアランスを0μm以下に調整した圧延装置を用いて、原料グラファイトフィルムを圧延処理することを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。 - 前記原料グラファイトフィルムのJIS C2151に記載の巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記原料グラファイトフィルムの密度が1.9g/cm3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
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