JP5534962B2 - エンジン始動制御装置 - Google Patents
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Description
また、エンジン駆動とモータ駆動が可能なハイブリッド車においては、アイドリング・ストップに加えて、モータのみでも走行が可能なために、走行中にもエンジンを停止したり、始動させたりする場合があり、エンジン始動の機会は一層増えており、エンジン始動の際に発生する過渡振動が、運転者に違和感を与えやすい状況にあった。
その結果、アクティブ・コントロール・マウントのアクチュエータの動作のゲインと初爆エネルギが、マッチせず車体への初爆の振動が十分抑制できないという課題がある。
空燃比の調整は、例えば、燃料噴射量の調整により容易に行うことができる。
空燃比の調整は、例えば、燃料噴射量の調整により容易に行うことができる。
《能動型防振支持装置の全体構成》
先ず、図1から図3を参照しながら能動型防振支持装置101とそれに組み合わせる本発明の実施形態に係るエンジン始動制御装置を適用したエンジン・トランスミッション制御ECU73(図3参照、以下「エンジン・AT_ECU73」と称する)の全体構成について説明する。
図1は、能動型防振支持装置を備えた車両の斜視図であり、図2は、実施形態に係る能動型防振支持装置のアクティブ・コントロール・マウントの構造を示す縦断面図である。
図3は、能動型防振支持装置を備えた車両におけるACM_ECU、及び実施形態に係るエンジン始動制御装置を適用したエンジン・AT_ECU、モータECU及びバッテリECUの間の信号取り合いを説明するブロック図である。
これにより、車両Vは、エンジン駆動と、モータ駆動と、エンジン駆動時のモータ2によるモータアシストが可能なハイブリッド車両となっている。また、モータ2は、回生発電機、エンジン1の始動時のスタータとしても機能する。
なお、以下ではアクティブ・コントロール・マウントMF,MRを特に区別する必要がない場合は、単にアクティブ・コントロール・マウントMと記載する。また、図1では、代表的に1つのアクティブ・コントロール・マウントMのみを表示している。
エンジン・AT_ECU73は、ACM_ECU71ともクランクパルス信号線201(以下、「CRKパルス信号線201」と称する)、TDC(Top Dead Center)パルス信号線203、気筒休止信号線205、CAN通信線207で接続されている。
ここで、アクティブ・コントロール・マウントMは、例えば、特開2009−216146号公報の段落[0025]〜[0043]、並びに図2、図3に記載のような構成であり、詳細な説明は省略する。
ちなみに、駆動回路121A(図3参照)は、アクティブ・コントロール・マウントMF(図2参照)が備えるコイル19b(図2参照)に電流を通電するスイッチング回路であり、コイル19bに実際に流れる電流値を検出する電流センサ123A(図12参照)を含んでいる。駆動回路121Aは、後記するACM_ECU71に含まれるマイクロコンピュータ71a(図3参照)に制御され、駆動回路121Aがバッテリから供給される直流電源を、コイル19bに供給可能となっている。駆動回路121B(図3参照)も同様な構成である。
アクティブ・コントロール・マウントMのコイル19bが励磁されると加振板19a(図2参照)を下方に変位させ、コイル19bが無励磁になると加振板19aが上方に変位する。ここで、アクティブ・コントロール・マウントMのコイル19bとそれにより駆動される加振板19aが、能動型防振支持装置101における特許請求の範囲に記載の「アクチュエータ」を構成する。
次に、図3から図14を参照しながら能動型防振支持装置101を備えた車両VにおけるACM_ECU71、エンジン・AT_ECU73、モータECU74及びバッテリECU75の間の信号取り合いを説明する。
図4は、エンジン・AT_ECUの機能構成ブロック図である。
また、エンジン1には、気筒休止運転用の油圧バルブ(図示せず)を作動させる気筒休止運転用ソレノイド(図示せず)が複数設けられており、エンジン・AT_ECU73のソレノイド駆動回路127により駆動される。
また、エンジン1の各気筒へ吸気を導入するインテーク・マニホールド1aには、インテーク・マニホールド圧を検出する圧力センサSPIMが設けられ、その検出されたインテーク・マニホールド圧を示す信号は、マイクロコンピュータ73aに入力される。
回転角センサSMAとしては、例えば、レゾルバが用いられる。
AT3には、AT油温TTOを検出するAT油温センサSTTOが設けられ、その信号は、エンジン・AT_ECU73に入力される。
さらに、ACM_ECU71、エンジン・AT_ECU73、モータECU74及びバッテリECU75等の間は、バス型のCAN通信線207で接続されている。モータECU74は、CAN通信のためのCAN通信部74cを有しており、マイクロコンピュータ74aが外部とCAN通信線207で通信可能な構成となっている。
次に、図4を参照してエンジン・AT_ECU73の概略構成について説明する。エンジン・AT_ECU73は、ECU電源回路(図示せず)、ROM73a1、RAM(図示せず)、バス(図示せず)等を含むマイクロコンピュータ73a、不揮発メモリ73c、各種センサからの信号接続用のインタフェース回路(図示せず)や、燃料インジェクタ駆動回路125、イグナイタ制御回路126、ソレノイド駆動回路127、信号検出回路(実入力振動検出手段)128、信号検出回路(実伝達振動検出手段)129、スロットルバルブ5の開度を制御するスロットルバルブ駆動回路130、CAN通信部73b等を含んで構成されている。
また、要求出力演算部211は、エンジン要求トルクに応じた吸気量を算出し、スロットル制御部216にスロットルバルブ5の目標開度を出力する。
なお、前記した要求出力演算部211におけるエンジン要求トルクに応じた吸気量の算出に当たっては、例えば、冷却水温度センサSTWからのエンジン冷却水の水温、スロットルバルブ・ポジション・センサSThpからのスロットル開度、吸気温度センサSTAからの吸気温度、エアフローメータSFAからの吸気流量、圧力センサSPIMからの吸気圧(インテーク・マニホールド圧)等を示す信号が用いられる。
要求出力演算部211は、このエンジン1の始動制御とき、エンジン1による始動振動を制御するため、エンジン始動時制御部211aを有している。エンジン始動時制御部211aについての詳細な機能の説明は、後記する。
また、気筒数切替制御部212は、気筒休止状態にしたとき、気筒休止対象の気筒を示す信号である気筒休止信号を、気筒休止信号線205を介してACM_ECU71に出力する。気筒数切替制御部212は、図4では信号の矢印線を省略してあるが、気筒休止状態にしたとき、気筒休止対象の気筒を示す信号である気筒休止信号を、燃料インジェクタ駆動回路125やイグナイタ制御回路126にも出力する。
ちなみに、エンジン始動時は、全気筒運転状態とする。
また、燃料噴射制御部213は、酸素濃度センサSO2からの排気ガス中の酸素濃度の信号にもとづいて、燃料噴射量を調節し、排気ガス規制に適合するような燃焼状態に調節する。
なお、エンジン始動時には、点火時期制御部214は、前記したエンジン始動時制御部211aによる点火時期の制御を特別に受ける。その詳細な説明は、後記する。
前記したROM73a1には、エンジン始動時の初爆エネルギを制御するための初爆エネルギ制御データ部73a2を有している。この初爆エネルギ制御データ部73a2には、予め実験的に求められた各種データ、例えば、初爆エネルギ演算マップ641(図5参照)、入力振動値演算マップ642(図6参照)、第1初爆エネルギ補正量演算マップ(第1初爆エネルギ補正量算出手段)643(図7参照)、第2初爆エネルギ補正量演算マップ(第2初爆エネルギ補正量算出手段)644A(図8参照)、第3初爆エネルギ補正量演算マップ(第3初爆エネルギ補正量算出手段)644B(図9参照)、初爆エネルギ制御量補正演算マップ(初爆エネルギ制御手段)646(図10参照)を有しており、前記したエンジン始動時制御部211aにおいて用いられる。
初爆エネルギ演算マップ641の概要を、図5の(a)から(c)に示す特性図で説明する。図5の(a)においてマップデータ641aの横軸は、クランク角で示した点火時期を示し、縦軸が初爆エネルギを示す。点火時期が圧縮行程のTDCを所定のクランク角だけ経過後に設定された所定の標準の点火時期(クランク角)に対して遅角するほど初爆エネルギがほぼ単調に緩やかに減少し、所定の標準の点火時期に対して進角するほど初爆エネルギがほぼ単調に緩やかに減少する特性が示されている。図5の(b)においてマップデータ641bの横軸は、空燃比(A/F)を示し、縦軸が初爆エネルギを示す。空燃比が理論的空燃比で最大になり、空燃比が理論的空燃比より大きい(リーン)になるほど、又、空燃比が理論的空燃比より小さい(リッチ)になるほど初爆エネルギが減少する特性が示されている。図5の(c)においてマップデータ641cの横軸は、インテーク・マニホールド圧を示し、縦軸が初爆エネルギを示す。インテーク・マニホールド圧が増加するほど初爆エネルギが増大する特性が示されている。
なお、空燃比は、燃料噴射量、エンジン温度をほぼ示す冷却水温度センサSTWからの冷却水温度TW、インテーク・マニホールド圧PIMから容易に算出され、インテーク・マニホールド圧PIMは、圧力センサSPIMからの信号により得られる。
つまり、通常運転の場合と異なり前記したように初爆時の空燃比は、特殊な演算方法を行う。
第1初爆エネルギ補正量演算マップ643は、図7に示すように、横軸に要求入力振動値GReqと入力振動値GEstとの差分ΔGV1(=GReq−GEst)を、縦軸を第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1としたものであり、パラメータとして、AT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、点火時期(クランク角)等をとり、検出されたAT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、及び初爆のために設定された点火時期(クランク角)に応じた第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1をエンジン始動時制御部211aにおいて演算可能にするマップである。
第2初爆エネルギ補正量演算マップ644Aは、図8に示すように、横軸に入力振動値GEstと実入力振動値GRealとの差分ΔGV2(=GEst−GReal)を、縦軸を第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2としたものであり、パラメータとして、AT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、点火時期(クランク角)等をとり、検出されたAT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、及び初爆のために設定された点火時期(クランク角)に応じた第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2をエンジン始動時制御部211aにおいて演算可能にするマップである。
ちなみに、実入力振動値GRealは、前記したエンジン1の実ロール振動を検出する実入力振動センサSA1(図4参照)から得られる。
第3初爆エネルギ補正量演算マップ644Bは、図9に示すように、横軸に目標実伝達振動値GT0と実伝達振動値GTRealの差分ΔGV3(=GT0−GTReal)を、縦軸を第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3としたものであり、パラメータとして、AT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、点火時期(クランク角)等をとり、検出されたAT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、及び初爆のために設定された点火時期(クランク角)に応じた第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3をエンジン始動時制御部211aにおいて演算可能にするマップである。差分ΔGV3が、正の場合は、目標実伝達振動値GT0よりも実伝達振動値GTRealの方が小さいことを意味し、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3の値は0(ゼロ)とする。差分ΔGV3が、負の場合は、目標実伝達振動値GT0よりも実伝達振動値GTRealの方が大きいことを意味し、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3の値は負(減少側)とする。
ちなみに、実伝達振動値GTRealは、前記したエンジン1のロール振動が車体に実際に伝達された伝達振動を検出する実伝達振動センサSA2(図4参照)から得られる。
初爆エネルギ制御量補正演算マップ646は、エンジン始動時制御部211aにおいて第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1に、必要に応じて第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3を加算して演算されたトータル初爆エネルギ補正量ΔEFExpTから、初爆エネルギを所定の値にするために燃料噴射量と点火時期を調整するために予め実験的に求められたマップデータである。例えば、横行欄646aは、トータル初爆エネルギ補正量ΔEFExpTの離散的な数値の正、負の領域それぞれに対し、閾値ΔEth1,ΔEth2が設定されており、トータル初爆エネルギ補正量ΔEFExpTが負の値の閾値ΔEth2を超えて正の値の閾値ΔEth1未満の領域では、燃料噴射量の制御のみにより初爆エネルギを調整する領域(「FI制御領域」)とし、その閾値ΔEth1を含む負側、又は、閾値ΔEth2を含む正側の領域は、燃料噴射量の制御に加え、点火時期の制御を追加して初爆エネルギを調整する領域(「点火時期追加制御領域」)としてある。
これにより、エンジン1のその状態における冷却水温度TWと、演算されたトータル初爆エネルギ補正量ΔEFExpTとから内挿補間演算により、初爆における標準の燃料噴射量に対する補正量と、標準の点火時期に対する補正量とが算出可能になっている。
次に、図11を参照しながらエンジン始動時制御部211aにおいて不揮発メモリ(第2補正量記憶手段、第3補正量記憶手段)73c(図4参照)に蓄積される初爆エネルギ補正量マップ645A,645Bについて説明する。図11は、第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3を蓄積する初爆エネルギ補正量マップの構成の説明図である。
初爆エネルギ補正量マップ645A,645Bの構成は基本的に同じ構成であり、例えば、初爆エネルギ補正量マップ645Aでは、横行欄645aを離散的な数値のAT油温TTO(単位:℃)とし、縦軸欄645bを離散的な数値のクランク角(単位:deg.)とし、横行欄645aと縦軸欄645bのクロスする欄645cには、第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2が蓄積される。
同様に、初爆エネルギ補正量マップ645Bでは、横行欄645aを離散的な数値のAT油温TTO(単位:℃)とし、縦軸欄645bを離散的な数値のクランク角(単位:deg.)とし、横行欄645aと縦軸欄645bのクロスする欄645dには、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3が蓄積される。このとき、パラメータとして、離散的な始動から噴射までの時間tIinjを組み合わせ蓄積する。
なお、この離散的な第2、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2,ΔEFExp3の欄645c,645dそれぞれへの蓄積に当たっては、所定の数の最寄りの第2、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2,ΔEFExp3を蓄積し、古いデータは削除するようにし、エンジン始動回数による移動平均値〈ΔEFExp2〉,〈ΔEFExp3〉が、初爆エネルギの補正に用いられるようにすると安定した第2、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2,ΔEFExp3による初爆エネルギの補正となる。
次に、図12から図14を参照しながらACM_ECU71の概略構成を説明する。図12は、ACM_ECUの機能構成ブロック図である。
図12に示すようにACM_ECU71は、エンジン・AT_ECU73から、CRKパルス信号線201を介してCRKパルス信号を、TDCパルス信号線203を介して各気筒の上死点のタイミングを示すTDCパルス信号、気筒休止信号線205を介してV型6気筒のエンジン1が全筒運転している状態、つまり、休気筒無しの状態を示す信号、2気筒休止運転の状態を示す信号、3気筒(片バンクの3気筒)休止運転の状態を示す信号、全気筒休止運転の状態を示す信号を受信する。
以下では、休気筒無しの状態を示す信号、2気筒休止運転の状態を示す信号、3気筒休止運転の状態を示す信号、全筒休止運転の状態を示す信号をまとめて、「気筒休止信号」と称する。
ちなみに、CRKパルスは、6気筒エンジンの場合、クランクシャフトの1回転につき60回、つまりクランク角の6deg.毎に1回出力される。
逆に、ACM_ECU71からは、初爆振動のゲイン及び期間を決定した後、その内容を示す電流制御指令値を、CAN通信線207を介して、エンジン・AT_ECU73に送信する。
ACM_ECU71の各機能構成ブロックの機能は、ROM(図示せず)に記憶されたプログラムをマイクロコンピュータ71aが実行することで実現される。具体的には、CAN通信制御部231、CRKパルス間隔演算部232、エンジン回転モード判定部233、振動状態推定部234、位相検出部235、駆動電流演算部236、駆動制御部238A,238B、モータリング時ロール固有振動制御部241、初爆振動制御部243、エンジン停止時振動制御部245を含んで構成されている。
CAN通信制御部231は、CAN通信部71bが受信した信号、例えば、エンジン回転速度Neを示す信号や、アクセルペダル・ポジション・センサSACからの信号、モータリングスタート信号、モータ2の回転角信号、AT2のAT油温TTO、初回のインジェクション信号、初回のインジェクション信号に対応する気筒判別信号(以下、「初爆気筒を示す信号」と称する)をエンジン回転モード判定部233に出力する。
CRKパルス間隔演算部232は、マイクロコンピュータ71aの内部クロック信号とエンジン・AT_ECU73からのCRKパルス信号及びTDCパルス信号により、CRKパルスの間隔を算出する。
CRKパルス間隔演算部232で算出されたCRKパルス間隔は、エンジン回転モード判定部233と振動状態推定部234に入力される。
エンジン回転モード判定部233には、エンジン・AT_ECU73からのエンジン始動時のモータリングスタート信号や初回のインジェクション信号や初爆気筒を示す信号、エンジン回転速度Ne信号、気筒休止信号、アクセルペダル・ポジション・センサSACからの信号、CRKパルス間隔等が入力される。
エンジン回転モード判定部233は、これらの信号にもとづいて、エンジン1の回転モードを、エンジン始動の際のモータ2によるエンジン1のモータリング状態(エンジン1がモータ2で回転させられて自発回転、つまり、発動するまでの間の期間でのエンジン運転状態)と判定したり、エンジンの発動と判定したり、その後アクセルペダル・ポジション・センサSACからの信号とエンジン回転速度Neにもとづいてアイドリング状態と判定したり、気筒休止信号にもとづいてエンジン1の運転状態が全筒運転状態か、2筒休筒運転状態か、3筒休筒運転状態か、全筒休筒運転(モータ駆動による走行状態)か、を判定したりする。そして、エンジン回転モード判定部233は、前記のように判定したエンジン1の回転モードに対応するフラグ信号を、振動状態推定部234及び位相検出部235に出力する。
振動状態推定部234は、エンジン回転モード判定部233からの回転モードの判定がアイドリング状態や、全筒運転状態、休筒運転状態(2筒休筒運転状態、3筒休筒運転状態、全筒休筒運転状態)の場合、その判定にもとづいて、CRKパルス間隔からクランク軸の回転変動を検出することとし、回転変動のP−P値(ピークから次のピークまでの間隔)から、エンジン振動の大きさ、エンジン振動の周期を求め、位相検出部235にクランク軸の回転変動のピークのタイミングを、駆動電流演算部236にエンジン振動の周期及び大きさ、を出力する。このとき、振動状態推定部234は、エンジン振動の大きさ、エンジン振動の周期を、エンジン回転モード判定部233から入力された、エンジン1の回転モードのフラグ信号に応じて、ROM(図示せず)に予め記憶させた振動周波数データ234aにもとづいて、算出する。
これは、全筒運転状態と休筒運転状態では、エンジン振動の1次振動、2次振動の振動周波数と、エンジン回転速度Neとの関係が異なることや、1次振動成分の振幅と2次振動成分の振幅との比が異なるからである。
位相検出部235は、アイドリング状態や、全筒運転状態、休筒運転状態の場合は、振動状態推定部234からのクランク軸の回転変動のP−P値、回転変動のピークのタイミングと、エンジン・AT_ECU73からのCRKパルス信号、各気筒のTDCパルス信号と、にもとづいて、クランク軸の回転変動のピークのタイミングとTDCのタイミングを比較し、TDC毎の基準パルスから求めた位相の算出を行い、駆動電流演算部236に出力する。
モータリング時ロール固有振動制御部241は、予めロール固有振動のゲイン決定マップ及びロール固有振動の期間決定マップがROM(図示せず)に記憶されたデータ部241aを有する。
ちなみに、ロール固有振動のゲイン決定マップ及びロール固有振動の期間決定マップを総称して、以下、単に「ロール固有振動マップ」と称する。
そして、モータリング時ロール固有振動制御部241は、エンジン回転モード判定部233からの回転モードの判定がエンジン始動の際のモータリング状態の場合、モータ2のモータ角信号の受信タイミングに合わせて、駆動電流演算部236に予め決められた所定のゲインでエンジン振動の伝達を抑制するように駆動電流波形を生成させる。
ここで言う、ACM制御データとは、ロール固有振動の振幅を抑制するためゲインと制御期間を示すデータである。
図12にもどって、初爆振動制御部243は、初回のインジェクション信号受信のタイミングから、その当該気筒における初爆によって、エンジン振動となって現れるまでの遅れ時間である初爆オフセット時間tIoffsetが、例えば、ルックアップテーブル形式で予めROM(図示せず)に記憶されたデータ部243aと、予め初爆振動のゲイン決定マップ及び期間決定マップが予めROM(図示せず)に記憶されたデータ部243bとを有する。
ちなみに、ルックアップテーブル形式の初爆オフセット時間tIoffsetを「初爆オフセット時間テーブル647」と称し、初爆振動のゲイン決定マップ及び初爆振動の期間決定マップを総称して、以下、単に「第1の初爆振動マップ649」(図14参照)と称する。
図13を参照しながら、初爆オフセット時間テーブル647について説明する。図13に示すように、初爆オフセット時間テーブル647は、横軸の離散的なエンジン回転速度Ne(rpm)の値に対応させて、初爆オフセット時間tIoffsetが検索可能に構成されている。そして、初爆振動制御部243において、参照されるエンジン回転速度Neの値に対して補間演算をして、初爆オフセット時間tIoffsetを算出する。
初爆オフセット時間テーブル647は、エンジン回転速度Neが高いほど初爆オフセット時間tIoffsetを短くし、逆に、エンジン回転速度Neが低いほど初爆オフセット時間tIoffsetを長く設定する傾向を持つ。
ここで言う、ACM制御データとは、初爆振動の振幅を抑制するためのゲイン(要求入力振動値GReq)と制御期間を示すデータである。
このACM制御データは、CAN通信線207を介してエンジン・AT_ECU73に電流制御指令値として出力される。
第1の初爆振動マップ649は、前記したように初爆振動のゲイン決定マップ及び初爆振動の期間決定マップのデータを、AT油温TTOをパラメータとして構成されたものである。初爆振動のゲイン決定マップは、例えば、図14に示すように初爆振動のゲイン曲線X2にもとづくものであり、横軸に、始動から初回のインジェクション信号受信までの時間(図14では、「始動から噴射までの時間tIinj」と表示)を示し、右側の縦軸に初爆振動のゲイン(要求入力振動値)GReqを示す。初爆振動のゲイン曲線X2は、始動から初回のインジェクション信号受信までの時間tIinjが長いほど初爆振動のゲインGReqは小さい値となり、始動から初回のインジェクション信号受信までの時間が短いほど初爆振動のゲインGReqは大きい値となるように対応付けられている。
図12に戻ってエンジン停止時振動制御部245は、エンジン回転モード判定部233が、CAN通信制御部231を介して、エンジン・AT_ECU73のマイクロコンピュータ73aからのエンジン停止信号を受信して、エンジン停止時振動の開始を検出したときに、前回停止時に学習したエンジン停止時のロール固有振動から振動の抑制制御を行う。
この制御は、例えば、特開2009−47199号公報に記載の技術により、前回のエンジン停止時にロール固有振動を学習して、不揮発メモリに記憶したエンジン振動の周期、振動ゲイン及び振動期間にもとづきエンジン停止時振動の伝達を抑制制御する。
次に駆動電流演算部236について説明する。駆動電流演算部236は、エンジン回転モード判定部233においてエンジン1の運転状態の判定が、アイドリング状態、全筒運転、気筒休止運転のいずれかと判定されたとき、それを受けて、振動状態推定部234からの振動の振幅、周期、並びに、位相検出部235からの位相とにもとづいて、振動の周期毎に前方アクティブ・コントロール・マウントMFと後方アクティブ・コントロール・マウントMRにおいてエンジン振動波形を相殺できるマウント動作となるように、TDC毎の基準パルスから求めた位相により、前方アクティブ・コントロール・マウントMFと後方アクティブ・コントロール・マウントMRそれぞれに対して駆動電流波形を生成する。そして、生成されたそれぞれの駆動電流波形をPWM制御の所定の周期でサンプリングしてACM駆動目標電流値とし、駆動制御部238A,238Bそれぞれに出力する。
ちなみに、この駆動電流演算部236における駆動周期内のデューティ信号の集合体を用いて行う制御は、特開2002−139095号公報の発明の詳細な説明の段落[0030],[0031]及び図5、図6を参照されたい。
その場合、駆動電流演算部236は、モータ2のモータ角信号の受信タイミングに合わせて、所定のゲインでエンジン振動の伝達を抑制するように駆動電流波形を生成させ、駆動周期内のデューティ信号の集合体を生成して、駆動制御部238A,238Bそれぞれに出力する。
具体的には、モータリング時ロール固有振動制御部241において、エンジン回転速度Neが、ロール固有振動が発生する所定の閾値Nethを超えたと判定されたとき、ロール固有振動の開始を検出したと判定し、前記したデータ部241aのロール固有振動マップ(図示せず)にもとづいて、ロール固有振動の期間とゲインを決定し、ACM制御データを、駆動電流演算部236に入力する。それを受けて、駆動電流演算部236は、モータ角信号に同期させて、エンジン振動の伝達を抑制するように振動の周期毎に前方アクティブ・コントロール・マウントMFと後方アクティブ・コントロール・マウントMRに対する駆動電流波形を生成し、生成したそれぞれの駆動電流波形をPWM制御の所定の周期でサンプリングしてACM駆動目標電流値とし、駆動制御部238A,238Bそれぞれに出力する。
その場合、初爆振動制御部243が、エンジン回転モード判定部233を介して初回のインジェクション信号を受信したとき、前記したデータ部243aの初爆オフセット時間テーブル647(図13参照)にもとづいて初爆オフセット時間tIoffsetを決定し、次いで、前記したデータ部243bの第1の初爆振動マップ649(図14参照)にもとづいて、初爆振動のゲイン及び期間を決定し、ACM制御データを、駆動電流演算部236に入力する。それを受けて、駆動電流演算部236は、初爆オフセット時間tIoffsetに合わせて、エンジン振動の伝達を抑制するように振動の周期毎に前方アクティブ・コントロール・マウントMFと後方アクティブ・コントロール・マウントMRに対する駆動電流波形を生成する。そして、生成したそれぞれの駆動電流波形をPWM制御の所定の周期でサンプリングしてACM駆動目標電流値とし、駆動制御部238A,238Bそれぞれに出力する。
その場合、エンジン停止時振動制御部245が、エンジン回転モード判定部233を介してエンジン停止信号を受信したとき、前回学習したエンジン停止時振動の周期、振動ゲイン、振動期間にもとづいて、ACM制御データを、駆動電流演算部236に入力する。それを受けて、駆動電流演算部236は、エンジン停止時振動の伝達を抑制するように振動の周期毎に前方アクティブ・コントロール・マウントMFと後方アクティブ・コントロール・マウントMRに対する駆動電流波形を生成する。そして、生成したそれぞれの駆動電流波形をPWM制御の所定の周期でサンプリングしてACM駆動目標電流値とし、駆動制御部238A,238Bそれぞれに出力する。
駆動制御部238Aは、駆動電流演算部236で生成されたアクティブ・コントロール・マウントMF用のPWM制御の前記ACM駆動目標電流値に応じたPWMデューティ信号を生成し、駆動回路121Aへ出力する。駆動回路121AはPWMデューティ信号に応じて通電制御し、アクティブ・コントロール・マウントMFのコイル19b(図2参照)に給電する。電流センサ123Aは、駆動回路121Aから給電される電流値を計測して、駆動制御部238Aに入力する。
駆動制御部238Aは、アクティブ・コントロール・マウントMF用のACM駆動目標電流値と計測された電流値の偏差を取り、偏差に応じて、次のPWM制御の周期の新たなACM駆動目標電流値に対するPWMデューティ信号を補正して駆動回路121Aへ出力する。
このように、駆動制御部238Aは、ACM駆動目標電流値に対するPWMデューティ信号をフィードバックして出力することにより、アクティブ・コントロール・マウントMFのコイル19bに給電する。
次に、図15から図21を参照しながらエンジン始動制御の流れとACM制御の流れを示すフローチャートについて、特に、本実施形態の特徴である初爆振動の制御の流れについて説明する。
図15は、エンジン始動制御とACM制御の流れを示す全体フローチャートである。
先ず、図15を参照しながら、適宜、図4、図12、図16を参照してACM制御の流れを示す全体フローチャートについて説明する。図15は、エンジン始動制御とACM制御の流れを示す全体フローチャートである。
この制御は、エンジン・AT_ECU73においてはROM73a1に格納されたプログラムをマイクロコンピュータ73a(図4参照)で実行するときに実現される機能部である要求出力演算部211、燃料噴射制御部213、点火時期制御部214等において行われ、ACM_ECU71においては、ROMに格納されたプログラムをマイクロコンピュータ71a(図12参照)で実行するときに実現される機能部であるエンジン回転モード判定部233、振動状態推定部234、位相検出部235、駆動電流演算部236、駆動制御部238A,238B、モータリング時ロール固有振動制御部241、初爆振動制御部243、エンジン停止時振動制御部245において行われる。
このエンジン・AT_ECU73による繰り返しのエンジン1の始動・停止に、同期して、能動型防振支持装置101の防振制御方法(ステップS21〜S29)が実施される。
先ず、エンジン・AT_ECU73におけるマイクロコンピュータ73aによる繰り返しのエンジン1の始動・停止の制御(ステップS01〜S12)について説明する。
なお、モータリングスタート信号は、ACM_ECU71(図4参照)へも送信され、そのマイクロコンピュータ71aがモータリングスタート信号を受信すると、マイクロコンピュータ71aが防振制御をスタートさせる。そして、ステップS02では、エンジン始動時制御部211aが、タイマt3をスタートさせる。
そして、モータリング状態でエンジン回転速度Neが閾値Nethを超えると、一時的なロール固有振動が発生する(図20の(a)の中段のグラフでは、ロール固有振動については省略してある)。
ステップS04では、CRKパルスやTDCパルス等にもとづいて、エンジン始動時制御部211aが、初爆気筒を決定する。その決定された初爆気筒の識別子(初爆気筒を示す信号)を燃料噴射制御部213、点火時期制御部214に出力する。
なお、初回のインジェクション信号は、及び初爆気筒を示す信号は、ACM_ECU71へも送信される。
ステップS07では、エンジン始動時制御部211aは、エンジン発動開始の制御を行う。具体的には、初爆気筒に点火させ、初爆させ、順次、次の気筒を点火させる。図20の(a)の中段の破線で示したエンジン1の振動波形のように、点火(初爆)によって過渡的に振幅が大きくなった過渡振動が、発生する。初爆以降は、ステップS08では、要求出力演算部211は、モータECU74を介したモータリング制御を終了し、エンジン1を駆動するための通常の制御を行う。この通常の制御の中には、部分休筒運転、全筒休止運転(低巡航速度時のモータ駆動運転)、アイドリング状態中のアイドリング・ストップも含む。
エンジン発動開始の制御の詳細については、図17から図19の詳細フローチャートの説明で後記する。
ステップS09では、要求出力演算部211は、全筒休止、又はアイドリング・ストップの制御をするか否かをチェックする。全筒休止、又はアイドリング・ストップの制御をする場合(Yes)は、ステップS11へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS10へ進む。
ステップS12では、エンジン1を停止する。
これで、一連のエンジン1の始動・停止の制御が終了するが、エンジン1の全筒休止運転、又はアイドリング・ストップの場合は、ステップS01に戻り、エンジン1の始動・停止が繰り返し実施されることになる。
ステップS27では、エンジン回転モード判定部233は、通常のACM制御を振動状態推定部234(図12参照)、位相検出部235(図12参照)にさせる。ここで、通常のACM制御とは、エンジン1のアイドリング状態、全筒運転状態、部分休筒運転状態のエンジン振動の抑制制御を意味する。
ステップS29では、エンジン停止時振動制御部245(図12参照)が、前回のエンジン停止時にロール固有振動を学習して、不揮発メモリに記憶したエンジン振動の周期、振動ゲイン、振動期間にもとづきエンジン停止時振動の伝達を抑制制御する(「エンジン停止時振動の伝達を抑制するACM制御」)。
以上で、一連のエンジン振動の伝達を抑制するACM制御を終了する。
ステップS36では、初爆振動制御部243は、ステップS35で決定された初爆振動のゲイン(加速度)及び期間を示す電流制御指令値を生成し、ステップS37ではその電流制御指令値を、CAN通信制御部231及びCAN通信部71bを介してエンジン・AT_ECU73に送信する。
ステップS38では、初爆振動制御部243は、タイマt2がtIoffset以上か否か(タイマt2≧tIoffset?)をチェックする。タイマt2がtIoffset以上の場合(Yes)は、ステップS39へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS38を繰り返す。
この制御は主にエンジン始動時制御部211a(図4参照)において行われる。
ステップS51では、図15の全体フローチャートにおけるステップS06において受信した電流制御指令値にもとづいて、要求入力振動値GReqを取得する。ここで、要求入力振動値GReqは、図16の詳細フローチャートのステップS35で決定された初爆振動のゲイン(加速度)である。
なお、前記したように空燃比(A/F)は、燃料噴射量、エンジン温度をほぼ示す冷却水温度TW、インテーク・マニホールド圧PIMから容易に算出される。
ステップS53では、標準の初爆用の点火時期、ステップS52において演算された空燃比(A/F)、インテーク・マニホールド圧PIM、冷却水温度TW等にもとづいて、初爆エネルギ演算マップ641(図5参照)により初爆エネルギEFExp1を演算する。
ステップS55では、ステップS51で取得された要求入力振動値GReqとステップS54で演算された入力振動値GEstの差ΔGV1を演算する(ΔGV1=GReq−GEst)。
ステップS57では、トータル初爆エネルギ補正量ΔEFExpTを第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1と置く(ΔEFExpT=ΔEFExp1)。
IFLAGA=1の場合(Yes)は、ステップS59へ進み、IFLAGA≠1の場合(No)は、結合子(A)に従って、図18のステップS60へ進む。
この第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2は、AT油温TTO、点火時期(クランク角)、始動から噴射までの時間tIinjを参照して、不揮発メモリ73cに蓄積された初爆エネルギ補正量マップ645A(図11参照)にもとづいて、容易に演算できる。ここで、第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2としては、初爆エネルギ補正量マップ645Aの前記したAT油温TTO、点火時期(クランク角)、始動から噴射までの時間tIinjのパラメータから求まる各欄645cに所定個数含まれるΔEFExp2の移動平均値〈ΔEFExp2〉を内挿補間演算することによって、求まった値を第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2と称する。
その後、結合子(A)に従って、図18のステップS60へ進む。
IFLAGB=1の場合(Yes)は、ステップS61へ進み、IFLAGA≠1の場合(No)は、ステップS62へ進む。
この第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3は、AT油温TTO、点火時期(クランク角)、始動から噴射までの時間tIinjを参照して、不揮発メモリ73cに蓄積された初爆エネルギ補正量マップ645B(図11参照)にもとづいて、容易に演算できる。ここで、第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3としては、初爆エネルギ補正量マップ645Bの前記したAT油温TTO、点火時期(クランク角)、始動から噴射までの時間tIinjのパラメータから求まる各欄645dに所定個数含まれるΔEFExp3の移動平均値〈ΔEFExp2〉を内挿補間演算することによって求まった値を第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3と称する。
ステップS62では、初爆エネルギを増減させる補正パラメータ(燃料噴射量、点火時期)の補正量を初爆エネルギ制御量補正演算マップ646(図10参照)にもとづいて演算する。
ステップS64では、標準の初爆用の燃料噴射量及び点火時期に対してステップS62おいて得られた補正パラメータの補正量による補正を行って設定し、燃料噴射制御部213に補正された燃料噴射量を、点火時期制御部214に補正された点火時期を出力する。ステップS65では、燃料噴射制御部213及び点火時期制御部214が、設定された初爆用の燃料噴射量及び点火時期にもとづいて、エンジン1の初爆の実行をする。
この履歴は、補正前の入力振動値GEstと補正後のGEstとを記憶させることにより何時から変化が大きくなったか等、エンジン始動時の振動抑制機能に不具合がある場合に原因調査するときに寄与させるものである。ステップS66の後、結合子(B)に従って、図19のステップS67へ進む。
ステップS68では、入力振動値GEstと実入力振動値GRealとの差分ΔGV2を演算する(ΔGV2=GEst−GReal)。
ステップS69では、目標実伝達振動値GT0と実伝達振動値GTRealとの差分ΔGV3を演算する(ΔGV3=GT0−GTReal)。ここで、目標実伝達振動値GT0は、予め設定された固定値である。
ステップS70では、差分ΔGV2から第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2を第2初爆エネルギ補正量演算マップ644A(図8参照)にもとづいて演算する。このとき、パラメータとしてAT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、点火時期(クランク角)を用いて内挿補間演算により第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2を求める。
次いで、ステップS71では、ステップS70において演算された第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2を不揮発メモリ73cの初爆エネルギ補正量マップ645A(図11参照)に蓄積する。このとき、パラメータとしてAT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、点火時期(クランク角)を用いて、該当する欄645c(図11参照)に第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2を蓄積する。
次いで、ステップS73では、ステップS72において演算された第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3を不揮発メモリ73cの初爆エネルギ補正量マップ645B(図11参照)に蓄積する。このとき、パラメータとしてAT油温TTO、始動から噴射までの時間tIinj、点火時期(クランク角)を用いて、該当する欄645d(図11参照)に第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3を蓄積する。
ステップS76では、差分ΔGV3が所定の閾値−ε2以下か否かをチェックする。所定の閾値−ε2以下の場合(Yes)は、ステップS77へ進み、所定の閾値−ε2より大の場合(No)は、ステップS08へ進む。ステップS77では、IFLAGB=1として、不揮発メモリ73cに記憶する。
ここで、閾値ε1の値は、例えば、入力振動値GEstの20%程度の値、閾値ε2の値は、例えば、目標実伝達振動値GT0の20%程度の値とする。
図17から図19のフローチャートにおいてステップS52,S53が特許請求の範囲に記載の「初爆エネルギ推定手段」に、ステップS54が「入力振動推定手段」に、ステップS55が「振動値差分演算手段」に、ステップS56が「第1初爆エネルギ補正量算出手段」に、ステップS67が「実入力振動検出手段」及び「実伝達振動検出手段」に、ステップS68、S70が「第2初爆エネルギ補正量算出手段」に、ステップS71が「第2補正量記憶手段」に、ステップS69、S72が「第3初爆エネルギ補正量算出手段」に、ステップS73が「第3補正量記憶手段」に、ステップS57〜S62,S64、S65が「初爆エネルギ制御手段」に対応する。
逆に、時間tIinjが長い場合は、初爆振動のゲインがあまり大きくならず、初爆振動の期間も短い傾向を考慮して初爆振動の抑制制御を行うことができる。
さらに、例えば、AT油温TTOが低くて粘性が高く、トルクコンバータ3aの抵抗が大きい場合は、初爆振動が大きくなり易く、振動期間が長く続く傾向を考慮して初爆振動の伝達を抑制できる。逆に、AT油温TTOが高くて粘性が低く、トルクコンバータ3aの抵抗が小さい場合は、初爆振動があまり大きくならず、振動期間が短い傾向を考慮して初爆振動の伝達を抑制できる。
従って、エンジン1の経年変化により初爆振動の入力振動値GEstの誤差が増加する場合にも、第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2を考慮した初爆エネルギの調整により、車体側に伝達される振動を目標値内にすることができる。
ちなみに、差分ΔGV2の絶対値が所定の閾値ε1以上の場合、つまり、IFLAGA=1が立てられ不揮発メモリ73cに記憶されたときに、次回のエンジン始動の際に、不揮発メモリ73cに蓄積して学習された第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2を用いるので、それまで十分な第2の初爆エネルギ補正量ΔEFExp2のデータを初爆エネルギ補正量マップ645Aに蓄積できるので誤学習を防止できる。
従って、アクティブ・コントロール・マウントMF,MRの経年変化により振動伝達減衰特性が劣化する場合にも、初爆エネルギの調整により、車体側に伝達される振動を目標値内にすることができる。
ちなみに、差分ΔGV3が所定の閾値ε2以下の場合、つまり、IFLAGB=1が立てられ不揮発メモリ73cに記憶されたときに、次回のエンジン始動の際に、不揮発メモリ73cに蓄積して学習された第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3を用いるので、それまで十分な第3の初爆エネルギ補正量ΔEFExp3のデータを初爆エネルギ補正量マップ645Bに蓄積できるので誤学習を防止できる。
次に、図21、図22を参照しながら、適宜、図13を参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。
図21は、エンジン始動の際の始動から初爆までの時間とインテーク・マニホールド圧の関係を示す説明図であり、(a)は、始動から最初のインジェクション信号を発するまでのタイミングの変動を示す説明図、(b)は、(a)に対応したエンジン回転速度の時間推移を示す説明図、(c)は、(a)に対応したインテーク・マニホールド圧の時間推移を示す説明図である。図22は、第2の初爆振動マップの説明図である。
この場合、図12における初爆振動制御部243のデータ部243bには、第2の初爆振動マップ650が予め記憶されている。
初爆振動のゲイン曲線X3は、インテーク・マニホールド圧PIMの負圧が大きいほど初爆振動のゲインは小さい値となり、インテーク・マニホールド圧PIMの負圧が小さいほど初爆振動のゲインは大きい値となるように対応付けられている。
また、初爆振動の期間決定マップは、第2の初爆振動マップ650の初爆振動の期間曲線Y3にもとづくものであり、左側の縦軸に初爆振動の期間を、例えば、TDCパルス信号間の区間数で示す。初爆振動の期間曲線Y3は、インテーク・マニホールド圧PIMの負圧が大きいほど初爆振動の期間は短い値となり、インテーク・マニホールド圧PIMの負圧が小さいほど初爆振動の期間は長い値となるように対応付けられている。
逆に、インテーク・マニホールド圧PIMの負圧が低い場合、つまり時間tIinjが短い場合は、初爆振動のゲインが大きくなり易く、初爆振動の期間も長い傾向を考慮して初爆振動の抑制制御を行うことができる。
さらに、例えば、AT油温TTOが低くて粘性が高く、トルクコンバータ3aの抵抗が大きい場合は、初爆振動が大きくなり易く、振動期間が長く続く傾向を考慮して初爆振動の伝達を抑制できる。逆に、AT油温TTOが高くて粘性が低く、トルクコンバータ3aの抵抗が小さい場合は、初爆振動があまり大きくならず、振動期間が短い傾向を考慮して初爆振動の伝達を抑制できる。
所定値に固定した初爆振動のゲインとしても良い。なぜならば、エンジン・AT_ECU73側で固定した初爆振動のゲインに応じた初爆エネルギの補正を行い車体に入力される実伝達振動値GTRealを目標値内に抑制することができるからである。
さらに、本実施形態においては、図17のフローチャートにおいて、ステップS55でステップS51にて取得された要求入力振動値GReqとステップS54にて演算された入力振動値GEstの差ΔGV1を演算(ΔGV1=GReq−GEst)し、ステップS56で差ΔGV1に応じた第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1を、初爆エネルギ制御データ部73a2(図4参照)に含まれる第1初爆エネルギ補正量演算マップ643(図7参照)にもとづいて演算し、その後、ステップS57で直接ΔEFExpT=ΔEFExp1として用いているが、それに限定されるものではない。
ステップS56で演算された第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1のうち、イグニッションキーをスイッチオンして一連の走行を開始して以降のアイドリング・ストップ後のエンジン始動時毎に演算された第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1をRAMに履歴として蓄積記憶させることにしても良い。
そして、ステップS57においては、走行開始後の2回目以降のアイドリング・ストップ後のエンジン再始動の際の第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1としては、RAMに蓄積された時間的に最寄りの第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1を用いてΔEFExpT=ΔEFExp1とするか、または、所定数、例えば、N回のアイドリング・ストップの回数を越えた場合には、RAMに蓄積された時間的に最寄りの所定数N個の第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1の値の移動平均値<ΔEFExp1>を第1の初爆エネルギ補正量として算出して、ΔEFExpT=<ΔEFExp1>とする。
その結果、走行を開始してからのアイドリング・ストップの回数を計数し、2回目以降のアイドリング・ストップからのエンジン再始動の際は、履歴蓄積された最寄りの第1の初爆エネルギ補正量ΔEFExp1、または最寄りの所定個数N個の第1の初爆エネルギ補正量の移動平均値<ΔEFExp1>の値をステップS57で用いても十分な精度であることになる。
2 モータ
19a 加振板(アクチュエータ)
19b コイル(アクチュエータ)
71 ACM_ECU(防振制御手段)
73 エンジン・AT_ECU(エンジン始動制御手段)
73a マイクロコンピュータ
73a1 ROM
73a2 初爆エネルギ制御データ部
73b CAN通信部
73c 不揮発メモリ(第2補正量記憶手段、第3補正量記憶手段)
101 能動型防振支持装置
125 燃料インジェクタ駆動回路
126 イグナイタ制御回路
127 ソレノイド駆動回路
128 信号検出回路(実入力振動検出手段)
129 信号検出回路(実伝達振動検出手段)
130 スロットルバルブ駆動回路
201 CRKパルス信号線
203 TDCパルス信号線
205 気筒休止信号線
207 CAN通信線
210 エンジン回転速度演算部
211 要求出力演算部
211a エンジン始動時制御部(初爆エネルギ制御手段)
212 気筒数切替制御部
213 燃料噴射制御部
214 点火時期制御部
217 エンジン制御パラメータ送受信部
232 CRKパルス間隔演算部
233 エンジン回転モード判定部
234 振動状態推定部
235 位相検出部
236 駆動電流演算部
238A,238B 駆動制御部
243 初爆振動制御部
641 初爆エネルギ演算マップ
642 入力振動値演算マップ
643 第1初爆エネルギ補正量演算マップ(第1初爆エネルギ補正量算出手段)
644A 第2初爆エネルギ補正量演算マップ(第2初爆エネルギ補正量算出手段)
644B 第3初爆エネルギ補正量演算マップ(第3初爆エネルギ補正量算出手段)
646 初爆エネルギ制御量補正演算マップ(初爆エネルギ制御手段)
645A 初爆エネルギ補正量マップ(第2補正量記憶手段)
645B 初爆エネルギ補正量マップ(第3補正量記憶手段)
M,MF,MR アクティブ・コントロール・マウント
Sa CRKセンサ
Sb TDCセンサ
SA1 実入力振動センサ(実入力振動検出手段)
SA2 実伝達振動センサ(実伝達振動検出手段)
Claims (7)
- エンジンの振動状態に応じて防振制御手段がアクチュエータを伸縮駆動し、前記エンジンの振動の車体への伝達を抑制する能動型防振支持装置により支持された前記エンジンを搭載した車両における前記エンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置であって、
前記エンジンの始動における初爆を制御する際に、前記能動型防振支持装置による初爆振動の振幅を抑制するための電流制御指令値にもとづいて前記エンジンの初爆エネルギを増減させることを特徴とするエンジン始動制御装置。 - 前記初爆エネルギは、点火時期及び空燃比の内の少なくとも1つを制御することにより増減させることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
- 前記エンジンの始動の際の前記エンジンの初爆エネルギを推定する初爆エネルギ推定手段と、
前記推定された初爆エネルギにもとづいて、前記エンジンから前記能動型防振支持装置への入力振動値を推定する入力振動推定手段と、
前記推定された入力振動値と、前記能動型防振支持装置からの前記電流制御指令値にもとづく要求入力振動値との差分を演算する振動値差分演算手段と、
前記演算された差分にもとづいて、第1の初爆エネルギ補正量を演算する第1初爆エネルギ補正量算出手段と、
前記演算された差分を減少させるように前記演算された第1の初爆エネルギ補正量により前記初爆エネルギを補正する初爆エネルギ制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。 - 前記初爆エネルギ制御手段は、点火時期及び空燃比の内の少なくとも1つを制御することにより前記初爆エネルギを増減させることを特徴とする請求項3に記載のエンジン始動制御装置。
- さらに、前記エンジンに設けられ、前記初爆による前記能動型防振支持装置への実入力振動値を検出する実入力振動検出手段と、
前記推定された入力振動値と前記検出された実入力振動値とを比較して、第2の初爆エネルギ補正量を演算する第2初爆エネルギ補正量算出手段と、を備え、
前記初爆エネルギ制御手段は、前記演算された第2の初爆エネルギ補正量にもとづいて前記初爆エネルギを補正することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエンジン始動制御装置。 - さらに、前記第2初爆エネルギ補正量算出手段において演算された前記第2の初爆エネルギ補正量を記憶する第2補正量記憶手段を備え、
前記第2初爆エネルギ補正量算出手段において、前記推定された入力振動値と前記検出された実入力振動値との差分が、所定値以上の差異を生じたときに、
前記初爆エネルギ制御手段は、
次回以降の始動時に前記第2補正量記憶手段に記憶された前記第2の初爆エネルギ補正量にもとづいて前記初爆エネルギを補正することを特徴とする請求項5に記載のエンジン始動制御装置。 - さらに、前記能動型防振支持装置が固定された前記車体側に設けられ、前記能動型防振支持装置から前記車体側に伝達された実振動伝達値を検出する実伝達振動検出手段と、
予め設定された目標実伝達振動値と前記検出された実振動伝達値とを比較して第3の初爆エネルギ補正量を演算する第3初爆エネルギ補正量算出手段と、
前記第3初爆エネルギ補正量算出手段において演算された前記第3の初爆エネルギ補正量を記憶する第3補正量記憶手段と、を備え、
前記第3初爆エネルギ補正量算出手段において、前記目標実伝達振動値と前記検出された実振動伝達値の差分が、所定値以上の差異を生じたときに、
前記初爆エネルギ制御手段は、
次回以降の始動時に前記第3補正量記憶手段に記憶された前記第3の初爆エネルギ補正量にもとづいて前記初爆エネルギを補正することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置。
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