JP5534192B2 - ガスタンクシステム及び車両 - Google Patents

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Description

本発明は、放熱性の異なる複数のガスタンクを備えたガスタンクシステム及び車両に関するものである。
複数のガスタンクを備えた車両として、燃料電池車両が知られている。例えば特許文献1に記載の燃料電池車両では、複数の水素タンクと燃料電池とを並列につなぐ供給流路が設けられ、この供給流路において水素タンクごとに設けられた開閉弁を開くことで、各水素タンクから燃料電池に水素ガスが供給される。この場合、供給流路によって複数の水素タンク同士は互いにつながれており、水素タンクの内圧(以下、タンク圧という場合がある。)が小さい順に対応の開閉弁を開くことで、閉弁状態の開閉弁に逆圧が作用するのを防いでいる。
特開2008−223784号公報
しかし、水素タンクの放熱性が互いに異なる場合、水素タンクの内圧が小さい順に開閉弁を開く方法では、水素タンク間に逆流が生じる。
具体的には、水素ステーションから水素タンクへの水素ガスの充填終了時は、タンク圧は水素タンク間で同じであるが、その放熱性の違いにより、タンク温度(水素タンクの内部温度)は水素タンク間で異なる。充填終了からしばらくすると、タンク温度は周囲環境温度により冷却されて水素タンク間で同じになるが、充填終了時に温度差があった分、タンク圧については水素タンク間で差が生じる。この状態で、タンク圧の低い水素タンクから開閉弁を開くと、タンク圧の高い水素タンクに対応する開閉弁を開いた際に、タンク圧の高い水素タンクからタンク圧の低い水素タンクへと水素ガスが逆流する現象が起きてしまう。
そこで、本発明は、放熱性の異なる複数のガスタンクからガスの供給を開始する場合に、ガスタンク間の逆流を抑制することができる、ガスタンクシステム及び車両を提供することをその目的としている。
上記目的を達成するため、本発明のガスタンクシステムは、ガス供給先に対して並列に接続され、互いに放熱性が異なる複数のガスタンクと、ガスタンクの各々に関して、ガスタンクからガス供給先へのガスの供給を許容及び遮断する弁機構と、前記ガスタンクにガスを充填するガス充填系統に設けられ、前記ガスタンクへのガス充填終了直後における圧力を検出する一つの圧力センサと、前記ガスタンクの各々に対応して設けられ、前記ガスタンクへのガス充填終了直後及び前記ガスタンクからのガス供給開始直前における当該ガスタンクの各々の内部温度を検出する複数の温度センサと、前記圧力センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて弁機構を制御する制御装置と、を備える。そして、制御装置は、前記ガス充填終了直後における一つの圧力検出値と、前記ガス充填終了直後における複数の温度検出値と、前記ガス供給開始直前における複数の温度検出値と、を用いて、ガス供給開始直前における前記ガスタンクの各々の内圧を算出すると共に、その算出した複数の内圧の大きさを比較し、その比較した結果に基づき、ガス充填終了後の最初のガス供給において、内圧の高いガスタンクからガスの供給を許容するように弁機構を制御し、その後、ガスタンクの内圧がガスタンクよりも内圧の低いガスタンクの内圧と等しくなった時点で、この内圧の低いガスタンクからもガスの供給を許容するように弁機構を制御する。
本発明によれば、圧力センサをガスタンクの各々に対応して設けなくとも、ガス供給開始直前におけるガスタンクの各々の内圧を算出することができる。そして、ガス充填後の最初のガス供給開始時には、先ず高圧側のガスタンクからガスの供給が行われるので、その内圧が下がる。そして、低圧側のガスタンクからもガスの供給が行われる時点では、当初差があった両ガスタンクの内圧は等しくなっている。このため、低圧側のガスタンクからガスの供給を開始しても、高圧側のガスタンクから低圧側のガスタンクへとガスが流れ込むことが回避される。よって、ガスタンク間の逆流を抑制できる。また、ガスタンクの各々に対応する圧力センサを設ける場合に比べて、部品点数を削減でき、システム構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
好ましくは、弁機構は、ガスタンクの各々に対応して設けられた複数の遮断弁を有するとよい。
この構成によれば、シンプルな弁機構にて上記のガス供給制御を行うことができる。なお、弁機構は複数の遮断弁を有するものに限るものではなく、遮断弁以外の他のバルブを有するもので構成してもよい。
本発明の車両は、上記した本発明のガスタンクシステムを備え、ガス供給先として燃料電池を有するものである。これによれば、燃料電池車両におけるガスタンク間の逆流を抑制することができる。
参考例に係るガスタンクシステムを適用した燃料電池システムの構成図である。 (a)は、放熱性の異なる二つのガスタンクの内圧について、水素ガスの充填開始からその後の水素ガスの供給開始までの推移を示すグラフであり、(b)は、放熱性の異なる二つのガスタンクの内部温度について、水素ガスの充填開始からその後の水素ガスの供給開始までの推移を示すグラフである。 参考例に係るガスタンクシステムにおけるガス供給開始時における制御を示すフローチャートである。 施形態に係るガスタンクシステムを適用した燃料電池システムの構成図である。 施形態に係るガスタンクシステムにおけるガス供給開始時における制御を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るガスタンクシステムを備えた車両について説明する。ここでは、ガスタンクシステムを燃料電池システムの燃料ガス系統に適用した例を説明する。また、以下では、まず、図1〜3を参照して参考例を説明し、その後、図4〜5を参照して実施形態を説明する。
参考例
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池2、燃料ガス系統3及び酸化ガス系統を備える。燃料電池システム1は、例えば燃料電池車両に搭載され、車両の動力源であるトラクションモータに電力を供給する。燃料ガス及び酸化ガスは、反応ガスと総称されるものである。燃料ガスは例えば水素ガスであり、酸化ガスは例えば空気である。以下では、燃料ガスとして水素ガスを例に説明する。
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単セルを積層したスタック構造を備える。なお、図1では、説明の便宜上、単セルの構造が燃料電池2に模式的に示されている。単セルは、電解質膜10、燃料極11及び空気極12からなるMEA(膜電極接合体)13を有する。電解質膜10は、例えばフッ素系樹脂により形成されたイオン交換膜からなる。燃料極11及び空気極12は、電解質膜10の両面に設けられる。単セルは、燃料極11及び空気極12を両側から挟みこむように一対のセパレータ14,15を有する。セパレータ14の燃料ガス流路16に供給された水素ガスとセパレータ15の酸化ガス流路17に供給された酸化ガスとの電気化学反応により、燃料電池2は電力を発生する。燃料電池2で発電された電力は、車両のトラクションモータなどの負荷18に供給される。
燃料ガス系統3は、二つのガスタンク21a,21b、ガス充填系統22、ガス供給系統23及び制御装置24を備える。ガスタンク21a,21bは、ガス充填系統22を介して充填口25に並列に接続されると共に、ガス供給系統23を介してガス供給先である燃料電池2に対して並列に接続される。充填口25は、水素ガスの充填時に、水素ガス充填装置(例えば水素ステーション)の充填ノズルに接続される。なお、図示省略したが、燃料電池2から排出される燃料オフガス(水素オフガス)を再びガス供給系統23に導いて、燃料電池2に循環させることも可能である。
ガスタンク21a、21bは、燃料電池2への水素ガス供給源であり、例えば35MPaあるいは70MPaの水素ガスを貯蔵する高圧タンクである。ガスタンク21a、21bは、例えば、内側にライナー層を、外側にFRP層などの補強層を有する積層構造を備える。
ここで、ガスタンクの放熱性は、一般に、ガスタンクそれ自身を構成する材料や、ガスタンクの体格(長さ、径、容量、表面積等)など、ガスタンクの仕様によって異なる。例えば、ガスタンクのライナー層としてアルミニウムを用いた場合には、樹脂(ポリエチレンなど)を用いた場合よりも、放熱性は優れたものとなる。また、ライナー層における樹脂の特性や配合割合によっても放熱性は異なる。さらに、ガスタンクの体格、例えば径に対する長さの比や、表面積に対する容量の比によっても、放熱性は異なる。そして、ガスタンクの放熱性が優れている場合、それが優れていない場合に比べて、充填に伴うガスタンク内の温度上昇率(温度上昇量)及び圧力上昇率(圧力上昇量)が低く抑えられる。
上述のガスタンク21a,21bは、互いに放熱性が異なるものであり、ガスタンク21bの方が放熱性が優れている。例えば、ガスタンク21bのライナー層はアルミニウムからなり、ガスタンク21aのライナー層は樹脂からなる。以下、簡便な説明のため、ガスタンク21a、21bの放熱性について、良い又は悪いという相対的な表現を用いる場合がある。
ガスタンク21a,21bは、各種バルブやセンサ等を一体的に組み込んだバルブアッセンブリ26a,26bをねじ込み接続されている。ガスタンク21a,21bは、バルブアッセンブリ26a,26bを介して水素ガスの充填及び放出をする。バルブアッセンブリ26a,26bは、ガス充填系統22に連通する通路に逆止弁27a,27b又はマニュアル弁を有し、ガス供給系統23に連通する通路に遮断弁28a,28bを有する。遮断弁28a,28bは、駆動方式が例えば電磁式からなるが、これに限らず、各種のタイプのものを用いることができる。遮断弁28a,28bは、ガスタンク21a,21bに対して元弁(主止弁)として機能するものであり、対応するガスタンク21a、21bから燃料電池2への水素ガスの供給を許容及び遮断する弁機構を構成する。
ガス充填系統22は、充填口25に連通する一系統の共通充填配管30と、ガスタンク21a,21bに連通する二系統の個別充填配管31a、31bと、で構成される。このように途中で二股に分岐するガス充填系統22の分岐点には、配管30、31a,31bの一端が接続される充填マニホールド部32が設けられる。充填口25から供給された水素ガスは、充填マニホールド部32にて分配されて、ガスタンク21a,21bに充填される。
ガス供給系統23は、燃料電池2に連通する一系統の共通供給配管40と、ガスタンク21a,21bに連通する二系統の個別供給配管41a、41bと、で構成される。このように途中で二股に分岐するガス供給系統23の分岐点には、配管40、41a,41bの一端が接続される供給マニホールド部42が設けられる。ガスタンク21a、21bから放出された水素ガスは、供給マニホールド部42にて合流し、配管40にあるレギュレータ43で調圧されて燃料電池2に供給される。ただし、遮断弁28a,28bの一方だけを開く場合には、ガスタンク21a、21bの一方のみから水素ガスが放出され、供給マニホールド部42で水素ガスの合流を受けることなく、燃料電池2に供給される。供給マニホールド部42には、ガスタンク21a及びガスタンク21bの少なくとも一つから放出された水素ガスの圧力を検出する圧力センサ44が設けられている。
温度センサ52a,52bは、それぞれ、ガスタンク21a,21b内に配置され、ガスタンク21a,21bの内部温度(以下、それぞれ「タンク温度Ta,Tb」という。)を検出する。温度センサ52a,52bは、例えば、ガス充填系統22又はガス供給系統23に連通するバルブアッセンブリ26a,26bの流路部分に設けられる。
圧力センサ54a,54bは、それぞれ、ガスタンク21a,21bの内圧(以下、それぞれ「タンク圧力Pa,Pb」という。)を反映する圧力を検出する。圧力センサ54a,54bは、それぞれ、ガスタンク21a,21b外における、ガス充填系統22に連通するバルブアッセンブリ26a,26bの流路部分に設けられる。
制御装置24は、内部にCPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータとして構成される。CPUは、制御プログラムに従って所望の演算を実行するものであり、後述する遮断弁28a,28bの制御など、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する制御プログラムや制御データを記憶し、RAMは、主として制御処理のための各種作業領域として使用される。制御装置24は、弁機構を構成する遮断弁28a,28bのほか、温度センサ52a,52b及び圧力センサ44,54a,54bなどと接続されている。例えば、制御装置24は、圧力センサ54a,54bからの検出信号を入力し、遮断弁28a,28bに制御信号を出力することで、ガスタンク21a,21bから燃料電池2への水素ガスの供給を制御する。
図2は、ガスタンク21a,21b内の圧力及び温度について、水素ガスの充填開始からその後の水素ガスの供給開始までの推移を示す図である。
ガスタンク21a,21bに水素ガスが充填され始めると(t=t0)、タンク圧力Pa,Pbは同じ傾きで上昇していく一方、タンク温度Ta,Tbは互いに異なる傾きで上昇していく。タンク温度Taの傾きがタンク温度Tbの傾きよりも大きいのは、放熱性に関して、ガスタンク21aの方がガスタンク21bよりも悪いからである。そして、充填終了時では(t=t1)、タンク圧力Pa,Pbは互いに同じ圧力P1である一方、タンク温度Taはタンク温度Tbよりも大きくなり、ガスタンク21a,21b間で温度差が生じる。タンク温度Taは、例えば85℃であり、ガスタンク21a、21bの周囲の環境温度よりも高くなる。
その後、充填終了からの時間経過に伴い、タンク温度Ta,Tbは周囲の環境温度によって徐々に冷却されていく。そして、次の燃料電池システム1の起動時、すなわち、ガスタンク21a,21bから燃料電池2への水素ガスの供給開始時(t=t2)には、タンク温度Ta,Tbは同じとなる。このときのタンク温度Ta,Tbは、周囲の環境温度と等しくなり、例えば25℃である。一方、タンク圧力Pa,Pbも充填終了からの時間経過に伴って変化するが、水素ガスの供給開始時(t=t2)には、タンク圧力Paはタンク圧力Pbよりも小さくなり、ガスタンク21a,21b間で圧力差が生じる。
ここで、仮に、水素ガスの供給開始時(t=t2)に、タンク圧力Pa側の遮断弁28aを先に開弁し、その後で遮断弁28bを開弁すると、圧力差(Pb−Pa)によってガスタンク21aに逆流が生じる。詳細には、ガス供給系統23にはガスタンク21a,21b同士を接続する流路があるため、ガスタンク21bから放出された水素ガスは、供給マニホールド部42から個別供給配管41aへと流れ、ガスタンク21a内へと流れ込む。このような逆流が生じると、例えば個別供給配管41aにフィルタ(図示省略)を設けている場合、フィルタに捕捉されていた異物が遮断弁28aの弁部へと逆流し、遮断弁28aの開閉不良が生じる可能性がある。したがって、このような逆流は好ましくない。
そこで、逆流現象が発生することを抑制するべく、水素ガスの供給開始時(t=t2)において図3に示す制御を行っている。
図3に示すように、燃料電池システム1の起動が開始されると(ステップS1、図2のt=t2)、先ず、タンク圧力Pa,Pbが圧力センサ54a,54bによって読み込まれ、これらの情報が、制御装置24のRAMに記憶される(ステップS2)。この場合、図2に示したとおり、タンク圧力については以下の関係となっている。
Pb>Pa
次いで、制御装置24は、タンク圧力Pb側の遮断弁28bを開弁し、水素ガスを燃料電池2に供給する(ステップS3)。このとき、遮断弁28aは閉じたままにしておく。供給されたガスタンク21bからの水素ガスが、酸化ガス系統からの酸化ガスと燃料電池2にて電気化学反応をすると電力が発生する。この電力の発生を伴う燃料電池システム1の運転(燃料電池車両の走行)によって、ガスタンク21b内の水素ガスは徐々に消費されていくので、タンク圧力Pbは徐々に低下していく。一方で、ガスタンク21a内の水素ガスは消費されないため、タンク圧力Paは変化しない。
その後、タンク圧力Pbがタンク圧力Paと等しくなるまで低下した時点で、制御装置24は、ガスタンク21a側の遮断弁28aも開弁する(ステップS4)。これにより、ガスタンク21a,21bの両者からの水素ガスが、燃料電池2に供給されていく。なお、水素ガスの供給中は、タンク圧力Pa,Pbは圧力センサ54a,54bによって随時検出され、その検出された情報が制御装置24のRAMに記憶される。したがって、制御装置24は、タンク圧力Pbがタンク圧力Paと等しくなった時点を判断することができる。
以上説明したように、参考例によれば、水素ガス充填終了後の最初の水素ガスの供給開始時において、先ず高圧側の遮断弁28bを開弁し、その後、ガスタンク21a,21b間の圧力差がなくなったところで、当初低圧側であった遮断弁28aを開弁する。このため、遮断弁28aを開弁した際に、ガスタンク21bからの水素ガスがガスタンク21aに流れ込むことが回避される。したがって、ガスタンク21a,21b間の逆流を抑制することができるので、上記のような遮断弁28aの開閉不良を抑制することができる。
特に、参考例によれば、ガスタンク21a,21bの内圧情報を取得する手段として、ガスタンク21a,21bの個々に対応して設けた圧力センサ54a,54bを用いている。このため、実際の圧力検出値(Pa,Pb)に基づいて遮断弁28a,28bの開弁タイミングを決めることができるので、上述した水素ガス供給開始時の逆流を防止する制御をより精度良く行うことができる。
なお、参考例においては、高圧側の遮断弁28bを低圧側の遮断弁28aよりも先に開弁するので、上記の特許文献1(特開2008−223784号公報)で指摘されている逆圧が遮断弁28aに作用し得る。しかしながら、水素ガスの供給開始のタイミングで生じ得る逆圧は例えば5MPa程度の僅かな圧力であり、この程度の逆圧では、遮断弁28aが開けられることがないように遮断弁28aを設計することは可能である。例えば、逆圧によって遮断弁28aの弁体が弁座から離間しないように、遮断弁28aの弁体を付勢する弾性体のバネ力を事前に設計することができる。したがって、参考例の上記制御によれば、水素ガスの供給開始時において、逆流を抑制しつつ、さらに、逆圧による遮断弁28aの受けるダメージを最小減に抑えることもできる。
参考例の変形例>
ガスタンクの数は、上記の2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。例えば、互いに放熱性が異なる3つのガスタンクを燃料電池2に並列に接続した場合には、これに対応して3つの圧力センサを設けるとよい。このような構成において、水素ガス供給開始時の逆流を防止する制御を行う場合には、先ず、タンク圧力が最も高いガスタンクに対応する遮断弁を開き、そのタンク圧力が、2番目に高いタンク圧力と同じになった時点で、この2番目に高いタンク圧力に対応する遮断弁を開く。その後、これら2つのタンク圧力が、当初最も低かったタンク圧力と同じになった時点で、この当初最も低かったタンク圧力に対応する遮断弁を開くことで、計3つのガスタンクから水素ガスを供給する。
他の例として、3つ以上のガスタンクのうち、2つのガスタンクの放熱性が同じである場合には、水素ガス供給開始時の逆流を防止する制御において、その2つのガスタンクに対応する2つの遮断弁については同時に開くようにすればよい。
施形態>
次に、図4及び図5を参照して、実施形態について参考例との相違点を中心に説明する。参考例との主な相違点は、ガスタンク21a,21bごとの圧力センサ54a,54bに代えて、一つの圧力センサ60を用いることにした点と、これに伴い、水素ガス供給開始時の制御を行うにあたり、ガスタンク21a,21b内の圧力を算出することにした点である。なお、参考例と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、圧力センサ60は、充填マニホールド部32に設けられ、ガスタンク21a,21bに充填されていく水素ガスの圧力(以下、圧力Pcという。)を検出する。圧力センサ60を設ける位置は、充填マニホールド部32に限るものではなく、例えば共通充填配管30であってもよい。圧力センサ60は、圧力Pcの検出情報の信号を制御装置24に入力する。
図5に示すように、先ず、ガスタンク21a,21bへの水素ガスの充填終了直後において、圧力Pcが圧力センサ60によって読み込まれると共に、タンク温度Ta,Tbが温度センサ52a,52bによって読み込まれる(ステップS11)。この読み込まれた情報は、制御装置24のRAMに記憶される。以下、このときに記憶された充填終了直後におけるタンク温度Ta,Tbの検出値を、タンク温度Ta1,Tb1と表記する。
ここで、充填終了直後とは、充填終了時又は充填終了から僅かな時間が経過した時をいい、時間経過に伴ってガスタンク21a,21bの内圧が実質的に減少する前の段階をいう。したがって、充填終了直後の一例は、例えば図2に示す充填終了時(t=t1)であり、そのときに読み込まれる圧力Pcは、図2に示す圧力P1と等しくなる。
次いで、燃料電池システム1の起動が開始されると(ステップS12、図2のt=t2)、タンク温度Ta,Tbが温度センサ52a,52bによって読み込まれ(ステップS13)、その情報が制御装置24のRAMに記憶される。このときに記憶されるタンク温度Ta,Tbの検出値は、ガスタンク21a,21bから燃料電池2への水素ガスの供給開始直前におけるものであり、以下、これらをタンク温度Ta2,Tb2と表記する。なお、水素ガスの供給開始直前とは、充填終了から任意の時間が経過したときであって、その充填終了後において最初に行われる水素ガスの供給開始の直前をいう。
その後、制御装置24は、RAMに記憶している情報、すなわち充填終了直後の圧力Pc、充填終了直後のタンク温度Ta1,Tb1及び供給開始直前のタンク温度Ta2,Tb2を用いて、供給開始直前のタンク圧力Pa´,Pb´を算出する(ステップS14)。具体的には、理想気体の状態方式を用いることで、タンク圧力Pa´,Pb´は以下の式(1)及び(2)によりそれぞれ算出することができる。
Pa´=Pc×Ta2/Ta1 ・・・(1)
Pb´=Pc×Tb2/Tb1 ・・・(2)
ここで、水素ガスの供給開始直前においては、通常、タンク圧力Pb´はタンク圧力Pa´よりも大きくなる。このことは、例えば供給開始直前が図2に示すタイミングt2のときであると仮定すると、上記(1)及び(2)におけるタンク温度Ta2,Tb2は等しくなることからも簡単に導くことができる。
この算出後においては、タンク圧力Pa´,Pb´をもとに、図3に示した参考例と同じように、遮断弁28a,28bの開弁タイミングが制御される。具体的には、制御装置24は、タンク圧力Pa´,Pb´の大きさを比較し、その大きさが大きいタンク圧力Pb´側の遮断弁28bを先に開弁する(ステップS15)。その後、タンク圧力Pb´が低下してタンク圧力Pa´と等しくなった時点で、制御装置24は、ガスタンク21a側の遮断弁28aも開弁する(ステップS16)。
ここで、ステップS15以降において低下していくタンク圧力Pb´の値は、温度センサ52bによって随時検出するタンク温度Tbを用いることで、制御装置24にて算出することができる。あるいは、制御装置24による算出に代えて、圧力センサ44を用い、圧力センサ44による検出値をタンク圧力Pbの値とみなしてもよい。いずれの場合であっても、制御装置24は、タンク圧力Pb´が低下してタンク圧力Pa´と等しくなった時点を判断することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば参考例と同様に、水素ガス充填終了後の最初の水素ガスの供給開始時において、ガスタンク21a,21b間の逆流を抑制することができる。特に、この逆流を抑制するための制御構成のうち、ガスタンク21a,21bの内圧情報を取得する手段として、温度センサ52a,52b及び圧力センサ60を少なくとも用いており、本実施形態によれば、ガスタンク21a,21bの各々に対応して圧力センサを設けなくて済む。したがって、部品点数を削減することができ、低コスト化を図ることができる。
施形態の変形例>
参考例の変形例と同様に、ガスタンクの数は、上記の2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。この場合についても、詳述するまでもなく、上記同様に個々のタンク圧力を算出することで、水素ガス供給開始時の逆流を防止する制御を行うことができる。
ここで、放熱性が互いに異なるn個(ただし、nは二以上の自然数。)のガスタンクがある場合について、ガス供給開始直前におけるガスタンク21m(ただし、添え字のmはタンク番号を示す自然数であり、1≦m≦nである。)の内圧Pm´について数式化すると以下のとおりである。
m´=P×Tm´/Tm
上記式において、Pは、充填終了直後の圧力Pcである。また、Tm´は、ガスタンク21mのガス供給開始直前における内部温度であり、ガスタンク21mに対応する温度センサによって検出される検出値である。同様に、Tmは、ガスタンク21mの充填終了直後における内部温度であり、ガスタンク21mに対応する温度センサによって検出される検出値である。
その他、変形例として、圧力センサ60を水素ステーション側に設けることも可能である。例えば、水素ステーションの充填ノズル等に圧力センサ60を設け、充填終了直後における圧力Pcを水素ステーション側で検出する。この場合、赤外線の通信技術等を用いて、水素ステーションから制御装置24に圧力Pcの情報を伝えておく。こうすることで、圧力センサ60を車両側に設けなくとも、図5に示すステップS14において、タンク圧力Pa´,Pb´を算出することができる。
本発明のガスタンクシステムは、水素ガスのみならず、天然ガスなど他のガスを使用するものにも適用することができる。また、車両に限らず、航空機、船舶、ロボットなど、各種の移動体に適用することができる。
1:燃料電池システム、2:燃料電池(ガス供給先)、21a,21b:ガスタンク、22:ガス充填系統、23:ガス供給系統、24:制御装置、28a,28b:遮断弁、52a,52b:温度センサ、54a,54b,60:圧力センサ

Claims (3)

  1. ガス供給先に対して並列に接続され、互いに放熱性が異なる複数のガスタンクと、
    前記ガスタンクの各々に関して、前記ガスタンクから前記ガス供給先へのガスの供給を許容及び遮断する弁機構と、
    前記ガスタンクにガスを充填するガス充填系統に設けられ、前記ガスタンクへのガス充填終了直後における圧力を検出する一つの圧力センサと、
    前記ガスタンクの各々に対応して設けられ、前記ガスタンクへのガス充填終了直後及び前記ガスタンクからのガス供給開始直前における当該ガスタンクの各々の内部温度を検出する複数の温度センサと、
    前記圧力センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて前記弁機構を制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、前記ガス充填終了直後における一つの圧力検出値と、前記ガス充填終了直後における複数の温度検出値と、前記ガス供給開始直前における複数の温度検出値と、を用いて、ガス供給開始直前における前記ガスタンクの各々の内圧を算出すると共に、その算出した複数の内圧の大きさを比較し、その比較した結果に基づき、ガス充填終了後の最初のガス供給において、内圧の高いガスタンクからガスの供給を許容するように前記弁機構を制御し、その後、当該ガスタンクの内圧が当該ガスタンクよりも内圧の低いガスタンクの内圧と等しくなった時点で、この内圧の低いガスタンクからもガスの供給を許容するように前記弁機構を制御する、ガスタンクシステム。
  2. 前記弁機構は、前記ガスタンクの各々に対応して設けられた複数の遮断弁を有する、請求項に記載のガスタンクシステム。
  3. 請求項1又は2に記載のガスタンクシステムを備えた車両であって、
    前記ガス供給先として燃料電池を有する、車両。
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