以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は本実施例に係る内燃機関のフィルタ故障検出装置の概略構成を示す図である。図1において、内燃機関1からの排気は排気通路2に排出される。排気通路2には排気中の微粒子物質(パティキュレートマター、PM)を捕集するフィルタ5が設けられる。
フィルタ5より上流側の排気通路2にはフィルタ5に流入する排気中のPM量を検出するPMセンサ3が設けられる。フィルタ5より下流側の排気通路2にはフィルタ5から流出する排気中のPM量を検出するPMセンサ4が設けられる。PMセンサ3及びPMセンサ4の出力はECU6に入力される。
ECU6はPMセンサ3やPMセンサ4の他各種センサからの出力が入力される。ECU6は、これら入力される各センサによる検出値に基づいて内燃機関1の運転状態の制御を行うほか、本実施例では特にフィルタ5の故障検出及びPMセンサ4の故障検出を行う。
図2はPMセンサ4の構成を示す図である。PMセンサ4は、図2(A)に示すように一対の電極を有し、この電極対に排気中のPMが付着可能なように構成されている。図2(A)は電極間にPMが付着していない状態を表す。図2(B)に示すように、電極間に
PMが付着すると、電極間に付着(堆積)しているPM量に応じた信号が出力される。
PMセンサ4にはPMセンサ4を加熱する図示しないヒータが備わり、このヒータに通電してPMセンサ4を加熱することにより、PMセンサ4に付着しているPMを酸化除去することができる。これによりPMセンサ4におけるPMの付着状態が図2(A)に示す状態に戻る。
このような処理をPMセンサのバーンアップと称する。PMセンサをバーンアップする処理は、本発明における「初期化処理」に対応する。ヒータ加熱によるPMセンサ4の初期化処理は、ECU6によってその実行が制御される。
図3はPMセンサ4の信号出力特性を示す図である。図3(A)はPMセンサ4におけるPM付着量とPMセンサ4の出力との関係を示す図である。図3(B)はPMセンサ4におけるPM付着量と電極間の抵抗との関係を示す図である。
図2(A)のように電極間に付着するPM量が少ない状態では、図3(B)に示すように電極間の抵抗が非常に大きいため、電極間にほとんど電流が流れない。そのため、図3(A)に示すように、PMセンサ4に閾値以上のPMが付着するまでは、PMセンサ4から信号が出力されない。
PMセンサ4から信号が出力し始めるPM付着量を信号出力閾値(Gpmz0)という。信号出力閾値は、PMセンサ4が信号出力開始するために最低限PMセンサ4に付着する必要があるPM量である。なお、PMセンサ3も以上説明したPMセンサ4と同様の構成を有するものとする。
PMセンサ4の信号出力閾値は、PMセンサ4の使用条件に依らずほぼ一定値という特性がある。PMセンサ4の初期化処理の完了直後は、PMセンサ4に付着しているPM量はほぼゼロであり、PMセンサ4から信号が出力されない。
その後、内燃機関1の運転に伴って内燃機関1から排出されたPMがPMセンサ4に付着し、PMセンサ4におけるPM付着量が信号出力閾値に達すると、PMセンサ4から信号が出力し始める。
従って、PMセンサ4の初期化処理完了後、PMセンサ4が初めて信号を出力する時点(信号出力開始時)においてPMセンサ4に付着しているPMの量(以下、「信号出力開始時付着量」という)は、信号出力閾値にほぼ等しい。
信号出力閾値は一定値であり、PMセンサ4の特性値として予め分っているので、信号出力開始時付着量の実際値は、信号出力閾値を参照することによって容易に取得できることを意味する。従って、信号出力開始時付着量を推定する手段を有している場合、信号出力開始時付着量の推定値と信号出力閾値との比較に基づいて、信号出力開始時付着量の推定に係る誤差を補正することができる。
本実施例では、PMセンサ4におけるPM付着量を推定する手段はECU6である。ECU6は、内燃機関1から排出されるPM(以下、「機関排出PM」ともいう)の積算量を推定し、該積算量の推定値に基づいてPMセンサ4におけるPM付着量を推定する。
従って、機関排出PMの積算量の推定値に基づいて信号出力開始時付着量を推定し、該推定値と信号出力閾値とを比較することによって、機関排出PMの積算量の推定に係る誤差を補正することができる。これにより、機関排出PMの積算量の精度良い推定値を得る
ことができる。
後述するように、本実施例のフィルタ故障検出装置は、機関排出PMの積算量に基づいてフィルタ5の故障検出を行うので、機関排出PMの積算量の精度良い推定値を得ることができることによって、フィルタ5の故障検出を精度良く行うことが可能になる。
信号出力閾値は内燃機関の運転状態によらない一定値であるから、信号出力閾値に基づく上記の補正は精度が高い。また、PMセンサ4の信号出力閾値はPMセンサ4に固有の特性値であり、予めECU6に記憶させておくことにより、容易に取得することができる。
ここで、機関排出PMの積算量に基づいて信号出力開始時付着量を推定する方法について説明する。
本実施例では、フィルタ5に堆積したPMを酸化除去するフィルタ再生処理の完了直後の状態において、機関排出PMの積算量に基づく信号出力開始時付着量の推定を行う。
フィルタ再生処理の完了直後の状態では、フィルタ5におけるPM堆積量が少ないため、フィルタ5のPM捕集効率が低く、フィルタ5に流入するPMの大部分がフィルタ5をすり抜けてフィルタ5から流出する。従って、機関排出PMの量をフィルタ5から流出するPMの量と見なせる。
PMセンサ4には、フィルタ5から流出するPMの量の一部が付着するので、PMセンサ4におけるPM付着量の増分は、フィルタ5から流出するPMの量に相関がある。
特に、フィルタ再生処理の完了直後の状態では、機関排出PMの量をフィルタ5から流出するPMの量と見なせるので、ある期間におけるPMセンサ4のPM付着量の増分は、その期間における機関排出PMの積算量と強い相関がある。
フィルタ再生処理の実行中はフィルタから高温の排気が流出し、PMセンサ4を通過するため、PMセンサ4に付着しているPMも酸化反応してPMセンサ4から除去される。すなわち、フィルタ再生処理の実行中は、上述したバーンアップ処理を行わなくてもPMセンサ4に付着したPMが酸化除去される。
従って、フィルタ再生処理も、本発明におけるPMセンサの初期化処理に対応する。従って、フィルタ再生処理の完了後での状態は、同時にPMセンサ4の初期化処理の完了後の状態にもなっている。
PMセンサ4の初期化処理の完了直後はPMセンサ4におけるPMの付着量がほぼゼロなので、初期化処理の完了後からある時点までの期間におけるPMセンサ4のPM付着量の増分は、その時点でのPMセンサ4におけるPM付着量にほぼ等しい。
特に、フィルタ5におけるPMの堆積量が少ないフィルタ再生処理の完了直後の状態では、PMセンサ4の初期化処理の完了後のある時点でのPMセンサ4におけるPM付着量は、初期化処理の完了後からその時点までの期間に内燃機関1から排出されるPMの積算量と強い相関がある。
従って、PMセンサ4の初期化処理の完了後、PMセンサ4が初めて信号を出力する時点(信号出力開始時)でのPMセンサ4におけるPM付着量(信号出力開始時付着量)は、特にフィルタ再生処理の完了直後の状態では、PMセンサ4の初期化処理の完了後から
当該信号出力開始時までの期間(信号無出力期間)に内燃機関1から排出されるPMの積算量と強い相関がある。
そこで、本実施例では、フィルタ再生処理の完了後の信号無出力期間に内燃機関1から排出されるPMの積算量を推定し、該積算量の推定値に基づいて信号出力開始時付着量を推定する。
そして、この信号出力開始時付着量の推定値と信号出力閾値との比を、機関排出PMの積算量の推定値を補正するための補正係数として算出する。
ある期間における機関排出PMの積算量の推定値を補正した値とは、単位時間における機関排出PMの量の推定値を補正係数によって補正し、該補正した値を当該期間にわたって積算することによって求めた値でも良いし、当該期間における機関排出PMの積算量の推定値を補正係数によって補正して求めた値でも良い。
このように、本実施例によれば、運転状態によらない定数である信号出力閾値に基づいて機関排出PMの積算量を補正するので、機関排出PMの積算量の精度良い推定値を得ることができる。従って、機関排出PMの積算量に基づいて精度良くフィルタの故障を検出することが可能になる。
なお、上記の説明では、信号出力開始時付着量の推定をフィルタ再生処理の完了直後の状態において行う例を説明したが、フィルタ再生処理の完了直後の状態は、本発明における「フィルタにおけるPMの堆積量が第1所定量以下の状態」に相当する。
フィルタ5におけるPM堆積量が第1所定量以下であると判断できる状態であれば、フィルタ再生処理の完了直後でなくても良い。第1所定量は、フィルタ5に流入するPMの大部分がフィルタ5をすり抜けると判断できるPM堆積量の基準値である。第1所定量は、予め実験等により求めてECU6に記憶させておく。
また、上述のように、フィルタ再生処理の完了後の状態はPMセンサ4の初期化処理の完了後の状態にもなっているため、上述した信号出力開始時付着量の推定方法においては、PMセンサ4のバーンアップ処理を行っていない。
フィルタ5におけるPM堆積量が第1所定量以下である状態として、フィルタ再生処理の完了後の状態以外の状態で機関排出PMの積算量に基づく信号出力開始時付着量の推定を行う場合は、まずバーンアップ処理などでPMセンサ4の初期化処理を実行し、初期化処理の完了した時点から機関排出PMの積算を行う。
フィルタ再生処理を実行する手段としては、公知の種々の手段を用いることができる。例えば、ヒータによってフィルタ5を加熱したり、フィルタ5の前段に酸化触媒に設け、排気燃料添加や副噴射などにより酸化触媒に未燃HCを供給したり、燃焼制御により内燃機関1から排出される既燃ガスの温度を高めたりすることによってフィルタ再生処理を実行できる。
なお、上記のようにして算出された補正係数が過剰に大きい値の場合、PMセンサ4の出力に異常があると判断することができる。すなわち、本実施例によれば、PMセンサ4の異常を検出することもできる。
図4は、以上説明した機関排出PMの積算量の推定値を補正するための補正係数を算出する処理及びPMセンサの異常検出処理を表すフローチャートである。このフローチャー
トで表される処理は、内燃機関1の運転中ECU6によって定期的に実行される。
まずステップS101において、ECU6は、フィルタ再生処理の完了直後の状態であるか否かを判定する。別途実行されるフィルタ再生処理のルーチンにおいて、フィルタ再生処理が実行中か否かを表す情報がフラグに格納されるようにしておき、当該フラグを参照して判定を行うことができる。
例えば、前回の判断時にフィルタ再生処理が実行中であり、今回の判断時にフィルタ再生処理が実行されていない場合に、フィルタ再生処理の完了直後であると判定することができる。なお、判定方法はこの限りではない。
ステップS101においてフィルタ再生処理の完了直後ではないと判定した場合(S101:No)、ECU6はステップS102に進み、機関排出PMの積算量をゼロにリセットする。一方、ステップS101においてフィルタ再生処理の完了直後であると判定した場合(S101:Yes)、ECU6はステップS103に進む。
なお、上述のように、フィルタ再生処理の完了直後ではない状態において機関排出PMの積算量に基づく信号出力開始時付着量の推定を行う場合は、上記ステップS101の処理の代わりに、フィルタ5におけるPM堆積量を取得し、該取得したPM堆積量が第1所定量以下であるか否かを判定し、第1所定量以下であると判定した場合に、次にPMセンサ4の初期化処理(バーンアップ処理)を実行し、PMセンサ4の初期化処理の完了後、ステップS103に進む、という処理になる。
ステップS103において、ECU6は、機関排出PM量の推定値Gpmengを取得する。機関排出PM量の推定方法は特に限定されない。例えば、機関回転数、燃料噴射量、空気量、EGRガス量などの内燃機関1の運転状態を表す各種パラメータに基づく演算又はマップ参照により機関排出PM量を推定する。
機関排出PM量は、単位時間に内燃機関1から排出されるPM量である。単位時間は、ステップS103の処理が実行される間隔としてもよい。ステップS103の処理を実行するECU6が、本発明における「第1推定手段」として機能している。
ステップS104において、ECU6は、ステップS103で算出した機関排出PM量の推定値を積算する。すなわち、前回までの積算値ΣGpmengにステップS103で算出した機関排出PM量の推定値Gpmengを加算する。
ステップS105において、ECU6は、PMセンサ4の出力がゼロより大きいか否かを判定する。ここでは、ECU6は、PMセンサ4の出力をモニタし、PMセンサ4が初めて信号を出力するタイミングを検出する処理を行っている。
ステップS105においてPMセンサ4の出力がゼロより大きいと判定されるまで、ステップS103及びステップS104の処理を繰り返し、機関排出PM量の積算を続ける。ステップS105においてPMセンサ4の出力がゼロより大きいと判定した場合、ECU6はステップS106に進む。
ステップS106において、ECU6は、ステップS104で算出した機関排出PMの積算量ΣGpmengに基づいて、PMセンサ4に付着するPM量Gpmzを算出する。これは信号出力開始時付着量の推定値である。
この推定は、上述したような、フィルタ5におけるPM堆積量が第1所定量以下の状態
での機関排出PMの積算量とPMセンサ4のPM付着量との相関関係に基づいて行う。
例えば、この相関関係を実験的に或いはモデル計算によりマップ或いは演算式としてECU6に記憶させておき、ステップS105までの処理で算出された機関排出PMの積算量ΣGpmengを該マップや演算式に代入することによって算出されるセンサ付着PM量が、信号出力開始時付着量の推定値Gpmzである。ステップS106の処理を実行するECU6が、本発明における「第2推定手段」として機能している。
ステップS107において、ECU6は、信号出力閾値Gpmz0を取得する。信号出力閾値Gpmz0は予め調べられた数値がECU6に記憶されている。
ステップS108において、ECU6は、補正係数Kpmを算出する。ここでは、ステップS106で算出した信号出力開始時付着量の推定値GpmzとステップS107で算出した信号出力閾値Gpmz0との比を補正係数Kpmとする。
算出した補正係数KpmはECU6に記憶され、以降ECU6によって算出される機関排出PM量の推定値Gpmengに補正係数Kpmの逆数を乗ずることによって、機関排出PM量の推定値を補正し、後述するフィルタ5の故障検出処理ではこの補正した後の機関排出PM量の推定値を用いることができる。
或いは、ECU6によって算出される機関排出PMの積算量ΣGpmengに補正係数Kpmの逆数を乗ずることによって、機関排出PMの積算量の推定値を補正し、後述するフィルタ5の故障検出処理ではこの補正した後の機関排出PMの積算量の推定値を用いることができる。
ステップS108の処理を実行して補正係数Kpmを算出し、機関排出PM量の推定値やその積算値を補正係数Kpmを用いて補正する処理を行うECU6が、本発明における「補正手段」として機能している。
後述するフィルタの故障検出処理においては、この補正された機関排出PM量やその積算値に基づいてフィルタの故障検出が行われる。
ステップS109において、ECU6は、補正係数Kpmが基準値より大きいか否かを判定する。基準値は補正係数に基づいてPMセンサ4の異常を判断できるように定められる値である。ステップS108において算出された補正係数Kpmが基準値より大きい場合(S109:Yes)、ECU6はPMセンサ4が異常であると判断し、PMセンサ4が異常であることを示すフラグを立てる(ステップS110)。
一方、ステップS108において算出された補正係数Kpmが基準値以下の場合(S109:No)、ECU6はPMセンサ4は正常であると判断し、PMセンサ4が異常であることを示すフラグを立てない(ステップS111)。ステップS109からステップS111の処理を実行するECU6が、本発明における「PMセンサ故障検出手段」として機能している。
次に、上記のようにして算出した補正係数を用いて補正した後の機関排出PMの積算量の推定値に基づいてフィルタ5の故障検出を行う方法を説明する。
フィルタ5におけるPM堆積量が少ない場合、フィルタ5によるPM捕集効率が低く、フィルタ5に割れ等の故障が生じている状態と判別しにくい。また、フィルタ5におけるPM堆積量が少ない場合、フィルタ5によるPM捕集効率が安定しない。
そこで、本実施例では、フィルタ5におけるPM堆積量が第2所定量以上の状態においてフィルタ5の故障検出を行う。「第2所定量」は、フィルタ5によるPM捕集効率が高く安定していると判断することができるPM堆積量の基準値である。
第2所定量は、予め実験やモデル計算により求められる。フィルタ5におけるPM堆積量が第2所定量以上の状態でフィルタ5の故障検出を行うことにより、精度良くフィルタ5の故障を検出することができる。
本実施例では、フィルタ5におけるPM堆積量が第2所定量以上の状態において、PMセンサ4の初期化処理としてバーンアップ処理を実行し、バーンアップ処理の完了後から起算した機関排出PMの積算量に基づいてフィルタ5の故障を判定する。
本実施例では、この故障判定の基礎となる機関排出PMの積算量として、上述した補正係数によって補正した精度良い推定値を用いることができるので、フィルタの故障を精度良く判定することができる。
フィルタ5に割れ等の故障が生じている場合、フィルタ5が正常の場合と比較して、フィルタ5をすり抜けるPMの割合が高くなるため、内燃機関1から排出されるPMのうちPMセンサ4に付着する割合が高くなる。
従って、PMセンサにおけるPMの付着量がある一定量増加するために必要な機関排出PMの積算量は、フィルタ5に故障が生じている場合は、フィルタ5が正常の場合よりも少なくなる。
このことから、PMセンサ4におけるPM付着量が一定量増加する期間に内燃機関1から排出されるPMの積算量の多寡に基づいてフィルタ5に故障が生じているか否かを判断することができる。
例えば、PMセンサ4におけるPM付着量がゼロから信号出力閾値まで増加する期間は、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了後からPMセンサ4が初めて信号を出力する時点(信号出力開始時)までの期間(信号無出力期間)であり、これはPMセンサ4のバーンアップ処理の完了後にPMセンサ4の出力をモニタすることによって検知できる。
よって、PMセンサ4のバーンアップ処理完了後の信号無出力期間に内燃機関1から排出されるPMの積算量の多寡に基づいてフィルタ5の故障を判定することができる。
フィルタ5に故障が生じている場合は、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了後、機関排出PMの積算量がそれほど大きい値に達する前に、PMセンサ4におけるPM付着量が信号出力閾値に達してしまい、PMセンサ4が信号出力開始することになる。
従って、フィルタ5に故障が生じている場合、フィルタ5が正常の場合と比較して、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了後の信号無出力期間における機関排出PMの積算量が少ない。
このことから、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了後からの信号無出力期間における機関排出PMの積算量が第1基準値より小さい場合に、フィルタ5が故障していると判定することができる。
「第1基準値」は、PMセンサ4のバーンアップ処理完了後の信号無出力期間に内燃機
関1から排出されるPMの積算量の基準値であり、例えばフィルタ5が正常の場合の当該積算量の上限値に基づいて定めることができる。
図5は、機関排出PMの積算量とPMセンサ4の出力との関係を、フィルタ5が正常の場合と故障している場合とのそれぞれについて示した図である。ここでは、機関排出PMの積算量は、バーンアップ処理完了後から起算した積算値である。
図5に示すように、フィルタ5が正常の場合も故障している場合も、機関排出PMの積算量がある程度の値になるまではPMセンサ4から信号出力が開始しない。しかしながら、フィルタ5に故障が生じている場合は、機関排出PMの積算量ΣGpmengが第1基準値より小さいうちにPMセンサ4が信号出力開始してしまう。
これはフィルタ5が故障している場合、フィルタ5に流入するPMの大部分がフィルタ5をすり抜けてPMセンサ4に到達してしまうからである。それに対し、フィルタ5が正常の場合は、機関排出PMの積算量ΣGpmengが第1基準値より大きくなってからPMセンサ4が信号出力開始する。
これは、フィルタ5が正常の場合、フィルタ5に流入するPMの大部分はフィルタ5に捕集されてPMセンサ4には到達しないからである。
図6は、以上説明したフィルタ故障判定方法(PMセンサ4に信号出力閾値のPMが付着するのに要する機関排出PMの積算量の多寡に基づいてフィルタの故障を判定する方法)を表すフローチャートである。このフローチャートで表される処理は、ECU6によって定期的に実行される。
まずステップS201において、ECU6は、PMセンサ4が正常であるか否かを判定する。ECU6は、図4のステップS110及びステップS111で説明したPMセンサ異常フラグを参照してPMセンサ4が正常か否かを判定する。
ステップS201においてPMセンサ4が正常であると判定した場合(S201:Yes)、ECU6はステップS202に進む。一方、ステップS201においてPMセンサ4が異常であると判定した場合(S201:No)、ECU6は本フローチャートの処理を一旦抜ける。
ステップS202において、ECU6は、フィルタ5におけるPM堆積量が第2所定量以上であるか否かを判定する。例えば、前回のフィルタ再生処理の実行後からの燃料噴射量や運転時間が一定以上になった場合や、フィルタ5の前後差圧が所定以上になった場合に、フィルタ5におけるPM堆積量が第2所定量以上であると判定することができる。
判定方法はこれら例示したものに限られない。ステップS202においてフィルタ5におけるPM堆積量が第2所定量以上であると判定した場合、ECU6はステップS203に進む。
ステップS203において、ECU6は、PMセンサ4のバーンアップ処理を実行する。ここでは、PMセンサ4のヒータを加熱することにより、PMセンサ4に付着したPMを酸化させる。
ステップS204において、ECU6は、機関排出PMの積算量ΣGpmengをゼロにリセットする。
ステップS205において、ECU6は、機関排出PM量の補正された推定値Gpmengを取得する。ここでは、図4のステップS103で算出される機関排出PM量Gpmengを図4のステップS108で算出される補正係数Kpmで補正した値を機関排出PM量の補正された推定値Gpmengとして取得する。すなわち、ステップS205では補正後の精度良い機関排出PM量の推定値を取得することができる。
ステップS206において、ECU6は、ステップS205で算出した機関排出PM量の推定値を積算する。すなわち、前回までの積算値ΣGpmengにステップS205で算出した機関排出PM量の推定値Gpmengを加算する。
ステップS207において、ECU6は、PMセンサ4の出力がゼロより大きいか否かを判定する。ここでは、ECU6は、PMセンサ4が信号出力開始したか否かを判定している。ステップS207においてPMセンサ4の出力がゼロより大きいと判定されるまで、ステップS205及びステップS206の処理を繰り返し、機関排出PM量の積算を続ける。
ステップS207においてPMセンサ4の出力がゼロより大きいと判定した場合、ECU6はステップS208に進む。
ステップS208において、ECU6は、機関排出PMの積算量ΣGpmengが第1基準値より小さいか否かを判定する。ここでは、PMセンサ4の初期化処理完了後から信号出力開始時点までの信号無出力期間における機関排出PMの積算量、すなわち、PMセンサ4が信号出力開始した時点での機関排出PMの積算量の多寡を判定している。
ステップS208において機関排出PMの積算量ΣGpmengが第1基準値より小さいと判定した場合、ECU6はフィルタ5に故障が生じていると判定し、フィルタ5が故障していることを示すフラグを立てる(ステップS209)。
ステップS208において機関排出PMの積算量ΣGpmengが第1基準値以上であると判定した場合、ECU6は後述する図8のフローチャートの処理に移る。
フィルタ5に故障が生じている場合、フィルタ5が正常の場合と比較して、フィルタ5に流入するPMのうちフィルタ5をすり抜けるPMの割合が高くなる。
そのため、フィルタ5に故障が生じている場合とフィルタ5が正常の場合とでは、ある期間における内燃機関1から排出されるPMの積算量が同じであっても、その期間におけるPMセンサ4におけるPM付着量の増分は、フィルタ5に故障が生じている場合の方が多くなる。
このことから、内燃機関1から排出されるPMの積算量が等しい条件でのPMセンサ4のPM付着量の増分の多寡に基づいてフィルタ5に故障が生じているか否かを判断することができる。
例えば、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了時を起点とすれば、PMセンサ4におけるPM付着量の増分は、PMセンサ4の出力にほぼ等しいので、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了時から起算した機関排出PMの積算量がある一定量に達したときのPMセンサ4の出力の多寡に基づいてフィルタ5の故障を判定することができる。
フィルタ5に故障が生じている場合、PMセンサ4のバーンアップ処理完了後、機関排出PMの積算量がある一定量に達したときのPMセンサ4の出力が、フィルタ5が正常の
場合と比較して大きくなる。
このことから、PMセンサ4のバーンアップ処理完了後から起算した機関排出PMの積算量が所定の第2基準値に達したときのPMセンサ4の出力が所定の第3基準値より大きい場合に、フィルタ5が故障していると判定することができる。
「第2基準値」は、機関排出PMの積算量の基準値であり、フィルタ5が故障している場合と正常の場合とで、PMセンサ4に付着するPMの量に故障判断の根拠として有意な差異が生じるような積算量である。
「第3基準値」は、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了時から起算した機関排出PMの積算量が第2基準値に達したときのPMセンサ4の出力の基準値であり、例えばフィルタ5が正常の場合の該PMセンサ4の出力の下限値に基づいて定めることができる。
本実施例では、第2基準値は上述した第1基準値より大きい値に設定し、上記の判定方法(PMセンサ4のバーンアップ処理完了後から起算した機関排出PMの積算量が第2基準値に達したときのPMセンサ4の出力の多寡に基づく判定方法)によるフィルタ5の故障検出は、図6で説明した判定方法によってフィルタ5が故障しているという判定がなされなかった場合に行う。
すなわち、PMセンサ4のバーンアップ処理完了後の信号無出力期間における機関排出PMの積算量が第1基準値以上であった場合に実行する。
図7は、機関排出PMの積算量とPMセンサ4の出力との関係を、フィルタ5が正常の場合と故障している場合とのそれぞれについて示した図である。ここでは、機関排出PMの積算量は、初期化処理完了後から起算した積算値である。
図7に示すように、フィルタ5に故障が生じている場合とフィルタ5が正常の場合とを比較すると、PMセンサ4が信号出力開始した時点での機関排出PMの積算量ΣGpmengが等しくても、その後機関排出PMの積算量が第2基準値に達した時点でのPMセンサ4の出力は、フィルタ5に故障が生じている場合の方がフィルタ5が正常の場合よりも多くなる。
図8は、以上説明したフィルタ故障判定方法を表すフローチャートである。このフローチャートで表される処理は、図6のフローチャートのステップS208においてNoと判定された場合に実行される。
まずステップS301において、ECU6は、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了時から起算した機関排出PMの積算量ΣGpmengが、PMセンサ4の信号出力開始時において、第2基準値より小さいか否かを判定する。ここでは、図6のステップS208で第1基準値より小さいか否かを判定した機関排出PMの積算量ΣGpmengに基づいて判定を行う。
ステップS301において機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値より小さいと判定した場合、ECU6はステップS302に進む。ステップS301において機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値以上であると判定した場合、ECU6は後述する図10のフローチャートの処理に移る。
ステップS302において、ECU6は、機関排出PM量の補正された推定値Gpmengを取得する。ここでは、図6のステップS205と同様、補正係数Kpmで補正した
値を機関排出PM量の補正された推定値Gpmengとして取得するので、精度良い機関排出PM量の推定値を取得することができる。
ステップS303において、ECU6は、ステップS302で算出した機関排出PM量の推定値を積算する。すなわち、前回までの積算値ΣGpmengにステップS302で算出した機関排出PM量の推定値Gpmengを加算する。
ステップS304において、ECU6は、ステップS303で算出した機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値以上であるか否かを判定する。ここでは、PMセンサ4が信号出力開始した後、機関排出PMの積算量が第2基準値に達したか否かを判定している。
ステップS304において機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値以上と判定されるまで、ステップS302及びステップS303の処理を繰り返し、機関排出PM量の積算を続ける。ステップS304において機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値以上と判定した場合、ECU6はステップS305に進む。
ステップS305において、ECU6は、PMセンサ4の出力が第3基準値より大きいか否かを判定する。ステップS305においてPMセンサ4の出力が第3基準値より大きいと判定した場合、ECU6はフィルタ5に故障が生じていると判定し、フィルタ5が故障していることを示すフラグを立てる(ステップS306)。
ステップS305においてPMセンサ4の出力が第3基準値以下と判定した場合、ECU6はフィルタ5は正常であると判定し、フィルタ5が故障していることを示すフラグを立てない(ステップS307)。
フィルタ5に故障が生じている場合、フィルタ5が正常の場合と比較して、フィルタ5に流入するPMのうちフィルタ5をすり抜けるPMの割合が高くなる。
そのため、フィルタ5が正常であることを仮定してフィルタ5をすり抜けるPMの量を推定し、該推定値に基づいてPMセンサ4におけるPM付着量を推定した場合、フィルタ5が正常であれば、PM付着量の推定値と実際のPMセンサ4の出力との間の乖離は小さいが、フィルタ5に故障が生じている場合は、PM付着量の推定値と実際のPMセンサ4の出力との間の乖離が大きくなる。
このことから、フィルタ5が正常であることを仮定して推定されるPMセンサ4におけるPM付着量と実際のPMセンサ4の出力との乖離の大小に基づいてフィルタ5の故障を判定することができる。
本実施例では、PMセンサ4が信号出力開始した時点での機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値以上であった場合(図8のステップS301でNoの場合)に、この判定方法でフィルタ5の故障を検出する。
図9は、PMセンサ4におけるPM付着量の推定値及び実際のPMセンサ4の出力の時間変化を、フィルタ5が正常の場合と故障している場合とのそれぞれについて示した図である。PMセンサ4におけるPM付着量の推定値は、フィルタ5が正常であることを仮定して内燃機関1の運転条件に基づいて算出される。
PMセンサ4におけるPM付着量の推定値又はPMセンサ4の出力のいずれか又は両者を、両者が同一の物理量を表すように換算する。以下、「PMセンサ4におけるPM付着
量の推定値」「PMセンサ4の出力」は、特に断らない限り、当該換算により比較可能となった値を表すものとする。
図9(A)はフィルタ5が正常の場合を表し、図9(B)はフィルタ5に故障が生じている場合を表す。図9に示す例では、PMセンサ4におけるPM付着量の推定値が所定の第4基準値Gtrgに達すると(時刻t1、t3)、バーンアップ処理が実行され、PMセンサ4におけるPM付着量がゼロになる(時刻t2、t4)。
図9(A)に示すように、フィルタ5が正常の場合は、PMセンサ4におけるPM付着量の推定値が第4基準値Gtrg以上になったときのPMセンサ4におけるPM付着量の推定値と実際のPMセンサ4の出力との差ΔGpmは小さい。
一方、図9(B)に示すように、フィルタ5に故障が生じている場合は、PMセンサ4におけるPM付着量の推定値が第4基準値Gtrg以上になったときのPMセンサ4におけるPM付着量の推定値と実際のPMセンサ4の出力との差ΔGpmは大きい。
従って、PMセンサ4におけるPM付着量の推定値が第4基準値Gtrg以上になったときのPMセンサ4におけるPM付着量の推定値と実際のPMセンサ4の出力との差ΔGpmが所定の第5基準値より大きい場合に、フィルタ5に故障が生じていると判断することができる。
この場合、本発明における「PMセンサにおけるPM付着量とPMセンサの出力との乖離」として、両者の差ΔGpmを算出し、この差に基づいてフィルタ5の故障判定を行っていることになる。
或いは、「PMセンサにおけるPM付着量の推定値とMセンサの出力との乖離」として、両者の比rGpmを算出し、この比rGpmが所定の第6基準値より大きい場合に、フィルタ5に故障が生じていると判断するようにしても良い。
「第4基準値」は、フィルタ5を正常と仮定した場合のPMセンサ4におけるPM付着量の推定値の基準値であり、フィルタ5が故障している場合と正常の場合とで、PMセンサ4におけるPM付着量の推定値と実際のPMセンサ4の出力との間に故障判断の根拠として有意な差異が生じるような推定値である。
「第5基準値」及び「第6基準値」は、フィルタ5を正常と仮定した場合のPMセンサ4におけるPM付着量の推定値が第4基準値に達したときの該推定値と実際のPMセンサ4の出力との差又は比の基準値であり、例えばフィルタ5が正常の場合の差又は比の上限値に基づいて定めることができる。
図10は、以上説明したフィルタ故障判定方法(PMセンサ4におけるPM付着量の推定値が第4基準値に達したときの該推定値とPMセンサ4の実際の出力との乖離の大小に基づいてフィルタの故障を判定する方法)を表すフローチャートである。
このフローチャートで表される処理は、図8のフローチャートのステップS301においてNoと判定された場合(PMセンサ4が信号出力開始した時点において、PMセンサ4のバーンアップ処理の完了後から積算した機関排出PMの積算量ΣGpmengが第2基準値以上である場合)に実行される。
まずステップS401において、ECU6は、フィルタ5に流入するPM量Gpm_inを取得する。ECU6は、PMセンサ3による出力に基づいてフィルタ5に流入するP
M量Gpm_inを取得する。
フィルタ5に流入するPM量Gpm_inは、或いは、内燃機関1の運転状態(回転数及び燃料噴射量)応じたマップを参照することによって取得することもできる。
ステップS402において、ECU6は、フィルタすり抜け率kTrpを取得する。フィルタすり抜け率kTrpは、フィルタ5に流入するPMのうちフィルタ5をすり抜けるPMの比率を表す。
フィルタすり抜け率kTrpは、フィルタ5におけるPM堆積量、フィルタ5に流入するPM量Gpm_in、フィルタ5を通過するガス量に応じたマップを参照することによって取得することもできる。
ステップS403において、ECU6は、フィルタ5から流出するPM量の推定値Gpm_outを取得する。ECU6は、ステップS401で取得したフィルタ5に流入するPM量Gpm_inにステップS402で取得したフィルタすり抜け率kTrpを乗ずることによって、フィルタ5から流出するPM量の推定値Gpm_outを算出する。
ステップS404において、ECU6は、PMセンサ4におけるPM付着量(以下、「センサ付着PM量」という)の増分の推定値dGpm’を取得する。PMセンサ4には、フィルタ5から流出したPMの一部が付着するので、ステップS403で取得したフィルタ5から流出するPM量の推定値Gpm_outに基づいてセンサ付着PM量の増分を算出することができる。
フィルタ5から流出するPM量の推定値Gpm_outからセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’を算出する関係式やマップは、予め実験やモデル計算により求めておき、ECU6に記憶させておく。
ステップS405において、ECU6は、センサ付着PM量の推定値Gpm’を取得する。ECU6は、前回までに算出したセンサ付着PM量の推定値Gpm’に、ステップS404で算出したセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’を加算することによって、センサ付着PM量の推定値Gpm’を算出する。
ステップS406において、ECU6は、ステップS404で算出したセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’が故障判断の根拠とするために有意であるか否かを判定する。ここでは、ステップS404で算出したセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’が所定の判定値以上の場合に、該増分の推定値は有意であると判定する。
この判定値は、推定されたセンサ付着PM量の増分dGpm’が、このフローチャートの処理によってフィルタ5の故障を判定するために有意な大きさであるか否かを判断するための基準値である。
センサ付着PM量の推定値が、上記判定値より小さい量だけ増加したとしても、センサ付着量の推定値とPMセンサの出力との間に大きな差異は現われない。従って、両者の乖離に基づく故障判定の精度向上に寄与しない。
センサ付着PM量の推定値の増分において、このような小幅な増分の頻度が高い場合、上記の判定方法による故障検出の精度が低くなる可能性があるので、本実施例では、小幅な増分の頻度が低い場合にのみ、上記の判定方法によるフィルタ故障検出を行う。
ステップS406においてセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’が判定値以上であると判定した場合、ECU6はステップS407に進む。一方、ステップS406においてセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’が判定値より小さいと判定した場合、ECU6はステップS408に進む。
ステップS407において、ECU6は、有意と判定されたセンサ付着PM量の増分の積算を行う。すなわち、前回までに算出した積算値Gpm’_sigに、ステップS406で有意と判定されたセンサ付着PM量の増分の推定値dGpm’を加算する。
ステップS408において、ECU6は、ステップS405で算出したセンサ付着PM量の推定値Gpm’が第4基準値Gtrg以上になったか否かを判定する。ステップS405においてセンサ付着PM量の推定値Gpm’が第4基準値Gtrg以上と判定されるまで、ECU6はステップS401からステップS407の処理を繰り返し、センサ付着PM量の増分の推定値を積算していく。
ステップS408においてセンサ付着PM量の推定値Gpm’が第4基準値Gtrg以上と判定した場合、ECU6はステップS409に進む。
ステップS409において、ECU6は、センサ付着PM量のうち有意なセンサ付着PM量の比率k_sigを算出する。すなわち、ステップS405で算出したセンサ付着PM量の推定値Gpm’に対する、ステップS407で算出した有意なセンサ付着PM量の積算値Gpm’_sigの比を算出する。
ステップS410において、ECU6は、ステップS409で算出した比率k_sigが所定値以上であるか否かを判定する。この所定値は、センサ付着PM量の推定値Gpm’が、それに基づいて有意なフィルタ5の故障を判定をすることができるか否かを判断するための基準値である。
センサ付着PM量の推定値Gpm’のうち、有意なセンサ付着PM量の推定値Gpm’_sigの比率が所定値に満たない場合、当該センサ付着PM量の推定値Gpm’はそれに基づいてフィルタ5の状態を判断するために有意な情報を十分に含んでいないと判断する。
ステップS410において比率k_sigが所定値以上であると判定した場合、ECU6はステップS411に進む。一方、ステップS410において比率k_sigが所定値より小さいと判定した場合、ECU6は今回算出したセンサ付着PM量の推定値Gpm’に基づくフィルタ5の故障判定は行わないことに決定し、次の故障判定に備えてステップS416に進み、PMセンサ4の初期化処理を実行する。
ステップS411において、ECU6は、センサ付着PM量の実際値Gpmを取得する。ECU6は、PMセンサ4の出力に基づいて、センサ付着PM量の実際値Gpmを取得する。
ステップS412において、ECU6は、センサ付着PM量の推定値と実際値との比rGpmを取得する。ECU6は、ステップS411で取得したセンサ付着PM量の実際値Gpmに対するステップS405で算出したセンサ付着PM量の推定値Gpm’の比Gpm’/Gpmを計算することにより比rGpmを取得する。
ステップS413において、ECU6は、ステップS412において取得した比rGpmが第6基準値以上であるか否かを判定する。ステップS413において比rGpmが第
6基準値以上と判定した場合、ECU6はフィルタ5が故障していると判断し、フィルタ故障フラグを立てる(ステップS414)。
一方、ステップS413において比rGpmが第6基準値より小さいと判定した場合、ECU6はフィルタ5は正常と判断し、フィルタ故障フラグを立てない(ステップS415)。
なお、センサ付着PM量の推定値と実際値との差ΔGpmに基づいてフィルタ5の故障判定を行う場合には、ステップS412においてステップS411で取得したセンサ付着PM量の実際値GpmとステップS405で算出したセンサ付着PM量の推定値Gpm’との差の大きさ|Gpm’−Gpm|を計算することにより差ΔGpmを取得する。
そして、ステップS413において、差ΔGpmが第5基準値以上であるか否かを判定し、差ΔGpmが第5基準値以上である場合には、フィルタ5は故障していると判断し、フィルタ故障フラグを立て(ステップS414)、差ΔGpmが第5基準値未満の場合には、フィルタ5は正常であると判断し、フィルタ故障フラグを立てない(ステップS415)。
ステップS414又はステップS415の処理を実行後、ECU6はステップS416に進み、PMセンサ4のバーンアップ処理を実行し、センサ付着PM量の推定値Gpm’及び有意なセンサ付着PM量の推定値Gpm’_sigをゼロにリセットする(ステップS417)。
以上説明した図6、図8及び図10の処理を実行するECU6が、本発明における「フィルタ故障検出手段」として機能している。いずれの故障判定処理においても、機関排出PM量の推定値又はその積算値に基づいてフィルタ5の故障判定が行われている。
本実施例によれば、機関排出PMの積算量の推定値に基づいて推定されるPMセンサ4の信号出力開始時付着量の推定値とPMセンサ4に固有の定数である信号出力閾値との比較に基づいて、機関排出PMの積算量を補正することができ、当該補正された機関排出PMの積算量を用いてフィルタの故障判定を行うので、フィルタ5の故障を精度良く検出することが可能である。
なお、図5から図10で説明したフィルタ5の故障検出方法は、機関排出PMの積算量に基づくフィルタ5の故障検出方法の一例である。他の故障検出方法であっても、機関排出PMの積算量の推定値に基づく故障検出方法であれば、図4で説明した補正係数により補正された機関排出PMの積算量を用いることによって、フィルタ5の故障検出を精度良く行うことが可能である。