JP5532776B2 - 光触媒体および光触媒体の製造方法 - Google Patents

光触媒体および光触媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈する光触媒体に関する。
特許文献1には、レニウム錯体を触媒と利用して二酸化炭素を還元することが示されている。この特許文献1では、金属−配位子間の電荷吸収バンドが紫外領域から可視領域に亘る金属錯体(レニウム錯体)から選ばれた光触媒と有機アミンから選ばれた電子供与剤とを溶解させ、その有機溶媒中に0.5〜7.5MPaの高圧で二酸化炭素を導入する。そして、その圧力下において光を照射することによって二酸化炭素を選択的に一酸化炭素に還元する。
特許文献2には、色素増感太陽電池が示されており、半導体と錯体との組合せにより、電池反応を効率化することが示されている。
また、非特許文献1にも、色素増感太陽電池が示されている。この非特許文献1において、太陽電池は、酸化物電極、対電極、およびそれらの電極間に挟まれた電解質層とから構成される。そして、酸化物電極の表面には、可視光領域に吸収を有する光増感色素が吸着されており、半導体の表面にカルボキシル基により色素が結合されている方が、色素内部で光励起された電子を効率よく半導体へ注入し、高い電池特性が得られることが示されている。
特許第3590837号 特許第2664194号
Nature, 353, 737 (1991)
ここで、二酸化炭素の高効率・高選択的な光還元は、太陽エネルギーの化学変換ならびに二酸化炭素の常温・常圧下での有効利用の観点から重要な技術である。
特許文献1では、レニウム錯体を用い、二酸化炭素から選択的に一酸化炭素を還元することを示している。しかしながら、レニウム錯体を光触媒として用いる場合、二酸化炭素還元反応が起こる可視光の吸収域が450nm以下であり、比較的短波長側に限定される。加えて、得られる還元化合物が気体の一酸化炭素のみである。また、その他の金属の錯体についても記載されているものの、可能性がある金属元素を羅列するに留まっている。
特許文献2、非特許文献1のような色素増感太陽電池では、半導体と錯体の組み合わせを利用しており、長波長の光吸収が可能であるルテニウム錯体を、吸着基を介して半導体表面に結合した構成となっている。この場合、色素は太陽光を吸収し、色素のLUMO(最低空軌道)から半導体のCB(伝導体)へ電子注入が起こることで、光の増感を行う。すなわち、電子の流れは、色素→半導体であり、あくまでも色素(錯体)は光を増感する目的のために利用されている。
本発明に係る光触媒体は、半導体と、この半導体の表面上に配置され連結基によって半導体と化学的に結合する金属錯体を含む基材と、を含み、少なくとも前記半導体に光を照射することによって前記半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈し、二酸化炭素を還元することを特徴とする。
また、前記金属錯体が周期律表第VII族金属、第VIII族金属から選ばれる少なくとも一種の金属の錯体を含むことが好適である。
また、半導体と基材の化学的結合における連結基はカルボキシル基、リン酸基、ホスホリル基、スルホン酸基、シラノール基、およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一つを含むことが好適である。
また、前記連結基は、リン酸またはリン酸エステルまたはホスホリル基を含む含リン酸化合物であることが好適である。
また、前記半導体表面と結合した基材における金属錯体の配位子との距離が半導体表面から10Å以下であることが好適である。
また、前記半導体に対する前記基材の表面被覆率は、1%以上90%以下であることが好適である。
また、前記半導体は、ニッケル含有硫化亜鉛、銅含有硫化亜鉛、窒化タンタル、酸窒化タンタル、酸化タンタル、硫化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、炭化ケイ素、酸化鉄、銅の酸化物の少なくとも1つを含むことが好適である。
また、本発明は、半導体の表面に金属錯体を含む基材をその連結基により化学的に結合させた光触媒体であって、前記半導体に光を照射することによって前記半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈し、二酸化炭素を還元する光触媒体の製造方法であって、半導体基板に、前記基材の連結基を化学的に結合させて、光触媒体を形成することを特徴とする。
また、本発明は、半導体の表面に金属錯体を含む基材をその連結基により化学的に結合させた光触媒体であって、前記半導体に光を照射することによって前記半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈し、二酸化炭素を還元する光触媒体の製造方法であって、前記基材の連結基を含む部分を半導体基板に結合させ、その後基材の残りの部分をすでに半導体に結合されている部分に結合させて基材を構成することを特徴とする。
また、前記基材は、連結基を含む配位子と、金属錯体の本体部分から構成され、連結基を含む配位子を半導体基板に連結した後、金属錯体の本体部分を配位子に結合させることが好適である。
本発明によれば、半導体に光を照射することによって生じた励起電子が基材へ移動し、二酸化炭素をギ酸や一酸化炭素へ還元する効果がある。そして、基材が半導体に結合することにより、励起電子の移動距離が短くなり、励起電子をより有効に利用でき、非結合系の場合に比べて高い触媒活性を得ることができる。
本実施形態に係る光触媒体の構成を示す図である。 連結基の例を示す図である。 配位子の例を示す図である。 配位子の他の例を示す図である。 サンプルの全反射FT−IRスペクトルを示す図である。 実施例6に用いた配位子の構成を示す図である。 実施例6におけるTOF−SIMS正イオンスペクトルを示す図である。 実施例7におけるTOF−SIMS正イオンスペクトルを示す図である。 光照射時間とギ酸生成のターンオーバー数の関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係る光触媒体の構成が示されている。半導体10の表面には、錯体触媒からなる基材12が連結される。すなわち、図1の下に模式的に示したように、基材12を構成する錯体が連結基を有しその連結基(図においてXで示す)が半導体の原子と化学的に結合する。なお、図1の上には、基材12が連結されない場合の模式図が示してある。このように、基材12に連結基が存在しない場合には、基材12と半導体10の表面との距離が大きくなる。例えば、他のバインダーが介在したり、基材12が液中に浮遊している場合などが連結なしの状態に対応する。
このような本実施形態において、少なくとも半導体10に光が照射される。ここで、本実施形態では、可視光においても触媒作用を得られることを証明するために、波長400nm以上の光に限定した。実際の使用では、紫外線も含む光が利用され、紫外光も利用される。本実施形態の光触媒体では、可視光において触媒活性が得られるため、太陽光などの光エネルギーをより効果的に利用できる。
半導体は、その伝導帯の最下端のエネルギー準位の値から、後に記載される基材の電子によって占有されていない分子軌道のうち最もエネルギーの低い準位の値を引いた値が0.2電子ボルト以下である材料とする。例えば、酸化タンタル、窒化タンタル、酸窒化タンタル、ニッケル含有硫化亜鉛、銅含有硫化亜鉛、酸化タンタル、硫化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、酸化鉄、炭化ケイ素、銅の酸化物とすることができる。
窒化タンタル及び酸窒化タンタルは、酸化タンタルを、アンモニアガスを含む雰囲気で加熱処理することによって生成することができる。アンモニアは非酸化性のガス(アルゴン、窒素等)によって希釈することが好適であり、例えば、アンモニアとアルゴンとをそれぞれ同じ流量で混合したガス流中に酸化タンタルを配して加熱することが好適である。加熱温度は500℃以上900℃以下が好ましく、さらには650℃以上850℃以下がより好ましい。処理時間は6時間以上15時間以下が好ましい。アンモニア処理する前の酸化タンタルは市販の結晶性を有するもの、または、塩化タンタル、タンタルアルコキシド等のタンタル含有化合物溶液に加水分解処理等を施すことによって得たアモルファス状のものまたはそれを結晶化したものなどが使用できる。
また、ニッケル含有硫化亜鉛は、ニッケル含有水和物と亜鉛含有水和物とを溶解させ、そこに硫化ナトリウム水和物を溶解させた水溶液を投入して撹拌し、遠心分離及び再分散を行い、上澄みを除去したうえで乾燥させることによって得ることができる。ニッケル含有水和物は、例えば、硝酸ニッケル(II)六水和物等とすることができる。亜鉛含有水和物は、例えば、硝酸亜鉛(II)六水和物等とすることができる。ここで、ニッケル源として、その他に塩化ニッケル、酢酸ニッケル、過塩素酸ニッケル、硫酸ニッケル等が使用可能である。また、亜鉛源として、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛等が使用可能である。
同様に、銅含有硫化亜鉛は、銅含有水和物と硝酸亜鉛水和物とを溶解させ、そこに硫化ナトリウム水和物を投入して撹拌し、遠心分離及び再分散を行い、上澄みを除去したうえで乾燥させることによって得ることができる。銅含有水和物は、例えば、硝酸銅(II)二・五(2.5)水和物とすることができる。亜鉛含有水和物は、例えば、硝酸亜鉛(II)六水和物等とすることができる。ここで、銅源として、その他に塩化銅、酢酸銅、過塩素酸銅、硫酸銅等が使用可能である。また、亜鉛源として、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛等が使用可能である。
基材12は、その空軌道のエネルギー準位値が上述した半導体10の伝導帯の最下端のエネルギー準位の値よりも低い或いは0.2Vまで高い物質とする。基材12は、金属錯体とすることができ、金属錯体は電子を利用することにより二酸化炭素還元活性を示す化合物であれば何でもよく、特に限定されない。
金属錯体は、周期律表第VII族金属、第VIII族金属から選ばれる少なくとも一種の金属の錯体が挙げられ、例えば、ルテニウム、レニウム、マンガン、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金などの金属と配位子との錯体を挙げることができる。
配位子としては、特別な制約はないが、典型的な主配位子としては、含窒素複素環化合物、含酸素複素環化合物、含硫黄複素環化合物等を挙げることができる。また補助配位子としてCO、ハロゲン、ホスフィン類などを挙げることができる。補助配位子は反応の過程でCO、塩基、または水と接触して一部解離して以下の副配位子へ変換してもかまわない。副配位子へ変換することにより、CO還元活性が発現する。副配位子としては−CO、−CO、−COOH、−COH、−(CO、−OH、−OHなどが挙げられる。これらの配位子は1種または2種以上の組合せで用いることができる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、ターピリジン、ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンなどを、含酸素複素環化合物としては、フラン、ベンゾフラン、オキサゾール、ピラン、ピロン、クマリン、ベンゾピロンなどを、含硫黄複素環化合物としては、例えば、チオフェン、チオナフテン、チアゾールなどを例示することができる。このような配位子は単独、もしくは2種以上の組合せで用いることができる。
具体的には、基材12として、カルボキシビピリジン配位子を有するレニウム錯体((Re(dcbpy)(CO)P(OEt))),((Re(dcbpy)(CO)Cl)),Re(dcbpy)(CO)MeCN,Re(dcbqi)(CO)MeCNや、Ru錯体[Ru(dcbpy)(bpy)(CO)2+(bpy=2,2’−bipyridine,dcbpy=4,4’−dicarboxy−2,2’−bipyridine)ジフォスフォネートビピリジン配位子を有する[Ru(dpbpy)(bpy)(CO)2+(dpbpy=4,4’−diphosphonate−2,2’−bipyridine)、ジフォスフォネートエチルビピリジン配位子を有する[Ru(dpebpy)(bpy)(CO)2+(dpebpy=4,4’−diphosphonateethyl−2,2’−bipyridine)が利用される。図においては、Ru錯体を記載してある。
半導体10と基材12の連結基は,化学的に結合すれば特に限定しない。例えば、図2に示すような、カルボキシル基、リン酸基、ホスホリル基、スルホン酸基、シラノール基、およびこれらの誘導体を挙げることができる。ここで、図2の連結基は、半導体10と連結した状態を示しているものではなく、実際に半導体と連結した状態では、プロトンが脱離した構造、または金属と酸素原子が配位している構造であってもかまわない。これらの連結基は、1種または2種以上の組合せで用いることもできる。また、複数個の使用であってもかまわない。なお、図において、R1,R2は、水素またはC4以下のアルキル基またはフェニル基である。
このような連結基を用いた半導体10と基材12の化学的結合は、例えば、全反射FT−IRなどの分光学的手法により、確認することが可能である。具体的には、連結基が金属と相互作用することによる、連結基のバンドのシフトが観察される。
また、半導体10と基材12の連結方法は、半導体と基材が化学的に結合していれば良く、特に限定しない。例えば、(1)配位子に連結基を導入した金属錯体を半導体に吸着させる、(2)連結基を導入した配位子を半導体に吸着させた後に直接錯体を形成させる、(3)連結基を導入した半導体に金属錯体を結合させる、等が挙げられる。
基材12の被覆率は、半導体10の表面積に対して1%以上90%以下であることが好ましい。基材12の被覆率が1%より少ない場合は、基材量が少なすぎるため、十分な二酸化炭素還元活性が発現しない。逆に90%より多い場合は、半導体表面へ多くの金属錯体が被覆されるため、半導体の可視光吸収が阻害される、あるいは半導体の酸化サイトが被覆されてしまうために、光触媒活性が低下する。
特に好ましい組合せとしては、半導体が金属酸化物の場合は、連結基がリン酸基、GaPやInPのような化合物半導体の場合はホスホリル基(P=O)を有している連結基が挙げられる。
このようにして得られた光触媒体において、半導体10に光が照射されると、ここにおいて励起電子が生じる。すなわち、ホールhと、電子eの対が生じ、ホールhは例えばTEOAがTEOA・になる反応によって利用され、電子eが基材12に移動し、COを還元する触媒反応に利用される。このようにして、光エネルギーによって発生した励起電子eを利用して、COをHCOOHに還元する反応を生起することができる。
「光触媒の調製」
次に、上述のような光触媒体の調製についてより詳細に説明する。
<実施例1>
5gの塩化タンタル(和光純薬)を100mlのエタノール中に溶解させ、5%のNH水溶液を加えて300mlにメスアップし、5時間攪拌することによりタンタル酸化物の粉末を合成した。この白色粉末を大気下、500℃で5時間熱処理した後、アンモニアガス0.4L/min、アルゴンガス0.2mL/minで混合流通させた条件下において575℃で5時間処理し、黄色の窒素ドープ酸化タンタル(N−Ta)の粉末を作製した。この粉末にカルボキシビピリジン配位子(図3)を有するRu錯体[Ru(dcbpy)(bpy)(CO)2+(bpy=2,2’−bipyridine,dcbpy=4,4’−dicarboxy−2,2’−bipyridine)のDMF溶液を添加し、16時間攪拌することにより、N−TaへRu錯体を吸着させた。遠心分離して、上澄みを除去後、エーテルで洗浄、乾燥させることにより、半導体/錯体複合体を得た。ICP分析により、Ru含有量は0.07wt%と定量された。
このように、実施例1では、カルボキシル基を連結基として使用して、タンタル酸化物にRu錯体を連結している。
<実施例2>
以下に示す方法でN−Taへカルボキシビピリジン配位子を有するRu錯体[Ru(dcbpy)(bpy)(CO)2+を連結した。
dcbpyの2mM−DMF溶液5mlにN−Taを250mgを添加し、16時間攪拌することにより、N−Taへジカルボキシビピリジン配位子を吸着させた。遠心分離して上澄みを除去後、メタノールで洗浄、乾燥させることにより、半導体/配位子複合体を得た。
次に、半導体/配位子複合体200mg、[Ru(bpy)(CO)(CFSO]6mg、エタノール2mlを混合し、2時間還流し、ろ過、洗浄、真空乾燥することにより、半導体/錯体複合体を得た。ICP分析により、Ru含有量は0.1wt%と定量された。
このように、実施例2では、カルボキシル基を有するジカルボキシビピリジン配位子を最初に結合させ、半導体/配位子複合体を得、その後[Ru(bpy)(CO)(CFSO]を結合させて、半導体/錯体複合体を得ている。
<実施例3>
実施例2でのジカルボキシビピリジン配位子の吸着量を1.5倍量に変更した以外は同様の方法で半導体/錯体複合体を合成した。ICP分析により、Ru含有量は0.13wt%と定量された。
実施例3は、実施例1に対し、配位子の量を変更したものである。
<実施例4>
以下に示す方法でN−Taへジフォスフォネートビピリジン(リン酸)配位子(図4)を有するRu錯体[Ru(dpbpy)(bpy)(CO)2+(dpbpy=4,4’−diphosphonate−2,2’−bipyridine)を固定化した。
dpbpyの2mM−DMSO溶液5mlにN−Taを250mgを添加し、16時間攪拌することにより、N−Taへジフォスフォネートビピリジン配位子を吸着させた。遠心分離して上澄みを除去後、メタノールで洗浄、乾燥させることにより、半導体/配位子複合体を得た。
次に、半導体/配位子複合体200mg、[Ru(bpy)(CO)(CFSO]6mg、エタノール2mlを混合し、2時間還流し、ろ過、洗浄、真空乾燥することにより、半導体/錯体複合体を得た。IPC分析により、Ru含有量は0.07wt%と定量された。
図5に合成したサンプルの全反射FT−IRスペクトルを示す。ここで、Aは実施例4のスペクトル、Bは半導体(N−Ta)のみのスペクトル、Cは(A−B)の差スペクトルを示す。
実施例4のサンプルでは、2081,2018,2000cm−1にルテニウム錯体の配位子(カルボニル)に由来するバンドを確認することができる(図5においてAで示す)。加えて、半導体(図5においてBで示す)と、Aのサンプルの差スペクトル(図5においてCで示す)では、1157,1070,997cm−1に連結基であるリン酸のPO(OH)のバンドを確認することができる。このことより、N−TaのTaとリン酸が静電相互作用により連結していると推定され、化学的結合が存在したことがわかった。
このように、実施例4では、リン酸基を有するジフォスフォネートビピリジン配位子を最初に結合させて半導体/配位子複合体を得、その後[Ru(bpy)(CO)(CFSO]を結合させて、半導体/錯体複合体を得ている。
<実施例5>
実施例4でのジフォスフォネートビピリジン配位子の吸着量を0.5倍量に変更した以外は同様の方法で半導体/錯体複合体を得た。ICP分析により、Ru含有量は0.04wt%と定量された。
実施例5は、実施例4に対し,配位子の量を変更したものである。
<実施例6>
以下に示す方法でGaPへジフォスフォネートエチルビピリジン配位子(dpebpy:図6に示す)を有するRu錯体[Ru(dpebpy)(bpy)(CO)2+の吸着を以下の方法で行った。
フッ素樹脂(テフロン(登録商標))製容器に2mM[Ru(dpebpy)(bpy)(CO)2+のジクロロメタン/メタノール混合溶液1ml、0.5cm角のGaP基板を入れ、室温で一晩放置した。翌朝、膜を取り出し、溶媒(ジクロロメタン/メタノール)による洗浄操作を2回行い、40℃で真空乾燥した。半導体基板への配位子の吸着の有無は飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)により分析した。
図7にTOF−SIMS測定結果を示す。Ru錯体を吸着させたものでは、基板のみでは観察されないRuイオンに相当するスペクトルが観察されることより、GaP基板上にRu錯体が吸着していることが分かった。
このように、実施例6では、リン酸基を有するジフォスフォネートビピリジン配位子有するRu錯体を半導体基板に結合させて、半導体/錯体複合体を得ている。
<実施例7>
基板としてInPを用いて実施例6と同じ方法でジフォスフォネートエチルビピリジン配位子の吸着を行った。
図8にTOF−SIMS測定結果を示す。この例においても、Ru錯体を吸着させたものでは、Ruイオンに相当するスペクトルが観察されることより、InP基板上にRu錯体が吸着していることが分かった。
実施例6のGaP基板に代えて、実施例7では、InP基板を用いている。
<比較例1>
実施例1におけるN−Taの半導体粉末(基材なし)を比較例1とした。
<比較例2>
実施例1における[Ru(dcbpy)(bpy)(CO)2+のRu錯体(半導体なし)を比較例2とした。
「光触媒性能評価」
実施例1〜5、および比較例1、2について光触媒体としての性能を評価した。加えて、これらの触媒を用いて異なる実験条件での光触媒性能評価を実施例8、および比較例3、4として行った。
8mlの試験管にアセトニトリルとトリエタノールアミン(TEOA)を5:1の体積比で混合した溶液を4ml入れ、各触媒10mgを入れた後に、COガスを溶液中に15分間通気し、溶液中に飽和させ、ゴム栓で密閉した。
スターラーで内部溶液を攪拌しながら、メリーゴーラウンド方式の照射装置により、Xeランプ(ウシオ電機製)の放射光の内、可視光を熱線吸収フィルタ(旭硝子製)と紫外線カットフィルタ(40L、シグマ光機製)を通して60時間照射した。光照射後、溶液上の気相部分のガスはガスクロマトグラフで、また液相部分の化合物はイオンクロマトグラフを用いて分析した。
<実施例8>
実施例5の触媒を用いて、反応溶液(アセトニトリル、トリエタノールアミン)に水を5%加えた条件で光触媒性能を評価した。
<比較例3>
8mlの試験管にアセトニトリルとトリエタノールアミン(TEOA)を5:1の体積比で混合した溶液を4ml入れ、N−Ta 10mgとルテニウム錯体[Ru(bpy)(CO)2+(Ru量0.007mg)を混合した条件で光触媒性能を評価した。
<比較例4>
実施例3の触媒を用いて、COガスの代わりにArガスを通気した条件で光触媒性能を評価した。
「光触媒性能評価(経時変化測定)」
CO還元活性の経時変化を調べた。8mlの試験管にアセトニトリルとトリエタノールアミン(TEOA)を20:1の体積比で混合した溶液を4ml入れ、各触媒10mgを入れた後に、COガスを溶液中に15分間通気し、溶液中に飽和させ、ゴム栓で密閉した。
スターラーで内部溶液を攪拌しながら、メリーゴーラウンド方式の照射装置により、Xeランプ(ウシオ電機製)の放射光の内、可視光を熱線吸収フィルタ(旭硝子製)と紫外線カットフィルタ(40L、シグマ光機製)を通して所定時間照射した。光照射後、溶液上の気相部分のガスはガスクロマトグラフで、また液相部分の化合物はイオンクロマトグラフを用いて分析した。
<実施例9>
実施例2の触媒を用いて光触媒性能を評価した。
<実施例10>
実施例4の触媒を用いて光触媒性能を評価した。
<比較例5>
比較例3の触媒を用いて光触媒性能を評価した。
「結果」
表1に光照射後の生成物分析結果を示す。
Figure 0005532776
ここで、[HCOOH]の欄には液相中に生成したギ酸量をモル濃度、TNHCOOHまたはTNCOは、生成物であるギ酸または一酸化炭素のターンオーバー数(生成物モル数/錯体触媒のモル数)を示す。
比較例1、2に示すようにN−Ta半導体またはルテニウム錯体単独の場合では、ギ酸濃度は0.01mM以下と極めて低い。比較例1の場合はN−Taは光照射によってCOを還元し、ギ酸を生成する能力が低いか、またはほとんど生成しておらず不純物レベルと考えられる。また、比較例2の結果は、ルテニウム錯体が電気化学的にはCOをギ酸に還元する触媒として知られているものの、光照射によってギ酸を生成する能力がほとんどないことを示している。比較例3に示すように、両者を混合することにより、ギ酸が生成し、ギ酸濃度は0.33mM、ターンオーバー数TNHCOOHは12であり、その活性は低いものの、触媒活性を発現することが分かった。このことから、N−Taが光励起されて生じた電子が錯体触媒へ移動し、ルテニウム錯体触媒に特徴的なギ酸およびCOが生成したものと考えられる。半導体と錯体触媒は溶液中で混在しているものの、溶液中で攪拌されているために両者の接触がある程度起こり、光触媒反応が進行したと推定される。
一方、半導体と錯体触媒をカルボキシル基により連結した複合体の場合では、実施例1〜3に示すように、ギ酸が生成し、混合系(比較例3)の場合に比べてターンオーバー数が1.7〜10倍と高い値を示した。その他、比較例3の場合と同じく二酸化炭素の還元生成物の一種である一酸化炭素も生成した。半導体と錯体触媒を連結することにより、半導体から基材への電子移動距離が短くなり、電子が高効率に錯体触媒へ移動したために、混合系の場合に比べて大幅に触媒活性が向上したものと考えられる。
特に、実施例4、5に示すように、連結基をリン酸基に変更した場合、さらに触媒活性が向上し、ギ酸生成のターンオーバー数は最高で混合系(比較例3)の10倍、カルボキシル基を連結した場合の約5倍という値を示した。
比較例4に示すように、二酸化炭素の代わりにアルゴンを通気した場合は、ギ酸生成量は0.01mMと極めて低く、不純物レベルであった。このことは、通気された二酸化炭素がギ酸に還元されたということを示している。
本光触媒は、実施例8に示すように有機溶媒中だけでなく、水を添加した場合においても触媒活性を示すことが分かった。
図9に各触媒のCO還元の経時変化を示す。横軸には光照射時間、縦軸には生成したギ酸のターンオーバー数を示す。カルボキシル基、またはリン酸基で半導体・錯体を連結した複合体(実施例9、10)は光照射初期から高いギ酸生成能力を発現した。カルボキシル基で連結した複合体(実施例9)は光照射9時間後以降においてギ酸生成量が頭打ちになるものの、リン酸基で連結した複合体(実施例10)はそれ以降もギ酸が生成し、触媒寿命が長い。このことは、本条件下において連結基としてリン酸基を用いた場合はカルボキシル基の場合に比べて半導体と錯体間の結合がより強固、かつ安定であることを示す。一方、混合系(比較例5)は実施例9、10に比べて著しく活性が低い。
「実施形態の効果」
半導体10と基材12を連結しない場合は、半導体10から基材12への電子移動距離が長いため、励起電子eの内部失活が起こりやすくなり、基材12への電子移動効率が低い。そのため、光触媒活性を示すものの、その性能は低い。一方、基材12を半導体10へ連結(化学的結合)することにより、半導体10から基材12への電子移動距離が短くなるため、励起電子eの内部失活が抑制できる。したがって、基材12への電子移動効率が高くなり、触媒活性が大幅に向上する(図1参照)。
連結基としては、半導体が金属酸化物の場合は、カルボキシル基、リン酸基が好適であるが、特にリン酸基が好適であることがわかった。また、GaPやInPのような化合物半導体の場合は、ホスホリル基(P=O)を有している化合物が好適である。
また、基材の連結基を含む部分を半導体基板に結合させ、その後基材の残りの部分をすでに半導体に結合されている部分に結合させて基材を構成することが好適である。たとえば、半導体基板(N−Ta)に、金属錯体の一部(配位子)である、ジフォスフォネートビピリジン配位子を結合させ、その後Ru錯体の本体部分[Ru(bpy)(CO)(CFSO]を結合させることができる。
また、N−Ta基板ジフォスフォネートビピリジン配位子を結合させた後、[Ru(bpy)(CO)(CFSO]を結合させることなどができる。
なお、連結基は、その酸素がタンタルなどに結合すると考えられる。
10 半導体、12 基材。

Claims (10)

  1. 半導体と、
    この半導体の表面上に配置され連結基によって半導体と化学的に結合する金属錯体を含む基材と、
    を含み、
    少なくとも前記半導体に光を照射することによって前記半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈し、二酸化炭素を還元する光触媒体。
  2. 請求項に記載の光触媒体において、
    前記金属錯体が周期律表第VII族金属、第VIII族金属から選ばれる少なくとも一種の金属の錯体を含む光触媒体。
  3. 請求項またはに記載の光触媒体において、
    半導体と基材の化学的結合における連結基はカルボキシル基、リン酸基、ホスホリル基、スルホン酸基、シラノール基、およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一つを含む光触媒体。
  4. 請求項に記載の光触媒体において、
    前記連結基は、リン酸またはリン酸エステルまたはホスホリル基を含む含リン化合物である光触媒体。
  5. 請求項のいずれか1つに記載の光触媒体において、
    前記半導体表面と結合した基材における金属錯体の配位子との距離が半導体表面から10Å以下である光触媒体。
  6. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒体において、
    前記半導体に対する前記基材の表面被覆率は、1%以上90%以下である光触媒体。
  7. 請求項1〜のいずれか1に記載の光触媒体において、
    前記半導体は、ニッケル含有硫化亜鉛、銅含有硫化亜鉛、窒化タンタル、酸窒化タンタル、酸化タンタル、硫化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、炭化ケイ素、酸化鉄、銅の酸化物の少なくとも1つを含む光触媒体。
  8. 半導体の表面に金属錯体を含む基材を基材の連結基により化学的に結合させた光触媒体であって、前記半導体に光を照射することによって前記半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈し、二酸化炭素を還元する光触媒体の製造方法であって、
    半導体基板に、前記基材の連結基を化学的に結合させて、光触媒体を形成する光触媒体の製造方法。
  9. 半導体の表面に金属錯体を含む基材を基材の連結基により化学的に結合させた光触媒体であって、前記半導体に光を照射することによって前記半導体に生じた励起電子が前記基材に移動することによって、前記基材が還元触媒反応を呈し、二酸化炭素を還元する光触媒体の製造方法であって、
    前記基材の連結基を含む部分を半導体基板に結合させ、その後基材の残りの部分をすでに半導体に結合されている部分に結合させて基材を構成する光触媒体の製造方法。
  10. 請求項に記載の光触媒体の製造方法において、
    前記基材は、連結基を含む配位子と、金属錯体の本体部分から構成され、連結基を含む配位子を半導体基板に連結した後、金属錯体の本体部分を配位子に結合させる光触媒体の製造方法。
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