本発明の感光性ペーストはイソシアネート基を含む化合物(A)、不飽和二重結合を一つ以上含む感光性成分(B)、光重合開始剤(C)、を混合してなる感光性樹脂組成物中に酸化ルテニウム粉末(D)、ガラス粉末(E)を分散したものである。該ペーストは基板上に塗布し、必要に応じ乾燥させて溶媒を除去した後、露光、現像、焼成工程を経ることで基板上に所望の抵抗体パターンを得ることができる感光性ペーストである。
本発明の感光性ペーストに含まれるイソシアネート基を有する化合物(A)とは水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの活性水素を有する官能基と反応するイソシアネート基を一分子中に一つ以上含む化合物である。
イソシアネート基を有する化合物(A)としては、一分子中にイソシアネート基を二つ以上有するものが好ましい。一分子中にイソシアネート基を二つ以上有する化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートを好ましく用いることができる。
また、イソシアネート基を有する化合物(A)としては、不飽和二重結合とイソシアネート基の両方を有するものも好ましい。不飽和二重結合とイソシアネート基の両方を有する化合物としては、2−イソシアトエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−イソシアネートエチルオキシ)エチルメタクリレートまたは1,1−ビス(アクリロイルオキシエチル)エチルイソシアネートを好ましく用いることができる。
その他、イソシアネート基を有する化合物(A)の具体例としては1,3−ビス(2−イソシアナト−2−プロピル)ベンゼン、イソシアン酸エチル、イソシアン酸tert−ブチル、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
本発明の感光性ペーストに含まれるイソシアネート基を有する化合物(A)の分子量は300以下であることが好ましい。
本発明の感光性ペーストに含まれるイソシアネート基を有する化合物(A)の添加量としては酸化ルテニウム粉末(D)100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部の範囲で添加され、より好ましくは1〜20重量部である。イソシアネート基を有する化合物(A)の添加量を酸化ルテニウム粉末(D)100重量部に対し1重量部以上とすることで増粘を抑制でき、ポットライフを長くすることができる。また、イソシアネート基を有する化合物(A)の添加量を酸化ルテニウム粉末(D)100重量部に対し30重量部以下とすることにより、特に溶剤除去後の感光性ペースト組成物膜のタック性を小さくすることができ、抵抗体パターンの欠点発生を抑制できるなどパターニングに優位に働く。
本発明の感光性ペーストに含まれる不飽和二重結合を有する感光性成分(B)は分子内に不飽和二重結合を少なくとも一つ以上有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーのことをいい、1種または2種以上を併用して使用することができる。不飽和二重結合を有する感光性成分(B)は特に限定されないが、本発明のパターン加工の現像には有機溶媒ではなくアルカリ水溶液による現像が好ましいため、アルカリ可溶性のポリマーを含むこが好ましく、重量平均分子量が300〜10万の範囲内であることがさらに望ましい。
アルカリ可溶性のポリマーとしては、アクリル系共重合体があげられる。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマーをモノマー単位として含む共重合体であり、アクリル系モノマーの具体的な例としては、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、AH−600(商品名、共栄社化学(株)製)、AT−600(商品名、共栄社化学(株)製)、UA−306H(商品名、共栄社化学(株)製)、UA−306T(商品名、共栄社化学(株)製)などのアクリル系モノマーおよびこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。
アクリル系モノマー以外の共重合成分としては、炭素−炭素二重結合を有するすべての化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
アクリル系ポリマーにアルカリ可溶性を付与するためには、モノマーとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を用いることにより達成される。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニル、またはこれらの酸無水物等が挙げられる。これらを分子鎖に付与することにより、ポリマーの酸価を調整することができる。ポリマーの酸価は現像性の観点から80〜140の範囲であることが好ましい。
分子内に不飽和二重結合を二つ以上有するモノマーの具体的な例としてはアリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
また、上述の不飽和カルボン酸等の不飽和酸をモノマーとして用いて得られたアクリル系ポリマー中の不飽和酸の一部と、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和酸と反応する基と不飽和二重結合を有する基の両方を有する化合物を反応させることにより得られる、側鎖に反応性の不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性のポリマーも好ましく用いることができる。
また、本発明の感光性ペーストに含まれる不飽和二重結合を一つ以上含む感光性成分(B)としては分子鎖にエチレンオキシド鎖やプロピレンオキシド鎖を有するものが好ましい。分子鎖にエチレンオキシド鎖やプロピレンオキシド鎖を有する感光性成分は分解性がよく、焼成残分も少ないことから無機成分の焼結性が高まり、抵抗体パターンの強度が向上する。分子鎖にエチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖を有する感光性成分の具体例としてはポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートをアクリレートに代えたものなどが挙げられる。
本発明の感光性ペーストに含まれる不飽和二重結合を有する感光性成分(B)の添加量としては溶媒を除く感光性ペーストの固形分100重量部に対し、5〜40重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。固形分量に対し、5重量部以上にすることで露光による架橋反応を十分に進行させることができ、パターン形成に優位に働く。また、固形分量に対し、30重量部以下にすることで焼成時のパターン収縮を小さくすることができ、パターン形成に優位に働く。
本発明の感光性ペーストに含まれる光重合開始剤(C)とは、紫外線などの短波長の光を吸収し、分解してラジカルを生じる化合物のことをいう。具体例としては、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、エタノン、1−[9−エチル−6−2(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4′−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
本発明の感光性ペーストは光重合開始剤(C)と共に増感剤を添加して感度を向上させたり、反応に有効な波長範囲を拡大したりすることができる。
増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
本発明の感光性ペーストに含まれる光重合開始剤(C)の添加量としては不飽和二重結合を有する感光性成分(B)100重量部に対し、好ましくは0.05〜30重量部の範囲で添加され、より好ましくは、5〜20重量部である。不飽和二重結合を有する感光性成分(B)100重量部に対する光重合開始剤(C)の添加量を5重量部以上とすることにより、特に露光部の硬化密度が増加し、現像後の残膜率を高くすることができる。また、不飽和二重結合を有する感光性成分(B)100重量部に対する光重合開始剤(C)の添加量を20重量部以下とすることで、特に光重合開始剤(C)による塗布膜上部での過剰な光吸収を抑制し、導電パターンが逆テーパー形状となり基材との接着性が低下することを抑制することができる。
本発明の感光性ペーストに含まれる酸化ルテニウム粉末(D)は公知の方法で作製されたものを用いることができる。例えば、塩化ルテニウム酸水溶液をアンモニア水で中和して得られた水酸化ルテニウム粉末を洗浄、乾燥して得る方法、塩化ルテニウム水溶液に硝酸を加えて蒸発乾固させた後、熱分解し、さらに加熱して得る方法、4価以上のルテニウム酸塩を原料に水溶性有機還元剤を用いて、湿式法で酸化ルテニウムを得る方法などが挙げられる。
酸化ルテニウム粉末(D)の平均粒子径は0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.5〜1μmである。平均粒子径が0.01μm以上であると露光時の紫外線が膜中をスムーズに透過することができ、微細パターニングが容易となる。また平均粒子径が3μm以下であれば粒子同士の焼結性、印刷後の回路パターンの表面平滑度、パターン精度、寸法精度が向上する。なお、平均粒子径は、コールターカウンター法、光子相関法およびレーザー回折法等により体積平均粒子径を求めることができる。
本発明の酸化ルテニウム粉末(D)の添加量としては感光性ペースト中に占める無機成分100重量部に対し30〜70重量部であることが好ましく、より好ましくは40〜60重量部である。無機成分に対し、30重量部以上にすることで抵抗体パターンの比抵抗率のばらつきを抑えることができる。また、無機成分に対し、70重量部以下にすることで焼成時の焼結性を向上し、抵抗体パターンの強度があがる。ここでいう無機成分とは酸化ルテニウム粉末(D)とガラス粉末(E)をいう。
本発明の感光性ペーストに含まれるガラス粉末(E)としては、酸化鉛や酸化ビスマスを含まないガラス粉末であることが好ましい。酸化鉛や酸化ビスマスを含まないことで、環境への悪影響や感光性ペーストの経時変化を抑制することができる。より好ましいガラス粉末としては、酸化物換算表記で
SiO2 30〜70重量%
Al2O3 1〜40重量%
B2O3 5〜30重量%
MgO 1〜20重量%
の成分を有し、かつCaO、BaO、SrO、TiO2、ZrO2、Li2O、K2OおよびNa2Oの少なくとも1種の化合物を0.1〜10重量%の範囲内で含有するものが好ましい。
SiO2の好ましい配合量は30〜70重量%の範囲である。30重量%未満の場合、抵抗体パターンの緻密性、強度や安定性の低下が生じる。また、基板との熱膨張係数のミスマッチが起こり、抵抗体パターンにマイクロクラックが生じる。一方、配合量が70重量%を越えると軟化点が高くなり、基板への焼き付けが困難となる。
Al2O3の好ましい配合量は1〜20重量%の範囲である。この範囲内で配合することにより、抵抗体膜層の強度を向上できる。しかし、20重量%を越えて配合すると、軟化点が高くなり、基板への焼き付けが困難となる。
B2O3の好ましい配合量は5〜30重量%の範囲である。この範囲内で配合することにより、抵抗体パターンの強度、熱膨張係数、緻密性を向上することができるが、30重量%を越えて配合すると抵抗体パターンの安定性が低下する。
MgOの好ましい配合量は1〜20重量%の範囲である。この範囲内で配合することにより、ガラスを融けやすくなる。また、熱膨張係数を制御しやすくなる。配合量は1重量%未満では、ガラスが失透し、20重量%を越えるとガラスの化学的安定性が不良となる。
上記以外にも必要に応じてCaO、BaO、SrO、TiO2、ZrO2、Li2O、K2OおよびNa2Oの少なくとも1種の化合物を0.1〜10重量%の範囲内で配合することもできるが、配合量が10重量%を越えると抵抗体パターンの抵抗値の経時変化が大きくなる。
本発明の感光性ペーストに含まれるガラス粉末(E)は焼成温度により適当な軟化点のガラスを用いることができる。ガラス粉末(E)の軟化点は焼成温度に対し、−100〜−30℃であることが好ましく、焼成温度に対し、軟化点が低すぎると焼成時にパターンの変形が起こる。また、焼成温度に対し、軟化点が高すぎると焼成後のパターンの空隙率が大きくなり強度が低下する。ガラス粉末の軟化点は、径50mm、高さ50mmの円柱状の試験片をもって、JIS−R2209(2007)の方法によって求めることができる。本発明の感光性ペーストに含まれるガラス粉末(E)の軟化点の好ましい範囲は650〜800℃の範囲内である。
ガラス粉末(E)の添加量としては感光性ペースト中に占める無機成分100重量部に対し30〜70重量部であることが好ましい。無機成分に対し、30重量部以上にすることで焼成時の焼結性を向上し、抵抗体パターンの強度があがる。また、無機成分に対し、70重量部以下にすることで抵抗体パターンの比抵抗率のばらつきを抑えることができる。本発明の感光性ペーストは酸化ルテニウム粉末(D)とガラス粉末(E)以外の無機粉末を含まないことが好ましく、その場合無機成分の量としては酸化ルテニウム粉末(D)とガラス粉末(E)の量の合計を指す。
本発明の感光性ペーストに含まれる無機成分量は感光性ペースト中の固形分100重量部に対し30〜90重量部であることが好ましく、より好ましくは50〜80重量部である。
感光性ペースト中の固形分に対し、30重量部以上にすることで抵抗体パターンの緻密性があがり、強度が向上する。また、感光性ペースト中の固形分に対し、90重量部以下にすることで露光時の紫外線が膜中をスムーズに透過することができ、微細なパターニングが容易となる。また、固形分とは感光性ペーストから溶剤を除いたものである。
本発明の感光性ペーストは溶剤を含有してもよい。溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。溶剤は1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いたりすることができる。溶剤は感光性ペースト作製後、粘度調整を目的に後から添加してもかまわない。
本発明の感光性ペーストは、その所望の特性を損なわない範囲であれば分子内に不飽和二重結合を有しない非感光性ポリマー、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料等の添加剤を配合することもできる。
非感光性ポリマーの具体例としてはエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、既閉環ポリイミドなどが挙げられる。
可塑剤の具体例としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
レベリング剤の具体例としては特殊ビニル系重合物、特殊アクリル系重合物などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
本発明の感光性ペーストは分散機、混練機などを用いて作製される。これらの具体例としては三本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
次に本発明の感光性ペーストを用いた抵抗体パターンの製造方法について説明する。
本発明の抵抗体パターンの製造方法は、上述の感光性ペーストを基板上に塗布し、乾燥し、露光し、現像した後に焼成することを特徴とする抵抗体パターンの製造方法である。抵抗体パターンを作製するためには本発明の感光性ペーストを基板上に塗布し、必要に応じ加熱して溶剤を揮発させて乾燥する。その後パターン形成用マスクを介して露光し、現像工程を経ることで基板上に所望のパターンを形成する。そして焼成して抵抗体パターンを作製する。
本発明で用いる基板は、ガラス基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス基板が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の感光性ペーストを基板に塗布する方法としてはスピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーターなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が、0.1〜50μmの範囲内になるように塗布される。
次に基板上の感光性ペースト塗布膜から溶剤を除去する。溶剤を除去する方法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や真空乾燥などが挙げられる。加熱乾燥は50℃から180℃の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
溶剤除去後の感光性ペースト塗布膜上に、フォトリソグラフィー法によりパターン加工を行う。露光に用いられる光源としては水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。
露光後、現像液を用いて未露光部を除去することによって、所望のパターンが得られる。アルカリ現像を行う場合の現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらの水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは複数種添加したものを現像液として用いてもよい。また、これらのアルカリ水溶液に界面活性剤を添加したものを現像液として使用することもできる。有機現像を行う場合の現像液としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの極性溶媒を単独あるいは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどと組み合わせた混合溶液が使用できる。
現像は、基板を静置または回転させながら上記の現像液を塗布膜にスプレーする、基板を現像液中に浸漬する、あるいは浸漬しながら超音波をかけるなどの方法によって行うことができる。
現像後、水によるリンス処理を施してもよい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
最後に焼成炉にて焼成する。焼成雰囲気や温度は、感光性ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で処理する。焼成炉としてはバッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉等を用いることができる。焼成温度は700〜1000℃で行うことが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。各実施例および比較例で用いた評価方法および材料は以下の通りである。
<パターニング性の評価方法>
アルミナ基板上に感光性ペーストを乾燥厚みが12μmになるように塗布、乾燥し、一定のラインアンドスペース(L/S)で配列する直線群を1つのユニットとし、L/Sの値が異なる9種類のユニットを有する透光パターンを有するフォトマスクを介して露光、現像、800℃で焼成することによって抵抗体パターンを得た。各ユニットのL/Sの値は500/500、250/250、100/100、50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15とした(数値はそれぞれライン幅(μm)/間隔(μm)を表す)。光学顕微鏡を用いてパターンを観察し、パターン間に残渣がなく、かつパターン剥がれのない最小のL/Sの値を持つパターンを確認し、この最小のL/Sの値を現像可能なL/Sとした。
<体積抵抗率評価方法>
体積抵抗率測定器LORESTA−EP(商品名、三菱化学社製)を使用し、四探針法にて測定した。測定サンプルはペーストをアルミナ基板上にべた塗りし、乾燥、全面露光、焼成させたものを用いた。
<体積抵抗率のばらつき評価方法>
基板20枚の体積抵抗率ρvを測定し、測定値の最大値をρvmax、最小値をρvmin、算術平均値をρvaveとしたとき、(ρvmax−ρvmin)/ρvave×100を体積抵抗率のばらつき(%)とした。
<ポットライフ評価方法>
作製した感光性ペーストを一日室温に放置して測定した粘度をη1、一週間後に測定した粘度をη7としたとき、粘度変化率(%)((η7−η1)/η1×100の絶対値)が10未満のものを○、10以上20以下のものを△とし、20を超えるものを×とした。粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社製、粘度計DVIII、スピンドルNo.14)を用い、25℃において所定の回転数(10rpm)で測定して求めた。
実施例、比較例で用いた材料は以下の通りである。
・イソシアネート基を有する化合物(A)
6−ヘキサメチレンジイソシアネート
2,4′−ジフェニルエタンジイソシアネート
2−イソシアトエチルメタクリレート
・不和飽和二重結合を有する感光性成分(B)
感光性アクリルポリマー APX−716(商品名、東レ社製)
プロピレングリコールジメタクリレート
・光重合開始剤(C)
N−1919((商品名、株式会社ADEKA社製)
・溶剤
3−メトキシ−3−メチルブタノール
・酸化ルテニウム粉末(D)
D−1 体積平均粒子径が2μmのもの
D−2 体積平均粒子径が1μmのもの
・ガラス粉末
E−1 酸化物換算でSiO2:45、Al2O3:35、B2O3:5、CaO:3、MgO:5、BaO:4、K2O:1、ZrO2:2、体積平均粒子径1.2μm、ガラス転移温度(℃)が750度のものを用いた。
実施例1 クリーンボトルにアルカリ可溶性のアクリルポリマーAPX716(東レ株式会社製)を80g、光重合開始剤N−1919(株式会社ADEKA社製)を20g、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを15.9g、プロピレングリコールジメタクリレートを20g、3−メトキシ−3−メチルブタノールを100gいれ、“あわとり練太郎”(商品名ARE−310、株式会社シンキー社製)で混合し、感光性樹脂溶液235.9g(固形分57.6重量%)を得た。得られた感光性樹脂溶液235.9gと平均粒子径2μmの酸化ルテニウム粉末を158.5g、軟化点が750℃のガラス粉末を158.5g混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M−50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、552.9g(無機成分量70重量%)の感光性ペーストを得た。得られた感光性ペーストの初期粘度は41200cPで、一週間後の粘度は41100cPであり、ポットライフ評価において○であった。
作製した感光性ペーストをスクリーン印刷でガラス基板上に塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分でプリベークを行った。その後、露光装置“PEM−6M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量150mJ/cm2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na2CO3溶液で1分間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、焼成炉において800℃で10分間光洋サーモテック社製ローラーハース焼成炉を用いて焼成を行い、抵抗体パターンを得た。得られた抵抗体パターンの体積抵抗率は989Ω・cm、抵抗値のばらつきは2%、パターニング性評価結果においてL/S=20μmであった。本発明によりポットライフが長く、抵抗値ばらつきの小さい感光性ペーストを作製することができた。
実施例2〜6 表1に示す配合の感光性ペーストを実施例1と同様の方法で製造し、評価結果を表2に示した。
比較例1 表1に示す感光性ペーストを実施例1と同様の方法で製造し、評価結果を表2に示した。