JP5530358B2 - 糖タンパク質の製造方法及びスクリーニング方法 - Google Patents

糖タンパク質の製造方法及びスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、アミノ酸配列、糖鎖構造及び高次構造が均一な糖タンパク質を製造する方法等に関する。
近年、糖タンパク質を様々な医薬として用いる研究が進められている。糖タンパク質の糖鎖部分は、プロテアーゼへの耐性を付加して血中からの代謝を遅延させる機能や、細胞内での小器官への輸送をつかさどるシグナルとしての機能等を有する。従って、適切な糖鎖を付加することによって、糖タンパク質の血中半減期や細胞内での輸送を制御することが可能である。
糖鎖が糖タンパク質の生理活性に影響する代表的な例として、エリスロポエチン(EPO)が挙げられる。この糖タンパク質は、赤血球系前駆細胞に作用し、その増殖・分化を促進することにより、末梢血中の赤血球数を維持する機能を持った血球分化ホルモンである。EPOの糖鎖構造と生理活性の相関について研究された結果、in vitroでは糖鎖が結合していなくても生理活性を有するが、in vivoでは糖鎖がないとすぐに腎臓から排出されてしまい、十分な生理活性が得られないことが判明した。
また、糖タンパク質は糖鎖が不完全な場合や、異なる糖鎖が結合している場合も、血液中のマクロファージ等に認識され、血中から排出されることがある。
従って、糖タンパク質を医薬品として用いる場合には、各タンパク質の同じ位置に均一な構造の糖鎖が付加されていることが望ましい。
従来、糖タンパク質の製造方法としては、タンパク質に糖を酵素付加する方法が広く用いられているが、この方法では、均一な糖鎖を付加することができず、また、糖鎖を付加した後に修飾やトリミングを均一に施すことも困難である。
また、一般に、タンパク質製剤は力価で評価されるが、同一の力価を有する製剤でも、糖鎖構造にばらつきがあるものが含まれる場合があり、血中半減期にばらつきが生じたり、品質管理の点で問題となりうる。
本発明者らは、これまでに、脂溶性保護基でアミノ基を保護したアミノ酸と糖鎖アスパラギンを材料とし、均一なアミノ酸配列と糖鎖を有する糖タンパク質を比較的大量に製造できる方法を開発した(例えば特許文献1参照)。さらに、十分な血中濃度を維持できるアミノ化複合型糖鎖誘導体および糖タンパク質を開発した(特許文献2参照)。いずれの糖タンパク質も、医薬品としての有用性が期待される。
ところで、医薬品として使用するためには、生理活性にばらつきのない糖タンパク質を製造することが必要であるが、糖タンパク質の機能には、アミノ酸配列と糖鎖構造のみでなく、タンパク質部分の高次構造も密接に関連すると考えられる。
タンパク質の高次構造は、アミノ酸残基間の水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、システイン残基間のS−S結合などによって安定化され、多くのタンパク質は、それぞれ固有の高次構造を有する。しかしながら、S−S結合以外の結合は、比較的弱い結合であり、比較的温和な加熱や加圧等によって高次構造が壊れ、その生理活性が低下・消失する。これをタンパク質の変性と呼ぶ。また、特にアミノ酸鎖が長い場合、エネルギーの極小点を与える構造が複数生じるため、異常な高次構造(ミスフォールディング)を生じることがある。この場合も、タンパク質の活性が変化または消失することが報告されている。
これらの事実から、一般に、タンパク質が機能を発揮するためには正しい高次構造が必須であり、タンパク質をフォールディングさせると、生理活性を有する正しいフォールディングと、生理活性を有しないミスフォールディングに分かれると考えられている。
タンパク質の高次構造と生理活性の関係については種々の研究がなされているが、人工的に合成した糖タンパク質において、糖鎖がフォールディングや生理活性にどのような影響を与え得るかについては、これまでに報告がない。
本発明者らは、特許文献1に係る方法で糖タンパク質断片を合成し、天然型化学的ライゲーション法(Native Chemical Ligation、NCL法)で他のペプチド断片と連結することによって、単球走化性タンパク質−3を合成した。合成された単球走化性タンパク質−3をフォールディングさせた後、キモトリプシン処理でジスルフィド結合の位置を確認したところ、約90%の糖タンパク質はジスルフィド結合が正しい位置に形成されているが、約10%は通常と異なる位置にジスルフィド結合が形成されていることが判明した(非特許文献1)。
しかしながら、同文献では、異なる2種類以上の糖タンパク質をフォールディングした状態では分離していない。キモトリプシン処理時に、ジスルフィド結合が再形成される可能性があることも考慮すると、2種類以上のフォールディングが生じていたのではなく、キモトリプシン処理の結果が2種類以上に分かれただけである可能性も否定できない。従って、当然のことながら、ジスルフィド結合が正しい位置に形成された糖タンパク質と、通常と異なる位置に形成された糖タンパク質との生理活性の違いについても検討されていない。
また、比較的よく機能や構造が研究されている糖タンパク質に、卵白に含まれるタンパク質の一種であるオボムコイドタンパク質がある。オボムコイドは分子量約28,000のタンパク質であり、分子内に3つのドメインを有し、各ドメインがそれぞれ異なったプロテアーゼに対して阻害活性を有する。特に第3ドメインは、単独でも阻害活性を示すことから詳細に研究されている。これまでに、100種以上の鳥由来の第3ドメインについて構造が報告され、X線結晶解析によっても立体構造が明らかにされている。
化学的に合成されたオボムコイド第3ドメインの立体構造については、例えば、NCL法によって、ペプチド骨格を改変したオボムコイド第3ドメインを合成し、X線結晶解析を行ったことが報告されている(非特許文献2を参照)。
また、オボムコイド第3ドメインを逐次伸長(stepwise synthesis)法とNCL法によって合成し、フォールディングさせたところ、熱安定性の解析により、正しく折りたたまれたことが強く示唆される結果が得られたとの報告もある(非特許文献3を参照)。
国際公開第2004/005330号パンフレット 国際公開第2004/011036号パンフレット
Yamamoto et al.,Journal of American Chemical Society,2008,130,501−510 Bateman et al.,Journal of Molecular Biology(2001)305,839−849 Lu et al.,Journal of American Chemical Society,1996,118,8518−8523
しかしながら、上述の先行技術では、合成されたタンパク質に糖鎖が付加されておらず、糖タンパク質において、糖鎖がフォールディングや生理活性にどのように影響するかについては不明であった。
そこで、本発明は、血中半減期等の糖鎖に基づく機能に加えて、生理活性も均一である糖タンパク質、即ち、アミノ酸配列、糖鎖構造、及び高次構造が均一な糖タンパク質を製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、生理活性の強さが異なる複数種類の糖タンパク質から所定の活性を有する糖タンパク質を選択するスクリーニング方法を提供すること、所望の活性を有する糖タンパク質混合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、アミノ酸配列と糖鎖構造が均一なオボムコイドタンパク質の第3ドメインを合成してフォールディングさせると、複数種類の高次構造を一定の比率で含む混合物が再現性よく得られることを見出した。そしてこれらを分離して生理活性を測定したところ、従来の理解とは異なり、同一種類の生理活性を比較的高活性と認められるレベルで有する高次構造が複数種類存在すること;比較的高活性であるとはいえ高次構造によって活性に差があること;高次構造の異なる糖タンパク質は、カラムクロマトグラフィーによってそれぞれ分離・精製できること、を確認した。
また、所定の活性を有する糖タンパク質以外のものは、アンフォールディングさせた後、再度フォールディングさせると、上記一定の比率で得られる高次構造に変換できること、従って、アンフォールディング/リフォールディング工程を繰り返すことにより、所定の活性を持つ高次構造を有する糖タンパク質を最大限に回収できることを見出した。
即ち、本発明は、
アミノ酸配列、糖鎖構造、及び高次構造が均一な糖タンパク質を製造する方法であって、以下の工程(a)〜(c):
(a)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせる工程;
(b)前記フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって、分画する工程;及び
(c)所定の活性を有する画分を回収する工程
を含む、方法を提供する。
上記方法においては、
前記工程(c)の後に、
(d)前記工程(c)で回収されなかった画分に含まれる糖タンパク質をアンフォールディングさせる工程;
(e)前記アンフォールディングさせた糖タンパク質を再度フォールディングさせる工程;
(f)前記再度フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画し、前記所定の活性を有する画分を回収する工程;及び
(g)必要に応じて(d)から(f)を繰り返す工程
をさらに含むことが好ましい。
本発明はまた、
所定の生理活性を有する糖タンパク質をスクリーニングする方法であって、以下の工程(i)〜(iii):
(i)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせる工程;
(ii)前記フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画する工程;及び
(iii)各画分の活性を測定し、所定の活性を有するか否か判定する工程
を含む方法を提供する。
本発明はまた、
所望の生理活性を有する糖タンパク質混合物を得る方法であって、以下の工程(A)〜(D):
(A)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせる工程;
(B)前記フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画する工程;
(C)各画分の活性を測定する工程;及び
(D)所望の活性を得るための各画分の混合比率を求め、当該比率に従って各画分を混合する工程
を含む方法を提供する。
本発明に係る糖タンパク質の製造方法、糖タンパク質のスクリーニング方法、または所望の生理活性を有する糖タンパク質混合物を得る方法においては、
アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、少なくともその一部が以下の工程(1)〜(6):
(1)水酸基を有する樹脂(レジン)の水酸基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをエステル化反応させる工程;
(2)前記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;
(3)前記遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをアミド化反応させる工程;
(4)前記工程(3)の後、脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;及び
(5)前記工程(3)及び(4)の工程を1回以上繰り返す工程;および
(6)前記工程(1)で形成されたエステル結合を酸で切断する工程
を含む方法によって製造されることが好ましい。
また、上記アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質の製造方法においては、
前記工程(1)〜(6)によって前記アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質の一部が製造される場合であって、当該糖タンパク質が、さらに、以下の工程(7):
(7)前記工程(6)で得られた糖タンパク質の一部と、他のペプチド又は糖ペプチドとを、ライゲーション法によって連結する工程
を含むことが好ましい。
本発明に係る糖タンパク質の製造方法によれば、アミノ酸配列、糖鎖構造に加えて、高次構造も均一な糖タンパク質を得られるので、血中半減期や細胞内での輸送にばらつきがないだけでなく、所定の生理活性を均一に有する糖タンパク質を製造することができる。
また、本発明に係る糖タンパク質のスクリーニング方法によれば、高次構造が異なるために生理活性にばらつきが生じている糖タンパク質群から、所定の生理活性を均一に有する糖タンパク質を選択することができる。当該糖タンパク質は、糖鎖構造が均一であることから、血中半減期や、細胞内での輸送といった糖鎖に基づく機能も均一である。
また、本発明によれば、糖タンパク質の混合物が所望の活性を有するように制御することが可能となる。
本発明によるこれらの効果は、特に糖タンパク質を医薬品として用いる場合に有利である。
silver pheasantのオボムコイド第3ドメイン(OMSVP3)と、その化学合成に用いるフラグメント1〜3のアミノ酸配列を示す。 OMSVP3の化学合成に用いるフラグメント1(チオエステル体)を示す。 糖鎖を有するOMSVP3の化学合成に用いるフラグメント2(チオエステル体)を示す。 OMSVP3の化学合成に用いるフラグメント3を示す。 フラグメント1合成時の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 フラグメント2合成時の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 フラグメント3合成時の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 フラグメント2及びフラグメント3のNCL法による連結の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 フラグメント2及び3と、フラグメント1とのNCL法による連結の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 糖鎖を有するOMSVP3をフォールディングさせた後、HPLCで分離したときの波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 図10の画分BのNMRスペクトルを示す。 図10の画分BのCDスペクトルを示す。 図10の各画分のキモトリプシンに対する阻害活性の測定結果を示す。 糖鎖を有しないOMSVP3の化学合成に用いるフラグメント2’(チオエステル体)を示す。 フラグメント2’合成時の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 フラグメント2’及びフラグメント3のNCL法による連結の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 フラグメント2’及び3と、フラグメント1とのNCL法による連結の各段階における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 糖鎖を有しないOMSVP3をフォールディングさせた後、HPLCで分離したときの波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 図18の画分FのNMRスペクトルを示す。 図18の画分FのCDスペクトルを示す。 図18の各画分のキモトリプシンに対する阻害活性の測定結果を示す。 画分Fの検量線を示す。 画分A−Dのキモトリプシンに対する阻害率を示す。 画分A−DのIC50値を示す。 画分E−Hのキモトリプシンに対する阻害率を示す。 画分E−HのIC50値を示す。 画分Bの温度変化によるCDスペクトルを示す。 画分Fの温度変化によるCDスペクトルを示す。 画分Bに対するThermolysin消化における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 画分Bに対するThermolysin消化後のペプチド断片の質量分析結果を示す。 画分Fに対するThermolysin消化における波長220nmにおけるクロマトグラムを示す。 画分Fに対するThermolysin消化後のペプチド断片の質量分析結果を示す。 画分Bに対するThermolysin消化によるジスルフィド結合の位置決定の結果を示す。 画分Fに対するThermolysin消化によるジスルフィド結合の位置決定の結果を示す。 基質ペプチドの検量線を示す。 基質ペプチドのMichaelis−Menten plotを示す。 基質ペプチドの単位時間当たりの反応速度を示す。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本明細書において、「タンパク質」とは、複数のアミノ酸がアミド結合により結合しているものであれば特に限定されず、公知タンパク質及び新規タンパク質並びにタンパク質改変体を含む。好ましい態様において、本発明の製造方法で得られる糖タンパク質におけるタンパク質部分は、天然型と同じアミド結合(ペプチド結合)で複数のアミノ酸が結合している。本明細書におけるタンパク質は、フォールディングさせることによって所定の高次構造を取り得る長さを有するものである。
本明細書において、「タンパク質改変体」とは、タンパク質を天然又は人工的に改変した化合物であり、そのような改変としては、例えば、タンパク質の1又は複数のアミノ酸残基の、アルキル化、アシル化(例えばアセチル化)、アミド化(例えば、タンパク質のC末端のアミド化)、カルボキシル化、エステル形成、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、水酸化、標識成分の結合等が挙げられる。
なお、本明細書において、用語「ペプチド」は、原則としてタンパク質と同義で用いられるが、タンパク質の一部や、高次構造をとらない比較的短いアミノ酸鎖を指すために用いられる場合もある。
本明細書において、「アミノ酸」とは、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸、例えばセリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、バリン(Val)、ロイシン(Ler)、イソロイシン(Ile)、アラニン(Ala)、チロシン(Tyr)、グリシン(Gly)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、プロリン(Pro)のみならず、アミノ酸変異体及び誘導体といったような非天然アミノ酸を含む。当業者であれば、この広い定義を考慮して、本明細書におけるアミノ酸として、例えばL−アミノ酸;D−アミノ酸;アミノ酸変異体及び誘導体等の化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β−アラニン、オルニチン等生体内でタンパク質の構成材料とならないアミノ酸;及び当業者に公知のアミノ酸の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられることを理解するであろう。非天然アミノ酸の例としては、α−メチルアミノ酸(α−メチルアラニン等)、D−アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(2−アミノ−ヒスチジン、β−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、α−フルオロメチル−ヒスチジン及びα−メチル−ヒスチジン等)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸等)があげられる。
好ましい態様において、本発明の製造方法で得られる糖タンパク質のタンパク質部分は、全て生体内にタンパク質又は糖タンパク質の構成アミノ酸として存在するアミノ酸からなる。
本明細書において、「糖タンパク質」とは、前記のタンパク質に少なくとも1つの糖鎖が付加された化合物であれば特に限定されず、公知の糖タンパク質及び新規の糖タンパク質を含む。なお、本明細書において、用語「糖ペプチド」は、原則として糖タンパク質と同義で用いられるが、糖タンパク質の一部や、上記ペプチドに糖鎖が結合したものを指す場合もある。
好ましい態様において、本発明の製造方法で得られる糖タンパク質は、N結合型糖鎖又はO結合型糖鎖を有するタンパク質であり、例えば、エリスロポエチン、インターロイキン、インターフェロン−β、抗体、単球走化性因子タンパク質−3(monocyte chemotactic protein−3、MCP−3)、オボムコイドタンパク質等のペプチドの一部分又は全部が挙げられる。
糖タンパク質において、糖鎖とタンパク質中のアミノ酸残基とは、直接結合していても、リンカーを介して結合していてもよい。糖鎖とアミノ酸との結合部位に特に制限はないが、糖鎖の還元末端にアミノ酸が結合していることが好ましい。
糖鎖が結合するアミノ酸の種類は特に限定されず、天然アミノ酸、非天然アミノ酸のいずれに結合していてもよい。糖タンパク質が生体内に存在する糖タンパク質と同一又は類似の構造を有するという観点からは、糖鎖は、N結合型糖鎖のようにAsnに結合していること、又はO結合型糖鎖のようにSer若しくはThrに結合していることが好ましい。特に、N結合型糖鎖の場合、本発明の製造方法により得られる糖タンパク質は、Asnに糖鎖が結合し、該AsnのC末端側にプロリン以外のアミノ酸(X)がアミド結合(ペプチド結合)し、さらに該XのC末端側にThr又はSerがアミド結合(ペプチド結合)した構造(−糖Asn−X−Thr/Ser−)を有する糖タンパク質であることが好ましい。 糖鎖とアミノ酸とがリンカーを介して結合している場合、リンカーとの結合容易性という観点からは、糖鎖が結合するアミノ酸は:アスパラギン酸やグルタミン酸等の分子内に2以上のカルボキシル基を持つアミノ酸;リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン等の分子内に2以上のアミノ基を持つアミノ酸;セリン、トレオニン、チロシン等の分子内に水酸基を持つアミノ酸;システイン等の分子内にチオール基を持つアミノ酸;又はアスパラギン、グルタミン等の分子内にアミド基を持つアミノ酸が好ましい。特に、反応性の観点からは、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン又はグルタミンが好ましい。
糖タンパク質において、糖鎖とアミノ酸とがリンカーを介して結合している場合、リンカーとしては、当該分野において用いられているものを広く使用することができるが、例えば:
−NH−(CO)−(CH−CH
(式中、aは整数であり、目的とするリンカー機能を阻害しない限り限定されるものではないが、好ましくは0〜4の整数を示す。);
1−10ポリメチレン;
−CH−R
(ここで、Rは、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、炭素環基、置換された炭素環基、複素環基及び置換された複素環基からなる群より選択される基から水素原子が1つ脱離して生ずる基である);
等を挙げることができる。
本明細書中において、「糖鎖」とは、単位糖(単糖及び/又はその誘導体)が2つ以上連なってできた化合物の他、1つの単位糖(単糖及び/又はその誘導体)からなる化合物をも含む。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される単糖類及び多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸並びにそれらの複合体及び誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解又は誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。単位糖が2つ以上連なる場合、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。糖鎖は直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。
また、本明細書中において、「糖鎖」には糖鎖の誘導体も含まれ、糖鎖の誘導体としては、例えば、糖鎖を構成する糖が、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グルクロン酸))、アミノ基又はアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンなど)、アミノ基及びカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などである糖鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の糖鎖は、好ましくは、生体内で複合糖質(糖タンパク質(又は糖ペプチド)、プロテオグリカン、糖脂質等)として存在する糖鎖であり、好ましくは、生体内で糖タンパク質(又は糖ペプチド)としてタンパク質(又はペプチド)に結合している糖鎖であるN−結合型糖鎖、O−結合型糖鎖等である。O−結合型糖鎖が結合している糖タンパク質においては、ペプチドのSer又はThrにN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、キシロース、フコース等がO−グリコシド結合で結合し、これにさらに糖鎖が付加する。N結合型糖鎖としては、例えば、高マンノース(ハイマンノース)型、複合(コンプレックス)型、混成(ハイブリッド)型を挙げることができ、複合型が好ましい。
本発明において、好ましい糖鎖としては、例えば、下記式(4)で表される糖鎖である。
[式中、RおよびRは、各々独立して、水素原子、又は、式(5)〜(8)で示される基である。]
本発明の糖タンパク質の製造方法を、医薬品等の製造の分野に適用することを考慮した場合に抗原性等の問題を回避し得るという観点からは、好ましい糖鎖としては、例えば、ヒト体内において、タンパク質と結合した糖タンパク質として存在する糖鎖(例えば、FEBS LETTERS Vol.50,No.3,Feb.1975に記載の糖鎖)と、同一の構造を有する糖鎖(構成糖の種類及びそれらの結合様式が同一の糖鎖)又はこれの非還元末端から1又は複数の糖を失った糖鎖を挙げることができる。
糖タンパク質における、糖鎖の付加数は、1鎖以上であれば特に限定されないが、生体内に存在する糖タンパク質と類似した構造の糖タンパク質を提供するという観点からは、体内に存在する糖タンパク質と同程度の付加数であれば、より好ましいであろう。
本発明に係る糖タンパク質の製造方法では、アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質が用いられる。本発明において、糖タンパク質における糖鎖の構造が均一であるとは、糖タンパク質間で比較した場合に、ペプチド中の糖鎖付加部位、糖鎖を構成する各糖の種類、結合順序、及び糖間の結合様式が、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の糖鎖において同一であることをいう。
また、本発明において、糖タンパク質におけるアミノ酸配列が均一であるとは、糖タンパク質間で比較した場合に、タンパク質中のアミノ酸の種類、結合順序、及びアミノ酸間の結合様式が同一であることをいう。ただし、糖タンパク質をフォールディングさせたときに所定の活性を有する限り、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の糖タンパク質において同一であればよい。
本発明に用いられる、アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、固相合成、液相合成、細胞による合成、天然に存在するものを分離抽出する方法等、当業者に公知のペプチド製造方法に、糖鎖付加工程を組み込むことで製造することができる。糖鎖付加工程で用いる糖鎖の製造方法に関しては、例えば、国際公開番号WO03/008431、WO2004/058984、WO2004/008431、WO2004/058824、WO2004/070046、WO2007/011055等を参照することができる。
本発明の好ましい態様においては、アミノ酸及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、少なくともその一部が、以下に示す方法によって製造される。以下に示す方法においては、WO2004/005330パンフレットも参照することができる。
まず、(1)水酸基を有する樹脂(レジン)の水酸基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをエステル化反応させる。この場合アミノ酸のアミノ基を脂溶性保護基で保護しているので、アミノ酸同士の自己縮合は防止され、レジンの水酸基とアミノ酸のカルボキシル基との間でエステル化反応が起こる。
次に、(2)工程(1)で得られたエステルの脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させ、
(3)上記遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをアミド化反応させ、
(4)工程(3)の後、脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させ
(5)工程(3)及び(4)の工程を必要に応じて繰り返すことにより、所望の数のアミノ酸が連結し、所望の位置に1つ以上の糖鎖が付加した糖タンパク質を得ることができる。なお、糖鎖付加したアミノ酸としては、例えば、アスパラギン側鎖のアミド基の窒素に糖鎖がN−グリコシド結合した糖鎖アスパラギン、セリン又はトレオニン側鎖の水酸基に糖鎖がO−グリコシド結合した糖鎖セリン又は糖鎖トレオニンが挙げられる。
工程(5)で得られる糖タンパク質は、一端がレジンに結合し、もう一端に遊離アミノ基を有する。そこで、(6)工程(1)で形成されたエステル結合を酸で切断することにより、所望の糖タンパク質を製造することができる。
固相樹脂(レジン)としては、通常、固相合成で使用する樹脂(レジン)であればよく、例えば、Amino−PEGAレジン(メルク社製)、Wangレジン(メルク社製)、HMPA−PEGAレジン(メルク社製)、Trt Chlorideレジン(メルク社製)等を用いることができる。
また、Amino−PEGAレジン(樹脂)とアミノ酸との間にリンカーを存在させてもよく、このようなリンカーとして、例えば、4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸(HMPA)、4−(4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ)−ブチル酢酸(HMPB)等を挙げることができる。
脂溶性保護基としては、例えば、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基等のカルボニル含有基、アセチル(Ac)基等のアシル基、アリル基、ベンジル基等の保護基を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
脂溶性保護基を導入するには、例えばFmoc基を導入する場合には9−フルオレニルメチル−N−スクシニミジルカーボネートと炭酸水素ナトリウムを加えて反応を行うことにより導入できる。反応は0〜50℃、好ましくは室温で、約1〜5時間程度行うのが良い。
脂溶性保護基で保護したアミノ酸としては、既出のアミノ酸を上記の方法で保護したものを用いることができる。また、市販のものも使用することができる。例えば、Fmoc−Ser、Fmoc−Asn、Fmoc−Val、Fmoc−Leu、Fmoc−Ile、Fmoc−Ala、Fmoc−Tyr、Fmoc−Gly、Fmoc−Lys、Fmoc−Arg、Fmoc−His、Fmoc−Asp、Fmoc−Glu、Fmoc−Gln、Fmoc−Thr、Fmoc−Cys、Fmoc−Met、Fmoc−Phe、Fmoc−Trp、Fmoc−Proを挙げることができる。
エステル化触媒として、例えば1−メシチレンスルホニル−3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール(MSNT)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)等の公知の脱水縮合剤を用いることができる。アミノ酸と脱水縮合剤との使用割合は、前者1重量部に対して、後者が、通常1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部である。
エステル化反応は、例えば、固相カラムにレジンを入れ、このレジンを溶剤で洗浄し、その後アミノ酸の溶液を加えることにより行うのが好ましい。洗浄用溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、2−プロパノール、塩化メチレン等を挙げることができる。アミノ酸を溶解する溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、DMF、塩化メチレン等を挙げることができる。エステル化反応は0〜50℃、好ましくは室温で、約10分〜30時間程度、好ましくは15分〜24時間程度行うのが良い。
この時固相上の未反応の官能基を、無水酢酸等を用いてアセチル化してキャッピングすることも好ましい。
脂溶性保護基の脱離は、例えば塩基で処理することにより行うことができる。塩基としては、例えばピペリジン、モルホリン等を挙げることができる。その際、溶媒の存在下行うのが好ましい。溶媒としては、例えばDMSO、DMF、メタノール等を挙げることができる。
遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸のカルボキシル基とのアミド化反応は、活性化剤及び溶媒の存在下行うのが好ましい。
活性化剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(WSC/HCl)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジエチルシアノホスホネート(DEPC)、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、3−ジエトキシホスホリルオキシ−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン(DEPBT)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−5−アザベンゾ−1,2,3−トリアジン(HODhbt)、ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、ペンタフルオロフェノール(Pfp−OH)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスホネート(HATU)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)等を挙げることができる。
活性化剤の使用量は、脂溶性の保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸に対して、1〜20当量、好ましくは1〜10当量、さらに好ましくは、1〜5当量とするのが好ましい。
上記活性化剤のみでも反応は進行するが、補助剤としてアミンを併用することが好ましい。アミンとしては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N−エチルモルホリン(NEM)、N−メチルモルホリン(NMM)、N−メチルイミダゾール(NMI)等を用いることができる。補助剤の使用量は、脂溶性の保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸に対して、1〜20当量、好ましくは1〜10当量、さらに好ましくは、1〜5当量とするのが好ましい。
溶媒としては、例えばDMSO、DMF、塩化メチレン等を挙げることができる。反応は0〜50℃、好ましくは室温で、約10分〜30時間程度、好ましくは15分〜24時間程度行うのが良い。この際にも固相上の未反応のアミノ基を無水酢酸等を用いてアセチル化しキャッピングするのが好ましい。脂溶性保護基の脱離は、上記と同様に行うことができる。
レジン(樹脂)からペプチド鎖を切断するには酸で処理するのが好ましい。酸としては、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)、弗化水素(HF)等を挙げることができる。その際、アミノ酸に使用していた脂溶性保護基およびレジン(樹脂)上のリンカーから、反応性の高いカチオン種が生成する場合があるため、このものを捕獲するため求核性試薬を添加することが好ましい。求核性試薬としてはトリイソプロピルシラン(TIS)、フェノール、チオアニソール、エタンジチオール(EDT)等を挙げることができる。
アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、いくつかのペプチドブロック又は糖ペプチドブロックに分け、それぞれを工程(1)〜(6)によって合成した後、ライゲーション法によって連結して製造することもできる。
本明細書において「ライゲーション法」とは、国際公開第96/34878号パンフレットに記載された天然型化学的ライゲーション法(Native Chemical Ligation、NCL法)をはじめとし、非天然アミノ酸やアミノ酸誘導体を含むペプチドについて、天然型化学的ライゲーション法を応用する場合も含む。ライゲーション法によれば、連結部位に天然アミド結合(ペプチド結合)を有するタンパク質を製造することができる。
ライゲーションを用いた連結は、ペプチド−ペプチド間、ペプチド−糖ペプチド間、糖ペプチド−糖ペプチド間のいずれにおいても行うことができるが、連結される2つのペプチド又は糖ペプチドの一方がN末端にシステイン残基を有し、他方がC末端にαカルボキシチオエステル部分を有していることが必要である。
各ペプチド又は糖ペプチドブロックが、N末端にシステイン残基を有するようにするためには、例えば、各ペプチド又は糖ペプチドブロックを設計する際に、最終的に製造する糖タンパク質に含まれるシステイン残基のN末端側で分割すればよい。
C末端にαカルボキシチオエステル部分を有するようにしたペプチド又は糖ペプチドブロックは、国際公開番号WO96/34878の記載された方法等、当業者に公知の手法を用いて製造することができる。
例えば、後述の実施例に記載のように、固相合成法によって、アミノ酸側鎖とN末端のアミノ基が保護された保護ペプチド(又は糖ペプチド)を得て、このC末端側のカルボキシル基を、液相中において縮合剤にPyBOP(Benzotriazole−1−yl−oxy−tris−pyrrolidino−phosphonium hexafluorophosphate)/DIPEAを用いてベンジルメルカプタンと縮合させ、その後、95%TFA溶液を用いて脱保護することで、C末端にα−カルボキシチオエステル部分を有するようにしたペプチド(又は糖ペプチド)を得ることができる。
ライゲーション法は、特許文献1に記載のような当業者に公知の手法を用いて、また、後述の実施例の記載を参照して実施することができる。例えば、C末端に−C(=O)−SRにより表されるα−カルボキシチオエステル部分を有するようにした第1のペプチドと、N末端に−SH基を有するアミノ酸残基を有する第2のペプチドとを上述の記載を参照して用意する。なお、第1のペプチドにおいて、Rはチオール交換反応を阻害せず、カルボニル炭素への求核置換反応において脱離基となる基であれば特に限定されないが、好ましくはベンジルメルカプタン等のベンジル型、チオフェノール、4−(カルボキシメチル)−チオフェノール等のアリール型、2−メルカプトエタンスルホン酸塩、3−メルカプトプロピオン酸アミド等のアルキル型等から選択することができる。また、第2のペプチドのN末端の−SH基は、所望により保護基により保護されていてもよいが、この保護基は以下のライゲーション反応までの所望の時点で脱保護し、N末端に−SH基を有する第2のペプチドが、第1のペプチドと反応する。例えばジスルフィド基等、ライゲーションが起こる条件において自然に脱保護される保護基であれば、保護基により保護した第2のペプチドをそのまま以下のライゲーション反応に用いることもできる。
これらの2つのペプチドを、必要に応じ、4−メルカプトフェニル酢酸、ベンジルメルカプタン、チオフェノール等の触媒チオールの存在下、100mMリン酸緩衝溶液等の溶液中で混合する。好ましくは、第1のペプチド1当量に対し第2のペプチドを0.5〜2当量及び触媒チオールを5当量程度の割合で反応を行う。反応はpH6.5〜7.5程度、20〜40℃程度の条件下、約1〜30時間程度行うのが望ましい。反応の進行は、HPLC、MS等を組み合わせた公知の手法を用いて確認することができる。
これに、ジチオスレイトール(DTT)、トリス2−カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP)のような還元剤を加えて副反応を抑制し、所望により精製することで、第1のペプチドと第2のペプチドとを連結することができる。
なお、C末端にカルボキシチオエステル部分(−C=O−SR)を有するようにしたペプチドにおいて、R基の異なるペプチドが存在する場合、ライゲーション反応の順序を操作することが可能であり(Protein Science(2007),16:2056−2064等参照)、複数回のライゲーションを行う場合にはこれを考慮することができる。例えば、Rとしてアリール基、ベンジル基及びアルキル基が存在する場合には、一般に、この順に、連結反応が進行する。
本明細書において、タンパク質の「高次構造」とは、αへリックスやβシート構造などの2次構造、またはランダムコイル等の構造、2次構造が水素結合、ジスルフィド結合、イオン結合、疎水性相互作用などにより空間的に折りたたまれて、安定なコンフォメーションを形成した3次構造、複数のポリペプチド鎖がサブユニットとして集合して形成される4次構造を含む、タンパク質の立体構造をいう。タンパク質の高次構造は、タンパク質が生体内で機能を発揮するために必要な構造であることが好ましい。タンパク質の高次構造は、X線結晶構造解析やNMR等により解析することができる。
本明細書において、糖タンパク質の高次構造が均一とは、糖タンパク質のタンパク質部分の高次構造を、糖タンパク質間で比較した場合に、実質的に同一であることをいう。高次構造が実質的に同一であるとは、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の構造が均一であることを言う。高次構造が均一の糖タンパク質は、品質が一定であり、特に医薬品の製造や、アッセイなどの分野において好ましい。ある画分に含まれる糖タンパク質の高次構造が均一であるか否かは、例えば、NMR解析、CD測定、ジスルフィドマッピング等によって確認することができる。
本明細書において「フォールディング」とは、糖タンパク質のタンパク質部分が特定の高次構造に折りたたまれることをいう。糖タンパク質のフォールディングは、公知の方法またはそれに順ずる方法に従って当業者は適宜行うことができるが、例えば、透析法と希釈法、失活法等が挙げられる。透析法は、予めタンパク質変性剤(アンフォールディング剤)を加えておき、これを透析によって徐々に希釈して緩衝液等に置き換えることにより、ペプチドを所定の高次構造にフォールディングさせる方法である。アンフォールディング剤としては、塩酸グアニジン、尿素等が挙げられる。また、希釈法は、タンパク質変性剤を加えた後、緩衝液などで段階的あるいは一度に希釈することでペプチドを高次構造にフォールディングさせる方法である。失活法とは、タンパク質変性剤を加えた後、段階的あるいは一度にこの変性剤を失活させる第2の剤を加えることでペプチドを高次構造にフォールディングさせる方法である。
本発明において「所定の生理活性」とは、フォールディングさせたときに、一定の比率で再現性よく得られる高次構造を有する糖タンパク質の生理活性の中から選択することができる。かかる生理活性は、予め対象とする糖タンパク質を、後述する工程(a)及び工程(b)と同様の方法でフォールディングさせ、カラムクロマトグラフィーによって分画し、主なピークに対応する流出液を回収し、その画分に含まれる糖タンパク質の生理活性を測定することによって求めることができる。ここで、主なピークとは、工程(a)及び工程(b)を繰り返し行った場合に、再現性よく得られるピークを意味する。生理活性の測定は、対象となる糖タンパク質に応じて、当業者に公知の方法で行うことができる。
本発明に係る「アミノ酸配列、糖鎖構造、及び高次構造が均一な糖タンパク質の製造方法」では、まず工程(a)において、アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせる。フォールディング後の糖タンパク質を含む溶液には、高次構造の異なる糖タンパク質が混在し、所定の活性を有するものと有しないものが含まれる。
次に、工程(b)において、フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画する。カラムクロマトグラフィーは、高次構造の異なる糖タンパク質を分離できるものである限り特に限定されないが、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。カラムクロマトグラフィーの固定相、移動相の種類、流出速度等の条件は、分離する糖タンパク質に応じて、当業者が適宜選択することができるが、例えば、ODSタイプの逆相クロマトグラフィー、順相系カラム、アフィニティーカラム、ゲルろ過カラム、イオン交換カラム等を用いることができる。
工程(c)において、カラムクロマトグラフィーの溶出液の各画分に含まれる糖タンパク質の活性を測定し、所定の活性を有する画分を回収することによって、アミノ酸配列、糖鎖構造、及び高次構造が均一な糖タンパク質を得ることができる。
本発明に係る糖タンパク質製造方法では、工程(c)の後、(d)前記工程(c)で回収されなかった画分に含まれる糖タンパク質をアンフォールディングさせ、
(e)前記アンフォールディングさせた糖タンパク質を再度フォールディングさせ、
(f)前記再度フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画し、前記所望の活性を有する画分を回収し、
(g)必要に応じて(d)から(f)を繰り返すことも好ましい。
工程(d)でアンフォールディングされる糖タンパク質が含まれる画分には、所定の活性を有しない高次構造も含まれる。また、所定の活性を有する糖タンパク質が2以上混在している画分も、所定の活性値を示さないため、アンフォールディングされる画分に含まれる。
糖タンパク質のアンフォールディングは、当業者に公知の方法を用いて行うことができるが、例えば、塩酸グアニジン、尿素等のアンフォールディング剤(タンパク質変性剤)を添加する方法、また、これらに加えてジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール等の還元剤を添加する手法も挙げられる。
工程(e)及び工程(f)は、上記工程(a)乃至工程(c)と同様の方法で行うことができる。
このように工程(d)から工程(f)を行うことによって、所定の活性を有しない画分に含まれる糖タンパク質が、いったん巻き戻され、再度折りたたまれることによって、一定の比率で所定の活性を有する高次構造に変換されうる。こうして、所定の活性を有する高次構造をとる糖タンパク質を、最大限回収することができる。
本発明に係る「糖タンパク質のスクリーニング方法」は、(i)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせ、
(ii)前記フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画し、
(iii)各画分の活性を測定し、所定の活性を有するか否か判定する。
工程(i)及び工程(ii)は、上記工程(a)及び工程(b)と同様に行うことができる。上述のとおり、アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングした後の糖タンパク質溶液には、複数の高次構造をとる糖タンパク質が混在している。従って、カラムクロマトグラフィーによって分画した後、各画分の活性を測定し、所定の活性を有するか否か判定することによって、所定の生理活性を有する均一な高次構造を有する糖タンパク質のみを選択し精製することができる。
さらに、本発明は、所望の生理活性を有する糖タンパク質混合物を得る方法を提供する。同方法は、(A)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせ、
(B)前記フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画し、
(C)各画分の活性を測定し、
(D)所望の活性を得られる各画分の混合比率を求め、当該比率に従って各画分を混合することを含む。
工程(A)及び工程(B)は、上記工程(a)及び工程(b)と同様に行うことができる。工程(A)及び工程(B)によって、アミノ酸配列、糖鎖構造、及び高次構造が均一で、所定の活性を有する糖タンパク質を得ることができる。従って、これらを所定の比率で混合することによって、所望の生理活性を有する糖タンパク質混合物を得ることが可能である。
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、 例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
<実施例1> silver pheasantのオボムコイド第3ドメイン(以下、「OMSVP3」と記載することもある。)の化学合成
1.アミノ酸配列及び糖鎖が均一なsilver pheasantのオボムコイド第3ドメインの化学合成
図1に示される3つのフラグメントをそれぞれ合成した後、NCL法によってライゲーションを行って、アミノ酸配列及び糖鎖が均一なsilver pheasantのオボムコイド第3ドメインを合成した。フラグメント1〜3を図2〜4に示す。
[使用した装置]
H−NMRはBrukerのAVANCE 600(600MHzと表記)で測定した。ESIマススペクトル測定には、Brucker DaltonicsのEsquire3000plus.を用いた。
CDスペクトル測定には、JASCOのJ−820、J−805を用いた。
RP−HPLC分析装置はWaters社製のものを、UV検出器はWaters製のWaters486とphotodiode array detector(Waters 2996)とWaters2487を、カラムはCadenza column(Imtakt Corp.,3μm,4.6×75mm)とVydacC−18(5μm,4.6×250mm,10×250mm),VydacC−8(5μm,10×250mm),VydacC−4(5μm,4.6×250mm)を使用した。
[フラグメント1の合成]
固相合成用カラムに2−Chlorotrityl resin(143mg、200μmol)を入れ、塩化メチレン(DCM)、で十分に洗浄した。別途、Fmoc−Leu(212.1mg、0.6mmol)とDIPEA(272.1μL、1.6mmol)をDCM(1.2mL)に溶解させたものを、樹脂の入った固相合成用カラムに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM:MeOH:DIPEA=17:2:1、DCM、DMFを用いて洗浄した。次いで、Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を用いて脱保護した。DMFで洗浄後、Kaiser Testにより反応を確認し、その後のペプチド鎖の伸長は以下に示す方法を用いて、順次アミノ酸を縮合させた。
Fmoc基でアミノ基を保護したアミノ酸とHOBt(135.1mg、1mmol)、DIPCI(153.9μL、1mmol)をDMF(4mL)に溶解させ15分間活性化させた後、固相合成用カラムに入れ、室温で1時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を用いて脱保護した。この操作を繰り返し、アミノ酸を順次縮合させた。アミノ基を保護したアミノ酸には、Fmoc−Pro、Fmoc−Arg(Pbf)、Fmoc−Tyr(tBu)、Fmoc−Glu(OtBu)、Fmoc−Met、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Cys(Trt)、Fmoc−Ala、Fmoc−Pro、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Pro、Fmoc−Tyr(tBu)、Fmoc−Glu(OtBu)、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Cys(Trt)、Fmoc−Asp(OtBu)、Fmoc−Val、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Val、Fmoc−Ala、Fmoc−Ala、を用い、最後のアミノ酸は保護基が酸で除去できるBoc−Leu−OH・HO(249.3mg,1mmol)を用いた。固相樹脂上に、Boc−Leu−Ala−Ala−Val−Ser(tBu)−Val−Asp(OtBu)−Cys(Trt)−Ser(tBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Pro−Lys(Boc)−Pro−Ala−Cys(Trt)−Thr(tBu)−Met−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Arg(Pbf)−Pro−Leuの保護基を有する23残基ペプチド(配列番号1)を得た。このものに、AcOH:DCM:MeOH=5:4:1を(2mL)を加え、室温で3時間攪拌した。攪拌後、樹脂をろ過して除き、さらにMeOHにて樹脂の洗浄を行った。ろ液を別途用意したヘキサン中に加え、晶析を行った。ろ過後の結晶を過剰量のベンゼンで3回共沸した後、凍結乾燥を行った(図5上段。ただし脱保護して測定した。)。
得られたペプチド(保護基を有する配列番号1に記載の23残基ペプチド)(39mg、10μmol)とMS4A、ベンジルメルカプタン(35.5μL、0.3mmol)をDMF溶媒中(1.35mL)、アルゴン気流下−20℃で1時間攪拌した後、PyBOP(26mg、50μmol)とDIPEA(8.5μL、50μmol)を加え、2時間攪拌した。攪拌後、反応溶液に過剰量のジエチルエーテルを加え化合物を沈殿させ、ろ過した。その後に沈殿物をDMFで溶解した。溶液を減圧下に濃縮した後、95%TFA、2.5%TIPS、2.5%HO溶液(1mL)を加え室温で2時間攪拌した(図5中段)。反応溶液を減圧濃縮後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%) 15分 流速1.0mL/min)にて精製し、Leu−Ala−Ala−Val−Ser−Val−Asp−Cys−Ser−Glu−Tyr−Pro−Lys−Pro−Ala−Cys−Thr−Met−Glu−Tyr−Arg−Pro−Leu−SBnのC末端がベンジルチオエステルである23残基のペプチド(配列番号2)を得た(図5下段)。
ESI−MS:Calcd for C1181812734:[M+2H]2+1326.0,Found.1325.8
[フラグメント2の合成]
次いで、別の固相合成用カラムにAmino−PEGA resin(メルク社製)(1g、50μmol)を入れ、塩化メチレン(DCM)、DMFで十分に洗浄した後、DMFで十分に膨潤させた。4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酪酸(HMPB)(0.125mmol)、TBTU(0.125mmol)及びN−エチルモルホリン(0.125mmol)をDMF(1ml)に溶解させてカラムに入れ、室温で2時間攪拌した。樹脂をDMF及びDCMで十分に洗浄し、Kaiser Testで反応を確認した。Kaiser Test陰性(−)であることを確認し、樹脂をDCMで1時間膨潤させた。HMPB−PEGA resinを得、これを固相合成用の固相担体として用いた。
Fmoc−Phe(96.9mg、0.25mmol)、MSNT(74mg、0.25mmol)及びN−メチルイミダゾール(14.9μl、0.188mmol)をDCM(1mL)に溶解させて、固相合成用カラムに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄し、Fmoc基を20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)で20分間処理し脱保護した。DMFで洗浄後、Kaiser Testにより反応を確認し、その後のペプチド鎖の伸長は以下に示す方法を用いて、順次アミノ酸を縮合させた。
Fmoc基でアミノ基を保護したアミノ酸とHOBt(33.8mg、0.25mmol)、DIPCI(38.5μL、0.25mmol)をDMF(1mL)に溶解させ15分間活性化させた後、固相合成用カラムに入れ、室温で1時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)を用いて脱保護した。この操作を繰り返し、アミノ酸を順次縮合させた。アミノ基を保護したアミノ酸には、Fmoc−Asn、Fmoc−Cys(Trt)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Asn、Fmoc−Gly、Fmoc−Tyr(tBu)、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Lys(Boc)、を用い、固相樹脂上に、Fmoc−Lys(Boc)−Thr(tBu)−Tyr(tBu)−Gly−Asn−Lys(Boc)−Cys(Trt)−Asn−Pheの保護基を有する9残基ペプチド(配列番号3)を得た。この固相樹脂上の9残基ペプチド3μmol相当を別の固相合成用カラムにとりFmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)を用いて脱保護した。DMFにて十分洗浄を行った後、樹脂をエッペンチューブに移した。次いで、下記式(1)で表される糖鎖アスパラギン(12mg、6μmol)とDEPBT(3mg、10μmol)をDMF:DMSO=4:1、0.20mLに溶解させ、エッペンチューブに入れ、DIPEA(1.02μL、6μmol)を加えて室温で20時間攪拌した。
攪拌後、樹脂を固相合成用カラムに移し、DCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)で20分間処理し脱保護した。DMFで洗浄後、その後の糖ペプチド鎖の伸長は以下に示す方法を用いて、順次アミノ酸を縮合させた。Fmoc基でアミノ基を保護したアミノ酸とHOBt(2mg、0.015mmol)、DIPCI(2.3μL、0.015mmol)をDMF(0.375mL)に溶解させ15分間活性化させた後、固相合成用カラムに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)を用いて脱保護した。この操作を繰り返し、アミノ酸を順次縮合させた。アミノ基を保護したアミノ酸には、Fmoc−Asp(OtBu)、Fmoc−Ser(tBu),Fmoc−Gly,Boc−Cys(Thz)を用い、固相樹脂上にBoc−Cys(Thz)−Gly−Ser(tBu)−Asp(OtBu)−Asn(Oligosaccharide)−Lys(Boc)―Thr(tBu)−Tyr(tBu)−Gly−Asn−Lys(Boc)−Cys(Trt)−Asn−Pheの保護基を有する14残基糖鎖付加ペプチド(配列番号4)を得た。このものに、酢酸:トリフルオロエタノール(=1:1)1mLを加え、室温で20時間撹拌を行った。樹脂をろ過して除き、さらにMeOHで洗浄した後、ろ液を減圧下に濃縮後、ベンゼンを用いて共沸を3回行った。この残渣を溶解後、凍結乾燥を行った(図6上段。ただし脱保護して測定した。)。
得られたペプチド(保護基を有する配列番号4に記載の14残基糖鎖付加ペプチド)(11.7mg、3μmol)とMS4A(10mg)、ベンジルメルカプタン(10.6μL、0.09mmol)をDMF溶媒中(0.41mL)、アルゴン気流下−20℃で1時間攪拌した後、PyBOP(7.8mg、15μmol)とDIPEA(2.6μL、15μmol)を加え、2時間攪拌した。攪拌後、反応溶液に過剰量のジエチルエーテルを加え化合物を沈殿させ、ろ過後に沈殿物をDMFで溶解した。溶液を減圧下に濃縮した後、95%TFA、2.5%TIPS、2.5%HO溶液(1mL)を加え室温で2時間攪拌した(図6中段)。反応溶液を減圧下に濃縮後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、 75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製し、Cys(Thz)−Gly−Ser−Asp−Asn(Oligosaccharide)−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−SBnのC末端がベンジルチオエステルである保護基を有する14残基糖鎖付加ペプチド(配列番号5)を得た(図6下段)。
ESI−MS:Calcd for C1332032367:[M+2H]2+1647.1,Found.1646.6
[フラグメント3の合成]
次いで、固相合成用カラムに2−Chlorotrityl resin(200μmol)を入れ、塩化メチレン(DCM)、で十分に洗浄した。別途、Fmoc−Cys(Trt)(351.4mg、0.6mmol)とDIPEA(272.1μL、1.6mmol)をDCM(1.2mL)に溶解させたものを、樹脂の入った固相合成用カラムに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM:MeOH:DIPEA=17:2:1、DCM、DMFを用いて洗浄した。次いで、Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を用いて脱保護した。DMFで洗浄後、Kaiser Testにより反応を確認し、その後のペプチド鎖の伸長は以下に示す方法を用いて、順次アミノ酸を縮合させた。
Fmoc基でアミノ基を保護したアミノ酸とHOBt(135.1mg、1mmol)、DIPCI(153.9μL、1mmol)をDMF(4mL)に溶解させ15分間活性化させた後、固相合成用カラムに入れ、室温で1時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を用いて脱保護した。この操作を繰り返し、アミノ酸を順次縮合させた。アミノ基を保護したアミノ酸には、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Gly、Fmoc−Phe、Fmoc−His(Trt)、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Leu、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Leu、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Gly、Fmoc−Asn、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Glu(OtBu)、Fmoc−Val、Fmoc−Val、Fmoc−Ala、Fmoc−Asn、Fmoc−Cys(Trt)を用い、固相樹脂上に、Cys(Trt)−Asn−Ala−Val−Val−Glu(OtBu)−Ser(tBu)−Asn−Gly−Thr(tBu)−Leu−Thr(tBu)−Leu−Ser(tBu)−His(Trt)−Phe−Gly−Lys(Boc)−Cys(Trt)の保護基を有する19残基ペプチド(配列番号6)を得た。このものに95%TFA、2.5%TIPS、2.5%HO溶液(3mL)を加え室温で2時間攪拌した後、樹脂をろ過して除き、ろ液を減圧下に濃縮した(図7上段)。これをHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製し、Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの19残基ペプチド(配列番号7)を得た(図7下段)。
ESI−MS:Calcd for C831342428:[M+2H]2+991.1,Found.991.0
[フラグメント2とフラグメント3のNCL法によるライゲーション]
フラグメント3(配列番号7に記載の19残基ペプチド)1.9mg(1μmol)とフラグメント2(配列番号5に記載のC末端がベンジルチオエステルである保護基を有する14残基の糖鎖付加ペプチド)3.2mg(1μmol)との二種類を同じエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、6M グアニジン塩酸塩含有)485μLに溶解させた後、25℃にてチオフェノール(15μL)を加え、室温で反応を行った(図8の0h)。24時間後、反応終了をHPLCで確認した後(図8の24h)、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%) 15分 流速1.0mL/min)にて精製した(図8の精製後)。その後凍結乾燥を行い、Cys(Thz)−Gly−Ser−Asp−Asn(Oligosaccharide)−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの保護基を有する33残基糖鎖付加ペプチド(配列番号8)を得た。
ESI−MS:Calcd for C2093294795:[M+4H]4+1287.28,Found.1287.6
得られたペプチド(配列番号8に記載の保護基を有する33残基糖鎖付加ペプチド)を、0.2Mメトキシアミン水溶液(pH=4.0)に溶解させた。4時間後、反応の終了をHPLCにて確認した後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した(図8のチアゾリン脱保護)。その後凍結乾燥を行い、Cys−Gly−Ser−Asp−Asn(Oligosaccharide)−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの33残基糖鎖付加ペプチド(配列番号9)を得た。
ESI−MS:Calcd for C2083294795:[M+4H]4+1284.28,Found.1284.5
なお、以下の条件でも同様に配列番号9に記載の33残基糖鎖付加ペプチドが得られた。
フラグメント3(配列番号7に記載の19残基ペプチド)1.9mg(1μmol)とフラグメント2(配列番号5に記載のC末端がベンジルチオエステルである保護基を有する14残基の糖鎖付加ペプチド)3.2mg(1μmol)との二種類をそれぞれエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、6M グアニジン塩酸塩含有)247.5μLに溶解させた後、ひとつのエッペンチューブに合わせた。25℃にて1%チオフェノール(5μL)を加え、室温で反応を行った。反応をHPLCと質量分析で追跡し、7時間後にHPLCでフラグメント3の消失を確認した。その後0.2Mのメトキシアミン水溶液を系中がpH4付近になるまで加えてN末端のCysを脱保護した。6時間後反応の終了を質量分析で確認し、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%) 15分 流速1.0mL/min)にて精製した。その後凍結乾燥を行い、配列番号9の33残基糖鎖付加ペプチドを得た。
ESI−MS:Calcd for C2083294795:[M+4H]4+1284.28,Found.1284.5
[フラグメント1と、フラグメント2及び3とのNCL法によるライゲーション]
フラグメント2とフラグメント3をライゲーションすることによって調製した33残基糖鎖付加ペプチド(配列番号9)1.3mg(0.25μmol)とフラグメント1(配列番号2に記載のC末端がベンジルチオエステルである23残基ペプチド)1.3mg(0.50μmol)との二種類を同じエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、8M グアニジン塩酸塩含有)485μLに溶解させた後、25℃にてチオフェノール(15μL)を加え、室温で反応を行った(図9の0h)。54時間後、反応終了をHPLCで確認した後(図9の54h)。反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した(図9下段)。その後凍結乾燥を行い、Leu−Ala−Ala−Val−Ser−Val−Asp−Cys−Ser−Glu−Tyr−Pro−Lys−Pro−Ala−Cys−Thr−Met−Glu−Tyr−Arg−Pro−Leu−Cys−Gly−Ser−Asp−Asn(Oligosaccharide)−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの56残基糖鎖付加ペプチド(配列番号10)を得た。
ESI−MS:Calcd for C31950274129:[M+5H]5+1532.46,Found.1532.7
なお、以下の条件でも同様に、56残基糖鎖付加ペプチド(配列番号10)を得ることができた。
配列番号9に記載の33残基糖鎖付加ペプチド1.3mg(0.25μmol)とフラグメント1(配列番号2に記載のC末端がベンジルチオエステルである23残基ペプチド)1.3mg(0.50μmol)との二種類をそれぞれエッペンチューブに入れ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、8M グアニジン塩酸塩含有)247.5μLに溶解させた後、ひとつのエッペンチューブに合わせた。反応をHPLCと質量分析で追跡し、30時間後に、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した。
[糖タンパク質のフォールディング]
このようにして調製した56残基糖鎖付加ペプチド(配列番号10)0.5mg(65.2nmol)をエッペンチューブに取り、0.6Mトリス緩衝液(pH=8.7、0.6Mグアニジン塩酸塩、6mM EDTA含有)100μLに溶解した。蒸留水500μLを加え希釈して、糖鎖を有するオボムコイド第3ドメインをフォールディングさせた。
[HPLCによる分画]
36時間後、反応の進行をHPLCと質量分析にて確認した後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した。高次構造を有したLeu−Ala−Ala−Val−Ser−Val−Asp−Cys−Ser−Glu−Tyr−Pro−Lys−Pro−Ala−Cys−Thr−Met−Glu−Tyr−Arg−Pro−Leu−Cys−Gly−Ser−Asp−Asn(Oligosaccharide)−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの56残基糖鎖付加ペプチド(配列番号10)が含まれる4つの画分A〜Dを得た(図10)。
ESI−MS:Calcd for C31950274129:[M+5H]5+1532.2,[M+4H]4+1915.0,[M+3H]3+2553.0,
A;Found.1532.5,1915.2,2553.2
B;Found.1532.5,1915.2,2553.2
C;Found.1532.6,1915.3,2553.2
D;Found.1532.7,1915.4,2553.3
図9下段から図10へのピークの変化、および、質量の減少は、上述のフォールディング工程により、ジスルフィド結合が形成されたことを示す。
なお、反応をHPLCと質量分析で追跡し、質量分析で分子量変化とHPLCでピークのリテンションタイムが変化したことを確認することにより、反応時間を適宜変更(例えば、24時間)することができる。
画分BのNMR測定:凍結乾燥後の画分Bを5%DO/HO(300μl)に溶かし25℃、60ms、600MHzで2D TOCSYを測定した。NMRスペクトルを図11に示す。
画分BのCD測定:凍結乾燥後の画分Bを蒸留水に溶かしCD測定を行った。装置はJASCOのJ−820を用いた。測定領域は180nm〜260nmの範囲で行った。CDスペクトルを図12に示す。
図11より、HPLCによる分離のみで、同一の高次構造を有する糖ペプチドが高度に精製されることが確認された。
2.糖鎖を有しないsilver pheasantのオボムコイド第3ドメインの化学合成
実施例と同様に、3つのフラグメントをそれぞれ合成した後、NCL法によるライゲーションを行って、糖鎖を有しないsilver pheasantのオボムコイド第3ドメインを合成した。フラグメント1及びフラグメント3は、実施例と同様に合成した。比較例で、実施例のフラグメント2に対応するフラグメント(以下「フラグメント2’」という。)は、図14に示すとおり糖鎖を有しない。
[フラグメント2’の合成]
固相合成用カラムに2−Chlorotrityl resin(143mg、200μmol)を入れ、塩化メチレン(DCM)、で十分に洗浄した。別途、Fmoc−Phe(232.4mg、0.6mmol)とDIPEA(272.1μL、1.6mmol)をDCM(1.2mL)に溶解させたものを、樹脂の入った固相合成用カラムに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM:MeOH:DIPEA=17:2:1、DCM、DMFを用いて洗浄した。次いで、Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を用いて脱保護した。DMFで洗浄後、Kaiser Testにより反応を確認し、その後のペプチド鎖の伸長は以下に示す方法を用いて、順次アミノ酸を縮合させた。
Fmoc基でアミノ基を保護したアミノ酸とHOBt(135.1mg、1mmol)、DIPCI(153.9μL、1mmol)をDMF(0.4mL)に溶解させ15分間活性化させた後、固相合成用カラムに入れ、室温で1時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)を用いて脱保護した。この操作を繰り返し、アミノ酸を順次縮合させた。アミノ基を保護したアミノ酸には、Fmoc−Asn、Fmoc−Cys(Trt)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Asn、Fmoc−Gly、Fmoc−Tyr(tBu)、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Asn、Fmoc−Asp(OtBu)、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Gly、を用い、最後のアミノ酸は保護基が酸で除去できるBoc−Cys(Thz)−OH(233.3mg,1mmol)を用いた。固相樹脂上に、Boc−Cys(Thz)−Gly−Ser(tBu)−Asp(OtBu)−Asn−Lys(Boc)−Thr(tBu)−Tyr(tBu)−Gly−Asn−Lys(Boc)−Cys(Trt)−Asn−Pheの保護基を有する14残基ペプチド(配列番号11)を得た。このものに、AcOH:DCM:MeOH=5:4:1を(2mL)を加え、室温で3時間攪拌した。攪拌後、樹脂をろ過して除き、さらにMeOHにて樹脂の洗浄を行った。ろ液を減圧下に濃縮し、過剰量のベンゼンで3回共沸して凍結乾燥を行った(図15上段。ただし脱保護して測定した。)。
得られたペプチド(配列番号11に記載の保護基を有する14残基ペプチド)110mg(50μmol)とMS4A(10mg)、ベンジルメルカプタン(177.4μL、1.5mmol)をDMF溶媒中(6.8mL)、アルゴン気流下−20℃で1時間攪拌した後、PyBOP(130mg、250μmol)とDIPEA(42.5μL、250μmol)を加え、2時間攪拌した。攪拌後、反応溶液に過剰量のジエチルエーテルを加え化合物を沈殿させ、ろ過後に沈殿物をDMFで溶解した。溶液を減圧下に濃縮した後、95%TFA、2.5%TIPS、2.5%HO溶液(5mL)を加え室温で2時間攪拌した(図15中段)。反応溶液を減圧下に濃縮後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、 75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:9%→27%)15分 流速1.0mL/min)にて精製し、Cys(Thz)−Gly−Ser−Asp−Asn−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−SBnのC末端がベンジルチオエステルである保護基を有する14残基ペプチド(配列番号12)を269.6mg得た(図15下段)。
ESI−MS:Calcd for C711011922:[M+2H]2+834.8, Found.834.7
[フラグメント2’とフラグメント3のNCL法によるライゲーション]
このようにして調製したフラグメント2’(配列番号12に記載のC末端がベンジルチオエステルである保護基を有する14残基ペプチド)1.6mg(0.96μmol)と、実施例にて合成したフラグメント3 1.9mg(0.96μmol)との二種類を同じエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、6M グアニジン塩酸塩含有)495μLに溶解させた後、チオフェノール(5μL)を加え、室温で反応を行った(図16の0h)。18時間後、反応終了をHPLCで確認した後(図16の18h)、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、 75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した(図16の精製後)。その後凍結乾燥を行い、Cys(Thz)−Gly−Ser−Asp−Asn−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの保護基を有する33残基ペプチド(配列番号13)を得た。
ESI−MS:Calcd for C1472274350:[M+3H]3+1175.9,Found.1175.4
得られた保護基を有する33残基ペプチド(配列番号13)を、0.2Mメトキシアミン水溶液(pH=4.0)に溶解させた。4時間後、反応の終了をHPLCにて確認した後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した(図16のチアゾリン脱保護)。その後凍結乾燥を行い、Cys−Gly−Ser−Asp−Asn−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの33残基ペプチド(配列番号14)を得た。
ESI−MS:Calcd for C1462274350:[M+3H]
1171.9、Found.1171.5
なお、以下の条件でも同様に配列番号14に記載の33残基糖鎖付加ペプチドが得られた。
フラグメント2’(配列番号12に記載のC末端がベンジルチオエステルである保護基を有する14残基ペプチド)1.6mg(0.96μmol)と、実施例にて合成したフラグメント3 1.9mg(0.96μmol)との二種類をそれぞれエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、6M グアニジン塩酸塩含有)247.5μLに溶解させた後、ひとつのエッペンチューブに合わせた。1%チオフェノール(5μL)を加え、室温で反応を行った。反応をHPLCと質量分析で追跡し、6時間後にHPLCでフラグメント3の消失を確認した。その後0.2Mのメトキシアミン水溶液を系中がpH4付近になるまで加えてN末端のCysを脱保護した。6時間後反応の終了を質量分析で確認し、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した。
ESI−MS:Calcd for C1462274350:[M+3H]3+1171.9、Found.1171.5
[フラグメント1と、フラグメント2’及び3とのNCL法によるライゲーション]
このようにして調製した33残基ペプチド(配列番号14)0.6mg(0.17μmol)と実施例で合成したフラグメント1(配列番号2に記載のC末端がベンジルチオエステルである23残基ペプチド)1.1mg(0.41μmol)との二種類を同じエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、8M グアニジン塩酸塩含有)485μLに溶解させた後、チオフェノール(15μL)を加え、室温で反応を行った(図17の0h)。45時間後、反応終了をHPLCで確認した後(図17の45h)、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、 75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した。その後凍結乾燥を行い、Leu−Ala−Ala−Val−Ser−Val−Asp−Cys−Ser−Glu−Tyr−Pro−Lys−Pro−Ala−Cys−Thr−Met−Glu−Tyr−Arg−Pro−Leu−Cys−Gly−Ser−Asp−Asn−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの56残基ペプチド(配列番号15)を得た(図17下段)。
ESI−MS:Calcd for C2574007084:[M+4H]4+1510.7,Found.1510.6
なお、以下の条件でも同様に配列番号15に記載の56残基糖鎖付加ペプチドが得られた。
配列番号14に記載の33残基ペプチド0.6mg(0.17μmol)とフラグメント1(配列番号2に記載のC末端がベンジルチオエステルである23残基ペプチド)1.1mg(0.41μmol)との二種類をそれぞれエッペンチューブにいれ、0.1%りん酸緩衝溶液(pH7.5、8M グアニジン塩酸塩含有)247.5μLに溶解させた後、ひとつのエッペンチューブに合わせた。1%チオフェノール(5μL)を加え、室温で反応を行った。反応をHPLCと質量分析で追跡し、30時間後に、反応溶液をHPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製した。その後凍結乾燥を行い、配列番号15に記載の56残基糖鎖付加ペプチドを得た。
ESI−MS:Calcd for C2574007084:[M+4H]4+1510.7,Found.1510.6
[タンパク質のフォールディング]
このようにして調製した56残基ペプチド(配列番号15)0.4mg(66.2nmol)をエッペンチューブに取り、0.6Mトリス緩衝液(pH=8.7、0.6Mグアニジン塩酸塩、6mM EDTA含有)100μLに溶解した。蒸留水500μLを加え希釈し、糖鎖のないオボムコイド第3ドメインをフォールディングさせた。
[HPLCによる分画]
36時間後、反応の進行をHPLCと質量分析にて確認した後、HPLC(Cadenza column CD18(Imtakt Inc.)、3mm、75x4.6mm、展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)15分 流速1.0mL/min)にて精製し、高次構造を有したLeu−Ala−Ala−Val−Ser−Val−Asp−Cys−Ser−Glu−Tyr−Pro−Lys−Pro−Ala−Cys−Thr−Met−Glu−Tyr−Arg−Pro−Leu−Cys−Gly−Ser−Asp−Asn−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Phe−Cys−Asn−Ala−Val−Val−Glu−Ser−Asn−Gly−Thr−Leu−Thr−Leu−Ser−His−Phe−Gly−Lys−Cysの56残基ペプチド(配列番号15)が含まれる4つの画分E〜Hを得た(図18)。
ESI−MS:Calcd for C2573947084:[M+5H]5+1207.5,[M+4H]4+1509.1,[M+3H]3+2011.9,
E;Found.1207.7、1509.3、2012.0
F;Found.1207.6、1509.3、2012.0
G;Found.1207.7、1509.3、2012.0
H;Found.1207.8、1509.3、2012.0
図17下段から図18へのピークの変化、および、質量の減少は、上述のフォールディング工程により、ジスルフィド結合が形成されたことを示す。
なお、反応をHPLCと質量分析で追跡し、質量分析で分子量変化とHPLCでピークのリテンションタイムが変化したことを確認することにより、反応時間を適宜変更(例えば、24時間)することができる。
画分FのNMR測定:凍結乾燥後の画分Fを5%DO/HO(300μl)に溶かし25℃、80ms、600MHzで2D TOCSYを測定した。NMRスペクトルを図19に示す。
画分FのCD測定:凍結乾燥後の画分Fを蒸留水に溶かしCD測定を行った。装置はJASCOのJ−820を使用した。測定領域は180nm〜260nmの範囲で行った。CDスペクトルを図20に示す。
図19より、HPLCによる分離のみで、同一の高次構造を有する糖ペプチドが高度に精製されることが確認された。
[画分Fの検量線の作成]
画分F(1mg)をBSA(0.1mg/ml)を含むpH8.0の0.1Mリン酸バッファー(1ml)に溶かし、この溶液を希釈して165μM、82.5μM、41.3μM、20.6μMの濃度の画分Fを調製した。各濃度の溶液のOD280をそれぞれ3回ずつ測定し、平均値化したものを表1および図22に示した。
<実施例2>生理活性の測定
[糖鎖付加OMSVP3(画分A〜D)の生理活性の測定]
0.1Mりん酸緩衝液(pH=8.0、0.01%α−キモトリプシン、0.01%牛血清アルブミン含有)の酵素溶液、及び、0.1Mりん酸緩衝液(pH=8.0、517μMの参考例1(後述)で合成した保護基を有する14残基ペプチド(配列番号16)、0.01%牛血清アルブミン含有)の基質溶液を調製し、各々20μLをエッペンチューブに加えた。この溶液に、実施例1で得られた画分A〜Dそれぞれを凍結乾燥した後、0.1Mりん酸緩衝液(pH=8.0、0.01%牛血清アルブミン含有)に溶解させ、各溶液のOD280を測定し、溶液中に含まれるタンパク質濃度を一定としたサンプル液20μLを加え、阻害活性を測定した。この際の、最終的な反応濃度は、サンプル濃度2.5μM、酵素濃度0.33μg/mL、基質濃度172μMである。この反応液を、37℃で10分間インキュベートした後、4N塩酸を5μL加え反応を停止した。同様の操作を3回繰り返し、それぞれ分解率の平均値及び標準偏差を算出した。結果を図13に示す。
[糖鎖のないOMSVP3(画分E〜H)の生理活性の測定]
0.1Mりん酸緩衝液(pH=8.0、0.01%α−キモトリプシン、0.01%牛血清アルブミン含有)の酵素溶液、及び、0.1Mりん酸緩衝液(pH=8.0、517μMの参考例1(後述)で合成した保護基を有する14残基ペプチド(配列番号16)、0.01%牛血清アルブミン含有)の基質溶液を調製し、各々20μLをエッペンチューブに加えた。この溶液に、実施例1で得られた画分E〜Hそれぞれを凍結乾燥した後、0.1Mりん酸緩衝液(pH=8.0、0.01%牛血清アルブミン含有)に溶解させ、各溶液のOD280を測定し、溶液中に含まれるタンパク質濃度を一定としたサンプル液20μLを加え、阻害活性を測定した。この際の、最終的な反応濃度は、サンプル濃度2.5μM、酵素濃度0.33μg/mL、基質濃度172μMである。この反応液を、37℃で10分間インキュベートした後、4N塩酸を5μL加え反応を停止した。同様の操作を3回繰り返し、それぞれ分解率の平均値及び標準偏差を算出した。結果を図21に示す。
<実施例3>生理活性の測定(IC50の導出)
[糖鎖付加OMSVP3(画分A〜D)のIC50の導出]
参考例1(後述)で合成した保護基を有する14残基ペプチド(配列番号16)(1.5mg)を、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、0.1mg/mL BSA含有)1mLに溶解させ、1mMの溶液を調製した。吸光度計を用いて0.34mMになるように希釈した(溶液1)。キモトリプシン(1mg)を0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、0.1mg/mL BSA含有)1mLに溶解させ、この溶液を10倍希釈し、さらにその溶液を10倍希釈することを繰り返して0.2μg/mLになるよう調製した(溶液2)。画分Bを、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、0.1mg/mL BSA含有)100μLに溶解させ、吸光度計を用いて65nMになるように希釈した。これを希釈して58.5nM,52nM,45.5nM,39nM,32.5nM,26nM,19.5nM,13nM,6.5nMの溶液を作った(溶液3)。氷上で十分に冷やした溶液1を80μL、溶液2,3を40μlずつ同じエッペンチューブに移し、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、1Nの塩酸を16μL加えることで反応を停止させた。反応液20μLを、バッファー80μLと混合させ計100μLとし、HPLCによる測定に用いた。反応生成物のHPLC上のピーク面積から単位時間当たりの分解率(単位時間当たりの反応速度)を計算した。図23は各阻害剤濃度に対する阻害率をプロットしたグラフを示す。同様に画分A,CおよびDに対しても阻害剤の濃度が酵素の活性を50%阻害する濃度を挟むようにプロットした。その結果のグラフを示す(図23)。このグラフを元に算出した糖鎖付加OMSVP3(画分A〜D)のIC50値をグラフに示す(図24)。
[糖鎖のないOMSVP3(画分E〜H)のIC50の導出]
参考例1(後述)で合成した保護基を有する14残基ペプチド(配列番号16)(1.5mg)を、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、0.1mg/mL BSA含有)1mLに溶解させ、1mMの溶液を調製した。吸光度計を用いて0.34mMになるように希釈した(溶液1)。キモトリプシン(1mg)を0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、0.1mg/mL BSA含有)1mLに溶解させ、この溶液を10倍希釈し、さらにその溶液を10倍希釈することを繰り返して0.2μg/mLになるよう調製した(溶液2)。画分Fを、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、0.1mg/mL BSA含有)100μLに溶解させ、吸光度計を用いて65nMになるように希釈した。これを希釈して58.5nM,52nM,45.5nM,39nM,32.5nM,26nM,19.5nM,13nM,6.5nMの溶液を作った(溶液3)。氷上で十分に冷やした溶液1を80μL、溶液2,3を40μLずつ同じエッペンチューブに移し、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、1Nの塩酸を16μL加えることで反応を停止させた。反応液20μLを、バッファー80μLと混合させ計100μLとし、HPLCによる測定に用いた。反応生成物のHPLC上のピーク面積から単位時間当たりの分解率(単位時間当たりの反応速度)を計算した。図25は各阻害剤濃度に対する阻害率をプロットしたグラフを示す。同様に画分E,GおよびHに対しても阻害剤の濃度が酵素の活性を50%阻害する濃度を挟むようにプロットした。その結果のグラフを示す(図25)。このグラフを元に算出した糖鎖のないOMSVP3(画分E〜F)のIC50値をグラフに示す(図26)。
<実施例4>熱安定性の測定
CD測定用のセルを蒸留水で満たし、室温のまま測定した。この測定値をブランクとして以降の測定値は全てこのブランクの数値を差し引いて計算した。
[糖鎖付加OMSVP3(画分B)の熱安定性]
画分Bを蒸留水300μLに溶解し室温で測定した。測定終了後、試料をセルに満たしたままセルごと恒温槽に浸し温度可変実験を行った。はじめに50℃の恒温槽に10分間浸しておいたセルを10分間室温に静置し測定を行った。以降90℃まで同様の操作をしてCDスペクトルを測定した。結果を図27に示す。
[糖鎖のないOMSVP3(画分F)の熱安定性]
画分Fを蒸留水300μlに溶解し室温で測定した。測定終了後、試料をセルに満たしたままセルごと恒温槽に浸し温度可変実験を行った。はじめに50℃の恒温槽に10分間浸しておいたセルを10分間室温に静置し測定を行った。以降90℃まで同様の操作をしてCDスペクトルを測定した。結果を図28に示す。
<実施例5>オボムコイド第3ドメインのジスルフィドマッピング
合成したOMSVP3は3本のジスルフィド結合を有している。ジスルフィド結合はタンパク質のフォールディングの際に形成され、その形成過程は平衡反応である。そのため天然型タンパク質とは異なる位置でのジスルフィド結合形成も生じると考えられる。
今回合成したOMSVP3(画分B)はNMRおよび阻害活性評価の結果から単一化合物であり、天然型タンパク質と同じ位置でジスルフィド結合を形成していると予想された。そこで画分Bが確かに天然と同じ位置でジスルフィド結合を形成しているか確認するために以下の検討を行った。
[アミノ酸配列及び糖鎖が均一なOMSVP3(画分B)のジスルフィドマッピング]
実施例1で得られた画分B(0.4mg)に対して臭化シアン(1mg/mL)を、40%アセトニトリル、2%TFA水溶液中、37℃、遮光条件化で一晩反応させた。これを凍結乾燥させHPLC(VyDAC column C4(Imtakt Inc.)、3μm、4.5×250mm展開溶媒A:0.09%TFA水溶液B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)30分 流速1.0ml/min)で精製して画分Iを得た。
ESI−MS:Calcd for C31849474130:[M+4H]4+,1907.5,Found.1907.4
次に、Thermolysin(50μg/mL)を溶解させた50mMトリス緩衝液(pH7.6、10mM CaCl含有)に、画分I(0.1mg)を溶解させ、37℃でインキュベートした。3時間後にHPLC(VyDAC column C4(Imtakt Inc.)、3μm、4.5×250mm 展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=95:5→50:50(アセトニトリル グラジエント:4.5%→45%)15分 流速1.0ml/min)で精製して画分IIからVIを得た(図29、30)。
ESI−MS:
画分II;Calcd for C35541013:[M+2H]2+,444.8,Found 444.7
画分III;Calcd for C2537:[M+H],564.4,Found 564.4
画分IV;Calcd for C1141871964:[M+3H]3+,971.6,Found 971.5
画分V;Calcd for C1231962066:[M+3H]3+,1026.0,Found 1025.9
画分VI;Calcd for C64931522:[M+2H]2+,744.8,Found 745.0
[糖鎖を有しないOMSVP3(画分F)のジスルフィドマッピング]
実施例1で得られた画分F(0.4mg)に対して臭化シアン(1mg/mL)を、40%アセトニトリル、2%TFA水溶液中、37℃、遮光条件化で一晩反応させた。これを凍結乾燥させHPLC(VyDAC column C4(Imtakt Inc.)、3μm、4.5×250mm 展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=80:20→40:60(アセトニトリルのグラジエント:18%→54%)30分 流速1.0ml/min)で精製して画分VIIを得た。
ESI−MS: Calcd for C2563927085:[M+4H]4+,1501.6,Found.1501.5
次に、Thermolysin(50μg/mL)を溶解させた50mMトリス緩衝液(pH7.6、10mM CaCl含有)に、画分VII(0.1mg)を溶解させ、37℃でインキュベートした。4時間後にHPLC(VyDAC column C4(Imtakt Inc.)、3μm、4.5×250mm 展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=95:5→50:50(アセトニトリル グラジエント:4.5%→45%) 15分 流速1.0ml/min)で精製して画分VIIIからXIを得た(図31、32)。
ESI−MS:
画分VIII;Calcd for C35541013:[M+2H]2+,444.8,Found 444.7
画分IX;Calcd for C2537:[M+H],564.4,Found 564.4
画分X;Calcd for C52851519:[M+2H]2+,644.8,Found 644.9
画分XII;Calcd for C64931522:[M+2H]2+,744.8,Found 744.9
CNBr処理を用いて糖鎖を有するOMSVP3(画分B)配列中のメチオニン部位で特異的にペプチド鎖を切断し(画分I)、続いてThermolysin消化を行った結果、ジスルフィド結合でつながったペプチド断片が得られた(図29)。それぞれのペプチドフラグメントを精製後、ESI−massによりその質量を測定した。そして、得られた質量が、OMSVP3のどのフラグメントに相当するかを解析した。その結果得られた推定構造を図33の下図に示した。同様の方法を用いて糖鎖を有しないOMSVP3(画分F)についても、同様の方法を用いて解析し(図31、34参照)、その結果得られた推定構造を図34の下図に示した。天然のOMSVP3と同じ位置でジスルフィド結合が形成していることを確認した(図31、34)。これらのジスルフィドマッピングから推定された画分Bおよび画分Fにおけるジスルフィド結合位置は、すでに解析されている天然のOMSVP3のジスルフィド結合位置と一致するものであった。
これらのことから、本発明のフォールディング工程、分画工程、及び、回収工程によって、アミノ酸配列、糖鎖構造、及び、高次構造が均一な糖タンパク質を製造することができることが示された。また、OMSVP3の場合において、本発明の分画工程において最大ピークとして得られた画分は、天然と同じジスルフィド結合を有し、かつ、高活性の画分であり、所望の構造及び所望の活性を有する糖タンパク質を効率よく製造することができた。なお、このことは、他の糖タンパク質を製造する場合において、最大ピークの画分が所望の活性ないし所望の構造でないものであったとしても、所望の活性を有するその他の画分を適宜回収することにより、やはり、所定の活性を有する、アミノ酸配列、糖鎖構造、及び、高次構造が均一な糖タンパク質を製造することができるものであり、本発明が実施可能であることをなんら妨げるものではない。
本発明の実施例において、糖タンパク質を有するオボムコイド第3ドメインをフォールディングさせ、HPLCで分画したパターン(図10)と、糖鎖を有しない第3ドメインをフォールディングさせ、HPLCで分画したパターン(図18)は、4つのピークを有する比較的類似したものであった。また、活性の強さもそれぞれ、実施例2においては、画分A>画分B>画分D>画分C、画分F>画分E>画分H>画分G(図13と図21)、実施例3においては、画分A>画分B>画分C>画分D、画分E>画分F>画分G>画分H(図23〜26)と類似していたことから、同一の高次構造を有するものが、同じ順序で溶出したように見えた。中でも最大ピークとして得られる、高活性を有する画分Bと画分Fについて、ジスルフィド結合位置が同一であったことも、これと整合する結果であった。
しかしながら、画分Bと画分FのCDスペクトルは一致せず、両者の高次構造が異なることが示された(図12と図20)。このことは、糖鎖付加が、糖鎖を有しないタンパク質のフォールディングに対して歪みを与えることなどによって、タンパク質の高次構造に変化をもたらしうることを示す。
タンパク質のこのような高次構造の変化は、基質との結合のしやすさ等にも影響する点で、生理活性に影響を与えうることが予想され、また、糸球ろ過体の通過しやすさ等にも影響する点で、血中半減期にも影響を与えうることが予想される。このことから、糖タンパク質を医薬品として用いる際には、タンパク質に糖鎖を付加した状態で高次構造が一定のもののみを精製分離することにより、生理活性及び血中半減期を一定とする医薬を製造することが重要であるところ、本発明の方法はこれを可能にするものである。
<参考例1 阻害活性試験用基質の合成>
[基質ペプチドの合成]
固相合成用カラムに2−Chlorotrityl resin(143mg、200μmol)を入れ、塩化メチレン(DCM)、で十分に洗浄した。別途、Fmoc−Phe(232.4mg、0.6mmol)とDIPEA(272.1μL、1.6mmol)をDCM(1.2mL)に溶解させたものを、樹脂の入った固相合成用カラムに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM:MeOH:DIPEA=17:2:1、DCM、DMFを用いて洗浄した。次いで、Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を用いて脱保護した。DMFで洗浄後、Kaiser Testにより反応を確認し、その後のペプチド鎖の伸長は以下に示す方法を用いて、順次アミノ酸を縮合させた。
Fmoc基でアミノ基を保護したアミノ酸とHOBt(135.1mg、1mmol)、DIPCI(153.9μL、1mmol)をDMF(0.4mL)に溶解させ15分間活性化させた後、固相合成用カラムに入れ、室温で1時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM、DMFを用いて洗浄した。Fmoc基を20分20%ピペリジン/DMF溶液(1mL)を用いて脱保護した。この操作を繰り返し、アミノ酸を順次縮合させた。アミノ基を保護したアミノ酸には、Fmoc−Asn、Fmoc−Cys(Trt)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Asn、Fmoc−Gly、Fmoc−Tyr(tBu)、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Asn、Fmoc−Asp(OtBu)、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Gly、を用い、最後のアミノ酸はBoc−Cys(Thz)−OH (233.3mg,1mmol)を用いた。固相樹脂上に、Boc−Cys(Thz)−Gly−Ser(tBu)−Asp(OtBu)−Asn−Lys(Boc)−Thr(tBu)−Tyr(tBu)−Gly−Asn−Lys(Boc)−Cys(Trt)−Asn−Pheの保護基を有する14残基ペプチド(配列番号11)を得た。このものに95%TFA、2.5%TIPS、2.5%HO溶液(3mL)を加え室温で2時間攪拌した後、樹脂をろ過して除き、ろ液を減圧下に濃縮した。これをHPLC(VyDAC column C4(Imtakt Inc.)、3μm、4.5×250mm 展開溶媒A:0.09%TFA水溶液 B:0.1%TFA アセトニトリル:水=90:10 グラジエントA:B=95:5→50:50(アセトニトリル グラジエント:4.5%→45%)15分 流速1.0ml/min)にて精製した後、凍結乾燥を行い、Cys(Thz)−Gly−Ser−Asp−Asn−Lys−Thr−Tyr−Gly−Asn−Lys−Cys−Asn−Pheの保護基を有する14残基ペプチド(配列番号16)を得た。
ESI−MS:Calcd for C64951923:[M+2H]2+,782.34,Found.782.2
[基質ペプチドの検量線の作成]
合成した14残基ペプチド(配列番号16)1.5mgを、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、BSA(0.1mg/mL)含有)1mLに溶解し、この溶液を希釈して0.6mM、0.4mM、0.2mM、0.1mMの基質濃度の溶液を調製した。各濃度の溶液のOD280をそれぞれ3回ずつ測定し、平均値化したものを表2および図35に示した。
[基質ペプチドのMichaelis−Menten plotの導出]
合成した14残基ペプチド(配列番号16)3.1mgを、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、BSA(0.1mg/mL)含有)1mLに溶解し、2mMの溶液を調製した。これを希釈して1.6mM、1.2mM、0.8mM、0.4mM、0.2mM、0.1mM、0.05mMの濃度の基質溶液を調製した。またキモトリプシン(1mg)を0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、BSA(0.1mg/mL)含有)1mLに溶解し、この溶液を10倍希釈し、さらにその溶液を10倍希釈することを繰り返して0.1μg/mLになるよう調製した。氷上で十分に冷やした各濃度の基質溶液を50μL、酵素溶液を50μLずつ同じエッペンチューブに移し、37℃で30分インキュベートした。30分後、1Nの塩酸を10μL加えることで反応を停止させた。反応液20μLを、緩衝液80μLと混合させ計100μLとし、HPLCによる測定に用いた。反応生成物のHPLC上のピーク面積から単位時間当たりの分解率(単位時間当たりの反応速度)を計算した(図36)。表3に各基質濃度に対する反応速度を示す。
[基質ペプチドのLineweaver−Burk plotの導出]
合成した14残基ペプチド(配列番号16)1.5mgを、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、BSA(0.1mg/mL)含有)1mLに溶解し、1mMの溶液を調製した。これを希釈して1mM、500μM、333μM、250μM、200μMの濃度の基質溶液を調製した。またキモトリプシン(1mg)を0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0、BSA(0.1mg/mL)含有)1mLに溶解し、この溶液を10倍希釈し、さらにその溶液を10倍希釈することを繰り返して0.1μg/mLになるよう調製した。氷上で十分に冷やした各濃度の基質溶液を50μL、酵素溶液を50μlずつ同じエッペンチューブに移し、37℃で30分インキュベートした。30分後、1Nの塩酸を10μL加えることで反応を停止させた。反応液20μLを、バッファー80μLと混合させ計100μLとし、HPLCによる測定に用いた。反応生成物のHPLC上のピーク面積から単位時間当たりの分解率(単位時間当たりの反応速度)を計算した(図37)。表4に各基質濃度の逆数に対する反応速度の逆数を示す。
本発明の製造方法によって、アミノ酸配列、糖鎖構造に加えて、高次構造も均一な糖タンパク質を得ることが可能となった。本発明の製造方法により得られる糖タンパク質は、高次構造が均一であることから、血中半減期や細胞内での輸送にばらつきがないだけでなく、所定の生理活性を均一に有する。また、本発明によれば、糖タンパク質の混合物が所望の活性を有するように制御することが可能となる。したがって、本発明の製造方法は、特に糖タンパク質を利用した医薬品の開発に利用可能である。
配列番号1は、フラグメント1の、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号2は、フラグメント1の、ベンジルチオエステル基を有するアミノ酸配列である。
配列番号3は、フラグメント2の、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号4は、フラグメント2の、糖鎖が付加された、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号5は、フラグメント2の、糖鎖が付加された、ベンジルチオエステル基及び保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号6は、フラグメント3の、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号7は、フラグメント3のアミノ酸配列である。
配列番号8は、糖鎖が付加された、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号9は、糖鎖が付加された、アミノ酸配列である。
配列番号10は、糖鎖付加OMSVP3の、糖鎖が付加された、アミノ酸配列である。
配列番号11は、フラグメント2’の、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号12は、フラグメント2’の、ベンジルチオエステル基及び保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号13は、保護基を有するアミノ酸配列である。
配列番号14は、アミノ酸配列である。
配列番号15は、糖鎖付加されていないOMSVP3の、アミノ酸配列である。
配列番号16は、キモトリプシンの基質である、保護基を有するアミノ酸配列である。

Claims (5)

  1. アミノ酸配列、糖鎖構造、高次構造、及び生理活性が均一な糖タンパク質を製造する方法であって、以下の工程(a)〜(c):
    (a)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせて、複数種類の異なる高次構造を有する、フォールディングされた糖タンパク質を生成させる工程;
    (b)前記フォールディングにより生じた前記複数種類の異なる高次構造を有する糖タンパク質を、カラムクロマトグラフィーによって複数の画分に分画する工程;及び
    (c)前記複数の画分のうち、前記カラムクロマトグラフィーでの相対吸光度におけるピークの違いに基づいて、所定の活性を有する1つの画分を回収することで、アミノ酸配列、糖鎖構造、高次構造、及び生理活性が均一な、精製された糖タンパク質を得る工程
    を含む、
    方法であって、
    前記アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、少なくともその一部が以下の工程(1)〜(6):
    (1)水酸基を有する樹脂(レジン)の水酸基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをエステル化反応させる工程;
    (2)前記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;
    (3)前記遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをアミド化反応させる工程;
    (4)前記工程(3)の後、脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;及び
    (5)前記工程(3)及び(4)の工程を1回以上繰り返す工程;および
    (6)前記工程(1)で形成されたエステル結合を酸で切断する工程
    を含む方法によって製造される、
    方法
  2. 前記工程(c)の後に、
    (d)前記工程(c)で回収されなかった画分に含まれる糖タンパク質をアンフォールディングさせる工程;
    (e)前記アンフォールディングさせた糖タンパク質を再度フォールディングさせる工程;
    (f)前記再度フォールディングさせた糖タンパク質をカラムクロマトグラフィーによって分画し、前記所定の活性を有する画分を回収する工程;及び
    (g)必要に応じて(d)から(f)を繰り返す工程
    をさらに含む、
    請求項1に記載の方法。
  3. 所定の生理活性を有する、アミノ酸配列、糖鎖構造、高次構造、及び生理活性が均一な糖タンパク質をスクリーニングする方法であって、以下の工程(i)〜(iii):
    (i)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせて、複数種類の異なる高次構造を有する、フォールディングされた糖タンパク質を生成させる工程;
    (ii)前記フォールディングにより生じた前記複数種類の異なる高次構造を有する糖タンパク質を、カラムクロマトグラフィーによって複数の画分に分画する工程;及び
    (iii)前記複数の画分のうち、前記カラムクロマトグラフィーでの相対吸光度におけるピークの違いに基づいて各画分の活性を測定し、所定の活性を有するか否か判定して、アミノ酸配列、糖鎖構造、高次構造、及び生理活性が均一な、精製された糖タンパク質を得る工程
    を含む、
    方法であって、
    前記アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、少なくともその一部が以下の工程(1)〜(6):
    (1)水酸基を有する樹脂(レジン)の水酸基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをエステル化反応させる工程;
    (2)前記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;
    (3)前記遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをアミド化反応させる工程;
    (4)前記工程(3)の後、脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;及び
    (5)前記工程(3)及び(4)の工程を1回以上繰り返す工程;および
    (6)前記工程(1)で形成されたエステル結合を酸で切断する工程
    を含む方法によって製造される、
    方法
  4. 所望の生理活性を有する糖タンパク質混合物を得る方法であって、以下の工程(A)〜(D):
    (A)アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質をフォールディングさせて、複数種類の異なる高次構造を有する、フォールディングされた糖タンパク質を生成させる工程;
    (B)前記フォールディングにより生じた前記複数種類の異なる高次構造を有する糖タンパク質を、カラムクロマトグラフィーによって複数の画分に分画する工程;
    (C)前記複数の画分のうち、前記カラムクロマトグラフィーでの相対吸光度におけるピークの違いに基づいて、各画分の活性を測定し、所定の活性を有するか否か判定して、アミノ酸配列、糖鎖構造、高次構造、及び生理活性が均一な、精製された糖タンパク質を含む画分を複数得る工程;及び
    (D)工程(C)で得られた複数の画分のうち、所望の活性を得るための各画分の混合比率を求め、当該比率に従って各画分を混合する工程
    を含む、
    方法であって、
    前記アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質は、少なくともその一部が以下の工程(1)〜(6):
    (1)水酸基を有する樹脂(レジン)の水酸基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをエステル化反応させる工程;
    (2)前記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;
    (3)前記遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基、又は脂溶性保護基でアミノ基が保護された糖鎖付加したアミノ酸のカルボキシル基とをアミド化反応させる工程;
    (4)前記工程(3)の後、脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる工程;及び
    (5)前記工程(3)及び(4)の工程を1回以上繰り返す工程;および
    (6)前記工程(1)で形成されたエステル結合を酸で切断する工程
    を含む方法によって製造される、
    方法
  5. 前記工程(1)〜(6)によって前記アミノ酸配列及び糖鎖が均一な糖タンパク質の一部が製造され、当該糖タンパク質が、さらに、以下の工程(7):
    (7)前記工程(6)で得られた糖タンパク質の一部と、他のペプチド又は糖ペプチドとを、ライゲーション法によって連結する工程
    を含む方法によって製造される、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
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