以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリ乳酸フィルムの層構成>
まず、本発明のポリ乳酸フィルムを使用する際の層構成を図面を以って説明する。図1、2は、本発明のポリ乳酸フィルムの一態様を示す模式図である。
図1で11はポリ乳酸フィルムであり、12、13は放射線硬化型組成物が硬化されてなる層を示す。
図2で21はポリ乳酸フィルムであり、22は放射線硬化型組成物が硬化されてなる層を示す。
図3は本発明のポリ乳酸フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した場合の偏光板の層構成を示した模式図であり、31、35は保護フィルム、32、34は放射線硬化型組成物を硬化させた接着層、33は偏光層、36は偏光板である。
<ポリ乳酸フィルムの特性および機能>
次に本発明のポリ乳酸フィルムの特性および機能について説明する。
偏光板用の保護フィルムは光学フィルムの一種であるが、ここでは偏光板用の保護フィルムにおける必要特性について詳述し、別途光学フィルムについての必要特性も随時述べる。光学フィルムは液晶表示装置における保護フィルム、位相差フィルム、反射フィルム、光拡散フィルム等や、タッチパネルの基板フィルム等に用いられている。
保護フィルムは偏光膜の光学物性、機械物性等の不足を補う等の目的で設置される。
保護フィルムは偏光膜を中心に液晶セル側に設置される場合と、その外側すなわち液晶表示装置の最表面側に設置される場合がある。それら2つの場合により必要な光学特性は異なる。
保護フィルムが偏光膜を中心に液晶セル側に設置される場合には、位相差板機能を有する場合と、有さない場合とがある。
保護フィルムに位相差機能を有する場合には、保護フィルムを延伸等により分子配向させて複屈折を発現せしめた上で位相差板としてもよい。また、光学的に略等方な保護フィルム上に液晶等を塗布して位相差を発現させたものを用いてもよい。さらに保護フィルムの位相差特性とその上の液晶等塗布膜の両方に位相差を持たせ、それらの両方の組み合わせにより目的の位相差値を発現させてもよい。位相差機能を有する保護フィルム上の塗布膜としては、デイスコチック型の放射線硬化型液晶を塗布、配向させた後に放射線により硬化させたものや、高分子液晶やポリイミドを公知の方法で保護フィルム上に形成させたものを用いることができる。
液晶のモードによって必要な位相差特性が異なるが、公知の知見から最適な位相差値が決定される。液晶モードとしては垂直配向モード、インプレインスイッチングモード、ツイストネマチックモード、スーパーツイストネマチックモード、ベンドモード等公知のものを用いることができる。
位相差機能を有さない保護フィルムについては、光学等方であることが好ましい。保護フィルムの面内の位相差(Re)と厚み方向の位相差(Rth)は、それぞれ下記式(4)および(5)で定義される。
Re =(nx−ny)×d (4)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d (5)
nxは、フィルム面内の最大の屈折率を表す。nyは面内においてnx方向と直交方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは厚み(nm)を表す。Reは、好ましくは10nm以下、より好ましくは7nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。
Rthは50nm以下が好ましく、40nm以下がさらに好ましく、30nm以下が最も好ましい。Reが10nmより大きい、またはRthが50nmより大きい場合には、保護フィルムは光学等方部材としての機能を果たすことが困難な場合があり、液晶表示装置の設計を困難にすることがある。なお、本発明における位相差の測定は、特に断りが無い場合には波長550nmの光で測定したものを用いるものとする。
保護フィルムが偏光膜を中心に液晶セル側に設置される場合には、ヘイズが1%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.7%以下であり、最も好ましくは0.5%以下である。ヘイズが1%以上では偏光解消等により偏光板の偏光性能、特に偏光度が低下し、液晶表示装置のコントラストを低下させる場合がある。また、保護フィルム材料の光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10−12/Pa未満、より好ましくは8×10−12/Pa未満、さらに好ましくは5×10−12/Pa未満、特に好ましくは3×10−12/Pa未満である。光弾性係数が10×10−12/Pa以上においては、応力により位相差変化が見られ、その結果、液晶表示装置の透過率ムラとなって表示品位を劣化させる場合がある。
保護フィルムが偏光膜に対して液晶セルの外側に設置される場合には、保護フィルムが液晶表示装置の画像を制御するのに用いられる偏光状態制御に関与していないため、画像表示のための位相差機能は不要である。しかし、位相差が大きいと干渉を生じる場合があり、位相差は小さいほうが好ましい。Reが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下である。ヘイズは2%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1%以下である。
いずれの位置に配置されても保護フィルムの厚みとしては、好ましくは5〜300μmであり、取扱い時のシワになり易さ(シワ防止)の観点からは厚い方が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、30μm以上が特に好ましい。
また透明性の観点からは薄い方が有利であり、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましい。また、可視光で透明であることが好ましい。
いずれの位置に配置されても保護フィルムは可視光において吸収を生じないものが好ましい。一方、偏光膜や液晶層の保護のため紫外線は吸収することが好ましい。特に保護フィルムが偏光膜に対して液晶セルの外側に設置される場合には、紫外線吸収剤が添加されていることが好ましいが、液晶セルの内側に設置される場合には紫外線吸収剤は無くてもよい。紫外線吸収剤としては後述の公知のものが用いられる。具体的には、保護フィルムの波長380nmでの光線透過率が20%以下かつ波長375nmでの光線透過率が1%以下、波長500nmでの光線透過率が80%以上であることが好ましい。
<ポリ乳酸フィルムの材料>
本発明のポリ乳酸フィルムはポリ乳酸を含む材料からなる。ポリ乳酸は、ポリD−乳酸成分及び/またはポリL−乳酸成分からなる。フィルム中のポリ乳酸成分は40重量%以上であることが必要であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70%重量以上、最も好ましくは75重量%以上である。ポリ乳酸が40重量%未満では、ポリ乳酸の結晶化が生じにくくなり、耐熱性に問題が生じる場合等がある。ポリ乳酸以外の樹脂を含有させる場合には、フィルム成形性の観点から熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂としては、たとえばポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族のポリケトン樹脂、フッソ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。特に好ましくは、ポリ乳酸との相溶性が良く、また屈折率が近いという観点からポリメタクリル酸メチルである。ポリ乳酸フィルムにおけるポリメタクリル酸メチルの含有量としては好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。ポリメタクリル酸メチルが50重量%より多い場合においてはポリ乳酸を結晶化させることが困難であり、耐熱性等に問題が生じる場合がある。
また、ポリ乳酸として特に好ましいのは、ステレオコンプレックスポリ乳酸である。ステレオコンプレックスポリ乳酸とは、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分よりなり、ステレオコンプレックス結晶を有するものであって、次式(i)で表されるステレオ結晶化度が90%以上であることが好ましい。
{ステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃
未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(ΔHmh)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHmsc)より次式(i)により求めた。
(S)=〔ΔHmsc/(ΔHmh+ΔHmsc)〕×100 (i) }
通常のポリ乳酸(ポリL乳酸単独、あるいはポリD乳酸単独)に比べて、ステレオコンプレックス結晶を有するポリ乳酸は透明性、耐熱性が高いことが知られており、フィルムとしてはより好ましい。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は好ましくは93%から100%、より好ましくは95%から100%の範囲が選択される。特に好ましくはステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%である。
さらに本発明においてポリ乳酸は、結晶性を有していることが好ましく、広角X線回折(XRD)測定による回折ピークの強度比によって、式(ii)で定義されるステレオコンプレックス結晶化率(Sc)が50%以上を有することがより好ましい。好ましくは50から100%、さらに好ましくは70から100%、とりわけ好ましくは90から100%の範囲が選択される。
すなわちポリ乳酸が上記Scを有することにより、フィルムの透明性、耐熱性、耐湿熱性をより好適に満たすことができる。特に透明性に関しては、ステレオコンプレックス結晶を有しないポリ乳酸に比べて、著しくヘイズを低減することが可能であり、フィルムの材料としてはより好適である。さらに、後述の表面処理を実施してもこの結晶構造のためにバルク全体の脆化を抑制し、表面にだけ好ましい官能基を発現させやすいといった特徴も有する。
Sc(%)=〔ΣISCi/(ΣISCi+IHM)〕×100 (ii)
[ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3、ISCi(i=1から3)はそれぞれ2θ=12.0°, 20.7°, 24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMは2θ=16.5°付近に現れるホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMを表す。]
さらに同様の観点より、本発明において、ポリ乳酸ホモ結晶の結晶化率、とりわけXRD測定による結晶化率は少なくとも5%、好ましくは5から60%、より好ましくは7から50%、さらに好ましくは10から45%の範囲が選択される。
さらにポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶の融点は190から250℃、より好ましくは200から230℃の範囲が好適に選択され、DSC測定による結晶融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは20から80J/g、より好ましくは30から80J/gの範囲が選択される。
ポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶の融点が190℃未満であると、ステレオコンプレックス結晶形成の意義が小さなものとなってしまう。さらに250℃を超える場合、ポリ乳酸フィルムを製膜するとき、250℃以上の高温において製膜することが必要となり、樹脂の熱分解を抑制することが困難となる場合があるからである。さらに結晶融解エンタルピーの値についても同様の議論があてはまる。
かかるステレオコンプレックス結晶化度、ステレオコンプレックス結晶化率、さらに上述の各種結晶性のパラメーターを好適に満たすために、ポリ乳酸において、ポリD−乳酸成分とポリL−乳酸成分の重量比は90/10から10/90であることが好ましい。
より好ましくは80/20から20/80、さらに好ましくは30/70から70/30、とりわけ好ましくは40/60から60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましく選択される。
ポリ乳酸には、耐湿熱性改善剤として特定官能基を有する化合物を含有させることが好ましい。耐湿熱性改善剤としては、カルボキシル末端基封鎖剤として主として機能するものが好ましく、カルボジイミド化合物、芳香族カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物を例示することができるが、効果の点で好ましくはカルボジイミド化合物である。配合量はポリ乳酸100重量部あたり、好ましくは0.001〜5重量部の範囲である。0.001重量部より少ないとカルボキシル基封止剤としてその機能を発揮することが不十分である。またこの範囲を超えて多量に適用すると剤自身の分解等の好ましくない副反応により樹脂色相の悪化あるいは可塑化がおこる懸念が大きくなり好ましくない。
カルボジイミド化合物はカルボジイミド官能基を分子内に少なくとも一個保有する化合物であり、例えば以下の化合物が例示される。特にカルボジイミド化合物は後述する下記式(2)の機構で末端二重結合と、末端カルボキシル基が発生しても、末端カルボキシル基とカルボジイミド基が反応することにより末端封鎖および高分子鎖延長が可能となり、脆化を防ぎつつ、ポリ乳酸フィルムの表面接着性を改善することが出来る。
カルボジイミド化合物として、具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジイソブイチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、オクチルデシルカルボジイミド、ジ‐tert‐ブチルカルボジイミド、ジベンジルカルボジイミド、N‐オクタデシル‐N’‐フェニルカルボジイミド、N‐ベンジル‐N’‐フェニルカルボジイミド、N‐ベンジル‐N’‐トリルカルボジイミド、N‐トリル‐N’‐シクロヘキシルカルボシイミド、p‐フェニレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、エチレンビス(フェニルカルボジイミド)、エチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、などのモノまたはポリカルボジイミド化合物が例示される。
芳香族カルボジイミド化合物としては例えば以下の化合物が例示される。
例えばジフェニルカルボジイミド、ジ‐o‐トルイルカルボジイミド、ジ‐p‐トルイルカルボジイミド、ビス(p‐アミノフェニル)カルボジイミド、ビス(p‐クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o‐クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o‐エチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p‐エチルフェニル)カルボジイミドビス(o‐イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(p‐イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(o‐イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p‐イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,5‐ジクロロフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6‐ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6‐ジエチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2‐エチル‐6‐イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2‐ブチル‐6‐イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6‐ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6‐トリメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6‐トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6‐トリブチルフェニル)カルボジイミド、ジβナフチルカルボシイミド、N‐トリル‐N’‐フェニルカルボシイミド、p−フェニレンビス(o‐トルイルカルボジイミド)、p‐フェニレンンビス(p‐クロロフェニルカルボジイミド)、2,6,2’,6’‐テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドなどのモノまたはポリカルボジイミド化合物が例示される。
またこれらのうち工業的に入手可能なジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドも好適に使用できる。市販のポリカルボジイミド化合物は、合成する必要もなく利用できる利点を有する。かかる市販のポリカルボジイミド化合物として、例えば日清紡績(株)より「カルボジライト」の商品名で販売されている「カルボジライト」LA‐1、あるいはHMV‐8CA、水性タイプ「カルボジライト」V−02,同V−02−L2、同V−04,同E−01,同E−02,同E−03A、同E−04、ラインケミージャパン(株)より「スタバクゾール」の商品名で販売されている、「スタバクゾール」I、「スタバクゾール」P、「スタバクゾール」P−100などが好適に例示される。
なお、カルボジイミド化合物として、特に好ましくは環状構造を有するカルボジイミドであり、樹脂の溶融時等にイソシアネート等の有害ガスを放出しないので好適に用いられる。さらに、環状カルボジイミドは鎖状カルボジイミドに比べて、以下の点で有利である。すわなち、環状カルボジイミドとポリ乳酸のカルボキシル末端基とが反応した場合に、高分子鎖末端に取り込まれた上に、その末端がイソシアネート基となって、低分子のイソシアネート化合物が遊離せず、さらにこのイソシアネート基により高分子鎖の延長が可能となるからである。偏光膜とポリ乳酸フィルムとの接着性改善のために後述する表面処理を実施する場合があるが、この化合物の存在によりバルク全体の脆化を一層抑制することが可能である。
ここで、環状構造を有するカルボジイミドとは、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている構造を有するものである。化合物中に複数の環状構造を有する場合には、一つの環中には、1個のカルボジイミド基のみを有する。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20である。
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20の範囲が選択される。
環状構造は、下記式(10)で表される構造であることが好ましい。
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(10−1)、(10−2)または(10−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
式中、Ar
1およびAr
2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
R1およびR2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
X1およびX2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
式(10−1)、(10−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX1、あるいはX2が、他のX1、あるいはX2と異なっていてもよい。
X3は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
また、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3はヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3は全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3の内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
本発明で用いる環状カルボジイミドとして、下記式(14)で表される化合物がより好ましい。
式中、Qcは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。Z1およびZ2は、環状構造を担持する担体である。Z1およびZ2は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(14)の化合物において、Qcは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。Qcは、下記式(14−1)、(14−2)または(14−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
Arc1、Arc2、Rc1、Rc2、Xc1、Xc2、Xc3、sおよびkは、各々式(10−1)〜(10−3)の、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2、X3、sおよびkと同じである。但し、Arc1、Arc2、Rc1、Rc2、Xc1、Xc2およびXc3は、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
Z1およびZ2は各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Z1およびZ2は結合部であり、複数の環状構造がZ1およびZ2を介して結合し、式(14)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(14)としては、下記化合物を挙げることができる。
エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリジジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、グリシジルアミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。
グリシジルエーテル化合物の例としては例えば、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングルコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、その他ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを挙げることができ、なかでもビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。グリシジルエステル化合物の例としては例えば安息香酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、パーサティック酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、なかでも安息香酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
グリシジルアミン化合物の例としては例えば、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、などが挙げられる。
グリシジルイミド、グリシジルアミド化合物の例としては例えば、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジル−1,2,3,4−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジルステアリルアミドなどが挙げられ、なかでもN−グリシジルフタルイミドが好ましい。
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミドなどが挙げられる。さらに上記化合物をモノマー単位として含むポリエポキシ化合物とりわけエポキシ基をペンダント基として側鎖に保有するポリエポキシ化合物なども好適な剤として挙げられる。
その他のエポキシ化合物としてエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。
オキサゾリン化合物としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ステアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−ベンジルオキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。
本発明におけるポリ乳酸は、ポリD−乳酸成分は、D−乳酸単位よりなり、好ましくは90から100モル%のD−乳酸単位および0から10モル%のD−乳酸以外の共重合単位からなる。さらにポリL−乳酸成分は、L−乳酸単位よりなり、好ましくは90から100モル%のL−乳酸単位および0から10モル%のL−乳酸以外の共重合単位からなる。
上記において、主たる繰り返し単位であるD−,L−乳酸単位は、より好ましくは95から100モル%、さらに好ましくは98から100モル%の範囲が選択される。
主たる繰り返し単位以外の共重合単位は好ましくは0から10モル%、より好ましくは0から5モル%、さらに好ましくは0から2モル%の範囲が選択される。
共重合単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
また本発明におけるポリL‐乳酸およびポリD‐乳酸成分の重量平均分子量は、フィルムの機械物性及び成形性を両立させるため、好ましくは10万から50万、より好ましくは11万から35万、さらに好ましくは12から25万の範囲が選択される。
ポリL‐乳酸およびポリD‐乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。
例えば、L‐またはD‐ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製
造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧化、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用撹拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。
固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で固体状態で重合される。
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。
なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。
なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
触媒の使用量は、ラクチド1Kg当たり0.42×10−4から100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4から42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4から16.8×10−4(モル)モル使用される。
ポリ乳酸重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。
かかる失活剤としては例えばイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド及びジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、式 xH2O・yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エスエテル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
触媒失活能から、式xH2O・yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルリンオキソ酸あるいはこれらの酸性エステル類、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体及び上記のメタリン酸系化合物が好適に使用される。
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3から200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
本発明で使用するポリ乳酸は、含有ラクチド量が1から5000ppmのものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、樹脂を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。
溶融開環重合された直後のポリL−および/またはポリD−乳酸は通常1から5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。すなわち、実用的な溶融安定性が達成される1から1000ppmに設定するのが合理的である。さらに好ましくは1から700ppm、より好ましくは2から500ppm、特に好ましくは5から100ppmの範囲が選択される。
ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明のポリ乳酸フィルムの溶融製膜時の樹脂の安定性を向上せしめ、フィルムの製造を効率よく実施できる利点及びフィルムの耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
本発明に使用されるポリ乳酸の重量平均分子量は、成形加工性と得られる成形品の機械的、熱的物性との関係を考察して選択される。即ち、組成物の強度、伸度、耐熱性等の機械的、熱的物性を発揮させるためには重量平均分子量は好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは13万以上である。
しかし、重量平均分子量の上昇とともに、ポリ乳酸の溶融粘度は指数関数的に上昇し、射出成形等の溶融成形を行うとき、樹脂粘度を成形可能範囲にするため、成形温度をポリ乳酸の耐熱温度以上に高く設定しなければならない場合が発生する。
具体的には、ポリ乳酸は、300℃を超える温度で成形を行うと樹脂の熱分解のためフィルム品が着色し、商品としての価値が低いものとなってしまう可能性が高い。
したがってポリ乳酸組成物の重量平均分子量は、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、さらに好ましくは30万以下である。従ってポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは8万から50万、より好ましくは10万から40万、さらに好ましくは13万から30万である。
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を分子量分散(Mw/Mn)という。分子量分散が大きいことは、平均分子量に比較し、大きな分子や小さな分子の割合が多いことを意味する。
即ち、例えば重量平均分子量が25万程度で、分子量分散の3以上のポリ乳酸は、分子量が25万より大きい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、溶融粘度が大きくなり、上記の意味で成形上好ましくない。また8万程度の比較的小さい重量平均分子量で分子量分散の大きなポリ乳酸組成物では、分子量が8万より小さい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、成形品の機械的物性の耐久性が小さくなり、使用上好ましくない。かかる観点より分子量分散の範囲は、好ましくは1.5から2.4、より好ましくは1.6から2.4、さらに好ましくは1.6から2.3の範囲である。
本発明のポリ乳酸は前述したようにポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とを重量比で10/90から90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練接触させることにより得ることができる。
このポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分との接触温度はポリ乳酸の溶融時の安定性及びステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より220から290℃、好ましくは220から280℃、さらに好ましくは225から275℃の範囲が選択される。
溶融混練方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融撹拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、住友重機械工業(株)製「バイボラック」、三菱重工業(株)製N−SCR,(株)日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式撹拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型撹拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
本発明で用いるポリ乳酸には、本発明の主旨に反しない範囲において、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の形成を安定的且つ高度に進めるために特定の添加物を配合する手法が好ましく適用される。
すなわち、例えば、ステレオコンプレックス結晶化促進剤として下記式(22)または(23)で表されるリン酸金属塩を添加する手法が挙げられる。
式(22)中、R
11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R
12、R
13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、M
1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはM
1がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
式(23)中R
14、R
15およびR
16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、M
2はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはM
2がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
式(22)または(23)で表されるリン酸金属塩のM1、M2は、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
これらのリン酸金属塩は、(株)ADEKA製の商品名、「アデカスタブ」NA−11、NA−71等が好適な剤として例示される。ポリ乳酸に対して、リン酸金属塩は0.001から2wt%、好ましくは0.005から1wt%、より好ましくは0.01から0.5wt%さらに好ましくは0.02から0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎるとステレオコンプレックス結晶融点を低下させるので好ましくない。
さらに所望により、リン酸金属塩の作用を強化するため、以下記載する公知の結晶化核剤を併用することができる。なかでも珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトが好ましくは選択される。
結晶化核剤の使用量はポリ乳酸に対し0.05から5wt%、より好ましくは0.06から2wt%、さらに好ましくは0.06から1wt%の範囲が選択される。
また、ステレオコンプレックス結晶化助剤[(エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基及びカルボジイミド基)(以下特定官能基と略称することがある)の群より選択される官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物]の添加する手法が挙げられる。
本発明においてステレオコンプレックス結晶化助剤とは、特定官能基がポリ乳酸の分子末端と反応して、部分的にポリL−乳酸ユニットとポリD−乳酸ユニットとを連結し、ステレオコンプレックス結晶形成を促進させているものと本発明者らが推察する剤である。
ステレオコンプレックス結晶化助剤としては以下に記載する従来ポリエステルのカルボキシル末端基封鎖剤として公知の剤を好適に適用することができる。なかでも、ステレオコンプレックス結晶形成促進効果よりカルボジイミド化合物が好適に選択される。
しかしながらステレオコンプレックス結晶化助剤とりわけ、窒素を含有するステレオコンプレックス結晶化助剤は、ステレオコンプレックス結晶形成時、剤の熱分解のため悪臭による作業環境悪化、ポリ乳酸の色調悪化を引き起こす危険性が大きいため、使用しないことが好ましく、使用する場合には、ステレオコンプレックス結晶の高度形成に重点を置く場合に限定し、可能な限り少量に抑制して使用することが好ましい。
ステレオコンプレックス結晶化助剤の使用量は上記と同じ基準において1wt%以下、好ましくは、0から0.5wt%、より好ましくは0から0.3wt%、さらに好ましくは0から0.1wt%の範囲が選択される。
すなわち上記ステレオ化促進剤の手法は単独に適用することが好ましく、ステレオコンプレックス結晶形成により重点をおく場合にステレオコンプレックス結晶化助剤の手法と組み合わせて適用することが好ましく選択される。
本発明においては、ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度は0.01から10(当量/106g)、{以下(当量/106g)を(当量/ton)と略称することがある。}が好ましい。より好ましくは0.02から2(当量/ton)、さらに好ましくは0.02から1(当量/ton)の範囲が好適に選択される。
カルボキシル末端基濃度がこの範囲内にある時には、溶融安定性、湿熱安定性を良好なものとすることができる。ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度を10(当量/ton)以下にするには、ポリエステル組成物で従来公知のカルボキシル末端基濃度の低減方法を好適に適用することができ、例えばアルコール、アミンによってエステルまたはアミド化することもできる。
本発明に使用されるポリ乳酸フィルムには、ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂、安定剤、紫外線吸収剤、結晶化促進剤、充填剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤および耐衝撃性安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することができる。本発明に用いられるポリ乳酸は、安定剤を含有することが好ましい。安定剤としては通常の熱可塑性樹脂の安定剤に使用されるものを用いることができる。例えば酸化防止剤、光安定剤等を挙げることができる。これらの剤を配合することで機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れたポリ乳酸フィルムを得ることができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等を挙げることができる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオ−ル−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物として、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス[3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ジアミン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4―トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等を挙げることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
ホスファイト系化合物としては、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものが好ましく、具体的には、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト、ビス(2,6―ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)等が挙げられる。
なかでもトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,6―ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト等が好ましく使用できる。
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
光安定剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、環状イミノエステル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来る。光安定剤としては、紫外線吸収剤と光酸化で生成するラジカルを捕捉するものの組み合わせにて用いても良い。
紫外線吸収剤としては、環状イミノエステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が可視光における吸収を最小化できる点で好ましい。また、偏光膜や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ液晶表示性能の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)328(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用出来る。
環状イミノエステル系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。環状イミノエステルは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
当該環状イミノエステルは、WO03/035735号パンフレットに開示された各種の方法によって製造することができる。すなわち原料として無水イサト酸を利用する方法(殊に再結晶化された無水イサト酸を利用する方法)、並びにアントラニル酸を利用する方法のいずれも利用可能である。これらの酸化合物とカルボン酸クロライド化合物とを反応させて、環状イミノエステル化合物を得ることができる。これらは特公昭62−31027号公報に開示された如く、生成後に再結晶化処理を行ってもよい。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)、およびCYTEC社からCYASORB UV−3638(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ハイドロキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン等が挙げられる。
本発明におけるポリ乳酸フィルムには、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができる。結晶化促進剤を含有することで、ステレオコンプレックス結晶促進剤の作用を一層増強することができ、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
本発明で使用する結晶化促進剤は一般に結晶性樹脂の結晶核剤として用いられるものを用いることができ、無機系の結晶核剤および有機系の結晶核剤のいずれをも使用することができる。
無機系の結晶核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。
これらの無機系の結晶核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01から0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
有機系の結晶核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明のポリ乳酸フィルムで使用する結晶核剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部当たり、好ましくは0.01から30重量部、より好ましくは0.05から20重量部である。
本発明で使用される帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
本発明のポリ乳酸フィルムにおいて帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部に対し、好ましくは0.05から5重量部、より好ましくは0.1から5重量部である。
本発明で使用する可塑剤としては一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤、等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸または単官能アルコールで末端封止されていても良い。
グリセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
多価カルボン酸系可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸イソデシル、アジピン酸−n−デシル−n−オクチル等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸エステルが挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド.プロピレンオキシド)ブロックおよびまたはランダム共重合体、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物等の末端封鎖剤化合物等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
その他の可塑剤の具体的な例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(2−エチルブチレート)等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類等が挙げられる。
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレン系可塑剤から選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸フィルム100重量部当たり、好ましくは0.01から30重量部、より好ましくは0.05から20重量部、さらに好ましくは0.1から10重量部である。本発明においては結晶核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
<ポリ乳酸フィルムの製膜、延伸方法>
前述の方法等で得られたポリ乳酸を含む樹脂組成物を製膜するには、押し出し成形、キャスト成形等の公知の成形手法を用いることができる。例えば、Tダイ、Iダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、製膜することができる。
押し出し成形により未延伸フィルムを得る場合は、事前にポリ乳酸および他の成分を溶融混練した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混練を経て成形することもできる。未延伸フィルムは、溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出しついで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造することができる。このとき溶融フィルムにはスルホン酸四級ホスホニウム塩等の静電密着剤を配合し、電極よりフィルム溶融面に非接触的に電荷を容易に印加し、それによってフィルムを、回転する冷却ドラムに密着させることにより表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得てもよい。
その際、押出し用ダイのリップ開度と冷却ドラム上に押出されたシートとの厚みとの比(ドラフト比)が2以上、80以下であることが好ましい。ドラフト比が2より小さくなると押出しダイリップからの引取り速度が遅くなり過ぎ、ダイリップからのポリマーの離れ速度が遅いため、ダイリップスジ欠点などの欠点が多くなり好ましくない場合がある。この観点からドラフト比は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、9以上が更に好ましく、15以上が特に好ましい。また、ドラフト比が80より大きくなるとポリマーがダイリップから離れる時の変形が大きすぎるためか流動が不安定となり厚み変動(厚み斑)が悪くなり、好ましくない場合がある。この観点からはドラフト比は60以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることが特に好ましい。
未延伸フィルムの延伸としては、公知の縦一軸延伸、横一軸延伸、同時二軸延伸等により行うことができる。さらに該フィルムは、結晶性を高めるため、また、熱収縮性などの抑制のため延伸後、熱固定処理を行うことが好ましい。
延伸倍率は目的の位相差値によって適宜決定される。
ポリ乳酸フィルムを光学等方性にするためには、面積延伸倍率(縦倍率×横倍率)は、好ましくは3.0倍以下、より好ましくは2.0倍以下、さらに好ましくは1.7倍以下の範囲であり、好ましくは1.02倍以上、さらに好ましくは1.05倍以上の範囲である。面積延伸倍率を3.0倍以上とした場合には、光学等方性を満足させることが困難な場合があり、また、1.02倍未満では次の工程である熱固定工程において結晶化させることが困難となる場合がある。
延伸温度は、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)から結晶化温度(Tc)の範囲が好適に選択される。さらにRe、Rthの抑制のためTgより高温で、出来るだけTcに近いがポリ乳酸の結晶化が進まない温度範囲がより好適に採用される。
Tgより低い温度では分子鎖が固定されているので、延伸操作を好適に進めることが困難であるとともに、またTc以上ではポリ乳酸の結晶化が進み、この場合も延伸工程を良好に進行させることが困難となる。
従って延伸温度としては、Tg−5℃以上がより好ましく、Tg−10℃以上がさらに好ましく、Tc+5℃以下がより好ましく、Tc+10℃以下がさらに好ましい。
フィルム物性、延伸工程安定化の両立の観点より、延伸温度は上記の温度範囲より好適に設定される。延伸温度の上限値に関しては、フィルム物性と延伸工程安定化が相反する挙動をとるので、装置特性を勘案して、適宜設定すべきである。
ポリ乳酸フィルムは、樹脂組成物の結晶化温度(Tc)からステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解開始温度(Tm*)の温度範囲で熱固定処理することが好ましい。この熱固定処理をすることにより、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶化を進め、熱収縮率を好適に低下させるとともに、動的粘弾性(DMA)測定で貯蔵弾性率E’が常温(25℃)から150℃の温度範囲において極小値を発現することなく、0.5×108Paより大きな値を保つことができる。
熱処理温度は、好ましくは90〜Tm*(℃)、より好ましくは100〜(Tm*−30)(℃)、さらに好ましくは105〜(Tm*−40)(℃)である。
熱処理は1秒から30分の範囲で実施することが好ましい。熱処理温度が高いときは相対的に短い時間で、熱固定処理温度が低いときは相対的に長い時間の熱処理を要する。
<ポリ乳酸フィルムの表面状態、表面処理および放射線硬化型組成物>
ポリ乳酸フィルムの表面に放射線硬化型組成物を硬化形成させる、または、偏光板における保護フィルム用途を考え、放射線硬化型組成物を接着剤として偏光膜との接着性を向上させるためには、ポリ乳酸フィルムを形成するポリ乳酸の下記式(1)で表される末端基のバルク平均濃度が、フィルム表面近傍における末端基濃度よりも低いことが必要である。
なお、本発明において、「表面近傍」とは、フィルム表面からフィルム中心方向に向かって2μmまでの厚みの部分を意味する。
上記式(1)の末端基があると接着性が向上する理由であるが、本発明における放射線硬化型組成物の一種である、(メタ)アクリレート類が重合する際に、(メタ)アクリレートと共有結合を形成することがプロトンNMRの測定結果から分かっており、これにより接着力が著しく向上すると思われる。
しかしながら、末端基(1)濃度の増大はフィルムの脆化をもたらすので、表面近傍のみにおいて末端構造(1)が存在することが理想である。したがって、上記式(1)で表される末端基のバルク平均濃度が、フィルム表面近傍における末端基濃度よりも低いことが必要である。
上記式(1)の末端基のバルク平均濃度とフィルム表面近傍における末端基濃度との比は1/2〜1/300であることが好ましく、より好ましくは1/3〜1/200、さらに好ましくは1/4〜1/100である。
ポリ乳酸末端基である上記式(1)の生成機構としては、いくつか考えられるが、例えば紫外線照射による下記式(2)の機構が考えられる。
上記式(1)の末端基の濃度はプロトンNMRにより定量化されるが、ポリ乳酸フィルムを形成する樹脂1トンあたりの当量、すなわち、当量/tonで定義される。ここで、バルク平均濃度とはフィルム全体における上記式(1)の末端基のバルク平均濃度であり、重クロロホルム等の適当な溶媒に溶解させてプロトンNMRにより評価される。一方、フィルム表面近傍における上記式(1)の末端基濃度であるが、フィルム表面近傍から中心方向に向かって2μmの樹脂をナイフ等で切り出し、バルク同様に適当な溶媒にて溶解させてプロトンNMRにより評価する。
上記式(1)の末端基バルク平均濃度は0〜10当量/tonであることが好ましく、より好ましくは1〜9当量/ton、さらに好ましくは1.5〜8当量/ton、最も好ましくは2.5〜7当量/tonである。末端基バルク濃度が10当量/tonを超えるとフィルム全体が脆化する場合があり好ましくない。
一方、フィルム表面近傍における末端基濃度は3〜300当量/tonであることが好ましく、より好ましくは5〜200当量/ton、さらに好ましくは7〜100当量/ton、最も好ましくは10〜60当量/tonである。接着界面近傍における末端基濃度が3当量/ton未満では十分な接着性が得られない場合があり、また、300当量/tonを超えると表面の脆化が著しくなり、同様に接着性が得られない場合がある。
主として表面にのみ上記式(1)の末端基を適当量にする方法としては、公知の紫外線オゾン処理、コロナ放電処理、常圧プラズマ処理等を用いることができる。しかしながら、単純にこれらの処理をすれば接着に最適な界面が生じるというものではなく、上記式(1)の官能基濃度を最適にするためには処理条件やポリマー組成、製法等含めて最適化する必要がある。
これらの表面処理条件の目安としては、これら表面処理実施前の水の接触角をCB、表面処理実施後の水の接触角をCAとした場合、両者の関係が下記式(6)で表されることが好ましい。
1°< CB −CA < 60° (6)
より好ましくは、
2°<CB −CA < 45° (7)
さらに好ましくは、
3°<CB −CA < 40° (8)
最も好ましくは
4°<CB −CA < 35° (9)
である。
上記式(6)の範囲よりもCB−CAが小さい場合には末端基(1)を十分に増やすことが困難で接着性確保が出来ない場合があり、また、大きい場合にはフィルムの表面または全体の脆化が進みすぎて接着性が得られない場合がある。これらの接触角は必ずしも接着性とは関連しない場合がある。接触角は公知の方法で測定し得る。
本発明のポリ乳酸フィルムを偏光板の保護フィルムとして使用する場合には、下記式(3)の放射線硬化型組成物を硬化させたものを用いることができる。
(式(3)中、nは1または2を表し、R
20は水素原子またはメチル基を表し、R
21は炭素原子数1〜10のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個または2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アルデヒド基、リン酸基で置換されている。)を表す。)
式(3)のR21には芳香環を含まないことが好ましい。R21に芳香環を含むとポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜、ポリ乳酸を主成分とする保護フィルムとの接着性が悪くなる傾向にある。R21に含まれる水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アルデヒド基、リン酸基は、ポリビニルアルコールの水酸基との間で、水素結合、酸塩基性の相互作用等の力が働くと考えられるため、接着界面間にファンデルワールス力のみが存在する場合に比べて接着力が増すものと考えられる。R21は水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アルデヒド基、リン酸基のいずれか少なくとも1つ以上存在することが必要であるが、4つ以上存在すると立体障害等でラジカル重合が十分に進行せずに接着力が低下する場合があることから、好ましくは3つ以下である。
上記式R21のアルキレン基中の炭素原子数は1〜10である必要がある。該炭素原子基が0では硬化後の組成物が硬すぎて硬化後にクラック等が発生する等の問題があり、また、該炭素原子数が11以上では組成物が柔軟すぎて十分な接着力が得られない。アルキレン基数として好ましくは、2〜6であり、より好ましくは2〜5である。
上記式(3)としてより好ましくは、下記式(33)を満足することである。
(式(33)中、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は炭素原子数2〜5のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個のメチレン基は、−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個の水素原子はそれぞれ水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、リン酸基で置換されている。)を表す。)
上記式(33)を満足することで放射線硬化型組成物においてより良好な接着性が確保できる。
上記式(3)として好ましくは、ヒドロキシメチルメタクリレート、ジヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジヒドロキシエチルメタクリレート、トリヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシプロピルメタクリレート、トリヒドロキシプロピルメタクリレート、1−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ジヒドロキシブチルメタクリレート、トリヒドロキシブチルメタクリレート、1−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシルブチルメタクリレート、カルボキシメチルメタクリレート、ジカルボキシメチルメタクリレート、カルボキシエチルメタクリレート、ジカルボキシエチルメタクリレート、トリカルボキシエチルメタクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、1−カルボキシエチルメタクリレート、カルボキシプロピルメタクリレート、ジカルボキシプロピルメタクリレート、トリカルボキシプロピルメタクリレート、1−カルボキシプロピルメタクリレート、2−カルボキシプロピルメタクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、カルボキシブチルメタクリレート、ジカルボキシブチルメタクリレート、トリカルボキシブチルメタクリレート、1−カルボキシブチルメタクリレート、2−カルボキシブチルメタクリレート、3−カルボキシブチルメタクリレート、4−カルボキシルブチルメタクリレート、メタクリロイロキシエチル−コハク酸、2−メタクリロイロキシエチル−コハク酸、メタクリロイロキシメチル−コハク酸、メタクリロイロキシブチル−コハク酸、メタクリロイロキシプロピル−コハク酸、2−メタクリロイロキシエチルアッシドホスフェート、メタクリロイロキシエチルアッシドホスフェート、メタクリロイロキシメチルアッシドホスフェート、メタクリロイロキシブチルアッシドホスフェート、メタクリロイロキシプロピルアッシドホスフェート、メタクリロイロキシメチルイソシアネート、メタクリロイロキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート、ヒドロキシメチルアクリレート、ジヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ジヒドロキシエチルアクリレート、トリヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジヒドロキシプロピルアクリレート、トリヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロキシブチルアクリレート、トリヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシルブチルアクリレート、カルボキシメチルアクリレート、ジカルボキシメチルアクリレート、カルボキシエチルアクリレート、ジカルボキシエチルアクリレート、トリカルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルアクリレート、1−カルボキシエチルアクリレート、カルボキシプロピルアクリレート、ジカルボキシプロピルアクリレート、トリカルボキシプロピルアクリレート、1−カルボキシプロピルアクリレート、2−カルボキシプロピルアクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、カルボキシブチルアクリレート、ジカルボキシブチルアクリレート、トリカルボキシブチルアクリレート、1−カルボキシブチルアクリレート、2−カルボキシブチルアクリレート、3−カルボキシブチルアクリレート、4−カルボキシルブチルアクリレート、アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、アクリロイロキシメチル−コハク酸、アクリロイロキシブチル−コハク酸、アクリロイロキシプロピル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルアッシドホスフェート、アクリロイロキシエチルアッシドホスフェート、アクリロイロキシメチルアッシドホスフェート、アクリロイロキシブチルアッシドホスフェート、アクリロイロキシプロピルアッシドホスフェート、アクリロイロキシメチルイソシアネート、アクリロイロキシエチルイソシアネート、2−アクリロイロキシエチルイソシアネート、ヒドロキシメタ(ア)クリロイロキシプロピルメタ(ア)クリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメタ(ア)クリロイロキシエチルメタ(ア)クリレート、ヒドロキシメタ(ア)クリロイロキブチルメタ(ア)クリレート、ヒドロキシメタ(ア)クリロイロキペンチルメタ(ア)クリレート等である。
重合速度および接着性の観点から上記式(3)においてはアクリレートであることがより好ましく、上記式(3)のアクリレートを用いることにより、偏光板の生産速度を向上させることができる。また、上記式(3)において、接着性の観点でnは1であることがより好ましい。
放射線硬化型組成物においては上記式(3)の含有量は60%重量以上であることが必要であるが、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。上記式(3)以外には、光開始剤、光開始助剤、架橋剤、上記式(3)以外の(メタ)アクリレート等を含有しても良い。
特に、放射線硬化型組成物を紫外線等の光により硬化させる場合に光開始剤が含有されている方が好ましい。放射線硬化型組成物100重量%に対して、光開始剤量としては0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜7重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは1〜4重量%である。
光開始剤としては、この分野で通常用いられているものを用いることができ、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、s−トリアジン系開始剤、その他の開始剤などが挙げられる。
ここで、光開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−ジエチルアミノ−2−メチルスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−ジメトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアッシドメチルエステル、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等が好適に用いられる。
ポリ乳酸フィルムの偏光膜を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものがあってもよい。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、ポリ乳酸フィルムそのものに設けることができる。
<偏光膜の製造方法>
偏光膜は、公知の方法により作製することができる。偏光膜は主としてポリビニルアルコール系樹脂から形成される。偏光膜は、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。重合度が低すぎると、所定の延伸を行う際に延伸切れしやすく、また重合度が高すぎると、延伸する際に張力が異常に必要となり、機械的に延伸できなくなるおそれがある。
偏光膜を構成するポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、任意の適切な方法(例えば樹脂を水または有機溶剤に溶解した溶液を流延製膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光膜の厚みは偏光板が用いられる液晶表示装置の目的や用途に応じて適宜設定されるが、通常、5〜80μm程度である。
偏光膜の製造方法としては、目的、使用材料および条件などに応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、通常、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥工程を含む一連の製造工程に供する方式が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む液中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件などに応じて適亘設定されえる。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理を同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、全ての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
膨潤工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水で満たした処理浴中に浸漬することより行われる。この処理により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄すると共に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止できる。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜に添加される。膨潤浴の温度は、通常20〜60℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
染色工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素等の二色性物質を含む処理浴中に浸漬することにより行われる。染色浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。二色性物質は、溶媒100重量部に対して、通常、0.1〜1重量部の割合で用いられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合は、染色浴の溶液はヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。染色効率が改善されるからである。助剤は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の割合で用いられる。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどがあげられる。染色浴の温度は、通常、20〜70℃程度であり、染色浴への浸漬時間は、通常、1〜20分間程度である。
架橋工程は、代表的には、上記染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、架橋剤を含む処理浴(以下、架橋浴と略記することがある。)中に浸漬することによって行われる。架橋剤としては任意の適切な架橋剤が採用される。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等があげられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用される。架橋浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100重量部に対して、通常、1〜10重量部の割合で用いられる。架橋剤の濃度が1重量部未満の場合は、十分な光学特性を得ることができない。架橋剤の濃度が10重量部を超える場合は、延伸時にフィルムに発生する応力が大きくなり、得られる偏光板が収縮してしまう可能性がある。架橋浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが望ましい。面内に均一な特性が得られやすいからである。助剤の濃度は好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化物の具体例は、染色工程の場合と同様である。架橋浴の温度は、通常、20〜70℃程度、好ましく40〜60℃である。架橋浴への浸漬時間は、通常、1秒間〜15分間程度、好ましくは5秒間〜10分間である。
偏光膜の延伸工程は、上記のようにいずれの段階で行ってもよい。具体的には、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよく、架橋処理の後に行ってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率は、通常、5倍以上にする。好ましくは5〜7倍、さらに好ましくは5〜6.5倍である。累積延伸倍率が5倍未満の場合には、高偏光度の偏光板を得ることが困難となる。累積延伸倍率が7倍を超える場合はポリビニルアルコール系樹脂フィルムが破断しやすくなる場合がある。延伸の具体的な方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、湿式延伸法を採用した場合には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴中で所定の倍率に延伸する。延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えばエタノール)などの溶媒中に、各種金属塩、ヨウ素、ホウ素または亜鉛の化合物を添加した溶液が好適に用いられる。
水洗工程は、代表的には、上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴中に浸漬することによって行われる。水洗工程によりポリビニルアルコール系樹脂フィルムの不要残存物を洗い流すことができる。水洗浴は、純水であってもよく、ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等)の水溶液であってもよい。ヨウ化物水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜10重量%である。ヨウ化物水溶液には硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤を添加してもよい。水洗浴の温度は好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は1秒間〜1分間である。水洗工程は1回だけでもよく、必要に応じて複数回行ってもよい。複数回実施される場合は、各処理に用いられる水洗浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜に調整される。例えば、水洗工程は上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ化カリウム水溶液(0.1〜10重量%、10〜60℃)に1秒間〜1分間程度浸漬する工程と、純水ですすぐ工程とを含む。また、水洗工程において、偏光膜の表面改質や、偏光膜の乾燥効率を上げるために、水と相溶性を有する有機溶媒(例えば、エタノ−ルなど)を適宜添加してもよい。
乾燥工程は、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用されうる。例えば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜80℃程度であり、乾燥時間は、通常、1〜10分間程度である。以上のようにして偏光膜が得られる。
本発明において用いる偏光膜は、水分率が好ましくは15重量%以下、より好ましくは0〜14重量%、さらに好ましくは1〜14重量%である。水分率が15重量%より大きいいと、得られた偏光板の寸法変化が大きくなり、高温下あるいは高温高湿下における寸法変化が大きくなってしまうという問題が生じるおそれがある。
本発明の、偏光膜の水分率は、任意の適切な方法で調整すればよい。例えば偏光膜の製工程における乾燥工程の条件を調整することにより制御する方法があげられる。
<偏光板の製造方法>
本発明のポリ乳酸フィルムを使用して偏光板を製造する方法として、具体的には本発明のポリ乳酸フィルムと偏光膜を、前記放射線硬化型組成物を介在させて貼り合わせることにより製造する。当該製造方法は、前記放射線硬化型組成物を、偏光膜の前記接着剤層を形成する面および/または保護フィルムの前記接着剤層を形成する面に塗工する工程;偏光膜と保護フィルムとを、前記放射線硬化型組成物を介して貼り合わせる工程;および前記放射線硬化型組成物を介して貼り合わせた、偏光膜と保護フィルムに対して、放射線を照射して硬化させ、接着剤層とする工程、を含むことが好ましい。偏光板の製造はバッチでもロールツウロールでも良いが、生産性を考慮するとロールツウロールが好ましい。
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどがあげられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
上記のように塗工した接着剤を介して、偏光膜とポリ乳酸フィルムとを貼り合わせる。偏光膜とポリ乳酸フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行う事ができる。
偏光膜とポリ乳酸フィルムを貼り合わせた後に、放射線を照射して、接着剤を硬化させる。放射線としては紫外線および/または電子線が好ましく用いられるが、好ましくは紫外線である。
放射線硬化型接着剤組成物の粘度としては、0.1〜5000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1000mPa・s、さらに好ましくは1〜500mPa・sである。
硬化後の接着剤の厚みとしては、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜7μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。接着剤の厚みが0.1μmより薄い場合では十分な接着強度が得られない場合があり、また、10μmより大きい場合には均質に塗布することが困難で、偏光板の外観不良が発生する場合がある。
紫外線を用いる場合の光源としては、公知の低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、発光ダイオード等が好適に用いられる。ポリ乳酸は波長250nm以下において光吸収を生じるが、この波長領域において強度の強い光を照射した場合、前記式(2)の反応機構により分解が生じる場合がある。したがって、好ましくは波長270nm以下の紫外光はカットして放射線硬化型組成物を硬化させることが好ましい。より好ましくは波長280nm以下、さらに好ましくは波長280nm以下、最も好ましくは波長300nm以下をカットすることである。紫外線のカットは公知の方法で達成可能であり、例えば紫外線光源の適切な選択や紫外線カットフィルターを用いることができる。
紫外光の強度としては、10〜1000mW/cm2が好ましく、より好ましくは20〜700mW/cm2、さらに好ましくは30〜500mW/cm2である。10mW/cm2未満では硬化させるのに時間がかかり過ぎ、生産性が良くなく、また1000mW/cm2より大きい場合には、熱により偏光膜の偏光性能が劣化する場合がある。また、積算光量としては、100〜10000mJ/cm2が好ましく、より好ましくは200〜5000mJ/cm2、さらに好ましくは300〜3000mJ/cm2である。100mJ/cm2未満では硬化不十分となる場合があり、また10000mJ/cm2より大きい場合には、熱により偏光膜の偏光性能が劣化する場合がある。紫外光の照射方向は偏光板の片側からでも、両側からでも良い。
放射線硬化型組成物を紫外線等の光により硬化させる場合において、ポリ乳酸フィルムに紫外線吸収剤を含有し、かつ、当該ポリ乳酸フィルム側から紫外線を照射する場合においては、放射線硬化型組成物の光開始剤の光開始反応波長は、ポリ乳酸フィルムの紫外線吸収波長領域よりも長波長側にあるものを適宜選択することが好ましい。すなわち、放射線硬化型組成物において波長380nm以上の光により開始反応を行う光開始剤を含有することが好ましい。これは前記したようにポリ乳酸フィルムに紫外線吸収剤を加える必要がある場合の好ましい光線透過率が、波長380nmにおいて20%以下であり、波長375nmでの光線透過率が1%以下であるからである。例えば、前述の光開始剤のうち、波長405nmにおける吸光係数(ml/(g・cm))が1以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは100以上あるものを好ましく用いることができる。この吸光係数は例えばメタノール溶媒等に光開始剤を溶解させ、分光器により測定することができる。
このような光開始剤として好ましくは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの混合物等である。
放射線として電子線を用いる場合の電子線の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。好ましくは、ポリ乳酸フィルム側から照射する。偏光膜側から照射すると、偏光膜が電子線によって劣化するおそれがある。
電子線の照射条件は、前記接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV〜300kVであり、さらに好ましくは10kV〜250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、ポリ乳酸フィルムや偏光膜にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGy、さらに好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、ポリ乳酸フィルムや偏光膜にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
前記製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間にもよるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、さらに好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
接着工程後に熱処理工程を設けても良いが、熱処理温度としては40〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜85℃である。40℃未満では熱処理工程としては効果が少なく、100℃を超えると偏光膜が劣化する可能性がある。熱処理時間としては5秒から10分程度が好ましい。5秒未満では熱処理の効果が期待できず、10分を超えると生産性に問題が生じる場合がある。
偏光膜とポリ乳酸フィルムの接着剥離強度は90°剥離試験で2N/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは3N/25mm以上、さらに好ましくは4N/25mm以上、最も好ましくは5N/25mm以上である。90℃剥離強度が2N/25mm未満では、偏光板の実使用上問題が生じる場合がある。本発明では特に断りの無い限り剥離強度評価における剥離速度は200mm/分、フィルムの幅を25mmとして評価した。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これにより何ら限定を受けるものではない。
(評価方法)
(1)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6Aカラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
(2)ステレオ化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,TA−2920)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、10℃/分で250℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解温度(Tm*)およびステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHms)およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmh)を測定した。
また結晶化開始温度(Tc*)、結晶化温度(Tc)は上記測定試料を急速冷却し、さらに引き続き、同じ条件で第二サイクル測定を行い測定した。ステレオ化度は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(ii)により求めた値である。
S=[ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)]×100 (ii)
(但し、ΔHmsはコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
(3)前記式(1)の末端基濃度測定:
500MHzの高分解能核磁気共鳴装置(1H−NMR:設備名 日本電子(株)製ECA−500)を用いて前記式(1)の末端基濃度を測定した。重クロロホルムを溶媒としてサンプルを溶解させ、ケミカルシフト5.8〜6.5付近のピーク強度より当該官能基の当量/tonを求めた。バルク平均濃度とはポリ乳酸フィルム全体における上記式(1)の末端基のバルク平均濃度である。一方、フィルム表面近傍における上記式(1)の末端基濃度であるが、フィルム表面から中心方向に向かって2μmまでの樹脂をナイフ等で切り出し、バルク同様に評価した。表2に結果を示すが、表中、『表面』とはこの表面の上記式(1)の末端基濃度であり、「バルク」とはこのバルク平均濃度を示す。
(4)厚み測定:
アンリツ(株)製の電子マイクロメーターで測定した。
(5)位相差値(Re)と厚み方向の位相差値(Rth)の測定:
複屈折Δnと膜厚dの積である位相差Re値及びRthは、分光エリプソメータである日本分光(株)製の商品名「M150」により測定した。Re値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、Rth値(nm)は入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッチングすることにより三次元屈折率であるnx,ny,nzを求めた。
(6)偏光度測定:
偏光板を2枚(3cm×4cm)切り出し、2枚の偏光板の平行透過率Y
//、直交透過率Y
⊥を分光器である(株)日立製作所製の商品名「U−4000」にて測定し、下記式(11)を用いて偏光度(P(%))を求めた。なお、ここで言う透過率は平行光線透過率であり、2°視野C光源におけるCIE XYZ表色系のY値を用いた。
(7)接着性剥離強度試験
偏光膜とポリ乳酸フィルム間の接着力を評価するために、インストロン社製の引張り試験機の商品名「5500R」を用いて90°剥離試験を行った。剥離速度は200mm/分とした。また、剥離面は表裏2箇所存在するが、後掲の剥離強度(表4)は両者の平均値を記載した。ただし、実施例15のみは保護フィルム2と偏光膜との剥離強度のみを記載している。測定においてはガラス板に粘着剤を介して偏光板を貼り合せ、測定する側の接着層をガラス板と反対側にし、最表面にある保護フィルムをガラス基板に対して90°に保ちながら剥離強度を測定した。
(8)保護フィルムの平行光線透過率の測定:
保護フィルムの平行光線透過率は分光器である(株)日立製作所製の商品名「U−4000」にて測定した。表1に波長380、405、500nmの平行光線透過率T380,T405,T500を記す。
(9)光開始剤の吸光係数の測定:
光開始剤の405nmにおける吸光係数は、溶媒をアセトニトリルとし、光路長1cmの石英セルを用いて(株)日立製作所製の商品名「U−4000」にて評価した。結果は表3に記す。本発明においては、チバガイギー社製の商品名「イルガキュア184」、「イルガキュア819」、「イルガキュア1870」をそれぞれI184,I819,I1870と称する。I819、I1870は400nm以上の光でも吸収し、重合開始反応を起こす。
(10)全光線透過率およびヘイズ測定:
日本電色工業(株)製の商品名「COH−300A」を用いて全光線透過率(%)、ヘイズ値(%)を評価した。
(11)環状カルボジイミド構造の核磁気共鳴法(NMR)による同定およびポリエステル組成物中の環状カルボジイミドの定量:
合成した環状カルボジイミド化合物は1H−NMR、13C−NMRによって確認した。NMRは日本電子(株)製の商品名「JNR−EX270」を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。
(12)環状カルボジイミドのカルボジイミド骨格の赤外分光法(IR)による同定:
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の有無は、FT−IRによりカルボジイミドに特徴的な2100〜2200cm−1の確認を行った。FT−IRはサーモニコレー(株)製の商品名「Magna−750」を使用した。
[参考例]
<環状カルボジイミド(TX−1)の製造>
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを撹拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、撹拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
次に撹拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み撹拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、撹拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み撹拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記に示す構造を有する環状カルボジイミド化合物(TX−1と略記)、(分子量:516)を得た。TX−1の構造はNMR、IRにより確認した。
<ポリ乳酸の製造>
ポリ乳酸は、以下の通りに調製した。
(1)ポリL−乳酸(PLLA1)の製造:
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリL−乳酸(PLLA1)を得た。
得られたポリL−乳酸(PLLA1)の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(2)ポリD−乳酸(PDLA1)の製造:
PLLA1の製造において、L−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更したこと以外は同じ条件で重合を行い、ポリD−乳酸(PDLA1)を得た。
得られたポリD−乳酸(PDLA1)の重量平均分子量(Mw)は15.1万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(3)ステレオコンプレックスポリ乳酸(SCPLA1)の製造:
上記操作で得られたPLLA1とPDLA1とを各50重量部およびリン酸金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−71:0.1重量部)を、2軸混練装置の第一供給口より供給、シリンダー温度250℃で溶融混練し、ステレオコンプレックスポリ乳酸(SCPLA1)を得た。ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は216℃であった。
(4)ステレオコンプレックスポリ乳酸とポリメチルメタクリレート(PMMA)のブレンド樹脂(SP1)の製造:
上記操作で得られたSCPLA1と三菱レイヨン(株)製のPMMAである商品名「アクリペットVH001」をそれぞれ80重量部、20重量部をブレンダーで混合、110°、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してSCPLA1とPMMAのブレンド組成物(SP1)を得た。ガラス転移点(Tg)は59℃、融点は216℃であった。
(5)ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート(PMMA)および環状カルボジイミド(TX−1)のブレンド樹脂(SPT1)の製造:
上記操作で得られたSCPLA1、三菱レイヨン(株)製のPMMAである商品名「アクリペットVH001」、環状カルボジイミド(TX1)をそれぞれ80重量部、20重量部、1重量部をブレンダーで混合、110°、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してブレンド組成物(SPT1)を得た。ガラス転移点(Tg)は59℃、融点は216℃であった。
(6)ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状カルボジイミド(TX1)、紫外線吸収剤(UV1)のブレンド樹脂(SPTV1)の製造:
上記操作で得られたSCPLA1、三菱レイヨン(株)製のPMMAである商品名「アクリペットVH001」、環状カルボジイミド(TX−1)、シプロ化成(株)製の商品名「シーソーブ107」である紫外線吸収剤2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンをそれぞれ80重量部、20重量部、0.8重量部、0.9重量部をブレンダーで混合、110°、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してブレンド組成物(SPTV1)を得た。ガラス転移点(Tg)は58℃、融点は215℃であった。
(7)ステレオコンプレックスポリ乳酸、環状カルボジイミド(TX−1)、紫外線吸収剤(UV1)のブレンド樹脂(STV1)の製造:
SCPLA1、三菱レイヨン(株)製のPMMAである商品名「アクリペットVH001」、環状カルボジイミド(TX1)、シプロ化成(株)製の商品名「シーソーブ107」である紫外線吸収剤2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンをそれぞれ80重量部、20重量部、0.8重量部、0.9重量部をブレンダーで混合、110°、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してブレンド組成物(STV1)を得た。ガラス転移点(Tg)は58℃、融点は215℃であった。
<偏光膜の製造例>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)の30℃のヨウ素溶液中で1分間染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%の30℃のヨウ化カリウムを含む水溶液中に1分間浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む60℃の水溶液中で1分間浸漬しながら6倍まで延伸した後、30℃の5重量%のヨウ化カリウム水溶液に1分間浸漬した。その後、80℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光膜を得た。
<ポリ乳酸フィルムの製造>
(1)ポリ乳酸フィルム(F1)の製造:
樹脂SPT1を100℃で5時間乾燥させた後、225℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度225℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルムを得た。膜厚は43μmであった。その後、この未延伸フィルムをテンター横一軸延伸機により延伸温度75℃、倍率1.05倍にて延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み41μmのフィルム(F1)を得た。
(2)ポリ乳酸フィルム(F2)の製造:
フィルム製造例1と同様に樹脂SPT1を用いて未延伸フィルムを得た。膜厚は60μmであった。その後、この未延伸フィルムをテンター横一軸延伸機により延伸温度75℃、倍率1.4倍にて延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み41μmのポリ乳酸フィルム(F2)を得た。
(3)ポリ乳酸フィルム(F3)の製造:
樹脂SP1を用いた以外はフィルム製造例1と同様に厚み41μmのポリ乳酸フィルム(F3)を得た。
(4)ポリ乳酸フィルム(F4)の製造:
樹脂SPTV1を用いた以外はフィルム製造例1と同様に厚み41μmの保護フィルム(F2)を得た。
(5)ポリ乳酸フィルム(F5)の製造:
樹脂STV1を用いたこと、およびテンター横一軸延延伸機における熱固定温度を105℃とした以外はフィルム製造例1と同様に厚み41μmの保護フィルム(F5)を得た。
表1にポリ乳酸フィルム(F1)〜(F5)の光学特性を記す。
<フィルムの表面処理>
フィルムの表面処理はコロナ処理放電または紫外線オゾン処理を用いた。コロナ放電処理は春日電機(株)製コロナ表面処理装置を用いて、70W・分/m2の条件で実施した。また、紫外線オゾン処理はアイグラフィックス(株)社製の商品名「アイオゾン洗浄装置OC−2506」を用い、処理時間は30秒とした。ただし、実施例9のみ紫外線オゾン処理の時間を1分とした。表2に実施例、比較例の表面処理の有無、方法を記載した。表面処理後の上記式(1)末端基濃度も表2に記載する。
[実施例1〜13]
実施例1〜13は、上記操作で得られたポリ乳酸フィルム(F1)〜(F5)を表面処理したうえで、偏光板の保護フィルムとして使用して、偏光板を作成し、接着力を評価することで本発明の効果を示したものである。
偏光膜の両面に、ワイヤーバーコーターを装着したコーターを用いて、表2で示された放射線硬化型組成物を塗布し、保護フィルム、偏光膜、保護フィルムの配置に積層されるようにラミネーターを用いて貼り合わせた。なお、放射線硬化型組成物はすべて常温(25℃)で液体であり、溶剤は使用していない。
続いて、300nm以下の紫外線をカットするカットフィルターが設置された低圧水銀ランプを有する紫外線硬化装置中にその貼合されたフィルムを導入し、空気雰囲気下で、保護フィルム1側から光を照射し、接着硬化させた。照射した光の強度はアイグラフィック(株)社製の紫外線照度計である商品名「UVPF−36」で行った。光強度は30mW/cm2、積算光量は1J/cm2であった。厚さ4μmの放射線硬化型組成物の硬化物からなる層により接着されてなる、偏光板を得た。すなわち、得られた偏光板は、保護フィルム、接着剤層、偏光膜、接着剤層、保護フィルムがこの順に積層されてなる。
表4に示すように、いずれの実施例においても初期偏光度、剥離強度に優れ、また、80℃DRY500時間、60℃90%RH500時間後においても変化が少ないことがわかる。
[実施例14]
保護フィルムとして一方の面には、ポリ乳酸フィルム(F5)を用い、反対面にTACを用いた偏光板を下記の通りに作製した。
トリアセチルセルロース100重量部、トリフェニルホスフェート12重量部、塩化メチレン300重量部、メタノール50重量部を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解した。次にこの溶液を濾過し、冷却して30℃に保ち、ガラス基板に貼り付けたPETフィルム上にアプリケーターで塗布した。この状態で5分間静置した後、更に100℃のオーブンで1時間乾燥を終了させ、膜厚40μmの保護フィルム(TAC1)を得た。
続いて、TAC1を40℃の2.6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に50秒間浸せきした後、水洗乾燥してケン化処理した。その後、ケン化処理した保護フィルムTAC1を、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として、TAC1と偏光膜をラミネートし、80℃3分間乾燥させ偏光膜の片側に接着させた。
TAC1とは偏光膜を挟んで反対側の保護フィルムの接着については、実施例1と同様に表1、表2に記載した条件で実施して偏光板を作製した。
表4において初期偏光度、剥離強度に優れ、また、80℃DRY500時間後、60℃90%RH500時間後においても変化が少ないことがわかる。
なお、表2において、略号はそれぞれ以下を意味する。
コロナ放電:保護フィルム接着層側の表面処理としてコロナ放電処理を実施した。
UVオゾン:保護フィルム接着層側表面処理として紫外線オゾン処理を実施した。
ケン化:保護フィルム接着層側表面処理としてケン化処理を実施した。
表面:フィルム表面近傍の上記式(1)の濃度(当量/ton)
バルク:フィィルムバルクの上記式(1)の濃度(当量/ton)
HA:共栄社化学(株)製の商品名「ライトエステルHOP−A」
2−ヒドロキシプロピルアクリレートを主成分とする。
AA:昭和電工(株)製の商品名「カレンズAOI」
2−アクリロイロキシエチルイソシアネートを97%以上含有。
MM:昭和電工(株)製の商品名「カレンズMOI」
2−メタクリロイロキシエチルイソシアネートを97%以上含有。
MA:共栄社化学(株)製の商品名「HOA−MA」
2−アクリロイロキシエチル−コハク酸を主成分とする。
PA:共栄社化学(株)製の商品名「ライトアクリレートP−1A」
2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェートを主成分とする。
HM:共栄社化学(株)製の商品名「ライトエステルHOP」
2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを主成分とする。
EM:共栄社化学(株)製の商品名「ライトエステルHO−250」
2−ヒドロキシエチルメタクリレートを主成分とする。
EA:共栄社化学(株)製の商品名「ライトエステルHOA」
2−ヒドロキシエチルアクリレートを主成分とする。
BA:共栄社化学(株)製の商品名「ライトアクリレートHOB−A」
2−ヒドロキシブチルアクリレートを主成分とする。
[実施例15]
共栄社化学(株)製アクリレート、商品名「ライトアクリレートBP−4EA」、「ライトアクリレートTMP−4」、光開始剤としてチバガイギー社製の商品名「イガルキュア184」、溶媒として1−メチル−2−プロパノールをそれぞれ90、10、5、300重量部を混合し、これを放射線硬化型組成物とした。これを実施例2で用いた表面処理されたポリ乳酸フィルム(F1)面上に、バーコーターを用いて塗布し、80℃で3分乾燥させた。続いて、300nm以下の紫外線をカットするカットフィルターが設置された低圧水銀ランプを有する紫外線硬化装置中にそのフィルムを導入し、窒素雰囲気下で、放射線硬化型プレポリマー側から光を照射し硬化させた。照射した光の強度はアイグラフィック(株)製の紫外線照度計である商品名「UVPF−36」で行った。光強度は30mW/cm2、積算光量は1J/cm2であった。厚さ4μmの放射線硬化型組成物の硬化物(ハードコート層)からなる層が形成されている。
当該硬化物の接着性評価は、クロスカット試験により実施した。すわなち、1cm2の中を各1mm角、計100個にクロスカットした領域に、ニチバン(株)製セロハンテープを密着させて垂直方向に引き剥がした場合での剥離が起こるかどうかにより評価した。1個も剥離する部分が無く、接着性に優れることが分かった。
[比較例1]
ポリ乳酸フィルム(F1)に表面処理をしなかった以外は実施例15と同様に実施した。クロスカット試験の結果、60個が剥離し、接着性としては不十分であることがわかった。
硬化前のフィルムの上記式(1)のバルク平均濃度とフィルムの表面近傍における末端基濃度はそれぞれ1当量/tonと、同じであった。
[比較例2]
ポリ乳酸フィルム(F1)の表面処理として低圧水銀ランプからなる紫外線を、光強度40mW/cm2で3分間照射させた以外は実施例15と同様に実施した。
クロスカット試験の結果、70個の領域が剥離し、接着性には優れていないことが分かった。上記式(1)のバルク平均濃度とフィルム表面近傍における末端基濃度はそれぞれ50当量/tonと同じであった。