JP5527938B2 - 太陽光発電の評価システムおよび評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は太陽光発電の評価システムおよび評価方法に関するものである。
太陽光発電の導入の有効性についての検討、評価には、一般に、導入することによって予想される発電量を試算することが重要であり、このような試算の手法としては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、発電量の試算は、太陽電池の設置を検討する評価地点から魚眼レンズ等を備えたカメラによって撮影した半球画像を利用してなされ、半球画像における天空率から評価地点の日射量を算出し、この日射量に基づいて発電電力量が算出される。
特開2002-62188号公報
しかしながら、上述した従来例においては、発電量を試算するための日射量の算出が狭小な評価地点でのみなされるに過ぎないために、例えば、都市全体などを対象にした太陽光発電への取り組みの有効性を検討したい場合、多数の地点で半球画像の撮影や日射量の算出が必要となってしまい、多大な時間、手間がかかってしまうという欠点がある。
すなわち、都市においては多数の中高層建築物が不規則に配置されていることから、これらによって形成される日陰のために場所によって日射量が大きく異なり、狭小な領域の日射量のみを基準にして広範な領域の発電量を試算しても、信頼性が極めて低くなってしまう。
また、都市において日射量が良好で太陽電池の設置に好適な場所としては、中高層建築物の上部の側壁面なども考えられるが、この場合には高所になってしまうことから、上述した従来例のように設置場所からの撮影が必要であると、その検討が極めて困難になってしまう。
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、都市における太陽光発電への取り組みの有効性を効率的かつ的確に評価することができる太陽光発電の評価システムおよび評価方法の提供を目的とする。
また、本発明の他の目的は、都市における中高層の建築物群を対象とした最適な太陽光発電設備の配置を検討できるようにすることにある。
本発明によれば上記目的は、
評価対象地域2内の日射面積に所定の発電係数を乗算して評価対象地域2の太陽光発電量を試算する太陽光発電の評価システムであって、
前記評価対象地域2をGISの地図データ1から指定する地域指定手段3と、
前記評価対象地域2内に適宜設定された複数の評価対象建築物4の各々における日射方向に対峙する面4aの面積をGISの三次元立体モデルと太陽位置との位置関係から試算する日射対峙面積演算手段5と、
前記三次元立体モデルへの日射シミュレーションから評価対象建築物4の各々の日射方向に対峙する面4a上に他の評価対象建築物4’によって形成される日陰面積を試算する影干渉面積演算手段6と、
前記日射方向に対峙する面4aの面積と日陰面積との差に対して前記発電係数を乗算して各評価対象建築物4による個別太陽光発電量を求め、評価対象地域2内の複数の評価対象建築物4の個別太陽光発電量を合計して評価対象地域2全体の総合太陽光発電量を試算する発電評価手段7とを有する太陽光発電の評価システムを提供することにより達成される。
本発明によれば、太陽光発電量の試算は、評価対象建築物4によって形成される日陰をGISの三次元立体モデルへの日射シミュレーションによって把握し、日陰を除いた実効的な日射面積に発電係数を乗算してなされる。発電係数は、太陽電池モジュールの設計係数等のほか、地域によって異なる単位面積当たりの日射量を考慮して決定することができる。
したがって、都市における中高層建築物を評価対象建築物4として設定することにより、これらによってもたらされる日陰が他の中高層建築物の一部に及ぶ場合などの複雑な日陰範囲を的確に予測でき、広範な領域における複雑な日射の分布を極めて効率的に把握して都市の太陽光発電への取り組みの有効性を効率的かつ的確に検討することができる。このような有効性の検討はまた、太陽光発電の導入に対する公的助成の拡充の判断材料などとしても役立つ。
また、評価対象建築物4の日射方向に対峙する面4aの面積を基準に日射面積を試算することにより、評価対象建築物4の上部の側壁面をも有効活用した太陽光発電量の試算を行うことができる。さらに、このように日射面積を評価対象建築物4を対象に試算することにより、建築物が乱立する都市において、太陽光発電の導入による有効性を良好に検討することができる。
建築物が乱立する都市やその街区などの評価対象地域2を指定するための地図データ1は、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)から取得され、このGISの三次元立体モデルを日射シミュレーションに用いることにより、太陽光発電モジュールの設置ベースとしての複数の評価対象建築物4について精緻な位置、形状に関する情報を容易に取得することができる。また、太陽位置との位置関係から導き出すことができる上述した日射方向に対峙する面4aの面積についても極めて容易に試算することができる。
さらに、このように太陽光発電の評価についてGISを活用する本発明においては、評価対象建築物4の決定についてもGISを活用することで良好に進めることができる。評価対象建築物4は、そもそも太陽光発電に適した日射量が期待しうるものとして地上高が一定以上の高いものを指定することが望ましく、例えば、GISの属性データ8としての階数データなどを確認することで都市の多数の建築物群の中から容易に特定することができる。このような指定は、階数データに基づく自動抽出によることも可能である。
また、近時の環境問題への取り組みは、環境負荷の明確化による自助努力の促進が原動力の一端ともなっており、太陽光発電の導入が検討される評価対象建築物4自体のエネルギー消費量を試算することで、このような自助努力を促すことができる。この場合、環境負荷と自助努力の相対的な評価ができるエネルギーの自給率、すなわち、評価対象建築物4における太陽光発電によるエネルギー供給量のエネルギー消費量との相対的な割合を試算することが有効である。評価対象建築物4のエネルギー消費量は、GISの属性データ8を活用した推定が可能で、例えば近年においては、属性データ8である用途データ10と固定資産データ11等を用いて適切に推定できることが環境問題の研究者により提案されている。
さらに、都市への太陽光発電の新規導入は、都市全体を一括して評価するのではなく、道路で区画された街区を単位とすることで、日陰の影響をより少なくして都市における太陽光発電設備の配置の適格性を高めることができる。
なお、本発明によれば、
GISの地図データ1から評価対象地域2を指定する地域指定手段3と、
前記評価対象地域2内に適宜設定された複数の評価対象建築物4の各々における日射対峙面積をGISの三次元立体モデルと太陽位置との位置関係から試算する日射対峙面積演算手段5と、
前記三次元立体モデルへの日射シミュレーションから評価対象建築物4の各々の日射対峙面4a上に他の評価対象建築物4’によって形成される日陰面積を試算する影干渉面積演算手段6と、
前記日射対峙面積と日陰面積との差に対して当該評価対象地域2に設定された発電係数を乗算して各評価対象建築物4による個別太陽光発電量を求め、
評価対象地域2内の複数の評価対象建築物4の個別太陽光発電量を合計して評価対象地域2全体の総合太陽光発電量を試算する発電評価手段7とを有する太陽光発電の評価システムや、
GISの地図データ1から評価対象地域2を指定し、
次いで、前記評価対象地域2内に適宜設定された複数の評価対象建築物4の各々における日射対峙面積をGISの三次元立体モデルと太陽位置との位置関係から試算するとともに、前記三次元立体モデルへの日射シミュレーションから評価対象建築物4の各々の日射対峙面4a上に他の評価対象建築物4によって形成される日陰面積を試算し、
この後、前記日射対峙面積と日陰面積との差に対して当該評価対象地域2に設定された発電係数を乗算して各評価対象建築物4による個別太陽光発電量を求め、
評価対象地域2内の複数の評価対象建築物4の個別太陽光発電量を合計して評価対象地域2全体の総合太陽光発電量を試算する太陽光発電の評価方法を提供することも可能である。


以上の説明から明らかなように、本発明によれば、都市における太陽光発電への取り組みの有効性を効率的かつ的確に検討することができ、環境負荷を有効に低減させることができる。
また、都市における中高層の建築物群を対象とした最適な太陽光発電設備の配置を検討できるようにすることで、効率的な環境対策を推進することができる。
図1に都市の街区に太陽光発電を導入することを検討するための太陽光発電の評価方法の全体的な流れを、図2に評価を行うコンピュータシステムの構成を示す。コンピュータシステムは、出願人が既に市販している三次元都市空間データを記録したGISであるMAPCUBE(登録商標4837007号)を利用して構築される。このGISデータ20は、二次元地図のデジタルマッピングデータ1に対し、精密な地物の高さ、形状を特定できる航空レーザ測量データにより形成される数値表層モデルデータ21を重ねて構成されるもので、属性データ8として地図上に位置するビルなどの建物現況データ22や固定資産データ11を備える。
図7(a)は、あるビルAの属性としてのデータ群を示すもので、ビルAのエネルギー消費原単位を推測しうる用途に関する用途データ10、ビルAの建築面積を算出しうる形状に関する形状データ12、ビルAの階数に関する階数データ23、ビルAの所在地に関する位置データ24、ビルAの延べ床面積を備えた固定資産データ11を有して構成される。
また、上記システムは、図2に示すように、図外のマウスなどの入力機器からの入力を受け付ける入力部25と、該入力部25からの入力に従って評価対象地域2としての街区を指定する地域指定手段3と、街区2内における太陽光発電モジュールの設置の候補先としての評価対象建築物4を指定する建築物指定手段9と、街区2の日射状況を演算する日射状況演算部26と、評価対象建築物4の日射状況に基づく太陽光発電についての評価を行う発電評価手段7と、図外のディスプレイやプリンタなどに評価結果に関するデータなどを出力する出力部27とを有する。
上記入力部25は、上述したGISへのマウスなどからのアクセスを受け付け、マウスなどからの入力をGISに出力する。これを受けたGISによるデータ処理は、出力部27を介して出力され、例えばマウスの操作によってディスプレイ等に二次元地図を表示することができる。
太陽光発電の導入に関する評価は、図1に示すように、太陽光発電モジュールを設置する街区2をGISの地図データ1がカバーする地図範囲内からマウスなどで指定することにより始められる(S-1)。この指定は、例えばディスプレイに表示された二次元地図上からポインタにより特定の街区2を選択するほか、特定の地名を図外のキーボードを介して入力することにより行っても足りる。
上記地域指定手段3は、このような入力に従って地図データ1内に街区2を指定するもので、この実施の形態においては、政令指定都市に含まれる街区2を指定可能な単位とする。図3(a)は地域指定手段3による街区2の指定を示したもので、街区2を囲む道路28上に示される鎖線の内側が評価対象領域2である。
また、上記地域指定手段3は、上述した街区2に加え、高層の建築物などが建設されている場合に指定した街区2に日陰を及ぼすおそれがある街区2の周辺領域29をも指定する。図3(a)の街区2の外側の鎖線は周辺地域29の外縁を示すもので、周辺地域29は、予め地域指定手段3に設定された例えば街区2周辺の300m四方などといった基準に従い、街区2の外側に形成される。以上の指定に伴い、地域指定手段3は、指定された街区2、およびその周辺地域29についての数値表層モデルデータ21をGISデータ20から読み出す。
地域指定手段3による街区2、およびその周辺地域29の指定が完了すると、建築物指定手段9により街区2内で太陽光発電モジュールの設置対象となる評価対象建築物4が自動抽出される。建築物指定手段9による抽出は、一般に日射量を期待しうる中層以上の建築物4を対象とするもので、上述した階数データ23、あるいは数値表層モデルデータ21の高さ情報に基づいて街区2内の全ての中高層ビル4が自動抽出される。
また、建築物指定手段9は、同様に階数データ23等に基づき、周辺地域29においても中層以上の建築物4を抽出する。この抽出は街区2内に日陰を及ぼすおそれがある建築物を対象とする。
以上のようにして街区2内、およびその周辺地域29内の数値表層モデルデータ21と、この数値表層モデルデータ21上に位置する中高層ビル4とが抽出されると、続いて、日射状況演算部26によって街区2内の中高層ビル4を対象とする日射状況の演算が行われる(S-2)。日射状況演算部26は、図2に示すように、財団法人日本気象協会が既に提供しているMETPV-3と呼ばれる標準気象・日射データベース30を利用して構築される。このデータベースは日本全国の各地836地点を対象に、各地での過去数年間の平均日射量を所定日時毎に収めたもので、所定日時・場所での単位面積当たりの日射量と仮定できるものを実質的に提供する。また、設定により各地の年間平均日射量を求めることもできるようにされている。
また、日射状況演算部26は、街区2の場所を条件にして上記標準気象・日射データベース30内の日射データ31を検索し、街区2の単位面積当たりの日射量を取得する土地単位日射量検索手段32を備えるとともに、街区2の中高層ビル4の日射面積を試算するために、太陽位置データ33と、メッシュ設定手段34と、日射対峙面積演算手段5と、影干渉面積演算手段6と、日射量演算手段35とを有する。上記太陽位置データ33は、太陽の位置情報を所定日時毎にデータベース化して構築される。
上記メッシュ設定手段34は、街区2内の中高層ビル4の表面にメッシュを設定するもので、メッシュサイズは日射面積の試算の精度を考慮して適宜設定される。街区2内の中高層ビル4の日射面積の算出は図5に示す手順に従って進められ、先ず、図4(a)に示すように、数値表層モデルデータ21に従って形成された中高層ビル4の3Dモデルの立体的に構成された外表面にメッシュが形成される(S-21)。
上記日射対峙面積演算手段5は、図4(a)太線で囲って示すように、街区2内の中高層ビル4の日射方向に対峙する面積としての日射対峙面積、言い換えれば、他の建築物が全くないと仮定したときの中高層ビル4の日射面積を演算するもので、GISデータ20によりその位置や向きなどが特定できる中高層ビル4と、上述した太陽位置データ33の太陽位置との位置関係から日射面積を判定して算出する(S-22)。なお、数値表層モデルデータ21によって特定可能な中高層ビル4の外表面の各面の面の向きの情報などから日射面積を判定することも可能である。
上記影干渉面積演算手段6は、日射シミュレーションを行い、シミュレーション時における街区2内の各中高層ビル4の日射方向に対峙する面上に形成される可能性がある他の中高層ビル4’の影の干渉を確認する(S-23)。この他の中高層ビル4’は上述した周辺地域29に属するものも対象に含まれ、日射シミュレーションは、市販の日影図、あるいは日影時間図の作成ソフトをシステムに組み込むことにより行われる。影の干渉は、図4(b)に示すように、上述した日射対峙面4aに設定されたメッシュの各格子点について、日射シミュレーション時における日陰の有無を判定し(S-24)、これを全格子点の判定が終了するまで多数回繰り返して行うことができ(S-25)、日陰と判定された格子点の数に基づいて日陰面積が決定される(S-26)。
また、上記日射量演算手段35は、一年間の各日時における日射対峙面積と影干渉面積との差を求め、この差に対し、日射データ21から取得したそれぞれの日時における単位面積当たりの日射量を乗算したものを合計し、平均することにより、例えば一日当たりの平均日射量として演算することも可能であるが、本実施の形態においては、図5に示すように、処理効率の向上を図るために、夏至と冬至のそれぞれの正午における日射条件を平均して平均日射量を演算する。具体的には、夏至と冬至のそれぞれの正午における日射対峙面積と影干渉面積との差を演算するとともに(S-27)、上述した土地単位日射量検索手段32も同様に夏至と冬至のそれぞれの正午における単位面積当たりの日射量を検索し、これら夏至と冬至のそれぞれの日射面積と単位面積当たり日射量を乗じたものを平均して平均日射量を算出する(S-30)。
平均日射量の算出は街区2内の中高層ビル4毎に行われ、街区2内の全ての中高層ビル4について完了するまで繰り返される(S-28)。また、夏至と冬至のそれぞれの場合についても完了するまで繰り返される(S-29)。
このようにして夏至と冬至に基づいて年間の日射量を推定するため、この実施の形態においては、上述した日射対峙面積演算手段5による日射対峙面積の算出や、影干渉面積演算手段6による影の干渉についても、これらの時期のものを用いて行われる。
以上のようにして中高層ビル2毎の平均日射量が算出されると、この後、発電評価手段7による太陽光発電量の演算、評価処理が進められる。発電評価手段7に形成される太陽光発電量演算手段36は、太陽光発電のエネルギー算出式として知られるEp=H×K×P×365÷1により太陽光発電量を演算する(S-3)。
ここでEpは年間発電量、Hは中高層ビル4の屋上・壁面の一日当たりの年平均日射量、Kは設計係数、Pは太陽光発電原単位、365は年間の日数、1は標準状態における日射強度を意味し、それぞれ太陽光発電量試算データ42として発電評価手段7内に記憶されている。演算された各中高層ビル4の太陽光発電量は、例えば出力部27を介してディスプレイに表示され、この場合、対象となっている中高層ビル4を識別できるようにビル名等も合わせて表示することが望ましい。
また、太陽光発電モジュールの窓による設置面積の制限を考慮して、中高層ビル4の側壁面における太陽光発電量を屋上の太陽光発電量より低く見積もるための定数を上記算出式に加えることが望ましい。
また、上述した発電評価手段7は、各中高層ビル4のエネルギー自給率を評価する自給率評価手段13を備え、自給率の試算のために、中高層ビル4毎のエネルギー消費原単位を算出するエネルギー消費原単位算出手段38と、これにより算出されたエネルギー消費原単位を用いて中高層ビル4毎のエネルギー消費量を演算するエネルギー消費量演算手段39とを有する。図6に示すように、エネルギー消費原単位算出手段38は、GISの属性データ8として各中高層ビル4に設定される用途データ10を参照し(S40)、該用途データ10の種別毎に一対一対応する量が設定されたエネルギー消費原単位を各中高層ビル4について決定する(S40-1)。
また、上記エネルギー消費量演算手段39は、各中高層ビル4について、エネルギー消費原単位と延べ床面積あるいは世帯数とを乗算し、これによりエネルギー消費量を算出する。エネルギー消費量の算出は、図6に示すように、先ず、用途データ10に基づいてエネルギー消費量算出対象の中高層ビル4が業務系に属するビルであるか(S41)、一般住宅に属するものであるか(S42)、共同住宅に属するものであるか(S43)が判定される。このうち、一般住宅の場合は例えば1.5世帯が居住すると仮定され(S42-1)、また、共同住宅の場合には、一般住宅の一般的な延べ床面積を1.5世帯で除算して1世帯当たりの延べ床面積を試算し、この一世帯当たりの延べ床面積によって共同住宅の延べ床面積を除算し、共同住宅の世帯数として推計する(S43-1)。
一方、業務系のビルの場合には、先ず、固定資産データ11の有無を確認し(S-44)、固定資産データ11を備えているときには、この固定資産データ11から延べ床面積を読み出す(S44-1)。固定資産データ11がないときには、形状データ12から建築面積を算定し(S45)、また、階数データ23の有無を確認して(S46)、階数データ23を備えているときには、その階数と建築面積から延べ床面積を試算する(S46-1)。中高層ビル4の場合、ほとんどが階数データ23を備えていることが予想されるが、仮に階数データ23がない場合には、一般的な2階建て程度と同等であると仮定するなどして延べ床面積を試算する(S47)。なお、この階数の仮定については、中高層ビル4であることを考慮して適宜変更し、設定を調整してもよい。
以上のようにして住宅系の世帯数、あるいは業務系の延べ床面積を求めたら、先に決定していたエネルギー消費原単位をこれらに乗算し、各中高層ビル4のエネルギー消費量とする。なお、以上に述べた中高層ビル4のエネルギー消費量の算出処理は、図1に示すように、上述した街区2内に中高層ビル4を抽出した段階で行うことができる(S-6)。
一方、上記自給率評価手段13は、各中高層ビル4における太陽光発電量のエネルギー消費量に対する百分率を求めるもので、太陽光発電量をエネルギー消費量によって除算して中高層ビル4の太陽光発電によるエネルギー自給率を演算する(S-4)。演算の結果、自給率が60%以上であれば、太陽光発電の導入に適しているとの評価を行い、例えば50%以下であれば導入にあまり適していないとの評価を行う(S-5)。この評価結果は出力部27を介して出力されてディスプレイ等に表示される。
したがって地域指定手段3により街区2を指定するだけで、街区2内の太陽光発電に適した適数の中高層ビル4が算出され、また、この適数の中高層ビル4の他の中高層ビル4’により形成される影を考慮した日射量に基づいて太陽光発電量が算出され、さらに、予想される太陽光発電の自給率にしたがって当該中高層ビル4への太陽光発電の導入の適否を判定することができる。このように自給率を太陽光発電の導入判定に含めることで、環境負荷に対する平等で適切な対応を求めることができ、必要な太陽光発電の導入を良好に促し、環境負荷を効率的に低減することができる。
図8に本発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態において、地域指定手段3は、評価対象地域2として政令指定都市全体を単位として指定する。また、地域指定手段3は、政令指定都市全体を上述した実施の形態と同程度の広さとなる街区毎に適宜分割し、各街区で中高層ビル4を抽出し(S-50)、太陽光発電の導入の評価を行う。政令指定都市の街区への分割は、予め街区を登録しておくなどすることにより行うことができ、あるいは面積から街区を自動抽出させることにより行うことが可能である。
この後、同様に中高層ビル4毎に日射量を演算し(S-51)太陽光発電量を求める(S-52)。また、同様に、中高層ビル4の消費エネルギーも算出し(S-53)、これらに基づいて太陽光発電の評価を行う(S-54)。都市の全ての街区についてこれを繰り返す(S-55)ことにより、この実施の形態においては、都市全体2のどの街区が太陽光発電の導入に適しているか、すなわち都市2における太陽光発電の最適な導入方法を街区を単位として評価することができる(S-56)。
また、この実施の形態においては、先に述べた太陽光発電の評価として、上述した実施の形態では機能していない発電評価手段7のコストパフォーマンス評価手段40と、CO排出量試算手段41とによる処理が、この実施の形態においては上述した自給率評価手段13による処理と並行して行われる。上記コストパフォーマンス評価手段40は、図7(b)に示すように、例えば太陽光発電設備の導入によって発生する一年当たりの単位面積当たりの費用を、中高層ビル4の一年当たりの単位面積当たりで発電される太陽光発電量の電力料金で除算したもので、算出される数値が1より大きければ、太陽光発電の導入に適しているとの評価をディスプレイ等に出力する。図7(b)に示す装置設置費用等は、コストパフォーマンス試算データ43として発電評価手段7に記憶されている。
一方、CO2排出量試算手段41は、発電方式によるCO2発生量を評価要素とするもので、 図7(c)に示すように、電力供給が、例えば石炭火力発電から太陽光発電に切り換えられたときにCO排出量が975から0に削減されることを示す。ここで、表に示す数値は1KW発電で発生するCOの量であり、括弧内は設備導入時あるいは運用時に発生するCOの量である。図7(c)に示す各発電方式に対応するCO発生量は、CO排出量試算データ44として発電評価手段7に記憶されている。なお、この場合、評価対象地域2の導入前の電力供給方法をGISデータ20から取り込むなどすることが望ましい。
本発明を示すフローチャートである。 本発明を示すブロック図である。 評価対象地域および評価対象建築物を説明する図で、(a)は評価対象地域が指定された状態を示す図、(b)は評価対象建築物の日射シミュレーション状態を示す図である。 日射状況演算部による処理を示す図で、(a)は日射対峙面積を示す図、(b)は影干渉面積を示す図である。 日射状況演算部による処理のフローチャートである。 エネルギー消費量演算手段による処理のフローチャートである。 発電評価手段で用いられるデータを示す図で、(a)は属性データを説明する図、(b)はコストパフォーマンス評価手段による処理を説明する図、( c)はCO2排出量試算部による処理を説明する図である。 本発明の他の実施の形態を示す図でフローチャートである。
符号の説明
1 地図データ
2 評価対象地域
3 地域指定手段
4 評価対象建築物
4’ 他の評価対象建築物
4a 日射対峙面
5 日射対峙面積演算手段
6 影干渉面積演算手段
7 発電評価手段
8 属性データ
9 建築物指定手段
10 用途データ
11 固定資産データ
12 形状データ
13 自給率評価手段

Claims (5)

  1. 評価対象地域内の日射面積に所定の発電係数を乗算して評価対象地域の太陽光発電量を試算する太陽光発電の評価システムであって、
    前記評価対象地域をGISの地図データから指定する地域指定手段と、
    前記評価対象地域内に適宜設定された複数の評価対象建築物の各々における日射方向に対峙する面の面積をGISの三次元立体モデルと太陽位置との位置関係から試算する日射対峙面積演算部と、
    前記三次元立体モデルへの日射シミュレーションから評価対象建築物の各々の日射方向に対峙する面上に他の評価対象建築物によって形成される日陰面積を試算する影干渉面積演算部と、
    前記日射方向に対峙する面の面積と日陰面積との差に対して前記発電係数を乗算して各評価対象建築物による個別太陽光発電量を求め、評価対象地域内の複数の評価対象建築物の個別太陽光発電量を合計して評価対象地域全体の総合太陽光発電量を試算する発電評価手段とを有する太陽光発電の評価システム。
  2. 前記評価対象建築物をGISの地図データあるいは前記評価対象建築物の属性データから指定する建築物指定手段を有する請求項1記載の太陽光発電の評価システム。
  3. 前記発電評価手段は、各評価対象建築物に関するGIS属性データの用途データと、固定資産データあるいは形状データとを参照し、
    用途データの種別毎に設定されたエネルギー消費原単位に対し、固定資産データの延べ床面積を乗算し、あるいは形状データに延べ床面積換算値を乗じて得られる推定延べ床面積を乗算して各評価対象建築物のエネルギー消費量を試算し、該エネルギー消費量により前記個別太陽光発電量を除算して得られる自給率が所定の閾値を満たすことを条件として各評価対象建築物についての太陽光発電の導入効果の判定結果を出力する自給率評価手段を有する請求項1または2記載の太陽光発電の評価システム。
  4. 前記地域指定手段は、評価対象地域として地図データ上の街区を単位として指定する請求項1ないし3のいずれかに記載の太陽個発電の評価システム。
  5. 評価対象地域内の日射面積に所定の発電係数を乗算して評価対象地域の太陽光発電量を試算する太陽光発電の評価方法であって、
    前記評価対象地域をGISの地図データから指定し、
    次いで、前記評価対象地域内に適宜設定された複数の評価対象建築物の各々における日射方向に対峙する面の面積をGISの三次元立体モデルと太陽位置との位置関係から試算するとともに、前記三次元立体モデルへの日射シミュレーションから評価対象建築物の各々の日射方向に対峙する面上に他の評価対象建築物によって形成される日陰面積を試算し、
    この後、前記日射方向に対峙する面の面積と日陰面積との差に対して前記発電係数を乗算して各評価対象建築物による個別太陽光発電量を求め、評価対象地域内の複数の評価対象建築物の個別太陽光発電量を合計して評価対象地域全体の総合太陽光発電量を試算する太陽光発電の評価方法。
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