JP5522975B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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例えば、(A)全ゴム分のうち天然ゴム及びシス−1,4イソプレン(IR)含量が60%以上であり、かつIR分を全ゴム量の20重量部以上含有する、天然ゴム及びジエン系合成ゴム100重量部に対し、(B)特定物性を有するカーボンブラックを30〜70重量部、及び(C)ステアリン酸を5〜9重量部配合してなるゴム組成物、並びに、このゴム組成物をトレッドゴムに用いてなる重荷重用空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記特許文献1に記載の特定種類のゴム成分、特定物性を有するカーボンブラック及びステアリン酸の組み合わせからなるゴム組成物であっても、耐摩耗性の向上は未だ不十分であり、特に、トラック、バス、建設用、航空機用等の高加重用空気入りタイヤにあっては、更なる耐摩耗性と発熱性の両立の課題を克服し、発熱性などのゴム性能を損なうことなく、耐摩耗性を大幅に向上させたタイヤトレッド用に好適なゴム組成物、及びそれを用いた高荷重用に好適な空気入りタイヤが切望されているのが現状である。
これに対して、本願発明は、従来用いられているステアリン酸を本願発明とする脂肪酸、脂肪酸亜鉛に置換することで、積極的に耐破壊性、耐摩耗性の向上を目的とするものであり、上記特許文献1〜5とは、その目的、技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
(1) 少なくともゴム成分と、硫黄と、酸化亜鉛と、脂肪酸及び/又は脂肪酸亜鉛とを含有するゴム組成物であって、該ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上であることを特徴とするゴム組成物。
(2) 少なくともゴム成分と、硫黄と、脂肪酸亜鉛とを含有するゴム組成物であって、該ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上であることを特徴とするゴム組成物。
(3) 脂肪酸及び/又は脂肪酸亜鉛の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、4質量部以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のゴム組成物。
(4) ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックが20〜60質量部含有してなる上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のゴム組成物。
(5) 天然ゴム及びカーボンブラックがマスターバッチからなる上記(4)に記載のゴム組成物。
(6) ゴム成分100質量部に対して、シリカが25質量部以下含有してなる上記(1)〜(5)の何れか一つに記載のゴム組成物。
(7) 上記(1)〜(6)の何れか一つに記載のゴム組成物がタイヤトレッド用組成物であることを特徴とするゴム組成物。
(8) 上記(1)〜(7)の何れか一つに記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
(9) 空気入りタイヤが重荷重用空気入りタイヤであることを特徴とする上記(8)に記載の空気入りタイヤ。
なお、本発明(後述する実施例を含む)で規定する「加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量/含有量」とは、加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛をクロロホルムで抽出し、抽出物を塩酸でメチル化し、脂肪酸エステルとして、ガスクロマトフィーで定量を行い、このガスクロマトフィーでは対象の標準試薬を用いて検量線を作成し、対象物質の定量を行うことにより求めた値をいう。
本発明のゴム組成物は、少なくともゴム成分と、硫黄と、酸化亜鉛と、脂肪酸及び/又は脂肪酸亜鉛とを含有するゴム組成物、または、少なくともゴム成分と、硫黄と、脂肪酸亜鉛とを含有するゴム組成物であって、該ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量を30%以上であることを特徴とするものである。
好ましくは、破壊強力の点から、ゴム成分100質量部中に、天然ゴム及び/又はスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)が80質量部以上含有することが望ましい。
この酸化亜鉛を用いる組成では、加硫促進の点から少なくともゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛を0.5〜10質量部、好ましくは、1〜5質量部含有せしめることが望ましい。
本発明のゴム組成物に用いることができる脂肪酸としては、該ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる(脂肪酸と酸化亜鉛の反応による)脂肪酸亜鉛成分の平均分子量が230以下となるもの、または、脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上となるものが挙げられ、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸などの飽和脂肪酸や、オレイン酸、リノール酸、バクセン酸などの不飽和脂肪酸の少なくとも1種(各単独又はこれらの2種以上の混合物)が挙げられる。
好ましくは、耐摩耗性向上の点から、ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる(脂肪酸と酸化亜鉛の反応による)脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が144〜228又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が50〜100%となるものが挙げられ、具体的には、ミスチリン酸(ミスチリン酸亜鉛:平均分子量228.37)、オレイン酸(オレイン酸亜鉛:二重結合数1、平均分子量282.47)、カプリル酸(カプリル酸亜鉛、平均分子量144.21)、ペラルゴン酸(ペラルゴン酸亜鉛、平均分子量158.24)、カプリン酸(カプリン酸亜鉛、平均分子量172.27)、ラウリン酸(ラウリン酸亜鉛、平均分子量200.32)、リノール酸(リノール酸亜鉛、二重結合数2、平均分子量280.45)、バクセン酸(バクセン酸亜鉛、二重結合数1、平均分子量282.46)などを好適に用いることができる。
なお、本発明において、例えば、オレイン酸(オレイン酸亜鉛:二重結合数1、平均分子量282.47)では、加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230を越えていても、二重結合をもつ脂肪酸を30%以上含有するので、本発明の効果を発揮できるものである。本発明において、「加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量を30%以上」とは、1)用いる脂肪酸及び脂肪酸亜鉛の中で、飽和脂肪酸(及び飽和脂肪酸亜鉛)を用いる場合は、脂肪酸亜鉛成分の飽和脂肪酸の平均分子量が230以下であること、2)不飽和脂肪酸(及び不飽和脂肪酸亜鉛)を用いる場合は、本発明の効果を発揮でき、3)飽和脂肪酸(及び飽和脂肪酸亜鉛)と不飽和脂肪酸(及び不飽和脂肪酸亜鉛)を併用する場合には、脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の全体の平均分子量が230以下であること、または、脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上含有することを意味するものである。
この脂肪酸及び/又は脂肪酸亜鉛の含有量が4質量部を越える含有量では、耐破壊性、耐摩耗性の向上が見られないものとなり、好ましくない。
これらのカーボンブラックの含有量は、発熱性、耐摩耗性の点から、ゴム成分100質量部に対して、20〜60質量部含有せしめることが望ましい。
天然ゴムマスターバッチとしては、乾式マスターバッチ及び湿式マスターバッチのいずれを用いてもよい。
ここで、乾式マスターバッチとは、天然ゴムと、カーボンブラックとをバンバリーミキサー、インターナルミキサー、ロール等の混練機にて混練してマスターバッチとするものである。
また、湿式マスターバッチとは、天然ゴムラテックスと、カーボンブラックとを混合してマスターバッチとするものであり、カーボンブラックを予め水中に分散させたスラリー溶液とした後に混合することが好ましい。カーボンブラックの分散性をよくするためには、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を用い、均一に混合することが望ましい。
また、カーボンブラックの分散性を高めるためには、連続混練り機を用いて湿式マスターバッチを乾燥することが好ましく、連続混練り機として2軸混練押出機を用いることが更に好ましい。本発明の効果をより享受するためには、湿式マスターバッチがより好ましい。
上記の天然ゴムカーボンブラックマスターバッチを用いれば、天然ゴムとジエン系などの合成ゴムとの併用の場合であっても、カーボンブラックが合成ゴムに偏在するのを防ぐことができるものとなる。
これらのシリカの合計含有量は、作業性、発熱性の点から、ゴム成分100質量部に対して、25質量部以下とすることが好ましく、更に好ましくは、0〜15質量部、特に好ましくは、0.1〜15質量部含むことが望ましい。
なお、シリカの含有量が25質量部を超えると、作業性、発熱性が悪化することとなり、好ましくない。
この硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.3〜10質量部の範囲が好ましく、3〜8質量部の範囲が好ましい。
特に、本発明の空気入りタイヤをトラック、バス、建設用、航空機用等の重荷重用空気入りタイヤに適用した場合には、従来のステアリン酸(ステアリン酸亜鉛)を配合した空気入りタイヤでは経時的にもその耐摩耗性が段々と劣化していくものであったが、本発明の空気入りタイヤでは、耐摩耗性と発熱性の両立を高度に維持して、発熱性などのゴム性能を損なうことなく、耐摩耗性を大幅に向上させた重荷重用に好適な空気入りタイヤが得られるものとなる。
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、重荷重用でも、更に好ましい適用としては、OR(オフ・ザ・ロード)用として、トレッド層の厚みが100mm以上となるものに好適に用いることができる。
下記表1及び表2に示す配合処方のバンバリーミキサーで混練して、ゴム組成物を調製した。
このゴム組成物を加硫(加硫温度145℃、加硫時間30分)して、加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛の重量当たりの平均融点を下記方法により測定した。
また、得られた各ゴム組成物をトレッドに用いて、サイズ:2400R35のタイヤを試作し、下記の方法で該タイヤの耐発熱性、耐テアー性及び耐摩耗性を評価した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛をクロロホルムで抽出し、抽出物を塩酸でメチル化し、脂肪酸エステルとして、ガスクロマトフィー(アジデント社製、689ON)で定量を行った。このガスクロマトフィーでは対象の標準試薬を用いて検量線を作成し、対象物質の定量を行うことにより求めた。
上記供試タイヤのトレッド部分を取り出して、JIS K 6301に準拠して、レジリエンス(RES、%)を測定し、比較例1を100として指数表示した。数値が高いほど発熱性に優れることを示す。
上記供試タイヤを車両に装着し、5万km走行した時点でのタイヤのトレッドに発生した一定以上の傷の数を測定し、比較例1のタイヤの傷の数の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、耐テアー性に優れることを示す。
上記供試タイヤを車両に装着し、5万km走行した時点でのタイヤの溝の深さを測定し、走行距離/(走行前のタイヤの溝深さ−走行後のタイヤの溝深さ)の値を算出して、比較例1のタイヤの値を100として指数表示した。指数値が大きい程、耐摩耗性に優れることを示す。
*1:日本シリカ工業社)製、ニプシルAQ
*2:デグッサ社製、Si75
*3:ラインケミー社製、アクチプラスト PP(主成分は、オレイン酸亜鉛塩、パルミチン酸亜鉛塩)
*4:N−フェニル−N´−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン
(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラー6C)
*5:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラーCZ)
実施例を個別的に見ると、実施例1〜8及び11は、ゴム成分として天然ゴムと、硫黄と、酸化亜鉛と、各種脂肪酸とを含有するゴム組成物であって、加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上となる組み合わせであり、実施例9及10は、ゴム成分としてウェットマスターバッチ(天然ゴム+カーボンブラック)と、硫黄と、酸化亜鉛と、オレイン酸とを含有するゴム組成物であって、加硫した際に加硫ゴム中に含まれるオレイン酸亜鉛の脂肪酸の平均分子量が230以下となる組み合わせであり、これらの場合は、耐発熱性、耐テアー性及び耐摩耗性に優れ、本発明の効果を発揮できることが判明した。
これに対して、比較例を個別的に見ると、比較例1〜8は、ゴム成分として天然ゴム(比較例8では更にSBRとの併用)と、硫黄と、酸化亜鉛と、各種脂肪酸とを含有するゴム組成物であって、加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛の脂肪酸の平均分子量が230を超えるものとの組み合わせであり、これらの場合は、目的の耐発熱性、耐テアー性及び耐摩耗性を発揮できず、本発明の効果を発揮できないことが判明した。
Claims (3)
- 少なくとも天然ゴム及び/又はスチレン−ブタジエン共重合体を80質量部以上含有するゴム成分と、硫黄と、酸化亜鉛と、脂肪酸及び/又は脂肪酸亜鉛とを含有し、ステアリン酸を含有しないゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックが20〜60質量部含有してなり、上記脂肪酸及び/又は脂肪酸亜鉛の含有量が、4質量部以下であり、シリカが25質量部以下含有され、かつ、該ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上であり、上記ゴム成分及びカーボンブラックがマスターバッチからなるゴム組成物をタイヤトレッドに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 少なくとも天然ゴム及び/又はスチレン−ブタジエン共重合体を80質量部以上含有するゴム成分と、硫黄と、脂肪酸亜鉛とを含有し、ステアリン酸及び酸化亜鉛を含有しないゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックが20〜60質量部含有してなり、上記脂肪酸亜鉛の含有量が、4質量部以下であり、シリカが25質量部以下含有され、かつ、該ゴム組成物を加硫した際に加硫ゴム中に含まれる脂肪酸亜鉛成分の脂肪酸の平均分子量が230以下又は脂肪酸亜鉛成分の不飽和脂肪酸の含有量が30%以上であり、上記ゴム成分及びカーボンブラックがマスターバッチからなるゴム組成物をタイヤトレッドに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 空気入りタイヤが重荷重用空気入りタイヤであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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