PDPは、Ne、XeやAr等のガスをプラズマ放電させ、発生した紫外線により蛍光体を励起発光させ可視光に変換して、画像表示を行う表示装置である。このPDPには、交流(以下、ACとよぶ。)駆動型と直流(以下、DCとよぶ。)駆動型がある。AC駆動型は、輝度、発光効率および寿命の各性能面でDC駆動型より優れており、PDPでは主流の駆動方式となっている。
AC駆動型として代表的な交流面放電型PDPの構成の一例を、図13及び図14に示す。図13は、前面板1と背面板8を分離した状態でPDPの一部を示した斜視図である。図14は、図13の前面板1と背面板8が合体された状態を示し、図13における走査電極3および維持電極4を横切る方向に沿った断面図である。
前面板1は、透明で絶縁性を有する前面側基板2の表面上に、面放電を行う走査電極3および維持電極4からなる表示電極対5が平行に配列された構成を有する。走査電極3および維持電極4はそれぞれ、前面側基板2の表面上に形成された透明電極3a、4aと、その上に形成されたバス電極3b、4bとにより構成される。バス電極3b、4bは、例えば、銀(Ag)とその結着材であるガラスフリット材料からなる。そして表示電極対5を覆うように前面側誘電体層6が形成され、その上に保護膜7が形成されている。
一方、背面板8は、透明で絶縁性を有する背面側基板9の表面上に、画像データを書き込むためのアドレス電極10が、前面側基板2の表示電極対5に対して直交する方向に配列され、その上部が背面側誘電体層11で被覆された構成を有する。背面側誘電体層11上には、例えば低融点ガラスにより形成された、隔壁を形成するリブ12が設けられている。リブ12は、アドレス電極10に平行な方向に伸びて形成された縦リブ12aと、それと直交する方向に形成された横リブ12bとで形成された井桁形状をしている。縦リブ12aと横リブ12bとで囲まれた領域により、各画素が規定される。各画素の領域における、リブ12の側面と背面側誘電体層11の表面とには、アドレス電極10に対応して赤色蛍光体層13r、緑色蛍光体層13g、青色蛍光体層13b(総称して「蛍光体層13」とも記す)が塗布形成されている。
前面板1と背面板8とは、表示電極対5とアドレス電極10とがマトリックスを形成するように対向している。前面板1と背面板8の間で縦リブ12aと横リブ12bとで囲まれた空間が、各画素の放電空間14となる。各放電空間14に対応して、表示電極対5とアドレス電極10とが立体交差することにより、放電セル15が形成される。前面板1の表示電極対5の間には、横リブ12bの上部に対向するようにブラックストライプ16が形成されている。
前面板1と背面板8の対向面の外周部は、ガラスフリットなどのシール材によって封着され(図示せず)、放電空間14に、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスからなる放電ガスが封入されている。放電ガスは、例えば、Xeの割合が10%のものが用いられ、約450Torr(約60kPa)の圧力で封入される。
上記構成のPDPにおいて、ガス放電により紫外線を発生させ、発生した紫外線で各色の蛍光体層13を励起して発光させることによりカラー表示を行う。すなわち、バス電極3b、4bを介して維持電極4と走査電極3間に数十〜数百kHzの交流電圧を印加して放電させると、励起されたXe原子が基底状態に戻る際に発生する紫外線により蛍光体層13を励起することができる。この励起により蛍光体層13は、塗布された材料に応じた色光を発生する。アドレス電極10により発光させる画素および色の選択を行えば、所定の画素部で必要な色を発光させることができ、カラー画像を表示することが可能となる。
このような構成のAC駆動型のPDPでは、表示電極対5上に形成された前面側誘電体層6が特有の電流制限機能を発揮するので、DC駆動型のPDPに比べて長寿命である。前面側誘電体層6は、表示電極対5とブラックマトリクス16の形成後で、しかも、これらを確実に覆うように形成することが必要とされる。そのため、前面側誘電体層6は一般的には、低融点ガラスの層を印刷・焼成することにより形成されている。また、保護膜7はプラズマ放電により前面側誘電体層6がスパッタリングされないようにするために設けるもので、耐スパッタリング性に優れた材料であることが要求される。このために、酸化マグネシウム(MgO)が多く用いられている。
以上のようなPDPにおいて、表示電極対5と放電空間との間に介在させる前面側誘電体層6を、図15に示すように、マイクロシート等の誘電体用薄板17に置き換えた構成が知られている(例えば特許文献1参照)。マイクロシートとは、例えば二酸化シリコン(SiO2)と三酸化硼素(B2O3)を主成分とする硼珪酸ガラスなどの薄い誘電体シートである。厚みは、30μm程度、最大でも50μm程度である。このようなマイクロシートは、例えば液晶表示装置のシートとしても広く利用されており、耐熱性が高く線膨張係数が小さい。
この構成の場合、誘電体用薄板17には、その放電空間14側に保護膜7が形成され、低融点ガラス等のシール材で背面側基板9に封着されて、背面板8と接合される。更に、前面側基板2の表面上に走査電極3および維持電極4からなる表示電極対5が設けられた構造体(前面板)が、誘電体用薄板17上に接合される。
このように、前面側誘電体層6に代えて誘電体用薄板17を使用することにより、誘電体層を形成するための従来の煩雑な製造プロセスを簡略化することができる。また、誘電体用薄板17を低融点ガラス等のシール材で背面側基板9に封着することにより、前面側基板2は、製造工程中に高温に曝されることがなくなる。
誘電体用薄板17を低融点ガラス等のシール材で背面側基板9に封着するためには、従来のPDPにおける、前面板1と背面板8の外周部をガラスフリットによって封着する場合と同様の工程を用いることができる。その場合の工程について、図16A〜16Cを参照して説明する。但し、同図では図15の断面とは異なり、図13の縦リブ12aに対応する位置に沿った断面が示され、従ってリブ12が横方向に一様に連続して図示されている。
まず、図16Aに示すように、背面側基板9の表面上に、上述のようにアドレス電極10、背面側誘電体層11、リブ12、及び蛍光体層(図示せず)が形成された構造体を作製する。そして、背面側基板9上の外周縁部に、ガラスフリット18からなるシール材の層を形成し、誘電体用薄板17を背面側基板9に対して位置合わせして、ガラスフリット18上に載置する。ガラスフリット18はリブ12よりも大きな厚みに形成されるので、この状態では、ガラスフリット18の厚みのため、誘電体用薄板17とリブ12上面との間に間隙が形成されている。
次に、図16Bに示すように、誘電体用薄板17の上面と背面側基板9の底面を、クリップ19により押圧して挟持する。この状態で加熱してガラスフリット18が溶融すると、図16Cに示すように、クリップ19による押圧のためガラスフリット18が変形し、誘電体用薄板17がリブ12の上面に当接する。この状態で冷却されて、誘電体用薄板17と背面板8の間の外周縁間隙部20にガラスシール層18aが形成され、誘電体用薄板17と背面側基板9の封着構造が完成する。
本発明のPDPの製造方法は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
すなわち、上記構成のPDPの製造方法において、前記シール層を形成する工程では、さらに、前記誘電体用薄板と前記背面板の周縁対向部に前記シール層を形成することができる。
また、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記誘電体用薄板と前記背面板の位置関係をオモシ等で固定し、前記誘電体用薄板と前記背面板の前記シール層に対応する領域に低融点ガラスを含むシール材を付設し、前記シール材を焼成することにより前記シール層を形成することができる。
また、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記誘電体用薄板と前記背面板の位置関係をオモシ、クリップ等で固定し、前記シール層を形成するために後の工程で用いる低融点ガラスを含むシール材に含まれているものと同じ成分のバインダーを、前記誘電体用薄板の外周縁部の一部の複数個所に付設して乾燥させることにより、前記背面板と前記誘電体用薄板を相互に仮止めし、オモシ、クリップ等をはずして、前記誘電体用薄板と前記背面板の前記シール層に対応する領域に前記シール材を付設し、再度、オモシ、クリップ等で固定し、前記シール材を焼成することにより前記シール層を形成することができる。
また、前記背面板に対して、前記シール層に対応する領域に低融点ガラスを含むシール材を付設して、脱バインダーのための焼成を行い、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記誘電体用薄板と前記背面板の位置関係をオモシ、クリップ等で固定して、前記シール材を焼成することにより前記シール層を形成することができる。
また、前記背面板上における前記誘電体用薄板の周縁部よりも外側に位置する領域の少なくとも一部に、前記リブよりも高い規制突起を設け、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程で、前記規制突起により前記誘電体用薄板を位置規制させ、所定位置に前記シール層を形成することができる。
この方法の場合、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記誘電体用薄板と前記背面板の前記シール層に対応する領域に低融点ガラスを含むシール材を付設し、前記シール材を焼成することにより前記シール層を形成することができる。あるいは、前記背面板に対して、前記シール層に対応する領域に低融点ガラスを含むシール材を付設して、脱バインダーのための焼成を行い、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記シール材を焼成することにより前記シール層を形成することができる。
また、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記誘電体用薄板と前記背面板の前記シール層を形成すべき領域に接着剤の層を付設し、前記接着剤を硬化させることにより前記シール層を形成することができる。
また、前記シール材を焼成する工程を、レーザー光により局所加熱して行なうことができる。
また、前記規制突起を、前記リブの周縁部を高く突出させることにより形成することができる。
また、前記規制突起を、前記リブとは別体に形成することができる。
また、前記規制突起を、結晶化ガラスで形成することができる。
また、前記背面板上に前記誘電体用薄板を戴置する工程の後、前記誘電体用薄板と前記背面板の前記シール層に対応する領域に、エアロゾルデポジション法により無機材料の微粒子エアロゾルを噴射して前記シール層を形成することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施の形態のPDPの基本的な構成要素は、図13〜図15に示した従来例のPDPと同様である。従って、図13〜図15に示した要素と同一の要素については、同一の参照符号を付して説明し、重複した説明を簡略化する。
(実施の形態1)
実施の形態1におけるPDP及びその製造方法について、図1A〜図3を参照して説明する。図1Aは、本実施の形態のPDPの基本的な構成を示す断面図である。但し、本実施の形態は、背面板8上に誘電体用薄板17を封着した接合構造、およびその製造工程に特徴を有するものであるため、図にはこの特徴に関係する背面板8と誘電体用薄板17のみを示し、前面板(前面側基板2の表面上に走査電極3および維持電極4からなる表示電極対5が設けられた構造体)については図示を省略する。(以下の実施の形態においても、同様である。)
なお、背面板8に設けられたリブ12は、図16A〜16C等と同様、一様に連続している部分の断面が示されている。また、誘電体用薄板17については保護膜7の図示が省略されているが、実際には誘電体用薄板17は、保護膜7が形成された面を背面板8に対向させて接合される。
図1Aの構成において、誘電体用薄板17はシール層21により背面板8に封着されて、背面板8と誘電体用薄板17の間の空間が封止されている。シール層21は、誘電体用薄板17の外周縁領域における背面板8との間の間隙に形成された間隙シール部21bと、誘電体用薄板17の外周端縁を含む領域に形成された端縁領域シール部21aとからなる。端縁領域シール部21aは、少なくとも誘電体用薄板17の外周端縁及び誘電体用薄板17の誘電体用薄板17とリブ12との接触面とは反対側の面の外周縁領域に亘って形成されたシール部として定義される。
本実施の形態においては、端縁領域シール部21aのみを設けた構成でもよく、間隙シール部21bは必ずしも必要ではない。例えば図1Bに示すように、背面側誘電体層11、リブ12、及び誘電体用薄板17の大きさがこの順序であれば、間隙シール部21bを設けない構成とすることができる。図1Bの構成においては,シール層21は、誘電体用薄板17の外周端縁を含む領域に形成された端縁領域シール部21aのみにより形成される。
シール層21を形成する工程は、例えば、次のように行なわれる。まず、保護膜が蒸着された誘電体用薄板17を、保護膜面が放電空間となるように背面板8上に位置決めして、リブ12に当接させて戴置する。次に、背面板8と誘電体用薄板17の位置関係をオモシ等で固定する。次に、誘電体用薄板17と背面板8の間の外周縁間隙、及び誘電体用薄板17の外周端縁を含む領域に亘って、例えばガラスフリットからなるシール材をディスペンサで印刷する。次に、シール材を焼成することにより、間隙シール部21bと端縁領域シール部21aからなるシール層21が形成されて封着が完了する。
上記構成及び製造方法によれば、誘電体用薄板17は、封着される前の位置決め状態においてリブ12により支持されるので、実質的に誘電体用薄板17の全面で押圧力を受けることになる。従って、従来例において、誘電体用薄板17には、シール材に当接する特定の部分にのみ過度な押圧力がかかっていた場合と比べると、誘電体用薄板17が割れ難くなる。これにより、安定したパネル生産が可能となる。
上述のような背面板8と誘電体用薄板17の接合構造を有するPDPを作製するために、他の部分の製造工程としては、従来周知の製造工程を一部変更して適用することができる。これについて、図1及び図15を参照して説明する。
先ず、背面板8を作製するために、背面側基板9にアドレス電極10、低融点ガラスからなるリブ12、及び蛍光体層を、それぞれスクリーン印刷法により形成する。また、誘電体用薄板17の上にMgO保護膜(図示せず)を形成する。MgO保護膜は、誘電体用薄板17の保護膜を付けるべき範囲に電子線蒸着法により形成することができる。
図15に示したような前面板1を作製するための工程は、以下のように行なうことができる。まず、前面側基板2としては、ガラス以外の材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等を用いることができる。そして、透明電極3a、4aを形成する領域に、スパッタ等によってITO膜を形成後、エッチングにより透明電極3a、4aの電極パターンを形成する。次に、バス電極3b、4bを形成する領域に、スパッタ等によって金属膜(Cr/Cu/Cr等)を形成後、エッチングによりバス電極3b、4bの電極パターンを形成する。
その後、MgO保護膜が形成された誘電体用薄板17と背面板8を、上述のようにシール層21を形成して封着し、両板の間に形成された放電空間を排気した後、放電ガスを満たしてチップオフする。その後、背面板8上に封着された誘電体用薄板17と前面板1とを、例えば、常温下で接着剤により貼り合わせてパネル化する。
前面板1と誘電体用薄板17(+背面板8)の接着は、例えば、以下のようにして行うことができる。前面板1を構成する前面側基板2を透明基板で形成する場合は、高温プロセスに耐えることができない。従って、前面板1と誘電体用薄板17の接合は低温プロセスで行わなければならない。すなわち、前面板1と誘電体用薄板17の周縁部のみを接合する場合は、絶縁性接着剤を用いることができる(透明である必要はない)。また、前面板1と誘電体用薄板17を面全体で接続する場合は、エポキシ接着剤、アクリル接着剤等の絶縁性透明接着層を用いる。
誘電体用薄板17としては、例えば、二酸化シリコン(SiO2)と三酸化硼素(B2O3)を主成分とする硼珪酸ガラス、BaOとAl2O3を多く含んだ硼珪酸系無アルカリガラスなどの薄い誘電体シートを用いることができる。
シール材としては、例えば、低融点ガラスを用いる。一般的な低融点ガラスの融点は、脱ガス工程時の温度以上に設定されている。前面板と背面板の封着後に、保護膜、リブ、蛍光体の脱ガス工程(焼成)を必要とするためである。シール材の層の形成方法としては、スクリーン印刷、ディスペンサーによる直描のいずれを用いてもよい。
<誘電体用薄板と背面板の封着の変形例>
図1Aに示した封着構造の変形例について、図2A及び図2Bを参照して説明する。この例は、誘電体用薄板17を背面板8に対してクリップで固定した状態では、ディスペンサでシール材を印刷する時、クリップが邪魔で印刷し難いことを避けるための方法である。
先ず図2Aに示すように、誘電体用薄板17を背面板8に対して位置合わせした後、クリップ等(図示せず)で固定する。次に、シール材に含まれているものと同じ成分のバインダー22を、クリップ等が邪魔にならない箇所に数箇所印刷して、仮止めを行う。
バインダーの乾燥後、クリップをはずしても、バインダーで仮止めされているので、位置づれすることはない。従って、クリップを外した後、図2Bに示すようにシール材23を全外周縁に亘って印刷する。その後、もう一度、クリップ等で固定して焼成を行う。仮止めに使ったバインダーは脱バインダー焼成で消失するので、問題にならない。
<誘電体用薄板と背面板の封着の他の構成例>
本実施の形態における封着方法の他の構成例について、図3A、3Bを参照して説明する。この構成例では、誘電体用薄板17を背面板8に対して位置合わせする前に、先ず図3Aに示すように、背面板8における接続部の周りに、シール材24をディスペンサで印刷して、脱バインダーのため焼成する。
次に、誘電体用薄板17の保護膜を蒸着し、誘電体薄板17の保護膜面が放電空間となるように背面板8と張り合わせる。その際、シール材24と、誘電体用薄板17が互いに接触しない状態となるように、印刷位置が調整される。誘電体用薄板17が動かないようにクリップ等(図示せず)で固定した後、焼成を行うと、シール材24が溶けて、流動化して、図3Bに示すように、シール層25を形成する。
この方法によれば、シール材24の脱バインダー焼成後に封着するので、脱バインダー焼成による保護膜への汚染の影響が抑制される。
(実施の形態2)
実施の形態2におけるPDP及びその製造方法について、図4〜図7Bを参照して説明する。図4は、本実施の形態におけるPDPの基本的な構成を説明するための断面図である。但し、図4は製造工程の一部を示す。本実施の形態の特徴は、背面板8上の周縁部に、誘電体用薄板17の面方向における位置決めを行なうための規制突起26を、リブ12よりも高くなるように設けたことである。
規制突起26は、封着工程においてシール材が溶融した時に、誘電体用薄板17が移動しないように保持するための要素である。従って、従来の製造工程で用いられた、クリップあるいは重り等の固定手段に代えて用いられる。それにより、クリップ等の圧力による割れが回避されるので、安定したパネル生産を実現できる。
図4では、規制突起26は、リブ12の周縁部を高く突出させることにより形成されている。従って、規制突起26の内側のリブ12上に、凹部27が形成されている。この凹部27に誘電体用薄板17を装着することにより、誘電体用薄板17は背面板8上に位置規制されて保持される。封着工程においてシール材が溶融する時にも、誘電体用薄板17が移動することはない。
規制突起26は、誘電体用薄板17の周囲4辺のうち2辺以上に配置されればよい。また、規制突起26は、各1辺の全周縁に亘って設けられる必要はなく、少なくとも一部に設けられればよい。また、規制突起26は、図4に示した例のように、リブ12の形成時に同時に設けることができる。図4の規制突起26の構成を用い、誘電体用薄板17を背面板8に封着するための工程の例について説明する。
図5Aは第1例を示す。まず、図4に示したとおり、背面板8の規制突起26に位置規制されるように、誘電体用薄板17を背面板8上に戴置する。次に、シール材23を全外周縁に亘って印刷し、封着のための焼成を行なう。
図5Bは第2例を示す。この例では、シール材23を形成する方法が図5Aの場合と相違する。シール材28を形成後、脱バインダー焼成を行い、その後誘電体用薄板17と背面板8を組み合わせて、封着のための焼成を行なう。
また、規制突起の他の構成例として、図6に示すように、結晶化ガラスで規制突起29を形成することができる。結晶化ガラスは、一度溶融すると溶融温度が高くなり、次には同じ温度では溶融しない。2回目の溶融温度が、封着時に使用するシール材の溶融温度より高くなるように調整する。背面板8上への規制突起29の形成は、リブ12が形成された背面板8に規制突起用ガラス材をスクリーン印刷またはディスペンサで付着させ、その後、規制突起用ガラス材を結晶化させるために焼成する工程により行なうことができる。
その後、規制突起29による位置規制を用いて、誘電体用薄板17を背面板8に封着するための工程は、図7A、図7Bに示すように行なうことができる。図7A、図7Bに示す工程は、図5A、図5Bに示した工程に対応するので、シール材23及びシール材28を同一の参照番号で示し、説明の繰り返しは省略する。
以上の構成において、リブ12の気密性が悪く、ガスが抜ける場合は、シール材23、28がリブ12を覆うように形成する。
(実施の形態3)
実施の形態3におけるPDP及びその製造方法について、図8を参照して説明する。本実施の形態は、誘電体用薄板と背面板の接続部を接着剤により封着することを特徴とする。
実施の形態1、2により誘電体用薄板を背面板に封着する場合、シール材が溶融するまで、温度を上げる必要がある。その結果、誘電体用薄板が割れ易くなる。これに対して、本実施の形態によれば、高い温度に昇温させる必要がないので、温度による誘電体用薄板の割れが抑制される。
図8に示す本実施の形態の構成では、実施の形態2の図4に示した構成と同様、リブ12の周縁部に規制突起26が設けられている。誘電体用薄板17は、リブ12の上面に規制突起26により位置決めされて載置される。この状態で、誘電体用薄板17と背面板8の接続部が、接着剤30により封着されている。この構成によれば、接着剤30によって、低温プロセスを用いて封着することが可能である。必要に応じて更に、コート層31により接着剤30の表面をコーティングする。すなわち、コート層31は、接着剤30の気密性を補い封着部の気密性をより向上させるために用いられ、無機物または有機物のいずれでもよい。
封着のプロセスでは、背面板8の脱ガスのために、雰囲気を制御した空間(真空または窒素、希ガス等)で焼成を行う。保護膜を大気に暴露すると、保護膜が水酸化・炭酸化してしまい,放電開始電圧が異常に高くなる場合がある。このような場合一般的には、封着後の焼成工程にて保護膜の水酸化・炭酸化を元に戻すことにより、放電開始電圧が異常に高い値から使用可能な値に低下する。封着のプロセスの一例として、以下のように行うことができる。
すなわち、誘電体用薄板17に保護膜蒸着後、予め背面板を焼成して脱ガスを行った状態で、雰囲気を制御した空間で背面板8と誘電体用薄板17を張り合わせ、ディスペンサで接着剤30を印刷する。雰囲気を制御して空間を加熱(例えば80〜150℃)して接着剤30を硬化させる。所定時間経過後、雰囲気制御した空間の温度を常温にする。その後、必要があれば、接着剤30の表面に無機物または有機物のコート層31でコーティングする。最後に、封着された誘電体用薄板17と背面板8を、雰囲気を制御した空間から取り出す。
このような工程によれば、雰囲気を制御した空間にしか保護膜が暴露されないので、保護膜が水酸化・炭酸化することが抑制される。それにより、保護膜の水酸化・炭酸化を元に戻す焼成工程が不要となる。
接着剤30としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。アクリル樹脂とエポキシ樹脂を組み合わせたものでもよい。
接着方法としては、上述のプロセスでは熱硬化性接着剤を用いた例について説明したが、紫外線硬化性接着剤を用いてもよい。その場合、接着剤30の印刷後に、光を当てて硬化されることにより接着させる。また、紫外線硬化性接着剤と熱硬化性接着剤のハイブリッドの場合、光を当てた後、加熱(例えば80〜150度程度)して接着させる。
また、図8には、リブ12の上面に規制突起26が設けられた例を図示したが、図6に示したものと同様に、追加構造物として、規制突起29を結晶化ガラスにより形成した構造にも、本実施の形態を同様に適用できる。その場合も、リブ12の気密性が悪く、ガスが抜ける場合は、接着剤30がリブ12を覆うように形成する。
本実施の形態では規制突起を用いて位置を固定する場合について説明したが、実施の形態1のように、規制突起に代えてオモリ等により位置を固定してもよい。
(実施の形態4)
実施の形態4におけるPDP及びその製造方法について、図9A〜図11Cを参照して説明する。本実施の形態は、誘電体用薄板と背面板の接続部を局所加熱することにより封着することを特徴とする。
本実施の形態は、実施の形態3と同様の問題を解消することを課題とする。すなわち、実施の形態1、2により誘電体用薄板を背面板に封着する場合、シール材が溶融するまで温度を上げる必要があるが、それにより、誘電体用薄板が割れ易くなる。本実施の形態によれば、局所加熱を採用することにより、基板全体を昇温させる必要がないので、温度による誘電体用薄板の割れが抑制される。
さらに、実施の形態3と同様に雰囲気を制御した空間を用いれば、保護膜、リブ、蛍光体の脱ガス工程が不要となる。この場合、シール材は低い温度で溶けるような材料でも良い。これに対して、従来と同様の温度で溶けるシール材を使用すれば、保護膜、リブ、蛍光体の脱ガス工程のために昇温させることが可能である。
<本実施の形態における第1例の製造方法>
本実施の形態における封着のプロセスの第1例について、図9A〜9Cを参照して説明する。まず、図9Aに示すように背面板8の周縁部に、図6に示した構成と同様に追加構造物として、規制突起29を結晶化ガラスにより形成する。すなわち、規制突起29を形成するための追加構造物を印刷して焼成を行う。次に、図9Bに示すように、保護膜を蒸着した誘電体用薄板17を、リブ12上に載置し、シール材23を誘電体用薄板17と背面板8の接続部に印刷する。
その後、図9Cに示すように、誘電体用薄板17側からレーザー光32を照射して、シール材23を溶融させる。このとき、規制突起29、背面側誘電体層11、アドレス電極10、背面側基板9は、レーザー照射によって溶けることはない。溶けたシール材23により形成されたシール層23aにより誘電体用薄板17の周りが覆われ、封着される。
この例では、規制突起29を結晶化ガラスにより追加の構造物として形成した構造について図示したが、図4に示したものと同様に、リブ12の周縁部に規制突起26を形成した構造にも、本実施の形態を同様に適用できる。
本実施の形態では規制突起を用いて位置を固定する場合について説明したが、実施の形態1のように、規制突起に代えてオモリ等により位置を固定してもよい。
<本実施の形態における第2例の製造方法>
次に、本実施の形態における封着のプロセスの第2例について、図10A〜10Cを参照して説明する。まず、図10Aに示すように背面板8の周縁部に、規制突起33を印刷し、その上に更に、シール材34を印刷して、脱バインダー焼成をする。次に、図10Bに示すように、保護膜を蒸着した誘電体用薄板17を、規制突起33により位置規制されるように背面板8と組み合わせる。
その後、図10Cに示すように、誘電体用薄板17側からレーザー光32を照射して、シール材34を溶融させる。このとき、規制突起33、背面側誘電体層11、アドレス電極10、背面側基板9は、レーザー照射によって溶融することはない。シール材34が溶けることで、誘電体用薄板17の周りが覆われて、封着することができる。この例では、規制突起33を形成した構造について図示したが、図4に示したものと同様に、リブ12の周縁部を規制突起26として形成した構造にも、本実施の形態を同様に適用できる。
本実施の形態では規制突起を用いて位置を固定する場合について説明したが、実施の形態1のように、規制突起に代えてオモリ等により位置を固定してもよい。
<本実施の形態における第3例の製造方法>
次に、本実施の形態における封着のプロセスの第3例について、図11A〜11Cを参照して説明する。まず、図11Aに示すように背面板8上のリブ12の周縁部に、高さ調整用構造物35(例えば、結晶化ガラス)を印刷して、焼成を行う。次に、図11Bに示すように、高さ調整用構造物35の上面にシール材36を印刷して、脱バインダー焼成を行う。焼成後の高さ調整用構造物35と焼成後のシール材36を合わせた高さは、リブ12の高さと同等になるように調整する。シール材36の厚みは、20μm以下と、薄くする。
次に、保護膜を蒸着した誘電体用薄板17を背面板8と組み合わせる。この際、誘電体用薄板17の周縁部は、高さ調整用構造物35上のシール材36に当接する大きさに調整されている。
次に、図11Cに示すように、誘電体用薄板17側から、レーザー光32を照射して、シール材36を溶融させる。シール材36は薄いので、熱量が少なくてもよく、レーザー光32を一瞬照射するだけでよい。一瞬で溶けて一瞬で硬化するので、形状変化が小さい。すなわち、シール材がほぼ流動化しないので、誘電体用薄板17が移動するようなことは起こらない。従って、背面板8に誘電体用薄板17を位置決めして保持する構造物は不要である。誘電体用薄板17の自重により、リブ12の上面と誘電体用薄板17下面の保護膜間で摩擦力が作用して、誘電体用薄板17が位置規制されるからである。
このように、第3例では、第1及び第2例とは異なり、シール材23、33が溶融し、形状が変わるほど流動して隙間を埋める作用を用いるものではない。第3例では、シール材36が溶融するものの、接している面の接合に必要十分な程度の作用が利用される。
本実施の形態において、シール材23、34、36は、レーザー光32の波長(例えば800〜1000nm)を吸収し易い材料とする。また、局所加熱は、レーザー光を用いることに限られず、ランプを用いて行うことも可能である。また、第3例においては、誘電体用薄板17と背面板8を組み合わせた状態を固定するためのクリップ等を使っても良い。
(実施の形態5)
実施の形態5におけるPDP及びその製造方法について、図12を参照して説明する。本実施の形態は、誘電体用薄板17と背面板8の接続部のシール層37が、エアロゾルデポジション法(AD法)により形成された金属酸化物や金属窒化物等の緻密層であることを特徴とする。
AD法は、セラミックス微粉末のようなサブミクロン径の微粒子または超微粒子の原料粉をガスと混合してエアロゾル化し、減圧下(準真空)の雰囲気でノズルを通して高速で基板に噴射することにより、常温衝撃固化現象を利用して、10〜20nmの微結晶からなる緻密なセラミックス膜を形成する技術である。ガス搬送により加速された原料粒子の運動エネルギーが、基板に衝突することにより局所的な熱エネルギーに変換され、基板−粒子間、粒子同士の結合を実現し、加熱することなく機械的な衝撃力だけで、緻密かつ高透明、高強度、高密着力のセラミックス被膜を形成することができる(例えば、特許文献2及び3を参照)。この方法により、300℃以下の常温で1μm/min以上という高速なセラミックス膜形成が可能になる。AD法により、例えば、Al2O3、Y2O3、SiO2等の無機材料の膜を形成することができる。
AD法により誘電体用薄板17と背面板8の間を封着するプロセスには、例えば、図4と示した構成と同様、リブ12の周縁部に規制突起26が設けられた構成を用いる。規制突起26により位置決めされるように誘電体用薄板17を載置し、この状態で、誘電体用薄板17とリブ12の間を周縁部にシール層37を形成する。すなわち、エアロゾルデポジションのノズル(図示せず)から、誘電体用薄板17と規制突起26の間の周縁部分に、無機材料(アルミナ、シリカ、イットリアなどの金属系酸化物)の微粒子エアロゾルを噴射して、シール層37を形成する。シール層37として、金属酸化物の緻密層が形成されて封着が行われる。
このようにAD法によりシール層37を形成することにより、気密封止構造を形成するための大気中での加熱が不要で、常温で封着工程を行うことが可能である。そのため、実施の形態3、4と同様の問題を解消することができる。すなわち、実施の形態1、2により誘電体用薄板を背面板に封着する場合、シール材が溶融するまで温度を上げる必要がある。その結果、誘電体用薄板が割れ易くなる。
これに対して、本実施の形態によれは、常温での封着工程が可能であるため、昇温による誘電体用薄板の割れが抑制される。また、熱膨張に起因するアラインメントのずれや、シール層の形成に起因する封着対象の部材間の相対位置の変化は発生しないため、アラインメントのずれが最小限になる。さらに、実施の形態3と同様に雰囲気を制御した空間を用いれば、保護膜、リブ、蛍光体の脱ガス工程が不要となる。一方、AD法により形成されるシール層37は無機材料からなるため、保護膜、リブ、蛍光体の脱ガス工程のために昇温させることが可能である。
なお、上記構成では、リブ12の上面に規制突起26が設けられた場合を例として示したが、図6に示したものと同様に追加構造物として、規制突起29を結晶化ガラスにより形成した構造にも、本実施の形態を同様に適用できる。リブ12の気密性が悪く、ガスが抜ける場合は、AD法のシール層37がリブ12を覆うように形成する。
本実施の形態では規制突起を用いて位置を固定する場合について説明したが、実施の形態1のように、規制突起に代えてオモリ等により位置を固定してもよい。