以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
実施の形態1.
[可変動弁装置の全体構成]
(可変動弁装置の構成)
図1乃至図5を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1の内燃機関1の可変動弁装置10を示す斜視図である。図1においては、後述するカムシャフト18の図示が省略されている。図1においては、一部の気筒(#1および#2)以外の図示が省略されているが、本実施形態の内燃機関1は、一例として、4つの気筒(#1〜#4)を有する直列4気筒型エンジンであるものとする。内燃機関1の個々の気筒には、一例として、2つの吸気バルブと2つの排気バルブとが備わっているものとする。可変動弁装置10は、各気筒に配設された吸気バルブ、或いは排気バルブを駆動する装置として機能するものとする。
図1に示すように、内燃機関1の各気筒には、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが1つずつ隣接して備えられている。各気筒のロッカーアーム12、14は、1本のロッカーシャフト16によって回転(揺動)自在に支持されている。
図2は、図1に示すロッカーシャフト16の軸線と後述する切換ピン38の軸線とを含む平面で、カムシャフト18を除く可変動弁装置10の要部を切断した断面図である。尚、図2(A)は、後述する連結状態にある可変動弁装置10を示し、図2(B)は、後述する非連結状態にある可変動弁装置10を示している。
カムシャフト18は、図示省略するクランクシャフトに対してタイミングチェーンまたはタイミングベルトあるいは歯車によって連結され、クランクシャフトの1/2の速度で回転するように構成されている。図2に示すように、カムシャフト18には、1気筒当たり1つの主カム20と1つの副カム22とが形成されている。また、上記ロッカーシャフト16は、カムシャフト18と平行に配置されている。
主カム20は、カムシャフト18と同軸の円弧状のベース円部と、当該ベース円の一部を半径方向外側に向かって膨らませるように形成されたノーズ部とを有するカム(リフトカム)として構成されているものとする。また、本実施形態では、副カム22は、ベース円部のみを有するカム(ゼロリフトカム)として構成されているものとする。
図1及び図2に示すように、第1ロッカーアーム12には、主カム20と接することができる位置に、第1ローラ24が回転自在に取り付けられている。第1ロッカーアーム12は、ロッカーシャフト16に取り付けられたスプリング(図示省略)によって、第1ローラ24が主カム20と常に当接するように付勢されている。上記のように構成された第1ロッカーアーム12は、主カム20の作用力と上記スプリングの付勢力との協働により、ロッカーシャフト16を支点として揺動するようになる。
また、第2ロッカーアーム14には、副カム22と接することができる位置に、第2ローラ26が回転自在に取り付けられている。また、第2ロッカーアーム14におけるロッカーシャフト16側の端部においては、ロッカーシャフト16がラッシュアジャスタ(図示省略)を介して内燃機関1の静止部材であるカムキャリア27(或いはシリンダヘッド等)によって支持されているものとする。第2ロッカーアーム14に設けられた第2ローラ26は、上記ラッシュアジャスタから押し上げ力を受けることによって、副カム22に向けて付勢されている。
また、第2ロッカーアーム14におけるロッカーシャフト16と反対側の端部には、2つのバルブ28に当接する当接部14aが設けられている。すなわち、第2ロッカーアーム14は、これら2つのバルブ28に対して共用されており、より具体的には、同一気筒内に備えられた2つのバルブ28の中間に位置するように配置されている。また、バルブ28は、図1に示すバルブスプリング30によって閉弁方向に付勢されている。
(切換機構の構成)
可変動弁装置10は、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが連結した連結状態(図2(A)参照)と、その連結が解除された非連結状態(図2(B)参照)とを切り換えるための切換機構32を備えている。このような切換機構32を備えることによって、主カム20の作用力が第1ロッカーアーム12を介して第2ロッカーアーム14に伝達される状態(上記連結状態)と、当該作用力が第2ロッカーアーム14に伝達されない状態(上記非連結状態)とを切り換えて、バルブ28の開弁特性を切り換えることができるようになっている。
上記切換機構32の構成について説明する。図2に示すように、第1ローラ24の支軸34の内部には、第1ローラ24と同心の第1ピン孔34aが形成されており、第2ローラ26の支軸36の内部には、第2ローラ26と同心の第2ピン孔36aが形成されている。
上記のピン孔34a、36aの中心は、ロッカーアーム12、14の回転中心であるロッカーシャフト16を中心とする同じ半径に配置されている。そして、第1ローラ24が主カム20のベース円部と当接し、かつ、第2ローラ26が副カム22のベース円部と当接している時に、第1ピン孔34aの位置と第2ピン孔36aの位置とが一致するようになっている。
更に、上記のピン孔34a、36aには、円柱状の切換ピン38が移動自在に配置されている。また、第1ピン孔34aは、第2ロッカーアーム14と反対側の端部が閉塞され、かつ、第2ロッカーアーム14側の端部が開口されている。そして、第1ピン孔34aの内部には、切換ピン38を第2ロッカーアーム14方向(以下、「切換ピンの進出方向」と称する)に向けて付勢するリターンスプリング40が配置されている。より具体的には、リターンスプリング40は、実装された状態において、第2ロッカーアーム14側に向けて切換ピン38を常時付勢するように構成されている。
また、第2ピン孔36aは、貫通孔であり、その内部には、円柱状のピストン42が移動自在に挿入されている。更に、#1気筒においては、第2ロッカーアーム14における第1ロッカーアーム12の反対側の側面には、ピストン42と当接するアーム部44aを有する第1スライドアーム44が配置されている。第1スライドアーム44は、ロッカーシャフト16に取り付けられている。
一方、#2気筒においては、第2ロッカーアーム14における第1ロッカーアーム12の反対側の側面には、ピストン42と当接するアーム部46aを有する第2スライドアーム46が配置されている。第2スライドアーム46は、ロッカーシャフト16に取り付けられている。
第2スライドアーム46に対する第1スライドアーム44の相違点は、次の通りである。すなわち、第1スライドアーム44のアーム部44aの先端には、カムシャフト18の周面に向けて突出するようにスライドアームピン44bが設けられている。また、第1スライドアーム44におけるアーム部44aの反対側の端部には、後述する電磁ソレノイド54により押圧される押圧面44cが設けられている。尚、図示が省略された#3、4気筒が備えるスライドアームは、#2気筒と同じ第2スライドアーム46であるものとする。
図2に示すように、ロッカーシャフト16は、中空状に形成されている。ロッカーシャフト16の内部には、リンクシャフト48がロッカーシャフト16との間で摺動自在に挿入されている。リンクシャフト48は、#1気筒に配置される第1スライドアーム44および#2〜#4気筒に配置される第2スライドアーム46を、ロッカーシャフト16の軸方向に同時に変位可能とするために備えられたシャフトである。
リンクシャフト48には、各気筒のスライドアーム44、46の配置部位に対応して、環状溝48aが形成されている。また、ロッカーシャフト16における各環状溝48aに対応する周面には、図示省略する貫通孔が形成されている。
また、リンクシャフト48およびそれが挿入されたロッカーシャフト16は、スライドアーム44、46の内部を貫通している。そして、スライドアーム44、46には、圧入ピンの圧入を受ける圧入ピン用孔がそれぞれ形成されている。各圧入ピンは、圧入ピン用孔を介してスライドアーム44、46を貫通したうえで、各環状溝48aと係合するようになっている。
尚、環状溝48aの幅は、圧入ピンの径と同等となるように設定されている。また、ロッカーシャフト16の各貫通孔は、後述する電磁ソレノイド54の動作に伴って第1スライドアーム44が回転する際に、圧入ピンと干渉して第1スライドアーム44の当該回転を妨げることがないように、余裕を持った大きさで形成されている。更に、各貫通孔は、当該電磁ソレノイド54の動作に伴ってリンクシャフト48がその軸方向に移動する際に、圧入ピンと干渉してリンクシャフト48の当該移動を妨げることがないように長穴状に形成されている。
以上のような構成を採用することにより、第1スライドアーム44は、回転自在かつ軸方向の移動を拘束した態様でリンクシャフト48と連結されている。また、同様に、第2スライドアーム46についても、回転自在かつ軸方向の移動を拘束した態様でリンクシャフト48と連結されている。
また、図2に示すように、カムシャフト18において、第1スライドアーム44のアーム部44aに設けられたスライドアームピン44bと対向する外周面には、円筒状に形成された円筒部18aが形成されている。円筒部18aの外周面には、周方向に延びる螺旋状のガイドレール52が形成されている。詳細には、ガイドレール52は、螺旋状溝部の始端と終端とに直線溝部が接続された溝として形成されている。ガイドレール52の溝幅は、スライドアームピン44bの外径よりも若干大きく形成されている。
また、切換機構32は、スライドアームピン44bをガイドレール52に挿入させるための駆動力を発するアクチュエータとして、電磁ソレノイド54を備えている。電磁ソレノイド54は、ECU(Electronic Control Unit)56からの指令に基づいてデューティ制御されるようになっている。ECU56は、内燃機関1の運転状態を制御するための電子制御ユニットである。
また、電磁ソレノイド54は、駆動軸54aを備え、カムキャリア27等の停止部材に固定されているものとする。ここで、駆動軸54aは、スライドアームピン44bをガイドレール52に向けて押圧面44cを押圧可能な位置に設けられている。
また、ガイドレール52における螺旋の向きは、その内部にスライドアームピン44bが挿入された状態でカムシャフト18が一定の回転方向に回転する場合に、第1スライドアーム44、当該第1スライドアーム44に連動するリンクシャフト48、および、当該リンクシャフト48により駆動される第2スライドアーム46を、図2における左方向に変位させられるように設定されている。より具体的には、この図2における左方向とは、第1スライドアーム44および第2スライドアーム46のそれぞれが切換ピン38をリターンスプリング40の付勢力に抗してその退出方向(上記切換ピンの進出方向の逆方向)に押し退けて、第1スライドアーム44および第2スライドアーム46がロッカーアーム12、14に近づくようになる方向である。
ここで、図2(A)における第1スライドアーム44の位置、すなわち、リターンスプリング40の付勢力によって切換ピン38が第1ピン孔34aおよび第2ピン孔36aの双方に挿入された状態となっている時の第1スライドアーム44の位置を、「変位端Pmax1」と称する。この変位端Pmax1に第1スライドアーム44が位置している時には、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが上記連結状態となる。
そして、図2(B)における第1スライドアーム44の位置、すなわち、切換ピン38がスライドアーム44、46からカムシャフト18の回転力を利用した力を受けることによって、切換ピン38およびピストン42がそれぞれ第1ピン孔34aおよび第2ピン孔36aのみに挿入された状態となっている時の第1スライドアーム44の位置を、「変位端Pmax2」と称する。すなわち、この変位端Pmax2に第1スライドアーム44が位置している時には、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが上記非連結状態となる。
図3は、図1に示す可変動弁装置10をカムシャフト18(およびロッカーシャフト16)の軸方向から見た図である。本実施形態では、カムシャフト18の軸方向におけるガイドレール52の始端52aの位置は、第1スライドアーム44が上記変位端Pmax1に位置する時のスライドアームピン44bの位置と一致するように設定されている。そして、カムシャフト18の軸方向におけるガイドレール52の終端52bの位置は、第1スライドアーム44が上記変位端Pmax2に位置する時のスライドアームピン44bの位置と一致するように設定されている。つまり、本実施形態では、ガイドレール52によってスライドアームピン44bが案内される範囲内で、第1スライドアーム44が変位端Pmax1からPmax2の間で変位可能となるように構成されている。
また、図3に示すように、ガイドレール52には、第1スライドアーム44が変位端Pmax1に位置する時の始端52a側の所定区間として、カムシャフト18の周方向に延びた開始直線溝部60が設けられている。開始直線溝部60は、カムシャフト18の回転に伴ってガイドレール52が徐々に深くなる浅底部である。更に、ガイドレール52には、第1スライドアーム44が変位端Pmax2に達した後の終端52b側の所定区間として、カムシャフト18の周方向に延びた終了直線溝部64が設けられている。終了直線溝部64は、カムシャフト18の回転に伴ってガイドレール52が徐々に浅くなる浅底部である。
また、第1スライドアーム44には、押圧面44cの一部を切り欠いて凹状に形成された切欠部44eが設けられている。押圧面44cは、図3の矢印α方向に電磁ソレノイド54の駆動力が加えられた場合に、第1スライドアーム44が変位端Pmax1からPmax2に変位する間、駆動軸54aと当接した状態が維持されるように設けられている。そして、切欠部44eは、第1スライドアーム44が上記変位端Pmax2に位置している状態において、上記浅底部である終了直線溝部64の作用によってスライドアームピン44bが円筒部18aの表面に取り出された時に、駆動軸54aと係合可能な部位に設けられている。
そして、上記切欠部44eは、第1スライドアーム44が切換ピン38の進出方向に移動するのを規制可能な態様で、駆動軸54aと係合するように形成されている。
以上説明したように、切換ピン38、リターンスプリング40、ピストン42、第1スライドアーム44、第2スライドアーム46、リンクシャフト48、圧入ピン、ガイドレール52、および、ECU56により通電が制御される電磁ソレノイド54によって、上記切換機構32が構成されている。
[可変動弁装置の基本動作]
(弁稼動状態時)
弁稼働状態時には、電磁ソレノイド54の駆動がOFFとされており、これにより、第1スライドアーム44は、カムシャフト18から離れた状態で、リターンスプリング40の付勢力を受けて、変位端Pmax1に位置している。この状態では、図2(A)に示すように、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが切換ピン38を介して連結されている(上記連結状態)。その結果、主カム20の作用力が第1ロッカーアーム12から第2ロッカーアーム14を介して双方のバルブ28に伝達されるようになる。このため、主カム20のプロフィールに従って、通常のバルブ28のリフト動作が行われるようになる。
(弁停止制御時)
弁停止動作は、例えば、内燃機関1のフューエルカット要求等の所定の弁停止動作の実行要求がECU56によって検知された際に行われる。先ず、所定のタイミングで電磁ソレノイド54への通電が開始される。その結果、図3における時計回りに第1スライドアーム44がロッカーシャフト16(リンクシャフト48)を中心として回転する。
上記のように第1スライドアーム44が回転すると、スライドアームピン44bがガイドレール52と係合する。その結果、スライドアームピン44bがガイドレール52によって案内されることでカムシャフト18の回転力を利用して、第1スライドアーム44が変位端Pmax2に向けて移動するようになる。そして、ガイドレール52からの第1スライドアーム44の駆動力が圧入ピンおよびリンクシャフト48を介して各第2スライドアーム46に伝達されることで、第1スライドアーム44に連結されたリンクシャフト48、更には、リンクシャフト48に連結された各第2スライドアーム46が第1スライドアーム44に連動して変位するようになる。
第1スライドアーム44が変位端Pmax2に達すると、切換ピン38が第1ピン孔34a内に戻されるので、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが非連結状態となる。その結果、主カム20の作用力が第1ロッカーアーム12から第2ロッカーアーム14に伝達されなくなる。また、第2ローラ26が当接する副カム22はゼロリフトカムである。このため、主カム20の作用力が伝達されなくなった第2ロッカーアーム14には、バルブ28を駆動するための力が与えられなくなる。その結果、主カム20の回転に関係なく、第2ロッカーアーム14が静止状態となるので、バルブ28のリフト動作が閉弁位置で停止状態となる。
(弁停止状態を保持するための動作)
また、第1スライドアーム44が変位端Pmax2に達すると、ガイドレール52の浅底部である終了直線溝部64の作用によって、第1スライドアーム44がカムシャフト18(ガイドレール52)から離れる方向に回転させられるようになる。そして、電磁ソレノイド54によって駆動され続けている駆動軸54aが切欠部44eに一致するようになるまで第1スライドアーム44が更に回転すると、駆動軸54aと当接する第1スライドアーム44側の部位が押圧面44cから切欠部44eへと切り替わる。その結果、駆動軸54aが切欠部44eと係合することで、第1スライドアーム44は、スライドアームピン44bがカムシャフト18から離れた状態で、かつ、駆動軸54aによってリターンスプリング40の付勢力を受け止めている状態で保持されるようになる。これにより、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが非連結とされた状態、すなわち、弁停止状態が維持されるようになる。また、このような切欠部44eを利用した駆動軸54aによる第1スライドアーム44の保持動作によれば、回転するカムシャフト18とスライドアームピン44bとの摺動に伴うフリクションやスライドアームピン44bの摩耗の発生を回避しつつ、弁停止状態を維持できるようになる。
(弁復帰動作時)
弁停止状態から弁稼動状態に戻すための弁復帰動作は、例えば、フューエルカットからの復帰要求等の所定の弁復帰動作の実行要求がECU56によって検知された際に行われる。このような弁復帰動作は、所定のタイミングで電磁ソレノイド54への通電をOFFとすることで開始される。電磁ソレノイド54への通電がOFFとされると、第1スライドアーム44の切欠部44eと駆動軸54aとの係合が解かれることになる。その結果、リターンスプリング40の付勢力に抗して切換ピン38を第1ピン孔34a内に留めておく力が消滅することになる。これにより、リターンスプリング40の付勢力によって、切換ピン38がその進出方向に移動し、第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが切換ピン38を介して連結された状態、すなわち、主カム20の作用力によってバルブ28のリフト動作が可能な状態に復帰することになる。また、リターンスプリング40の付勢力によって切換ピン38がその進出方向に移動するのに伴って、ピストン42を介して、第1スライドアーム44(並びにそれに連動するリンクシャフト48および第2スライドアーム46)が変位端Pmax2から変位端Pmax1に戻されるようになる。
以上のように構成された本実施形態の可変動弁装置10によれば、電磁ソレノイド54への通電のON、OFFとカムシャフト18の回転力とリターンスプリング40の付勢力とを利用して、第1スライドアーム44の軸方向位置を変位端Pmax1からPmax2の間で移動させることができる。これにより、第1スライドアーム44が搭載された#1気筒において弁稼動状態と弁停止状態との間でバルブ28の動作状態を切り換えることが可能となる。更に、第1スライドアーム44と連動するリンクシャフト48および第2スライドアーム46を介して、残りの気筒においても弁稼働状態と弁停止状態との間でバルブ28の動作状態を切り換えることが可能となる。このように、可変動弁装置10によれば、1つの電磁ソレノイド54を用いて、内燃機関1が有する全ての気筒に配置されたバルブ28の動作状態を切り換えることができる。また、以上説明した構成を有する可変動弁装置10によれば、カムシャフト18の回転力を利用して、カムシャフト18が一回転する間に、高応答に弁停止状態とすることができる。
[可変動弁装置の特徴的構成]
ところで、上述した可変動弁装置10の構成では、ガイドレール52の溝幅は、現実のピンの挿入位置にばらつきが生じることを考慮して、スライドアームピン44bの外径よりも若干大きく設計されている。弁停止制御時には、スライドアームピン44bをガイドレール52の開始直線溝部60に確実に挿入させる必要があるため、現実のピンの挿入位置のばらつきを考慮して、スライドアームピン44bとガイドレール52との位置関係が設計されている。例えば、スライドアームピン44bの突き出し方向は、ガイドレール52の溝幅の中央位置に設計されている。
しかしながら、次のような問題が生じうる。問題点について図12〜図15を用いて説明する。図12は、本実施形態におけるガイドレール52の比較対象である従来のガイドレール(以下、ガイドレール66という。)の展開図である。図13(A)〜図13(D)は、図12のA〜Dの各位置におけるガイドレール66の径方向の断面図である。
スライドアームピン44bの移動経路について説明する。まず、図12のA位置において、スライドアームピン44bがガイドレール66に挿入される(図13(A))。図13に示す通り、ガイドレール66の溝底面はカムシャフト18の軸心と平行に形成されている。そのため、ガイドレール66の溝幅の中央位置に挿入されたスライドアームピン44bは、カムシャフト18の回転に伴ってガイドレール66の溝中央を直進する(図13(B)〜図13(C))。その後、スライドアームピン44bは、図12の位置68においてガイドレール66の螺旋状溝部における側面縦壁に衝突することとなる(図13(D))。
このような移動経路によれば、スライドアームピン44bと側面縦壁との衝突の程度によっては、スライドアームピン44b、側面縦壁及びこれらに連結する部材間に大きな力が作用することとなる。
図14は、スライドアームピン44bが側面縦壁に衝突した際の第1スライドアーム44の状態を説明するための図である。図14に示すように、スライドアームピン44bが側面縦壁に衝突することにより、スライドアームピン44bはロッカーシャフト16に垂直な角度に対して傾き70が生じる。
図15は、図14における第1スライドアーム44とロッカーシャフト16との間の摺動面72周辺の拡大図である。図15に示すように、傾き70が生じたまま第1スライドアーム44がスライドすれば、ロッカーシャフト16と第1スライドアーム44との間にかじり74が発生しうる。かじり74が発生することで、円滑なスライドが損なわれる。また、かじり74によりロックしてスライドできず、第1スライドアーム44が折損する可能性も考えられる。
そこで、本実施形態の可変動弁装置10では、スライドアームピン44bを、螺旋状溝部の開始位置までに側面縦壁に案内させることとし、スライドアームピン44bと側面縦壁との衝突を抑制することとした。
本実施形態の可変動弁装置10において特徴的なガイドレール52の具体的構成について図4〜図5を用いて説明する。図4は、円筒部18aの外周面に設けられたガイドレール52の展開図である。上述した通り、ガイドレール52は、円筒部18aの周方向に延びた開始直線溝部60と、開始直線溝部60の終端に接続され、カムシャフト18の回転(回転方向76)に伴って、スライドアームピン44bの変位端Pmax1からPmax2までの変位を案内する螺旋状溝部62と、螺旋状溝部62の終端に接続され、円筒部18aの周方向に延びた終了直線溝部64とを備えている。
ここで、開始直線溝部60に接続される螺旋状溝部62は、螺旋状溝開始位置77から、周方向に対する傾きが緩やかに大きくなるように形成されている。螺旋状溝部62の終端部は、周方向に対する傾きが緩やかに小さくなるように形成されて、終了直線溝部64に接続されている。
また、ガイドレール52の溝幅は、スライドアームピン44bの直径よりも若干大きく設計されているため、ガイドレール52の溝を形成する側面の縦壁のうち、側面縦壁78が、カムシャフト18の回転力によりスライドアームピン44bを沿わせて変位端Pmax1からPmax2まで変位させるように作用する。一方、側面縦壁78に対面する側面縦壁80は、スライドアームピン44bに当接しないため作用しない。
ピンスライド量82は、変位端Pmax1からPmax2までのピンのカムシャフト18の軸方向へのスライド量(変位量)を表している。また、主カム20のベース円部が第1ローラ24に接する区間(ベース円区間)内に、螺旋状溝部62の区間が含まれるように構成されている。
図5(A)〜図5(D)は、図4のA〜Dの各位置におけるガイドレール52の径方向の断面図である。図5(A)及び図5(B)に示すように、開始直線溝部60の溝底面84は、側面縦壁80から側面縦壁78に向かって深く傾斜する傾斜面として形成されている。すなわち、開始直線溝部60の溝底面84は、スライドアームピン44bの突き出し方向から見て、側面縦壁78に向かう斜め前方に傾斜した傾斜面として形成されている。また、図5(C)及び図5(D)に示すように、溝底面84の傾斜は、螺旋状溝部62の螺旋状溝開始位置77(図4)までに終了し、螺旋状溝部62においてはカムシャフト18の軸心と平行となるように形成されている。
また、図3及び図5に示すように、溝底面84の深さは開始直線溝部60から螺旋状溝部62にかけて次第に深くなるように形成されており、螺旋状溝部62から終了直線溝部64にかけて次第に浅くなるように形成されている。ここで、溝底面84とスライドアームピン44bとの位置関係は、電磁ソレノイド54の駆動力を受けて突き出されたスライドアームピン44bを、少なくとも開始直線溝部60の溝底面84に当接させるように定められている。
このように構成された溝底面84がスライドアームピン44bに及ぼす作用について説明する。まず、スライドアームピン44bは、開始直線溝部60の溝幅の中央部に挿入され、ピンの先端は溝底面84に当接する(図5(A))。スライドアームピン44bは、電磁ソレノイド54からの駆動力と、カムシャフト18の回転方向76への回転力と、溝底面84の傾斜とにより誘導され、溝底面84を側面縦壁78に向かって移動する(図5(A))。その結果、スライドアームピン44bは、開始直線溝部60において側面縦壁78に接する(図5(B))。その後、スライドアームピン44bは、側面縦壁78に沿いながら螺旋状溝部62を案内される(図5(C)、図5(D))。
以上説明したように、図4〜図5に示す本実施形態のガイドレール52の構成によれば、溝底面84の傾斜によって、螺旋状溝開始位置77までに、スライドアームピン44bを側面縦壁78に誘導することができる。また、側面縦壁78は螺旋状溝開始位置77から傾きが緩やかに大きくなるように形成されているため、スライドアームピン44bを側面縦壁78に沿わせて変位端Pmax1からPmax2までスムーズに変位させることができる。そのため、スライドアームピン44bと側面縦壁78との衝突を抑制し、第1スライドアーム44に大きな傾きが生じることを抑制することができる。このため、本実施形態のガイドレール52によれば、ロッカーシャフト16と第1スライドアーム44とのかじりを防止することができる。また、上記衝突によるスライドアームピン44bのはじかれを抑制し、ピンがガイドレール52から外れることを防止できるため、確実な弁停止を実現することができる。
さらに、本実施形態のガイドレール52の構成によれば、ガイドレール52の内の同じ経路を通過するようにスライドアームピン44bを誘導することができる。そのため、弁停止時・弁復帰時の第1スライドアーム44の移動ばらつきを低減して、可変動弁装置10の信頼性を高めることができる。
加えて、本実施形態のガイドレール52の構成によれば、側面縦壁80はスライドアームピン44bと接触することがない。そのため、側面縦壁80の加工諸元として、焼入れ、良好な寸法精度、滑らかな壁表面が不要であり、生産性の向上、低コスト化を図ることができる。
ところで、上述した実施の形態1のシステムにおいては、第1スライドアーム44のスライドアームピン44bが側面縦壁78に案内されることにより変位し、切換ピン38が変位するようになっている。そして、変位する切換ピン38を介して第1ロッカーアーム12と第2ロッカーアーム14とが連結状態と非連結状態との間で切り換わることで、バルブ28の開弁特性が弁稼動状態と弁停止状態との間で切り換わるようになっている。しかしながら、本発明における可変動弁装置は、側面縦壁78に相当するガイド縦壁により案内されたスライドアームピン44bに相当するピンと、円筒部18aに相当する円筒部との相対的な変位によって、バルブの開弁特性が切り換わるものであれば、上記の構成に限定されるものではない。
具体的には、ピンと円筒部との相対的な変位に伴って、バルブの開弁特性を切り替えるべく変位する部材は、上記切換ピン38に限定されるものではない。以下、第1〜第4の変形例を挙げて説明する。なお、これらの点は以下の実施の形態でも同様である。
第1の変形例として、2種類のカムを備える部材(例えば、円筒部を有するカムキャリア)をカムシャフトに軸方向に移動自在に取り付けた構成において、上記円筒部の変位に伴って、上記2種類のカムを備える部材がカムシャフトの軸方向に変位し、これにより、切換機構に当接するカムが切り替わることでバルブの開弁特性が切り換わるものであってもよい。
第2の変形例として、ロッカーアームをロッカーシャフトによって回転自在に支持させる構成において、上記ピンの移動に伴って、ロッカーシャフト上においてロッカーアームがロッカーシャフトの軸方向に変位し、これにより、ロッカーアームに当接するカムが切り換わることでロッカーアームの動作状態が切り換わり、バルブの開弁特性が切り換わるものであってもよい。
第3の変形例として、カムに当接するローラを有するロッカーアームを備える構成において、上記ピンと上記円筒部との変位に伴って、ロッカーアーム上においてローラがその支軸の軸方向に変位し、これにより、ローラに当接するカムが切り換わることでロッカーアームの動作状態が切り換わり、バルブの開弁特性が切り換わるものであってもよい。
第4の変形例として、ロッカーアームをロッカーシャフトによって回転自在に支持させる構成において、上記ピンと上記円筒部との変位に伴って、ロッカーシャフト自身がその軸方向に変位し、これにより、ロッカーアームに当接するカムが切り換わることでロッカーアームの動作状態が切り換わるものであっても良い。
また、上述した実施の形態1においては、#1気筒にのみ、ガイドレール52を備える円筒部18a、電磁ソレノイド54、および第1スライドアーム44を備えるようにしている。しかしながら、本発明においてこれらに対応する要素を備える気筒は、これに限定されるものではない。例えば、複数の気筒であってもよい。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
また、上述した実施の形態1においては、ロッカーアーム12、14を支持するためのロッカーシャフト16を利用して、スライドアーム44、46を回転自在に支持するようにしている。しかしながら、本発明においてスライドアーム44、46を支持する部材は、ロッカーシャフト16に限定されるものではない。例えば、ロッカーシャフト16とは別体に設けられた軸であってもよい。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
また、上述した実施の形態1においては、副カム22がゼロリフトカムとして構成されている例について説明を行った。しかしながら、本発明における副カムは、ゼロリフトカムに限られるものではない。例えば、上記可変動弁装置10の構成の場合には、主カム20よりも小さなリフトが得られるようにするノーズ部を備える副カムであってもよい。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
また、上述した実施の形態1においては、スライドアームピン44bをガイドレール52に挿入させるための駆動力を発するアクチュエータとして、電磁ソレノイド54を備えるようにしている。これにより、応答性に優れたアクチュエータを利用して、バルブ28の開弁特性を切り替えることができる。しかしながら、本発明におけるアクチュエータは、これに限定されるものではない。例えば、油圧駆動式のアクチュエータであってもよい。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
尚、上述した実施の形態1においては、スライドアームピン44bが前記第1の発明における「ピン」に、電磁ソレノイド54が前記第1の発明における「アクチュエータ」に、円筒部18aが前記第1の発明における「円筒部」に、側面縦壁78が前記第1の発明における「ガイド縦壁」に、切換機構32が前記第1の発明における「切換機構」に、開始直線溝部60における溝底面84が前記第1の発明における「誘導手段」に、溝底面84が前記第2の発明における「ピン当接面」に、それぞれ相当している。
実施の形態2.
[実施の形態2における基本構成]
次に、図6〜図9を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは図1〜図2に示す構成において、後述する図6〜図9の構成を採用することで実現することができる。そのため、図1〜図2に示す構成については、その説明を省略または簡略する。
[実施の形態2における特徴的構成]
上述した実施の形態1では、開始直線溝部60の溝底面84を傾斜面とすることにより、スライドアームピン44bを側面縦壁78に誘導することとした。これに対して、本実施の形態の構成では、スライドアームピン44bに設けられた小突起部と、開始直線溝部60の溝底面に設けられた導入溝との作用により、少なくとも実施の形態1と同等の効果を実現する点に特徴を有している。
具体的な本実施の形態における構成について図6〜図9を参照して説明する。図6は、図1に示す可変動弁装置10をカムシャフト18(およびロッカーシャフト16)の軸方向から見た図である。図7は、円筒部18aの外周面に設けられたガイドレール52の展開図である。図6〜図7に示す構成のうち図3〜図4と同じ構成については、同一番号を付してその説明を省略する。
図6に示す通り、円柱状のスライドアームピン44bの先端部には、半球状の小突起部86が更に設けられている。図7に示す通り、ガイドレール52の溝底面88には、開始直線溝部60の始端前から始端後にかけて小突起部86を溝に沿って誘導するための導入溝90が形成されている。導入溝90は、スライドアームピン44bを側面縦壁78に誘導するように円筒部18aの周方向に形成されている。導入溝90の始端は、電磁ソレノイド54の駆動力を受けて突き出されたスライドアームピン44bが円筒部18aに接地する付近に形成されている。導入溝90の終端は、開始直線溝部60の終端前に定められている。同様に、ガイドレール52の溝底面91には、終了直線溝部64の終端前から終端後にかけて小突起部86を溝に沿って誘導するための導出溝92が形成されている。
また、図6に示すように、溝底面88の深さは、開始直線溝部60から螺旋状溝部62にかけて次第に深くなるように形成されている。また、溝底面91の深さは、螺旋状溝部62から終了直線溝部64にかけて次第に浅くなるように形成されている。ここで、溝底面88とスライドアームピン44bとの位置関係は、電磁ソレノイド54の駆動力を受けて突き出されたスライドアームピン44bを、少なくとも開始直線溝部60の溝底面88に当接させるように定められている。
図8は、本実施形態の小突起部86と導入溝90の詳細について説明するための図である。小突起部86は、円柱状のスライドアームピン44bの直径よりも径の小さい半球状の突起部である。小突起部86は、スライドアームピン44bと同軸心上に形成されている。小突起部86の突き出し方向には、導入溝90が溝底面88上に形成されている。
導入溝90の断面は円形凹状であって、その溝幅cは、小突起部86の直径よりも大きく形成されている。詳細には、図8に示す小突起部86の横断面において、小突起部86の外形をなす円中心(半径R1)は、導入溝90の外形をなす円中心(半径R2)よりもピン先端側に存在し、半径R1<半径R2を満たす関係にある。
また、溝底面88はカムシャフト18の軸心と平行に形成されている。図8に示す通り、ガイドレール52として、溝底面88、側面縦壁78、側面縦壁80とからなる凹状の溝が形成されている。そして、スライドアームピン44bの軸心と、ガイドレール52の溝幅の中間点(側面縦壁78、側面縦壁80からの距離がaである点)との距離は、ガイドレール52の溝幅からスライドアームピン44bの直径を差し引いた値bの1/2以下に設計されている。
また、導入溝90は、ガイドレール52の溝幅中央線に対し、側面縦壁78寄りにオフセットされている。さらに、導入溝90は、寸法ばらつきを考慮してスライドアームピン44bと側面縦壁78が接触しないようにオフセットされている。また、導入溝90の溝幅は、設計公差(ロッカーシャフト16と第1スライドアーム44との固定位置、導入溝90の位置、カムシャフト18とロッカーシャフト16との位置など)のばらつきよりもわずかに大きく設計されている。なお、溝底面91、導出溝92についても、上述した溝底面88、導入溝90と同様の特徴を有するため、その説明は省略する。
このように構成された導入溝90がスライドアームピン44bにする作用について説明する。図9は、図7のA〜Iの各位置におけるガイドレール52の径方向の断面図である。まず、位置Aにおいて、スライドアームピン44bの軸心は、導入溝90のほぼ溝中央付近に挿入される(図9(A))。位置Bにおいて、半球状の小突起部86は、導入溝90により調心されて溝中央に自動的に補正される(図9(B))。位置Cにおいて、溝中央に挿入された小突起部86は、そのまま導入溝90に誘導されて開始直線溝部60の側面縦壁78に沿う(図9(C))。その後、導入溝90は終端をむかえるが、スライドアームピン44bは、側面縦壁78に沿った状態を維持する(図9(D))。
螺旋状溝開始位置77を通過後、スライドアームピン44bは、側面縦壁78に沿いながら螺旋状溝部62を案内される(図9(E)、図9(F))。スライドアームピン44bは、変位端Pmax1からPmax2まで変位する。その後、小突起部86は、終了直線溝部64の終端前である位置Gまでに導出溝92に挿入される(図9(C))。小突起部86は、終了直線溝部64の終端後である位置H、Iにおいても一定区間、導出溝92に誘導される。(図9(B)、図9(A))
以上説明したように、図6〜図9に示す本実施形態の小突起部86、導入溝90の構成によれば、半球状の小突起部86の一部が導入溝90に接地されるため、小突起部86は自動的に調心されて溝最深部に誘導される。そのため、スライドアームピン44bを、螺旋状溝開始位置77までに側面縦壁78に誘導することができる。このため、本実施形態の可変動弁装置10によれば、実施の形態1と同様に、スライドアームピン44bを側面縦壁78に沿わせて変位端Pmax1からPmax2までスムーズに変位させ、ロッカーシャフト16と第1スライドアーム44とのかじりを防止することができる。また、弁停止時・弁復帰時の第1スライドアーム44の移動ばらつきを低減して、可変動弁装置10の信頼性を高めることができる。
また、上述の通り、小突起部86は自動的に調心されて導入溝90の溝最深部に誘導されるため、スライドアームピン44bの位置が溝幅の中央になるように、第1スライドアーム44を取り付けているロッカーシャフト16の端部に厚さを選択したシムを挿入するような作業が不要になり、組み付け性を大幅に向上させることができる。
加えて、図6〜図9に示す本実施形態の導出溝92の構成によれば、側面縦壁78が摩耗した場合であっても、導出溝92がスライドアームピン44bを案内することできる。そのため、第1スライドアームの変位位置が一定の場所になり、弁停止を確実に実行することができる。
ところで、上述した実施の形態2のシステムにおいては、ガイドレール52に導入溝90と導出溝92の両方を用いることとしているが、これに限定されるものではなく、導入溝90と導出溝92のいずれか一方だけを用いることとしてもよい。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
尚、上述した実施の形態2においては、スライドアームピン44bが前記第1の発明における「ピン」に、電磁ソレノイド54が前記第1の発明における「アクチュエータ」に、円筒部18aが前記第1の発明における「円筒部」に、側面縦壁78が前記第1の発明における「ガイド縦壁」に、切換機構32が前記第1の発明における「切換機構」に、開始直線溝部60における溝底面84が前記第1の発明における「誘導手段」に、溝底面88が前記第3の発明における「ピン当接面」に、小突起部86が前記第3の発明における「小突起部」及び前記第4の発明における「半球状部」に、導入溝90が前記第3の発明における「導入溝」に、ガイドレール52が前記第4の発明における「ガイド溝」に、それぞれ相当している。
実施の形態3.
[実施の形態3における基本構成]
次に、図10〜図11を参照して本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のシステムは図1〜図2に示す構成において、後述する図10又は図11の構成を採用することで実現することができる。そのため、図1〜図2に示す構成については、その説明を省略または簡略する。
上述した実施の形態1及び2によれば、ガイドレール52によりスライドアームピン44bを、変位端Pmax1からPmax2まで信頼性高く変位させることができる。このとき、切換ピン38は第1ピン孔34a内に戻され、スライドアームピン44bがリターンスプリング40の付勢力を受け止めている状態となる。その後、浅底部である終了直線溝部64の作用によって、第1スライドアーム44の切欠部44eが駆動軸54a(例えばロックピン)に係合される。これにより、スライドアームピン44bから駆動軸54aに上記付勢力の保持を持ち換えさせて、弁停止状態を維持することができる。
しかしながら、スライドアームピン44bが摩耗した場合にはスライド量が減少するため、スライドアームピン44bが変位端Pmax2まで変位されない場合が生じうる。図16は、ピン摩耗前後における第1スライドアーム44の変位位置を説明するための図である。図16の位置Pはピン摩耗前の変位位置(変位端Pmax2)を、位置Qはピン摩耗後の変位位置を表している。スライドアームピン44bが位置P(変位端Pmax2)まで変位される場合には、上述した通り、終了直線溝部64の作用によって切欠部44eが駆動軸54aに係合される。一方、ピンが摩耗し位置Qまでしか変位されない場合には、切欠部44eは駆動軸54aに係合される位置まで変位できない。その結果、スライドアームピン44bから駆動軸54aに上記付勢力の保持を持ち換えさせられず、弁停止状態を維持することができないという課題が生じる。
この課題に対する一つの方策として、スライドアームピン44bのカムシャフト18の軸方向へのピンスライド量(図4、図7に示すピンスライド量82に対応する。)を変位端Pmax1からPmax2までの変位量よりも予め大きく設計しておくことが考えられる。図17は、本実施形態におけるガイドレール52の比較対象であるガイドレール(以下、ガイドレール94という。)の展開図である。ガイドレール94では、ピンスライド量が変位端Pmax1からPmax2までのスライド量よりも大きく設計されている。
確かに、このような構成によれば、スライドアームピン44bが摩耗した場合であっても、切欠部44eが駆動軸54aに係合される位置まで変位させることができ、スライドアームピン44bから駆動軸54aに上記付勢力の保持を持ち換えさせることができる。しかしながら、上記比較対象のガイドレール94では、ピンスライド量が変位端Pmax1からPmax2までのスライド量よりも大きく設計されているため、スライドアームピン44bの摩耗前においては、ピストン42がロッカーアーム間を超えて第1ピン孔34aに押し込まれることとなる(以下、単に過押し込みという。)。過押し込みにより、ピストン42が第1ロッカーアーム12に引っかかった状態では、変位後のリフト区間98(図17)において、ピストン42と第1ロッカーアーム12との弾かれが発生してしまう。そのため、上記方策では、課題の解決策として未だ十分とは言えない。
[実施の形態3における特徴的構成]
そこで、本実施形態の可変動弁装置10では、ガイドレール52の螺旋状溝部62において過押し込みすると共に、終了直線溝部64において過押し込みの方向とは逆方向にスライドアームピン44bを案内することとした。
本実施形態の可変動弁装置10において特徴的なガイドレール52の具体的構成について図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における円筒部18aの外周面に設けられたガイドレール52の展開図である。上述した通り、ガイドレール52は、円筒部18aの周方向に延びた開始直線溝部60が設けられている。開始直線溝部60の終端には、カムシャフト18の回転に伴って、スライドアームピン44bの変位端Pmax1からPmax3までの変位を案内する螺旋状溝部62が接続されている。変位端Pmax3はPmax2よりもPmax1からのピンスライド量100が大きく設計されている。側面縦壁78は、カムシャフト18の回転力によりスライドアームピン44bを沿わせて変位端Pmax1からPmax3まで変位させるように作用する。
図10に示すように、螺旋状溝部62の終端には、円筒部18aの周方向に延びた終了直線溝部64が接続されている。終了直線溝部64は、カムシャフト18の回転に伴ってガイドレール52が徐々に浅くなる浅底部である。終了直線溝部64の区間102はベース円区間である。区間102においては、切欠部44eが浅底部の作用により少なくとも駆動軸54aの先端に係合されるように構成されている。終了直線溝部64の区間102後は、リフト区間98(非ベース円区間)である。
特に、側面縦壁78は、スライドアームピン44bを変位端Pmax3まで変位させた後の終了直線溝部64において、その変位の方向とは逆方向に傾斜した縦壁78aを備えている。スライドアームピン44bは、リターンスプリング40の付勢力によって縦壁78aの傾斜に沿って変位端Pmax2まで案内される。好適には、縦壁78aはリフト区間98の開始位置Rまでにスライドアームピン44bを変位端Pmax2まで案内し、駆動軸54aの先端を切欠部44eに緩やかに係合させるプロフィールを有している。
以上説明したように、図10に示す本実施形態のガイドレール52の構成によれば、ベース円区間においてスライドアームピン44bを変位端Pmax3まで変位させることで、ピンが摩耗した場合であっても、切欠部44eを駆動軸54aに係合させる位置まで変位させることができるため、確実に弁停止状態を保持することができる。
また、本実施形態の縦壁78aの構成によれば、終了直線溝部64のリフト区間98の開始位置Rまでに、スライドアームピン44bを変位端Pmax2まで案内することで、過押し込みを解消することができる。そのため、ピストン42と第1ロッカーアーム12との弾かれを防止することができる。さらに、縦壁78aの構成によれば、その傾斜により緩やかに、スライドアームピン44bから駆動軸54aに上記付勢力の保持を持ち換えさせることができるため、NV(Noise Vibration)低減の観点から効果的である。
ところで、上述した実施の形態3においては、終了直線溝部64における側面縦壁78として、縦壁78aを用いることとしているが、この縦壁の構成はこれに限定されるものではない。図11は、終了直線溝部64における側面縦壁78の変形例を説明するための図である。図11に示すように、区間102(図10)よりも長い区間104を設けることとし、縦壁78aよりも傾斜の大きい縦壁78bを用いることとしても良い。区間104によれば、変位端Pmax3である状態を長く維持することができるため、駆動軸54a先端面圧を考慮し、駆動軸54aの先端を十分に切欠部44eに挿入させることができる。その後、縦壁78bによって、開始位置Rまでにスライドアームピン44bを変位端Pmax2まで案内することで、過押し込みを解消することができる。
尚、上述した実施の形態3においては、側面縦壁78が前記第5の発明における「ガイド縦壁」に、縦壁78a、縦壁78bが前記第5の発明における「縦壁」に、それぞれ相当している。