JP5520571B2 - 焼入れ鋼材の製造装置 - Google Patents
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Description
(a)鋼管1は大気中で高周波加熱コイル5により焼入れ可能温度域に急速に加熱される。このため、酸化スケールが鋼管1の外面および内面に不可避的に生成する。生成した酸化スケールは、製造される曲げ加工部材の外面および内面に残存する。特に、曲げ加工の際には冷却水が高温に加熱された鋼管1の外面に噴射されるため、鋼管1は、大気中の酸素のみならず、冷却水の水蒸気から分離・生成する酸素によっても酸化される。このため、鋼管1の外面の酸化スケールは比較的多量に生成する。したがって、曲げ加工部材は、その表面性状が劣化し易いのみならず、化成処理および電着塗装を行われる場合には化成処理性ひいては塗装後耐食性も低下し易い。
(b)高周波加熱コイル5によって鋼管1の一部をAc3点以上に部分的に加熱した後に、高周波加熱コイル5の設置位置の極めて近傍の位置に配置される水冷装置6が鋼管1の加熱部へ向けて冷却水を噴射することによって、鋼管1を急速に冷却する。このため、冷却水の噴射方向や噴射量等といった冷却条件の管理が適正に行われないと、噴射された冷却水が高周波加熱コイル5による鋼管1の加熱された部分の大きさを変動させる。鋼管1の加熱された部分の大きさが変動すると、曲げ加工部材の寸法精度が低下する。
(c)高温に加熱された鋼管1の外面に噴射された冷却水が沸騰した蒸気が鋼管1の外面を膜となって覆い、その蒸気膜と噴射される冷却水との接触面から直接に冷却水が沸騰する膜沸騰(Film boiling)が発生するため、冷却水が有する冷却能を有効に利用して鋼管1を冷却することが難しくなる。このため、鋼管1を所望の高い冷却速度で冷却することが難しくなり、曲げ加工部材の寸法精度や所望の強度を確保することが難しくなる。
この本発明では、不活性ガスはN2ガスであることが望ましい。
(a)加熱される鋼材の表面の酸化が抑制され、これにより、製造される焼入れ鋼材の表面の酸化スケールの生成量が低減される。特に、高温に加熱された鋼材の外面に噴射された冷却水の水蒸気から分離・生成した酸素の分圧を、鋼材の加熱された部分の周囲の空間に供給される不活性ガス又は還元性ガスによって、低下することができるので、鋼材の外面における酸化スケールの生成を十分に抑制できる。このため、製造される焼入れ鋼材の表面性状を向上することができるとともに、化成処理および電着塗装を行われる場合には化成処理性ひいては塗装後耐食性も向上することができる。
(b)不活性ガス又は還元性ガスを、第1の位置から第2の位置に向かう側へ向けて吹き付けるため、鋼材の外面に沿って第1の位置から第2の位置の側へ向かう不活性ガス又は還元性ガスの流れが、鋼材の外面に沿って第2の位置から第1の位置の側へ向かう冷却水の流れを、抑制または阻止することが可能になる。このため、鋼材の外面に噴射された冷却水が加熱装置による鋼材の加熱された部分の大きさを変動させることを防止できるので、曲げ加工部材の寸法精度の低下を防止して、所望の屈曲形状を有する焼入れ部材を製造できる。
(c)加熱装置により加熱された部分へ第1の位置から第2の位置に向かう側へ向けて吹き付けられる不活性ガス又は還元性ガスによって、膜沸騰の原因となる水蒸気の膜の形成を抑制することができる。すなわちスケール層の生成が抑制され、微細な凹凸のある点状スケールに変化するため膜沸騰を防止できるので、鋼材を所望の高い冷却速度で確実に冷却でき、曲げ加工部材の寸法精度や所望の強度を確保することができる。
この製造装置11は、送り装置12と、加熱装置13と、冷却装置14と、スケール生成防止ガス供給装置15と、漏洩抑制部材16と、内部スケール生成防止ガス供給装置17とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。
送り装置12は、鋼管10をその長手方向へ送ることができる装置であればよく、特定の装置には限定されない。
送り装置12は、以上のように構成される。
加熱装置13は、送られる鋼管10から所定の距離だけ離間して、鋼管10の送り方向に関する第1の位置Aに配置されて、鋼管10を焼入れ可能温度域に加熱するための装置である。
加熱装置13は、後述する冷却装置14と一体に、図示しない第3の産業用ロボットにより移動自在に支持される。
[冷却装置14]
冷却装置14は、第1の位置Aよりも鋼管10の送り方向の直ぐ下流の第2の位置Bで鋼管に冷却媒体20(例えば冷却水)を吹き付けることにより、例えばAc3点以上の温度に加熱された鋼管10を急速に冷却することによって、鋼管10を熱処理する(例えば焼入れる)ための装置である。なお、以降の説明では冷却媒体が冷却水である場合を例にとる。
冷却装置14は、以上のように構成される。
スケール生成防止ガス供給装置15は、供給ポンプ15aと、この供給ポンプ15aに接続される供給ノズル15bとを有し、鋼管10における、加熱装置13により加熱されて、酸化スケールが生成する高温にある部分21にN2ガスを吹き付けて、高温にある部分21の周囲の空間22にN2ガスを供給して、滞留、充満させるためのものである。
例えば、図1に例示するように、供給ノズル15bからのN2ガスの吹き付け方向(供給ノズル15bの中心が指向する方向)を、第1の位置Aから第2の位置Bに向かう側へ向けて斜めに吹き付けることによって、鋼管10の周囲において第1の位置Aから第2の位置Bへ向かうN2ガスの流れによって、冷却装置14から噴射された冷却水20が加熱された部分21の周囲の空間22へ向かうことを阻止することができる。このため、冷却装置14から鋼管10の外面に噴射された冷却水20が高周波加熱コイル13による鋼管10の加熱された部分の大きさを変動させて鋼管10の加熱状況に影響することを防止できるので、鋼管10に対する曲げ加工を安定して行うことができるようになる。
さらに、図4は、供試材である厚さ1.8mm、横50mm、縦70mmの矩形断面の角管を焼入れする際に角管の内面に、N2ガスを供給した場合と、N2ガスを供給しなかった場合とについて、通常の条件(水洗および化成処理)を行った場合の化成処理被膜の形成状況を示す説明図である。(角管の外面にもN2ガスを供給した。)
図4に示すように、焼入れの際にN2ガスを供給しない(大気)では、スケールが残存して化成結晶フォスフォフィライトが形成されず、表面性状および化成処理性がいずれも不芳であるのに対し、焼入れの際にN2ガスを供給すると、緻密な粒結晶(フォスフォフィライト)が存在し、表面性状および化成処理性がいずれも良好である。
また、高周波加熱コイル13により加熱された部分21へ第1の位置Aから第2の位置Bに向かう側へ向けて吹き付けられるN2ガスは、鋼管10の外面に沿って第1の位置Aから第2の位置Bへ向かう方向へ流れるので、このN2ガスの流れによって、加熱部の酸化を抑制し鋼板表面に凹凸のある点状のスケールが形成され高温に加熱された鋼管10の外面に噴射された冷却水20が膜沸騰を生じる原因となる水蒸気の膜の形成を抑制することができ、鋼管10を所望の冷却速度で確実に急冷することができるようになる。
スケール生成防止ガス供給装置15は、以上のように構成される。
漏洩抑制部材16は、第1の位置Aよりも鋼管10の送り方向の上流側に配置されて、N2ガスが、加熱された部分21の周囲の空間22から洩れ出すことを抑制するための部材であり、例えばじゃま板を用いることができる。この漏洩抑制部材16を用いることにより、上述したN2ガスの供給の効果をより確実に得ることが可能である。
漏洩抑制部材16は、以上のように構成される。
内部スケール生成防止ガス供給装置17は、チャック18の内部に形成されたN2ガスの流路18aを介して、鋼管10の内部にN2ガスを供給するためのものである。
本発明に係る製造装置11は、以上のように構成される。次に、この製造装置11により、焼入れ鋼管10−1を製造する状況を説明する。
(I)冷却装置14から噴射された冷却水20が加熱された部分21へ向かうことを、鋼管10の周囲における、第1の位置Aから第2の位置Bへ向かうN2ガスの流れによって、阻止することができる。このため、冷却装置14から鋼管10の外面に噴射された冷却水20が高周波加熱コイル13による鋼管10の加熱された部分21の大きさを変動させて鋼管10の加熱状況に影響することを防止できるので、鋼管10に対する曲げ加工を安定して行うことができるようになる。
(II)供給ノズル15bからN2ガスを加熱された部分21の周囲の空間22へ向けて吹き付けるので、加熱された鋼管10の表面の酸化が抑制され、これにより、製造される焼入れ鋼管10−1の表面の酸化スケールの生成量が低減される。このため、製造される焼入れ鋼管10−1の表面性状を向上することができるとともに、化成処理および電着塗装を行われる際には化成処理性ひいては塗装後耐食性をも向上することができる。
(III)高周波加熱コイル13により加熱された部分21へ第1の位置Aから第2の位置Bに向かう側へ向けて吹き付けられるN2ガスは、鋼管10の外面に沿って第1の位置Aから第2の位置Bへ向かう方向へ流れるので、このN2ガスの流れによって、加熱部の酸化を抑制し鋼板表面に凹凸のある点状のスケールが形成され高温に加熱された鋼管10の外面に噴射された冷却水20が膜沸騰を生じる原因となる水蒸気の膜の形成を抑制することができ、鋼管10を所望の冷却速度で確実に急冷することができるようになる。
(IV)鋼管10の加熱された部分21へ向けてN2ガスを供給することにより、分解したN原子が、加熱された部分21の表面から侵入拡散し、加熱された部分21の表層直下に微細なFe−N化合物やFe−N−O化合物が形成される。このため、焼入れ鋼管10−1における加熱された部分21の疲労強度が向上する。
この本発明により製造される焼入れ鋼材は、例えば、以下に例示する用途(i)〜(vii)に対して適用可能である。
(ii)自動車の各種レインフォース、ブレース等の補強部材、
(iii)バンパー、ドアインパクトビーム、サイドメンバー、サスペンションマウントメンバー、ピラー、サイドシル等の自動車の構造部材、
(iv)自転車や自動二輪車等のフレーム、クランク
(v)電車等の車輛の補強部材、台車部品(台車枠、各種梁等)
(vi)船体等のフレーム部品、補強部材、
(vii)家電製品の強度部材、補強部材または構造部材
10−1 焼入れ鋼管
11 本発明に係る製造装置
12 送り装置
13 加熱装置
14 冷却装置
15 スケール生成防止ガス供給装置
15a 供給ポンプ
15b 供給ノズル
16 漏洩抑制部材
17 内部スケール生成防止ガス供給装置
18 チャック
18a 流路
19 チャック
19a 流路
20 冷却媒体
21 部分
22 周囲の空間
A 第1の位置
B 第2の位置
Claims (2)
- 閉じた横断面形状を有する中空の部材である鋼材をその長手方向へ送るための送り装置と、
送られる鋼材から離間して第1の位置に配置されて、前記鋼材を焼入れ可能温度域に加熱する加熱装置と、
前記第1の位置よりも前記鋼材の送り方向の下流の第2の位置で前記鋼材に冷却媒体を吹き付けることにより該鋼材を焼入れる冷却装置と、
前記鋼材の送り方向の後端部に設置されるとともに前記鋼材の内部に不活性ガスまたは還元性ガスを供給するための流路を有するチャックと、
前記流路を介して、前記鋼材の内部に不活性ガスまたは還元性ガスを供給する内部スケール生成防止ガス供給装置と、
前記鋼材における、前記加熱装置により加熱されて、酸化スケールが生成する高温にある部分へ向けて不活性ガス又は還元性ガスを、前記第1の位置から第2の位置へ向かう側へ向けて吹き付けることによって該加熱された部分の周囲の空間に不活性ガス又は還元性ガスを供給して、該空間に不活性ガス又は還元性ガスを充満させるスケール生成防止ガス供給装置と、
前記第1の位置よりも前記鋼材の送り方向の上流側に配置されて、前記不活性ガス又は前記還元性ガスが、前記加熱された部分の周囲の空間から洩れ出すことを抑制するための漏洩抑制部材と、
前記鋼材の送り方向の先端部に配置され、前記鋼材の内部に供給された前記不活性ガスまたは還元性ガスを前記鋼材の外部へ排出するための流路を有するとともに、前記チャックとともに前記高温の部分の両側の部分の位置を適宜制御することにより前記鋼材を屈曲部材に製造するチャックと
を備えることを特徴とする屈曲部を有する焼入れ鋼材の製造装置。 - 前記不活性ガスはN2ガスである請求項1に記載された焼入れ鋼材の製造装置。
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