JP5519268B2 - 鋼管柱地中部の欠陥評価方法 - Google Patents

鋼管柱地中部の欠陥評価方法 Download PDF

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本発明は、下部が地中に埋設された鋼管柱地中部の腐食欠陥を、超音波探傷により評価するようにした鋼管柱地中部の欠陥評価方法に関し、さらに詳しくは、測定が容易で、簡単に即時に評価できる信頼性の高い評価方法に関する。
山間部や狭所で電柱等に使用される肉厚2〜4mm程度の薄肉軽量組立鋼管柱は、内外面に亜鉛メッキが施されているが、埋設された鋼管柱地中部が、長期間の使用により腐食して劣化し、肉厚が薄くなって欠陥となり、最悪の場合倒壊する危険性がある。
そのため、鋼管柱地中部の欠陥を検出して評価し、鋼管柱地中部の補強及び建て替えの要否を判定する必要がある。
そこで、本出願人は、平成19年に鋼管柱地際部の欠陥評価方法を特許出願している。
それは、下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に超音波探傷器の探触子を取り付け、探触子により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、探触子が受信したエコーから、
第1評価手段において、鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、
第2評価手段において、鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、
第3評価手段において、第1評価手段の複数段の評価と第2評価手段の複数段の評価から、鋼管柱地際部の欠陥を複数段に評価する鋼管柱地際部の欠陥評価方法である。
特開2009−036531号公報
前記特許文献1に記載された鋼管柱地際部の欠陥評価方法は、鋼管柱地際部からのエコーの解析に高度の技術知識が必要であり、そのため専門家でないと欠陥を評価できなく、検査ができない。さらに、欠陥を評価するプログラムも複雑であり、現地で使用する超音波探傷器に組み込むことができず、現地で簡単に即時に評価し結果を得ることができないという問題点がある。
本発明は、前記の問題点に留意し、高度の技術知識を要さず、専門家でなくても検査でき、現地で簡単に即時に鋼管柱地中部の腐食欠陥の健全、不健全を評価でき、かつ、欠陥を評価するプログラムも簡単で、現地で使用する超音波探傷器に容易に組み込むことができる鋼管柱地中部の欠陥評価方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の鋼管柱地中部の欠陥評価方法は、
下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に超音波探傷器の探触子を取り付け、前記探触子により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、
前記探触子が受信したエコーから、
前記鋼管柱地中端面部からのエコー高さ総和の、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和に対する比を求め、
前記比が設定閾値以上の場合、前記鋼管柱地中部に腐食欠陥なしと評価し、
前記比が前記設定閾値未満の場合、前記鋼管柱地中部に腐食欠陥ありと評価する(請求項1)。
そして、鋼管柱地中端面部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱地中端面から上50mmと下100mmの間の範囲を含むことが望ましい(請求項2)。
また、鋼管柱地中部全体が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱地際から鋼管柱地中端面の下100mmの間の範囲を含むことが好ましい(請求項3)。
さらに、設定閾値が、35%と45%の間の値であることが有効である(請求項4)。
本発明の鋼管柱地中部の欠陥評価方法は、鋼管柱地中端面部からのエコー高さ総和の、鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和に対する比を求め、その比が設定閾値以上の場合、鋼管柱地中部に腐食欠陥なしと評価し、前記比が前記設定閾値未満の場合、鋼管柱地中部に腐食欠陥ありと評価するため、高度の技術知識を要さず、専門家でなくても検査でき、現地で簡単に即時に鋼管柱地中部の健全、不健全を評価でき、かつ、欠陥を評価するプログラムも簡単で、現地で使用する超音波探傷器に容易に組み込むことができる。
そして、鋼管柱地中端面部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱地中端面から上50mmと下100mmの間の範囲を含み、また、鋼管柱地中部全体が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱地際から鋼管柱地中端面の下100mmの間の範囲を含み、さらに、設定閾値が、35%と45%の間の値であることにより、有効に鋼管柱地中部の欠陥を評価することができる。
本発明の実施の形態の模式図である。 (A)は鋼管柱の一部断面図と探触子を示し、(B)、(C)及び(D)は、超音波探傷器のエコーの表示図である。
本発明の鋼管柱地中部の欠陥評価方法を実施するための実施例を、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、肉厚2〜4mm程度の薄肉鋼管柱を複数本接続し、下端の鋼管柱は全体が地中に埋設され、下から2番目の鋼管柱1は下部が地中に埋設されて建柱されたものであり、その下から2番目の鋼管柱1の地中部の腐食欠陥を超音波探傷器により超音波探傷を行う。
同図において、2は鋼管柱1の地上部に取り付けられた超音波探傷器の探触子であり、その取付位置は、探触子2の近距離限界以上の距離を確保するため、地際3の上300mm程度が望ましく、本実施の形態では、地際3の上300mmに取り付けている。
超音波探傷に際し、前記探触子2から地中部に向けてSH波を発信し、そのエコーを受信し、鋼管柱1の地中端面4付近の端面部Tからのエコー高さ総和T′(エコー面積)及び鋼管柱1の地中部全体Uからのエコー高さ総和U′(エコー面積)を得る。
前記端面部Tは、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱1の地中端面4の上100mm前後と、下100mmないし300mmとの間の範囲であり、望ましくは、地中端面4の上100mmと下200mmとの間の範囲であり、少なくとも、地中端面4の上50mmと下100mmの間の範囲を含む。
そして、端面部Tの範囲として、地中端面4の上100mmと下300mmとの間の前記範囲を越えて拡大し、或いは地中端面4の上50mmと下100mmとの間の範囲に満たずに縮小すると、資料として不適切或いは不充分なものとなる。
本実施の例では、端面部Tは、地中端面4の上100mmと下200mmとの間の範囲としている。
鋼管柱1の地中部全体Uは、地際3と端面部Tの間の範囲であり、地際3と地中端面4の下200mmとの間の範囲であり、地際3から上50mmの範囲を含んでもよいが、地中部全体Uとしては、少なくとも、地際3と端面4の下100mmの間の範囲を含み、本実施例では、地中部全体Uは、地際3と地中端面4の下200mmの間の範囲としている。
図2(A)は、鋼管柱の一部の断面図であり、鋼管柱1の地際3から鋼管柱1の地中端面4までの距離は500mm、地際3から探触子2までの距離は300mmである。
同図(B)、(C)及び(D)は、超音波探傷器のエコーの表示画面の例を示し、(B)は鋼管柱1の埋設部分即ち地中部が健全な場合、(C)は地際3の付近に腐食がある場合、(D)は地際付近が軽度腐食に近い場合である。
同図(B)、(C)、(D)の探触子からの距離の目盛において、0が探触子2の位置、300mmが鋼管柱1の地際3の位置、800mmが鋼管柱1の地中端面4の位置であり、同図(D)に示すように、端面部Tは、地中端面4;800mmの上100mmの700mmと、地中端面4;800mmの下200mmの1000mmとの間の範囲、地中部全体Uは地際3;300mmと、地中端面4;800mmの下200mmの1000mmとの間の範囲である。
そして、前記探触子2により超音波を鋼管柱1の地中部Sに向け発信してエコーを受信し、探触子2が受信したエコーから、鋼管柱1地中部S(鋼管柱1の地際3と地中端面4との間)に腐食欠陥がなければ、鋼管柱1地中端面4付近の前記端面部Tからのエコーが主として検出され、鋼管柱1地中部Sに腐食欠陥があると、鋼管柱1地中部Sからの腐食欠陥のエコーと鋼管柱1地中端面4付近の端面部Tからのエコーが検出される。
ここで、鋼管柱1地中部Sの腐食欠陥が大きくなるにつれ、端面部Tからのエコーが小さくなる傾向があることに着目し、鋼管柱1地中部Sに腐食欠陥があるか否か、不健全か健全かを評価する。
具体的には、まず、鋼管柱1の地際3の上300mmの位置にマークを入れ、そのマークの位置に超音波探傷器の探触子2を上向きに設置し、鋼管柱1の地上端面5に向かって超音波を発信し、その反射波により地上端面5と探触子2間の距離Xmmを測定し、既知の鋼管柱1の長さYmmからXmmを減算し、探触子2と地中端面4間の距離Zmm(Zmm=Ymm−Xmm)を算出する。
つぎに、前記マークの位置に探触子2を下向きに設置し、探触子2から鋼管柱1の地中部Sに向かって超音波を発信し、前記地中部Uからのエコーを得る。
そして、前記超音波探傷器の表示画面上の距離で、前記端面部T、即ち地中端面路程Zmmから100mm減算した位置(Zmm−100mm)と、地中端面路程Zmmに200mmを加算した位置(Zmm+200mm)との間の範囲からのエコー高さ総和T′(エコー面積)と、前記地中部U全体、即ち地際3路程300mmと、地中端面路程Zmmに200mmを加算した位置(Zmm+200mm)との間の範囲からのエコー高さ総和U′(エコー面積)とを求める。
つぎに、前記端面部Tからのエコー高さ総和T′の、前記地中部U全体からのエコー高さ総和U′に対する比Wを算出する。
算出した前記比Wを設定した設定閾値Vと比較し、前記比Wが前記設定閾値V以上の場合、前記鋼管柱1の地中部Sに腐食欠陥なく健全と評価し、前記比Wが前記設定閾値V未満の場合、前記鋼管柱1の地中部Sに腐食欠陥があって不健全と評価する。
本実施例では、超音波探傷器によるデータと、掘削して確認したデータとより、前記設定閾値Vを40%と設定した。
前記健全、不健全の評価を建柱状態で、鋼管柱1の周面の等間隔の複数個所の位置において行う。前記周面の等間隔の位置の個数は、多い方がよいが、8個ないし16個が望ましい。
つぎに、建柱状態にある甲地区(9本)、乙地区(9本)及び丙地区(8本)のそれぞれの鋼管柱につき超音波探傷を行い、その前記比W、前記評価及び掘削して実測し確認した掘削結果の実例について説明する。
各鋼管柱に対し、周面の等間隔の16個所について、前記端面部Tからのエコー高さ総和T′の、前記地中部U全体からのエコー高さ総和U′に対する比Wを求め、その比Wが、低い連続した3個所について、前記比W(%)と、それぞれ深さ20cm程度掘削して腐食状態を確認した掘削状況とを、甲地区は表1、乙地区は表2及び丙地区は表3にそれぞれ示す。
Figure 0005519268
Figure 0005519268
Figure 0005519268
各表において、鋼管柱の減肉が、殆どないのを健全、25%未満を微小腐食とし、25%から50%未満を軽度腐食、50%以上を重度腐食として表示している。
例えば甲地区の柱符合Hの場合、位置符合H1、H2、H3の3個所については、比Wが7.1%、8.2%、5.9%と、それぞれ掘削状況が軽度腐食を示す。
つぎに、表4は、前記比W(%)を10等分に区分するとともに、掘削確認による前記健全及び微小腐食を健全(腐食無し)と、前記軽度腐食及び重度腐食を不健全(腐食有り)とに区分し、前記比W(%)の10等分の区分及び掘削確認の区分に、各鋼管柱の位置符合を対応して表示したものである。
Figure 0005519268
つぎに、表5は、本実施例では、設定閾値Vを40%として評価し、前記比Wが設定閾値V40%以上を健全(腐食無し)、40%未満を不健全(腐食有り)とし、その区分と、掘削確認による健全、不健全の区分に対応して表示したものである。
Figure 0005519268
同表5に示すように、前記評価による不健全の位置符合のもののうち45件は、前記掘削確認による不健全の位置符合のものと全く一致し、前記評価による健全の区分に、掘削確認による不健全の位置符合のものは1件もない。
一方、前記評価による不健全の区分のうち、4件が掘削確認による健全の区分に区分されているが、前記評価による方が、掘削確認によるよりも重い方に評価しており、軽い方に評価するよりは良く、現実的には問題がない。
また、前記評価による健全の区分のもの29件は、前記掘削確認による健全の区分に合致している。
なお、前記設定閾値Vは、40%に限定されるものではなく、若干増減しても差し支えなく、前記設定閾値Vは、少なくとも35%と45%の間の値であることが有効であり、前記設定閾値Vが35%より小さいと、前記評価による健全の区分に、掘削確認では不健全に区分されるものが含まれる可能性が高く、適切でなく、また、設定閾値Vが45%より大きいと、掘削確認では健全の区分のものが、前記評価では不健全の区分に含まれるものがあり、厳しすぎて現実的でなく不適切である。
また、前記設定閾値Vは、調査対象の鋼管柱の表面処理状態によっては増減することがある。
1 鋼管柱
2 探触子
3 地際
4 地中端面
S 鋼管柱地中部
T 地中端面部
U 地中部全体

Claims (5)

  1. 下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に超音波探傷器の探触子を上向きに設置し、前記鋼管柱の地上端面に向かって超音波を発信し、その反射波により前記地上端面と前記探触子間の距離Xmmを測定し、既知の前記鋼管柱の長さYmmから前記距離Xmmを減算し、前記探触子と鋼管柱地中端面間の距離Zmmを算出するとともに、
    前記鋼管柱の地上部に前記探触子を下向きに設置し、前記探触子により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、
    前記探触子が受信したエコーから、
    前記鋼管柱地中端面部からのエコー高さ総和の、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和に対する比を求め、
    前記比が設定閾値以上の場合、前記鋼管柱地中部に腐食欠陥なしと評価し、
    前記比が前記設定閾値未満の場合、前記鋼管柱地中部に腐食欠陥ありと評価し、
    前記鋼管柱地中端面部からのエコー高さ総和は、前記探触子と前記鋼管柱地中端面間の前記距離Zmmから100mm減算した位置(Zmm−100mm)と、前記探触子と前記鋼管柱地中端面間の前記距離Zmmに200mmを加算した位置(Zmm+200mm)との間の範囲のエコー面積として求められる
    ことを特徴とする鋼管柱地中部の欠陥評価方法。
  2. 鋼管柱地中端面部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱地中端面から上50mmと下100mmの間の範囲を含むことを特徴とする請求項1記載の鋼管柱地中部の欠陥評価方法。
  3. 鋼管柱地中部全体が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱地際から鋼管柱地中端面の下100mmの間の範囲を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の鋼管柱地中部の欠陥評価方法
  4. 設定閾値が、35%と45%の間の値であることを特徴とする請求項1請求項3のいずれか一項に記載の鋼管柱地中部の欠陥評価方法。
  5. 前記鋼管柱地中部全体のエコー高さ総和が、地際と、前記探触子と鋼管柱地中端面間の前記距離Zmmに200mmを加算した位置(Zmm+200mm)との間の範囲のエコー面積として求められることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の鋼管柱地中部の欠陥評価方法。
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