JP5518874B2 - 超偏極分子水溶液の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)の分野に関する。より具体的には、本発明は、in vivo MRI画像診断法に使用することのできる超偏極分子水溶液の調製方法、MRI造影剤の製造におけるその使用、およびヒトまたは非ヒト動物の身体の器官、領域または組織の診断用MR画像の作成に該水溶液を直接利用する診断法に関する。
磁気共鳴イメージングは、in vitroとin vivoの両方で、医学的および生物学的研究のための十分確立された強力なツールである。この技術の主な欠点といえば、MRIが基礎とするNMR分光法の感受性がもともと低いということである。事実、NMRシグナルの強度は、造影する核の核スピン状態の集団間の差に依存する。よく知られているボルツマン式(ΔN=γhB0/(2πkT))に従えば、この差は、温度と適用される磁場の関数であり、熱平衡状態では10-5のオーダーであり、非常に低い。
近年、上述の欠点の有望な解決手段として超偏極分子の使用が提示されており、実行可能で且つ効果的なMR超偏極の手法の開発が盛んに行われている。
これに関して最も端的なものとしては、「ブルー・フォース」法があり、これは目的分子を高い磁場(20Tまで)で低い温度(絶対0度付近)に所定の時間保持するというものである。この方法は、一般的適用性はあるが、核の偏極を生じるのに必要な核の遷移を迅速に促進することを可能にし、その実施後直ちに除去されるか、さもなければ「消失する(turned off)」、適当な「緩和スイッチ(relaxation switch)」の適用を必要とする。しかしながら、このような目的に適した「緩和スイッチ」はこれまで見つかっておらず、このアプローチは現在のところ利用できない。
別の方法は、いわゆる「光ポンピング/スピン交換」と呼ばれるものであり、129Xeや3He等の希ガスに適用することができる。この場合では、円偏光レーザービームを用い、選択されたガスとアルカリ金属上記のガス状混合物に照射する。これら核の長い緩和時間によって長時間維持することができる高度に偏極したXeおよびHeが得られる。
このようにして得られた超偏極ガスを使用して実施される呼吸器系のMRI試験は知られている。この点について、例えば、J. Thoracic Imag. 2004, vol. 19, pp. 250-258; Phys. Med. Biol. 2004, vol. 49 pp. 105-R153を参照。しかしながら、上述したように、この技術は一般的に適用可能なものではなく、希ガスの偏極に限定される。
核スピンレベル間の集団の差はまた、動的核偏極(即ち、DNP)として知られる技術に従って、目的の核と、不対電子と共役した常磁性核種との間の「オーバーハウザー効果」によって増大させることができる。例えば、この技術は、MRIの使用によって行われる代謝プロファイルの試験に関して現在利用されている、尿素、ピルビン酸塩およびそれらの代謝誘導体を含む生物学的目的のいくつかの分子を超偏極させるために用いられている(例えば、Europ. Radiol. 2006, vol. 16, pp. 57-67, Magn. Res. in Med., vol 58, 2007, pp. 65-69; Appl. Magn. Res. 2008, vol. 34, pp. 533-544を参照)。
この技術は、原則として、いずれのタイプの分子にも適用できるが、低温で電子の照射を可能にする強力なクライオスタットと適当な「ハードウェア」が必要であり、実際には、一般的使用に制限が生じる。
さらなる問題は、超偏極後の基質の迅速な分解が可能な有効な手順、および超偏極基質のin vivo 投与前の毒性の高い常磁性ラジカルの分離が必要とされることである。
例えば、米国特許第6574495号には、Para Hydrogen Induced Polarization(PHIP)として知られる手順による、不飽和基質に対するパラ水素の付加により得られた超偏極分子の代替的使用が提示されている。
この手段の主な利点は、超低温およびDNP法で使用するような複雑な分解手段を用いる必要なしに、ボルツマン熱力学により決定されるものと比較して大きく変化した核スピンレベルの集団が得られることに依存している。したがって、この手段はDNP超偏極法に代わる、より単純でより安価な方法であるといえる。
上述のとおり、PHIP法は、不飽和基質(またはMR剤前駆体)の、パラ異性体で豊富化された水素ガスによる触媒水素化に依っている。
水素分子は、実際には、2種類のスピン形態の異性体、即ちオルト−水素(o−H2)およびパラ−水素(p−H2)、で存在する。2個のプロトンの交換に関して対称的であるオルト異性体は三重縮退(トリプレット状態)であり、非対称のパラ異性体はシングレット状態である。さらに、オルト異性体はスピン=1(S=1)でNMRアクティブであり、パラ異性体はスピン=0(S=0)でNMRサイレントである。
2種類の形態が存在するこの平衡混合物(あるいはノーマル水素ともいう)は、室温で75%のオルトと25%のパラ異性体を含んでいるが、パラ状態が熱力学的に有利であると、H2分子の比較的高い回転温度に起因して、低温に維持することにより平衡混合物をパラ異性体で豊富化することが可能である。
例えば、77K(液体のN2温度)では、52%パラ:48%オルトの比で2種類の形態が存在し、20Kではパラ異性体が99.8%の混合物が形成する。
通常の状態では、選択則によって禁じられるシングレット−トリプレット遷移が関与するため、2種類の異性体の間の平衡速度は非常に低い。しかし、例えば、Fe34、Fe23等のイオン酸化物や活性炭から選択される適当な触媒の存在下で迅速に相互変換される(例えば数時間で)。得られたパラ豊富化体は、次いで室温に維持するが、但し、変換触媒および他の常磁性不純物は完全に除去される。このやり方によって、数時間は安定を維持する非平衡混合物、即ちパラ異性体(あるいはパラ水素)で豊富化された水素混合物、を室温で得ることが可能である。
NMRサイレントであるが、パラ水素を不飽和分子に付加した場合、AXスピン系の形成で対称性は崩れ超偏極が観察される、言い換えれば、超偏極したプロトン核に対応するパラ水素化化合物のNMRスペクトルにおける有意に増強したシグナル、が観察される。一般に、1H NMRスペクトルにおいて、MRシグナルの豊富化に関して測定される感受性の増大は105倍も高いものである(例えば、Sensitivity enhancement utilizing parahydrogen, C.R. Bowers, Encyclopedia of NMR Vol.9 2002 pp750- 770を参照)。
それでも、当業者は、in vivo MRIの目的には、プロトンの超偏極が非常に高いとしても、ヘテロ核(非プロトン)超偏極はそれより有用であることを認識している。それは、in vivo の条件では、パラ水素化された造影剤のプロトンシグナルが組織水の内因的な1Hシグナルと重複し得るためである。対称的に、非プロトン核についての内因的シグナルはほぼ存在せずバックグラウンドノイズが存在しないので、これにより、高いシグナル対ノイズ比で画像の記録が可能であり、コントラストは、超偏極分子が到達した領域とこれが存在しない領域との間のシグナル強度の差によって生じるのみである。
さらなる利点は、非プロトン核を特徴付ける長いT1値(緩和に起因する偏極の喪失が制限される)および、異なる分子に含まれる場合のこの非プロトン核の化学シフトレンジの幅、言い換えれば、与えられたヘテロ核に関連する化学シフトの値が異なる分子中では異なるという事実、によるものであり、このことにより一度に異なる分子を見ることが可能である。
したがって、主たる目的は、非プロトン核、特に核スピン=1/2を有する核(例えば、13C、15Nおよび29Si等)の偏極のための、実行可能で有効なMR法、並びに非プロトン超偏極核、特に13C豊富化超偏極基質、を含んでなる造影剤に関する。
興味深いことに、PHIP超偏極法は、特にDNP法と組み合わせて、簡単で安価な方法で13Cおよび15N超偏極分子を提供することが可能である。
コントラストのため、in vivo MRI医学用イメージングに使用するのに有効な13C超偏極分子を得るためには、以下の要件を満たさなければならない:
i)基質分子は容易に水素化可能でなければならない;
ii)基質分子は、分子にパラ水素を付加したプロトンから3結合長の距離内に13C炭素原子を含んでいなければならない;
iii)緩和速度を制限するために、基質分子の分子量は小さくあるべきであり、好ましくは500Daよりも小さい;
iv)超偏極生成物は、水溶性で生理学的に許容されなければならない;
v)1個のH2分子から両方のプロトンを、スピン相関を維持するように、この基質分子に移動させることが可能なパラ水素化触媒を用いなければならない;
vi)MRIイメージングにおいて有効とするために、パラ水素のスピンオーダーを13C巨視的磁化(net magnetization)に変換しなければならない;
vii)in vivo の適用にパラ水素化生成物の水溶液を用いるので、水素化反応は水の中で直接実行すべきであり、あるいは、水素化に用いる有機溶媒を完全に除去しなければならない。
同種の判断基準が、13Cと異なる非プロトン核で適切に豊富化された超偏極基質の調製に同等に当てはまることは、当業者には明かである。
PHIP超偏極法を使用する際に直面する主な問題が、毒性の超偏極触媒の使用と、超偏極触媒と水素がより可溶性である有機溶媒の使用に起因することから、コントラストのためには、in vivo MRI適用のために、パラ水素化生成物の生理学的に許容し得る水溶液が必要である。
遷移金属に基づくいくつかの種類の水素化触媒がそれ故研究中である。
同種の遷移金属を基礎とする触媒が最も良好な活性と選択性を有することが示されている。特に、不飽和の前駆体へのパラ−H2付加後の13Cの高い偏極を可能にすることが示されている触媒として、好ましくは、キレート化ホスフィンリガンド(例えば、DPPB(ジフェニルホスフィンブタン)またはDPPE(ジフェニルホスフィンエタン))と、ジエン分子(例えば、シクロオクタジエンまたはノルボルナジエン)を含む、Rh(I)カチオン性複合体がある(例えば、K. Goldman et al., Magn. Res. Med. 2001, 46 1-5参照)。
これら水素化触媒は、それらがより可溶性である、有機溶媒(好ましくはアセトン)中で最も有効である。しかしながら、in vivo 投与のためには、水性媒体中に入る前に有機溶媒を反応混合物から完全に除去しなければならないことは明らかである。
この作業は、例えば、反応器の直ぐ下流に設けた「スプレー乾燥機」により、溶液を固体の乾燥粒子に変換するための製薬技術で一般に用いられているものと同様のプロセスを介して行うことができる(例えば、米国特許第3615723号参照)。この場合、流体物を、それがキャリヤーガスにより噴霧され分散される乾燥チャンバー内へスプレーし;減圧により揮発性の溶媒を蒸留するとともに、混合物に予め添加した水は「乾燥機」に残存して加えた物質の水溶液が得られる。しかしながら、低分子量の分子(500Da)がパラ水素化基質として好ましく用いられるので、上記手順の使用には、主に、有機溶媒とともに水素化生成物が喪失する可能性に起因する欠点が伴う。
一方、触媒の水溶解度、そしてそれによるそれらの水性媒体における有効性、を改善するために意図的に導入した、主にホスフィンリガンドにイオン性/極性基を含むRh(I)カチオン性複合体と一緒に(例えば、WO99/24080)、水性溶媒が用いられてきた。
しかしながら、水性媒体で実施する際に対処しなければならない重要な欠点は、水における水素の低い溶解度に起因し、これにより、非常に高い圧力(50〜100bar)または低い圧力(10〜15bar)にて層流状態下で、記載した(例えば、Magn. Res. Mater. Phys. 2009, 22, 111)適当な反応器にて操作する必要がある。さらに、同種の触媒の使用は、触媒を含まない生成物溶液の単離と同時に触媒の回収と再生の困難があることが障害となる。
カチオン性Rh複合体を除去するために一般的に用いられる方法として、例えば、反応混合物を適当なカチオン交換樹脂に浸透させることがあるが、この方法は偏極の顕著な喪失につながる。
もう一つの方法として、固体表面(例えばシリカまたはポリマー)に担持されたRh(I)をベースとする触媒が用いられてきた。しかしながら、担持された触媒で得られる正味偏極(net polarization)は、同種触媒で観察されるものよりも有意に低く、これは恐らく、中間体レベルで増大した緩和速度をもたらす基質−触媒付加物の移動度が低いためであろう。故に、上記の精製の問題を克服しヒトまたは非ヒトのMRイメージングにおいて使用する超偏極分子の水溶液を提供するための簡単で安価な手法に対する必要性が依然として存在する。
本発明によって提供される解決手段は、相関移動による、in vivo MRI診断イメージングにおいて使用することができる、水溶液中での、高度に偏極した分子のワンステップの製造と迅速な単離のための改善された手法に関する。
より具体的には、一実施形態では、本発明は、ヒトまたは非ヒト動物の身体の器官、領域または組織のMRI診断イメージングにおいて使用される超偏極分子水溶液の、ワンステップでの、粗製の有機溶液から前記超偏極分子が迅速な相関移動抽出により不純物を含まない水溶液中に単離される、製造方法に関する。
有利なことには、本発明の方法を用いることで、さらなる精製および/またはその後の調合を要することなく、in vivo MRIに用いる水溶液中で、有機溶媒、未反応の基質および超偏極触媒不純物を完全に含まない超偏極生成物が一度に得られる。
好ましくは、本発明の製造方法において、超偏極分子(即ち、MR造影剤)は、有機溶媒に可溶な適当な不飽和基質(即ち、「MR造影剤前駆体」または単純に、本明細書で同じ意味で用いる「前駆体」)へのパラ水素の付加により得られる。
本発明によれば、そして特に記載しない限り、本明細書において同じ意味で用いる「MR剤」または「MR造影剤」なる語は、少なくとも1つの、プロトンまたは非プロトンの、磁気共鳴シグナルを生じることが可能な超偏極核を含む基質または分子を意味する。
本発明の目的に適した有機溶媒は、水と混和しない、好ましくは塩素系有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等)、芳香族系溶媒(例えば、ベンゼンおよびトルエン等)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびブチルエーテル等)、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびシクロヘキサン等)、酢酸エチル、長鎖アルコール(例えば、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)である。これらのうち、塩素系溶媒および上記炭化水素が好ましく、クロロホルムおよびジクロロメタンが特に好ましい。
水素化反応は、有機溶媒中で可溶であり水と水性溶媒中で不溶であるように適切に選択した水素化触媒の存在下で、PHIP法の使用により好ましく行う。一般的には、上記触媒を当業者に知られている触媒量、例えば、10:1〜5:1の基質/触媒比、で用いる。本発明の使用に適当な触媒の例としては、式
[Rh(ジホスフィン)ジエン]+[アニオン]-
(式中、ジホスフィンは好ましくはDPPB(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、DPPE(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)およびそれらの誘導体(例えば、DINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)、CHIRAPHOS(2,3−ジフェニルホスフィノブタン)、DIOP(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,4−ビスデオキシ−2,3−O−イソプロピリデン−L−トレイトール)およびDIPAMP(1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)(フェニルホスフィノ)]エタン)等のキラルホスフィン)から選択され;
ジエンは好ましくは1,5−シクロオクタジエンおよびノルボルナジエンから選択され;アニオンは任意のアニオンであってよいが、好ましくはテトラフルオロボレートまたはトリフルオロメチルスルホネートである)
で示されるロジウム複合体が挙げられる。これらのうち、ホスフィン基がジフェニルホスフィノブタンであるものが好ましく、[ビス(ジフェニルホスフィノブタン)(1,5−シクロオクタジエン)]Rh(I)が特に好ましい。
本発明の使用に適したMR剤前駆体は、一般的には1以上の不飽和結合(例えば、炭素−炭素二重または三重結合)を含み、有機溶媒中で十分に可溶性であり水中での溶解度が低い(即ち、難溶性)または好ましくは完全に不溶性であり、反対に増大した水溶性を示す対応するパラ水素化された分子を生じることが可能である、あるいは、好ましくは水単独または適当な水性溶媒の作用によって水溶性の分子に迅速且つ選択的に変換される、水素化可能な基質を含んでなる。
本発明によれば、特に記載しない限り、本明細書において、本発明のMR剤前駆体を参照して同じ意味で用いられる「水に難溶性」または「ほとんど水に溶けない」なる表現は、水において最低限の溶解性、好ましくは前駆体の総量の20%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満、を有する化合物を意味する。
有利なことには、上記の条件は水と混和しない有機溶媒中の水素化反応を行い、粗製の反応混合物を、水でまたは適当な水溶液で、それぞれ図1および図4に示したように、単純に希釈することにより、超偏極生成物またはその水溶性誘導体を水相にて分離することが可能である。
in vivo 投与のために、不飽和基質は、生理学的に許容し得る超偏極生成物、あるいは粗製の反応物から単離可能であるその生理学的に許容される誘導体の形態を生じなければならないことは言うまでもない。
好ましい実施形態では、本発明は、適当な不飽和基質が、水と混和しない有機溶媒中で可溶化され、有機溶媒に可溶であるが水、より一般的には水性溶媒、には不溶である触媒の存在下で、パラ水素により水素化し、単純に水または適当な水溶液で希釈後、超偏極生成物を含有する水相を回収することにより有機反応媒体(粗製溶液)から迅速に抽出される対応するパラ水素化化合物を得る、製造方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、適当な不飽和前駆体を、水と混和しない有機溶媒に溶解し、有機溶媒に可溶であるが水、より一般的には水性溶媒、には不溶である触媒の存在下で、パラ水素により水素化して対応するパラ水素化化合物を得、最後に、これを単純に水または適当な水溶液で希釈後、超偏極生成物を含有する水相を回収することにより有機反応媒体(粗製溶液)から迅速に抽出される水溶性の誘導体に迅速且つ選択的に変換する、製造方法に関する。
より好ましくは、好ましい実施形態では、本発明は、超偏極分子の水溶液の製造方法であって、
a)適当な不飽和基質を、水と混和しない有機溶媒に溶解し、有機溶媒に可溶で水には不溶である触媒の存在下、パラ水素で水素化して対応するパラ水素化化合物を得;
b)該パラ水素化化合物を、該有機反応媒体を水または水性溶媒で希釈することにより単離しした後、超偏極生成物を含有する水相を回収するか、あるいは
c)ステップa)で得たパラ水素化化合物をその水溶性の誘導体に迅速且つ選択的に変換し、これは、有機反応媒体を水または適当な水溶液で希釈後、超偏極誘導体化合物を含有する水相を回収することにより有機反応媒体から単離される、
製造方法に関する。
本発明の好ましい実施形態では、上記製造方法のステップa)に従って得られたパラ水素化分子は、有機反応媒体の水または適当な水溶液による希釈の作用によって単純にその水溶性の誘導体に迅速且つ選択的に変換した後、それを含んでなる水相を回収することにより、粗製の反応物から簡単に単離される。
したがって、特に好ましい実施形態では、本発明は、
a)適当な不飽和基質を、水と混和しない有機溶媒中に溶解し、有機溶媒に可溶であるが水には不溶である触媒の存在下で、パラ水素で水素化して対応するパラ水素化化合物を得る、および
c’)ステップa)で得たパラ水素化分子を、粗製の有機溶液を水または適当な水溶液で希釈することにより、その水溶性の誘導体に迅速且つ選択的に変換し、これは、これを含んでなる水相を回収することにより単離される、
製造方法に関する。
本発明によれば、特に記載しない限り、本明細書において同じ意味で用いられる「水溶液」または「適当な水溶液」なる語は、in vivo 診断適用ではいずれの場合でも生理学的に許容され且つ使用できる、場合により適当に緩衝化された、滅菌水または生理食塩水を指し、または、さらには、超偏極分子の水溶性誘導体への迅速且つ選択的変換を促進し、結果として、さらに精製することなくin vivo 診断イメージングにおける使用に適当な、生理学的に許容し得る該誘導体の水溶液を生じることが可能な、適切に選択された試薬の適当な量をさらに含有する、上で定義した水溶液を意味する。
これに関し、前記変換を促進するために用いる試薬がそれ自体生理学的に許容されるものでない場合、添加した水溶液中のその量は、パラ水素化分子のその水溶性で生理学的に適合する(生理学的pH条件で)誘導体への変換反応において完全に用いられ、in vivo 診断用MRIイメージングに使用されるその生理学的に許容し得る水溶液を生じるよう、その反応自身の化学量論に基づいて正確に決定しなければならない。
本発明の水溶液の適当な例には、水溶性で生理学的に適合する誘導体、例えば、生理学的に許容しうる塩(例えば酸の)または生理学的に許容し得るアミドを生じるための、水、生理食塩水、適当なパラ水素化基質の加水分解を促進することが可能な最小限の量の塩基(例えばNaOH)または酸(例えば、クエン酸または酢酸)を含有する水溶液、または生理学的に許容し得る試薬(例えば、アミンまたはアミノ酸(例えば、グリシン、ロイシン、アラニン、セリン))を含有してなるパラ水素化化合物基質のアミノ分解を促進することが可能な水溶液が挙げられる。
本発明の範囲に関して特に好ましいのは、水、生理学食塩水、NaOHの水溶液、およびクエン酸または酢酸の水溶液である。
本発明の好ましい実施形態では、有機反応媒体に添加する水溶液の体積は、不飽和基質と水素化触媒を可溶化するために用いた有機溶媒の体積と等しい。より好ましくは、水溶液は、さらなる濃縮を要することなく使用される目的の超偏極分子の水溶液が得られるよう適当な量で用いる。反対に、超偏極化合物を含有する回収された水相の適当な希釈は、場合により、適当な量の滅菌水または生理食塩水を用いることによって行う。
本発明の使用に適当なMR剤前駆体は、一般に、1またはそれ以上の不飽和結合を含む水素化可能な基質を含んでなる。
一般に、本発明の使用のためのMR剤前駆体は高度に偏極可能である。
好ましい前駆体試薬は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも30%、またはそれ以上、に対応する程度まで偏極可能であり、それらが生じる超偏極分子は、造影手順を可能にするのに十分な時間、偏極を維持することが可能である。
さらに、本発明の好ましい前駆体は、低分子量、好ましくは500D未満、より好ましくは100〜300Dである。
重要なことには、そして上述したように、本発明の使用のための基質分子は、有機相に十分に可溶であり、水相では難溶または不溶であり、反対に水での溶解性が良好な対応ずるパラ水素化分子、あるいは適当な化学反応、および好ましくは水のまたは適当な水溶液の単独の作用により水溶性分子に迅速且つ選択的に変換される対応ずるパラ水素化分子を生じることが可能である。
適当な例としては、例えば、パラ水素で部分的に飽和させるための、対応する置換されたアルケンを生じる置換されたアルキンが挙げられる。好ましくは、出発物質のアルキンとパラ水素化によって生じた対応するアルケンとの間の水溶性の差は、高い水溶性によって特徴付けられなければならないアルケンのほうが少なくとも60%高い。
有用な基質のさらなるクラスとしては、パラ水素による水素化によって対応する置換されたアルカンを生じる、置換されたアルケンが挙げられ、水溶性の差は、水相でより高い水溶性によって特徴付けられなければならない飽和水素化生成物であるアルカンのほうが少なくとも60%水溶性である。
パラ水素化の後に迅速且つ簡単に水溶性の誘導体に変換され得る前駆体の例としては、カルボン酸無水物、活性化エステルおよびケテンが挙げられる。
十分に安定な不飽和無水物は、実際には、有機溶媒中でパラ水素化した後、塩基性水溶液で加水分解(反応媒体の希釈により)し、好ましくはこれを水溶液中に通し、場合により生理学的に許容し得る塩の形態で、対応するカルボン酸を形成した後、水相自体の単純な分離によって単離することができる。(有機相に添加する)水溶液に含有させるべき塩基の正確な量は、好ましくは、誘導体(例えばカルボン酸)の抽出後、MRIによるin vivo 診断に用いる生理学的pHを有するその水溶液が得られるよう計算する。
上で説明したとおり、本発明の使用のための適当な前駆体はいずれも、必然的に、パラ水素の付加により還元されて対応のパラ水素化化合物を生じる、少なくとも1つの不飽和部位(例えばC−C二重または三重結合)を含む。
しかしながら、上で説明した理由により、in vivo 磁気共鳴イメージングにおいて、非プロトン核にて超偏極した分子の使用が確かに好ましいと考えられる。
この特に好ましい実施形態では、本発明は、超偏極した非プロトン核(または本明細書において同じ意味で用いるヘテロ核)、例えば、19F、13C、15Nまたは29Si核、特に13Cまたは15N超偏極核、を含んでなる超偏極した分子(MRイメージング剤)の水溶液の製造のための手順に関する。
一般に、本発明の場合のように、PHIP法の使用によるヘテロ核の超偏極は、パラ水素のプロトンから目的のヘテロ核への偏極移動によって得られる。
さらに詳しく言えば、例えば、13C MRI造影剤等のパラ水素化化合物を使用するために、パラ水素から連結した炭素への偏極移動により得られた超偏極炭素原子の「アンチ・フェーズ」シグナルは、画像取得に有用な「イン・フェーズ」シグナルに完全に変換される。このステップは、例えばGoldman M., Johannesson H., C.R.Phisique 2005, 6, 575に開示された適当なパルス配列を用いることにより、またはパラ水素化生成物に適当な磁場循環法を適用することにより行うことができる。これには、水素化されたサンプルを磁気遮蔽(磁界強度=0.1μT)へ急速に導入(非断熱状態)した後、遮蔽をゆっくりと除いて(断熱的)サンプルを地球磁場(50μT)に対応する値にすることが含まれる(これについては、例えば、C. R. Phisique 2004, 5, 315を参照)。
上記に沿って、および好ましい実施形態に従って、本発明の手段は、目的の非プロトン核へのプロトン核からの偏極移動(パラ水素化付加)を促進し、次いで相移動によって粗製の有機溶液から抽出し、前記製造方法のステップb)c)またはc’)に従って水相中にて単離される対応するヘテロ核超偏極を得るために、例えば、ステップa)で得られたパラ水素化生成物への適当な磁場循環法の適用を含んでなる。
より具体的には、特に好ましい実施形態では、本発明は、
a)適当な不飽和基質を水と混和しない有機溶媒に溶解し、有機溶媒中で可溶であるが水には不溶である触媒の存在下でパラ水素により水素化して対応するパラ水素化化合物を得る;
a’)適当な磁場循環法を適用する;
b)得られたヘテロ核超偏極分子を、有機反応媒体を水で希釈するか、または水性溶媒で希釈した後、超偏極生成物を含有する水相を回収することにより単離するか;あるいは
c)ステップa’)にしたがって得られた超偏極分子を迅速且つ選択的にその水溶性の誘導体に変換し、これは、水でこれを希釈するかまたは適当な水溶液で希釈した後、目的のヘテロ核超偏極誘導体を含んでなる水相を回収することにより粗製溶液から単離される、
製造方法に関する。
本発明の好ましい実施形態に記載のヘテロ核超偏極分子の水溶液を製造するのに有用な適当な化合物は、不飽和結合とともに、自然界の同位体存在度で存在し得る、核スピン=1/2を有する非プロトン核(例えば、13C、15N、29Si、19F)含むか、または好ましくは、基質分子において意図的に豊富化され故に前記非プロトン核において豊富化されるまたは「標識される」。
in vivo での適用では、本発明の好ましい基質化合物は、15Nまたは13Cであり、特に13C豊富化され13C豊富化の程度が少なくとも10%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは99%以上である。
パラ水素を分子に付加するプロトンから3結合の距離内に炭素原子、好ましくは13C豊富化されている、を含んでおり長いT1緩和時間を有するものが特に好ましい。
これらの要件を満たす炭素原子としては、例えば、カルボキシル基の炭素原子または4級炭素原子が挙げられる。
この場合、実際、パラ水素化により付加したプロトンと13C標識された適当なカルボキシル基(または4級炭素化合物)の間のスカラー結合は該ヘテロ核への偏極移動を可能にする一方、生理学的条件下で、その長い緩和時間は数十秒間の偏極の維持、さらに好ましくは60秒間を超えた偏極の維持が可能になる。
したがって、本発明の使用のために選ばれた基質は、アルケニル基またはアルキニル基と13C豊富化されたカルボニル基質を含んでなる。
このタイプの適当な例は、それらの分子基質において適当な不飽和を含んでいる、カルボン酸の無水物を含んでなる。
本発明の好ましい無水物としては、少なくとも1つの不飽和部位を含み、内部無水物であってもそうでなくてもよく、混合無水物でもあってよく、即ちR1−COOCO−R2(R1はR2と異なるか、または対称、即ちR−COOCO−Rである)である。そして混合無水物は、2つの不飽和のカルボン酸によって、または不飽和の酸と飽和の酸によって形成することができる。
第1のケースでは、水素化反応によって、いずれも偏極した2種類の酸R1−COOHおよびR2−COOHが得られるが、第2のケースでは、水素化反応によって偏極した酸(例えば、R1−COOH)のみと非偏極の「副生成物」(例えば、R2−COOH)が得られる。但し、後者のケースでは、適当なパルス配列の使用が、不飽和に隣接するカルボニル基から別のカルボニル基への偏極移動に用いられる。
この手順を使用することにより、例えば図5に示すように、「間接的な」偏極手順により、不飽和を有しないカルボン酸、即ち直接水素化できない(即ち、例えば、上記のR2−COOH残基)を偏極させることが可能である。
本発明の使用に特に好ましいのは、マレイン酸、クロトン酸、シス−ブテン酸(イソクロトン酸としても知られている)無水物および対応の混合無水物(シス−ブテン酸−酢酸およびシス−ブテン酸−エチルカルボニル無水物)である。
有機溶媒中で可溶であり、水素化後に水溶性の誘導体に迅速に変換される、本発明の基質化合物の第2のクラスは、活性化されたエステルとして示される。
例示として以下のものが挙げられる:
1)シリルエステル:例えば、式R−COO−SiR3で示されるトリアルキルシリルエステル、式R−COO−SiArR2で示されるアリール−ジアルキルシリルエステル、式R−COO−SiAr2Rで示される式ビスアリール−アルキルシリルエステルおよび式R−COO−SiAr3で示されるトリス−アリールシリルエステル等。これらの化合物は、実際には、有機溶媒中で水素化後、弱酸性の水溶液でカルボキシル酸(RCOOH)に加水分解し:得られたカルボン酸を直接水相中へ通じ、水相の分離によって容易に単離される。
2)スタンニルエステル:例えば、式R−COO−SnR3で示される、水に不溶のトリス−アルキルスタンニルエステルの適当な加水分解を、フッ化物との反応による水素化後に行うことができる。
3)アシル−オキシアルキルエステル:例えば、一般式R−COO−CHR’OCOR”(式中、R’はHまたはMeであり、R”はMeまたはt−Bu)のエステルを酸性溶液または塩基性溶液のいずれかとの反応、または適当な酵素触媒の存在下で容易に加水分解することができる。
4)イソプレニル化エステル:これらのエステルは以下の反応式:
Figure 0005518874
による加熱分解によって分解する。
5)tert−アルキルエステル:式R−COO−CR’3(式中、R’はPhまたはMeである)で示され、例えば超酸樹脂の使用により加水分解が促進する。
本発明の不飽和基質のさらなるクラスは、ケテンである。実際に、以下の反応式に示すとおり、環に張力を与えると、パラ水素により容易に水素化され、その後、その張力により、酸に迅速に加水分解される。
Figure 0005518874
その後、この偏極は、目的のヘテロ核、例えば、加水分解により形成したカルボキシル基の炭素原子(ここで、この炭素とパラ水素から生じたプロトンとの間の結合定数は、十分に大きい)またはRに存在する適当な炭素原子または窒素(好ましくは豊富化された13Cまたは15N)に適切に移動する。
本発明の特に好ましい基質化合物としては、水素化後、適当なヘテロ核への超偏極の移動、および、それに続く、場合により、加水分解(または異なる適当な化学的修飾)により医療/診断目的の水溶性の生物分子が迅速且つ選択的に得られる、診断目的の生物分子の前駆体が挙げられる。
この種の基質化合物としては、例えば、アミノ酸、神経伝達物質、および、一般に、代謝前駆体が挙げられる。例えば、適当な例としては、水素化および加水分解の後にコハク酸を生じる、マレイン酸無水物またはマレイン酸/フマル酸エステルが挙げられ、クエン酸サイクルの診断的評価における使用が有用である。
さらなる例としては、クロトン酸および/またはイソクロトン酸の無水物およびエステルが挙げられ、これば水素化および加水分解により酪酸を生じ、酪酸は、すべての動物種の大腸における炭化水素とタンパク質の微生物発酵によって通常産生されるC4酸であり、暴露のレベル、他の代謝基質の利用能、および細胞内環境等の因子に依存して、新生物形成促進(pro-neoplastic)または抗新生物形成(anti-neoplastic)であり得る細胞増殖、アポトーシスおよび分化に対する様々な影響を有すると考えられる。
適当なβ−γ不飽和カルボン酸誘導体は、水素化後、好ましくはカルボキシル原子で13C豊富化されている、適当なアミノ酸(例えばグルタミン酸)を生じ、グルタミン酸代謝(グルタミン酸デカルボキシナーゼ(GAD)により触媒されるGABA作動性ニューロンにおける抑制性GABAの合成;グルタミン酸デヒドロゲナーゼにより触媒されるグルタメートの脱アミノ化による過剰または不要の窒素の処理)の評価および神経細胞およびグリア細胞膜のグルタミン酸トランスポーターの評価に用いることができる。
他方、適切に修飾された(例えば、有機溶媒におけるその溶解度を適切に増大する(減少させる)適当な官能基の導入による)不飽和基質の使用の可能性は、本発明の範囲に含まれるとされなければならない。例えば、有機溶媒における基質化合物の溶解度を増大させることができ、その後、パラ水素化反応の間に、例えば水素化分解によって脱離し、水溶性が増大した水素化化合物が得ることができる、ベンジルオキシ基等の官能基を用いることができる。
このようにして修飾された基質化合物は本発明のさらなる態様を構成する。
本発明の基質化合物、即ち、パラ水素化のための不飽和基質、好ましくは13C、15Nまたは核スピン1/2を有する他のヘテロ核はよく知られており商業的に入手可能であるか、またはこれらを既知の方法に従って容易に製造することができる。
同様に、本製造方法において使用される触媒は既知であるか、商業的に入手可能でない場合は、既知の方法により製造される。同様に、水と混和しない適当な有機溶媒は、これら上記に記載したものから選択し、商業的に容易に入手可能である。場合により、溶媒の適当な混合物により、溶媒系を構成することもできる。
本発明の製造方法を用いることによって得られる超偏極分子の不純物を含まない水溶液は、臨床的に許容し得る期間の間安定である。
本発明の水溶液は、0.002〜1.0M、好ましくは0.01〜0.5M、の範囲の濃度で超偏極分子を好ましく含有する。
本発明の製造方法を用いることによって得られる超偏極分子の不純物を含まない水溶液は、ヒトまたは動物の身体の器官、体液、領域または組織のin vitro、ex vivo、特にin vivo MR診断イメージング、並びに診断を目的とする生理学的パラメータの診断的評価のための使用に有効である。
例えば、カルボキシルの13C化学シフトが6.0〜7.0の範囲でpH依存的であるマレイン酸は、アセチレンジカルボン酸エステルの水素化および加水分解により得られ、組織におけるpH評価のためのプローブとして適用することができる。
さらに、本発明の製造方法を用いることによって得られる生物学的目的の超偏極分子水溶液は、MRイメージング技術の使用によって診断目的の代謝プロファイルの評価に関する振興分野における使用に有効であり得る。
本発明の超偏極分子水溶液は、血管内(静脈内、動脈内、冠内、脳室内投与等)、髄腔内、腹腔内、リンパ管内および腔内に使用できるように、応用範囲が広い。本発明の溶液または懸濁液はまた、エアロゾル−気管支造影法および注入に用いる、エアロゾルとして調合することもできる。
上述したとおり、本発明の製造方法を用いて得られた超偏極分子の不純物を含有しない溶液は、さらなる精製および/または調合の必要なしに、それ自体としてin vivo MRI診断イメージングにおいて使用可能である。
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本発明の製造方法を用いて得られた超偏極分子の不純物を含有しない水溶液を含んでなるMR造影剤に関する。
異なる実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物の身体の器官、組織または領域の診断評価において使用するためのMR造影剤の製造のための、またはMRイメージング技術による生物学的データの評価または代謝評価のための、本発明の超偏極分子の水溶液の使用に関する。
さらなる実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物の身体の器官、領域または組織のMR画像または生物学的パラメータ評価または代謝プロファイル評価が、MRイメージング技術の使用によって得られる診断イメージングの方法において使用するための、本発明の製造方法により得られた超偏極分子の水溶液に関する。
より具体的には、さらに別の観点から、本発明は磁気共鳴イメージングによるヒトまたは動物の身体の器官、領域、体液または組織の診断的可視化のための方法に関し、該方法は、
i)PHIP技術の使用により、水と混和しない有機溶媒中、有機溶媒に可溶であるが水には不溶である触媒の存在下で、パラ水素化し、場合により適当な磁場循環を適用して非プロトン核に正味超偏極を有する対応のMR剤を得、有機反応媒体を水または適当な水溶液で希釈し超偏極MR剤を含有する水相を回収し;
ii)前記水相をヒトまたは動物の身体に投与し;
iii)前記ヒトまたは動物の身体を、前記MR剤における超偏極核の励起を可能にする電磁波の周波数に暴露し;
iv)励起した核により生じたシグナルを記録し、該シグナルから、身体の領域の画像または目的の生物学的データを作成する
ことを含んでなる。
相移動によるパラ水素化生成物の抽出および単離のための本発明の手順の模式図を示す。 Aのパラ水素化によって得られたB(13C−豊富化)の13C−NMRスペクトル(14T,298T、アセトン−d6)。a)パラ水素化および磁場循環の直後に記録したスペクトル;b)緩和(5分)後に記録したスペクトル。スペクトル中のSは溶媒を示し、iは不純物を示す。 Aのパラ水素化によって得られたB(13C−豊富化)の13C−NMRスペクトル(14T,298T、D2O)。a)パラ水素化、磁場循環および水(D2O)中での抽出の直後に記録したスペクトル;b)緩和(5分)後に記録したスペクトル。 最初に水溶性の誘導体に変換することを含んでなる、相移動によるパラ水素化生成物の抽出および単離のための本発明の手段を模式的に示す。 混合無水物中でのカルボニルから他への偏極の移動およびさらなる加水分解によって得られた酸超偏極の例を示す。 13C−NMRスペクトル(14T,298K)を示す。a)CDCl3中でのマレイン酸無水物のパラ水素化によって得られたコハク酸無水物(スペクトルはパラ水素化および磁場循環の直後に記録した);b)CDCl3中のマレイン酸無水物のパラ水素化、磁場循環およびコハク酸無水物のD2O中のNaODによる加水分解の後にコハク酸を含有する水溶液のスペクトル。 13C−NMRスペクトル(14T,298K,アセトン−d6)を示す。a)アセトン−d6中でのアセチレンビスカルボン酸トリメチルシリルエステルCのパラ水素化によって得られたアルケンD(実施例4)(スペクトルはパラ水素化および磁場循環の直後に記録した);b)アセトン−d6中のCのパラ水素化とそれに続くD2O中での酢酸溶液による加水分解によって得られたマレイン酸(得られたアセトンd6/D2O混合物について記録したスペクトル)。
実験結果
本発明の製造方法をより説明するために、本発明の範囲の限定を何ら意図しない以下の実施例を記載する。
実施例1
超偏極試験
対称性アルキンA(以下に式を示す)は、触媒としてH2SO4の存在下で、アセチレンビスカルボン酸ビスメチルエステルをジエチレングリコールモノメチルエーテルでトランスエステル化することにより合成した。(オリゴ)オキシエチレン鎖は、パラ非水素化生成物Bの水溶性を好ましく増大させるために、適当に選択したものである。実際、Bの水における溶解度はアルキンAよりも高かった。触媒として、H2で予め活性化したアセトン−d6(0.4mL)、[ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン](1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボラン(5mg)、基質A(0.02mmol)および4atmのパラ水素H2(52%豊富化)を入れた、Youngバルブを設けた5mmNMR管中で不飽和基質Aをパラ水素化した。10秒間管を振盪することにより反応を開始し(収率=85%)、パラ水素化直後に記録した13Cシグナルを1500倍に増幅した。
インフェーズ13C共鳴の取得のため、米国特許第6574495号の開示に従い、磁場循環を水素化したサンプルに適用した。これは、管をμ−メタルシールド(磁場強度0.1μT)内へ急速に挿入した後、シールドをゆっくりと取り除くことにより行った。磁場循環手順全体で3〜5秒間要した。次いで、サンプルを分光器(14T)内へ挿入し、約250倍13Cシグナルが豊富化された高分解能NMRスペクトル(図2に示す)を取得した。
Figure 0005518874
実施例2
相移動による、実施例1の超偏極化合物の触媒および有機溶媒を含有しない水溶液
所望のパラ水素化された分子の触媒および有機溶媒を含有しない水溶液を生じる本発明の方法の能力を確認する試験は、実施例1に開示した、純粋なアセトン中で用いた水素化条件と同じ条件下、CDCl3/アセトン−d6(6:1)中で対応する化合物Aをパラ水素化することにより得、上記パラ水素化化合物Bの溶液を用いることにより行った。
磁場循環を適用した後、管を急速に開け、0.4mLの脱気したD2Oを添加した。管を3秒間よく振盪した後、5秒間静置し、この間相分離が生じた。シリンジで水溶液を取り、NMR取得のため管に移した。図3に示すように、13Cシグナルが100倍増大した13Cスペクトルを取得した。生じたシグナルの増大は、純粋なアセトン中で得られたものよりも低かったが、これは恐らく、プロセス全体の間の緩和に起因する部分的な偏極の喪失によるものであろう。いずれにしろ、残存する偏極は、D2O中に溶解したBに対応する増大したシグナルt165.99pmの検出には十分である。水相に移動したBの量は、全体の約10%と推定された。
実施例3
コハク酸の水溶液
Figure 0005518874
マレイン酸無水物を、5mgの[ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン](1,5−シクロオクタジエン)Rh(I)テトラフルオロボラン(H2との反応により活性化した)および5.5atmのパラ−H2(52%)の存在下で、6:1CDCl3/アセトン−d6混合物(0.4mL)中でパラ水素化した。10秒間反応させた後、磁場循環を適用し、D2O中の0.25M NaOH(0.4mL)を加えた。したがって、形成したコハク酸無水物はコハク酸に変換された。管をよく振盪した後、5秒間静置した。コハク酸を含有する水相をNMR取得のため別の管に移した。得られたスペクトルを図6bに示す:相抽出後に残存する偏極は、174.65ppmにて、コハク酸について増大した放射シグナルの検出が可能である(約30秒間のシグナル増幅)。すべてのコハク酸が水相に移動し、最終のpHは中性であった。最終の水溶液中での濃度が高い(約0.12M)にもかかわらず、観察されたシグナルの強度が低いのは、非13C豊富化マレイン酸無水物の使用による。
実施例4
活性化エステルの使用
Figure 0005518874
反応は、不飽和基質化合物としてアセチレンビスカルボン酸トリメチルシリルエステル(C)を用い、パラ水素による水素化の後、対応するアルケン(D)を得、弱酸性の水溶液を用いることにより対応するマレイン酸に変換した。図7は、a)パラ水素化および磁場循環の直後およびb)その後のD2O中の酢酸溶液による加水分解後、に得られたDの13C−NMRスペクトル(14T,298K,アセトン−d6)を示す。得られた結果は、超偏極で非常に高いシグナルの増大が得られ(約700倍)、加水分解後も偏極が観察されることが確認された。

Claims (13)

  1. 適当な不飽和基質を、水と混和しない有機溶媒中、適当な触媒の存在下でパラ水素化し、粗製の反応媒体を水溶液で希釈し、超偏極分子を含有する水相を回収することを含んでなる、超偏極分子の水溶液の製造のためのワンステップ法。
  2. 不飽和基質が水に不溶性または難溶性であり、対応する超偏極分子が水溶性である、請求項1記載の方法。
  3. 不飽和基質が適当なアルキニルまたはアルケニル基を含んでなり、対応するパラ水素化分子が、それぞれ、対応するアルケニル基または飽和アルキル基を含んでなる、請求項2記載の方法。
  4. 不飽和基質がさらに加水分解可能な基を含んでなる、請求項3記載の方法。
  5. 水と混和しない有機溶媒が有機塩素系溶媒、芳香族またはエーテル溶媒、または脂肪族炭化水素、酢酸エチルまたは長鎖アルコールから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 不飽和基質が、核スピン1/2を有する非プロトン核で標識されている、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  7. 不飽和基質が13Cまたは15N豊富化されている、請求項6記載の方法。
  8. 触媒が[ビス(ジフェニルホスフィノブタン)(1,5−シクロオクタジエン)]Rh(I)である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. a)適当な不飽和基質を、水と混和しない有機溶媒に溶解し、有機溶媒に可溶で水には不溶である触媒の存在下、パラ水素で水素化して対応するパラ水素化化合物を得;
    b)該パラ水素化化合物を、有機反応媒体を水または水性溶媒で希釈した後、超偏極生成物を含有する水相を回収することにより、該有機反応媒体から単離するか、あるいは
    c)ステップa)で得たパラ水素化化合物をその水溶性誘導体に迅速且つ選択的に変換し、これが有機反応媒体を水または適当な水溶液で希釈した後、超偏極生成物を含有する水相を回収することによりこの有機反応媒体から単離される、
    請求項1記載の方法。
  10. ステップa)で得られたパラ水素化分子が、有機反応媒体の水または適当な水溶液による希釈によって、迅速且つ選択的にその水溶性の誘導体に変換される、請求項9に記載の方法。
  11. さらに、ステップa)で得られたパラ水素化分子に、適当な磁場循環を適用して適当なヘテロ核に正味偏極を有する対応の分子を得る、請求項9に記載の方法。
  12. ヘテロ核が13Cまたは15N豊富化された核である、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1〜11のいずれかにしたがって得られた超偏極分子の水溶液を含んでなるMR造影剤。
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