JP5517836B2 - 誘導加熱調理器 - Google Patents

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Description

本願発明は、誘導加熱調理器に関し、とりわけ複数の加熱コイルを有する誘導加熱調理器に関する。
一般に、誘導加熱調理器は、調理鍋を載せるトッププレートの下方に配置された加熱コイルに高周波電流を流し、調理鍋の底板に渦電流を流してジュール熱を発生させることにより、調理鍋の底板を直接的に加熱するものである。このとき、加熱コイルを駆動する高周波電流と同じ周期の吸引電磁力が加熱コイルと調理鍋との間に生じる。そして複数の加熱コイルを用いて、互いに隣接する複数の調理鍋を異なる火力で(異なる周波数の高周波電流で)駆動したとき、両者の高周波電流の周波数差分が可聴域(約20Hz〜約20kHz)である場合には、差分周波数を有する干渉音(ビート音またはうなり音)が使用者に不快感を与えることがある。
この問題に対処するため、従来式の誘導加熱装置として、一方の加熱コイルに供給する高周波電流の周波数と、他方の加熱コイルに供給する高周波電流の周波数との差分周波数が可聴域(約20kHz)を越えるように周波数を制御することにより、使用者に不快感を与えるビート音を排除しようとするものが提案されている。
しかしながら、この誘導加熱装置において、加熱コイルが3つ以上あるとき、それぞれの加熱コイルに供給する高周波電流の差分周波数が可聴域を越えるように各周波数を設定すると、3つの加熱コイルの1つには極めて高い周波数を有する高周波電流を供給する必要となり、法令で許容されている100kHzより大きくなる場合がある。
さらに、たとえば特許文献1に記載の誘導加熱調理器によれば、左右および中央に配置された3つの加熱コイルを有し、左右に配置された2つの加熱コイルには周波数を可変とする高周波電流を供給し、中央に配置された加熱コイルには、左右加熱コイルの周波数可変の高周波電流の最高周波数よりも高い周波数に固定し、オンオフデューティ比を可変とした高周波電流を供給することにより、ビート音を排除することが教示されている。
特開2009−4099号
しかしながら、複数の加熱コイルに供給する高周波電流の差分周波数が可聴域を越えるように各高周波電流の周波数を制御し、あるいは特許文献1に記載の誘導加熱調理器において、一方(中央)の加熱コイルに供給する高周波電流が他方(左右)の加熱コイルに供給する高周波電流より高い周波数を有するように制約を設けると、ぞれぞれの加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路およびこれを制御する制御回路の構成および制御方法が複雑になってしまう。また、加熱コイルに極めて高い周波数を有する高周波電流を供給するとき、駆動回路のスイッチング素子で生じる電力損失(消費電力)が増大し、これを冷却するための放熱フィンや冷却ファンが嵩張り、誘導加熱装置全体が大型化して、製造コストが増大してしまう。したがって、高周波電流の周波数は、所望の火力を得るために付随的に変動し得るが、複数の加熱コイルに供給する高周波電流の各周波数の差分周波数が可聴域に入る場合であっても、あるいは高周波電流の周波数を特に制御(制約)しなくても、ビート音の発生を抑制する手段を実現することが強く望まれていた。
さらにこれまで、ビート音発生メカニズムとして、複数の駆動回路がそれぞれの加熱コイルに異なる周波数の高周波電流を供給するとき、複数の隣接する加熱コイルから生じる異なる周期の吸引電磁力が直接的に調理鍋に作用することにより、ビート音が発生するものと理解されていた。すなわちビート音は、調理鍋が隣接する複数の加熱コイルにより異なる周期で吸引されることによりのみ発生するものであって、1つの加熱コイルに対する異なる周波数の高周波電流が互いに干渉して、加熱コイルから調理鍋に直接的に加わる吸引電磁力の周波数の差異が唯一の発生原因であると考えられてきた(以下、これを「互いに異なる周波数を有する高周波電流による直接的な磁束干渉によるビート音」、または単に「直接的な磁束干渉によるビート音」という。)。
ところが、最近の本願発明者の研究結果によれば、複数の加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路(およびこれが実装された回路基板上の配線)のうちの1つから周囲に高周波磁束が形成され、その高周波磁束が別の駆動回路(および回路基板配線)に起電力を与える(誘導電流を発生させる)ことにより、後者の駆動回路に駆動される加熱コイルと調理鍋の底板との間に、可聴域の周波数差分成分を含む高周波磁束が形成され、これによる吸引電磁力が実質的なビート音を発生させることが新たに見出された。すなわちビート音は、互いに異なる周波数を有する高周波電流の直接的な磁束干渉によってのみ発生するものではなく、複数の駆動回路に生じる可聴域の周波数差分成分を含む誘導電流が間接的に調理鍋に作用することにより、無視できない程度の相当量のビート音を発生することが本願発明者によって確認された(以下、これを「異なる周波数成分を含む高周波電流による間接的な磁束干渉によるビート音」、または単に「間接的な磁束干渉によるビート音」という。)。
これまでの先行文献において、異なる周波数成分を含む高周波電流の間接的な磁束干渉によるビート音に対処することついては何ら提案されていなかった。本願発明は、異なる周波数の高周波電流を用いて複数の加熱コイルを駆動した場合であっても、簡便な構成で確実にビート音を実質的に抑制または排除することができる誘導加熱調理器を実現しようとするものである。
そこで本願発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、第1および第2の加熱コイルと、前記第1および第2の加熱コイルに高周波電流を供給する第1および第2の駆動回路を実装した第1および第2の駆動回路基板と、前記第1および第2の駆動回路基板の間であって、これらと平行にかつ前記第1および第2の加熱コイルに垂直に配設された電源回路基板とを備え、前記電源回路基板は、前記第1および第2の駆動回路に対向する少なくとも一部領域に第1および第2の導電層を有し、前記第1および第2の駆動回路基板はそれぞれ、前記第1および第2の加熱コイルに高周波電流を供給するように前記第1および第2の駆動回路を制御する第1および第2の制御回路を有し、前記電源回路基板は、前記第1および第2の制御回路に直流電圧を供給する電源回路を有する誘導加熱調理器を提供することを目的とする。

本願発明に係る誘導加熱調理器によれば、複数の加熱コイルに異なる周波数の高周波電流を供給して駆動した場合であっても、第1および第2の駆動回路に対向する第1および第2の導電層を有する電源回路基板を第1および第2の駆動回路基板の間であって、これらと平行にかつ第1および第2の加熱コイルに垂直に配設することにより、直接的な磁束干渉のみならず間接的な磁束干渉によるビート音を実質的に抑制または排除することができる。
本願発明に係る誘導加熱調理器1を概略的に示す部分破断斜視図である。 図1のII−II線から見た誘導加熱調理器のX−Z断面図である。 実施の形態1に係る誘導加熱調理器の全体的な電気的構成を示す回路ブロック図である。 実施の形態1に係る直流電源回路の詳細な回路ブロック図である。 実施の形態1に係る第1および第2の駆動回路基板ならびに電源回路基板に実装された電気回路構成を概略的に示す回路ブロック図である。 実施の形態1に係る第1および第2の駆動回路基板ならびに電源回路基板の配置位置を示す模式的な分解斜視図である。 商用電源と直流電源回路との間に配設されたラインフィルタの回路ブロック図である。 実施の形態2に係る誘導加熱調理器の全体的な電気的構成を示す回路ブロック図である。 実施の形態2に係る直流電源回路の詳細な回路ブロック図である。 実施の形態2に係る第1の駆動回路基板、およびこれに対向するシールド導電層のみを示す電源回路基板の斜視図である。
以下、添付図面を参照して本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を説明する。各実施の形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「X方向」、「Y方向」、および「Z方向」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。また以下の添付図面において、同様の構成部品については同様の符号を用いて参照する。
実施の形態1.
図1〜図7を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態1について以下詳細に説明する。図1は本願発明に係る誘導加熱調理器1を概略的に示す部分破断斜視図である。図1において、誘導加熱調理器1は、概略、金属製の本体筐体2、その上側表面のほぼ全体を覆うガラスなどで形成されたトッププレート3、および左右に配置された第1および第2の誘導加熱部4a,4bと(図1では左側に配置された第2の誘導加熱部4bのみ図示)を備える。また実施の形態1に係る誘導加熱調理器1はコンロ・ラジエントヒータ32(図3)を有するラジエント加熱部5を備える。
本体筐体2は、図1に示すように、X−Z平面に平行な前面11および後面12、Y−Z平面に平行な(左右に配置された)一対の側面13,14(図1では左側の側面14のみ図示)を有し、トッププレート3上の後面12に隣接して設けられた吸気窓15および排気窓16を有する。また誘導加熱調理器1は、誘導加熱部4a,4bの下方であって、本体筐体2の左側の側面14に偏って配置された魚等を調理するグリル加熱部6を有する。グリル加熱部6は、ほぼ矩形形状の金属製のグリル筐体または加熱庫(破線7で示す)と、加熱庫7を開閉して、その内部に食品を出し入れするための前面ドア7aと、加熱庫7内の食品を加熱する上下一対のグリル・ラジエントヒータ34a,34b(図2)とを有する。
図2は、図1のII−II線から見た誘導加熱調理器のX−Z断面図である。誘導加熱部4a,4bは、調理鍋等の調理器具Pの底板に渦電流を形成することにより鍋P自体を発熱させる第1および第2の加熱コイル10a,10b(図1および図2)を有する。また図1に示す誘導加熱調理器1は、トッププレート3上の前面11において、各加熱コイル10a,10b、コンロ・ラジエントヒータ32およびグリル・ラジエントヒータ34等の火力調節のための操作部17と、これらの火力等を表示するLED表示部18aおよびさまざまな制御状態を示すLCD表示部18bとを有する。なおLED表示部18aおよびLCD表示部18bは、以下まとめて「表示部18」という。
さらに本願発明に係る誘導加熱調理器1は、図1および図2に示すように、第1および第2の駆動回路基板20a,20bと、これらの駆動回路基板20a,20bの間に平行で、かつ第1および第2の加熱コイル10a,10bに垂直に配設された電源回路基板30と、これらの駆動回路基板20a,20bおよび電源回路基板30に送風して冷却するための冷却ファン19(図1)とを有する。なお詳細については後述するが、第1および第2の駆動回路基板20a,20bにはそれぞれ、第1および第2の加熱コイル10a,10bに高周波電流を供給する第1および第2の駆動回路22a,22bと、第1および第2の駆動回路22a,22bを駆動する第1および第2の制御回路24a,24bとが実装され、電源回路基板30には直流電源回路31等が実装されている。
図3は本実施の形態に係る誘導加熱調理器1の全体的な電気的構成を示す回路ブロック図である。図3に示す誘導加熱調理器1は、概略、第1および第2の加熱コイル10a,10bに高周波電流を供給する第1および第2の駆動回路22a,22bと、操作部17で設定された火力等に応じた高周波電流が第1および第2の加熱コイル10a,10bに供給されるように第1および第2の駆動回路22a,22bを制御する第1および第2の制御回路24a,24bと、第1および第2の制御回路24a,24b等に直流電圧(たとえばDC5V)を供給する直流電源回路31とを有する。
また誘導加熱調理器1は、コンロ・ラジエントヒータ32に交流駆動電流を供給するコンロ駆動回路33と、グリル・ラジエントヒータ34に交流駆動電流を供給するグリル駆動回路35と、操作部17および表示部18を制御する操作表示制御回路37とを有する。操作表示制御回路37は、直流電源回路31から直流電圧が供給され、第1および第2の制御回路24a,24bと通信する。なお、これに限定するものではないが、図3に示すように、第1の制御回路24aが第1の駆動回路22aだけでなく、冷却ファン19を制御し、同様に、第2の制御回路24bが第2の駆動回路22bだけでなく、コンロ駆動回路33およびグリル駆動回路35を制御して、操作部17で設定された火力等に応じてコンロ・ラジエントヒータ32およびグリル・ラジエントヒータ34等の火力を調節するようにしてもよい。
図4は、直流電源回路31の詳細な回路ブロック図である。直流電源回路31は、商用電源ACからの交流電流を直流電流に整流するダイオードブリッジ回路42と、平滑コンデンサ43と、多出力トランス44と、電圧検出回路45からの情報に基づいて多出力トランス44を駆動する回路制御素子46とを有する。すなわち直流電源回路31は、複数の独立した回路に直流電圧を供給する多出力式直流電源回路であり、図3に示すように、直流電圧Aを第1の制御回路24a(第1の駆動回路22a)および冷却ファン19に供給し、直流電圧Bを第2の制御回路24b(第2の駆動回路22b)に供給し、直流電圧Cを操作表示制御回路37に供給する。このように直流電圧A,B,Cは互いに独立しており、絶縁された基準電位(GND電位)を有する。
図3において、操作表示制御回路37は、使用者が操作部17で設定した操作情報を、第1および第2の制御回路24a,24b、コンロ駆動回路33およびグリル駆動回路35に出力し、これらの制御回路は、操作情報に基づいた火力が得られるように、第1および第2の駆動回路22a,22bを制御する。同様に、第1および第2の制御回路24a,24bは、駆動状態を示す駆動信号を操作表示制御回路37に出力し、操作表示制御回路37は、駆動信号に基づいて表示部18が駆動状態を示すように表示部18を制御する。
図5は、実施の形態1に係る第1および第2の駆動回路基板20a,20bならびに電源回路基板30に実装された電気回路構成を概略的に示す回路ブロック図である。具体的には、第1の駆動回路基板20a上には第1の駆動回路22aおよび第1の制御回路24aが実装され、第2の駆動回路基板20b上には第2の駆動回路22bおよび第2の制御回路24bが実装され、そして電源回路基板30上には直流電源回路31が実装されている。ただし誘導加熱調理器1は、図3を参照して説明したように、その他のさまざまな電気的構成部品(冷却ファン19および操作表示制御回路37等)を有するが、本願発明をより理解しやすくするために、図5においてはこれらを省略している。また図6は、図5に図示した第1および第2の駆動回路基板20a,20bと、電源回路基板30との配置位置を示す図1に対応する模式的な分解斜視図である
第1および第2の駆動回路22a,22bはそれぞれ、図5に示すように、商用電源ACからの交流電流を直流電流に整流する整流回路26a,26bと、平滑コンデンサ27a,27bと、加熱コイル10a,10bに高周波電流を供給するスイッチング回路28a,28bと、ここではインダクタンスLと負荷抵抗Rの等価回路として図示された加熱コイル10a,10bに直列に接続された共振コンデンサ29a,29bとを有する。スイッチング回路28a,28bは、IGBTなどのスイッチング素子を含むインバータ回路であり、インバータ駆動する回路であれば任意のものを用いることができ、たとえばハーフブリッジ回路またはフルブリッジ回路で構成することができる。
また制御回路24a,24bは、操作表示制御回路37から直流電圧A,Bが供給され、操作部17で設定された火力に応じてスイッチング回路28a,28bをスイッチング制御するものである。
すなわち直流電源回路31は、上述のように、第1の制御回路24a(第1の駆動回路22a)に直流電圧Aを供給し、第2の制御回路24b(第2の駆動回路22b)に直流電圧Bを供給する。そして本願発明に係る電源回路基板30は、図5および図6に示すように、第1および第2の駆動回路22a,22bの少なくともスイッチング回路28a,28bに対向する領域(図5では一点鎖線で図示)において銅箔(銅配線パターン)などで形成されたシールド導電層40a,40b(図6では第1の駆動回路22aに対向するシールド導電層40aのみを図示)を有する。シールド導電層40a,40bは、作製が容易であるので、電源回路基板30上に形成された銅配線パターンであってもよいが、磁束を遮蔽する任意の金属箔(たとえばアルミ箔)を用いて形成してもよい。
上記説明したように、スイッチング回路28a,28bは、加熱コイル10a,10bに高周波電流を供給するものであるところ、高周波電流が流れる第1および第2の駆動回路基板20a,20b上のスイッチング回路28a,28bおよびこれに接続されたプリント配線から、矢印で示すように、第1および第2の駆動回路基板20a,20bに直交する方向に高周波磁束φ,φが発生する。加熱コイル10a,10bで出力される火力が異なることに起因して高周波磁束φ,φの周波数が異なる場合、第1の駆動回路基板20aからの高周波磁束φが第2の駆動回路基板20bに伝播すると、第2の駆動回路基板20b上の銅箔(プリント配線)に起電力が生じ(誘導電流が発生し)、第2の加熱コイル10bに供給される高周波電流が周波数差分成分(|φ−φ|に相当)を含むことになり、間接的な磁束干渉によるビート音が発生する。
しかしながら、本願発明によれば、電源回路基板30が第1および第2の駆動回路22a,22bに対向する少なくとも一部領域において第1および第2のシールド導電層40a,40bを有するので、高周波磁束φ,φが互いの駆動回路基板20a,20bに伝播することを実質的に抑制または阻止することができる。したがって、本願発明に係る誘導加熱調理器1は、加熱コイル10a,10bに供給される高周波電流のそれぞれの周波数が異なっていても、電源回路基板30上のシールド導電層40a,40bという極めて簡便な構成により、間接的な磁束干渉によるビート音の発生を実質的に抑制または防止することができる。
また図2に示す誘導加熱調理器1において、第1(右側)の加熱コイル10aが第2(左側)の加熱コイル10bより第2の駆動回路基板20bに近接しているため、第1の加熱コイル10aで生じた高周波磁束により、第2の駆動回路基板20b上の銅箔(プリント配線)に誘導電流が発生し、同様に間接的な磁束干渉によるビート音が発生し得る。しかしながら、第1の加熱コイル10aで生じた高周波磁束の大部分は、図2に示すように第1の加熱コイル10aに平行に形成される一方、電源回路基板30(第1および第2のシールド導電層40a,40b)が第1の加熱コイル10aに対して垂直に配置されているので、第2の駆動回路基板20bに平行な方向に流れる誘導電流を最小限に抑えることができる。このように、電源回路基板30を第1の加熱コイル10aに垂直に配置することにより、第1の加熱コイル10aからの高周波磁束により第2の駆動回路基板20bに生じ得る誘導電流を抑制することができ、間接的な磁束干渉によるビート音を排除することができる。
逆に、第2の駆動回路基板20bから生じた高周波磁束φは、シールド導電層40bおよび加熱庫7に実質的に遮蔽されるので、第1の加熱コイル10aおよび第2の駆動回路基板20bから生じた高周波磁束による直接的な磁束干渉によるビート音も同様に排除することができる。
また特に図示しないが、第1の加熱コイル10aと第2の駆動回路基板20bの間には、磁気抵抗の小さいフェライト部材を配設して、上述の間接的および直接的な磁束干渉によるビート音を抑制するようにしてもよい。さらに、第1および第2の加熱コイル10a,10bの周囲にシールドリングを設け、第1および第2の加熱コイル10a,10bによる高周波磁束の直接的な磁束干渉によるビート音を低減するようにしてもよい。なお、シールドリングはアルミニウム等の非磁性導電性金属材料で形成されることが好ましい。
なお、第2(左側)の加熱コイル10bと第1の駆動回路基板20aとの間は実質的に離間している(物理的に実質的な距離で隔てられている)ので、これらの間においては、間接的および直接的な磁束干渉によるビート音は発生しにくい。
またシールド導電層40a,40bは、安定した電位に維持することにより、高周波磁束φ,φの遮蔽効果を改善することが好ましい。具体的には、シールド導電層40a,40bは、図4に示すように、電源回路基板30上の直流電源回路31の直流電圧AおよびBの絶縁された基準電位(GND電位)に接続することが好ましい。
択一的には、シールド導電層40a,40bはともに、基準電位に接地された本体筐体2に接続してもよい(図示せず)。通常、商用電源ACと直流電源回路31との間には、図7に示すようなラインフィルタ50が接続され、ラインフィルタ50を構成するYコンデンサ52a,52bは本体筐体2を介してアース54に接続される。すなわちラインフィルタ50を電源回路基板30上に実装したとき、シールド導電層40a,40bをともに、本体筐体2を介したアース54に容易に接続することができる。
実施の形態2.
図8〜図10を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態2について以下に説明する。実施の形態2による誘導加熱調理器1は、実施の形態1において図1に示すようにトッププレート3上の中央位置に配置されたラジエント加熱部5の代わりに、第1および第2の誘導加熱部4a,4bと同様、加熱コイル10cを有する第3の誘導加熱部4cが配置された点を除き、実施の形態1の誘導加熱装置1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
上述のように、実施の形態2に係る第3の誘導加熱部4cは、第3の加熱コイル10cを有し、第1および第2の誘導加熱部4a,4bと同様、これに高周波電流を供給し、調理鍋Pの底板に渦電流を形成してジュール熱を発生させることにより、調理鍋Pの底板を直接的に加熱するものである。第3の加熱コイル10cの径および最大火力は、第1および第2の加熱コイル10a,10bのものより小さく設計して、小径の調理鍋Pや「とろ火」による煮込料理に適したものとすることができる。
図8は実施の形態2に係る誘導加熱調理器1の全体的な電気的構成を示す回路ブロック図であり、図9は実施の形態2に係る直流電源回路31の詳細な回路ブロック図である。図10は実施の形態2に係る第1の駆動回路基板20a、およびこれに対向するシールド導電層40a,40cのみを示す電源回路基板30の斜視図である。
図8に示す誘導加熱調理器1は、第1および第2の駆動回路22a,22bに加えて、第3の加熱コイル10cに高周波電流を供給する第3の駆動回路22cを有する。また実施の形態2に係る第1の制御回路24aは、第1の駆動回路22aのみならず、操作部17で設定された火力等に応じた高周波電流を第3の加熱コイル10cに供給するように、第3の駆動回路22cを同様に制御する。
また詳細図示しないが、第3の駆動回路22cは、第1および第2の駆動回路22a,22bと同様、商用電源ACからの交流電流を直流電流に整流する整流回路26cと、平滑コンデンサ27cと、加熱コイル10cに高周波電流を供給するスイッチング回路28cと、加熱コイル10cに直列に接続された共振コンデンサ29cとを有する。
なお実施の形態2に係る直流電源回路31を構成する多出力式直流電源回路は、図8に示すように実施の形態1と同様の電気的構成を有するものであって、第3の制御回路24cに直流電圧D(たとえばDC5V)を供給し、電源回路基板30上に実装されている。
さらに実施の形態2に係る電源回路基板30は、図10の破線で示すように、第1の駆動回路基板20a上の第1および第3の駆動回路22a,22c上の少なくとも第1および第3のスイッチング回路28a,28cに対向する領域において、銅箔またはアルミ箔等で形成されたシールド導電層40a,40cを有する。
第1および第3の駆動回路22a,22cのスイッチング回路28a,28cは、加熱コイル10a,10bに高周波電流を供給するものであるところ、高周波電流が流れる第1の駆動回路基板20aから、図10の矢印で示すように、第1の駆動回路基板20aに直交する方向に高周波磁束φ,φが発生する。しかしながら、実施の形態2によれば、電源回路基板30が第1および第3の駆動回路22a,22c(とりわけ第1および第3のスイッチング回路28a,28c)に対向する少なくとも一部領域において第1および第3のシールド導電層40a,40cを有するので、高周波磁束φ,φが第2の駆動回路基板20bに伝播することを実質的に抑制または阻止することができる。
したがって、実施の形態2に係る誘導加熱調理器1によれば、各加熱コイル10a,10b,10cに供給される高周波電流のそれぞれの周波数が異なっていても、第1および第2の駆動回路22a,22bの間の間接的な磁束干渉、ならびに第3および第2の駆動回路22c,22bの間の間接的な磁束干渉によるビート音の発生を実質的に防止することができる。
同様に、シールド導電層40a,40cを安定した電位に維持することにより、高周波磁束φ,φの遮蔽効果を向上することが好ましい。具体的には、シールド導電層40a,40cは、図9に示すように、電源回路基板30上の直流電源回路31の直流電圧AおよびDの絶縁された基準電位(GND電位)に接続するか、あるいは本体筐体2を介してアース54に接続する(図7参照)ことが好ましい。
さらに第1および第3の駆動回路22a,22cは、図10に示すように、第1の駆動回路基板20aの下方および上方に分離して配置し、両者の間に少なくとも1つのアルミニウム等で形成されたヒートシンク(放熱フィン)55を設けてもよい。このヒートシンク55は、本体筐体2を介してアース54に接続することが好ましい。このように構成された第1の駆動回路基板20aにおいて、第1および第3のスイッチング回路28a,28cからの高周波磁束φ,φの周波数が異なっている場合、第1および第3の駆動回路22a,22cの間の間接的な磁束干渉によるビート音が発生し得る。しかしながら、実施の形態2によれば、第1および第3の駆動回路22a,22cの間に配設された金属製のヒートシンク55により、第1の駆動回路22aの放熱性を改善するとともに、高周波磁束φ,φが第1の駆動回路基板20a上に実装された第1および第3の駆動回路22a,22cに互いに伝播することを実質的に抑制することができる。
したがって、実施の形態2に係る誘導加熱調理器1によれば、各加熱コイル10a,10cに供給される高周波電流のそれぞれの周波数が異なっていても、第1および第3の駆動回路22a,22cの間の間接的な磁束干渉によるビート音の発生を実質的に防止することができる。
なお、第1の駆動回路基板20aは、図1から明らかなように、第2(左側)の加熱コイル10bより第3(中央)の加熱コイル10cにより若干近接しているので、図10に示すように、第1の駆動回路22aを第1の駆動回路基板20aの下方に、第3の駆動回路22cを第1の駆動回路基板20aの上方に配置することにより、第1の駆動回路22aと第3の加熱コイル10cとの間の距離をより大きくして、これらの間の間接的な磁束干渉によるビート音の発生を抑制することが好ましい。
さらに図8に示すように、第1の制御回路24aと第3の駆動回路22cとの間にフォトカプラなどの絶縁信号伝達手段60を接続することが好ましい。図8に示す第1の制御回路24aは、第1および第3の駆動回路22a,22cの両方を制御して、所望の火力を実現するようにそれぞれ異なる制御信号を供給させるものであるが、第1および第3の駆動回路22a,22cの一方に供給する制御信号が他方に供給する制御信号と電気的に干渉する(回路上の影響を与える)場合がある。そこで、これを回避するために、少なくとも第1の制御回路24aと第3の駆動回路22cとの間に絶縁信号伝達手段60を設けて、第1の制御回路24a(第1および第3の駆動回路22a,22cに供給される制御信号)を介して第1および第3の駆動回路22a,22cから出力される高周波電流が電気的に干渉することを防止することが好ましい。
1:誘導加熱調理器、2:本体筐体、3:トッププレート、4:誘導加熱部、5:ラジエント加熱部、6:グリル加熱部、7:加熱庫、7a:前面ドア、10:加熱コイル、11:前面、12:後面、13,14:側面、15:吸気窓、16:排気窓、17:操作部、18:表示部、19:冷却ファン、20:駆動回路基板、22:駆動回路、24:制御回路、26:整流回路、27:平滑コンデンサ、28:スイッチング回路、29:共振コンデンサ、30:電源回路基板、31:直流電源回路、32:コンロ・ラジエントヒータ、33:コンロ駆動回路、34:グリル・ラジエントヒータ、35:グリル駆動回路、37:操作表示制御回路、40:シールド導電層、42:ダイオードブリッジ回路、43:平滑コンデンサ、44:多出力トランス、45:電圧検出回路、46:回路制御素子、50:ラインフィルタ、52:Yコンデンサ、54:アース、55:ヒートシンク(放熱フィン)、60:絶縁信号伝達手段、P:調理鍋、AC:商用電源。

Claims (9)

  1. 第1および第2の加熱コイルと、
    前記第1および第2の加熱コイルに高周波電流を供給する第1および第2の駆動回路を実装した第1および第2の駆動回路基板と、
    前記第1および第2の駆動回路基板の間であって、これらと平行にかつ前記第1および第2の加熱コイルに垂直に配設された電源回路基板とを備え、
    前記電源回路基板は、前記第1および第2の駆動回路に対向する少なくとも一部領域に第1および第2の導電層を有し、
    前記第1および第2の駆動回路基板はそれぞれ、前記第1および第2の加熱コイルに高周波電流を供給するように前記第1および第2の駆動回路を制御する第1および第2の制御回路を有し、
    前記電源回路基板は、前記第1および第2の制御回路に直流電圧を供給する電源回路を有することを特徴とする誘導加熱調理器。
  2. 第1および第2の導電層はそれぞれ、電源回路から第1および第2の制御回路に供給された直流電圧の基準電位に接続されたことを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  3. 第1および第2の導電層はともに、本体筐体を介して接地電位に接続されたことを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  4. 第3の加熱コイルをさらに有し、
    第1の駆動回路基板は、第3の加熱コイルに高周波電流を供給する第3の駆動回路と、第3の加熱コイルに高周波電流を供給するように該第3の駆動回路を制御する制御回路と実装し、
    電源回路基板は、前記第3の駆動回路に対向する第3の導電層を有し、
    前記電源回路基板上の電源回路は、前記第3の制御回路に直流電圧を供給することを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  5. 第3の導電層は、電源回路から第3の制御回路に供給された直流電圧の基準電位に接続されたことを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  6. 第3の導電層は、本体筐体を介して接地電位に接続されたことを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  7. 第1の駆動回路基板は、第1および第3の駆動回路の間に配設された放熱フィンを有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1に記載の誘導加熱調理器。
  8. 第1の駆動回路は、第3の駆動回路より下方に配置されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1に記載の誘導加熱調理器。
  9. 第1の加熱コイルは、第2の加熱コイルより第1および第2の駆動回路基板に隣接して配置され、
    前記第1の駆動回路基板は、電源回路基板と本体筐体との間に配置され、
    前記第2の駆動回路基板は、前記電源回路基板と加熱庫との間に配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の誘導加熱調理器。
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