JP5515256B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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チェンらは、例えば、水素結合、相溶化、マクロ相分離、表面改質等のポリマーの力学的性質を正確にコントロールするための様々な方法について検討している。そして水素結合間の相互作用は、擬似架橋点と見なされ、温度変化を通して動的にも可逆的にもコントロールされることがわかっている。
一方、ヒドロキシスチレン(HSt)ユニットが、ポリスチレン(PSt)とポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)のようなポリ(アルキルメタクリレート)との混合のための混和促進剤として機能することはよく知られている(非特許文献9−17)。このような混合において、ポリ(アルキルメタクリレート)と混和したPStを提供するために、エステル基中のカルボニル基は、水素結合の相互作用を通して、PSt鎖に挿入された多くのHStユニット中におけるヒドロキシル基と有効的に相互作用することができる。
Y. K. Chong, J. Krstina, T. P. T. Le, G. Moad, A. Postma, E. Rizzardo, S. H. Thang, Macromolecules 2003, 36, 2256-2272. J. Chiefari, R. T. A. Mayadunne, C. L. Moad, G. Moad, E. Rizzardo, A. Postma, M. A. Skidmore, S. H. Thang, Macromoleules 2003, 36, 2273-2283. R. T. A. Mayadunne, E. Rizzardo, J. Chiefari, J. Krstina, G. Moad, A. Postma, S. H. Thang, Macromolecules 2000, 33, 243-245. J. Chiefari, Y. K. Chong, F. Ercole, J. Krstina, J. Jeffery, T. P. T. Le, R. T. A. Mayadunne, G. F. Meijs, C. L. Moad, G. Moad, E. Rizzardo, S. H. Thang, Macromolecules 1998, 31, 5559-5562. Y. K. Chong, T. P. T. Le, G. Moad, E. Rizzardo, S. H. Thang, Macromolecules 1999, 32, 2071-2074. K. Matyjaszewski, J. Xia, Chem. Rev. 2001, 101, 2921. M. Kamigaito, T. Ando, M. Sawamoto, Chem. Rev. 2001, 101, 3689. M. Chen, K. P. Ghiggino, A. W. H. Mau, E. Rizzardo, W. H. F. Sasse, S. H. Thang, G. J. Wilson, Macromolecules 2004, 37, 5479-5481. C. J. Serman, P. C. Painter, M. M. Coleman, Polymer 1991, 32(6), 1049-1058. X. Zhang, K. Takegoshi, K. Hikichi, Macromolecules 1991, 24, 5756-5762. D. Li, J. Brisson, Polymer 1998, 39, 793-800. C.-T. Chen, H. Morawetz, Macromolecules 1989, 22, 159-164. C. J. Serman, Y. Xu, P. C. Painter, M. M. Coleman, Macromolecules 1989, 22, 2015-2019. D. Li, J. Brisson, Macromolecules 1996, 29, 868-874. J. Dong, Y. Ozaki, Macromolecules 1997, 30, 286-292. Y. Xu, J. Graf, P. C. Painter, M. M. Coleman, Polymer 1991, 32, 3103-3118. C.-L. Lin, W.-C. Chen, C.-S. Liao, Y.-C. Su, C.-F. Huang, S.-W. Kuo, F.-C. Chang, Macromoles 2005, 38, 6435-6444.
即ち、本発明は、(a)下記式(1)で表される末端修飾重合体および(b)熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
R4は、水素原子またはメチル基を示す。
R5は、1価の有機基を示すが、該有機基としては、炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。このうち炭化水素基としては、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、または炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基等がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が特に好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、直鎖状、分枝状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、より具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、アリールオキシ基としては、炭素数が6〜30、好ましくは6〜12であることが好ましく、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基が特に好ましい。
R6は、1価の有機基を示すが、該有機基としては、炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。このうち炭化水素基としては、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、または炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基等がより好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が特に好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルコキシ基 が挙げられ、より具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、アリールオキシ基としては、炭素数が6〜30、好ましくは6〜12であることが好ましく、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基が特に好ましい。
lの値は1〜10の数を示すが、1〜5であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。mは、他の樹脂との混和性の観点から10〜1000の数を示すが、10〜200が好ましく、特に20〜100が好ましい、nは1〜5の数を示すが、1が好ましい。
ここで、R3で示される保護基としては、アルキル基、アシル基、アルキルシリル基、脂環族基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が挙げられ、i−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基等が好ましい。
また、アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、p−トルエンスルホニル基、メシル基等を挙げることができる。
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピルシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、ジメチルエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルメトキシフェニルシリル基等が挙げられる。
脂環族基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、p−メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等シクロプロピル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、p−メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等を挙げることができる。
化合物(3)は、文献1(Y. K. Chong, J. Krstina, T. P. T. Le, G. Moad, A. Postma, E. Rizzardo, S. H. Thang, Macromolecules 2003, 36, 2256-2272)に記載の手順に従って、例えばジチオ安息香酸クミルとアゾイソブチロニトリル(AIBN)から合成することができる。化合物(2)は、化合物(3)に対して、化合物(4)を0.8〜1.2モル、好ましくは等モル反応させることが好ましい。触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'-アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル等公知のものを用いることができる。また、溶媒としては、クロロベンゼン、トルエン、ベンゼン等公知のものを用いることができる。また、反応温度は、好ましくは室温〜100℃、特に好ましくは50℃〜90℃で、反応時間は好ましくは1〜50時間、特に好ましくは、10〜20時間である。
なお、ここで得られた化合物(2)は、新規化合物であり、化合物(1)を得るための製造中間体として重要である。
ここでは、化合物(2)とスチレンとを反応させた後に、Rで示される保護基を水素原子に置換する。
化合物(2)とスチレンの反応は、上記化合物(3)と化合物(4)の反応と同様の触媒及び溶媒を使用することができる。
スチレンの量は、目的物の化合物(1)の繰り返し単位数であるmによって適宜決定すればよいが、化合物(2)に対し、好ましくは10〜1000倍モル、特に好ましくは、50〜200倍モルである。また、反応温度は、好ましくは50〜180℃、特に好ましくは80℃〜150℃で、反応時間は好ましくは1〜80時間、特に好ましくは、10〜50時間である。
このようにして得られた反応物は、常法により精製することができる。
(原料)
モノマー:スチレン(東京化学工業株式会社)および4-tert-ブトキシスチレン(北興化学工業株式会社)を、水相が完全に中和されるまで、5%水酸化ナトリウム水溶液および精製水で洗浄し、それから、硫酸マグネシウムを使って乾燥し、使用前に減圧下でCaH2を用いて蒸留した。
ブチルメタクリレート(東京化学工業株式会社)は使用前に蒸留された。
溶媒:クロロベンゼン(和光純薬工業株式会社)はCaH2で蒸留された。
開始剤:2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、99%、和光純薬工業株式会社)はアセトンから再結晶化された。
連鎖移動剤:2−シアノプロピル−2−イル−ジチオ安息香酸塩(CTA1)(式(3)の化合物)は、文献1(Y. K. Chong, J. Krstina, T. P. T. Le, G. Moad, A. Postma, E. Rizzardo, S. H. Thang, Macromolecules 2003, 36, 2256-2272)に記載の手順に従って、ジチオ安息香酸クミルとAIBNから合成された。トルエン中、60℃で、ポリ(ブチルメタクリレート)は、ブチルメタクリレートとAIBNをフリーラジカル重合することにより合成された。
PBMAのMnとMw(分子数および平均分子量)は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定され、それぞれ82000、170000であった。
ポリマーの分子量は、屈折率および紫外線検出器付のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(TOSOH HLC-8220 SEC system)で測定され、溶出液としてクロロホルムを用いた。
分子数や分子量(MnおよびMw)は、低い多分散度を有するポリスチレンを基準とし検量線によって計算された。
示差走査熱量測定法(DSC)は、20mL/minで窒素をフローし、10℃/minの一定速度で加温する条件の下、Seiko DSC 6200により行った。
1Hおよび13C NMRスペクトルは、内部基準物質をテトラメチルシランとして、Varian UNITY INOVA 400で測定した。
UV可視スペクトルは、JASCO V-750紫外可視近赤外分光光度計によって測定した。
ブレンドフィルムの走査型電子顕微鏡法(SEM)は、加速電圧25kVで後方散乱電子(BSE)検出器を備え付けたHITACHI S3000N 走査型電子顕微鏡で行った。
tert-ブトキシスチレン(BSt)の1ユニットを含む連鎖移動剤(CTA2)を製造するためにチェン(Chen)らに報告された手順を適用した(スキーム 1)(文献8)。
粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/エチルアセテート(9/1(v/v))で分離精製し、橙色の固体として最終生成物(3.5g)を収率60%で得た。
UV-可視(CH2Cl2): λmax= 307, 496 nm.
融点:69.7℃
次の手順はtert-ブトキシスチレンα末端基を有するポリスチレン(P−BS)を得るための典型的な方法である(スキーム 2)。
P−BSは、tert-ブトキシ基の加水分解によって、α鎖末端基にヒドロキシスチレンユニットを1つ有するポリスチレン(P−HS)に変換された。反応の代表的な手順は以下に記載される。
P−BS(Mn= 6700, 4.9 g, 0.73 mmol)を、トルエン/メタノール混合液(7・2(v/v))に溶かし、濃硫酸(97%, 0.39 g, 3.9 mmol)を加えた。窒素気流下、60℃でその混合物を一晩攪拌し、中和のために、50%乳酸ナトリウム水溶液(3 ml, 15.5 mmol)を加えた。生成したポリマーP−HSは、テトラヒドロフランに溶かし、メタノールで析出させるという2つのサイクルによって精製され、50℃で減圧乾燥された。
ω-末端基の、ジチオ安息香酸塩から2-シアノプロピル基への変換:
ペリエ(Perrier)らの報告(S. Perrier, P. Takolpuckdee, C. A. Mars, Macromolecules 2005, 38, 2033-2036.)に記載の手順によって、P−BSおよびP−HSのジチオ安息香酸部分を、2-シアノプロピル ω-末端基に変換した(スキーム 3)。
ブレンドフィルムの合成:
組成比(50/50 (wt/wt))のポリマーブレンドは、溶媒としてジクロロメタンを用い、従来の溶液流延法により合成された。5 wt%のポリマー混合物を含有する溶液は、完全に溶解されるまで1時間攪拌され、ガラス製のペトリ皿の上に置かれた。溶液はゆっくり室温で24時間、濃縮され、生成したキャスト・フィルムは24時間、室温で減圧下、完全に乾燥された。
それぞれのα鎖末端に1つのtert-ブトキシスチレンを有するポリスチレン(P−BSと表記される)を、チオカルボニルチオ基を有する連鎖移動剤(CTA2)で、110℃でRAFT重合法により合成した。ポリマー化の結果を表1にまとめる。
ポリスチレンのα鎖末端基であるtert-ブトキシスチレンは、酸性条件下、60℃でtert-ブチル基の脱保護化することにより、ヒドロキシスチレンに変換された。tert-ブチル保護基が完全に除去されたことは、13C-NMR解析により分かった。図3に、P−22BSを脱保護化する前後の13C NMRスペクトルを示す。29ppmにおけるシャープなシグナルは、tert-ブチル基の3つのメチル基の炭素原子に帰属するものであり、加水分解後、消失した。P−BSにおけるtert-ブチル基の脱保護化は、定量的に進行し、α鎖末端基に1つのヒドロキシスチレンを有するポリマー(P−HS)を得た。
ポリ(ブチルメタクリレート)とのブレンドおよびSEM観測:
α鎖末端基は異なるが、同様のω鎖末端(ジチオ安息香酸)を有するポリスチレンである、P−HS、P−BSおよびP−StS (スキーム4)を、ポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)と50/50(wt/wt)の配合比でブレンドした。PBMAはポリスチレンと比べてより長い鎖(Mn=82000, Mw=170000)を有する。最小のMn値を有するポリスチレン:P−22BS,P−22HS,P−25StSの場合、PBMAとの混和性が良いことから、α末端基の化学構造に関係なく、透明なフィルムが形成されることが分かった。P−44〜153BSとPBMAのブレンドフィルムは相分離するために、不透明なフィルムであった。P−51〜130StSとPBMAのブレンドフィルムにおいても同様に、不透明なフィルムであることが観測された。一方、Mnが2200-8400であるP−HSとPBMAとのブレンドフィルムは透明であった。これらの結果から、鎖末端のヒドロキシスチレン1ユニットは、混和促進剤として効率的に機能したことが示唆される。
図4に、PBMA/P−85BS(×200)とPBMA/P−85HS(×3000)のSEM像が後方散乱電子(BSE)から形成された、ブレンドフィルムの代表的なSEM像を示す。
PBMA/P−85BSのブレンドフィルムは、直径10-20μmのPBMAドメイン(明るい部分)の形成によって示されるマクロ相分離を示した(図4(a))。一方で、PBMA/P−85HSブレンド(×3000)においては、ドメインは観測されず、DSC測定によって観測された混和性を反映していた(図4(b))。
ポリマーブレンドの熱特性を測定するための従来の方法は、示差走査熱量測定法(DSC)である。3種のブレンド:PBMA/P−BS、PBMA/P−StSおよびPBMA/P−HSの混和性および熱安定性を測定するため、10℃/minの一定加熱速度でDSC測定が行われた。DSCサーモグラムは、図5,6および7に示され、解析結果を表2にまとめた。
図5にPBMA/P−BS系のDSCサーモグラムを示した。透明なフィルムであるPBMA/P−22BSは、50℃付近で、1つのガラス転移Tgを示した。不透明なフィルムを形成する、P−44〜201BSと他のPBMA/P−BSブレンドにおいては、2つのガラス転移点:Tg1とTg2を、それぞれ40℃および100℃付近に観測し、成分が混和していない(非混和性)あるいは部分的に混和していることを示した。Tg1とTg2の値は、PBMAの豊富なドメイン、あるいはP−BSの豊富なドメインのガラス転移に依存しなければならない。図5(b)-(f)及び表2に示されるように、Tg1とTg2値は、Mn値の増加に伴って、PBMAのガラス転移温度(31℃)およびP−BSホモポリマーのガラス転移温度(84-102℃)のそれぞれに接近した。これらの結果は、PBMAの豊富なドメインにおけるP−BS量が、P−BSのMn値の増加に伴い、徐々に減少したことを示唆する。ブレンドフィルムのTg2値は、P−BSホモポリマーのTg値とほぼ等しく、マトリックスがフリーのP−BSホモポリマーによって占められることを示唆した。
PBMA/P−StSブレンドフィルムのDSCサーモグラムは図6に示され、PBMA/P−BSブレンドフィルムにおいて得られた結果とほぼ同様であり、単一tert-ブトキシα鎖末端基の、PBMAとの混和性に対する影響がほとんどないことを示した。
図7はPBMA/P−HSブレンドフィルムのDSCサーモグラムを示す。これらのサーモグラムは、PBMA/P−22〜85HSブレンドにおいて、50℃付近に1つのガラス転移点を示し、これらのブレンドの混和性と、均一のアモルファス相の間接的に存在していることを強く支持している。ブレンドフィルムの混和性に対する上記の結果は、ポリスチレンに導入されたα鎖末端ヒドロキシスチレン1ユニットが、PBMAとの混和性に有意に寄与することを明確に表している。
末端修飾ポリスチレン(P−HSt, P−BSt, P−St)とARTON(JSR社製、G7810、Mw = 170000; Tg 168℃)とを重量比50/50で混合し、この混合物をジクロロメタンに溶解して5wt%溶液を調製した。この溶液をフラットシャーレに移し、室温常圧下で1日、さらに室温真空下で1日乾燥させてキャストフィルムを作成した。用いられたそれぞれの末端修飾ポリスチレンの化学構造を次に分子量を表3に示す。
ブレンドフィルムのガラス転移温度(Tg)の測定は、セイコーインスツルメント社製の示差走査熱量計(DSC)DSC6200を用いて測定した。キャリアーガスとして窒素ガスを20ml/分で流し、サンプルをアルミパン中に入れて、昇温速度10℃/分で行った。
図8は末端にヒドロキシスチレンを有するポリスチレン(P−HSt22〜100)がブレンドされたARTONフィルムのDSC測定結果を示している。これらは、透明なフィルムが得られている系である。全てのフィルムにおいて単一のTgが観測され、その値は、ARTONとP−HStのホモポリマーのガラス転移温度の中間の温度であった。この結果は、ARTONとP−HStのブレンド系が相溶系であることを強く示唆しており、目視観察結果と矛盾しない。ブレンドフィルムとそれぞれのホモポリマーのガラス転移温度を表5に示す。一方、末端がブトキシスチレン(P−BSt)またはスチレン(P−St)の系においては、図9に示すように100℃付近の低温側と130℃から150℃の範囲にある高温側の二つのガラス転移温度が観測された。これらの結果は、これらの系が非相溶であることを示唆している。ほぼ同じ分子量をもち末端の化学構造が異なるP−HSt62、P−BSt62、P−St61の三種類のポリスチレンにおいてARTONとの相溶性を比較すると、末端にヒドロキシスチレンが導入されることにより顕著に相溶性が向上していることは明らかである。
Claims (3)
- (a)下記式(1)で表される末端修飾重合体および(b)ポリブチルメタクリレート又は環状オレフィン系重合体のいずれかから選ばれる熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が環状オレフィン系重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- (a)下記式(1)で表される末端修飾重合体と、(b)ポリブチルメタクリレート又は環状オレフィン系重合体のいずれかから選ばれる熱可塑性樹脂とを混合することを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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