以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における車両1を模式的に示した模式図である。
まず、図1を参照して、車両1の構成について説明する。車両1は、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両を走行可能に構成されている。ここで、操舵支援とは、車両1にて定めた推奨軌道に沿って車両1が走行するように後述するハンドル(ステアリングホイール)13の推奨ハンドル角を定め、搭乗者がハンドル13のハンドル角をその推奨ハンドル角とするように、ハンドル13に対して所定の補助力を付与することである。推奨軌道とは、車両1を走行させる場合に推奨される軌道(車両1が走行する軌道)を示したものである。
車両1には、走行制御装置100が設けられている。走行制御装置100は、車両1の走行を制御するコンピュータ装置である。車両1の操舵支援は、この走行制御装置100によって行われる。なお、走行制御装置100の詳細構成については、図2を参照して後述する。
車両1は、走行制御装置100の他に、複数(本実施形態では4輪)の車輪2FL,2FR,2RL,2RRと、それら複数の車輪2FL〜2RRの内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、複数の車輪2FL〜2RRの内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵駆動装置5及びステアリング装置6と、ハンドル13と、車両速度センサ22と、運転支援スイッチ25と、第1〜第4カメラ26a〜26dと、現在位置検出装置27と、を主に有している。
車輪2FL,2FRは、車両1の前方側に配置される左右の前輪であり、車輪駆動装置3によって回転駆動される駆動輪として構成されている。一方、車輪2RL,2RRは、車両1の後方側に配置される左右の後輪であり、車両1の走行に伴って従動する従動輪として構成されている。
車輪駆動装置3は、左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与するものであり、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。車輪駆動装置3は、車両1に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量に応じて、ドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する。これにより、車両1は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた速度で走行する。
なお、車輪駆動装置3は、走行制御装置100から目標とすべき車両速度を通知する制御信号を受け、その通知された車両速度となるように、ドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与するように構成してもよい。この場合、車輪駆動装置3は、走行制御装置100の入出力ポート95(図2参照)に接続され、走行制御装置100に設けられたCPU91(図2参照)から制御信号を受信可能に構成すればよい。
操舵駆動装置5は、左右の前輪2FL,2FRを操舵するための装置であり、ステアリング装置6に回転駆動力を付与する電動モータ5a(図2参照)を備えて構成されている。ステアリング装置6は、ステアリングシャフト61と、フックジョイント62と、ステアリングギヤ63と、タイロッド64と、ナックルアーム65とを主に備えて構成されている。なお、ステアリング装置6は、ステアリングギヤ63がピニオン(図示せず)とラック(図示せず)とを備えたラックアンドピニオン機構によって構成されている。
操舵駆動装置5は、走行制御装置100からの制御信号によって電動モータ5aを駆動すると、電動モータ5aの回転駆動力がステアリング装置6のステアリングシャフト61に付与される。その回転駆動力は、ステアリングシャフト61を介してフックジョイント62に伝達されると共にフックジョイント62によって角度を変えられ、ステアリングギヤ63のピニオンに回転運動として伝達される。
そして、ピニオンに伝達された回転運動はラックの直線運動に変換され、ラックが直線運動することで、ラックの両端に接続されたタイロッド64が移動し、ナックルアーム65を介して前輪2FL,2FRRが操舵される。これにより、車両1は、走行制御装置100から指示された操舵角で、前輪2FL,2FRが操舵される。
ハンドル13は、車両1の搭乗者から回転操作されることで、その回転操作された角度(ハンドル角)に応じて前輪2FL,2FRへ付与する操舵角の指示を受け付ける装置であり、ハンドル角検出センサ13a、ハンドル回転角度検出センサ13b、及び、補助力付与モータ13cを有して構成されている。
ハンドル角検出センサ13aは、搭乗者によって回転操作されたハンドル13のハンドル角を検出し、その検出したハンドル角を走行制御装置100へ出力するためのセンサである。走行制御装置100は、ハンドル角検出センサ13cから出力されたハンドル角から、前輪2FL,2FRへ付与する操舵角を決定し、その操舵角を操舵駆動装置5へ出力する。これにより、操舵駆動装置5によって、前輪2FL,2FRがハンドル13のハンドル角に対応した操舵角となるように操舵される。
ハンドル回転角速度検出センサ13bは、搭乗者によって回転操作されたハンドル13の回転角速度を検出し、その検出したハンドル角を走行制御装置100へ出力するためのセンサである。詳細については後述するが、走行制御装置100は、車両1の前方に道路の分岐(例えば、交差点)があった場合に、それぞれの道路に対して車両1の推奨軌道を生成する。そして、走行制御装置100は、ハンドル角検出センサ13aから出力されるハンドル13のハンドル角とハンドル回転角速度検出センサ13bから出力されるハンドル13の回転角速度とから、搭乗者が進行したい方向を判定し、複数生成した推奨軌道の中から、搭乗者が進行したいと判定された方向へ車両1が走行する推奨軌道を選択する。
このように、搭乗者の進行したい方向をハンドル角とハンドル13の回転角速度とによって判定することにより、単にハンドル角のみによって判定する場合と比して、搭乗者のハンドル13の操作状態をも加味して判定できるので、搭乗者の進行したい方向をより正確に判定できる。
補助力付与モータ13cは、ハンドル13に対して、補助力を付与するためのモータである。走行制御装置100は、推奨軌道に沿って車両1が走行するためのハンドル13の推奨ハンドル角を定め、その推奨ハンドル角とハンドル角検出センサ13aから出力される実際のハンドル13のハンドル角との差の絶対値に応じて、危険ポテンシャルも加味しながらハンドル13に付与する補助力の大きさFを決定する。そして、走行制御装置100は、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へ近づく方向に補助力Fを付与するよう、補助力付与モータ13cに対して指示する。これにより、ハンドル13には、ハンドル角が推奨ハンドル角へ近づく方向に補助力Fが付与される。
また、詳細については後述するが、ここで付与される補助力Fは、実際のハンドル角と推奨ハンドル角との差の絶対値が大きいほど、大きくなるように設定される。よって、搭乗者は、ハンドル13を回転操作させなくても、ハンドル13に対して付与される補助力Fの方向および大きさから、推奨ハンドル角へと近づけるためにハンドル13を操作すべき方向やハンドルの操作量を容易に把握できる。
従って、搭乗者は、ハンドル13に対して余計な操作を行わなくとも、把握したハンドル13の操作方向や操作量に基づいて、ハンドル13のハンドル角を推奨ハンドル角となるようにハンドル13を操作できる。その結果、車両1は、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両を走行させることができる。
運転支援スイッチ25は、操舵支援を受けながら車両1を走行させたい場合に、搭乗者が押下するスイッチである。運転支援スイッチ25が搭乗者により押下され、オン状態にされると、走行制御装置100は、後述する運転支援処理(図3参照)を実行する。これにより、車両1において、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両を走行させることができる。また、運転支援スイッチ25が搭乗者により再び押下されオフ状態されると、走行制御装置100は運転支援処理を終了し、車両1による操舵支援が終了する。
第1〜第4カメラ26a〜26dは、いずれも、車両1の周囲を撮像するための撮像装置であり、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどの撮像素子が搭載されたデジタルカメラで構成されている。各第1〜第4カメラ26a〜26dは、撮像した画像を画像データに変換して走行制御装置100へ出力する。
第1カメラ26aは、車両1の前方中央に配設され、第2カメラ26bは、車両1の右側面のサイドミラー(非図示)に配設され、第3カメラ26cは、車両1の左側面のサイドミラー(非図示)に配設され、第4カメラ26dは、車両1の後方中央に配設されている。本実施形態では、3つの第1〜第4カメラ26a〜26dにより、車両1を中心として車両1の少なくとも前方方向30m及び後方方向15mと、車両1を中心として車両1の左右方向に少なくとも24mの範囲を撮像可能に構成されている。
走行制御装置100は、第1〜第4カメラ26a〜26dより取得した画像データを解析し、車両1の周辺情報を取得する。例えば、歩道や車線、センターラインを判断し、車両1が走行している道路の際(きわ)を判断して、車両1の周辺情報とする。
また、画像データの解析結果から、道路上の障害物を判断したり、道路または歩道にいる歩行者、自転車、他の車両(対向車や前後左右にいる車両)の位置を判断して、車両1の周辺情報とする。更に、画像データの解析結果から、道路の状態、例えば、雨や雪により路面が滑りやすい状態にあるか否か等を判断して、車両1の周辺情報とする。
詳細については後述するが、走行制御装置100は、操舵支援を行う場合に、これらの判断結果に基づいて、車両1が走行可能な道路毎に、その道路上の危険ポテンシャルを算出する。危険ポテンシャルとは、道路上のある地点を車両1が走行した場合のその地点における危険度を表す指標である。
走行制御装置100は、算出した危険ポテンシャルを基に、最も危険ポテンシャルの小さい地点を車両1が走行するように、各道路に対して、走行軌道の候補である推奨軌道を生成する。そして、走行制御装置100は、複数の道路に対して生成された推奨軌道の中から、ハンドル13のハンドル角および回転角速度に基づいて判断された搭乗者の進行したい方向へ車両1を進行させる推奨軌道を1つ選択し、その推奨軌道に沿って車両1が走行するように、操舵支援を行う。
現在位置検出装置27は、車両1の現在位置(緯度、経度からなる絶対座標値)や車両1の車両方位(車両1の前方方向の向き)を検出するためのものである。この現在位置検出装置27は、人工衛星を利用して車両の位置を測定するGPS(Global Positioning System)受信装置、地磁気を検出して車両の方位を求める地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサの1又は複数が使用される。更には、地図情報DB92bと走行軌道とのマップマッチング或いは地図情報DB92bと第1〜第4カメラ26a〜26dでとらえた構造物や標識等とのマッチングにより現在位置を同定してもよい。
現在位置検出装置27で検出した車両1の現在位置および車両方位は、走行制御装置100へ送信される。走行制御装置100では、車両1が走行可能な各道路に対して、現在位置検出装置27より受信した車両1の現在位置からそれぞれの道路へ進行するための推奨軌道を生成する。
次いで、図2を参照して、走行制御装置100の詳細構成について説明する。図2は、走行制御装置100を含む車両1の電気的構成を示したブロック図である。
走行制御装置100は、CPU91、フラッシュメモリ92及びRAM93を有しており、それらがバスライン94を介して入出力ポート95に接続されている。入出力ポート95には、上述した、操舵駆動装置5、ハンドル13、ジャイロセンサ装置24、運転支援スイッチ25、第1〜第4カメラ26a〜26d、現在位置検出装置27、及び、その他の入出力装置99などが接続されている。
CPU91は、入出力ポート95に接続されたハンドル13のハンドル角検出センサ13a及びハンドル回転角速度センサ13b、運転支援スイッチ25、第1〜第4カメラ26a〜26d、現在位置検出装置27等から送信された各種の情報に基づいて、操舵駆動装置5や、ハンドル13の補助力付与モータ13c等を制御する演算装置である。
フラッシュメモリ92は、CPU91によって実行される制御プログラムや固定値データ等を記憶するための書き換え可能な不揮発性のメモリである。このフラッシュメモリ92には、プログラムメモリ92a、地図情報DB92b及び補助力特定マップメモリ92cが設けられている。
プログラムメモリ92aは、CPU91にて実行される各種のプログラムが格納されたフラッシュメモリ92上の領域である。後述する図4のフローチャートに示す運転支援処理や図7のフローチャートに示すハンドル補助力付与処理等をCPU91にて実行させるための各プログラムは、このプログラムメモリ92aに格納されている。
CPU91は、このプログラムメモリ92aに格納された各プログラムに従って各種処理を実行することで、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両1を走行させている。
地図情報DB92bは、地図および道路に関する情報が格納されたデータベースである。この地図情報DB92bでは、各種施設の場所や、各種道路の位置などが、緯度、経度からなる絶対座標値によって示されている。
走行制御装置100は、現在位置検出装置27によって検出された車両1の現在位置と、地図情報DB92bに格納された情報とから、車両1が走行可能な道路の有無を判断する。そして、その走行可能な道路に対して、推奨軌道を生成する。
地図情報DB92bには、また、各道路に関する各種道路情報、例えば、その道路に対する進入禁止、車両通行止め等の各種規制情報や、その道路の幅、車線数、交差点間距離(道路の長さ)、及び、その道路における事故履歴、その他注意情報等が各道路に対して対応付けされている。
走行制御装置100は、地図情報DB92bにおいて各道路に対応付けられた規制情報に基づいて、その道路が走行可能な道路か否かを判断する。また、走行制御装置100は、地図情報DB92bにおいて各道路に対応付けられた道路の幅や車線数、事故履歴、その他注意情報等に基づいて、各道路に対し危険ポテンシャルを算出する。そして、走行制御装置100は、算出した危険ポテンシャルが最も低い地点を車両1が走行するように、各道路に対し、推奨軌道を生成する。
なお、車両1にナビゲーション装置が別途設けられている場合、走行制御装置100は、フラッシュメモリ92に地図情報DB92bを格納することに代えて、そのナビゲーション装置が有する地図情報DBを用いて上記の処理を行うようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置が走行制御装置100の入出力ポート95に接続され、走行制御装置100が入出力ポート95を介してナビゲーション装置より地図情報DBに格納された各種情報を取得するように構成すればよい。
補助力特定マップメモリ92cは、ハンドル13に対して付与する補助力F(以下「ハンドル補助力F」とも称す)の大きさを特定するための補助力特定マップを格納するためのメモリ領域である。ここで、図3を参照して、補助力特定マップの詳細と、補助力特定マップによって大きさが特定されたハンドル補助力Fの付与方向とについて説明する。図3(a)は、補助力特定マップを模式的に示した模式図である。また、図3(b)は、補助力特定マップにて大きさが特定されたハンドル補助力Fの付与方向を説明するための説明図である。
まず、補助力特定マップは、図3(a)に示す通り、縦軸をハンドル補助力Fの大きさとし、横軸を実際のハンドル角φjとしたマップであり、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiと関係から、ハンドル13に対して付与すべき補助力Fの大きさが特定できるようになっている。
具体的には、この補助力特定マップでは、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差分が0、即ち、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiと等しい場合、ハンドル補助力Fが0として特定される。そして、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きくなるほど、ハンドル補助力Fの大きさが大きくなるように特定される。
CPU91は、車両1の推奨軌道を決定すると、その推奨軌道に沿って車両1が走行するためのハンドル13の推奨ハンドル角φiを定め、ハンドル角検出センサ13aが示す実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値から、補助力特定マップを用いて、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。
詳細については後述するが、CPU91は、この大きさを特定したハンドル補助力Fを、上述した危険ポテンシャルに基づいて補正する。そして、CPU91は、その補正後のハンドル補助力Fが、図3(b)に示す向き、即ち、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向きに付与されるように、ハンドル13の補助力付与モータ13cに対して指示する。これにより、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に、補助力特定マップによって特定され且つ危険ポテンシャルに基づき補正された大きさのハンドル補助力Fを付与させることができる。
なお、図3(a)の例では、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の二乗に比例してハンドル補助力の大きさが大きくなる場合に示しているが、これは例示であり、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値に比例して、ハンドル補助力Fの大きさが大きくなってもよい。また、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きくなるほど、ハンドル補助力Fの大きさが大きくなるものであれば、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値と、ハンドル補助力Fの大きさとの関係は任意のものであってよい。
図2に戻り、説明を続ける。RAM93は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU91によって実行される制御プログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。RAM93には、推奨軌道メモリ93aが設けられている。
推奨軌道メモリ93aは、走行制御装置100が生成した推奨軌道情報(推奨軌道上に位置する各点の座標等)を、推奨軌道毎に格納するために、RAM93に設けた領域である。
走行制御装置100は、車両1が走行可能な道路毎に、その道路を車両1が走行すると仮定した場合に推奨される軌道を推奨軌道として生成する。ここで各道路に対して生成された推奨軌道情報が、推奨軌道毎に推奨軌道メモリ93aに格納される。
走行制御装置100は、ハンドル角検出センサ13aから出力されるハンドル13のハンドル角と、ハンドル回転角速度検出センサ13bから出力されるハンドル13の回転角速度とから、搭乗者が進行したい方向を判断し、推奨軌道メモリ93aに軌道情報が格納された推奨軌道の中から、搭乗者が進行したいと判断された方向へ車両1が走行する推奨軌道を選択する。
そして、走行制御装置100は、選択された推奨軌道上の地点であって、車両位置検出装置27により取得した車両の現在位置から車両1がその推奨軌道に沿って車両速度Vで時間tだけ走行したと仮定した場合に到達する地点(経路点Q)を、推奨軌道メモリ93aに格納された軌道情報から判断する。走行制御装置100は、その経路点Qへ車両1を走行させるために必要な車両1の操舵角(前輪2FL,2FRへ付与すべき操舵角)δを算出し、その操舵角δから、推奨ハンドル角φiを求める。
走行制御装置100は、その推奨ハンドル角φiと、実際のハンドル13のハンドル角φjとから、上述した補助力特定マップに従って、ハンドル13に対して付与すべきハンドル補助力Fの大きさと、方向を決定する。
次いで、図4〜図9を参照して、車両1に搭載された走行制御装置100のCPU91により実行される運転支援処理について説明する。図4は、その運転支援処理を示すフローチャートである。運転支援処理は、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両1を走行させる処理である。
運転支援処理は、運転支援スイッチ25が搭乗者によって押下され、オン状態にされると、CPU91によって処理が開始される。運転支援処理では、まず、現在位置検出装置27によって検出された車両1の現在位置を取得する(S1)。そして、推奨軌道生成処理を実行し(S2)、車両1が走行可能な各道路に対して、推奨軌道を生成する。
具体的には、まず、S1の処理によって取得した車両1の現在位置と、地図情報DB92bに格納された情報とから、車両1が走行可能な道路の有無を判断する。この時、地図情報DB92bに格納された道路の位置情報だけでなく、各道路に対応付けられた進入禁止や車両通行止め等の各種規制情報に基づいて、車両1が走行可能な道路を判断する。
次いで、走行可能であると判断された各道路に対して、それぞれ、危険ポテンシャルを生成する。そして、各道路毎に、危険ポテンシャルの最も低い部分を車両1が走行するための軌道を求め、その軌道を各道路の推奨軌道として、その推奨軌道情報を推奨軌道毎に推奨軌道メモリ93aに格納し、推奨軌道生成処理を終了する。
ここで、図5を参照して、一の道路における危険ポテンシャルの生成方法について説明する。図5(a)は、危険ポテンシャルの検出範囲を説明するための図であり、図5(b)は、危険ポテンシャルの生成方法を説明するための図である。
まず、図5(a)を参照して、危険ポテンシャルの生成範囲について説明する。なお、以下の説明において使用する座標系は、いわゆる車両座標系であり、車両1の後輪軸(2RL,2RRを結んだ直線)をx軸とし、車両1中央の前後軸上をy軸とし、x軸およびy軸の交点を原点としたものを用いる。また、この車両座標系において、x軸は、車両1の進行方向右側を+方向とし、y軸は、車両1の進行方向を+方向とする。
ここで、危険ポテンシャルの生成対象となる道路の境界線の座標は、車両1の進行方向右側の境界線が(x1,y1)〜(x2,y2)であるものとし、車両1の進行方向左側の境界線が(x3,y3)〜(x4,y4)であるものとする。
ここで、危険ポテンシャルの生成対象となる道路の境界線の定義について説明する。境界線を堺にある走行可能領域と走行不可能領域を表現するために、図5(a)における車両1の進行方向右側の境界線(x1,y1)〜(x2,y2)は(x1,y1,x2,y2)と表現する。これは、(x1,y1)を原点とし、この点から(x2,y2)への方向をx軸とした座標系において、y座標が正となる領域を走行可能領域、負となる領域を走行不可能領域として定義している。同様に図5(a)における車両1の進行方向左側の境界線(x3,y3)〜(x4,y4)は(x3,y3,x4,y4)と表現され、(x3,y3)を原点とし、この点から(x4,y4)への方向をx軸とした座標系において、y座標が正となる領域を走行可能領域、負となる領域を走行不可能領域として定義している。したがって図5(a)で、車両1の進行方向右側の境界線が(x1,y1)〜(x2,y2)、進行方向左側の境界線が(x3,y3)〜(x4,y4)と判断することが可能である。
この道路の境界の座標は、地図情報DB92bに格納された道路情報、及び、第1〜第4カメラ26a〜26dの画像データを解析することにより取得した周辺情報に基づいて、設定される。
危険ポテンシャルの生成範囲は、図5(a)に示す通り、次のように設定される。即ち、操舵支援時の車両1の車両速度をVとした場合に所定時間tが経過する間に車両1が進む距離L(=V×t)を基準として、y軸方向は、x軸から進行方向(+方向)に向かって距離Lまでの範囲を危険ポテンシャルの範囲とし、x軸方向は、y軸から車両1の左右両方向(±方向)に向かって距離Lまでの範囲を危険ポテンシャルの範囲とする。このように危険ポテンシャルの生成範囲を設定することで、車両1が所定時間t(例えば、5秒)の間に進むであろう範囲について、危険ポテンシャルが生成される。
危険ポテンシャルの生成では、図5(a)で示したように危険ポテンシャルの生成範囲を設定した後、次いで、その生成範囲と、危険ポテンシャルの生成対象となる道路の境界線との交点の座標を算出する。
ここでは、車両1から一定距離先のy座標が“L”における、危険ポテンシャルの生成範囲と車両1の進行方向右側の道路の境界線との交点1の座標(xc1,yc1)、及び、危険ポテンシャルの生成範囲と車両1の進行方向左側の道路の境界線との交点2の座標(xc2,yc2)を、次式(1)〜(6)によって算出する。
yc1=L ・・・(1)
Bc1=(y2−y1)/(x2−x1) ・・・(2)
xc1=(Lc1+Bc1×x2−y2)/Bc1 ・・・(3)
yc2=L ・・・(4)
Bc2=(y4−y3)/(x4−x3) ・・・(5)
xc2=(Lc2+Bc2×x4−y4)/Bc2 ・・・(6)
但し、ここで算出した交点1の座標は、次式(7)、(8)をいずれも満足する必要があり、また、交点2の座標は、次式(9)、(10)をいずれも満足する必要がある。
−L ≦ xc1 ≦ L ・・・(7)
(y1−L)(y2−L) ≦ 0 ・・・(8)
−L ≦ xc2 ≦ L ・・・(9)
(y3−L)(y4−L) ≦ 0 ・・・(10)
この条件をいずれも満足しない場合は、交点1と交点2とのいずれもが危険ポテンシャルの生成範囲から外れた位置にあることになる。よって、この場合、危険ポテンシャルの生成範囲を広げるか、若しくは、危険ポテンシャルを生成せずに他の方法で推奨軌道を生成する。
推奨軌道を生成する他の方法としては、推奨軌道の生成対象となる道路へスムーズに進行できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道とする方法がある。この場合、クロソイド曲線を考慮して、スムーズに進行できる軌道を算出してもよいし、曲率半径が大きくなるようにスムーズに進行できる軌道を算出してもよい。
また、推奨軌道を生成する他の方法としては、その生成対象となる道路へ最短距離で進行または進入できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道としてもよい。更に、地図情報DB92bの道路情報に、推奨軌道を含めておき、その道路情報に基づいて、推奨軌道を生成してもよい。
さて、交点1,2の座標を、式(1)〜(6)を用いて算出し、算出した交点1,2の座標が式(7)〜(10)を満足していた場合、交点1と交点2を結んだ直線上、即ち、y軸の座標が“L”の直線上の各点に対して、危険ポテンシャルを生成する。その危険ポテンシャルの生成は、図5(b)に示す方法によって行う。
まず、交点1(車両1の進行方向右側)を基準とし、その交点1より道路の外側の部分が最も高い危険ポテンシャルを示すものとして、交点1より左側の危険ポテンシャルP1を次式(11)によって算出する。
P1 = K×e^(−l/w) ・・・(11)
ここで、Kは、ポテンシャル係数であり、lは、車両1の全幅の1/2の長さであり、wは、交点1からの距離である。
式(11)により算出した、交点1を基準とした危険ポテンシャルP1は、図5(b)の一番上のグラフのようになる。
次いで、交点2(車両1の進行方向左側)を基準とし、その交点2より道路の外側の部分が最も高い危険ポテンシャルを示すものとして、交点2より右側の危険ポテンシャルP2を算出する。ここで、P2も上記式(11)の右辺と同じ式によって算出する。これにより算出した、交点2を基準とした危険ポテンシャルP2は、図5(b)の真ん中のグラフのようになる。
そして、これら交点1を基準とした危険ポテンシャルP1と交点2を基準とした危険ポテンシャルP2とを合成して、車両1から一定距離先のy座標が“L”における危険ポテンシャルPを求める。即ち、危険ポテンシャルPを次式(12)により算出する。
P = P1+P2 ・・・(12)
式(12)により算出した危険ポテンシャルPは、図5(b)の一番下のグラフのようになる。
なお、交点1と交点2とのいずれかが危険ポテンシャルの生成範囲にある場合は、危険ポテンシャルの生成範囲内にある交点のみ使用して、y軸の座標が“L”である直線上の各点に対して、危険ポテンシャルを生成する。例えば、交点1のみが危険ポテンシャルの生成範囲にある場合は、図5(b)の一番上のグラフに示す危険ポテンシャルP1を算出して、これを危険ポテンシャルPとする。また、交点2のみが危険ポテンシャルの生成範囲にある場合は、図5(b)の真ん中のグラフに示す危険ポテンシャルP2を算出して、これを危険ポテンシャルPとする。
このように、危険ポテンシャルの生成では、まず、常に一定距離先(y座標が“L”の地点)の危険ポテンシャルPを、上記のようにして算出する。また、第1〜第4カメラ26a〜26dにて撮像した画像データの解析結果から、道路上の障害物、道路または歩道にいる歩行者、自転車、他の車両(対向車や前後左右にいる車両)の存在を把握していたり、道路の状態、例えば、雨や雪により路面が滑りやすい状態にあることを把握していた場合は、障害物等の位置や、路面の状態等に基づいて、算出した危険ポテンシャルPを補正する。
このようにして生成した危険ポテンシャルでは、最もポテンシャルの低い場所が危険リスクの最も低い場所であると認識できる。例えば、図6(a)では、直線上の道路71に対して生成された危険ポテンシャルの例について示しているが、この場合、道路71の真ん中が最も危険ポテンシャルが低く、危険リスクが最も低いと認識できる。また、図6(b)では、直線上の道路71の途中から右側に分岐した道路72に対して生成された危険ポテンシャルの例について示しているが、この場合、道路の境界a−bより離れるほど危険ポテンシャルが低くなり、危険リスクが低くなると認識できる。
推奨軌道生成処理では、各道路毎に、この危険リスクが最も低くなる危険ポテンシャルの最も低い部分を車両1が走行するように推奨軌道を生成して、推奨軌道メモリ93aに格納する。上述した通り、車両1の操舵支援は、このようにして生成された1以上の推奨軌道の中から選択された推奨軌道に沿って車両1が走行するように行われる。よって、車両1は、最も安全な地点を走行するように操舵支援が行われるので、搭乗者は安心して車両1に操舵支援を行わせることができる。
図4に戻り、運転支援処理の説明を続ける。運転支援処理では、推奨軌道生成処理(S2)の後、次いで、ハンドル補助力付与処理を実行する(S3)。ハンドル補助力付与処理は、ハンドル13に対して所定のハンドル補助力Fを付与することにより、操舵支援を実行する処理である。このハンドル補助力付与処理の詳細については、図7を参照して、後述する。
ハンドル補助力付与処理(S3)の後、運転支援処理では、運転支援スイッチ25が再び押下され、オフ状態となったか否かを判断する(S4)。その結果、運転支援スイッチ26がオン状態のままであれば(S4:No)、S1の処理へ戻り、再びS1〜S4の処理を実行する。これにより、運転支援スイッチ26がオン状態である間は、リアルタイムで推奨軌道を生成して選択しつつ、その選択された推奨軌道に沿って車両1が走行されるように、車両1の操舵支援が継続して行われる。
一方、S4の処理の結果、運転支援スイッチ26が押下されてオフ状態となったと判断された場合は(S4:Yes)、運転支援処理を終了する。
次いで、図7を参照して、運転支援処理(図4)の一処理であるハンドル補助力付与処理(S3)の詳細について説明する。図7は、CPU91により実行されるハンドル補助力付与処理を示すフローチャートである。このハンドル補助力付与処理は、推奨軌道に沿って車両1が走行するためのハンドル13の推奨ハンドル角とハンドル角検出センサ13aから出力される実際のハンドル13のハンドル角との差の絶対値から、ハンドル13に付与する補助力の大きさFを決定し、ハンドル角が推奨ハンドル角へ近づく方向にその補助力Fを付与するよう、補助力付与モータ13cに対して指示するものである。
具体的には、まず、搭乗者によって操作されたハンドル13の実際のハンドル角φjと、そのハンドル13の回転角速度とを、ハンドル角検出センサ13a及びハンドル回転角速度検出センサ13bより取得する(S31)。次いで、S31の処理によって取得したハンドル角およびハンドル13の回転角速度から、搭乗者の進行したい方向を判定する(S32)。
このS32の判定は、次のように行われる。例えば、ハンドル角が左旋回を示す角度である場合に、ハンドル13の回転角速度がハンドル13の左回転を示すものであるか又はハンドル角の維持を示すものであれば、搭乗者は左方向へ進行したいと判定し、ハンドル13の回転角速度がハンドル13の右回転を示すものであれば、搭乗者は直進したいと判定する。
また、ハンドル角が直進を示す角度である場合に、ハンドル13の回転角速度がハンドル13の左回転を示すものであれば、搭乗者は左方向へ進行したいと判定し、ハンドル13の回転角速度がハンドル角の維持を示すものであれば、搭乗者は直進したいと判定し、ハンドル13の回転角速度がハンドル13の右回転を示すものであれば、搭乗者は右方向へ進行したいと判定する。
また、ハンドル角が右旋回を示す角度である場合に、ハンドル13の回転角速度がハンドル13の左回転を示すものであれば、搭乗者は直進したいと判定し、ハンドル13の回転角速度がハンドル角の維持を示すものであるか又はハンドル13の右回転を示すものであれば、搭乗者は右方向へ進行したいと判定する。
このように、搭乗者の進行したい方向をハンドル角とハンドル13の回転角速度とによって判定することにより、単にハンドル角のみによって判定する場合と比して、搭乗者のハンドル13の操作状態をも加味して判定できるので、搭乗者の進行したい方向をより正確に判定できる。
そして、S32の処理により判定された、搭乗者の進行したい方向へ車両1が走行する推奨軌道を、推奨軌道メモリ93aに軌道情報が格納された推奨軌道の中から1つ選択する(S33)。
なお、推奨軌道メモリ93aに格納されている推奨軌道が1つしかない場合は、車両1が走行可能な道路が1つしかなく、推奨軌道メモリ93aに格納されている1つの推奨軌道は、その1つしかない走行可能な道路を車両1が走行するための推奨軌道であることを意味する。従って、この場合は、S32の処理により判定された搭乗者の走行したい方向にかかわらず、推奨軌道メモリ93aに格納された1つの推奨軌道を選択する。
次いで、S33の処理により選択された推奨軌道上の各地点の中から、車両1が現在位置よりその推奨軌道に沿って車両速度Vで時間tだけ走行したと仮定した場合に到達する経路点Qを、推奨軌道マップ93bに格納された軌道情報に基づいて特定し、車両1の現在位置からその経路点Qまで車両1を走行させる場合に必要な車両1のヨーレートωを算出する(S34)。そして、S34の処理により算出したヨーレートωに基づいて車両1の推奨操舵角δを算出する(S35)。
ここで、図8を参照して、S34の処理におけるヨーレートωの算出方法と、S35における推奨操舵角δの算出方法とを説明する。図8は、ヨーレートωおよび推奨操舵角δの算出方法を説明するための図である。
まず、S34の処理においてヨーレートωを算出する場合、車両1の現在位置と経路点Qの位置との関係から、車両1が経路点Qに到達したときの横方向の偏差である横偏差Δxを算出する。具体的には、経路点Qの座標を上述した車両座標系に変換することで、その車両座標系における経路点Qのx座標を横偏差Δxとして算出することができる。
ここで、図8に示す角度θは、次式(13)によって算出できる。
θ = tan−1(Δx/L) ・・・(13)
但し、Lは、車両1が車両速度Vで時間tだけ走行した場合に進む距離である。通常、横偏差Δxは、車両1が進む距離Lと比して極めて小さいので、式(13)は、次式(14)に変換できる。
θ ≒ Δx/L = Δx/(V・t) ・・・(14)
ここで、車両1は時間tの間、一定の大きさのヨーレートωで旋回すると仮定すると、そのヨーレートωは、図8に示すθとの関係で、次式(15)を満たす。
ω = 2θ/t ・・・(15)
よって、式(14)と式(15)とから、ヨーレートωは、横偏差Δtと、車両速度Vと、時間tとから、次式(16)によって算出できる。
ω = 2Δx/(V・t2) ・・・(16)
式(16)によって、ヨーレートωを算出すると、続くS35の処理では、次式(17)によって、推奨操舵角δを算出する。
δ = (1+A・V2)×(lw/V)×ω ・・・(17)
ここで、Aは、車両1の操縦安定性の指標であって個々の車両1によって予め決まるスタビリティファクタであり、lwは、前輪2FL,2FRを結ぶ前輪軸と、後輪2RL,2RRを結ぶ後輪軸との距離であるホイールベースである。
図7に戻り、ハンドル操作角付与処理について説明を続ける。S35の処理により、車両1の推奨操舵角δが算出されると、その算出された推奨操舵角δが車両1(前輪2FL,2FR)に対して付与されるために必要となるハンドル13の推奨ハンドル角φiを特定する(S36)。なお、車両1の操舵角と、ハンドル13のハンドル角とは一対一に対応しており、車両1に付与すべき操舵角が決まれば、ハンドル13のハンドル角が一意に定まる。
次いで、S31の処理により取得された実際のハンドル角φjと、S36の処理により特定された推奨ハンドル角φiとの差を算出し(S37)、S37の処理により算出した、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差から、補助力特定マップエリア92cに格納されている補助力特定マップに従って、ハンドル13に対して付与すべきハンドル補助力Fを特定する(S38)。
そして、S38の処理で特定したハンドル補助力Fを、推奨軌道生成処理(S2)で算出した危険ポテンシャルPに基づいて補正する(S39)。ここで、図9を参照して、危険ポテンシャルPに基づいてハンドル補助力Fを補正する方法について説明する。図9は、その危険ポテンシャルPに基づいてハンドル補助力Fを補正する方法を説明するための図である。
S38では、S31の処理によって取得した実際のハンドル角φjのまま所定の車両速度で車両1を走行させた場合の車両1の軌道を予測し、その予測した軌道(予測軌道)と、推奨軌道の生成ために危険ポテンシャルPが算出された道路上の所定の各点との交点Iにおける危険ポテンシャル値を算出する。そして、交点Iにおける危険ポテンシャル値と、推奨軌道が通過する地点の危険ポテンシャル値とのポテンシャル偏差ΔPを算出し、そのポテンシャル偏差ΔPを用いて、次式によりハンドル補助力Fを補正する。
F = F×(1+ΔP/Pmax) ・・・(18)
ここで、Pmaxは危険ポテンシャルの最大値である。
図7に戻り、ハンドル操作角付与処理について説明を続ける。S39の処理によって、式(18)に従って、ハンドル補助力を危険ポテンシャルに基づいて補正すると、その補正後の大きさで、ハンドル補助力Fが、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向きに付与されるように、ハンドル13の補助力付与モータ13cに対して指示する(S40)。そして、ハンドル補助力付与処理を終了し、運転支援処理に戻る。
このS40の処理により、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に、補助力特定マップによって特定され且つ危険ポテンシャルに基づき補正された大きさのハンドル補助力Fを付与させることができる。
以上のように、第1実施形態によれば、推奨軌道に沿って車両1が走行するためのハンドル13の推奨ハンドル角φiを定め、ハンドル角検出センサ13aから出力される実際のハンドル13のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値に応じて、ハンドル13に付与する補助力の大きさFを決定する。そして、走行制御装置100は、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角φiへ近づく方向に補助力Fを付与するよう、補助力付与モータ13cに対して指示する。これにより、ハンドル13には、ハンドル角が推奨ハンドル角φiへ近づく方向に補助力Fが付与される。
また、ここで付与される補助力Fは、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きいほど、大きくなるように設定される。よって、搭乗者は、ハンドル13を回転操作させなくても、ハンドル13に対して付与される補助力Fの方向および大きさから、推奨ハンドル角φiへと近づけるためにハンドル13を操作すべき方向やハンドルの操作量を容易に把握できる。
従って、搭乗者は、ハンドル13に対して余計な操作を行わなくとも、把握したハンドル13の操作方向や操作量に基づいて、ハンドル13のハンドル角を推奨ハンドル角φiとなるようにハンドル13を操作できる。その結果、車両1は、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両を走行させることができる。
更に、第1実施形態によれば、S31の処理によって取得した実際のハンドル角φjのまま所定の車両速度で車両1を走行させた場合の車両1の軌道を予測し、その予測した軌道(予測軌道)が通過する地点の危険ポテンシャル値と、推奨軌道が通過する地点の危険ポテンシャル値とのポテンシャル偏差ΔPが大きいほど、ハンドル補助力Fが大きくなるように、ハンドル補助力Fを補正した上で、その補助力Fをハンドル13に対して付与する。これにより、実際のハンドル角φjのまま車両1を走行させ続けたときに危険であると判断される場合には、その危険度合いが大きいほど、ハンドル角が推奨ハンドル角φiへ近づく方向に付与されるハンドル補助力Fがより大きく設定されるので、搭乗者に対して、その危険を回避するようにハンドル13の操作を仕向けることができる。よって、車両1をより安全に走行させるように、操舵支援を行うことができる。
また、ハンドル補助力Fを上記のように付与することによって、搭乗者は、まるで「わだち」を走行しているような感覚を覚えることができる。車両がわだちにはまって走行する場合、そのわだちから離れようとすればするほど、そのわだちに戻ろうとする力が車両の操舵に加わる。これに対し、第1実施形態では、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiから外れて、推奨軌道から離れようとすればするほど、ハンドル13にハンドル補助力Fが付与されて、推奨軌道に戻ろうとする力が加わる。よって、搭乗者は、推奨軌道をわだちに見立てて、車両1を走行させることができるので、操舵支援を行いながら、搭乗者に自然な感覚で車両1の操舵を行わせることができる。
次いで、図10〜図15を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、推奨軌道をリアルタイムに生成ながら選択し、その推奨軌道に沿って車両1が走行されるように、ハンドル13に対して、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きいほど大きくなハンドル補助力Fを、ハンドル角が推奨ハンドル角φiへ近づく方向に付与する場合について説明した。
これに対し、第2実施形態では、予め設定された推奨軌道に沿って、車両1が走行されるように、ハンドル13に対して、ハンドル補助力Fを、ハンドル角が推奨ハンドル角φiへ近づく方向に付与する。
また、第2実施形態では、このハンドル13に対して付与されるハンドル補助力Fの大きさは、車両1の現在位置と推奨軌道とが近ければ、第1実施形態と同様に、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きいほど大きく設定するが、車両1の現在位置と推奨軌道とが遠ければ、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が小さいほど大きく設定する。
なお、第2実施形態において、車両1及び走行制御装置100の構成は、走行制御装置100において、フラッシュメモリ92に代えてフラッシュメモリ192が設けられる点、及び、運転支援処理の内容が異なる点の他は、第1実施形態と同じものである。
但し、RAM93の推奨軌道メモリ93aは、上述した通り、予め設定された推奨軌道情報を格納する。また、第2実施形態において、推奨軌道メモリ93aに格納される推奨軌道は、所定間隔毎に設けられた走行制御点によって表され、各走行制御点毎に、その走行制御点の座標、走行制御点における車両1の車両方向、推奨軌道を走行する場合に走行制御点において車両1に付与すべき操舵角、及び、車両の進行方向とが対応付けられて、それを軌道情報として推奨軌道メモリ93aに格納する。
以下、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その図示と説明を省略する。
図10は、第2実施形態における走行制御装置100を含む車両1の電気的構成を示したブロック図である。
上述した通り、第2実施形態における走行制御装置100は、第1実施形態における走行制御装置100のフラッシュメモリ92に代えて、フラッシュメモリ192を有している。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
フラッシュメモリ192は、CPU91によって実行される制御プログラムや固定値データ等を記憶するための書き換え可能な不揮発性のメモリであり、プログラムメモリ192a、地図情報DB92b、内側補助力特定マップメモリ192c及び外側補助力特定マップ192dが設けられている。このうち、地図情報DB92bは、第1実施形態と同一のものである。
プログラムメモリ192aは、CPU91にて実行される各種のプログラムが格納されたフラッシュメモリ192上の領域である。後述する図13のフローチャートに示す第2実施形態における運転支援処理や図14のフローチャートに示す第2実施形態におけるハンドル補助力付与処理等をCPU91にて実行させるための各プログラムは、このプログラムメモリ192aに格納されている。
CPU91は、このプログラムメモリ192aに格納された各プログラムに従って各種処理を実行することで、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両1を走行させている。
内側補助力特定マップメモリ192cは、車両1の現在位置が推定軌道に近い場合に、ハンドル13に対して付与する補助力Fの大きさを特定するための内側補助力特定マップを格納するためのメモリ領域である。
ここで、図11を参照して、内側補助力特定マップによって補助力Fの大きさを特定する場合の条件と、その内側補助力特定マップの詳細とについて説明する。図11(a)は、内側補助力特定マップによって補助力Fの大きさを特定する場合の条件について説明するための図であり、図11(b)は、内側補助力特定マップを模式的に示した模式図である。
この内側補助力特定マップは、図11(a)に示すように、車両1の現在位置と、その車両1に最も近い推奨軌道上の走行制御点の位置との位置の偏差εが、所定の長さλ以下である場合に、車両1の現在位置が推奨軌道に近いと判断して、内側補助力特定マップを用いて、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。
この内側補助力特定マップは、図11(b)に示す通り、第1実施形態の補助力特定マップと同様に縦軸をハンドル補助力Fの大きさとし、横軸を実際のハンドル角φjとしたマップであり、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiと関係から、ハンドル13に対して付与すべき補助力Fの大きさが特定できるようになっている。
具体的には、この内側補助力特定マップでは、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差分が0、即ち、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiと等しい場合、ハンドル補助力Fが0として特定される。そして、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きくなるほど、ハンドル補助力Fの大きさが大きくなるように特定される。
なお、図11(b)の例では、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の二乗に比例してハンドル補助力の大きさが大きくなる場合に示しているが、これは例示であり、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値に比例して、ハンドル補助力Fの大きさが大きくなってもよい。また、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きくなるほど、ハンドル補助力Fの大きさが大きくなるものであれば、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値と、ハンドル補助力Fの大きさとの関係は任意のものであってよい。
図10に戻って、説明を続ける。外側補助力特定マップメモリ192cは、車両1の現在位置が推定軌道に遠い場合に、ハンドル13に対して付与する補助力Fの大きさを特定するための外側補助力特定マップを格納するためのメモリ領域である。
ここで、図12を参照して、外側補助力特定マップによって補助力Fの大きさを特定する場合の条件と、その外側補助力特定マップの詳細とについて説明する。図12(a)は、外側補助力特定マップによって補助力Fの大きさを特定する場合の条件について説明するための図であり、図12(b)は、外側補助力特定マップを模式的に示した模式図である。
この外側補助力特定マップは、図12(a)に示すように、車両1の現在位置と、その車両1に最も近い推奨軌道上の走行制御点の位置との位置の偏差εが、所定の長さλよりも大きい場合に、車両1の現在位置が推奨軌道に遠いと判断して、外側補助力特定マップを用いて、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。
この外側補助力特定マップは、図12(b)に示す通り、内側補助力特定マップと同様に、縦軸をハンドル補助力Fの大きさとし、横軸を実際のハンドル角φjとしたマップであり、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiと関係から、ハンドル13に対して付与すべき補助力Fの大きさが特定できるようになっている。
但し、この外側補助力特定マップでは、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差分が0、即ち、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiと等しい場合、ハンドル補助力Fが最も大きくなるように特定される。そして、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きくなるほど、ハンドル補助力Fの大きさが小さくなるように特定される。
なお、図12(b)の例では、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の二乗に比例してハンドル補助力の大きさが小さくなる場合に示しているが、これは例示であり、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値に比例して、ハンドル補助力Fの大きさが小さくなってもよい。また、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値が大きくなるほど、ハンドル補助力Fの大きさが小さくなるものであれば、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値と、ハンドル補助力Fの大きさとの関係は任意のものであってよい。
詳細については後述するが、CPU91は、車両1の現在位置と、その現在位置に最も近い推奨軌道の走行制御点の位置との位置の偏差εを算出し、また、車両1の実際の車両方位と、現在位置に最も近い推奨軌道の走行制御点に対応付けられた車両方位との方位の偏差θdを算出して、位置の偏差εと方位の偏差θdとから推奨操舵角δを算出し、その推奨操舵角δに基づいて、推奨ハンドル角φiを特定する。
そして、位置の偏差εが所定の長さλ以下であれば、車両1の現在位置が推奨軌道に近いと判断し、内側補助力特定マップを用いて、ハンドル角検出センサ13aが示す実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値から、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。また、特定したハンドル補助力Fの大きさを、危険ポテンシャルPに基づいて補正する。
そして、CPU91は、その補正後のハンドル補助力Fが、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向き(図3(b)に示す向き)に付与されるように、ハンドル13の補助力付与モータ13cに対して指示する。これにより、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に、補助力特定マップによって特定され且つ危険ポテンシャルに基づき補正された大きさのハンドル補助力Fを付与させることができる。
また、ここで付与される補助力Fは、内側補助力特定マップにより、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiの差の絶対値が大きいほど、大きくなるように設定される。よって、搭乗者は、ハンドル13を回転操作させなくても、ハンドル13に対して付与される補助力Fの方向および大きさから、推奨ハンドル角へと近づけるためにハンドル13を操作すべき方向やハンドルの操作量を容易に把握できる。
従って、搭乗者は、ハンドル13に対して余計な操作を行わなくとも、把握したハンドル13の操作方向や操作量に基づいて、ハンドル13のハンドル角を推奨ハンドル角となるようにハンドル13を操作できる。その結果、車両1は、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両を走行させることができる。
一方、CPU91は、位置の偏差εが所定の長さλより大きければ、車両1の現在位置が推奨軌道から遠いと判断し、外側補助力特定マップを用いて、ハンドル角検出センサ13aが示す実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値から、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。また、特定したハンドル補助力Fの大きさを、危険ポテンシャルPに基づいて補正する。
そして、CPU91は、その補正後のハンドル補助力Fが、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向き(図3(b)に示す向き)に付与されるように、ハンドル13の補助力付与モータ13cに対して指示する。これにより、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に、補助力特定マップによって特定され且つ危険ポテンシャルに基づき補正された大きさのハンドル補助力Fを付与させることができる。
また、ここで付与される補助力Fは、外側補助力特定マップにより、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiの差の絶対値が大きいほど、小さくなるように設定される。ここで、車両1の現在位置が推奨軌道から離れており、しかも、実際のハンドル角φjも推奨ハンドル角φiと大きく異なっている場合は、搭乗者は、意思によって走行経路に因らずに車両1を走行させていると考えられる。よって、この場合は、ハンドル13に対して付与される補助力Fの大きさを小さくすることで、搭乗者の意思に従ってハンドル13が操作され易くすることができる。
一方、車両1の現在位置が推奨軌道と離れていても、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiと近い場合は、推奨軌道に沿って車両1を走行させたいという意思が搭乗者にあると考えられる。よって、この場合は、ハンドル13に対して付与されるハンドル補助力Fを大きくすることで、搭乗者の意思に従って推奨軌道に沿った走行が行われるようにハンドル13が操作され易くすることができる。従って、搭乗者の意思を強く反映させながら、操舵支援を行うことができる。
次いで、図13を参照して、第2実施形態における運転支援処理について説明する。図13は、CPU91により実行される第2実施形態の運転支援処理を示すフローチャートである。この運転支援処理は、操舵支援を行いながら、予め設定された推奨軌道に沿って滑らかに車両1を走行させる処理である。
運転支援処理は、第1実施形態と同様に、運転支援スイッチ25が搭乗者によって押下され、オン状態にされると、CPU91によって処理が開始される。第2実施形態における運転支援処理では、まず、推奨軌道情報を取得し、推奨軌道メモリ93aに格納する(S101)。ここで、推奨軌道情報は、走行制御装置100によって生成されてもよいし、外部の装置(外部に設けられたサーバや、携帯端末等)から取得してもよい。
走行制御装置100にて推奨軌道を生成する場合は、搭乗者から目標位置を受け付けて、地図情報DB92bに格納された地図や道路の情報を基に、推奨軌道を生成するようにしてもよい。なお、この場合の推奨軌道の生成方法は、種々の公知技術(例えば、特開2011−25754号公報)があるため、ここでは説明を省略する。
また、外部の装置から推奨軌道を取得する場合は、外部の装置と情報を送受信するためのインターフェースを設け、そのインターフェースを入出力ポート95に接続することで、インターフェースを介して、外部の装置から、推奨軌道を取得するように構成すればよい。
S101の処理の後、ハンドル補助力付与処理を実行する(S102)。ハンドル補助力付与処理は、ハンドル13に対して所定のハンドル補助力Fを付与することにより、操舵支援を実行する処理である。このハンドル補助力付与処理の詳細については、図14を参照して、後述する。
そして、ハンドル補助力付与処理(S102)の後、運転支援処理では、運転支援スイッチ25が再び押下され、オフ状態となったか否かを判断する(S103)。その結果、運転支援スイッチ26がオン状態のままであれば(S103:No)、S102の処理へ戻り、再びS102,S103の処理を実行する。これにより、運転支援スイッチ26がオン状態である間は、S101の処理によって予め設定された推奨軌道に沿って車両1が走行されるように、車両1の操舵支援が継続して行われる。
一方、S103の処理の結果、運転支援スイッチ26が押下されてオフ状態となったと判断された場合は(S103:Yes)、運転支援処理を終了する。
次いで、図14を参照して、第2実施形態における運転支援処理(図13)の一処理であるハンドル補助力付与処理(S102)の詳細について説明する。図13は、CPU91により実行される第2実施形態におけるハンドル補助力付与処理を示すフローチャートである。
このハンドル補助力付与処理は、ハンドル角検出センサ13aから出力される実際のハンドル13のハンドル角と推奨軌道に沿って車両1が走行するためのハンドル13の推奨ハンドル角との差の絶対値、及び、車両1の現在位置と推奨軌道との位置関係から、ハンドル13に付与する補助力の大きさFを決定し、ハンドル角が推奨ハンドル角へ近づく方向にその補助力Fを付与するよう補助力付与モータ13cに対して指示するものである。
具体的には、まず、現在位置検出装置27より、車両1の現在位置および車両方位を取得する(S141)。次いで、推奨軌道メモリ93aに格納された軌道情報から、車両1の現在位置に最も近い走行制御点を探索し、その車両1の現在位置に最も近い走行制御点の軌道情報として、その走行制御点の座標、走行制御点における車両1の車両方向、推奨軌道を走行する場合に走行制御点において車両1に付与すべき操舵角、及び、車両の進行方向を取得する(S142)。
次いで、S142の処理によって探索された車両1の現在位置に最も近い走行制御点に対する車両1の位置の偏差εと方位の偏差θdとを算出し(S143)、また、車両1が推奨軌道に対して左右のいずれの方向にずれているかを判別する(S144)。そして、S143の処理により算出した車両1の位置の偏差ε及び方位の偏差θdと、S144の処理により判別した車両1のずれの方向に基づいて、車両1を推奨軌道に沿って走行させるために必要な推奨操舵角δを算出する(S145)。
ここで、図15(a),(b)を参照して、一の走行制御点Qを基準として、S143にて行われる車両1の位置の偏差ε及び方位の偏差θdを算出する方法について説明する。図15(a)は、一の走行制御点Qを基準として、車両1の位置の偏差εを算出する方法を説明するための説明図であり、図15(b)は、一の走行制御点Qを基準として、車両1の方位の偏差θdを算出する方法を説明するための説明図である。
なお、図15(a),(b)は、推奨軌道を構成する走行制御点Qのうち、車両1の現在位置から最も近い走行制御点Qとして走行制御点Qtが特定されている状態を示すと共に、車両1が推奨軌道に対して右側にズレている状態を示している。また、y’軸は、走行経路上の走行制御点Qtに対する接線を示しており、x’軸は、走行制御点Qtにおいてy’軸と垂直に交差する直線を示している。一方、x軸は、緯度方向を示し、y軸は、経度方向を示している。
ここで、車両1の位置の偏差εとは、走行制御点Qtから車両1の現在位置までの直線距離のことであり、車両1の方位の偏差θdとは、走行制御点Qtから車両1の現在位置までの直線と、x軸とがなす角度である。
まず、車両1の位置の偏差εについて説明する。図15(a)に示すように、車両1の現在位置を(xv,yv)とし、走行制御点Qtに対応する車両位置を(xt,yt)とすると、走行制御点Qtを基準とした車両1の現在位置の偏差εは、
ε=((xt−xv)2+(yt−xv)2)1/2 ・・・(18)
により算出される。
次に、車両1の方位の偏差θdについて説明する。図15(b)に示すように、車両1の現在位置を(xv,yv)とし、走行制御点Qtに対応する車両位置を(xt,yt)とすると、車両1の方位の偏差θdは、
θd=tan−1((yv−yt)/(xv−xt)) ・・・(19)
により算出される。
次いで、上述した車両1の位置の偏差ε、および、車両1の方位の偏差θdを用いて、S145の処理にて行われる車両1の推奨操舵角δの算出方法について説明する。車両1の現在位置(xv、yv)における車両方位をθvとし、走行制御点Qtに対し、軌道情報として規定された車両1に付与すべき操舵角をδqtとし、また、走行制御点Qtに対し、軌道情報として規定された車両1の車両方位をθqtとすると、車両1に対して設定すべき操舵角δは、
δ=δqt+K1・ε・D1−K2・(θqt−θv)・D2 ・・・(20)
により算出される。
ここで、変数K1、変数K2は、操舵角δを大きく変化させるか、小さく変化させるかを設定するためのゲインであり、適宜設定される値である。また、変数D1は、y’軸に対して車両1が右側に位置するか、左側に位置するかを示す値が設定されるものであり、y’軸に対して車両1が右側に位置するに位置する場合には変数D1に「−1」が設定され、y’軸に対して車両1が左側に位置する場合には変数D1に「1」が設定される。
なお、「θqt−π≧0」の場合に、「θqt−π≦θd≦θqt」を満たしていれば、y’軸に対して車両1が右側に位置し、満たさない場合には、y’軸に対して車両1が左側に位置する。また、「θqt−π<0」の場合に、「0≦θd≦θqt」または「θqt+π≦θd≦2π」を満たしていれば、y’軸に対して車両1が右側に位置し、満たさない場合には、y’軸に対して車両1が左側に位置する。S144の処理では、このような判別を行うことにより、車両1が推奨軌道に対して左右のいずれの方向にずれているかを判別する。
また、変数D2は、走行制御点Qtに対し、軌道情報として規定された進行方向に対応して設定されるものであり、走行制御点Qtにおいて車両1が前進する場合、変数D2には「1」が設定される。また、走行制御点Qtにおいて車両1が後退する場合、変数D2には「−1」が設定される。
図14に戻り、ハンドル補助力付与手段の説明を続ける。S145の処理によって、上記式(20)により車両1の推奨操舵角δが算出されると、その算出された推奨操舵角δが車両1(前輪2FL,2FR)に対して付与されるために必要となるハンドル13の推奨ハンドル角φiを特定する(S146)。
次いで、ハンドル角検出センサ14aより、実際のハンドル角φjを取得して、その実際のハンドル角φjと、S146の処理により特定した推奨ハンドル角φiとの差を算出する(S147)。
次いで、S145の処理により算出した位置の偏差εが、所定の長さλ以下か否かを判定する(S148)。その結果、位置の偏差εが、所定の長さλ以下であると判定された場合は(S148:Yes)、内側補助力特定マップエリア193bに格納された内側補助力特定マップ(図11(b))を用いて、ハンドル角検出センサ13aが示す実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値から、ハンドル補助力Fの大きさを特定し(S149)、S151の処理へ移行する。
また、S148の処理の結果、位置の偏差εが、所定の長さλより大きいと判定された場合は(S148:No)、外側補助力特定マップエリア193bに格納された外側補助力特定マップ(図12(b))を用いて、ハンドル角検出センサ13aが示す実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差の絶対値から、ハンドル補助力Fの大きさを特定し(S150)、S151の処理へ移行する。
S151の処理では、S149又はS150の処理で特定したハンドル補助力Fを、危険ポテンシャルPに基づいて補正する(S151)。危険ポテンシャルの生成方法は、図5及び図6を参照して説明した方法と同一であり、また、危険ポテンシャルPに基づいてハンドル補助力Fを補正する方法は、図9を参照して説明した方法と同一であるので、ここでは説明を省略する。
そして、S151の処理の後、そのS151の処理により危険ポテンシャルPに基づいて補正された大きさで、ハンドル補助力Fが、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向きに付与されるように、ハンドル13の補助力付与モータ13cに対して指示する(S152)。そして、ハンドル補助力付与処理を終了し、運転支援処理に戻る。
このS152の処理により、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に、内側補助力特定マップまたは外側補助力特定マップによって特定され且つ危険ポテンシャルに基づき補正された大きさのハンドル補助力Fを付与させることができる。
以上のように、第2実施形態によれば、予め設定された推奨軌道に対して、車両1の現在位置と、その現在位置に最も近い推奨軌道の走行制御点の位置との位置の偏差εを算出し、また、車両1の実際の車両方位と、現在位置に最も近い推奨軌道の走行制御点に対応付けられた車両方位との方位の偏差θdを算出して、位置の偏差εと方位の偏差θdとから推奨操舵角δを算出し、その推奨操舵角δに基づいて推奨ハンドル角φiを特定する。
ここで、位置の偏差εが所定の長さλ以下であれば、内側補助録特定マップを用いて、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。ここで、内側補助力特定マップは、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiの差の絶対値が大きいほど、大きくなるように、ハンドル補助力Fを設定する。そして、そのハンドル補助力Fの大きさが、危険ポテンシャルPに基づいて補正された後、補正後の大きさのハンドル補助力Fが、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向き(図3(b)に示す向き)に付与される。
位置の偏差εが所定の長さλ以下の場合、車両1の現在位置が推奨軌道に近いと判断できる。この場合、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiの差の絶対値が大きいほど、大きなハンドル補助力が、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に付与されるので、搭乗者は、ハンドル13を回転操作させなくても、ハンドル13に対して付与される補助力Fの方向および大きさから、推奨ハンドル角へと近づけるためにハンドル13を操作すべき方向やハンドルの操作量を容易に把握できる。
従って、搭乗者は、ハンドル13に対して余計な操作を行わなくとも、把握したハンドル13の操作方向や操作量に基づいて、ハンドル13のハンドル角を推奨ハンドル角となるようにハンドル13を操作できる。その結果、車両1は、操舵支援を行いながら、推奨軌道に沿って滑らかに車両を走行させることができる。
また、位置の偏差εが所定の長さλより大きければ、外側補助力特定マップを用いて、ハンドル補助力Fの大きさを特定する。ここで、外側補助板特定マップは、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiの差の絶対値が大きいほど、小さくなるように、ハンドル補助力Fを設定する。そして、そのハンドル補助力Fの大きさが、危険ポテンシャルPに基づいて補正された後、補正後の大きさのハンドル補助力Fが、ハンドル13のハンドル角を実際のハンドル角φjから推奨ハンドル角φiへと近づける向き(図3(b)に示す向き)に付与される。
位置の偏差εが所定の長さλより大きい場合、車両1の現在位置が推奨軌道から遠いと判断できる。この場合、実際のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiの差の絶対値が大きいほど、小さなハンドル補助力が、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に付与される。ここで、車両1の現在位置が推奨軌道から離れており、しかも、実際のハンドル角φjも推奨ハンドル角φiと大きく異なっている場合は、搭乗者は、意思によって走行経路に因らずに車両1を走行させていると考えられる。よって、この場合は、ハンドル13に対して付与される補助力Fの大きさを小さくすることで、搭乗者の意思に従ってハンドル13が操作され易くすることができる。
一方、車両1の現在位置が推奨軌道と離れていても、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiと近い場合は、推奨軌道に沿って車両1を走行させたいという意思が搭乗者にあると考えられる。よって、この場合は、ハンドル13に対して付与されるハンドル補助力Fを大きくすることで、搭乗者の意思に従って推奨軌道に沿った走行が行われるようにハンドル13が操作され易くすることができる。従って、搭乗者の意思を強く反映させながら、操舵支援を行うことができる。
また、内側補助力特定マップまたは外側補助力特定マップに基づいて特定したハンドル補助力Fは、第1実施形態と同一の方法によって、危険ポテンシャルPに基づき補正されるので、第1実施形態と同様に、搭乗者に対して、その危険を回避するようにハンドル13の操作を仕向けることができる。よって、車両1をより安全に走行させるように、操舵支援を行うことができる。
更に、ハンドル補助力Fを上記のように付与することによって、搭乗者は、まるで「わだち」を走行しているような感覚を覚えることができる。車両がわだちにはまって走行する場合、そのわだちから離れようとすればするほど、そのわだちに戻ろうとする力が車両の操舵に加わる。一方、わだちから完全に外れて走行している場合に、わだちに近づけば近づくほど、そのわだちに入ろうとする力が車両の操舵に加わる。
これに対し、第2実施形態では、車両1の現在位置が、推奨軌道と近ければ、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiから外れて、推奨軌道から離れようとすればするほど、ハンドル13にハンドル補助力Fが付与されて、推奨軌道に戻ろうとする力が加わる。一方、車両1の現在位置が、推奨軌道から遠ければ、実際のハンドル角φjが推奨ハンドル角φiに近づいて、推奨軌道へ近づこうとすればするほど、ハンドル13にハンドル補助力Fが付与されて、推奨軌道に入ろうとする力が加わる。よって、搭乗者は、推奨軌道をわだちに見立てて、車両1を走行させることができるので、操舵支援を行いながら、搭乗者に自然な感覚で車両1の操舵を行わせることができる。
その他、第2実施形態では、第1実施形態と同一の構成によって、第1実施形態と同一の効果を奏する。
なお、請求項1及び請求項4に記載の「走行経路」としては各実施形態の「推奨軌道」が該当し、請求項1及び請求項4に記載の「目標操舵角」としては、各実施形態の「推奨ハンドル角φi」が該当し、請求項1及び請求項4に記載の「前記操舵手段により前記車両に付与されている操舵角」としては、各実施形態の「実際のハンドル角φj」が該当する。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記各実施形態では、ハンドル補助力Fの大きさを、現在のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差に応じて設定する場合について説明したが、現在のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差だけでなく、ハンドル13のハンドル角を積分した値をも考慮して、ハンドル補助力Fの大きさを設定してもよい。これにより、ハンドル13にハンドル角を付与している時間が長くなればなるほど、また、そのハンドル13に付与するハンドル角が大きければ大きいほど、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に強いハンドル補助力を付与させることができる。よって、時間の経過とともに、搭乗者に対して、より強く、ハンドル13のハンドル角を推奨ハンドル角とするように仕向けることができる。
また、現在のハンドル角φjと推奨ハンドル角φiとの差だけでなく、ハンドル13のハンドル角を積分した値をも考慮して、ハンドル補助力Fの大きさを設定してもよい。これにより、ハンドル13を速く回転操作させればさせるほど、ハンドル13に対して、ハンドル角が推奨ハンドル角へと近づく方向に強いハンドル補助力を付与させることができる。よって、搭乗者がハンドル13を高速で回転操作する、所謂、急ハンドル操作を行うことを抑制できる。
上記第1実施形態では、走行制御装置100にて推奨軌道生成処理を実行し、1以上の推奨軌道を生成する場合について説明したが、必ずしも推奨軌道を走行制御装置100にて生成する必要はなく、外部装置、例えば、外部に設けられたサーバや、携帯端末装置との間で通信を行うインターフェースを走行制御装置100に接続し、その外部装置から1以上の推奨軌道を取得するように構成してもよい。また、走行制御装置100にて推奨軌道を生成する場合であっても、外部装置から更に別の推奨軌道を取得してもよい。推奨軌道を外部装置にて生成することにより、種々の方法で生成された推奨軌道を用意でき、その中から推奨軌道を選択することができる。
また、上記第1実施形態では、推奨軌道生成処理において危険ポテンシャルを求め、その危険ポテンシャルの低い地点を車両1が走行するように推奨軌道を生成する場合について説明したが、その他の方法により推奨軌道を生成してもよい。例えば、推奨軌道の生成対象となる道路へスムーズに進行できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道としてもよい。この場合、クロソイド曲線を考慮して、スムーズに進行できる軌道を算出してもよいし、曲率半径が大きくなるようにスムーズに進行できる軌道を算出してもよい。また、その生成対象となる道路へ最短距離で進行できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道としてもよい。更に、地図情報DB92bの道路情報に、推奨軌道を含めておき、その道路情報に基づいて、推奨軌道を生成してもよい。
なお、第1実施形態において、外部装置から走行軌道を取得した場合や、推奨軌道を危険ポテンシャルに因らずに生成した場合は、ハンドル補助力付与処理(図7)のS39の処理において、危険ポテンシャルPを図5及び図6にて説明した方法で生成し、その危険ポテンシャルPに基づいてハンドル補助力Fを補正するようにすればよい。
上記第2実施形態では、ハンドル補助力付与手段(図14)のS145の処理において、車両1の現在位置と、その現在位置に最も近い走行制御点Qtとの位置の偏差εを算出し、その位置の偏差εと所定の長さλとを比較して、その比較結果に基づいて、ハンドル補助力Fを特定するために用いる補助力特定マップを内側補助力特定マップ及び外側補助力特定マップのいずれかから選択したが、車両1の現在位置と推奨軌道との横偏差(図15(a)のε’)を算出し、この横偏差ε’と所定の長さλとを比較して、横偏差ε‘が所定の長さλ以下の場合は、ハンドル補助力Fを特定するために用いる補助力特定マップとして内側補助力特定マップを選択し、横偏差ε‘が所定の長さλより大きい場合は、ハンドル補助力Fを特定するために用いる補助力特定マップとして外側補助力特定マップを選択してもよい。
上記各実施形態では、第1〜第4カメラ26a〜26dを搭載して、車両1の周辺情報を取得する場合について説明したが、周辺情報を取得する手段として、ステレオカメラを用いてもよいし、ミリ波レーダ、レーザレーダ、UWB(Ultra Wide Band)レーダ等の各種レーダや、ソナーを用いてもよい。また、道路と車両との間の通信である路車間通信や、他車との間の通信による車車間通信によって、他車や障害物の位置情報を取得してもよい。
例えば、レーザレーダは、レーザビームを車両1の周囲へ照査し、その反射の有無や反射を検出した方向およびレーザビームを照射してから反射を検出するまでの時間に基づいて、車両1の周辺にある道路や物体の形状等を把握するものである。走行制御装置100は、このレーザレーダを用いることにより、レーザレーダにより照射したレーザビームの反射の検出結果から、車両1の周辺に存在する物体等の形状をマップ化し、パターンマッチング等により、現在走行中の道路の形状や、現在走行中の道路に接続された道路の有無、障害物の存在を把握し、それを周辺情報として、危険ポテンシャルを生成し、また、推奨軌道を生成するように構成してもよい。
上記各実施形態では、操舵装置5がラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ボールナット式等の他のステアリングギヤ機構を採用することは当然可能である。
<効果>
技術的思想1記載の車両によれば、設定手段により設定された走行経路に沿って車両を走行させる場合に操舵手段によって車両に付与すべき目標操舵角を、判断手段によって判断する。また、操舵手段により車両に実際に付与されている操舵角を検出手段により検出する。そして、その検出手段により検出された車両に実際に付与されている操舵角と判断手段により判断された目標操舵角との差の絶対値が大きいほど、操舵手段に対し、付与手段によって、車両に付与される操舵角が目標操舵角へ近づく方向へ操舵の補助力が大きく付与される。これにより、搭乗者は、操舵手段を操作しなくても、操舵手段に対して付与される操舵の補助力の方向および大きさから、目標操舵角へと近づけるために操舵手段を操作すべき方向やその操舵手段の操作量を容易に把握できる。よって、搭乗者は、把握した操舵手段を操作すべき方向やその操舵手段の操作量に基づいて、操舵手段を操舵して車両に目標操舵角を付与できるので、操舵支援を行いながら、走行経路に沿って滑らかに車両を走行させることができるという効果がある。
なお、技術的思想4記載の車両制御プログラムにおいても、その車両制御プログラムを車両に設けたコンピュータにて実行させることによって、技術的思想1記載の車両と同様の作用効果を奏する。
ここで、技術的思想1記載の「設定手段」及び技術的思想4記載の「設定ステップ」は、車両の外部に設けられた装置(サーバや携帯端末等)から、その装置にて生成された走行経路を取得して設定するものであってもよいし、自車両内で生成した走行経路を設定するものであってもよい。
技術的思想2記載の車両によれば、周辺状況取得手段により取得した車両の周辺状況から、検出手段により検出された車両に実際に付与されている操舵角にて車両を走行させ続けた場合の危険度合を危険度合案出手段により算出する。そして、付与手段は、危険度合算出手段により算出された危険度合が高い程、操舵手段に対して付与される操舵の補助力を大きくするように構成されている。これにより、車両に実際に付与されている操舵角にて車両を走行させ続けると危険な場合は、車両に付与される操舵角が目標操舵角へ近づく方向へ付与される操舵の補助力がより大きく付与されるので、搭乗者に対して、その危険を回避するように操舵手段の操作を仕向けることができる。よって、技術的思想1記載の車両の奏する効果に加え、車両をより安全に走行させるように、操舵支援を行うことができるという効果がある。
技術的思想3記載の車両によれば、車両の車両位置と設定手段により設定された走行経路との離れ度合を離れ度合算出手段により算出する。そして、付与手段は、離れ度合算出手段により算出された離れ度合が所定の度合よりも大きい場合には、検出手段により検出された車両に付与されている操舵角と判断手段により判断された目標操舵角との差の絶対値が小さいほど、操舵手段に対し、車両に付与される操舵角が目標操舵角へ近づく方向へ操舵の補助力を大きく付与するように構成されている。車両の車両位置が走行経路と大きく離れており、しかも、車両に実際に付与されている操舵角も目標操舵角と大きく異なっている場合は、搭乗者は、自分の意思によって走行経路に因らずに車両を走行させていると考えられる。よって、この場合は、操舵手段に対して付与される上記の操舵の補助力を小さくすることで、搭乗者の意思に従って操舵手段が操舵され易くすることができる。一方、車両の車両位置が走行経路と大きく離れていても、車両に実際に付与されている操舵角が目標操舵角と近い場合は、走行経路に沿って車両を走行させたいという意思が搭乗者にあると考えられる。よって、この場合は、操舵手段に対して付与される上記の操舵の補助力を大きくすることで、搭乗者の意思に従って走行経路に沿った走行が行われるように操舵手段が操舵され易くすることができる。従って、技術的思想3記載の車両によれば、技術的思想1又は2に記載の車両の奏する効果に加え、搭乗者の意思を強く反映させながら、操舵支援を行うことができるという効果がある。
<その他>
<手段>
技術的思想1記載の車両は、車両の走行経路を設定する設定手段と、前記車両に操舵角を付与する操舵手段と、前記設定手段により設定された走行経路に沿って車両を走行させる場合に前記操舵手段によって前記車両に付与すべき目標操舵角を判断する判断手段と、前記操舵手段により前記車両に付与されている操舵角を検出する検出手段と、その検出手段により検出された前記車両に付与されている操舵角と前記判断手段により判断された前記目標操舵角との差の絶対値が大きいほど、前記操舵手段に対し、前記車両に付与される操舵角が前記目標操舵角へ近づく方向へ操舵の補助力を大きく付与する付与手段と、を備える。
技術的思想2の車両は、技術的思想1記載の車両において、前記車両の周辺状況を取得する周辺状況取得手段と、その周辺状況取得手段により取得された前記周辺状況から、前記検出手段により検出された前記車両に付与されている操舵角にて前記車両を走行させ続けた場合の危険度合を算出する危険度合算出手段と、を備え、前記付与手段は、前記危険度合算出手段により算出された危険度合が高い程、前記操舵手段に対して付与される前記操舵の補助力を大きくする。
技術的思想3の車両は、技術的思想1又は2に記載の車両において、前記車両の車両位置と前記設定手段により設定された前記走行経路との離れ度合を算出する離れ度合算出手段を備え、前記付与手段は、前記離れ度合算出手段により算出された離れ度合が所定の度合よりも大きい場合には、前記検出手段により検出された前記車両に付与されている操舵角と前記判断手段により判断された前記目標操舵角との差の絶対値が小さいほど、前記操舵手段に対し、前記車両に付与される操舵角が前記目標操舵角へ近づく方向へ操舵の補助力を大きく付与する。
技術的思想4の車両制御プログラムは、車両に操舵角を付与する操舵手段を備えた車両のコンピュータにより実行されるものであって、前記コンピュータに、車両の走行経路を設定する設定ステップと、その設定ステップにより設定された走行経路に沿って車両を走行させる場合に前記操舵手段によって前記車両に付与すべき目標操舵角を判断する判断ステップと、前記操舵手段により前記車両に付与されている操舵角を検出する検出ステップと、その検出ステップにより検出された前記車両に付与されている操舵角と前記判断ステップにより判断された前記目標操舵角との差の絶対値が大きいほど、前記操舵手段に対し、前記車両に付与される操舵角が前記目標操舵角へ近づく方向へ操舵の補助力を大きく付与する付与ステップと、を実行させる。