JP5505463B2 - 降下煤塵の非定常発塵源の探索方法 - Google Patents

降下煤塵の非定常発塵源の探索方法 Download PDF

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Description

本発明は、大気中における降下煤塵を管理するための計測情報を解析する技術に関する。
原子力発電所が事故により破壊した場合、複数の放射性発塵施設から周囲に拡散する放射性降下煤塵の挙動を把握することは、近年の重要な工業的課題である。また、降下煤塵は、農業、林業等、各種の産業からも発生する。砂丘等の自然界から発生する降下煤塵も無視できない。降下煤塵の発生源となりうる発塵源が多数存在する際に、降下煤塵評価地点における降下煤塵量の測定値に与える影響として、どの発塵源の寄与度が大きいかを解析する技術は、これら降下煤塵を管理し、対策を講ずる上で重要である。
この様な観点から、降下煤塵評価地点において計測された降下煤塵量から、複数の発生源での発生量の影響を評価する技術、即ち、主要な発生源を探索する技術として、特許文献1、2、3、4に記載の技術が開示されている。
特許文献1には、大気条件や気象データ、大気汚染物質拡散の評価範囲の地形データ、等の入力条件からシミュレーションに適したモデルを選定し、解析精度向上のために、この入力条件に応じたデータベース部の測定値データから調整入力パラメータを選定し、前記モデルによる解析条件と、前記調整入力パラメータとから入力データを作成してシミュレーションをし、その結果と放出源測定値データとの偏差を演算し、その偏差が最小となるデータに対応して放出源を推定する技術が開示されている。
また、特許文献2には、大気観測局において前もって測定された大気中の化学物質濃度が異常高濃度を示さない期間に排出源から放出される平常時排出量を入力する入力部と、大気中の化学物質濃度が異常高濃度を示した期間に排出源から放出された化学物質の異常時排出量を出力する出力部とを具備し、排出源の(平常時排出量−異常時排出量)の2乗の和が最小となる解を求めることにより、大気中の化学物質の異常高濃度の原因となる排出源を特定する技術が開示されている。
また、特許文献3には、多数の粉塵発生箇所a、b、c、d、eの周辺の少なくとも2以上の任意な測定箇所A、B、Cで、適当な期間にわたり、飛散粉塵量および風向き方向を所定時間ピッチで測定する第(1)工程と、第(1)工程で得られた飛散粉塵量および風向き方向から、測定箇所別に、風向き方向毎の平均飛散粉塵量を算出する第(2)工程と、上記複数の粉塵発生箇所a〜eおよび上記測定箇所A〜Cを含む地図上に、各測定箇所を中心として平均飛散粉塵量が多い複数の風向き方向を作図する第(3)工程と、第(3)工程で作図した各測定箇所からの風向き方向が交わる交点が位置する粉塵発生箇所を、又は各測定箇所からの風向き方向がほぼ一致するときはその風向き方向に存在する地図上の粉塵発生箇所を、飛散粉塵の発生源と特定する第(4)工程とを含む技術が開示されている。
特許文献4には、複数項目の大気の汚染状況を測定する一つ又は複数の可搬自立型マルチセンシングユニットを無線又は有線のネットワーク経由で遠隔制御して複数項目の大気の汚染状況を測定し、その測定データを収集し表示する技術が開示されている。
また、発生源での煤塵の発生量から評価地点での降下煤塵の濃度を評価する際には、通常、プルーム式が用いられる。特許文献5には、地表面での吸着のない、点発生源からのガスの大気拡散モデルとして、以下の式(1)の様な標準的なプルーム式が記載されている。
C(x,y,z)=(QP/2πσyσzWS)exp[−y2/2σy 2
×{exp[−(He−z)2/2σz 2
+exp[−(He+z)2/2σz 2]} ・・・(1)
ここで、式(1)の記号の意味は以下の通りである。
x,y,z:評価地点の3次元直交座標(ガス発生源を原点とする) [m]
x:水平面上で、プルーム中心軸がのびる方向に対応する座標値
y:水平面上で、プルーム中心軸がのびる方向に垂直な方向(以下の説明では、この方向を必要に応じて「水平方向」と称する。)の座標値
z:鉛直方向(以下の説明では、この方向を必要に応じて「鉛直方向」と称する。)の座標値
C:評価点(x,y,z)でのガス濃度 [kg/m3]または[m3/m3
QP:ガス発生量 [kg/s]または[m3/s]
WS:風速 [m/s]
He:ガス発生源の地表面からの高さ [m]
σy、σz:ガスプルーム拡散幅(それぞれ、水平方向、鉛直方向) [m]
特許文献5では、ガスプルーム拡散幅σy、σzを、ガス流れに対して垂直方向のガス濃度分布の標準偏差と定義している。
非特許文献1および2には、地表面で吸着のあるガスおよび落下速度の小さい微粒子(SPM)に関するプルーム式として、次の式(2)が記載されている(以下、全ての式中の単位は、SI単位である)。
C(x,y,z)=(QP/2πσyσzWS)exp[−y2/2σy 2
×{exp[−(He−z−Vsx/WS)2/2σz 2
+α・exp[−(He+z−Vsx/WS)2/2σz 2]} ・・・(2)
ここで、式(2)のαは、以下の式(3)で表される。
α=1−2Vd/{Vs+Vd+(WS・He−Vs)/σz・(dσz/dx)} ・・・(3)
式(3)の記号の意味は以下の通りである。
d:沈着速度 [m/s]
s:落下速度(SPMの場合。ガスの場合は0) [m/s]
ここで、式(2)における「αの乗じられた項」は、ガス又はSPMの鉛直方向の分布の形状を地表面において対称に反転させることにより、地表面の上方でガスやSPMが吸着されずに滞留する効果を表現したものであり、ガスやSPMの地表への吸着の効果は、αの大小によって調整される。
また、ここで、σy、σzは、プルーム中心軸に垂直方向の「プルーム拡散幅」を表すための特性値であり、プルーム中心軸に垂直な方向にガウス分布の濃度分布を仮定した際に濃度が標準偏差となる点とプルーム中心軸との間の距離が用いられる。
また、プルーム式は、式(1)に示されたものに限定されるわけではない。例えば、非特許文献3には、濃度の二重ガウス分布を仮定し、プルーム中心軸に曲線を用いたプルーム式が開示されている。
これらのプルーム式に共通する特徴は、第1に、特定濃度評価地点の濃度値を、評価地点と発生源の座標値、発生源での発生量、風向・風速等の気象条件等の関数式で表現して、結果を一意に与えることである。第2に、濃度算出にあたって、中心軸を仮定し、中心軸の周囲に「プルーム拡散幅」σy、σzで特徴づけられる高濃度領域を形成する「プルーム」を設定することである。他の手法とプルーム式との比較を行うと、複数の連立物理方程式を数値的に解いて特定濃度評価地点の濃度値を算出する数値解析手法は、プルームを仮定することなく濃度算出を行う点や算出結果が一意であるとは限らない点から、プルーム式とは異なる。また、特定濃度評価地点の濃度値を、評価地点と発生源の座標値、発生源での発生量、風向・風速等の気象条件等を単に変数化して求めた重回帰式も、プルームを仮定することがないので、プルーム式ではない。
さらに、評価地点において降下煤塵量を10分程度の短時間の周期で測定する技術として、特許文献6には、上方に開口したろうと状の粒子採取口と、計測装置内を循環する気流路と、気流路の途中に配置された慣性分級器とを用いて、粗大粒子と微小粒子について個別に連続質量測定を行い、粗大粒子の質量の測定値から大気中の降下粉塵の降下速度の推移を算出するβ線吸収式質量測定器を用いた連続式降下粉塵計測装置が開示されている。
しかしながら、上述した従来技術においては、以下の問題点があった。
即ち、第1の問題点として、発生源を探索する対象の発生物が降下煤塵ではないことが挙げられる。
例えば、特許文献1、2、3、並びに4の技術においては、対象がガスである。また、特許文献3の技術には、対象にSPMが含められているに過ぎない。SPMは、降下煤塵に比べて遥かに小さな粒子であり(定義上、SPMは直径10μm未満の粒子である)、その大気中での拡散挙動は、微小な粒子沈降を生じることを除けば実質的にガスの挙動に等しい。
一方、降下煤塵は、SPMに比べて遥かに大きな煤塵粒子であり(降下煤塵は直径10μm以上の粒子である)、その落下速度が極めて大きいため、降下煤塵の大気中での拡散には、粒子の降下速度の極めて大きな影響を受ける。よって、降下煤塵の拡散の挙動はガスとは大きく異なる。
また、本願が対象とする降下煤塵量とは、地表面への降下煤塵の沈着量のことである。特許文献1〜4の技術では降下煤塵評価地点におけるガスおよびSPM濃度を観測および管理対象としている。このため、地表面へのガスおよびSPMの沈着速度を直接知ることはできない。確かに、上記式(2)には、沈着速度Vdが記載されているので、沈着速度Vdを正確に与えることができれば、降下煤塵評価地点上でのガスおよびSPM濃度から、地表面での沈着量に換算することが可能である。
しかしながら、非特許文献1に記載されているように、SPMの沈着速度Vdは、地表面の状態や大気乱流の影響を受けて大きく変動する。また、ガスの沈着速度Vdを一般的に与える手法は開発されていない。従って、沈着速度Vdの値を正確に与えることは実際には極めて困難であり、特許文献1〜4の技術で降下煤塵を対象とすることは、少なくとも定量的には困難である。
第2の問題点として、降下煤塵を対象とした発塵源の探索手法は、従来、存在しなかった。従来の発生源の探索手法においては、特許文献3に代表されるように、水平面内での発生源の探索を前提としているため、大きな粒子落下速度Vsを有し、かつ、地表面での沈着量を問題とする「降下煤塵の発生源」を三次元的に取り扱うことが困難であったからである。特に、特許文献3に示されるような、降下煤塵評価地点から風上方向に発生源探索線を伸長する手法の場合、式(2)における地表面反射項(α・exp[−(He+z−Vsx/WS)2/2σz 2])の影響を定量的、かつ、一般的に取り扱うことが困難なことから、前記発生源探索線をプルーム式と関連付ける有効な手法は従来、提案されていない。
第3の問題点として、上述した従来技術においては、発生源の探索を行う際に発生源の位置およびそこでの概略の発生量を予め仮定する手順が必須であることが挙げられる。
例えば、特許文献1および2の技術においては、まず、予め想定される全ての発生源および全ての降下煤塵評価地点について、任意の発生源での発生量と任意の降下煤塵評価地点での濃度の関係を、前記プルーム式等の気象条件の関数として予測する。次に、全ての降下煤塵評価地点における濃度の実測値と、前記濃度の予測値との差が最小となるように、前記関数のパラメータ(σyやQP等)を最適化手法により調整する。従って、少なくとも全ての発生源の位置を予め与える必要がある。また、最適化手法の計算過程の妥当性を確保するためには、各発生源での概略の発生量も初期条件として予め与えることが一般には望ましい。なぜならば、最適化問題においては、実情から極端に解離した初期条件を与えた場合、実情とは大きく異なる局所安定点に解の収束する場合があるからである。
図8は、従来法(特許文献3)における発塵源の探索方法を模式的に示す図である。
特許文献3の技術においては、図8に示すように、粉塵(SPM)発生箇所a、b、c、d、e等を予め仮定した上で、その周辺の複数の降下煤塵評価地点i1、i2、i3等でのSPMの濃度を長期間、測定し、この期間内で各降下煤塵評価地点で風向別のSPMの濃度平均値1(降下煤塵評価地点i1、i2、i3を囲む多角形を参照)が最も高い風向の風上方向に、降下煤塵評価地点i1、i2、i3からそれぞれ水平面(地表面)内で発生源探索線2、3、4を伸長し、これら発生源探索線の互いに交差した交点6、7、8のうち、前記粉塵(SPM)の発生箇所a、b、c、d、eのいずれかに合致した地点を、特に煤塵(SPM)の発生量の大きい発生箇所と判定している。尚、以下の説明では、降下煤塵評価地点を降下煤塵管理地点と称することがあるが、これらは同じ意味を有する。
また、特許文献4の技術においては、想定される発生源の近傍に計測機を設けることが前提であるので、発生源は、予め既知でなければならない。
しかしながら、多数の発生源が存在する場合、これら全ての発生源の位置と概略の発生量とを予め全て把握することは、実際には困難であり、もし、可能だとしても、多大な資源を必要とするため好適ではない。また、原子力発電所の事故地のように、そもそも発塵源に近寄ることのできない場合もある。従って、従来技術は、発生源の数が極めて少数であるか、あるいは、発生源の発生量を十分正確に把握し得る環境下でしか有効に適用することはできないという問題がある。
第4の問題点として、従来技術において対象とする発生源は、基本的に、発生量が時間的に変動しない定常発生源であるか、または、発生量が時間平均値の近傍でわずかに時間変動するだけの準定常発塵源であることが挙げられる。
例えば、特許文献1および2においては、最適化手法を適用するため、一般的には、降下煤塵の評価地点数の数を、適用されるプルーム式等の関数の中で調整可能なパラメータの数よりも、多く設定しなければならない。もし、調整可能なパラメータの数が実質的に降下煤塵評価地点の数よりも多ければ、得られる解は、一般に一意に定まらないので、手法として破綻するからである。
また、多数の発生源が存在する場合、経済性の観点から降下煤塵評価地点の数を発生源の数よりも少なく設定する場合が多い。このような場合でも、発生源を定常発生源に限定すれば(即ち、発生量QPを調整可能なパラメータとはしなければ)、多数の異なる時刻での降下煤塵評価地点での測定値を用いることにより、発生源の数以上の測定データ数を確保することができ、最適化手法を適用することができる。一方、発生量QPが非定常的に大きく変動する、非定常発生源に対して特許文献1、2の技術を適用する際には、発生量QPを調整可能なパラメータとせざるをえないため、多数の発生源を探索の対象とする場合には、発生源の数を超える極めて多数の降下煤塵評価地点を設ける必要があり、経済性の観点から現実的でない。
また、特許文献3の技術においては、2カ月以上の期間内での離散的に採取された降下煤塵評価地点での濃度データを平均化して発生源の探索を行う。従って、発生源は、定常発生源に限定される。
また、特許文献4の技術においては、想定される発生源の近傍に降下煤塵評価地点を配置するので、原理的には非定常発生源を探索することができる。しかし、この技術においては、複数の発生源からのガスが特定の降下煤塵評価地点に同時に到達する場合に、どの発生源が卓越するのかを判断する方法が開示されておらず、また、想定される全ての発生
源の近傍に降下煤塵評価地点を設置するのかも記載されていない。従って、この技術で非
定常発塵源を探索することが可能なのは、発生源の間の距離が互いに影響を及ぼさない程度に遠い場合に限られる。即ち、この技術は、実質的に発生源と降下煤塵評価地点とが一対一に特定できる対象にしか適用できない。
しかしながら、現実の発生源では発生量が一般に大きく、かつ、時間変動するので、定常発生源や、発生源と降下煤塵評価地点とが一対一に特定できる発生源のみを対象とする従来技術では、現実の発生源の探索に対して十分に適用できない問題があった。
この他、煤塵が放射性を帯びている場合には、特許文献7から9のような手法で煤塵のα線、β線、またはγ線等の放射線量を測定することができる。
特開2003−255055号公報 特開2005−292041号公報 特開2004−170112号公報 特開2003−281671号公報 特開2007−122365号公報 特開2008−224332号公報 特開平8−327741号公報 特開平7−35900号公報 特開2009−63510号公報
浮遊状粒子物質対策検討会(環境庁大気保全局大気規制課監修):浮遊粒子状物質汚染予測マニュアル、東洋館出版、1997 岡本眞一:大気環境予測講義、ぎょうせい、2001 United States Environment protection agency: EPA-454/R-03-004, 2004
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、発塵量が非定常的に変動する降下煤塵の発塵源を、発塵源の周辺での降下煤塵の測定値をもとに特定することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者の研究の結果、以下の解決方法を発明するに至った。
第1発明は、時間周期Δtdごとのit番目の時刻Td(it)において、互いに異なる2つ以上の定点の降下煤塵評価地点における、時刻Td(it-1)から時刻Td(it)までの期間であるTd(it)期間で降下煤塵を捕集してその平均的な降下煤塵量mを連続的にそれぞれ計測して得られた測定値を用いて算出される代表降下煤塵量M(iM)と、
前記降下煤塵評価地点のそれぞれの近傍において、時間周期Δtdよりも長くない時間周期Δtwdにて連続的に計測された風向測定値および風速測定値を基に算出された、前記時刻Td(it-1)から時刻Td(it)までの代表風向WDおよび代表風速WSと、
前記Td(it)期間に捕集された降下煤塵を分析して算出される個々の降下煤塵粒子の粒子落下速度Vsと、
を用いて、発塵量が非定常に変動する発塵源の位置を特定するための非定常発塵源の探索方法であって、
前記個々の降下煤塵粒子について、当該降下煤塵粒子に対応する前記粒子落下速度Vsを、所与のしきい値である粒子落下速度上限値Vsmaxおよび粒子落下速度下限値Vsminと比較することによって、2つ以上設定される等価粒径区分のいずれかに分類するとともに、任意の前記等価粒径区分jに分類された降下煤塵の積算量を用いて当該等価粒径区分に対する降下煤塵量mjを算出し、
任意の降下煤塵評価地点iMおよび任意の等価粒径区分jについて、前記Td(it)期間における前記任意の等価粒径区分jの降下煤塵の非定常発塵源探索領域をγとして、
当該降下煤塵評価地点iMを始点として、時刻Td(it)における前記代表風向WDの風上方向に、前記非定常発塵源探索領域γの直線状の中心軸の水平成分を設定して、
プルーム式における発塵源からの距離L0と前記時間周期Δtdとの関数である水平プルーム拡散幅σy[L0、Δtd]と、前記非定常発塵源探索領域γの中心軸上での前記始点からの距離Ldとを用いて、非定常発塵源探索領域γの水平成分として、前記非定常降下煤塵探索領域γの中心軸に直交するように、当該中心軸の両側の水平方向に、当該中心軸からプルーム拡散幅σy[Ld、Δtd]までの領域を、前記非定常発塵源探索領域γの水平成分として設定するとともに、
前記始点から、(当該等価粒径区分jにおける粒子落下速度下限値)/(前記代表風速WD)に基づく角度を勾配として、前記代表風向WDの風上方向に向けて上昇する、前記非定常発塵源探索領域の下限線と、前記始点から、(当該等価粒径区分における粒子落下速度上限値)/(前記代表風速WS)に基づく角度を勾配として、前記代表風向の風上方向に向けて上昇する、前記非定常発塵源探索領域上限線との間にはさまれた領域を、前記非定常発塵源探索領域γの鉛直成分として設定し、
前記非定常発塵源探索領域γ内の任意の点pにおいて、前記降下煤塵評価地点iMにおける前記等価粒径区分jについての降下煤塵量mkと、前記非定常発塵源探索領域γの断面の断面積であって、前記点pを通り前記非定常発塵源探索領域γの中心軸に垂直な方向の断面の断面積である探索領域断面積Spと、に比例する推定発塵量E(p,iM)を算出し、
前記推定発塵量E(p,iM)を用いて発塵源を特定する工程を含むことを特徴とする、降下煤塵の非定常発塵源の探索方法である。
第2発明は、前記Td(it)期間における降下煤塵の非定常発塵源の探索方法であり、 前記代表風向WD、代表風速WSは、それぞれ、前記Td(it)期間における風向、風速の測定値の平均値であり、
任意の前記降下煤塵評価地点iMにおける前記代表降下煤塵量M(iM)は、前記Td(it)期間における当該降下煤塵評価地点iMでの降下煤塵量の測定値mから得られるものであり、
特定の前記等価粒径区分jにおいて、互いに異なる特定の前記降下煤塵評価地点iM1、iM2について、前記Td(it)期間における降下煤塵の非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)をそれぞれ設定し、
前記非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)の、空間上で共通する共通領域内で指定される前記点pにおいて算出される前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)の比が所定の上下限値の範囲内である場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分jに関する発塵源と判定し、これ以外の場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分に関する発塵源ではないと判定するとともに、前記点pにおける推定発塵量E(p,iM)を、前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)を用いて算出することを特徴とする、第1発明に記載の降下煤塵の非定常発塵源の探索方法である。
第3発明は、連続する2つ以上の前記時刻Td(it)を含む時間周期Δtgごとの、k番目の時刻Tg(k)を設けて、Tg(k−1)からTg(k)の評価期間であるTg(k)期間を設定し、
前記Td(it)期間における風向測定値、風速測定値を、所与のしきい値を用いてそれぞれ風向区分、風速区分に分類するとともに、各風向区分、各風速区分を代表する、区分風向WDc、区分風速WScを算出し、
任意の降下煤塵評価地点iMにおいて、前記Tg(k)期間における最大の降下煤塵量mを測定したTd(it)期間に対応する前記降下煤塵量の測定値、前記区分風向WDc、前記区分風速WScを、当該Tg(k)期間および当該降下煤塵評価地点iMにおける前記代表降下煤塵量M(iM)、前記代表風向WD(iM)、前記代表風速WS(iM)としてそれぞれ設定し、
2つ以上の前記降下煤塵評価地点を設け、特定の互いに異なる2つの前記非定常降下煤塵評価地点iM1,iM2について、前記降下煤塵の非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)をそれぞれ設定し、
前記非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)の、空間上で共通する共通領域内で指定される前記点pにおいて算出される前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)の比が所定の上下限値の範囲内である場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分に関する発塵源と判定し、これ以外の場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分に関する発塵源ではないと判定するとともに、前記点pにおける推定発塵量E(p,iM)を、前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)を用いて算出することを特徴とする、第1発明に記載の、降下煤塵の非定常発塵源の探索方法である。
第4発明は、前記捕集された降下煤塵の放射線量を測定し、所定のしきい値以上の降下煤塵粒子または降下煤塵粒子群を対象として放射性の発塵源を特定することを特徴とする、第1発明から第3発明のいずれかに記載の非定常発塵源の探索方法である。
第5発明は、前記プルーム拡散幅σyおよびσzと、プルーム中心軸上の発生源からの距離xと、降下煤塵発生量QPと、前記代表風速WSと、定数Bと、前記プルーム拡散幅σyおよびσzを用いて定義されるプルーム範囲と、を用いて、プルーム中心軸上の発生源からの距離xでの煤塵濃度C(x)を表現する以下の式(A)及び(B)を、前記プルーム式として用いることを特徴とする、第1発明から第4発明のいずれかに記載の降下煤塵の非定常発塵源位置の探索方法。
C(x)=B(QP/2πσyσzWS) (プルーム範囲内) ・・・(A)
C(x)=0 (プルーム範囲外) ・・・(B)
ここで、(A)式および(B)式の単位は、全てSI単位であり、σzは、鉛直面内において、発生源を起点とするプルームの上端を[当該粒径区分における粒子落下速度下限値]/[代表風速]に基づいて定められる勾配線とするとともに、当該プルームの下端を[当該粒径区分における粒子落下速度上限値]/[代表風速]に基づいて定められる勾配線として定義されるプルーム範囲の、前記プルームの中心軸に垂直な方向の幅とする。
本発明によって、少数の降下煤塵評価地点での降下煤塵の計測によって、非定常発塵源を含む発塵源の探索を効率的、かつ、正確に実施することが可能になる。
水平面内に投影したプルームの一例を示す図である。 鉛直面内に投影したプルームの一例を示す図である。 発塵源探索装置の処理の第1の例を説明するフローチャートである。 発塵源探索装置の処理の第2の例を説明するフローチャートである。 発塵源の探索方法の概要の一例を説明する図である。 発塵源探索装置の処理の第3の例を説明するフローチャートである。 発塵源を探索する方法を説明する図である。 発塵源を探索する従来の方法を説明する図である。
まず、本発明の実施形態の特徴について説明する。
第1の特徴は、降下煤塵評価地点における降下煤塵を直接、測定することによって降下煤塵の発塵源を探索することができる点である。
第2の特徴は、降下煤塵の発塵源の探索にあたって、降下煤塵評価地点から風上方向に伸長させる発塵源探索領域を、プルーム式と関連付けることによって、発塵源候補における発塵量の情報を得ることができる点である。
具体的な発塵源探索領域の設定方法は、以下のとおりである。上述の様に、従来技術においては、式(2)における地表面反射項(α・exp[−(He+z−Vsx/WS)2/2σz 2])の取り扱いが困難であった。この降下煤塵評価地点から風上方向に伸長させる発塵源探索線を、プルーム式と関連付けることは困難であると考えられていた。しかし、本発明者らの調査の結果、この地表面反射項が問題となるのは、従来技術が主にガスやSPMを対象としていたためであることをつきとめた。降下煤塵の場合には、粒子の落下速度が大きいために、沈着速度Vd≒落下速度Vsとなる。従って、地表面での反射の影響は小さく、α=0とみなすことができる。よって、降下煤塵に対する大気拡散式(プルーム式)は、式(2)にα=0を代入した次の式(4)のようになる。
C(x,y,z)=(QP/2πσyσzWS)exp[−y2/2σy 2
×exp[−(He−z−Vsx/WS)2/2σz 2] ・・・(4)
ここで、以下の式(5)により座標変換を行うと、式(4)は、以下の式(6)のようになる。
Z=z+Vsx/WS−He ・・・(5)
C(x,y,Z)=(QP/2πσyσzWS)
×exp[−y2/2σy 2]exp[−Z2/2σz 2] ・・・(6)
ここで、式(5)によるzからZへの座標変換は、鉛直面内で発生源(発塵源)を原点とし、風下方向に、tan-1(Vs(粒子落下速度)/WS(風速))の俯角で、煤塵プルームの中心軸を設定し、この中心軸をZ軸として濃度を定義することに対応する。
プルーム拡散幅σy、σzは、それぞれy方向、z方向(通常、Vs≪WSであり、このときz方向は、Z方向にほぼ等しいとみなせる)での濃度分布の標準偏差である。多くの場合、地表面での反射の影響がなければ、y方向及びz方向の濃度分布を正規分布とみなすことができる。このとき、y=σyにおける濃度値は、濃度最大値の60%であるのに対し、y=2σyにおける濃度値は、濃度最大値の13%に過ぎない。即ち、y>σyの領域において、濃度は急激に低下する。そこで、本実施形態では、プルーム式として、式(7a)、式(7b)を用いることにした。
C(x)=B(QP/2πσyσzWS) (プルーム範囲内) ・・・(7a)
C(x)=0 (プルーム範囲外) ・・・(7b)
ここで、式(7a)の記号の意味は以下の通りである。
B:比例定数
プルーム範囲内: σy≧y≧−σy かつ σz≧Z≧−σz
ここで、プルーム範囲内とは、式(4)のように、プルームの中心軸から、中心軸に対して垂直な方向に、プルーム拡散幅よりも中心軸側の領域を意味する。プルーム拡散幅の水平成分σyには、濃度分布としてガウス分布を仮定した場合の濃度の標準偏差の値を用
いることができる。このプルーム拡散幅の水平成分σyは、発塵源からの距離L0と時間周期Δtdとの関数である(σy[L0、Δtd])。プルーム拡散幅の水平成分σyは、時間周期Δtdを固定して(これを基準期間とする)数表化または図表化された値として、非特許文献1に記載される、Pasquill-GiffordによるものやBriggsによるもの等を用い、時間周期Δtdの影響を経験式で補正して求められる。時間周期Δtdの影響を経験式で補正する方法は、非特許文献2に示されるように、プルーム拡散幅の水平成分σyに、([実際に使用するΔtd]/[基準時間のΔtd])Pを乗じるものである。
本実施形態の対象である降下煤塵では、粒子の落下速度が粒子間でばらつくために、プルーム拡散幅の鉛直成分σzは、ガスの拡散時よりも著しく大きくなる。このため、ガス拡散のように、プルーム拡散幅の水平成分σyと同様のガウス分布を仮定した濃度分布を、プルーム拡散幅の鉛直成分σzに適用することはできない。
そこで、本実施形態では、まず、対象とする降下煤塵を粒径しきい値で区分して、それぞれの粒径区分で降下煤塵量を測定する。そして、検討対象とする特定の粒径区分の降下煤塵に対しては、一律に、発生源から発するプルームの上端を、[当該粒径区分における粒子の落下速度の下限値]/[代表風速]に基づいて定められる勾配線として鉛直面内に設定するとともに、プルームの下端を、[当該粒径区分における粒子の落下速度の上限値]/[代表風速]に基づいて定められる勾配線として鉛直面内に設定し、それらプルームの上端と下端との間の領域をプルーム範囲内とした。すなわち、プルーム幅の鉛直成分σzは、当該プルーム範囲の鉛直方向の長さ(プルームの中心軸に垂直な方向の幅)となる。
前記粒子の落下速度の下限値および上限値は、当該粒径区分における粒径しきい値の最小側および最大側における粒径での粒子の落下速度にそれぞれ対応する。本発明では、プルーム範囲内での粒子濃度の分布を問題にするわけではなく、プルーム範囲のみを指定できればよいので、このような取り扱いによって、正確に、かつ、簡易にプルーム拡散幅を特定することができる。
煤塵種と煤塵粒径とが与えられれば、粒子落下速度Vsが終末速度として決まるので、降下煤塵量M(x)は、濃度C(x)に、粒子落下速度Vsを乗じた次の式(8a)、式(8b)で表現できる。
M(x)=VsB(QP/2πσyσzWS) (プルーム範囲内) ・・・(8a)
M(x)=0 (プルーム範囲外) ・・・(8b)
式(8a)において、一定風速の条件では、プルーム範囲内の局所の降下煤塵量M(x)は、発塵量QPおよびプルーム拡散幅σy、σzのみによって決まる。また、プルーム拡散幅σyおよびσzの値は、特定の発塵源からの距離xおよび気象条件の関数として、例えば非特許文献1に記載されるPasquill-Giffordの式で表現できる。従って、一定の発塵条件、かつ、一定の気象条件のもとでは、特定の降下煤塵評価地点での降下煤塵量M(x)を、特定の発塵源からの距離xのみで表現することができる。
次に、式(8)を用いて、特定の降下煤塵評価地点における発塵源の存在範囲(発塵源探索領域)について考える。まず、発塵源探索領域の水平成分の設定方法について述べる。
図1は、特定の降下煤塵評価地点iMを原点とした水平面内での全体座標系x’,y’上に(降下煤塵評価地点iMと同一水平面(地表面)上に)、x’=L0の位置に存在する2つの発塵源io1、io2から発したプルームα(io1)、α(io2)を投影した図である。このとき、風向WDは、x’の方向である。プルームα(io1)、α(io2)の位置は、x’=0において、それぞれの中心軸9a、9bが地表面に一致するとともに、プルームの水平方向の端部(プルームα(io1)ではy’のマイナス側端部、プルームα(io2)ではy’のプラス側端部)が原点0を通過するように、プルームα(io1)、α(io2)が配置されている。このプルームα(io1)、α(io2)の配置が、x=L0に設定された発塵源io1、io2から、プルームα(io1)、α(io2)が降下煤塵評価地点iMに到達することのできる限界の位置である。即ち、発塵源io1の位置が、y’のプラス側の限界位置であり、発塵源io2の位置が、y’のマイナス側の限界位置である。
プルームα(io1)およびα(io2)のx’=0におけるプルーム拡散幅σyは、σy(L0)であるので、x’=L0における発塵源io1、io2の間の距離の半幅は、σy(L0)、即ち、プルームα(io1)およびα(io2)のx’=0におけるプルーム拡散幅に一致する。ここで、降下煤塵評価地点iMで降下煤塵が計測された際の発塵源io1、io2の位置を推定する場合、水平面内において、発塵源io1、io2の存在しうる範囲は、原点0と発塵源io1の点とを通過する線、および、原点0と発塵源io2の点とを通過する線に挟まれた領域γ(iM)(斜線で示している領域)となり、この領域γ(iM)が発塵源探索範囲である。
ところで、発塵源io1、io2を配置するx’=L0の値は任意であるので、任意のx’の位置において、降下煤塵評価地点iMに到達しうる発塵源io1、io2のy’方向の範囲の半幅は、常に、プルーム拡散幅σy(x’)となる。即ち、発塵源探索範囲γ(iM)のy’方向の半幅は、式(8)のプルーム式と同じ形になる。従って、水平面内での発塵源探索領域γ(iM)は、降下煤塵評価地点iMから代表風向WDの風上方向に伸長した中心軸10上の、降下煤塵評価地点iMからの距離のみの関数で表現される探索領域幅(プルーム拡散幅σy(x’))によって設定することができる。
次に、発塵源探索領域γ(iM)の鉛直成分の設定方法について述べる。
図2は、鉛直断面において、発塵源探索領域γ(iM)を設定する方法の一例を説明するイメージ図である。図2(a)は、鉛直断面における発塵源探索領域γ(iM)を、水平断面でのものと同様のプルーム拡散幅σzと、粒子落下の影響とを組み合わせて設定した様子の一例を示す図である。プルーム拡散幅σzに関する設定は、水平方向のプルーム拡散幅σyを鉛直方向のプルーム拡散幅σzに置き換える以外、基本的に水平断面における設定と同様である。
一方、粒子の落下の影響については、煤塵の粒径のばらつきの影響を評価することが特に重要である。即ち、一般に、捕集された降下煤塵サンプル中での粒径は広く分布し、同じ降下煤塵サンプルに含まれる個々の粒子の落下速度は数桁異なる。このため降下煤塵サンプルは、粒子の落下速度に最も影響を与える粒径によって区分されるべきである。ここで、粒径区分の区分数を極端に多く設定すると、1つの粒径区分あたりの降下煤塵サンプルの量が過小となり、この降下煤塵サンプルを用いた解析の誤差が大きくなるので、粒径区分の数は一般に少数に限定せざるをえない。非定常発塵源の解析には、短時間に得られた少量の降下煤塵サンプルのみが用いられるからである。
このため、粒径区分内での粒径差は通常、数倍程度となり、粒子の落下速度の差は、同一の粒径区分内でも依然として無視できない影響が残る。そこで、ある粒径区分内での最大粒子に相当するプルーム(α(io3))と最小粒子に相当するプルーム(α(io4))とをそれぞれ設定し、これらのプルームに挟まれた領域を発塵源探索領域γ(iM)とすることによって、当該粒径区分内での全ての粒子について、発塵源探索領域γ(iM)を特定することができる。
プルームα(io3)およびα(io4)においては、鉛直断面において、粒径区分内の最大粒子径におけるプルームα(io3)の中心軸12、および粒径区分内の最小粒子径におけるプルームα(io4)の中心軸13は、θ(=tan-1[Vs/WS])なる角度で傾斜する(図2の角度θmax、θminを参照)。ここでの粒子落下速度Vsは、粒径区分の範囲の最大粒径(α(io3)の場合)および最小粒径(α(io4)の場合)にそれぞれ対応する。このため、降下煤塵評価地点iMの風上方向の地点うち、発塵源io3、io4から降下煤塵評価地点iMまで到達しうる降下煤塵は、一部の領域で発塵したものに限られることになる。この様に、降下煤塵評価地点iMから発生源探索領域γ(iM)を風上方向に伸長する発塵源の探索手法において、風上方向の距離の範囲を制限することは、従来法には存在しなかった考え方であり、本手法は、発塵源探索領域γ(iM)を限定できる点で従来法に対して有利である。
さらに、本発明者らは、降下煤塵においては、プルーム拡散幅に比べて、粒径区分内での粒子落下速度のばらつきによる発塵源探索範囲γ(iM)の広がりの方が一般に大きいことを見出した。そこで、解析を単純化するため、図2(b)に示すように、発塵源探索範囲γ(iM)の鉛直成分を設定するにあたって、プルーム拡散幅を無視して、粒子落下速度Vsのばらつきの影響のみを考慮した発塵源探索領域γ(iM)とする、即ち、プルームα(io3)、α(io4)の中心軸12、13を発塵源探索領域γ(iM)の外縁とする改良を加えた。
最終的に、発塵源探索領域γ(iM)の前記水平成分および前記鉛直成分を三次元空間に統合して、三次元的な発塵源探索領域γ(iM)が設定される。
以上の様な、降下煤塵量のプルーム式を変形した発塵源探索範囲γ(iM)の単純、かつ、定量的な表現は、従来のガスやSPMを前提としたプルーム式では実現しえなかったものであり、本発明者らが降下煤塵の粒子落下速度Vsが比較的大きいことに着目した上で行った一連の洞察によって初めて可能になったものである。
尚、本発明は、式(7)のプルーム式を用いることに限定されるものではない。例えば、予め精密な測定を実施して地表面反射項の影響を正確に表現できる場合には、地表面反射項を残したプルーム式に基づいて式(7)での地表濃度分布を補正する項等を適宜、加えてもよい。
第3の特徴は、発塵源や発塵量を必ずしも予め仮定する必要の無い点である。現実の発塵源は、その位置や発塵量の全てが予め知られていない場合が多いので、今回提案する手法は現実に即した発塵源の探索を行える点で有利である。
第4の特徴は、非定常発塵源の特定を行うことができる点である。今回提案する発塵源の探索手法では、降下煤塵の量の測定値の取得周期ごと、または、降下煤塵の量の測定値の取得周期の連続する数周期分の時刻ごとに、その時間帯における主要な発塵源を特定することができる。従って、降下煤塵の量の測定値の取得周期の数周期分以上の時間スケールで変動する非定常発塵源であれば、これを把握することができる。また、非定常発塵源を特定する際に必要な降下煤塵評価地点の数は、潜在的な発塵源数よりも十分少なくてよい。
以下に、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
降下煤塵量計測手段(装置)によって時間周期Δtdごとに降下煤塵量の計測値が出力される。降下煤塵量の計測値が出力される時刻を時刻Td(it)とする。時刻Td(it-1)から時刻Td(it)までの時間(期間)をTd(it)期間と定義する。itは、降下煤塵の計測を開始した時刻を0とし、1ずつ増加する整数である。本実施形態は、個々のTd(it)期間における降下煤塵の発生源を特定するものであり、時間周期Δtd以上の時間スケール(即ち、発塵継続時間)を有する発塵源を探索の対象とする。
図3のフローチャートを参照しながら、特定の時刻において、Td(it)期間における降下煤塵の発生源を特定する際の本実施形態の発塵源探索装置の処理の一例を説明する。
発塵源探索装置は、例えば、CPU等の演算装置、メモリ、HDD、及び各種のインターフェースを備えた情報処理装置(例えば、市販のパーソナルコンピュータ(PC))を用いることにより実現される。例えば、図3のフローチャートは、C言語等のプログラミング言語を用いて実行可能なコンピュータプログラムに翻訳され、予め、HDD等に保存される。情報処理装置における発塵源探索処理の実行時には、CPU等の演算装置によって、HDD等に記憶された前記実行可能なコンピュータプログラムが読みだされて起動し、前記実行可能なコンピュータプログラムの指令に基づいた演算をCPU等の演算装置が順次実行することにより実現される。図3に示す発塵源探索処理の起動タイミングは、手入力で前記実行可能なコンピュータプログラムを起動してよく、また、定期的に自動的に起動するようにしてもよい。前述したように、本実施形態の発塵源探索装置は、ある時刻において、「Td(it)期間」における降下煤塵の発塵源を探索する。
発塵源探索装置において、評価地点・座標点等の位置情報、降下煤塵量・風向・風速等の測定値や煤塵種に関する分析値等の必要入力情報は、情報処理装置に接続されたキーボードやコンソール画面等を用いて、予め人力で入力することができる。入力された前記入力情報は、HDD等に保存され、発塵源探索処理実行の進行に応じて、適宜、読み出される。
発塵源探索装置において、算出された特定座標点に対する非定常発塵源判定結果および発塵量等の算出結果は、HDD等に保存されるとともに、コンソール画面等に表示することができる。
尚、上記の発塵源探索装置の処理の一部または全部を手計算等の他の手段に置き換えても何ら問題ない。
ステップS101において、発塵源探索装置は、特定のTd(it)期間、特定の降下煤塵量管理地点iM、並びに、特定の粒径区分jにおける代表風向WD、代表風速WS、並
びに、前記特定の降下煤塵量管理地点iMにおける代表降下煤塵量Mを設定する。
ここで、代表降下煤塵量Mは、例えば、特許文献6に記載される連続式降下煤塵計を用いて、時間周期Δtdを、例えば、10分として測定することができる。代表風向WDおよび代表風速WSは、例えば、市販のプロペラ式風向風速計を降下煤塵管理地点iMの近傍を設け、これを用いて、時間周期Δtdよりも長くない(短い)時間周期Δtwd(例えば、1秒周期)で連続的に得られた測定値を、当該Td(it)期間で平均化することで得られる。風向の測定の空間分解能として、例えば、1°間隔で風向を測定することができる。
ここで、「降下煤塵管理地点iMの近傍」とは、風向・風速が降下煤塵管理地点iMの上空における風向・風速と高い相関を示す範囲であればよく、例えば、降下煤塵管理地点iMから1km以内の水平距離とすることができる。地形が単調で風向・風速分布の少ない地域では、これ以上の水平距離を降下煤塵管理地点iMの近傍としてもよい。また、風向・風速の測定点の高さは、例えば、気象庁の推奨する測定高さである、地表面から10mを採用することができる。想定される発塵源の高さが10mよりも十分に高い場合には、例えば、地表面とこの発塵源高さの中間の高さを測定点の高さとしてもよい。
また、代表降下煤塵量Mの測定位置(サンプル採取位置)は、例えば、地上高度1.5mとすることができる。
また、代表降下煤塵量Mは、例えば、特許文献6に記載される連続式降下煤塵計を用い
て、時間周期Δtd(例えば、10分)として得られた降下煤塵の量の測定値mから、対象となる粒径区分の全捕集率に対する構成率Cを用いて、m×Cとして求めることができる。
前記捕集された個々の降下煤塵粒子を粒径区分に分類する方法は、例えば、まず、捕集された個々の降下煤塵粒子を顕微鏡等で観察・測定して、降下煤塵粒子の寸法や形状を記録する。次に、個々の降下煤塵粒子の寸法・形状・密度を用いて当該降下煤塵粒子の等価粒径を算出し、この等価粒径を、所定の粒径しきい値を用いて分類することができる。なお、一般に等価粒径が同一の粒子は、粒子落下速度Vsが同一になると考えられているので、等価粒径を用いた降下煤塵粒子の分類は、実質的に粒子落下速度Vsによる分類と等価である。すなわち、例えば、降下煤塵粒子に対応する前記粒子落下速度Vsを、所与のしきい値である粒子落下速度上限値Vsmaxおよび粒子落下速度下限値Vsminと比較することによって、降下煤塵粒子を2以上の等価粒径のいずれかに分類することができる。
等価粒径の算出には各種の手法が提案されている。例えば、個々の降下煤塵粒子の体積と等しい体積の球形の直径に、降下煤塵粒子の形状(アスペクト比等)に基づいて予め経験的に定められた補正係数を乗じて等価粒径を算出することができる。降下煤塵粒子の密度は、実測してもよいし、煤塵種が予め特定できている場合には文献値等を用いてもよい。等価粒径を用いて、捕集された全降下煤塵粒子を各粒径区分に分類した後、各粒径区分に含まれる個々の降下煤塵粒子の密度および体積を用いて算出された個々の降下煤塵粒子の質量を積算することにより、当該粒径区分における降下煤塵粒子の量(降下煤塵量)を求めることができる。さらに、全粒径区分において同様に求めた降下煤塵粒子の量を積算して全降下煤塵の質量を算出し、当該粒径区分の降下煤塵粒子の質量と全降下煤塵粒子の質量との比を前記構成率Cとして用いることができる。このようにすることで、当該粒径区分での降下煤塵粒子の質量を算出する際の計算誤差が相殺されるので、高精度に代表降下煤塵量Mを求めることができる。
発塵源探索装置は、発塵源の探索を実施しうる三次元領域のなかに、x、y、zなる直交座標系を設定し、図3のステップS102において、降下煤塵評価地点iMの水平面内の位置を、前記直交座標系の原点からのベクトルである降下煤塵評価地点ベクトルP(iM)として算出(設定)する。
次に、ステップS103において、発塵源探索装置は、降下煤塵評価地点iMに関する発塵源探索領域γ(iM)の水平成分を設定する。
具体的に説明すると、まず、発塵源探索装置は、前記三次元領域において、降下煤塵評価地点iMを始点とし、代表風向WD(即ち風上方向)方向に、発塵源探索領域γ(iM)の中心軸の直線状の水平成分を設定する。次に、発塵源探索装置は、発塵源探索領域γ(iM)の中心軸を含む水平面上において、当該中心軸の水平成分の両側に、当該中心軸からの距離として、当該中心軸上の点と降下煤塵評価地点iMとの間の距離の関数(式(1)を参照)であるプルーム拡散幅σyの距離を常に保つように、発塵源探索領域γ(iM)の水平方向の外縁を設定する。
次に、ステップS104において、発塵源探索装置は、降下煤塵評価地点iMに関する発塵源探索領域γ(iM)の鉛直成分を設定する。
具体的に説明すると、まず、発塵源探索装置は、前記三次元領域の鉛直面内であって、前記発塵源探索領域γ(iM)の中心軸の水平成分を含む鉛直面内において、降下煤塵評価地点iMを始点とし、当該粒径区分の最大粒径(例えば、粒径の上限しきい値)に対応する粒子落下速度Vsmaxと代表風速WSとを用いて算出される仰角θmax(=tan-1[Vsmax/WS])にて伸長される直線を、発塵源探索領域γ(iM)の上縁として設定する。同様に、発塵源探索装置は、当該粒径区分の最小粒径(例えば、粒径の下限しきい値)に対応する粒子落下速度Vsminと代表風速WSとを用いて算出される仰角θmin(=tan-1[Vsmin/WS])にて伸長される直線を、発塵源探索領域γ(iM)の下縁として設定する。
発塵源探索装置は、便宜的に、発塵源探索領域γ(iM)の中心軸の鉛直成分を定める。発塵源探索領域γ(iM)の中心軸の鉛直成分は、降下煤塵評価地点iMを始点とし、(θmax+θmin)/2なる仰角で鉛直面内に伸長される直線とする。尚、粒子落下速度Vsは、実測してもよいし、あるいは、等価粒径をストークスの終末速度の式に適用して、以下の式(9)で求めてもよい。
s={4gDp(ρp−ρf)/3ρfR1/2 ・・・(9)
ここで、式(9)の記号の意味は以下の通りである。
g: 重力加速度 [m/s2
p: 等価粒子径 [m]
ρp,ρf: 粒子、流体の密度 [kg/m3
R: 抵抗係数 [−]
次に、ステップS105において、発塵源探索装置は、ステップS103で設定された2本の外縁曲線と、ステップS104で設定された上縁直線および下縁直線とに囲まれた、矩形断面を有する三次元領域を発塵源探索領域γ(iM)として設定する。
以下の説明では、必要に応じて、以上のステップS101〜S105を纏めて、ステップS1001(探索領域設定)と称する。
次に、発塵源探索装置は、前記三次元領域中で特定点pでの発塵量を推定する。
まず、ステップS106において、発塵源探索装置は、前記発塵源探索領域γ(iM)に含まれる点pを特定点p(iM)として設定する。特定点p(iM)の設定方法は、任意であってよい。また、ステップS1001(探索領域設定)で設定された発塵源探索領域γ(iM)内に発塵源の重要な候補が存在する場合に、この候補に対応する点を特定点p(iM)としてもよい。
次に、ステップS107において、発塵源探索装置は、前記三次元領域中で、原点を始点とし、特定点p(iM)を終点とする位置ベクトルScを定める。
次に、ステップS108において、発塵源探索装置は、降下煤塵管理地点iMと特定点p(iM)との間の距離Ldを算出する。この距離Ld(iM)は、降下煤塵管理地点iMの位置ベクトルP(iM)の終点と、位置ベクトルScの終点とを結ぶベクトルのノルムとして算出される。
次に、ステップS109において、発塵源探索装置は、発塵源探索領域γ(iM)の断面の断面積であって、特定点p(iM)を含み、かつ、発塵源探索領域γ(iM)の中心軸に垂直な方向の断面の断面積である発塵源探索領域断面積Spを算出する。発塵源探索領域断面積Spは、例えば、当該断面に対応する、前記発塵源探索領域γ(iM)の水平断面の外縁間距離と、前記発塵源探索領域γ(iM)の鉛直断面の上縁−下縁間距離とを乗じて求めることができる。
次に、ステップS109において、発塵源探索装置は、特定点p(iM)における推定発塵量E(p,iM)を算出する。特定点p(iM)における推定発塵量E(p,iM)は、例えば、次の式(10)を用いることにより算出することができる。
E(p,iM)=B・Sp・M ・・・(10)
ここで、Bは係数であり、等価粒径の関数として経験的に求めることができる。この式(10)は、一般的なプルーム式において、局所での降下煤塵の濃度は、発生源での降下煤塵の発生量に比例し、局所でのプルーム断面積に反比例することと対応している。即ち、もし、当該特定点pの座標点が発塵源であれば、降下煤塵評価地点iMにおけるプルーム断面積に反比例した濃度が検出される。つまり、一定の検出濃度に対して、想定されるプルーム断面積が大きいほど、これに対応する発生源での降下煤塵の発生量は、大きくなければならない。よって、発生源での降下煤塵の発生量は降下煤塵評価地点iMにおけるプルーム断面積に比例するはずである。
次に、ステップS110において、発塵源探索装置は、発塵量の判定を行う。具体的に説明すると、まず、発塵源探索装置は、特定点p(iM)における推定発塵量E(p,iM)の値を、特定点p(iM)で発生しうる発塵量の所与の上下限値と比較する。そして、特定点p(iM)における推定発塵量E(p,iM)が上下限範囲内であれば、特定点p(iM)をTd(it)期間における時間スケールが時間周期Δtd以上の非定常発塵源と判定する。一方、特定点p(iM)における推定発塵量E(p,iM)が上下限範囲外であれば、特定点p(iM)をTd(it)期間における発塵源ではないと判定する。特定点p(iM)がTd(it)期間における発塵源と判定された場合、推定発塵量E(p,iM)を特定点p(iM)での推定発塵量として採用する。
以下の説明では、必要に応じて、以上のステップS106〜S110を纏めて、ステップS1002(発塵量推定)と称する。
このような発塵源判定方法を用いることにより、Td(it)期間で、降下煤塵管理地点iMの風上方向に複数の発塵源の候補が存在する場合でも、推定発塵量E(p,iM)の情報を用いることによって、より妥当な発塵源の候補を発塵源として選択することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態では、発塵源の探索を実施しうる三次元領域のなかに、x、y、zなる直交座標系を設定し、各座標軸上においてそれぞれnx、ny、nz個の座標成分を設け、前記三次元空間をnx×ny×nz個の座標点pで代表することにする(ここで、pは、各座標軸成分がそれぞれix番目、iy番目、iz番目である座標点を表す)。
個々の座標点pの位置を、各座標軸上の座標成分の順番ix、iy、izを用いて、位置ベクトルSc(ix,iy,iz)のように、原点からのベクトルで表記する。各座標点pでは発塵源判断のモードとして、「発塵源」、「発塵源でない」、並びに、「未判定」の3つのうちいずれかが設定される。
図4のフローチャートを参照しながら、特定の時刻においてTd(it)期間における降下煤塵の発生源を特定する際の本実施形態の発塵源探索装置の処理の一例を説明する。
まず、ステップS201において、発塵源探索装置は、全ての座標点pにおいて、発塵源判断モードを「未判定」に初期化する。
次に、ステップ202において、発塵源探索装置は、当該Td(it)期間における代表風速WD、代表風速WS、並びに、粒径区分を設定する。これらの設定方法は、第1の実施形態と同様でよい。
次に、ステップS203において、発塵源探索装置は、未選択の降下煤塵管理地点(降下煤塵管理地点は、番号iMで区別される。nM≧iM≧1である)を選択する。そして、ステップS203〜205において、発塵源探索装置は、全ての降下煤塵管理地点iMに対して、前記ステップS1001(探索領域設定)の処理を適用して、代表降下煤塵量M(iM)をそれぞれ設定する。
全ての降下煤塵管理地点iMに対して代表降下煤塵量M(iM)をそれぞれ設定すると、ステップS206に進む。ステップS206に進むと、発塵源探索装置は、未選択の降下煤塵管理地点iM1を1つ選択する。
次に、発塵源探索装置は、ステップS207において、未選択の降下煤塵管理地点iM2を1つ選択し、ステップS208において、未選択の座標点pを1つ選択する。
次に、ステップS209以降において、発塵源探索装置は、全ての座標点pに関して、2つの降下煤塵評価地点iM1、iM2の全ての組み合わせおける処理をもとに、発塵源の判定を行う。以下に、特定の座標点pにおける、互いに異なる2つの特定の降下煤塵管理地点iM1、iM2を用いた発塵源の判定方法の一例を示す。
図5は、発塵源の探索方法の概要の一例を説明する図である。
図5では、降下煤塵評価地点iM1、iM2にそれぞれ対応する発塵源探索領域を、γ(iM1)、γ(iM2)として示す。ここでは、発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)の共通領域11内に存在する座標点pのみを発塵源判定の対象とする。
図4の説明に戻り、ステップS209において、発塵源探索装置は、座標点pの位置ベクトルSc(ix,iy,iz)を定める。位置ベクトルScは、座標軸の原点を始点とし、各座標軸成分がそれぞれix番目、iy番目、iz番目の座標軸の分割点となる点(即ち、座標点p)を終点とするように設定される。
次に、ステップS210において、発塵源探索装置は、降下煤塵管理地点iM1、iM2にそれぞれ対応する発塵源探索範囲γ(iM1)、γ(iM2)の空間上での共通領域11内に座標点pが存在するか否かを判定する。この判定の結果、共通領域11内に座標点pが存在し、かつ、座標点pでの発塵源判定モードが「発塵源ではない」ではない場合には、ステップS211に進む。一方、共通領域11内に座標点pが存在しない場合、または、座標点pでの発塵源判定モードが「発塵源ではない」である場合には、ステップS215、S207に進み、発塵源探索装置は、座標点pを変更して、再度、発塵源探索範囲内に座標点pが存在するかの判定を行う。
次に、ステップS211において、発塵源探索装置は、降下煤塵管理地点iM1、iM2にそれぞれ対応する座標点pの推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)を、前記ステップS1002(発塵量推定)の処理を適用して算出する。
次に、ステップS212において、発塵源探索装置は、推定発塵量E(p,iM1)およびE(p,iM2)の比Rを算出する。この比Rの算出に当たっては、E(p,iM)を算出する際に導入された経験項B1が相殺されるので、より精度を向上できる。比Rは、E(p,iM1)/E(p,iM2)であってもE(p,iM2)/E(p,iM1)であってもよい。
次に、ステップS213において、発塵源探索装置は、座標点pが発塵源であるかの判定を行う。本実施形態では、発塵源探索装置は、前記比Rが、所与の上下限しきい値Rmax、Rminの範囲内であれば、当該座標点pを時間スケールが時間周期Δtd以上の「発塵源」であると判定する。一方、前記Rが、上下限しきい値Rmax、Rminの範囲外であれば、当該座標点pを「発塵源でない」と判定する。
この判定法の根拠は次のとおりである。時間スケールが時間周期Δtd以上の非定常発塵源は、定義上、Td(it)期間内では発塵量の変動は十分小さい。従って、発塵量が他の発塵源に比べて大きい発塵源、即ち、主要な発塵源の探索を行う限りにおいては、ここから発生した降下煤塵は、Td(it)期間中に到達しうる全ての降下煤塵評価地点において支配的であると考えられる。このとき、このTd(it)期間中に到達しうる降下煤塵評価地点が複数存在するのであれば、これらの降下煤塵評価地点で観測される降下煤塵量は、当該発塵源と、これら各降下煤塵評価地点間の距離の関数(即ち、プルーム式)に従って、互いに一定の比率を示すはずである。従って、この条件を満たす座標点pは、主要な発塵源としての可能性が高いので、発塵源判定を「発塵源」とする。
一方、もし、この各降下煤塵評価地点間での降下煤塵量の測定値の比がプルーム式から算出される値と大きく異なるのであれば、Td(it)期間中に複数の降下煤塵管理地点に降下煤塵が到達しうる位置に存在する座標点pであっても、この座標点pは、虚偽の発塵源である可能性が高いので、発塵源判定を「発塵源ではない」とする。
前記比Rが、所与の上下限しきい値Rmax、Rminの範囲内であると判定されると、ステップS214に進み、発塵源探索装置は、「発塵源」と判定された座標点pについて、推定発塵量E(p,iM1)およびE(p,iM2)を用いて当該座標点pに固有の推定発塵量E(p,iM)を算出する。E(p,iM)の算出方法は、例えば、推定発塵量E(p,iM1)およびE(p,iM2)の平均値を用いることができる。
同様に、全ての座標点pにおける発塵源の判定を、2つの降下煤塵管理地点iM1、iM2間の全ての組み合わせについて行う。座標点pのうち、いずれの発塵源探索範囲にも含まれないなどの理由で「発塵源」または「発塵源でない」のいずれにも判定されなかった座標点では、初期値の「未判定」が発塵源判定モードとして残る。
このように、本実施形態では、降下煤塵管理地点iMから風上方向に伸長させる発生源探索領域γ(iM)にプルーム式の考え方を導入することによって、発生源での発生量の推定が可能となり、これを用いて降下煤塵量の測定値の大きいときの風上方向に発塵源が存在するという単純な判定や、あるいは、発塵源探索線同士が交差することのみを利用した発塵源判定ではなしえない高度な発塵源判定を実現できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態では、2以上の自然数であるnt個の、連続するTd(it)期間から構成される時間をTg(k)期間と定義する。ここで、Tg(k)期間の始点の時刻をTg(k−1)とし、このときのitを0とする。Tg(k)期間の終点の時刻をTg(k)とし、このときのitをntとする。kは、降下煤塵計測開始時刻を0とし、1ずつ増加する整数である。本実施形態は、個々のTg(k)期間における降下煤塵の発生源を特定するものであり、Δtg(=nt・Δtd)以上の時間スケール(即ち、発塵継続時間)を有する発塵源を対象とする。また、本実施形態は、第2の実施形態と同様の測定値を用い、これを時間周期Δtgごとに集計して発塵源の探索を行うことにより、発塵源の判定を行う座標点の数を実質的に拡大する手法である。
次に、図6のフローチャートを参照しながら、特定の時刻Tg(k)においてTg(k)期間における本実施形態の降下煤塵の発生源を特定する際の本実施形態の発塵源探索装置の処理の一例を説明する。尚、以下の説明においては、第2の実施形態と同様の部分に関しての詳細な説明を省略する。
まず、ステップS301において、発塵源探索装置は、全ての座標点において、発塵源判断モードを「未判定」に初期化する。
次に、ステップS302において、発塵源探索装置は、粒径区分を設定する。
次に、全ての降下煤塵管理地点iMに対して、代表降下煤塵量、代表風向、並びに、代表風速を設定する。具体的には、まず、ステップS303において、発塵源探索装置は、未選択の降下煤塵管理地点iMを1つ選択する。次に、ステップS304において、発塵源探索装置は、特定の降下煤塵管理地点iMについて、Tg(k)期間に含まれる全てのTd(it)期間の中で最大の降下煤塵量の測定値mを示す時刻Td(itmax)を求める。ここで、itは、Tg(k)期間内におけるTd(it)期間の順番であり、1≦it≦ntである。itmaxは、Tg(k)期間に含まれる全てのTd(it)期間の中で最大の降下煤塵量の測定値mを示す時刻Td(itmax)となるitの順番である。
次に、発塵源探索装置は、ステップS305において、itをインクリメントし、ステップS306において、itがその最大値ntを超えたか否かを判定する。この判定の結果、itがその最大値ntを超えていない場合には、ステップS304に戻る。そして、全てのitについて、Tg(k)期間に含まれる全てのTd(it)期間の中で最大の降下煤塵量の測定値mを示す時刻Td(itmax)を求める。
次に、ステップS307において、発塵源探索装置は、当該降下煤塵管理地点iMに関する代表降下煤塵量M(iM)、代表風向WD(iM)、並びに、代表風速WS(iM)を設定する。これらの代表値を設定する手法には、例えば、第1法として、代表降下煤塵量M(iM)として、最大の降下煤塵量の測定された、Td(itmax)期間での降下煤塵量の測定値mを用いることができる。同様に、代表風向WD(iM)、代表風速S(iM)として、最大の降下煤塵量の測定された、Td(itmax)期間でのそれぞれ風向の測定値の平均値、風速の測定値の平均値を用いることができる。
あるいは、代表降下煤塵量M(iM)、代表風向WD(iM)、並びに、代表風速WS(iM)を設定する第2法として、以下の方法を用いることもできる。即ち、風向および風速に上下限のしきい値を設けて、風向・風速の測定値を風向・風速区分に分類するとともに、Tg(k)期間内における全てのTd(it)期間での降下煤塵量の測定値mを、対応する風向・風速区分に分類したうえで、各風向・風速区分内で、降下煤塵量の測定値mの平均値を求める。各風向・風速区分間での降下煤塵量の測定値mの最大値を代表降下煤塵量M(iM)とし、この降下煤塵量の測定値mの最大値が属する風向、風速区分に対応する風向、風速を、それぞれ代表風向WD(iM)、代表風速WS(iM)とする。
風向・風速区分に対応する風向、風速の算出方法には、例えば当該風向・風速区分に対応する上限しきい値および下限しきい値の平均値を用いることができる。前記第1法は、前記第2法において、風向・風速区分を極端に細分化した、第2法の特殊な場合に相当し、実質的に、各風向・風速区分に分類される測定値が1セット以下となる(大半の風向・風速区分には測定値が分類されない)。Tg(k)期間としては、前記第1法の場合、例えば時間周期Δtdの6周期分(時間周期Δtdが10分のとき、1時間)を採用することができる。また、前記第2法において、風向・風速区分ごとの測定値の平均化によるデータの安定性を確保する場合には、Tg(k)期間として、例えば、100周期以上の時間周期Δtdを採用することもできる。風向のしきい値には、例えば、1〜22.5°ごとの分割を用いることができる。また、風速のしきい値には、1〜5m/sごとの分割を用いることができる。
次に、ステップS308において、発塵源探索装置は、降下煤塵管理地点iMに対して、前記ステップS1001(探索領域設定)の処理を適用して、代表降下煤塵量M(iM)をそれぞれ設定する。そして、ステップS309において、発塵源探索装置は、全ての降下煤塵管理地点iMを選択したか否かを判定し、全ての降下煤塵管理地点iMを選択してない場合には、ステップS303に戻る。このようにして、全ての降下煤塵管理地点iMに対しての設定を行うことができる。
以降のステップS310からS321は、第2の実施形態で説明したステップS206からS217と同様である。このようにして、本実施形態において、発塵源の判定および推定発塵量E(p,iM)を求めることができる。
本実施形態では、時間スケールが時間周期Δtg以上の非定常発塵源を特定することができる。また、本実施形態では、第2の実施形態とは異なり、一般に、代表風向WD・代表風速WSが降下煤塵管理地点iMごとに異なる。このため、各降下煤塵評価地点iMの発塵源探索領域γ(iM)は、各降下煤塵評価地点iMの近傍において互いに交差し易くなる。よって、本実施形態は、降下煤塵評価地点iMの近傍での発塵源判定に有利である。
本実施形態では、プルーム式に基づく発塵源探索領域γ(iM)内での発塵量の推定値が存在するので、従来法でのように、最大の降下煤塵量となる風向か否かの情報だけではなく、特定の風向における降下煤塵量の情報(即ち、他の風向条件での降下煤塵量との相対値情報のみではない)を、発塵源の判定に適用することができるからである。このことの利点を以下に具体的に説明する。
図7は、従来法における発生源の探索方法を模式的に示した図8に示すものと同じ対象系に対して、本実施形態の手法を適用した発生源の探索方法を模式的に示す図である。図7を用いて本実施形態の利点を説明する。
上述の様に、従来技術では、図8において、発生源探索線2、3、4の交点6、7、8を発塵源とみなす。しかし、従来技術では、発生源探索線2、3、4上での発生量の情報を欠いているため、これら個々の交点6、7、8が発塵源として妥当であるかについて、これ以上情報を得ることはできない。
例えば、交点6は、実際に主要な発生源である可能性もあるが、他の主要な発塵源による降下煤塵管理地点iM1、iM2への影響によって見掛け上、単にこの交点6で発生源探索線2、3、4が交差しただけかもしれない(例えば、降下煤塵管理地点iM1に関する主要な発生源は、交点7であり、降下煤塵管理地点iM2に関する主要な発塵源は、交点8、もしくは、施設cよりも降下煤塵管理地点iM2に近い位置に存在する未知の発生源であるのかもしれない)。
従来法では、これらのいずれが真の発塵源であるかを判断することは不可能であった。特に、発生源とは想定されていない地点で発生源探索線の交差が生じた場合(例:交点7、8)、この交点が未知の発塵源であるのか、あるいは、単なる見掛け上の発生源探索線の交差(即ち、発生源ではない)であるのかを識別することはできないので、発塵源を過検出する(交差点を全て発生源と判定する場合)か、未知の発塵源の検出が不可能である(予め発生源として想定していない地点での発生源探索線の交差を全て虚偽と判定する)かのいずれかの不具合に陥ることが避けられなかった。
一方、前述した各実施形態では、図7に示すように、発塵源探索領域の交差領域において、発塵源として妥当であるかの吟味を行うことができる。即ち、例えば、図7において、図8の交点6、7、8にそれぞれ対応する評価点として、発塵源探索領域γ(iM1)・γ(iM2)、γ(iM2)・γ(iM3)、γ(iM1)・γ(iM3)間の共通領域内に存在する、座標点p1、p2、p3が得られたものとする。このとき、例えば、座標点p1の発塵源としての妥当性を評価するためには、座標点p1の降下煤塵評価地点iM1およびiM2にそれぞれ対する推定発塵量E(p1,iM1)とE(p1,iM2)を比較することにより、定量的に発塵源を判定することができる。
また、図8に示す従来法においては、二次元的な発塵源判定であったたため、発塵源探索線2、3、4の交点6、7、8を全て発塵源とみなす弊害があった。これに対して、前述した各実施形態では、発塵源探索領域γ(iM)は、降下煤塵評価地点iMで得られた降下煤塵サンプルの粒径の分析結果を用いて、三次元空間上に展開される。このため、従来法において、図7の平面図では一見、発塵源探索領域γ(iM)同士が交差しているようにみえても、鉛直方向の分布では当該発源探索領域γ(iM)間に共通領域の存在しない場合が多々、発生する。このため、前述した各実施形態では、図8における平面上での交差点に対応する特定点のうち、実際には発塵源とはなりえない(即ち、三次元空間上で塵源探索領域間の共通領域内に存在しない)点を発塵源候補から除外することができ、発塵源の探索をより高精度に行うことができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。前述した非定常発塵源の探索を、放射性の非定常発塵源の探索に適用することができる。
質量の測定のために捕集した降下煤塵の放射線量を測定して、所定の放射線量しきい値以上の粒子、または、粒子群を検出したときのみ、例えば、第1〜3の実施形態と同様の非定常発塵源の探索を行うことによって、放射性の非定常発塵源を、他の非放射性の発塵源から分離して特定することができる。降下煤塵の放射線の測定方法は、例えば、特許文献7〜9等の方法を用いることができる。所定の放射線量しきい値には、例えば、1ミリベクレルを用いることができる。
尚、以上説明した本発明の実施形態のうち、発塵源探索装置が行う処理(例えば、図3、図4、図6のフローチャートによる処理)は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
1、i2、i3 降下煤塵評価(管理)地点
o1、io2、io3、io4 発塵源
M 降下煤塵評価(管理)地点
a、b、c、d、e 予め想定される発生源
p 座標点
α 降下煤塵プルーム範囲
γ 発塵源探索範囲
1 風向別の降下煤塵量分布
2、3、4 降下煤塵評価地点iM1、iM2、iM3に関する発生源探索線
6、7、8 発生源探索線の交点
9 降下煤塵プルームの中心軸
10 発塵源探索領域の中心軸
11 発塵源探索領域間の共通領域
12 粒径区分内最大粒子径における降下煤塵プルームの中心軸
13 粒径区分内最小粒子径における降下煤塵プルームの中心軸

Claims (5)

  1. 時間周期Δtdごとのit番目の時刻Td(it)において、互いに異なる2つ以上の定点の降下煤塵評価地点における、時刻Td(it-1)から時刻Td(it)までの期間であるTd(it)期間で降下煤塵を捕集してその平均的な降下煤塵量mを連続的にそれぞれ計測して得られた測定値を用いて算出される代表降下煤塵量M(iM)と、
    前記降下煤塵評価地点のそれぞれの近傍において、時間周期Δtdよりも長くない時間周期Δtwdにて連続的に計測された風向測定値および風速測定値を基に算出された、前記時刻Td(it-1)から時刻Td(it)までの代表風向WDおよび代表風速WSと、
    前記Td(it)期間に捕集された降下煤塵を分析して算出される個々の降下煤塵粒子の粒子落下速度Vsと、
    を用いて、発塵量が非定常に変動する発塵源の位置を特定するための非定常発塵源の探索方法であって、
    前記個々の降下煤塵粒子について、当該降下煤塵粒子に対応する前記粒子落下速度Vsを、所与のしきい値である粒子落下速度上限値Vsmaxおよび粒子落下速度下限値Vsminと比較することによって、2つ以上設定される等価粒径区分のいずれかに分類するとともに、任意の前記等価粒径区分jに分類された降下煤塵の積算量を用いて当該等価粒径区分に対する降下煤塵量mjを算出し、
    任意の降下煤塵評価地点iMおよび任意の等価粒径区分jについて、前記Td(it)期間における前記任意の等価粒径区分jの降下煤塵の非定常発塵源探索領域をγとして、
    当該降下煤塵評価地点iMを始点として、時刻Td(it)における前記代表風向WDの風上方向に、前記非定常発塵源探索領域γの直線状の中心軸の水平成分を設定して、
    プルーム式における発塵源からの距離L0と前記時間周期Δtdとの関数である水平プルーム拡散幅σy[L0、Δtd]と、前記非定常発塵源探索領域γの中心軸上での前記始点からの距離Ldとを用いて、非定常発塵源探索領域γの水平成分として、前記非定常降下煤塵探索領域γの中心軸に直交するように、当該中心軸の両側の水平方向に、当該中心軸からプルーム拡散幅σy[Ld、Δtd]までの領域を、前記非定常発塵源探索領域γの水平成分として設定するとともに、
    前記始点から、(当該等価粒径区分jにおける粒子落下速度下限値)/(前記代表風速WD)に基づく角度を勾配として、前記代表風向WDの風上方向に向けて上昇する、前記非定常発塵源探索領域の下限線と、前記始点から、(当該等価粒径区分における粒子落下速度上限値)/(前記代表風速WS)に基づく角度を勾配として、前記代表風向の風上方向に向けて上昇する、前記非定常発塵源探索領域上限線との間にはさまれた領域を、前記非定常発塵源探索領域γの鉛直成分として設定し、
    前記非定常発塵源探索領域γ内の任意の点pにおいて、前記降下煤塵評価地点iMにおける前記等価粒径区分jについての降下煤塵量mkと、前記非定常発塵源探索領域γの断面の断面積であって、前記点pを通り前記非定常発塵源探索領域γの中心軸に垂直な方向の断面の断面積である探索領域断面積Spと、に比例する推定発塵量E(p,iM)を算出し、
    前記推定発塵量E(p,iM)を用いて発塵源を特定する工程を含むことを特徴とする、降下煤塵の非定常発塵源の探索方法。
  2. 前記Td(it)期間における降下煤塵の非定常発塵源の探索方法であり、
    前記代表風向WD、代表風速WSは、それぞれ、前記Td(it)期間における風向、風速の測定値の平均値であり、
    任意の前記降下煤塵評価地点iMにおける前記代表降下煤塵量M(iM)は、前記Td(it)期間における当該降下煤塵評価地点iMでの降下煤塵量の測定値mから得られるものであり、
    特定の前記等価粒径区分jにおいて、互いに異なる特定の前記降下煤塵評価地点iM1、iM2について、前記Td(it)期間における降下煤塵の非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)をそれぞれ設定し、
    前記非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)の、空間上で共通する共通領域内で指定される前記点pにおいて算出される前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)の比が所定の上下限値の範囲内である場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分jに関する発塵源と判定し、これ以外の場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分に関する発塵源ではないと判定するとともに、前記点pにおける推定発塵量E(p,iM)を、前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)を用いて算出することを特徴とする、請求項1に記載の降下煤塵の非定常発塵源の探索方法。
  3. 連続する2つ以上の前記時刻Td(it)を含む時間周期Δtgごとの、k番目の時刻Tg(k)を設けて、Tg(k−1)からTg(k)の評価期間であるTg(k)期間を設定し、
    前記Td(it)期間における風向測定値、風速測定値を、所与のしきい値を用いてそれぞれ風向区分、風速区分に分類するとともに、各風向区分、各風速区分を代表する、区分風向WDc、区分風速WScを算出し、
    任意の降下煤塵評価地点iMにおいて、前記Tg(k)期間における最大の降下煤塵量mを測定したTd(it)期間に対応する前記降下煤塵量の測定値、前記区分風向WDc、前記区分風速WScを、当該Tg(k)期間および当該降下煤塵評価地点iMにおける前記代表降下煤塵量M(iM)、前記代表風向WD(iM)、前記代表風速WS(iM)としてそれぞれ設定し、
    2つ以上の前記降下煤塵評価地点を設け、特定の互いに異なる2つの前記非定常降下煤塵評価地点iM1,iM2について、前記降下煤塵の非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)をそれぞれ設定し、
    前記非定常発塵源探索領域γ(iM1)、γ(iM2)の、空間上で共通する共通領域内で指定される前記点pにおいて算出される前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)の比が所定の上下限値の範囲内である場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分に関する発塵源と判定し、これ以外の場合には、前記点pを前記特定の等価粒径区分に関する発塵源ではないと判定するとともに、前記点pにおける推定発塵量E(p,iM)を、前記推定発塵量E(p,iM1)、E(p,iM2)を用いて算出することを特徴とする、請求項1に記載の降下煤塵の非定常発塵源の探索方法。
  4. 前記捕集された降下煤塵の放射線量を測定し、所定のしきい値以上の降下煤塵粒子または降下煤塵粒子群を対象として放射性の発塵源を特定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の降下煤塵の非定常発塵源の探索方法。
  5. 前記プルーム拡散幅σyおよびσzと、プルーム中心軸上の発生源からの距離xと、降下煤塵発生量QPと、前記代表風速WSと、定数Bと、前記プルーム拡散幅σyおよびσzを用いて定義されるプルーム範囲と、を用いて、プルーム中心軸上の発生源からの距離xでの煤塵濃度C(x)を表現する以下の式(A)及び(B)を、前記プルーム式として用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の降下煤塵の非定常発塵源の探索方法。
    C(x)=B(QP/2πσyσzWS) (プルーム範囲内) ・・・(A)
    C(x)=0 (プルーム範囲外) ・・・(B)
    ここで、(A)式および(B)式の単位は、全てSI単位であり、σzは、鉛直面内において、発生源を起点とするプルームの上端を[当該粒径区分における粒子落下速度下限値]/[代表風速]に基づいて定められる勾配線とするとともに、当該プルームの下端を[当該粒径区分における粒子落下速度上限値]/[代表風速]に基づいて定められる勾配線として定義されるプルーム範囲の、前記プルームの中心軸に垂直な方向の幅とする。
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