JP5504485B2 - Il−8阻害剤およびその製造方法 - Google Patents

Il−8阻害剤およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、IL−8産生の阻害剤およびその製造方法に関するものであり、より詳細には、特定の植物乳酸菌の培養上清およびその抽出物を含有しているIL−8産生の阻害剤およびその製造方法に関するものである。
Helicobacter pylori(ピロリ菌)は、1983年、マーシャル博士によって発見された。本菌はグラム陰性で、ラセン状の形態をとり、WHOによってクラス1カルシノーゲンに分類されている。通常、胃体部や幽門部の粘膜層でコロニーを形成し、胃上皮細胞のアポトーシスや粘膜傷害により慢性の炎症を引き起こす。ピロリ菌は厳しい環境である胃の中で生き抜くため、コロニー形成の際、胃酸を中和するために大量のウレアーゼを産生している。多くのピロリ菌ではその毒性は宿主特異的であるが、ピロリ菌のvacA、cagA、BabA由来の毒性は、細菌の感染に関して主要な役割を果たしていると考えられている。
近年、アモキシシリン、クラリスロマイシン、オメプラゾールのようなプロトンポンプ阻害剤などの抗生物質が、単剤または併用で、ピロリ菌感染の治療(特に、ピロリ菌の除菌)に広く用いられている。だが、残念ながら、この治療法では、大腸炎や腎不全の再燃、アルコール摂取によるジスルフィラム様反応などの副作用だけでなく、しばしば、耐性菌の出現が認められる。それゆえ、本菌に対する、より効果的で侵襲性の少ない治療を探索するために様々な努力がなされている。
ピロリ菌の除菌にプロバイオティクスを用いることの有用性を支持する研究成果が、近年報告されている。プロバイオティクスは、宿主(ヒトなど)の健康維持につながる、非病原性で安全性の高い微生物である。このような微生物を摂取することによって、ヒト消化管にとってふさわしくない悪玉微生物の生育を阻害したり、栄養源の適切な消化/吸収を促進したりすることが可能となるので、プロバイオティクスは、腸管の健康維持の手助けをすると考えられている。
乳酸菌は、古来よりチ−ズ、ヨ−グルト、醗酵バタ−等の乳製品を始め、味噌、漬物等のわが国の伝統的醗酵食品のほか、果汁、野菜汁へ接種するなどした、多くの食品に用いられ、食品の風味、組織、栄養価の改善または保存性付与等に重要な役割を果たしている。近年、乳酸菌の生理的効果として、生きた乳酸菌の接種による腸内菌叢の改善効果または整腸作用等が明らかとなり、医薬品として乳酸菌製剤も開発されている。特許文献1には、特定の乳酸菌(Lactobacillus gasseri)を含有するピロリ菌の除菌性/感染防御性飲食品が開示されている。非特許文献1には、キャベツを醗酵原料とした植物乳酸菌Lactobacillus plantarum ATCC8014の発酵生成物によるNK活性およびガン細胞増殖抑制作用が開示されている。また、非特許文献2には、乳酸菌による歯周病に対する効果が記載されている。
日本国公開特許公報「特開2001−143号公報(公開日:平成13年1月9日)」 日本国公開特許公報「特開2006−42796号公報(公開日:平成18年2月16日)」 生物工学会誌 82: 430-431 (2004) 化学療法の領域 21: 1585-1590 (2005)
特許文献1に記載の乳酸菌を活用した機能性食品(特に、醗酵食品)は非常に注目を集めている。しかし、特許文献1に記載の乳酸菌を含有する食品が目的の機能を発揮するには、この乳酸菌の生菌が胃内へ供給されかつ生育し続けることが必要である。なぜなら、この乳酸菌によるピロリ菌生育阻害の機序は、乳酸菌が生成する乳酸によるものだからである。特許文献1に記載の乳酸菌が低pH条件下での生育が良好であるとはいえ、胃内へ生菌の状態で必要量供給することは容易ではない。同様に、非特許文献1および2に記載の技術も、乳酸菌の産生する有機酸による、直接的な抗菌/殺菌効果を確認したに過ぎない。
感染に先立って、ピロリ菌のcag毒性部位が有している分泌システムによってエフェクター分子(CagA)が宿主の粘膜細胞へ注入される。これにより、宿主の胃粘膜細胞からIL−8が誘導され、引き続き、活性酸素産生を伴う多核白血球の胃粘膜への侵入が起きる。このように、IL−8の産生はピロリ菌の感染に不可欠なものであるといえる。
サイトカインファミリーの1つであるインターロイキン8(IL−8)は、好中球の炎症部位への遊走に関与する、強力な好中球ケモカインである。IL−8は、単球、マクロファージ、好中球およびリンパ球から分泌されるだけでなく、皮膚線維芽細胞、ケラチノサイト、血管内皮細胞、メラノサイト、肝細胞、および種々の腫瘍細胞株によって産生される。好中球による炎症応答は、身体に侵入してくる細菌からの防御に必要であるが、IL−8の異常産生やIL−8に対する過剰反応は炎症性疾患の原因になると考えられている。IL−8はまた、血管新生因子および腫瘍成長因子としての役割が指摘されている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、IL−8産生を阻害するための新たな技術を提供することにある。
本発明者らは、新たな植物乳酸菌を取得し、これらの乳酸菌を用いて新しい風味および機能を備えた醗酵飲料を製造している(特許文献2参照)。本発明者らは、植物乳酸菌の研究を進める中で、IL−8の産生を抑制する効果を有する物質を産生する植物乳酸菌を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るIL−8阻害剤は、植物乳酸菌の培養上清または該培養上清からの抽出物を含有しており、該植物乳酸菌の16S rRNA遺伝子は、(a)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;(b)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列に1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を含むポリヌクレオチド;または(c)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド、であることを特徴としている。
本発明に係るIL−8阻害剤において、上記植物乳酸菌は、ラクトバシラス プランタルムSN35M株(受託番号:NITE BP−5)、ラクトバシラス プランタルムSN35N株(受託番号:NITE BP−6)、ラクトバシラス プランタルムSN13T株(受託番号:NITE BP−7)、およびラクトバシラス プランタルムSN26T株(受託番号:NITE BP−8)からなる群より選択されることが好ましい。
本発明に係るIL−8阻害剤において、上記培養上清は、果汁または野菜汁を培地として用いた培養によって得られることが好ましい。
本発明に係るIL−8阻害剤は、抗腫瘍剤、抗炎症剤、または歯周病の予防薬として用いられることが好ましい。
本発明に係る機能性食品は、上記のIL−8阻害剤を含んでいることを特徴としている。
本発明に係るIL−8阻害剤を製造する方法は、植物乳酸菌の培養上清を得る工程を包含し、該植物乳酸菌の16S rRNA遺伝子は、(a)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;(b)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列に1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を含むポリヌクレオチド;または(c)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド、であることを特徴としている。
本発明にかかる製造方法は、果汁または野菜汁を培地として用いることが好ましい。
本発明にかかる製造方法において、上記培地に酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物を添加することをさらに含んでもよい。
本発明に係るIL−8阻害剤を製造するための組成物は、ラクトバシラス プランタルムSN35M株(受託番号:NITE BP−5)、ラクトバシラス プランタルムSN35N株(受託番号:NITE BP−6)、ラクトバシラス プランタルムSN13T株(受託番号:NITE BP−7)およびラクトバシラス プランタルムSN26T株(受託番号:NITE BP−8)からなる群より選択される乳酸菌の生菌を生存可能に含有していることを特徴としている。
本発明に係る組成物は、上記生菌によって醗酵する醗酵原料をさらに含有していてもよく、上記醗酵原料は乳、果汁または野菜汁であることが好ましい。
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。
ピロリ菌によって刺激されたMKN−45細胞株のIL−8レベルに対する、乳酸菌培養上清サンプルの効果を示す図である。 血清枯渇させたMKN−45細胞株におけるIL−8の検出についての定量的RT−PCRアッセイの結果を示す図である。
〔1〕植物乳酸菌
本発明は、特定の植物乳酸菌の培養上清中に抗IL−8活性が存在することを見出したことに基づいて完成された。「抗IL−8活性」は、IL−8の産生を抑制する活性が意図され、好ましくはIL−8の産生を阻害する活性が意図される。
植物乳酸菌は、植物由来の乳酸菌をいい、例えば穀物、野菜、果物、あるいはこれらを原材料に含む醗酵食品やナム等の醗酵食品の製造に関係するバナナ等の熱帯植物の葉等から分離されたものが意図される。本発明者らはこれまでに、植物乳酸菌として、ラクトバシラス プランタルムSN13T株、ラクトバシラス プランタルムSN26T株、ラクトバシラス プランタルムSN35N株、ラクトバシラス プランタルムSN35M株、ラクトコッカス ラクティス サブスペシース ラクティス SN26N株、エンテロコッカス スペシースSN21I株、およびエンテロコッカス ムンヅティSN29N株などを分離している。また、他にも多くの植物乳酸菌が知られている。しかし、このような多種多様な植物乳酸菌の中で、特に梨および桃果汁を培地とした培養液上清に抗IL−8活性が存在するという優れた効果を有している乳酸菌が存在することは、全く知られていなかった。
ラクトバシラス プランタルムSN35M株は、本発明者らによって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)へ、受託番号NITE BP−5(受託日:2004年7月6日、移管日:2009年2月16日)として寄託されており、以下の菌学的性質を有する:メロンからの分離株、グラム陽性乳酸桿菌、ホモ型醗酵、カタラーゼ陰性、芽胞形成能なし、好気条件下でも培養可、分類学上の位置はLactobacillus plantarum。
ラクトバシラス プランタルムSN35N株は、本発明者らによって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)へ、受託番号NITE BP−6(受託日:2004年7月6日、移管日:2009年2月16日)として寄託されており、以下の菌学的性質を有する:ナシからの分離株、グラム陽性乳酸桿菌、ホモ型醗酵、カタラーゼ陰性、芽胞形成能なし、好気条件下でも培養可、分類学上の位置は Lactobacillus plantarum。
ラクトバシラス プランタルムSN13T株は、本発明者らによって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)へ、受託番号NITE BP−7(受託日:2004年7月6日、移管日:2009年1月28日)として寄託されており、以下の菌学的性質を有する:タイ国産のナムというソーセージからの分離株、グラム陽性乳酸桿菌、ホモ型醗酵、カタラーゼ陰性、芽胞形成能なし、好気条件下でも培養可、分類学上の位置はLactobacillus plantarum。
ラクトバシラス プランタルムSN26T株は、本発明者らによって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)へ、受託番号NITE BP−8(受託日:2004年7月6日、移管日:2009年2月16日)として寄託されており、以下の菌学的性質を有する:タイ国産のナムというソーセージからの分離株、グラム陽性乳酸桿菌、ホモ型醗酵、カタラーゼ陰性、芽胞形成能なし、好気条件下でも培養可、分類学上の位置は Lactobacillus plantarum。
近年では、16SリボソームRNA(16S rRNA)遺伝子の塩基配列に基づく系統分類により得られるグループ(クラスター)を指標として、細菌の分類および識別を行うことが一般的になっている。一実施形態において、本発明に用いられる植物乳酸菌の16S rRNA遺伝子は、配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列を含むポリヌクレオチドである。なお、配列番号1〜4に示される塩基配列は、それぞれラクトバシラス プランタルムSN35M株、ラクトバシラス プランタルムSN35N株、ラクトバシラス プランタルムSN13T株、およびラクトバシラス プランタルムSN26T株の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。本発明において、上述した植物乳酸菌が単独で用いられてもよいが、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびT(またはU)と省略される)の配列として示される。
なお、配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列を含むポリヌクレオチドの変異体を16S rRNA遺伝子として有している植物乳酸菌の中で、その培養上清中に抗IL−8活性を示すものもまた、本発明に用いられるべき植物乳酸菌である。本明細書中でポリヌクレオチドの観点で使用される場合、「変異体」は任意の変異体が意図されるのではなく、配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列と若干異なっていても、配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列とほぼ同一であるまたは非常に近似していると当業者が容易に認定し得る範囲内のポリヌクレオチドが意図され、天然のものであっても人為的に改変されたものであってもよい。また、当業者は、このようなポリヌクレオチド変異体を16S rRNA遺伝子として有している植物乳酸菌の培養上清が所望の抗IL−8活性を有しているか否かを、本明細書中の記載に従って容易に確認し得る。このようなポリヌクレオチド変異体としては、(1)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列に1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を含むポリヌクレオチド、(2)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドが挙げられる。
ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版,J.SambrookおよびD.W.Russll編,Cold Spring Harbor Laboratory,NY(2001)」(本明細書中に参考として援用される。)に記載されている方法のような周知の方法に従って行うことができる。本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。
このように、本発明に用いられる植物乳酸菌は、その16S rRNA遺伝子が、(a)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;(b)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列に1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を含むポリヌクレオチド;または(c)配列番号1〜4のいずれか1つに示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド、である乳酸菌であるといえる。このような植物乳酸菌が用いられることによって、抗IL−8活性を示す画分を容易に取得することができる。
〔2〕IL−8阻害剤を製造するための組成物
本発明は、ラクトバシラス プランタルムSN35M株、SN35N株、SN13T株およびSN26T株からなる群より選択される植物乳酸菌の生菌を生存可能に含有している組成物を提供する。本発明に係る組成物を用いれば、IL−8阻害剤を製造することができる。
本発明に係る組成物は、上記植物乳酸菌によって醗酵する醗酵原料をさらに含有していてもよい。また、本発明に係る組成物は、酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物をさらに含有していてもよい。
本明細書中で使用される場合、用語「組成物」はその含有成分を単一組成物中に含有する態様と、単一キット中に別個に備えている態様であってもよい。すなわち、本発明に係る組成物は培地をさらに含んでいてもよいが、上記植物乳酸菌の生菌を生存可能に含有している組成物と醗酵原料とを別々に備えているキットの形態であってもよい。また、本発明に係る組成物は、麹菌による米醗酵物または酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物をさらに含んでいてもよいが、本発明に係る組成物と酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物とを別々に備えているキットの形態であってもよい。
本発明に用いられる醗酵原料は、乳、果汁および野菜汁からなる群より選択されることが好ましい。乳としては、動物乳(例えば、牛乳、ヤギ乳、めん羊乳等)が挙げられ、特に牛乳が好ましい。乳は、未殺菌乳および殺菌乳の何れであってもよく、また、これらの乳から調製した濃縮乳もしくは練乳、これらの脱脂乳、部分脱脂乳またはこれらを乾燥して粉末にした粉乳等であってもよい。果汁としては、例えば、モモ、ナシ、リンゴ、イチゴ、ザクロ、ブドウ、マンゴー、ミカン、オレンジ等の汁液が挙げられるがこれらに限定されない。また、野菜汁としては、例えば、ニンジン、トマト、キャベツ等の汁液が挙げられるがこれらに限定されない。果汁および野菜汁は、果物または野菜をミキサー等で摩砕し、必要に応じて更に搾汁することにより得られる。このような果汁および野菜汁は、適宜濃縮されてもよく、濃縮液は、そのままであっても、蒸留水等で適当な濃度に希釈して用いられてもよい。なお、上述した乳、果汁および野菜汁は、それぞれが単独で用いられても、目的に応じて組み合わせて用いられてもよい。
本明細書中において、用語「生菌を生存可能に含有している」は、目的の菌株が死滅することなく組成物中に維持されている態様であれば特に限定されない。すなわち、上記組成物中では、目的の生菌が増殖していても休眠していてもよい。一実施形態において、本発明に係る組成物は、ラクトバシラス プランタルムSN13T株によって醗酵する醗酵原料をさらに含有していることが好ましく、酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物をさらに含有していることが好ましい。このような形態であれば、ラクトバシラス プランタルムSN13T株の生菌の酵素活性を高く保つことができるので、この生菌を組成物中で生存可能に含有し得る。他の実施形態において、本発明に係る組成物は、ラクトバシラス プランタルムSN13T株の生菌を、適切な賦形剤とともに含んでいる。乳酸菌の生存に影響を与えない賦形剤は当該分野において周知であり、例えば、デンプン、乾燥酵母、乳糖、白糖などが挙げられ、また、組成物を錠剤に加工するためのもの(例えば、コーンペプチド、麦芽糖など)であってもよい。このように、本発明に係るIL−8阻害剤を製造するための組成物は、いわゆる「醗酵種(スターター)」として用いられるべきものであることが意図される。
〔3〕IL−8阻害剤およびその製造方法
本発明は、IL−8阻害剤を提供する。本発明に係るIL−8阻害剤には、上述した植物乳酸菌の培養上清またはその培養上清の抽出物を含んでいることを特徴としている。
本発明に係るIL−8阻害剤は、上記植物乳酸菌の培養上清を得る工程を包含する製造方法を用いて製造される。得られた培養上清は、そのまま用いられてもその抽出物が用いられてもよい。また、本発明に係るIL−8阻害剤の製造方法は、培養培地に酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物を添加することをさらに含んでもよい。なお、酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物については、本明細書中において参考として援用される特許文献2にその詳細が記載されており、当業者は容易に理解し得る。
本発明に用いられる培養培地としては、果汁または野菜汁が挙げられる。果汁としては、例えば、モモ、ナシ、リンゴ、イチゴ等の汁液が挙げられるがこれらに限定されない。また、野菜汁としては、例えば、ニンジン、トマト、キャベツ等の汁液が挙げられるがこれらに限定されない。果汁および野菜汁は、果物または野菜をミキサー等で摩砕し、必要に応じて更に搾汁することにより得られる。このような果汁および野菜汁は、適宜濃縮されてもよく、濃縮液は、そのままであっても、蒸留水等で適当な濃度に希釈して用いられてもよい。このような培地を用いることにより、抗IL−8活性を含んだ培養上清を得ることができる。また、抗IL−8活性以外の夾雑物を除去したものや、必要に応じて、公知の方法で脱臭、脱色等の処理を施したものも、上記抽出物の範囲内であることが意図される。
なお、本発明に係るIL−8阻害剤の製造方法における培養工程は、醗酵原料を植物乳酸菌の生菌で醗酵させる醗酵工程であり得る。醗酵工程は、酸度が0.6〜1.5%の範囲内になるまで醗酵原料を醗酵させることが好ましい。醗酵は、当該分野において公知の手法を用いて行われればよい。果汁または野菜汁を醗酵原料として用いる場合、果汁または野菜汁、あるいはこれらに他の原料を添加した溶液を65〜130℃で1秒間〜30分間加熱殺菌し、次いで30〜45℃まで冷却し、続いて、この溶液に植物乳酸菌を0.1〜6重量%接種した後、30〜45℃の温度で12〜72時間醗酵させ、醗酵終了後に冷却したものを醗酵物(醗酵果汁または醗酵野菜汁)として用いればよい。これら醗酵果汁または醗酵野菜汁は、そのまま飲料としてもよく、さらには希釈または殺菌を行い醗酵果汁飲料または醗酵野菜汁飲料とすることができる。
なお、醗酵物を得る際には、醗酵原料以外に、ゼラチン、寒天、糖類、香料、果肉などのような醗酵飲料の製造に通常使用されている原料を添加することもできる。例えば、蔗糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴等の糖アルコール類、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の高甘味度甘味料、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム等の増粘剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料、レモン果汁、オレンジ果汁等の果汁類の他、ビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類、更には甘草、桂枝、生姜のような生薬、あるいは香草、グルタミン酸ナトリウム、クチナシ色素、シリコーン、リン酸塩等の食品添加物等を添加することが可能である。
本発明に係るIL−8阻害剤は、IL−8の産生を阻害するための試薬であっても、医薬組成物または食用組成物を製造する際の添加剤であってもよく、医薬組成物または食用組成物として用いられてもよい。本発明に係るIL−8阻害剤は、IL−8の産生を阻害し得る機能性食品を製造するに特に有用である。
ピロリ菌が胃粘膜に付着して生育すると、胃細胞は、ピロリ菌の産生する毒素に反応してIL−8を産生する。これにより集められた好中球が、活性酸素を放出してピロリ菌を攻撃する。しかし、胃細胞自身も活性酸素によって攻撃され、その結果、胃潰瘍を引き起こし、やがて胃がんへと進行する。本発明に係るIL−8阻害剤によって、胃がん伸展の抑制が期待され得る。もちろん、IL−8阻害剤はピロリ菌感染の治療だけでなく、IL−8が関与する種々の疾患の治療に大いに役立ち得る。すなわち、本発明に係るIL−8阻害剤は、抗腫瘍剤または抗炎症剤として用いられることが好ましい。
虫歯予防は、フッ素による歯質の強化が唯一の方法である。歯周病においても、歯周炎に対する最初の防御バリアである歯肉上皮細胞の機能を制御する方法の開発が期待されている。防御系胃潰瘍治療薬であるマレイン酸イルソグラジン(IM)を用いて、歯肉由来上皮細胞のGAPジャンクションを介する細胞間コミュニケーション能を調べた結果、IMは歯周病原菌で刺激した培養歯肉上皮細胞のIL−8の産生を抑制すること、歯周病原性細菌での刺激なしに低下した細胞間コミュニケーションを回復させること、GAPジャンクションを介する細胞間コミュニケーションの低下にはIL−8が関与していることを明らかにしている。また、IMが投与された歯周病モデルラットにおいて、歯周病原性細菌刺激による歯周組織の炎症がほぼ完全に抑制されていることがわかった。このように、本発明に係るIL−8阻害剤によって歯肉上皮細胞の機能を制御するによる、歯周病の予防技術が期待され得る。すなわち、本発明に係るIL−8阻害剤は、歯周病の予防に用いられることが好ましい。
本発明を用いて製造される医薬組成物は、製薬分野における公知の方法により製造することができる。本発明に係る医薬組成物における抗IL−8活性の含有量は、投与形態、投与方法などを考慮し、この医薬組成物を適切な量にて投与できるような量であれば特に限定されない。本発明に係る医薬組成物は経口投与されることが好ましく、経口投与に好ましい錠剤、カプセルなどの形態として調製され得る。経口投与される態様(すなわち経口剤)の場合、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが医薬用担体として利用される。また経口剤を調製する際、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合してもよい。安定化剤、抗酸化剤などのような補助物質もまた、本発明に係る医薬組成物中に存在し得る。本発明に係る医薬組成物はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。投与および摂取は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよい。
このように、本発明に係るIL−8阻害剤は、IL−8が関与する疾患または症状を治療または予防するための医薬組成物であり得る。IL−8が関与する疾患または症状としては、アレルギー性疾患、寄生虫感染症、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、ウイルス感染症、バクテリア感染症、悪性腫瘍(形質細胞腫、多発性骨髄腫、癌悪液質、心房粘液腫、骨髄腫、レンネルトリンパ腫など)、HVG(Host−versus−Graft)病あるいは後天性免疫不全症候群(AIDS)、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデス(SLE)、ベーチェット病など)、キャッスルマン氏病、エイズに伴うカポシ肉腫、閉経後骨粗鬆症、炎症性皮膚疾患(炎症性角化症(乾癬など)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎など)、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)、炎症性肝疾患(B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎、薬物アレルギー性肝炎など)、炎症性腎疾患(糸球体腎炎など)、炎症性呼吸器疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎など)などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明を用いて製造される食用組成物は、IL−8の産生を阻害するための食用組成物(すなわち、食品、飲料など)であり、健康食品(機能性食品)として極めて有用である。本発明に係る食用組成物の製造法は特に限定されず、調理、加工および一般に用いられている食品または飲料の製造法による製造を挙げることができ、本発明によって得られた抗IL−8活性が、その食品または飲料中に含有されていればよい。本発明に係る食用組成物としては、例えば、乳製品(例えば、ヨーグルト)、健康食品(例えば、カプセル、タブレット、粉末)、飲料(例えば、乳飲料、野菜飲料など)、ドリンク剤などが挙げられるがこれらに限定されない。
近年、アンバランスな食生活が原因となって肝臓または腎臓の機能が低下した人々や、花粉または植物などによるアレルギー症状を呈する人々が増加の一途をたどっている。本発明を用いれば、生活習慣病またはアレルギー症状を予防または改善するための、乳酸菌および醸造微生物などの機能を利用した「機能性食品」および「医薬品素材」を開発し得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔サンプルの調製〕
モモまたはナシの果汁に1%の酒粕を添加した培地(pH6.5)を用いて、植物由来のLactobacillus platarum(SN13T株およびSN35N株)を培養した。なお、SN35Nは多糖類を生成するがSN13Tは多糖類を生成しない。30℃で20時間インキュベートした後、培養液を4℃で15分間遠心分離して細胞を回収した。得られた上清を0.22mmのフィルターで滅菌し、pH7に調整した。この上清を凍結乾燥し、遠心分離前の溶液の3分の1になるように滅菌水を加えたサンプル(ピロリ菌培養上清サンプル)を調製した。ELISAを行うために、このサンプルは無血清培地(RPMI1640)に再度溶解した。
〔細胞〕
胃癌細胞株として、ヒトの胃由来アデノ腫瘍細胞株であるMKN45細胞、および加藤III細胞 (理化学研究所の細胞バンクから購入したもの)を用いた。
〔ELISA〕
10%FBS、100mg/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地中のMKN45細胞を、2.0×10細胞/ウェルとなるように48ウェルプレートに播種し、COインキュベーター内にて37℃でインキュベートした。次いで、細胞単層を洗浄し、無血清のRPMI1640培地で16時間培養した。この細胞を上記サンプルと一緒に30分間プレインキュベートし、予め調製したピロリ菌懸濁液(6.0×10細胞/mL)を添加することによって刺激した。この懸濁液を添加してから3時間後、6時間後または9時間後に上清を回収し、IL−8レベルをELISA(Pierce)を用いて付属の指示書に従って測定した。この実験を3回ずつ行った。
〔MKN45細胞でのIL−8発現を確認するためのRT-PCR解析〕
上記サンプルを添加してから3時間後および6時間後にRNAを抽出した。PrimeScript Rtase(Takara Bio)を用い、付属の指示書に従って2μgのRNAからcDNAに転写した。PCRを、2mgのcDNA、0.5unitのEx Taq polymerase、両側のプライマー、およびdNTPを添加して最終容量50mLにて行った。グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を内部コントロールとして同時に増幅させた。IL−8またはGAPDHに特異的なセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーを用いたPCRによって、反応混合物を増幅した。PCR条件は、95℃で4分間の変性反応の後、94℃での変性30秒間、55℃でのアニーリング30秒間、72℃での伸長1分間のサイクルを26回行った。IL−8およびGAPDHの増幅産物として、それぞれ299bpおよび1090bpのフラグメントを得た。
IL−8(センスプライマー;5'-ATGACTTCCAAGCTGGCCGTGGC-3'(配列番号5)、アンチセンスプライマー;5'-TCTCAGCCCTCTTCAAAAACTTCTC-3'(配列番号6))
GAPDH(センスプライマー;5'-TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGGT-3'(配列番号7)、アンチセンスプライマー;5'-CATGTGGGCCATGAGGTCCACCAC-3'(配列番号8))
〔IL−8の抑制効果〕
多くの研究で報告されているように、タイプIV分泌システム(T4SS)によるピロリ菌から上皮細胞へのCagAの移動、およびこれに伴うチロシンリン酸化は、宿主のシグナル伝達を活性化し、IL−8の合成を誘導する。そこで、胃上皮細胞MNK-45のIL−8誘導に対して、乳酸菌の各菌株の培養上清がどのような影響を及ぼすか否かをインビトロで調べた(図1)。図1は、ピロリ菌によって刺激されたMKN−45細胞株のIL−8レベルに対する、乳酸菌培養上清サンプルの効果を示す図である。全てのアッセイを3連で行った。図1に示すように、細胞をピロリ菌で3時間刺激した場合、刺激しなかった細胞と比べて、IL−8の産生量が約8倍高かった。
ピロリ菌で3時間刺激した細胞に対してピロリ菌培養上清サンプルを添加した場合のIL−8の産生量を測定した。SN13T株をモモ果汁で培養したものを添加すると、IL−8の産生量が約7分の1にまで減少した。ピロリ菌で9時間刺激した場合には、IL−8の産生量が約12分の1にまで減少した。SN35N株をモモ果汁で培養したものを添加した場合にも、同様にIL−8の産生量が減少したが、SN35N株の培養上清によるIL−8の抑制は、菌体外に分泌される多糖類が、ピロリ菌の上皮細胞への接着を妨げていることによるものであろう。なお、IL−8の産生量は、SN35Nのモモ果汁培養上清を添加した場合では551.2pg/mL、ナシ果汁培養上清を添加した場合では584.5pg/mLであった。また、SN13Tのナシ果汁培養上清を添加した場合では555.4pg/mLであったが、これはピロリ菌による刺激のみの場合の4分の1程度にとどまる。
以上の結果において重要なことは、示されたIL−8抑制作用が、乳酸菌が産生する乳酸によるものではないということである。このことは、0.4Mの乳酸溶液を添加して9時間よりも長くインキュベートしたにIL−8の発現量が増加し、そのレベルがピロリ菌による刺激のみの場合とほとんど同じであったことからも明らかである。
フェノールおよびその誘導体、特にカテコール類が、HL-60細胞に対してIL−8の産生を促進し、アポトーシスを生じさせたという報告がある。本発明者らは、SN13Tがモモ果汁での培養の過程において大量のカテコール(約200mg/L)を産生していることを見出している(未公開)。そこで、カテコール依存的なIL−8の誘導が起こるかどうか、MKN-45細胞を用いてさらに研究を進めた。非常に興味深いことに、カテコールのみで細胞を刺激した場合、濃度依存的にIL−8産生を促進したのに対して、SN13T株のモモ果汁培養上清(多量のカテコールを含んでいる)ではIL−8はほとんど産生されなかった。同時に細胞の増殖についてMTT試験を行ったところ、SN13T株のモモ果汁培養上清は、細胞の生死に影響を与えないことがわかった。このことは、SN13T株が菌体外に分泌する代謝物によって、ピロリ菌による胃上皮細胞でのIL−8発現が抑制されていることを示唆している。
MKN-45細胞から抽出した全RNAのRT−PCR解析を行った。PCRによる逆転写の結果、IL−8と思われる299bpのバンドが観察された(図2)。図2は、血清枯渇させたMKN−45細胞株におけるIL−8の検出についての定量的RT−PCRアッセイの結果を示す図である。レーン1は、刺激なしのものであり、レーン2はピロリ菌のみで刺激したものである。レーン3はピロリ菌およびモモ果汁コントロールで刺激したものであり、レーン4は、ピロリ菌、およびモモ果汁で培養したSN13Tの培養上清で刺激したものであり、レーン5は、ピロリ菌、およびモモ果汁で培養したSN35Nの培養上清で刺激したものである。レーン6はピロリ菌およびナシ果汁コントロールで刺激したものであり、レーン7は、ピロリ菌、およびナシ果汁で培養したSN13Tの培養上清で刺激したものであり、レーン8は、ピロリ菌、およびナシ果汁で培養したSN35Nの培養上清で刺激したものである。レーン9はピロリ菌および乳酸(0.4M)で刺激したものであり、レーン10は、ピロリ菌、およびカテコール(0.5mg/mL)で刺激したものである。
図2に示すように、刺激を与えていないMKN-45細胞では、IL−8の発現が認められなかった。しかし、ピロリ菌による刺激のみのものと0.5Mの乳酸溶液を添加したもの以外では、刺激後6時間以降のIL−8発現に差が見られ、特に、SN35Nのナシ果汁培養上清を添加した場合、およびSN13Tのモモ果汁培養上清を添加した場合にRT−PCR産物が減少した。なお、全てのサンプルで、内部コントロールであるGAPDHのバンド(1090bp)は常に増幅されており、各抽出サンプル中に、GAPDHのmRNAが同程度含まれていたことを示している。ELISA試験の結果を考慮すると、SN35Nのナシ果汁培養上清、およびSN13Tのモモ果汁培養上清は、ほぼ完全にIL−8の発現を抑制すること、ならびにこの抑制は、乳酸およびカテコール類によるものではないことが明らかとなった。
本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。
本発明を用いれば、新たなインターロイキン阻害剤が提供される。本発明に係るIL−8阻害剤は、IL−8が関与すると考えられる種々の疾患の治療剤として用いられ得る。本発明に係るIL−8阻害剤は、果汁あるいは野菜汁中で培養した上記の乳酸菌が培養液中に分泌するものであることから、安全性が極めて高いので、医薬品として使用されるだけでなく、健康食品、機能性食品などとして日常的に予防的に用いられ得る。
本発明によれば、インターロイキンの産生を阻害するための新たな技術が提供される。このように、本発明は、医薬や食品などに関連する分野における産業の発達に大いに寄与する。

Claims (9)

  1. クトバシラス プランタルムSN35N株(受託番号:NITE BP−6)およびラクトバシラス プランタルムSN13T株(受託番号:NITE BP−7)からなる群より選択される植物乳酸菌の、果汁または野菜汁を培地として用いた培養によって得られかつ菌体を除去して得られる培養上清または該培養上清からの抽出物を有効成分として含有している、IL−8阻害剤(ただし、食品および食品添加物ではない。)。
  2. 上記培地がナシ果汁またはモモ果汁である、請求項1に記載のIL−8阻害剤。
  3. 抗腫瘍剤として用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のIL−8阻害剤。
  4. IL−8阻害剤を製造する方法であって、
    クトバシラス プランタルムSN35N株(受託番号:NITE BP−6)およびラクトバシラス プランタルムSN13T株(受託番号:NITE BP−7)からなる群より選択される植物乳酸菌の、果汁または野菜汁を培地として用いた培養によって得られかつ菌体を除去して得られる培養上清を得る工程
    を包含する製造方法(ただし、該IL−8阻害剤は食品および食品添加物ではない。)。
  5. 上記培地がナシ果汁またはモモ果汁である、請求項4に記載の製造方法。
  6. 上記培地に酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物を添加することをさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
  7. クトバシラス プランタルムSN35N株(受託番号:NITE BP−6)およびラクトバシラス プランタルムSN13T株(受託番号:NITE BP−7)からなる群より選択される乳酸菌の生菌を生存可能に含有し、果汁又は野菜汁を発酵原料としてさらに含有していることを特徴とするIL−8阻害剤を製造するための組成物(ただし、該IL−8阻害剤は食品および食品添加物ではない。)。
  8. 上記発酵原料がナシ果汁またはモモ果汁である、請求項7に記載の組成物。
  9. 酒粕もしくは焼酎蒸留残渣またはこれらの抽出物をさらに含有していることを特徴とする請求項7または8に記載の組成物。
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