(実施形態1)
実施形態1に係る発光機器の検査装置(以下「検査装置」という)1は、図1に示すように、光を発するランプユニットBを有する検査対象物Aに対して、ランプユニットBの発光特性を検査して、検査対象物Aの良否を判定する。ランプユニットBの発光特性とは、ランプユニットBから放射された光の光量や発光領域などをいう。
検査対象物Aは、上記ランプユニットBと、ランプユニットBが装着される本体部Cとを備えている。検査対象物Aは、例えば人体に対して光を照射する美容機器や健康器具などである。以下、本実施形態では、光放射面をユーザの肌に直接接触させて上記ユーザの肌に光を短時間照射して肌を美しくする(抑毛効果を含む)美容機器を検査対象物Aとして説明する。図2(a)には、上記美容機器である検査対象物Aの外観が示されている。
ランプユニットBは、図2(b)に示すように、閃光を発する高輝度キセノン光源(以下「光源」という)B1と、光源B1の放射方向に設けられた反射板B2と、反射板B2のうち光の放射側(図2(b)の上側)に設けられたレンズB3とを備えている。ランプユニットBは、本体部Cに対して脱着可能である。
光源B1から放射された光の一部は、図2(c)に示すように、反射板B2で反射することがない直射光L1(図2(c)の実線)としてレンズB3を透過し、受光面B4を照射する。一方、光源B1から放射された光の残りは、反射板B2で反射した反射光L2(図2(c)の破線)としてレンズB3を透過し、受光面B4を照射する。なお、受光面B4は、検査時では検査装置1の撮像部2(図1参照)であり、美容機器として実際に使用される場合ではユーザの肌である。
本体部Cは、図1に示すように、ランプユニットBに電圧印加して、ランプユニットBを発光させる。本体部Cは、ランプユニットBに印加する印加電圧の大きさを制御する電圧制御部C1と、ランプユニットBを発光させるために動作する発光回路C2と、ランプユニットBが装着される装着部C3とを備えている。ランプユニットBが装着部C3に装着されると、電圧制御部C1は、発光回路C2を動作させて、ランプユニットBに電圧印加し、ランプユニットBを発光させる。
本実施形態の検査対象物Aは、上述したように、ランプユニットBの光放射面をユーザの肌に直接接触させる機器である。したがって、検査対象物Aの検査項目としては、抑毛に必要な光強度が十分な範囲で得られているか、安全レベルを超えて発光する領域がないか、発光強度不足になっていないかの3つが少なくとも必要である。
続いて、検査装置1について説明する。検査装置1は、撮像機能を有する撮像部2と、撮像部2の光入力側に取り付けられた減光フィルタ3と、ランプユニットBに電圧を印加するマスタ部4と、画像処理機能を有する処理装置5と、表示機能を有する表示装置(表示部)6と、ユーザが操作するときに用いられる操作入力装置7とを備えている。
撮像部2は、ランプユニットBの発光面を一括して撮像するCCDエリアセンサである。本実施形態のCCDエリアセンサは、例えば1000万画素以上の高画素センサである。撮像部2の露光時間は、ランプユニットBの発光時間以上である。図3には、ランプユニットBの発光面を撮像したときの撮像画像21が示されている。撮像画像21は、各画素ごとに濃淡値を画素の位置座標に対応づけた画像である。
図1に示す減光フィルタ3は、ランプユニットBと撮像部2との間に設けられ、撮像部2に入射される光量を減少させる。
マスタ部4は、ランプユニットBに印加する印加電圧の大きさを制御する電圧制御部41と、ランプユニットBを発光させるために動作する発光回路42と、ランプユニットBが装着される装着部43とを備えている。ランプユニットBが装着部43に装着されると、電圧制御部41は、発光回路42を動作させて、ランプユニットBに電圧印加し、ランプユニットBを発光させる。
処理装置5は、画像取込部51と、第1の画像処理部52aと、第2の画像処理部52bと、記憶部53と、第1の判定部54と、第2の判定部55と、電圧調整部56と、第3の判定部57と、画像出力部58と、入力インタフェース59とを備えている。処理装置5のうち第1の画像処理部52aと第2の画像処理部52bと第1の判定部54と第2の判定部55と電圧調整部56と第3の判定部57とは、コンピュータの演算部に構成され、プログラムに基づいて動作する。
画像取込部51は、撮像部2の出力側に接続され、撮像部2で撮像された撮像画像21(図3参照)を取り込む。
第1の画像処理部52aは、画像取込部51で取り込まれた撮像画像21を圧縮処理して、表示用の表示画像62(図10参照)としての圧縮画像を作成する。第1の画像処理部52aによる圧縮処理の手法としては、予め設定された画素数おきに画素を抽出し、抽出した画素で表示画像62を構成する手法がある。なお、上記以外の圧縮処理の手法としては、撮像画像21の複数の画素からなるブロックの平均濃淡値を1画素として表示画像62を構成する手法がある。
第2の画像処理部52bは、画像取込部51で取り込まれた撮像画像21(図3参照)の全画素の濃淡値をそれぞれ算出する。本実施形態では、撮像画像21が1000万画素のCCDエリアセンサで撮像された画像であるため、データ容量(情報量)が膨大になる。したがって、本実施形態では、第2の画像処理部52bは、50画素×50画素という複数の画素の集まりを1区画とし、区画ごとに、区画内の濃淡値の平均値を算出する。つまり、第2の画像処理部52bは、2672画素×4000画素の撮像画像21を、50画素×50画素を1区画として53×80個の区画に分割し、各区画ごとに区画内の各画素の濃淡値の平均値(以下「平均濃淡値」という)を算出して、処理画像521(図8(a)参照)を作成する。処理画像521は、上記各区画を1画素とし、各区画の平均濃淡値を画素の濃淡値とした画像である。上記1区画(50画素×50画素)は、本発明の「予め設定された単位領域」に相当する。なお、撮像画像21の全領域を複数の区画に分割したときに端数(余り)が発生した場合、撮像画像21の両端にある画素を均等に除外すればよい。
第2の画像処理部52bは、上記処理画像521から、処理画像521の各画素の濃淡値を順に並べた濃淡値数値化データ522(図8(b)参照)を作成する。濃淡値数値化データは、濃淡値の順序により各画素の位置座標を表わす。一例として、第2の画像処理部52bは、ビットマップ画像(bmp画像)の処理画像521からcsv(Comma Separated Values)データ形式の濃淡値数値化データ522を作成する。これにより、第2の画像処理部52bは、画像取込部51で取り込まれた撮像画像21から濃淡値数値化データ522を作成することができる。
また、第2の画像処理部52bは、処理画像521を2値化処理して2値化画像を作成する。具体的には、第2の画像処理部52bは、各画素の濃淡値と適宜選択される閾値とを比較し、濃淡値が閾値以上の画素を白色に変換し、濃淡値が閾値未満の画素を黒色に変換する。上記のように変換された各画素を用いて、第2の画像処理部52bは、2値化画像を作成する。その後、第2の画像処理部52bは、上記2値化画像を用いて発光領域M(図4参照)を抽出する。なお、上記閾値は、発光領域Mと他の領域とを分離できるような値に選択される。例えば各画素を濃淡値の大きさの順に並び替えた濃淡ヒストグラム(濃度ヒストグラム)を用いて、閾値が設定される。
記憶部53には、予め設定された第1の基準濃淡範囲と、予め設定された基準面積範囲と、予め設定された第3の基準濃淡範囲とが記憶されている。さらに、記憶部53には、表示画像62(図10参照)と濃淡値数値化データ522(図8(b)参照)とが記憶されている。このとき、濃淡値数値化データ522は、図9に示すように、ランプ番号やシリアル番号、検査日時などに関連付けられて記憶部53に記憶されている。さらに、濃淡値数値化データ522と判定基準(第1の基準濃淡範囲や基準面積範囲、第3の基準濃淡範囲)が関連付けられている。濃淡値数値化データ522だけの記憶では、運用途中で判定基準が変更された場合にこれまでの良否判定の追跡が難しいが、本実施形態のように濃淡値数値化データ522を判定基準と関連付けて記憶部53に記憶させることによって、これまでの良否判定の追跡が容易になる。
第1の判定部54は、ランプユニットBがマスタ部4に装着されている場合において、ランプユニットBの発光特性を検査し、ランプユニットBの良否を判定する。具体的には、第1の判定部54は、位置判定機能と、第1の最大値抽出機能と、濃淡値判定機能と、面積値算出機能と、面積値判定機能とを有している。
まず、位置判定機能について説明する。第1の判定部54は、ランプユニットBがマスタ部4に装着されたときに第2の画像処理部52bで抽出された発光領域Mの外郭部M1のすべてが撮像領域内に含まれているか否かを判定することによって、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれているか否かを判定する。発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれている場合(図5(a)参照)、第1の判定部54は、受光量のピーク位置M2を検出することができる。一方、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていない場合(図5(b)参照)、第1の判定部54は、位置M3をピーク位置M2として誤検出する場合がある。発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていない場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品であると判定する。
ここで、発光領域Mの外郭部M1の抽出方法について説明する。第1の判定部54は、例えばプリューウィットフィルタ(Prewitt filter)やソーベルフィルタ(Sobel filter)などの微分フィルタを用いて以下のような微分演算を行う。本実施形態では3×3微分フィルタを用いる。上記微分フィルタでは、上段において左から順に画素A、画素B、画素Cとし、中段において左から順に画素D、画素E、画素Fとし、下段において左から順に画素G、画素H、画素Iとする。第1の判定部54は、微分フィルタの中心画素Eを着目画素とし、画素Eに隣接する8画素(以下「8近傍」という)A〜D,F〜Iの濃淡値を用いてX方向(横方向)の濃淡変化ΔXと縦方向(Y方向)の濃淡変化ΔYとを以下の式1と式2とによって求める。第1の判定部54は、画素ごとに濃淡値と微分フィルタの係数との積を求め、求めた積の総和をΔXおよびΔYとする。式1および式2において、A〜Hは対応する画素の濃淡値を示す。
ΔX=(A+D+G)−(C+F+I)(式1)
ΔY=(A+B+C)−(G+H+I)(式2)
第1の判定部54は、画素Eの近傍領域における濃淡変化を表わす微分絶対値abs(E)を式3によって求める。
abs(E)=(ΔX2+ΔY2)1/2(式3)
式3から明らかなように、微分絶対値abs(E)は、画素Eの近傍領域における濃淡値の変化率を表わす。つまり、微分絶対値absは、処理画像521(図8(a)参照)の画素の濃淡変化が大きい部位ほど大きくなる。その後、第1の判定部54は、処理画像521の画素を順次走査し、微分絶対値absが規定値以上である画素をエッジ画素とし、連続する複数のエッジ画素を外郭部M1として抽出する。
続いて、第1の最大値抽出機能について説明する。第1の判定部54は、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれている場合(図5(a)参照)、処理画像521における各画素の濃淡値のうち、発光領域M内にある画素の濃淡値を第1の濃淡値という。また、第1の判定部54は、処理画像521における各画素の濃淡値の最大値(以下「第1の最大濃淡値」という)を抽出する。
続いて、濃淡値判定機能について説明する。第1の判定部54は、図4に示すように、第1の最大濃淡値(最大光強度、図4のX1)が濃淡上限値(図4の光強度Pmax)以下であるか否かを判定する。濃淡上限値とは、第1の基準濃淡範囲の上限値である。図4に示すように第1の最大濃淡値が濃淡上限値を超える場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品であると判定する。
一方、第1の最大濃淡値が濃淡上限値以下である場合、第1の判定部54は、発光領域Mの外郭部M1で囲まれた領域において、すべての第1の濃淡値(光強度)が第1の基準濃淡範囲(図4の光強度(Pmax−Pmin))内であるか否かを判定する。いずれかの第1の濃淡値が第1の基準濃淡範囲外である場合(図4のX2)、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品であると判定する。上記より、発光領域Mが環状(ドーナツ状)になっている場合(図4に示すように非発光領域Nがある場合)も、ランプユニットBは不良品と判定される。
次に、面積値算出機能および面積値判定機能について説明する。図1に示す第1の判定部54は、すべての第1の濃淡値が第1の基準濃淡範囲内である場合、面積値算出機能として、発光領域M(図5(a)参照)の面積値(以下「発光面積値」という)を算出する。その後、第1の判定部54は、面積値判定機能として、発光面積値が基準面積範囲内であるか否かを判定する。発光面積値が基準面積範囲内である場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品ではないと判定する。一方、発光面積値が基準面積範囲外である場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品であると判定する。なお、濃淡値判定機能と面積値判定機能の組み合わせを第1の良否判定機能とする。
上記より、第1の判定部54は、すべての第1の濃淡値が第1の基準濃淡範囲内であるとともに発光面積値が基準面積範囲内である場合、ランプユニットBが不良品ではないと判定する。つまり、上記の場合、ランプユニットBは良品と判定される。第1の判定部54の判定結果61は、記憶部53に記憶される。
第2の判定部55は、第1の判定部54で良品と判定されたランプユニットBが本体部Cに装着された場合において、ランプユニットBの発光特性を検査し、本体部Cの良否を判定する。具体的には、第2の判定部55は、第2の最大値抽出機能と、電圧調整値算出機能と、第2の良否判定機能とを有している。
まず、第2の最大値抽出機能として、第2の判定部55は、ランプユニットBが本体部Cに装着された後に撮像画像21から作成された処理画像521(図8(a)参照)における各画素の濃淡値を第2の濃淡値とし、第2の濃淡値の最大値(以下「第2の最大濃淡値」という)を抽出する。
続いて、電圧調整値算出機能について説明する。第2の判定部55は、第1の最大濃淡値に対する第2の最大濃淡値の相対値として、第1の最大濃淡値に対する第2の最大濃淡値の比率、または第1の最大濃淡値と第2の最大濃淡値との差分を求める。上記相対値はアナログ値である。第2の判定部55は、上記相対値を量子化して、本体部CからランプユニットBへの印加電圧を調整するための電圧調整値を求める。つまり、電圧調整値は、電圧制御部C1が印加電圧の大きさを制御するための指示値である。上記相対値を量子化して求めた離散値が電圧調整値となる。
続いて、第2の良否判定機能について説明する。第2の判定部55は、電圧調整値が後述の電圧調整部56の調整範囲外である場合、本体部Cが不良品であると判定する。一方、電圧調整値が電圧調整部56の調整範囲内である場合、第2の判定部55は、本体部Cが良品であると判定する。第2の判定部55の判定結果61は、記憶部53に記憶される。
電圧調整部56は、本体部CからランプユニットBに印加される印加電圧の大きさを調整する。第2の判定部55で求められた電圧調整値が調整範囲内である場合、電圧調整部56は、上記電圧調整値に応じて、上記印加電圧を変更するように電圧制御部C1に指示する。
第3の判定部57は、電圧調整部56からの指示に応じて電圧制御部C1で印加電圧が変更された場合に、本体部Cに装着されたランプユニットBの発光特性を検査し、検査対象物Aの良否を判定する。具体的には、第3の判定部57は、第3の最大値抽出機能と、第3の良否判定機能とを有している。
まず、第3の最大値抽出機能として、第3の判定部57は、電圧調整部56からの指示に応じて電圧制御部C1で印加電圧が変更された後に撮像部2で撮像された撮像画像21から作成された処理画像521(図8(a)参照)における各画素の濃淡値を第3の濃淡値とし、第3の判定部57は、第3の濃淡値の最大値(以下「第3の最大濃淡値」という)を抽出する。
なお、第3の判定部57の第3の最大値抽出機能は、第1の判定部54の第1の最大値抽出機能および第2の判定部55の第2の最大値抽出機能と共通のハードウェアで構成されていてもよいし、別々のハードウェアで構成されていてもよい。
続いて、第3の良否判定機能について説明する。第3の判定部57は、第3の最大濃淡値が第3の基準濃淡範囲内である場合、検査対象物Aが良品であると判定する。一方、第3の最大濃淡値が第3の基準濃淡範囲外である場合、第3の判定部57は、検査対象物Aが不良品であると判定する。第3の判定部57の判定結果61は、記憶部53に記憶される。
上記第1〜3の判定部54,55,57は、これまでに記憶部53に記憶されている濃淡値数値化データ522(図8(b)参照)に基づいて、判定基準(第1の基準濃淡範囲、基準面積範囲、第3の基準濃淡範囲)を変更する機能をそれぞれ有している。これにより、検査対象物Aの良品傾向が変化してきた場合でも、上記良品傾向に沿った判定基準に変更することができる。また、第1〜3の判定部54,55,57は、判定基準が複数あって、複数の判定基準から第1〜3の判定部54,55,57が実際に用いる判定基準を選択する機能を有している。
画像出力部58には、表示装置6が接続されている。入力インタフェース59には、操作入力装置7が接続されている。
表示装置6は、例えば液晶ディスプレイなどであり、図10に示すように、第1〜3の判定部54,55,57の各判定結果の少なくとも1つ(図10の61)を表示し、さらに表示画像62も表示する。また、判定結果61とともに、判定条件63も表示装置6に表示される。さらに、表示装置6は、過去の検査結果のヒストグラム64を表示することも可能である。表示装置6が表示画像62を表示することによって、ユーザは、データ解析時に表示画像62を視認することができ、検査対象物Aの配光分布の2次元的特徴を認識することができる。
図1に示す操作入力装置7は、ユーザが操作するときに用いられる入力装置である。ユーザによる操作入力装置7への操作に応じた入力情報は、入力インタフェース59を介して、処理装置5に取得される。例えば検査履歴(図9参照)が表示装置6に表示されている場合に、上記検査履歴の中から1つの検査を選択する操作がユーザによって操作入力装置7にされた場合、処理装置5は、操作入力装置7からの入力情報を取得し、選択された検査に関する検査データ(判定結果61および表示画像62)を表示装置6に出力する。表示装置6では、ユーザが選択した検査に関する判定結果61および表示画像62を表示する。
次に、本実施形態に係る検査装置1を用いた発光機器の検査方法について図6を用いて説明する。検査装置1は、発光領域M(図4参照)の面積が実用に十分な照射範囲であるか否か、発光領域M内の照射量が設定範囲内であるか否かを検査する。
まず、ランプユニットBがマスタ部4に装着される。上記ランプユニットBの発光面を撮像部2が撮像する(図6のS1)。続いて、第1の画像処理部52aは、ステップS1で撮像された撮像画像21(図3参照)を圧縮処理して表示画像62(図10参照)を作成する(S2)。第2の画像処理部52bは、撮像画像21から処理画像521(図8(a)参照)を作成し、上記処理画像521から濃淡値数値化データ522(図8(b)参照)および2値化画像を作成し、さらに2値化画像から発光領域Mを抽出する(S3)。
その後、第1の判定部54が、ステップS3で作成された処理画像521の各画素の濃淡値から第1の最大濃淡値を抽出する。第1の最大濃淡値が濃淡上限値以下である場合、第1の判定部54は、発光領域M内のすべての第1の濃淡値が第1の濃淡範囲内であるか否かを判定する(S4)。いずれかの第1の濃淡値が第1の濃淡値範囲内ではない場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品であると判定する(S19)。一方、すべての第1の濃淡値が第1の濃淡範囲内である場合、第1の判定部54は、発光面積値が基準面積範囲内であるか否かを判定する(S5)。発光面積値が基準面積範囲内である場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが良品であると判定する。第1の判定部54の判定結果61は記憶部53に記憶される(S6)。一方、発光面積値が基準面積範囲内ではない場合、第1の判定部54は、ランプユニットBが不良品であると判定する(S19)。
その後、良品と判定されたランプユニットBは、マスタ部4から取り外され、本体部Cに装着される。上記ランプユニットBの発光面を撮像部2が撮像する(S7)。続いて、第1の画像処理部52aは、ステップS7で撮像された撮像画像21を圧縮処理して表示画像62を作成する(S8)。第2の画像処理部52bは、撮像画像21から処理画像521を作成し、上記処理画像521から濃淡値数値化データ522および2値化画像を作成する(S9)。
その後、第2の判定部55は、ステップS9で作成された処理画像521の各画素の濃淡値の最大値である第2の最大濃淡値を抽出する。続いて、第2の判定部55は、第1の最大濃淡値に対する第2の最大濃淡値の相対値から電圧調整値を作成し、電圧調整値が調整範囲内であるか否かを判定する(S10)。電圧調整値が調整範囲内ではない場合、第2の判定部55は、本体部Cが不良品であると判定する(S19)。一方、電圧調整値が調整範囲内である場合、第2の判定部55は、印加電圧の調整が必要であるか否かを検討する(S11)。印加電圧の調整が不要である場合、第2の判定部55は、本体部Cが良品であると判定する(S18)。印加電圧の調整が必要である場合、電圧調整部56は、本体部CからランプユニットBへの印加電圧を調整するように電圧制御部C1に指示する(S12)。第2の判定部55による判定結果61は記憶部53に記憶される(S13)。
ところで、電圧調整部56によって本体部CからランプユニットBへの印加電圧が調整された場合、ほとんどのランプユニットBの発光特性は正常になる。しかし、電圧調整値がアナログ値ではなく段階値(ステップ値)であるため、実際の印加電圧と目標の印加電圧とでずれが生じる場合がある。したがって、本実施形態の検査装置1は、検査対象物Aを最終判定するために、以下のステップを実行する。
ステップS13が実行された後、ランプユニットBが本体部Cに装着されたまま、上記ランプユニットBの発光面を撮像部2が撮像する(S14)。続いて、第1の画像処理部52aは、ステップS14で撮像された撮像画像21を圧縮処理して表示画像62を作成する(S15)。第2の画像処理部52bは、撮像画像21から処理画像521を作成し、上記処理画像521から濃淡値数値化データ522および2値化画像を作成する(S16)。
その後、第3の判定部57は、ステップS16で作成された処理画像521から第3の最大濃淡値を抽出し、第3の最大濃淡値が第3の基準濃淡範囲内であるか否かを判定する(S17)。第3の最大濃淡値が第3の基準濃淡範囲内である場合、第3の判定部57は、検査対象物Aが良品であると判定する(S18)。一方、第3の最大濃淡値が第3の基準濃淡範囲内ではない場合、第3の判定部57は、検査対象物Aが不良品であると判定する(S19)。ステップS18,S19の判定結果61は記憶部53に記憶される(S20)。判定結果61および表示画像62は表示装置6に表示される(S21)。
以上、本実施形態によれば、表示画像62を撮像画像21そのものではなく上記撮像画像21の圧縮画像とし、第2の画像処理部52bにおいて、各画素ごとに濃淡値を画素の位置座標に対応付けた撮像画像21から、各画素の濃淡値のみを順に並べ上記濃淡値の順序により各画素の位置座標を表わす濃淡値数値化データ522を作成し、上記圧縮画像と上記濃淡値数値化データ522とを記憶部53に記憶させることによって、表示画像62および濃淡値数値化データ522のデータ容量を撮像画像21のデータ容量より小さくすることができるので、撮像画像21をそのまま記憶部53に記憶させる場合に比べて、1回の検査あたりに必要な記憶容量を低減することができ、多くの検査結果を記憶部53に記憶させることができる。
また、本実施形態によれば、濃淡値数値化データ522と判定基準とを関連付けて記憶することによって、運用途中で判定基準が変更されたとしても、過去の検査内容を容易に追跡することができる。
さらに、本実施形態によれば、運用途中において検査対象物Aの良品傾向が変化しつつある場合に、これまでの濃淡値数値化データ522の傾向をフィードバックし、上記良品傾向に沿った判定基準に変更することができるので、常に最適な判定基準を用いて検査対象物Aを検査することができる。
また、本実施形態によれば、検査態様に応じて最適な判定基準を選択することができる。
さらに、本実施形態によれば、撮像部2がエリアセンサであることによって、スポット計測を繰り返して発光面の2次元分布を求める場合に比べて、ランプユニットBの発光面の撮像が1回ですむので、検査時間を短縮することができる。
また、本実施形態によれば、ランプユニットBがマスタ部4に装着されている場合に、撮像画像21の発光領域Mの外郭部M1で囲まれた領域における各区画(単位領域)の受光量に対応する第1の濃淡値が第1の基準濃淡範囲内であるとともに発光領域Mの面積値(発光面積値)が基準面積範囲内であることを判定することによって、検査対象物Aの発光特性を精度よく検査して、検査対象物Aの良否を判定することができる。
さらに、本実施形態によれば、第2の最大濃淡値が第1の最大濃淡値に比べて調整できないほどずれていた場合、第2の判定部55で本体部Cが不良品であると判定されるので、電圧調整部56による無駄な電圧調整を防止することができる。
また、本実施形態によれば、本体部CからランプユニットBへの印加電圧の大きさを調整することによって、本体部Cに装着されたランプユニットBの発光特性が所定条件を満たすようにすることができるので、ランプユニットBが装着される本体部Cの歩留まりを向上させることができる。
さらに、本実施形態によれば、本体部CからランプユニットBへの印加電圧を調整した後に、第3の判定部57がランプユニットBの発光特性を再検査することによって、検査対象物Aの良否を最終判定することができる。
また、本実施形態によれば、撮像部2に入射される光量を減少させる減光フィルタ3を備えることによって、撮像部2のCCD素子(受光素子)に入る光量の飽和を防止することができる。特に、ランプユニットBからの光が閃光のような単位時間あたりの光エネルギーが高い場合に効果的である。
さらに、本実施形態によれば、撮像部2の露光時間をランプユニットBの発光時間以上にすることによって、ランプユニットBからの光をすべて撮像部2で取り込むことができる。
また、本実施形態によれば、ランプユニットBの発光領域Mの位置ばらつきが大きい場合に、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていることを判定することによって、ランプユニットBの良否判定の精度を高めることができる。このとき、発光領域Mの外郭部M1のすべてが撮像領域内に含まれていることを確認することによって、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていることを確実に判定することができる。
さらに、本実施形態のようにランプユニットBが閃光を発する場合に、ランプユニットBによる1回の発光で撮像部2が発光面を一括して撮像することができるので、検査対象物Aの検査時間の短縮により効果的である。
なお、本実施形態の変形例として、第1の判定部54は、位置判定機能として、図7に示すように発光領域Mの重心Gを求め、上記重心Gを用いて、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれているか否かを判定してもよい。図7(a)に示すように重心Gが予め設定された領域G1内に含まれる場合、第1の判定部54は、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていると判定する。図7(b)に示すように発光領域Mの重心Gが領域G1外である場合、第1の判定部54は、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていないと判定する。以下の実施形態2,3においても同様である。
ここで、発光領域Mの重心Gの求め方について説明する。第1の判定部54は、実施形態1の方法によって、いくつか(n個)のエッジ画素を抽出する。その後、第1の判定部54は、n個のエッジ画素の座標(a1,b1),(a2,b2)・・・(an,bn)から、発光領域Mの重心Gの座標(x,y)を、x=(a1+a2+・・・+an)/n、y=(b1+b2+・・・+bn)/nとして算出する。
上記変形例によれば、発光領域Mの重心Gが撮像領域の中心付近(領域G1内)にあることを確認することによって、発光領域Mの全領域が撮像領域内に含まれていることを簡単に判定することができる。
また、本実施形態では、撮像画像21を複数の区画に分割し、各区画ごとに区画内の各画素の濃淡値の平均値を第1の濃淡値として求めているが、本実施形態の変形例として、各画素の濃淡値をそれぞれ第1の濃淡値としてもよい。変形例の場合、1つの画素の領域が、本発明の「予め設定された単位領域」に相当する。上記変形例は、各区画ごとに濃淡値の平均値を求める必要がないため、撮像画像21の画素数が少ない場合に有効である。
本実施形態では、ランプユニットBと本体部Cとで構成される機器を検査対象物Aとした場合について説明したが、検査対象物Aは、上記のように2つの部分に分離できる機器に限定されず、光源部分と上記光源部分を発光させる部分とが一体に構成された機器であってもよい。以下の実施形態2,3においても同様である。
この場合、本実施形態のマスタ部4は不要である。第1の判定部54は、各区画(単位領域)の受光量に対応する第1の濃淡値を用いて、検査対象物Aの良否判定を行う。その後、第2の判定部55は、第2の濃淡値を抽出する必要はなく、第1の最大濃淡値から電圧調整値を作成し、電圧調整値が調整範囲内であるか否かを判定する。電圧調整値が調整範囲内ではない場合、第2の判定部55は、検査対象物Aが不良品であると判定する。
上記の場合においても、検査対象物Aの発光特性を精度よく検査して、検査対象物Aの良否を判定することができる。
また、本実施形態では、第1の判定部54において、各区画の受光量に対応する第1の濃淡値と発光領域Mの面積値(発光面積値)とを用いて良否判定を行ったが、本実施形態の変形例として、検査対象物Aの種類や用途に応じては、第1の判定部54が、第1の濃淡値と発光面積値のいずれ一方のみを用いて良否判定を行ってもよい。以下の実施形態2,3においても同様である。例えば検査対象物Aの反射板B2がなく反射光L2がない場合、反射板B2のばらつきが少ない場合、発光面積値は推定できるので、第1の判定部54は、各区画の第1の濃淡値のみを用いて良否判定を行えばよい。一方、例えば懐中電灯など、光の光量がある程度あれば、精度が問われない場合、第1の判定部54は、発光面積値のみを用いて良否判定を行えばよい。
(実施形態2)
実施形態2に係る検査装置1は、図11に示すように、処理装置5とは別体にデータ管理装置8を備え、処理装置5とデータ管理装置8との間がネットワークNWで接続されている点で、実施形態1に係る検査装置1(図1参照)と相違する。なお、本実施形態の処理装置5は、画像取込部51と、第1の画像処理部52aと、第2の画像処理部52bと、第1の判定部54と、第2の判定部55と、第3の判定部57とを実施形態1の処理装置5(図1参照)と同様に備えている。
データ管理装置8は、例えばパーソナルコンピュータなどであり、記憶部81と、管理部82とを備えている。記憶部81は、例えばハードディスクドライブ(HDD)装置などであり、実施形態1の記憶部53(図1参照)と同様に、第1の基準濃淡範囲と、基準面積範囲と、第3の基準濃淡範囲と、表示画像62(図10参照)と、濃淡値数値化データ522(図8(b)参照)とを記憶している。管理部82は、例えばパーソナルコンピュータの中央演算装置(CPU)などであり、記憶部81への記憶を管理している。
上記データ管理装置8は、ネットワークNWを介して処理装置5からのデータ(判定結果61および表示画像62を含む)を取得する。ネットワークNWとしては、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)などが用いられる。このとき、撮像画像21のデータ容量が大きいため、処理装置5が撮像画像21をデータ管理装置8に転送しようとすると、検査対象物Aの検査時間に対して転送に時間がかかり、すべての検査に関する検査データをデータ管理装置8に転送することが難しい。そこで、本実施形態では、処理装置5が撮像画像21そのものではなく、表示画像62(図10参照)および濃淡値数値化データ522(図8(b)参照)を判定結果61(図10参照)とともにデータ管理装置8に転送する。
本実施形態の表示装置6は、処理装置5に接続されるのではなく、データ管理装置8に接続されている。したがって、本実施形態の表示装置6は、処理装置5からのデータ(判定結果61および表示画像62を含む)を直接取得するのではなく、データ管理装置8を介して取得する。表示装置6は、実施形態1と同様に、第1〜3の判定部54,55,57の判定結果61および表示画像62を表示する(図10参照)。
以上、本実施形態によれば、撮像画像21よりデータ容量の小さい判定結果61および表示画像62が第1の画像処理部52aおよび第2の画像処理部52bからデータ管理装置8を介して表示装置6へ転送されることによって、撮像画像21そのものを転送する場合に比べて、表示装置6に必要なデータを高速に第1の画像処理部52aおよび第2の画像処理部52bから表示装置6に転送することができる。これにより、各検査において検査時間に対して転送時間が遅くならないので、すべての検査に関する検査データを転送することができる。
(実施形態3)
実施形態3では、図12に示すように、複数(図示例では6台)の検査装置1,1・・・を備える検査システムSについて説明する。なお、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
同種の検査対象物Aの検査に対して複数の検査装置1,1・・・を用いる場合、複数の検査装置1,1・・・間で撮像部2の感度や減光フィルタ3にばらつきがあるため、複数の検査装置1,1・・・間で撮像画像21(図3参照)の濃淡値のばらつきが発生する。
そこで、本実施形態では、各検査装置1は、図12には図示していないが、撮像部2と、減光フィルタ3と、マスタ部4と、処理装置5と、表示装置6と、操作入力装置7とを実施形態1の検査装置1(図1参照)と同様に備えているとともに、図12に示すように、補正係数を用いて第1の濃淡値、第2の濃淡値および第3の濃淡値を補正する補正部9をさらに備えている。補正係数は、他の検査装置1との撮像画像21の濃淡ばらつきを補正するために、各検査装置1ごとに予め設定された係数である。補正部9では、補正後の第1の濃淡値が新たな第1の濃淡値となり、補正後の第2の濃淡値が新たな第2の濃淡値となり、補正後の第3の濃淡値が新たな第3の濃淡値となる。なお、補正部9は、処理装置5の第1の画像処理部52aと第2の画像処理部52bと、第1の判定部54と第2の判定部55と電圧調整部56と第3の判定部57とともに、コンピュータの演算部に構成され、プログラムに基づいて動作する。
以上、本実施形態によれば、各検査装置1において、検査装置1ごとに設定された補正係数を用いて第1の濃淡値、第2の濃淡値および第3の濃淡値を補正することによって、検査装置1,1・・・間の検査ばらつきを低減することができる。