JP5497005B2 - 液体混合物の調製 - Google Patents

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Description

本発明は、制御されたpH及びイオン強度の液体混合物の生成方法及びかかる方法に適用できる装置に関する。本発明は、正確な緩衝液の調製が必要とされるあらゆる状況で遍く有用である。
所定のpHと適宜所定のイオン強度を有する緩衝液が用いられる場合のように、正確な組成が分かった液体を得ることが重要であることが多い。さらに、多くの場合、液体の組成は、各瞬間に正確に知り制御すべきものであるだけでなく、時間の経過と共に精密に、且つ制御された形で変化すべきものでもある。
液体の組成が極めて重要な1つの応用例は、液体クロマトグラフィであり、より具体的には、クロマトグラフィマトリックスからの単離標的分子の溶出すなわち放出が勾配溶出によって実施される応用例である。例えば、生体分子を分離し浄化する場合に使用されることの多い方法であるイオン交換クロマトグラフィでは、例えば、段階的な溶出を利用する工業プロセスの設計を可能にする最適な溶出条件を見つけるために、勾配溶出が使用されることがある。公知のように、この場合、溶出液は不活性塩を含有し、勾配は、この塩の濃度を変化させることによって実現される。塩濃度、すなわちイオン強度が変化するとpHも影響を受けることが公知であり、溶出液のpH及びイオン強度が、イオン交換樹脂上でのタンパク質分離の選択性を制御する2つの最も重要なパラメータであることが多くの文献に記載されている。
米国特許第5112949号(Vukovich)は、勾配を使用して分離を実施する自動化システムに関する。勾配が徐々に変化するこのような手動システム及び自動化システムに関する問題は、勾配が浅くなった場合に、溶出を実施するのに時間がかかり、勾配が険しくなった場合に、注目の各生体分子が溶出するのではなく、生体分子の溶出が重なり合うことである。このため、各生体分子種が分離されたそれ自体の画分として収集されるのではなく、数種の生体分子が各画分として収集されることになる。
米国特許第7138051号(De Lamotte)は、生体分子を分離するためのクロマトグラフィシステム、方法、及びソフトウェアに関する。詳細には、この特許は、溶出緩衝液に添加される成分の濃度を、添加される成分の濃度が徐々に変化する溶出緩衝液を形成するように変化させる、クロマトグラフィカラムから溶出される生体分子の分離の最適化に関する。
岡本(Hirokazu Okamoto et al,Pharmaceutical Research.Vol.14,No.3,1997:Theory and Computer Programs for Calculating Solution pH,Buffer formula,and Buffer Capacity for Multiple Component System at a Given Ionic Strength and Temperature)は、所与のイオン強度及び温度での溶液pH、緩衝液処方、及び緩衝能を算出するコンピュータプログラムを発表した。しかし、岡本等によって調製された緩衝液は、0.3Mのような低い濃度であっても塩濃度が高くなるにつれてpHの変化が激しくなる。従って、岡本の方法は、やはり塩を含む、pHが一定の緩衝液を生成するのに十分な方法ではない。
従来の勾配形成方法では、一定のpHでのイオン強度勾配が得られるように不活性塩と所定のpHを有する緩衝液とを含んでなる溶出液が慎重に調製されている。タンパク質の分離の最適化は、不活性塩勾配の勾配を変化させ且つ/或いは緩衝系をpHの異なる緩衝系と交換することによって実現されている。
この初期の従来技術では、最適化において所定のpH及び塩濃度を有する多数の緩衝液が調製されており、この場合、分離が再現可能になるように慎重に滴定を行う必要があった。このような方法が、時間がかかると共に厄介な方法であることは明らかである。
適度のイオン強度(最大100mM)での緩衝液pHを算出する方法が文献に記載されており、この方法は、緩衝液に存在する様々な荷電種及び非荷電種間の平衡についての数式を代数計算又はコンピュータによって解くことに基づく方法である。
ある塩基性種(塩基B又は共役塩基A-)が対応する酸性種(それぞれ共役酸BH+又は酸HA)と平衡であれば、平衡は次のように記載できる。
++塩基性種<==>酸性種+ 式1.1
対応する平衡定数Kaは次の通り定義される。
a=(H+)(塩基性種)/(酸性種+) 式1.2
式中、括弧は各種の活量を示す。数式1.2の両辺の対数をとり、−log(H+)として定義されたpHを求めると、次式が与えられる。
pH=pKa+log{(塩基性種)/(酸性種)} 式1.3
上式は、Henderson−Hasselbach式と呼ばれることもある。活量を対応する濃度ではなく数式1.2で使用する理由は、主として静電相互作用のために、関連するイオンが環境から遮断される傾向があることである。しかし、pH測定値はプロトンの活量の直接観測値であるが、例えばイオンの量及び体積の計量、ピペット測定、又はポンピング測定によって、緩衝液イオンの対応する活量ではなく濃度が観察される。各イオンの活量は、活量係数φによって対応する濃度に関係付けられる。
(種)=φ[種] 式1.4
無限希釈の理想的な状態では、φは1になり、あらゆるイオンの活量は対応する濃度に等しくなる。しかし、実際のケースでは、イオン強度は零とは異なり、様々な種の活量係数が1未満になる。
いわゆるDebye Huckel理論において、次式として知られる、上記の逸脱に関する十分に確立されたモデルが開発されている。
−logφ=(AZ20.5)/(1+0.33*108aI0.5) 式1.5
式中、Aは定数、より厳密に言えば温度依存パラメータ〜0.51である。公知のデータを使用して、Aの値をA=0.4918+0.0007*T+0.000004*T^2として正確に算出することができる。ここで、Tは摂氏単位の温度である。Zは、イオンの電荷であり、数量a、すなわち水和イオンの半径(Å単位)は、Debye及びHuckelの原論文では「正又は負のイオン平均接近距離」と記載されている。
Kiellandによる上述の論文に示されている表には、イオン径パラメータとも呼ばれるこのパラメータが、様々なイオン種についてそれぞれ異なるように示す。Iは、次式のようにイオン強度である。
I=1/2Σ(Cii 2)(全てのイオンを含む) 式1.6
iは濃度であり、Ziは溶液中に存在するイオンの電荷である(電子電荷単位)。
数式1.3に数式1.4を挿入すると、活量ではなく濃度に関してpHが与えられる。
pH=pKa+log{φb[塩基性種]/φa[酸性種]}
=pKa+logφb−logφa+log{[塩基性種]/[酸性種]}
=pKa’+log{[塩基性種]/[酸性種]} 式1.7
式中、
pKa’=pKa+logφb−logφa 式1.8
は、様々な緩衝液種の測定可能な濃度値を使用できるようにする見掛けのpKa値である。 pKa’の値は、数式1.8に数式1.5を挿入して次式を得ることによって算出することができる。
pKa’=pKa+(AZa 20.5)/(1+0.33*108a0.5)−(AZb 20.5)/(1+0.33*108b0.5) 式1.9
式中、それぞれ酸及び塩基に対応するパラメータを指定するのに下付き文字a及びbを導入する必要があった。従って、以下のように定義される。
a=酸性種の電荷
b=塩基性種の電荷
a=酸性種のイオン径パラメータ
b=酸性種のイオン径パラメータ。
デバイ−ヒュッケル(Debye−Huckel)理論をpH計算に適用すると、緩衝液のpKa値(熱力学的pKa値と呼ばれる)が、数式1.9によって与えられる対応するpKa’値に修正される。数式1.9のパラメータの大部分は容易に推定することができる。最も厄介なパラメータはaである。
Guggenheim & Schindler(Guggenheim EA & Schindler TD.(1934)J.Phys.Chem.33.533参照)は、全ての緩衝液分子について3Åに設定されたパラメータaを近似することによっていくらか簡略化された公式を得ることを提案した。
pKa’=pKa+(AZa 20.5)/(1+I0.5)−(AZb 20.5)/(1+I0.5) 式1.10
上記の数1.10は、通常文献に見られるイオン強度補正に関する公式である。場合によっては、この数式の右辺に補正項が追加され、様々な緩衝液についてより高いイオン強度での精度損失が補償される。しかし、こうすることによって得られる精度は、イオン強度が高く、例えばイオン交換クロマトグラフィ及びHICにおける勾配溶出で一般に使用されている範囲内である1M程度であるときには不十分である。
Kielland(Jacob Kielland in Activity Coefficients of Ions in Aqueous Solutions,September 1937)は、液体におけるイオンの活量係数を研究し、水和イオンの直径を考慮したイオン活量係数の拡張表を作成している。Kiellandによって提示されたデータは、4つの異なるモデル、すなわち、結晶半径及び変形性を考慮したBoninoのモデル、イオン移動度を考慮した公知の数式108ai=182zj/l∞、Brullによる上記の数式の経験的修正形、最後にUlrichエントロピー欠損法を使用して得られたデータである。この4つのモデルの四捨五入された平均値を使用して、この研究で報告されたデータが得られた。Kiellandによって提示されたai値は、2.5から11までかなりばらつきがあり、イオンの性質に依存するこのばらつきに基づく活量係数について非一般モデル、すなわち無機イオンに関する1つの数式と有機イオンに関する異なる1つの数式が提案されている。
米国特許第6221250号(Stafstrom)は、パラメータaの前述の近似を有利に利用した、液体混合物を調製する方法に関する。より具体的には、混合物を調製する開示された方法は、以下の成分、すなわち(i)1種以上の緩衝種、(ii)酸又は塩基、(iii)任意成分としての塩、及び(iv)溶媒を含む。液体混合物のpH及びイオン強度の相互関係を考慮して、混合物の所定のpHが各瞬間に得られるように成分(i)〜(iv)の比率を同時に変化させる。この方法は、緩衝液固有の補正係数を使用して勾配に沿った一定のpHを実現する、修正された反復Guggenheim−Schindler(以下の数式1.10)式の使用に基づく方法である。従って、ある種の状況では、この方法の欠点は、新しい緩衝液を導入する必要がある場合に再び計算を行う必要があることである。
制御されたpH及びイオン強度の液体混合物を調製することが必須である他の応用例は、ハイスループットスクリーニング、すなわち創薬で使用されることが多いが生物学及び化学の分野にも関連する科学的実験方法である。現代のロボット工学、データ処理、並びに制御ソフトウェア、液体処理装置、及び高感度検出器を組み合わせることにより、HTSによって、研究者は、数百万の生化学的試験、遺伝子検査、又は薬理試験を短時間で効果的に実施することができる。このプロセスによって、特定の生体分子経路を変調する活性化合物、抗体、又は遺伝子を迅速に同定することができる。これらの実験の結果は、例えば薬物設計、及び生物学における特定の生化学プロセスの相互作用又は役割の理解のための出発点となる。
HTSの有用性における重要な要素は自動化である。単一のアッセイプレートの寿命を通じたプロセス、すなわちアッセイプレートの作製から最後の分析に至るまでのプロセスの大部分を専用のロボットが実施することが多い。HTSロボットは通常、多数のプレートを同時に準備して分析し、さらにデータ収集プロセスを高速化する。しかし、このようなロボットを正確に機能させるには、やはりpHとイオン強度が精密に制御される緩衝液等の液体混合物を調製することが必須である。
ますます重要になりつつあるHTS分野内の1つの応用例は、pH及びイオン強度が標的及び汚染物質の結合挙動を支配するためpH及びイオン強度の役割が非常に重要であるハイスループットプロセス開発(HTPD)である。このようなハイスループットプロセスを首尾よく設計することによって、質量移動速度が速く、従ってプロセスコストが低く、且つ溶出が最適であり、従って回復速度が最高になる条件を正確に予測することができる。しかし、設計をこのように首尾よく行うには、pHやIのような多数の条件を短時間で準備するのを可能にする自動的な緩衝液調製が必要であるか、或いは自動的な緩衝液調製によって設計が少なくとも大幅に改善される。
精密且つ十分に制御された緩衝液調製が必要になる他の応用例は、マイクロプレート及び他の実験機器形態である。マイクロプレート及びフィルタプレートによるアッセイにおける多数の段階は、例えばマルチピペット及び真空ブロックを処理に使用し、プレートリーダを結果の検出に使用することによって容易に並列化される。より高いレベルの自動化、すなわちプレートの自動搬送は必要とされないことが多い。このことは多数の「スループット応用例」にも当てはまる。なぜなら、実験の数における係数96又は384が、既に最初の段階でプレート統合によって実現されるからである。しかし、プレートに個々のウェルを準備する退屈な作業を伴う場合がある。個々のウェルの検出及び分析には当然、専用の省スペースプレートリーダが使用されるが、1枚のマイクロプレートの個々のウェルにおける緩衝液の調製用に、同様な専用の、手頃な価格の省スペース解決策はない。TECANは、その実験室自動化プラットフォームを使用してマイクロプレートにおいて緩衝液を調製するためのソフトウェアを作成することによってこの問題に対処している会社である。これは一見して的確な解決手段のように見えるが、装備の整った自動化実験室での比較的単純な作業に高価な自動化インフラストラクチャが数時間にわたって占有されることになる。さらに、小さな実験室がTECANの解決手段から利益を得るのに多額の資金が必要になる。
従って、例えば一次自動化インフラストラクチャにおける作業負荷を低減させるために、自動化解決手段と一緒に作業ステーションとして使用することのできる、独立型ユニットのような自動分配装置も必要である。
国際公開第9731692号
本発明の一態様は、液体混合物のpH及びイオン強度を精密且つ正確に制御する方法を提供する態様である。簡潔にいうと、これは、有機イオンと無機イオンの径と電荷の両方を考慮した、緩衝液等の液体混合物を調製する方法を提供することによって実現することができる。これは、添付の請求項のうちの1以上に定義されているように実施することができる。
本発明の他の目的は、緩衝液を調製する改良された方法であって、まず厳密な組成を算出し、その後単一の段階で緩衝液を調製する方法を提供することである。
本発明の特定の態様は、緩衝液を調製するツールであって、緩衝液の容量を算出することによってそれぞれの緩衝液のpH範囲が確保されるツールを提供する態様である。
本発明の他の態様は、所望のpH並びに/又はイオン強度及び緩衝能に基づいて緩衝液種、緩衝液濃度、及び/又は塩濃度に関して液体混合物の組成を定める方法を提供する態様である。従って、本発明は、液体混合物の所望のpH、並びに適宜所望のイオン強度及び緩衝能から、適切な緩衝液種と緩衝液の適切な値と塩濃度を定めてpH並びにイオン強度及び緩衝能を求める。
最後に、本発明の他の態様は、マイクロプレート及び他の実験室機器において緩衝液をインテリジェントに調製する自動分配装置で、緩衝液を定める本発明の方法を利用する態様である。これは、上述のモデルに基づくソフトウェアを導入することによって実現することができる。特定の態様では、この装置は、自動化用のインタフェースを備える。
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになろう。
定義
本明細書における「緩衝液」は、溶液において、かなりの量の酸及び/又は塩基が添加されるにもかかわらずpH値をほぼ一定に維持する成分又は化合物を意味する。用語「コンピュータプログラム」は、本明細書では用語「ソフトウェア」とほとんど同じ意味に使用される。
相対組成比を求めるための反復手順を示すフローチャート図。 液体混合物の相対組成比を求める方法を示すフローチャート図。 緩衝液調製装置の概略を示す図。 3つの異なる方法についての実験pH値間の二乗平均平方根差及び計算pH値と実験pH値との二乗平均平方根差を示す表1を示す図。 3つの異なる方法についての実験pH値間の二乗平均平方根差及び計算pH値と実験pH値との二乗平均平方根差を示す表1を示す図。 pH測定値とBuffallo Plusで算出したpH予測値のプロットを示す図。
第1の態様では、本発明は、所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を提供するため、緩衝液、酸又は塩基、溶媒及び任意成分としての塩の各々1種以上の相対組成比を求める方法であって、デバイ−ヒュッケルの式を用いて相対組成比を求め、デバイ−ヒュッケル式におけるイオン径パラメータaを、液体混合物のイオン強度に寄与する全ての種の加重平均イオン径として求め、各種のイオン強度を重み付けパラメータとして使用する方法に関する。
従って、有機緩衝液種と無機種とを含んでなる液体混合物に適用可能な一般的な方法が提供される。上述のように、このような緩衝液体混合物は、化学及び生物学の多数の分野で広く使用されている。本発明の方法は、相対組成比の改良された予測(相対組成比を求めること)を可能にして、特に高い緩衝液及び/又は塩濃度において、所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を得る。このことは、以下の実験結果によって支持される。本発明の方法を逆の状態で使用して、特定の構成の液体混合物の結果として得られるpH及びイオン強度を求めることができることにも留意されたい。
上述のように、緩衝液の相対組成比を求めるとき等にデバイ−ヒュッケル式の様々な近似式が広く使用されているが、今までのところどの近似式も緩衝液及び/又は塩のより高い濃度での精度が不十分である。提案される方法は、イオン径パラメータaを液体混合物のイオン強度に寄与する全ての種の加重平均イオン径として求めることによって上記のような問題を解消し、この場合、各種のイオン強度が重み付けパラメータとして使用される。
一実施形態によれば、液体混合物のイオン径パラメータaは次式のように算出される。
式中、Iiはイオン強度であり、aiは種iのイオン径パラメータであり、Iは上記の数式1.6で定義された総イオン強度である。上記の数式から次式が得られる。
種iのイオン径パラメータaiは、実験によって確定された値又は近似値であり、いくつかの緩衝液及び塩のai値の例が実施例2の表2に示す。
本開示全体にわたって、用語「種」は、液体混合物のイオン強度に寄与するありとあらゆるイオン又は分子を対象としており、より具体的には、1つの成分、例えば弱酸等の緩衝系は、異なる電荷を有し、各々が関連するai値を有する2種以上の種に相当する。aiが特定の環境で「イオン径」と関係するため、特定の種のai値が、成分、例えば緩衝液や塩等の様々な組み合わせについて異なることが判明した。例えば、以下の表2に示されているように、NaClのai値は、リン酸塩緩衝液に混合されたときには酢酸塩緩衝液に混合されたときと異なることが判明している。しかし、ai値が、本方法を使用して広範囲のpH及びイオン強度にわたって試験された成分の組み合わせについて有効であり、ほぼ全範囲にわたって予測可能性が向上することが判明した。実施例2の図5は、上記の方法に基づいて調製された多数の緩衝液例についての計算pH値と測定pH値のプロットを示している。このプロットから、開示される方法が、非常に広いpH範囲にわたって関連する相対組成比を定めることができることは明白である。
一実施形態によれば、デバイ−ヒュッケル式におけるイオン径パラメータaを次式のように近似できることがさらに判明した。
a=0.5*(質量)1/3+シェル 式1.13
これによって、aを求めるのに必要な処理容量が少なくなる。この数式では、用語「シェル」は、イオンの「水和層」とみなすことができる追加の層に基づく語である。この実施形態に関して、「シェル」を特定の一定の値に設定した場合、例えば図4に示されている表1から明らかなように、デバイ−ヒュッケル式において「定数」と呼ばれる項が0.5に等しくなることが分かった。
従って、一実施形態では、「シェル」は、正に荷電されたイオン種については特定の値に固定され、負に荷電されたイオン種については他の異なる値に固定される。一実施形態では、「シェル」は、正に荷電されたイオン種については、3.9〜4.1又は4のような3.8〜4.2の範囲である(shellpos=4)。他の特定の実施形態では、「シェル」は、負に荷電されたイオン種については、0〜0.1又は0のような0〜0.2の範囲である(shellneg=0)。
上述の岡本のような従来技術の方法とは異なり、本発明の利点として、本発明は、低塩濃度だけでなく1Mを超える濃度、2Mを超える濃度、又は場合によっては5Mを超える濃度のような高塩濃度でも緩衝液等の液体混合物の調製を可能にする。
従って、特定の実施形態では、本発明は、緩衝液等の液体混合物を生成する方法であって、塩濃度が最大で1M、具体的には1〜2Mの範囲、又はより具体的には2Mを超える濃度である方法である。
一実施形態によれば、相対組成比は反復手順を使用して求められる。
図1に概略的に示されている特定の一実施形態によれば、反復手順は、
(a)相対組成比を求め(10)、液体混合物の所定のイオン強度を各種間の所定の分布に従って各種にアドレス指定し(20)、
(b)前段階で求められた相対組成比に基づいて、混合物中の各種のイオン強度を算出し(30)、
(c)(b)で算出したイオン強度を考慮して新しい1組の相対組成比を求め(40)、
(d)所定の収束基準が満たされる(50)まで段階(b)及び(c)を繰り返すことを含んでなる。
段階(a)における、液体混合物の所定のイオン強度の各種間でのアドレス指定は、収束を迅速化し、且つ偽収束を回避するために反復プロセスの適切な開始点を実現するように予め定められる。一実施形態によれば、液体混合物の所定のイオン強度は塩種にアドレス指定される。なぜなら、塩種は通常、塩成分を含んでなる緩衝液の総イオン強度に主として寄与する種であるからである。塩成分を含まない液体混合物の場合、液体混合物の所定のイオン強度はアドレス指定される。
段階(b)で、前段階、すなわち最初の反復における段階(a)及び後続の反復における段階(c)で求められた相対組成比を使用して混合物中の各種のイオン強度を算出する。従って、相対組成比によって定められた各種の濃度を使用してより正しいイオン強度分布を算出し、その後、このイオン強度分布を使用してより正しい相対組成比を算出し(段階(c))、これを収束が生じるまで繰り返す。
所定の収束基準としては、相対組成比が妥当な計算作業によって十分な精度で定められるようにする任意の適切な基準を選択することができる。一実施形態によれば、最後の1組の相対組成比と直前の段階で得られた1組の相対組成比との偏差が所定の最大レベルを超えないときの反復段階を収束基準として選択することができ、この最後の1組の相対組成比を次に、所与の塩濃度で選択されたpHの混合物を生成する相対組成比として保持することができる。他の実施形態では、収束基準を、例えば一定数の反復又は他の適切な関係として選択することができる。特定の実施形態では、上記の手順を10回未満、好ましくは8回未満、より好ましくは4〜6回、例えば5回反復する
図2に概略的に示されている一実施形態によれば、液体混合物の相対組成比を求める方法は、所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を生成する(70)方法であって、
緩衝液、酸又は塩基、溶媒及び任意成分としての塩のうちの1種以上のそれぞれの成分原液を準備し(80)、
・上記の方法を使用して混合すべき各成分原液の相対比を求め(90)、
・原液を混合する(100)ことを含んでなる方法で使用することができる。
他の実施形態では、1種以上の成分原液をこの成分の固相供給源で置き換えることができ、それによって、相対比分の固相は各成分の混合時に溶解する。
この方法によって、所定のpH及びイオン強度に応じて広範囲の緩衝液又は他の液体混合物を高精度に調製することができる。
一実施形態によれば、この方法を使用して液体混合物を調製することができ、この場合、比率を同時に変化させる成分原液を組み合わせることによってイオン強度を時間の経過と共に徐々に変化させ、液体流のpH値をほぼ同じ値に維持することができる。必要に応じて、pH勾配又は場合によってはpH勾配とイオン強度勾配との組み合わせを有する液体混合物を調製することができる。
本発明は、複数の緩衝液種液体として認識されることが多い2種以上の緩衝種を含んでなる緩衝液等の液体混合物の相対組成比を求めるのに有用である。従って、一実施形態では、本発明は上述のような方法であり、それぞれの異なる緩衝種を含んでなる2種以上の原液が準備される。他の実施形態では、3つ又は4種以上のような2種以上の緩衝種を含んでなる原液を準備する。
一実施形態では、相対組成比を求める本発明の方法は、所望のpH値並びに/又は所望のイオン強度及び緩衝能を有する緩衝液を得るのに必要な緩衝液種、緩衝液濃度、及び塩濃度からなる群から選択される1以上のパラメータを定める、緩衝液を定める方法と呼ぶことができる。一実施形態では、緩衝液を定めることは特定の一時点で行われる。他の実施形態では、本発明による緩衝液の調製は、連続プロセスにおいて直列的に実施される。緩衝液を定める方法は、液体混合物の調製に関して上述の要素のうちの1種以上を含んでよい。
上述のように、本発明の方法を使用して調製される液体混合物は、ハイスループットスクリーニング応用例やクロマトグラフィのような様々な応用例で有用な緩衝液であってよい。クロマトグラフィでは、本発明の方法によって調製される液体は、有利なことに、本発明によって、塩勾配とも呼ばれる徐々に変化するイオン強度を有する溶出液である。このような勾配は大きくなることも或いは小さくなることもできる。
他の態様では、本発明は、上述の計算を実施することのできるコンピュータプログラムに関する。
特定の実施形態によれば、相対組成比を求める上記の方法に従って、
緩衝液、酸又は塩基、溶媒及び任意成分としての塩の各々1種以上の相対組成比を求め、所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を生成するコンピュータプログラムであって、求められた成分混合比がユーザに対して表示され、評価され、且つ/或いは液体ミキサ装置を制御するのに使用されるコンピュータプログラムが提供される。
本発明によるコンピュータプログラムは、ディスクやスティック等のメモリ装置上に或いは制御装置の一部として設けることができ、pH及びイオン強度が制御される液体混合物、好ましくは液体流を自動的に調製するうえで有用である。
上記のように、相対組成比を求めて所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を生成する方法をコンピュータに基づいて実施する一実施形態では、各種のイオン径パラメータaiは、アクセス可能なデータベース、テーブル等に格納され、計算に使用される。このようなテーブルの一例が、実施例2に関する表2に示す。
特定の実施形態では、コンピュータプログラムを設計モードで動作させることができ、すなわち、プログラムは、受け入れた量(すなわち滴定剤、滴定剤、水、及び塩の量)を算出して所与のpH及びイオン強度(或いはイオン強度の代わりに塩強度)を有する溶液を得る。他の実施形態では、コンピュータプログラムをpH計算モードで動作させることができ、すなわち、プログラムは、ある量の緩衝液成分が混合される際に得られるpH及びイオン強度を算出する。
図3に概略的に示されている第3の態様では、緩衝液調製装置190であって、
・混合液体出口ポート210、並びに
緩衝液、酸又は塩基、溶媒及び任意成分としての塩のうちの1種以上のそれぞれの成分供給源230に連結された複数の入口ポート220を備える液体ミキサ装置200と、
・ミキサ装置の入口ポートを通じて供給される相対組成比を制御し、所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を出口ポートの所で生成するように構成され、デバイ−ヒュッケルの式を用いて相対組成比を求めるように構成され、デバイ−ヒュッケル式におけるイオン径パラメータaが、液体混合物のイオン強度に寄与する全ての種の加重平均イオン径として求められ、各種のイオン強度が重み付けパラメータとして使用されるミキサ制御ユニット240とを備える緩衝液調製装置190が提供される。
一実施形態によれば、緩衝液調製装置は、相対比分の関連する成分をミキサ装置に供給する1以上の制御可能な弁250、ポンプ260等を備える。開示される実施形態では、弁250及びポンプ260は、液体ミキサ装置に組み込まれるように概略的に示されているが、別個の構成部材として設けることもできる。
一実施形態によれば、緩衝液調製装置は液体クロマトグラフィシステムの一部として組み込まれる。従って、緩衝液調製装置は、引用によって本明細書に含まれる上述の米国特許第6221250号で詳細に論じられているようにクロマトグラフィで使用されることが有利である。
特定の一実施形態では、緩衝液調製装置は、4入口高速切り替え弁等のマルチポート入口弁と、緩衝液滴定手段と、実緩衝液混合比のディスプレイと、イオン強度及び温度とは無関係にpHを維持する手段と、緩衝能を自動的に検査する手段とを備える。4つ組弁は、短時間の間1つのポートを開いた後、次のポートを開き、以後同様の動作を繰り返す。様々な原液体積セグメントがミキサ内で完全に混合され、選択した緩衝液が形成される。開時間は、正しいpHが得られるようにアルゴリズムによって制御される。
緩衝液の滴定は、対応する或いは強い酸/塩基によって行うことができる。実緩衝液混合比は、UNICORN(GE Healthcare)の修正バージョン等のソフトウェアによって表示し且つ/或いは制御することができる。調製された溶液のpHは、イオン強度及び温度とは無関係に安定する。緩衝能を自動的に検査することができる。緩衝液濃度及びpHは、方法の実施中に設定することができる。
さらに他の態様では、イオン強度が変更される間pHがほとんど同じ値に維持される液体流を生成するロボット液体ハンドラが提供される。例えば、ハイスループットスクリーニング手順、品質制御、DNA量子化及び正規化、PCR等で緩衝液組成を制御する際に、この実施形態によるロボット液体ハンドラを使用することができる。有利な実施形態では、本発明のロボットハンドラは、ハイスループットプロセス開発用の96ウェルフォーマットにおいて完全に自動化された緩衝液の調製を可能にするシステムの一部を構成する。このようなシステムでは、本発明によるコンピュータプログラムは、ロボット装置に容易にインポートされるフォーマットでの出力構成を実現する。
最後に、本発明は、マイクロプレート又は他の形態、及び場合によっては他の実験機器のようなインテリジェント緩衝液調製用の自動分配装置における上述の相対組成比を求める方法の使用にも関する。本発明による方法の1つの利点は、1M以上の高いイオン強度値でpHが正確に予測されることである。一実施形態では、この方法は、特に、正に荷電された緩衝液イオンを有する緩衝液系に使用される。本発明による独立型緩衝液調製装置は、ハイスループットプロセス開発、結晶化条件のスクリーニング、結合条件のスクリーニング等の応用例、一般的にはμl〜ml規模で並行して緩衝液を調製する必要のある応用例向けの化学的、生物学的、生化学的、医学的研究開発に関連するあらゆる実験室で使用することができる。装置は、含められるソフトウェアに応じて、同じユニット動作を必要とする他の応用例向けにも容易に調整することができる。
図面の詳細な説明
図4は、3つの異なる方法についての実験pH間の二乗平均平方根差及び計算pH値と実験pH値との二乗平均平方根差を示す表である。これらの方法はそれぞれ、イオン強度のpKa値に対するタイプ補正、Guggenheim & Schindlerの数式1.10による補正、及びこの方法の数式1.9と数式1.11による補正の点で異なる。括弧内の数は、0.1pH単位よりも大きい差の数を示す。r.m.s.d.値もpH単位で示されている。NOKは、pH単位当たり強酸/塩基が0.01モル以上である緩衝能を有する実験の数である(logβ>−2)。グレーのシェル値は無効である。
図2は、4入口高速切り替え弁によって実施された本発明による緩衝液の調製の特定の実施形態を示している。緩衝液の滴定は、対応する或いは強い酸/塩基によって実施することができる。実緩衝液混合比は、ソフトウェア、この場合はUNICORN(GE Healthcare)の特定的に修正されたバージョンによって表示される。調製された溶液のpHは、イオン強度及び温度とは無関係に安定する。緩衝能を自動的に検査することができる。緩衝液濃度及びpHは、方法の実施中に設定することができる。4つ組弁は、短時間の間1つのポートを開いた後、次のポートを開き、以後同様の動作を繰り返す。様々な原液体積セグメントがミキサ内で完全に混合され、選択した緩衝液が形成される。開時間は、正しいpHが得られるようにアルゴリズムによって制御される。動作時に使用される実比率は、UNICORNのSystem ControlとEvaluationに曲線Conc Q1〜Q4における百分率として表示される。
以下の実施例は、例示のためのみに記載されており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明を制限するものとみなすべきではない。
実施例1
ソフトウェア開発
材料/検査ユニット
Pentium(登録商標)4プロセッサ及びWindows(登録商標)XPオペレーティングシステムを有するパーソナルコンピュータで全てのプログラミングを実施した。
方法
開発作業の最初の部分では、BorlandのC++Builderのバージョン5を使用し、その後Visual C++コンパイラのバージョン4.2を使用した。
合格基準
この実験の開始時に、この方法では、精度が0.2pH単位の正しいpHを示す必要があると決定した。使用されるポンプ及び弁システムの仕様は0.5%であり、通常の原液濃度は0.2Mであるため、最小緩衝能1を0.01(以下を参照されたい)とすると、約0.1が定量の精度に相当し、且つ0.1がアルゴリズムの精度に相当する。緩衝能を|dn/dpH|として定義したときの最小緩衝能を求めた。この場合、dnは、pHの(僅かな)変化dpHを生じさせる強酸/塩基の量(モル単位)の(僅かな)変化である。実験による緩衝液のpH測定値との比較によってアルゴリズムの精度を推定した。実験段階の初めに分配誤差を推定し、このような誤差は、実験によるpH測定値に関する他の誤差(データは示さず)と比べて非常に小さいとみなした。従って、本明細書ではpHExp及びpHExp1として示される2つの異なるpH値を生じさせる異なる種類の電極を有する2つの異なるpHメータを使用して各緩衝液サンプルのpHを測定することによって、実験誤差を推定した。以下の公式に従って各実験シリーズ(データセット)ごとに二乗平均平方根誤差(r.m.s.e.)を算出した。
r.m.s.e.=Sqrt(Σ(pHExp−pHExp1)2/NOK) 式2.1
式中、0.01よりも大きい対応する緩衝能を伴うpH値の和が求められ、この場合、NOKは、このようなケースの数である(緩衝能(β)の対数(基底10)が−2よりも大きい結果のみを検討する)。r.m.s.eが0.05pH単位よりも大きいことが分かった場合、データセットの少なくとも半分(1つのpHメータに相当する)を不合格とし、その場合、文献に記載されている緩衝液定数(pKa及びpKaの温度依存性)の確立された値とより整合するデータセットを維持し、イオン強度方法補償パラメータの最適化に使用した。文献による緩衝液定数の確立された値に整合する他のデータセットがある場合には、整合する半分のデータセットを不合格にすることもある。緩衝能の下限としての値0.01(log−2.0)は、この限界よりも小さな値では、たいていの緩衝液系においてr.m.s.e.が0.05を超える(データは示さず)ことが実験によって分かったことによって得られた値である。比較として、上述の米国特許第6221250号(Stafstrom)で使用された対応する値は0.0063(log−2.2)である。文献には「通常認められる値」の引用は見つからなかった。
結果
プログラム「Buffalo」はVisual C++で書かれており、Windows(登録商標)で動作して1M程度の高いイオン強度での緩衝液pHを正確に算出することができる。
プログラムの構造
プログラム「Buffalo」は、2つのモード、すなわち設計モード及びCalc_pHモードで動作することができる。設計モードは、実験の構成、及び実験の構成の前に、適切なpH範囲を判定するために使用することができる理論滴定曲線の算出に使用される。Calc_pHモードは、1組の数対のpH測定値が与えられた場合にパラメータの最適化に使用される。どちらのモードでもプログラムに入力されるのは、緩衝液体積(buff_vol)、温度(TT)、緩衝液濃度(buff_conc)、塩濃度(salt_conc)、緩衝液物質(buff_choice)、及び滴定剤物質(titrate_choice)である。この他に、設計モードでは、入力として所望のpH(pH)が必要であり、一方、Calc_pHモードでは、実験によるpH(pHExp)、対応する複製(pHExp1)、及び実験で使用される滴定剤のモル数(titrate_mol_exp)が必要である。さらに、どちらのモードでも、単一の緩衝液物質からなる緩衝液ではなくいくつかの(n_buffs=1、2、又は3)緩衝液buff_choice(1)、buff_choice(2)、buff_choice(3)の混合物を検討することが可能である(プログラムは、最大数の3つの緩衝液物質について実施されているが、これよりも多くの緩衝液物質を含むように容易に修正することができる)。このことは、対応する緩衝液濃度buff_conc(1)、buff_conc(2)、buff_conc(3)が与えられた場合には緩衝液濃度にも当てはまる。
一塩基緩衝液と多塩基緩衝液
一塩基緩衝液のpHは、Henderson−Hasselbach式によって予測することができる(数式1.3又は数式1.7)。
塩基性種及び酸性種の濃度は、緩衝液濃度及び滴定剤濃度によって求められる。これらの濃度及び一塩基緩衝液のpKaが与えられた場合、pHを導くことができ(Calc_pHモードに相当する)、或いは、所望のpH及び緩衝液濃度が与えられた場合、滴定剤のモル量を導くことができる(設計モードに相当する)。使用する緩衝液の多くが多塩基性であるときに問題が生じ、すなわち、緩衝液分子は、複数のpKa値に対応する複数のプロトンを受け入れ且つ手放すことができる。このような緩衝液系における種の数は常に、pKa値の数(nr_of_pKa)よりも1だけ多い。プログラムの実施を簡略化するために、三塩基緩衝液の一般的なモデルを実施した(ずっと大きなpKa値に拡張することは、容易ではあるが、自明ではなく実施する必要がある)。パラメータnr_of_pKa(1、2、又は3であってよい)がどのように計算を制限するかにかかわらず4つのプロトン化状態又は種(s1、s2、s3、及びs4)が定義され、従って、例えば一塩基緩衝液の場合、s1は酸性種に相当し、s2は塩基性種に相当し、s3及びs4の濃度は0に設定される。
2つのモード間の差異及び類似性
2つのモードは、ほとんど同じ方法を使用して働き、すなわち所与の緩衝液濃度で所与のpHを得るのに必要な滴定剤のモル量の値を求める。そうする前に、考えられる数のプロトン化状態(又は種)の各々で緩衝液のモル量を求めておく必要がある。モード間の差異は、設計モードでは、緩衝能の値を数値計算によって推定するための手順が、所望のpHについての1回とpH+pH_step(以下を参照されたい)についての1回の2回しか実施されない(kmax=2)ことである。この場合、所望のpHについて得られた滴定剤のモル量が設計モードの出力になる。一方、Calc_pHモードでは、pHスケール全体にわたって手順が繰り返される(1〜13、kmax=2600)、実験で使用された滴定剤のモル量に最も厳密に一致する滴定剤のモル量を生成するpH値が計算pH値になる。pH_step(0.005)は、pH及び緩衝能の計算の精度を制限する。どちらのモードでも誤差として同じアルゴリズムを使用すると有利であることが分かっており、このようにして不要な差異が最小限に抑えられた。
平衡式
各プロトン化種におけるモル量の計算は、各種の、プロトンが1つ多く且つ/或いは1つ少なく、水素原子の濃度(pH)を有する「近傍の」種との平衡についての式を解くことと等価である。換言すれば、数式1.7から直接導かれる3つの数式(3つのpKa値に相当する)と等価である。
xx[i]=10^(pH−pKaprime[i]) 式3.1
式中、各iは各pKa(i)値(i=1、2、3)に相当し、xx[i]は、対応する塩基及び対応する酸の濃度間の比であり、すなわち、xx[1]=[s2]/[s1]、xx[2]=[s3]/[s2]、xx[3]=[s4]/[s3]である。
この3つの数式に加え、質量保存のために以下の数式が得られる。
[s1]+[s2]+[s3]+[s4]=緩衝液濃度 式3.2
電荷保存のために以下の数式が得られる。
[H+]−[OH-]+Σ種電荷(si)−滴定剤電荷*[滴定剤]−種電荷(開始種)*[開始種]=0 式3.3
開始種とは、混合の前の緩衝液物質の種、すなわち貯蔵液又は原液中の緩衝液のプロトン化状態を意味する。このプロトン化状態は、緩衝液分子当たり対イオン量によって判定される。これは、巨視的な物体、すなわち貯蔵液又は原液が電気的に中立であるためである。[OH-]の前のマイナス符号は、OHイオンの電荷のマイナス符号によるものであり、一方、最後の2つの項の前のマイナス符号はそれぞれ滴定剤及び開始種の対イオンの電荷によるものである。
最後に、水解離平衡は次式の通りである。
「OH-」[H+]=10-14 式3.4
数式3.1〜3.4は、pKa値が3つである場合に6つの未知の要素(4つの[si]、[OH-]、及び[H+])を有する6つの式があることを意味する。pHを既知であると仮定され、さらに[H+]、場合によっては数式3.4によって[OH-]も既知であると仮定し、その代わりに、滴定剤濃度を求める。5つの残りの数式は5つの未知の要素(4つの[si]及び[滴定剤])に相当する。
滴定剤のモル量の計算
平衡状態での各種の濃度[si]が判明した後、数式3.3を使用して滴定剤濃度を求めることができる。滴定剤の種類に応じて考慮すべき2つのケース、すなわち、強い酸/塩基のケースと対応する酸/塩基のケースとがある。しかし、どちらのケースであるかとは無関係に、数式3.3において滴定剤濃度を求めると次式が与えられる。
[滴定剤]=(−[H+]+[OH-]−Σ種電荷(si*[si]+種電荷(開始種)*[開始種])/プロトン段階 式3.10
式中、
プロトン段階=−滴定剤電荷(強い酸/塩基) 式3.11a
又は
プロトン段階=種電荷(開始種)−滴定剤電荷(対応する酸/塩基) 式3.11b
が成立する。
換言すれば、パラメータproton_stepは、HClについては−1であり、NaOHについては+1であり、弱い酸又は塩基滴定剤の場合、滴定剤のproton_stepは、数式3.11b又は以下の等価数式による緩衝液の開始種によって決まる。
プロトン段階=滴定剤種−開始種 式3.12
この手順は、緩衝液成分の数と同じ回数だけ繰り返され、最後のtitrate_molは、各成分から得た滴定剤のモル量の和である(以下を参照されたい)。
たいていの場合(pHが約3.5から10.5の間)、荷電平衡に対する[H+](低pH値)又は[OH-](高pH値)の寄与は、無視することができ、数式3.10では零に設定することができる。
滴定剤の選択
滴定剤は強い(HCl又はNaOH)であってよい。この2つの物質の唯一の差異は、2つの物質が寄与するプロトンの数の符号である。さらに、滴定剤の濃度は低くてよく、その場合、滴定剤の(貯蔵液又は原液中の)プロトン化状態を確立する必要がある。或いは、酸性プロトンの数を指定することができる。この2つの数の関係は次式の通りである。
滴定剤種=プロトンの数+1−酸性プロトンの数 式3.13
イオン強度反復ループ
イオン強度は全てのイオンの濃度から算出されるので、イオン濃度を正確に算出する前にこれらの濃度を知っておく必要がある。しかし、これらの濃度はそれ自体が、pKa(25℃及び0イオン強度でのいわゆる熱力学pKa値)、温度、及びイオン強度から算出されるpKaprime[i]を必要とする平衡式の解から出力される。従って、反復手順を実施する必要があった。このような手順の第1の段階では、イオン強度を単に塩濃度に等しい値に設定する。第2の反復段階では、第1のサイクルから得られたイオン強度を使用する。以後、同様の手順を繰り返す。この手順は非常に急速に収束することが判明した。例えば、所望の精度を得るには5回の反復で十分過ぎることが判明している(データは示さず)。従って、全ての場合に反復の数を5に設定した。
イオン強度の計算における別個の電荷
2以上の電荷を有するイオン強度の計算において、(電荷間に4つ及び5つの炭素原子を有するクエン酸塩イオンと同様に)電荷同士が十分に分離されている場合、電荷が単一の点電荷としてではなく別々の電荷とみなされる場合には著しく良好な精度が得られることが分かった。このため、クエン酸塩には真が設定され、検討中の他の全ての緩衝液については偽が設定されるフラグ変数separate_chargesが導入された。
緩衝液成分に対するループ、緩衝液パラメータ
各緩衝液種ごとに以下のパラメータが必要である。すなわち、緩衝液物質の質量(Mbuff)、pKa値の数(No of_pKa)、pKa値(pKa[i])、各pKa値の温度依存性の値(dpKadT[i])、塩基性度が最も高い形態の電荷(bc)、及び貯蔵液又は原液中の緩衝液プロトン化状態(start_species)が必要である。或いは、酸性プロトンの数を指定することができる。この2つの数の関係は次式の通りである。
開始種=プロトンの数+1−酸性プロトンの数 式3.14
この他に、イオン強度補正パラメータ(konst、shellpos、及びshellneg)が必要である。
滴定剤の総モル数(titrate_mol)は、各緩衝液成分に必要な滴定剤のモル数の和に等しく、所望のpHで平衡を確立し、このループはこの輪を算出するために使用される。ループの間に算出される他の和は、各緩衝液成分の対イオンの数、さらに、平衡状態でのイオン強度に対する各成分の寄与である。
様々なプロトン化状態に対するループ、pKaの温度補正
各プロトン化状態ごとに、電荷(spec_chrg[j])、電荷の二乗(qsq[j])、シェル(shell[j])、定数(konst[j])、及び温度補正pKa値(pKaT[j])が算出される。温度補正pKa値は以下の公式に従って算出される。
pKaT=pKa[i]+(TT−25)*dpKadT[i] 式3.15
式中、TTは摂氏単位の温度である。イオン径パラメータaの、次式で表される、質量のみに依存する部分aaa[i](非水和半径aaa[i]と呼ぶことができる)も算出する。
aaa[i]=konst[i]*(Mbuff)1/3 式3.16
pKaに対するループ、pKa’の計算
各pKa値に対応する酸性種及び塩基性種の活量係数(より厳密に言えば活量係数の対数)は、以下の公式に従って算出される。
logfiBase=−A*(qsq[i+1])*rooI/(1+0.33*(aaa[i+1]+shell[i+1])*rootI) 式3.17a
logfiAcid=−A*(qsq[i])*rootI/(1+0.33*(aaa[i]+shell[i])*rootI) 式3.17b
式中、rootIはイオン強度の平方根である。数式1から得られるパラメータaは、数量aaa[j]+shell[j]に相当する。
これらの活量係数からpKaprimeは次式のように算出される。
pKaprime[i]=pKaT+logfiBase−logfiAcid 式3.18
荷電平衡に対する[H + ]及び[OH - ]の影響
pH値が非常に小さいときと非常に大きいときには、荷電平衡に対する[H+](低pH値)又は[OH-](高pH値)の寄与はもはや無視できない。従って、[H+]及び[OH-]によるtitrate_molの補正を含める可能性をバージョン5.07以降で実現した。というのは、リン酸塩緩衝液の場合に低pH範囲(pHが2.5より低い範囲)で計算値と測定値の差が一貫して観測されたからである。これは、2つの項、すなわち[H+]を電気的に中和させる
−10^−{pH}/(プロトン段階*緩衝液体積)と、
[OH-]を電気的に中和させる
+10^{pH−14}/(プロトン段階*緩衝液体積)
とを加算することによって、緩衝液成分の数に亘るループの終了時に滴定剤のモル量が補正されるように実施された。
計算値と実験値の比較
ここでは合計で31個の緩衝液系(滴定液と被滴定液の組み合わせ)を報告する。約2100回の実験を実施し、そのうち817は不合格基準のために不合格になっている(第2.3節)。強い酸/塩基と対応する酸/塩基を2つの緩衝液混合物と共に実施した。混合物ではない緩衝液系のリストが図4の表1に示す。Guggenheim & Schindler(数式1.10)に従ったデバイ−ヒュッケル公式の解釈と対比すると共に、実験による差と対比した、この方法(プログラムBuffaloバージョン6.00)の適用結果の誤差統計も表に示す。表に示されている全ての場合に、[H+]及び[OH-]の寄与(第3.13節)による補正も含まれている。低pHが考慮される場合にのみ、この補正によって精度が著しく向上する。残りの場合には、差を無視することができる。
合格になったデータのうちで、緩衝能(β)の対数(基底10)が−2よりも大きい結果のみを示す。実験誤差の推定値として、2つの異なるpHメータによる同じ緩衝液混合物の2つの測定値から得た二乗平均平方根誤差(r.m.s.e.)(数式2.1)も含められる。
緩衝液混合物
2つの混合物、すなわち、陽イオン交換クロマトグラフィ用の混合物(pH2.5〜7.2CIEX)と陰イオン交換クロマトグラフィ用の混合物(pH5.3〜9.5AIEX)を検討した。
0.1Mトリスと0.1Mビス−トリスを混合することによってAIEX混合物(AIEX−mix)を生成した。試験したpH範囲は5.3〜9.5であった。第1のデータセットは単一pH測定値で構成した。第2のAIEXデータセットのr.m.s.e.は0.08であり、従ってそのシリーズの1つは不合格となった。
第1のデータセット及び第2のデータセットのうちの合格となったシリーズについての結果として、この方法では、27個の値のうちの1つが0.1限界の範囲外と考えられる値であり(r.m.s.d.0.06)、これに対して、Guggenheim & Schindlerによるイオン強度補正については、27個のうち10個が違反と考えられる値であった(r.m.s.d.0.10)。
0.0375M Na2HPO4、0.0125ギ酸ナトリウム、及び0.025M酢酸ナトリウムを混合することによってCIEX混合物(CIEX−mix)を生成した。試験したpH範囲は2.5〜7.2であった。実験r.m.s.e.は0.02であり、104個(NrOK)の考えられる差のうちで0.1よりも大きい値はなかった。pH計算の結果として、この方法では、104個の値のうちの4つが0.1限界の範囲外と考えられる値であり(r.m.s.d.0.05)、これに対して、Guggenheim & Schindlerによるイオン強度補正については、102個のうち36個が違反と考えられる値であった(0.1)。
実施例2
材料/検査ユニット
実施例1と同様。
方法
visual C++コンパイラのバージョン4.2を使用した。
結果
リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリスの緩衝液系について1M程度の高いイオン強度及び緩衝液濃度での緩衝液pHを正確に算出できるように、プログラム「Buffalo Plus」をVisual C++で作成し、Windows(登録商標)で動作できるようにした。
プログラムの構造
実施例1と同様であるが1つのモードを追加した。すなわち、このプログラムは、Newton Raphson法を使用してパラメータ(各緩衝液系の様々な荷電種の半径)を同時に最適化するのに使用される第3のモード「パラメータ最適化」で動作することもできる。
一塩基緩衝液と多塩基緩衝液
実施例1と同様。
モード間の差異及び類似性
実施例1と同様であるが、Calc_pHモード及びパラメータ最適化モードではkmax=3であった。
滴定剤の選択
実施例1と同様。
イオン強度反復ループ
実施例1と同様。
pKa値に対するループ、pKaの温度補正、及びpKa’の計算
以下の公式に従って各pKa値に対応する酸性種及び塩基性種の活量係数(より厳密に言えば活量係数の対数)を算出する。
logfiBase=−A(qsq[i+1])*rootI/(1+0.33*ion_rad*rootI)
logfiAcid=−A(qsq[i])*rootI/(1+0.33*ion_rad*rootI)
式中、rootIは、イオン強度の平方根である。qsq[i]及びqsq[i+1]は、それぞれpKa値に対応する酸及び塩基の電荷の二乗である。
pKaT=pKa[i]+(TT−25)*dpKadT[i]
式中、TTは摂氏単位の温度であり、dpKadT[i]は、検討中のpKa値pKa[i]の温度係数である。
pKaprime[i]=pKaT+logfiBase−logfiAcid
平衡式
実施例1と同様。
イオン径パラメータの計算
これは、上述のように各種の半径のイオン強度加重平均として算出される。表2は、リン酸塩、クエン酸塩、及び酢酸塩緩衝液系中の各種の確立されたイオン径パラメータai並びにNaClの関連するイオン径パラメータaiを示している。表2では、荷電種のイオン径パラメータのみが示されており、「イオン径2」は、電荷が最低のイオン種を指す。従って、「イオン径1」は非イオン種を指すが、かかる種の電荷は、零であるため、上述のように総イオン径パラメータaに寄与することはない。酢酸塩は一塩基性酸であるため、単一のai値しか示されていない。上述のように、少なくともいくつかの塩、例えばNaClのイオン径パラメータaiは、表2に示されている緩衝液系によって決まることが判明した。
滴定剤のモル量の計算
実施例1と同様。
荷電平衡に対する[H + ]及び[OH - ]の影響
実施例1と同様。
計算値と実験値の比較
図5は、155のpH測定値とBuffallo Plusを使用して算出された対応する予測値のプロットを示している。検査した緩衝液系は、リン酸塩、クエン酸塩、及び酢酸塩を含む。
240 ミキサ制御ユニット
250 弁
260 ポンプ
a イオン径パラメータ
s1、s2、s3、s4 種

Claims (15)

  1. 所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を提供するため、緩衝液、酸又は塩基、溶媒及び任意成分としての塩の各々1種以上の相対組成比を求める方法であって、デバイ−ヒュッケルの式を用いて上記相対組成比を求めるに当たり、デバイ−ヒュッケル式におけるイオン径パラメータaを、上記液体混合物のイオン強度に寄与するすべての種の加重平均イオン径として求め、各々の種のイオン強度を重み付けパラメータとして使用する、方法。
  2. 前記相対組成比が反復手順を用いて求められる、請求項1記載の方法。
  3. 前記反復手順が、
    (a)前記相対組成比を求める段階であって、前記液体混合物の所定のイオン強度を各種間の所定の分布に従って各々の種にアドレス指定する、段階、
    (b)前段階で求められた前記相対組成比に基づいて、前記混合物中の各種のイオン強度を算出する段階、
    (c)(b)で算出した前記イオン強度を考慮して新しい1組の相対組成比を求める段階、及び
    (d)所定の収束基準が満たされるまで段階(b)及び(c)を繰り返す段階
    を含んでなる、請求項2記載の方法。
  4. 段階(a)で、前記液体混合物の前記所定のイオン強度を前記塩種にアドレス指定する、請求項3記載の方法。
  5. 前記デバイ−ヒュッケル式の前記イオン径パラメータaが次式で算出される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
    式中、Iiはイオン強度であり、aiは種iのイオン径パラメータであり、Iは総イオン強度である。
  6. 前記デバイ−ヒュッケル式における前記イオン径パラメータaが次式で近似される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
    a=0.5*(質量)1/3+シェル
    式中、「シェル」は、正に荷電されたイオン種についてはある値に固定され、負に荷電されたイオン種については異なる値に固定され、「シェル」は、正に荷電されたイオン種については.8〜4.2の範囲内の値に固定され、且つ「シェル」は、負に荷電されたイオン種については〜0.2の範囲内の値に固定される
  7. 所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を生成する酸又溶媒及び任意成分としての塩のうちの1種以上のそれぞれの成分原液を準備する段階と、
    請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法を使用して混合すべき各成分原液の相対比を求める段階と、
    前記原液を混合する段階と
    を含んでなる方法。
  8. 比率を同時に変化させる前記成分原液を組み合わせることによって前記イオン強度を徐々に変化させ、液体流のpH値をほぼ同じ値に維持する、請求項7記載の方法。
  9. それぞれ異なる緩衝剤種を含んでなる2種以上の成分原液を準備する、請求項7又は請求項8記載の方法。
  10. 2種以上の緩衝剤種を含んでなる成分原液を準備する、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
  11. 前記緩衝液を請求項7乃至請求項10のいずれか1項記載のように調製する、ハイスループットスクリーニング法又は液体クロマトグラフィ法。
  12. 請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
  13. 混合液体出口ポートと、緩衝液、酸又は塩基、溶媒及び任意成分としての塩のうちの1種以上のそれぞれの成分供給源に連結された複数の入口ポートとを備える液体ミキサ装置、及び
    前記ミキサ装置の前記入口ポートを通じて供給される相対組成比を制御し、所定のpH及びイオン強度を有する液体混合物を前記出口ポートの所で生成するように構成されたミキサ制御ユニットであって、デバイ−ヒュッケルの式を用いて前記相対組成比を求めるように構成され、前記デバイ−ヒュッケル式におけるイオン径パラメータaが、前記液体混合物の前記イオン強度に寄与するすべての種の加重平均イオン径として求められ、各種の前記イオン強度が重み付けパラメータとして使用されるミキサ制御ユニット
    を備える緩衝液調製装置。
  14. 相対的比率の1種以上の前記成分を供給する1以上の制御可能なポンプを備える、請求項13記載の緩衝液調製装置。
  15. 請求項13又は請求項14載の緩衝液調製装置を備える液体クロマトグラフィシステム。
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