以下では、本発明の一実施形態であるレーザ加工ヘッド1を備えるレーザ加工ロボット2について、図1乃至3を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向及び左右方向等の方向の概念は、被溶接部材を下方に配置した場合における概念を一例として示したものであり、本件発明の各構成が以下に示す方向の概念で配置及び形成されていることに限定するものではない。また、本発明は、以下で説明する実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
[レーザ加工ロボット]
レーザ加工装置であるレーザ加工ロボット2は、自動車や鉄道車両のボディ及び補強部材等、2つの被溶接部材(例えば、鋼板)を溶接するためのロボットであり、互いに重ねられた2つの被溶接部材にレーザ光を照射して溶接するようになっている。レーザ加工ロボット2としては、垂直多軸ロボット、水平多軸ロボット等の多関節ロボットがある。本実施形態では、レーザ加工ロボット2は、6軸ロボットを採用しており、図1に示すようにその先端側アーム2aの先端にエンドエフェクトであるレーザ加工ヘッド1を備えている。
[レーザ加工ヘッドの本体部分の構成]
レーザ加工ヘッド1は、図1及び図2に示すように、第1筐体3及び第2筐体4の2つの筐体を有している。第1筐体3は、大略的に中空円筒状になっており、その側壁には、第1冷却路3aが形成されている。第1冷却路3aは、循環装置5が接続されている。循環装置5は、冷媒を流して循環させる機能を有し、第1冷却路3aに冷媒を流して循環させるようになっている。
このように冷媒を循環可能な第1筐体3は、レーザ発振装置6と機械的に接続されている。レーザ発振装置6は、光ファイバー6aを有するファイバーレーザ装置である。光ファイバー6aは、第1筐体3の軸線L1に沿うように第1筐体3の上端部に挿入されている。レーザ発振装置6は、レーザ光20を発振する機能を有しており、レーザ光を第1筐体3内に出射するようになっている。レーザ光が出射される第1筐体3内には、上端側に集光手段7が取り付けられ、下端側に全反射鏡8が取り付けられている。更に、第1筐体3内の集光手段7と全反射鏡8との間には、スプリッター9が取り付けられている。
集光手段7は、コリメータレンズ10及び集光光学系11により構成されている。コリメータレンズ10及び集光光学系11は、第1筐体3内の上端側に上下に離して並設されている。このように並設されるコリメータレンズ10及び集光光学系11の光軸は、第1筐体3の軸線L1と略一致している。コリメータレンズ10は、集光光学系11よりも上方(即ち、光ファイバー6a側)に配置されており、レーザ発振装置6からのレーザ光を平行光にして集光光学系11に導く機能を有している。集光光学系11は、1つ以上のレンズからなる光学系であり、コリメータレンズ10から導かれる平行光を焦点距離fにて集光する機能を有する。なお、焦点距離fを調整するためにコリメータレンズ10と集光光学系11との上下方向の間隔は、図示しない焦点距離調整機構にて調整できるようになっている。
全反射鏡8は、第1筐体3の底部に取り付けられている。全反射鏡8は、平板になっており、第1筐体3の軸線L1に直交する仮想平面に対して反時計回りに角度θ(本実施形態では、右斜め上方に約45度)傾けて配置されている。全反射鏡8の上側の面は、入射した光を全反射する全反射面8aを成している。この全反射面8aは、第1筐体3の軸線L1に直交する仮想平面に対して反時計回りに約45度傾いている。なお、全反射鏡8の角度は、図示しない角度調整機構にて調整できるようになっている。
分光手段であるスプリッター9は、第1筐体3内において、集光手段7と全反射鏡8との間、即ち第1筐体3内の中間部に取り付けられている。スプリッター9は、平板になっており、第1筐体3の軸線L1に直交する仮想平面に対して時計回りにθ(本実施形態では、左斜め上方に約45度)傾けて配置されている。スプリッター9の上側の面は、入射した光の一部を反射し、残りの光を透過する部分反射面9aを成している。本実施形態において、スプリッター9は、反射光及び透過光の強さが略同じになるハーフミラーが用いられている。このような機能を有する部分反射面9aは、第1筐体3の軸線L1に直交する仮想平面に対して反時計回りに約45度傾いている。なお、スプリッター9の角度は、図示しない角度調整機構にて調整できるようになっている。
このように構成される全反射鏡8及びスプリッター9では、全反射面8aで反射された光が部分反射面9aで反射された光と反対側に進むようになっている。本実施形態では、全反射面8aで反射された光は、軸線L1に直交する第1方向(図2の左方向)に反射され、部分反射面9aで反射された光は、第1方向と反対方向の第2方向(図2の左方向)に反射される。なお、第1方向及び第2方向は、本実施形態において、レーザ加工ヘッド1の幅方向に相当する方向である。このように光を反射する全反射鏡8及びスプリッター9が取り付けられる第1筐体3の外周部には、第1出射孔3b及び第2出射孔3cが形成されている。
第1出射孔3bは、第1筐体3の下端部付近に形成されており、第1出射孔3bを介して図2の左側から全反射鏡8の全反射面8aが臨めるようになっている。また、第2出射孔3cは、第1筐体3の中間部に形成されており、第2出射孔3cを介して図2の右側から部分反射面9aが臨めるようになっている。このように構成される第1筐体3は、シールを達成した状態で第2筐体4に挿入されている。
第2筐体4は、大略的に中空円柱状になっている。第2筐体4には、その上端部から第1筐体3が挿入されている。第2筐体4の軸線は、第1筐体3の軸線L1と略一致している。第2筐体4の側壁には、第2冷却路4aが形成されている。第2冷却路4aは、循環装置5が接続されている。循環装置5は、第2冷却路4a内に冷媒を流して循環させるようになっている。このような第2冷却路4aを有する第2筐体4内には、第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13が設けられている。
第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13は、共に第1筐体3に沿って上下方向に延びる部材であり、軸線L1を挟んで互いに幅方向に離れた位置にある。第1リニアガイド12は、第2筐体4の底面側に取り付けられ、第2リニアガイド13は、第2筐体4の天井側に取り付けられている。なお、第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13の配置位置は、上述のような位置に限定されない。例えば、第1リニアガイド12が第2筐体4の天井側に取り付けられ、第2リニアガイド13が第2筐体4の底面側に取り付けられてもよい。また、第1リニアガイド12、及び第2リニアガイド13が共に第2筐体4の中央付近、底面側、又は天井側に設けられていてもよい。第1リニアガイド12には、第1スライド部材14が係合し、第2リニアガイド13には、第2スライド部材15が係合している。第1スライド部材14は、第1リニアガイド12上を上下方向にスライドし、また第2スライド部材15は、第2リニアガイド13上を上下方向にスライドするようになっている。
このようにスライドする第1スライド部材14及び第2スライド部材15は、第1筐体3の外周部の上端部及び下端部に夫々固定されている。なお、第1スライド部材14及び第2スライド部材15は、第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13上をスライドできるようになっていれば、それらの配置位置は、第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13の配置位置と同様に前述の配置位置に限定されない。2つのスライド部材14,15が固定される第1筐体3は、上下方向に抜き差しできるように第2筐体4に挿通されており、第1スライド部材14及び第2スライド部材15により上下方向に昇降できるようになっている。第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13の各々の上端及び下端には、スライド部材15が外れないようにストッパーが夫々形成されており、第1筐体3の昇降可能範囲は、第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13の長さに依存している。このように第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13が配置される第2筐体4内には、更に第1鏡台16及び第2鏡台17が取り付けられている。
第1案内手段である第1鏡台16は、板状の部材である。第1鏡台16は、第1筐体3側から第2筐体4の半径方向外方に向かって斜め下方に延びており、全反射鏡8に略平行に配置されている。即ち、第1鏡台16は、軸線L1に直交する仮想平面に対して反時計回りに角度θ(本実施形態では、右斜め上方に約45度)傾けて配置されている。このように配置される第1鏡台16の最下端は、第1筐体3を最も低い下限位置までスライドさせたときの第1出射孔3bよりも低い位置にあり、第1鏡台16の最上端は、第1筐体3を最も高い上限位置までスライドさせたときの第1出射孔3bよりも高い位置にある。
また、第1鏡台16の下側の面は、光を折り返して反射する第1鏡面16aを成している。この第1鏡面16aは、第1筐体3が昇降可能範囲のどの位置にあっても、全反射鏡8の全反射面8aと対向するようになっている。また、第1鏡台16内には、第1鏡面16aの裏側に第1冷却通路16bが形成されている。第1冷却通路16bは、第1鏡台16の厚み方向に見たとき、例えば、図2(a)に示すように蛇行するように張り巡らされている。なお、第1冷却通路16bは、図2(b)に示すように、入口側の通路部分と出口側の通路部分を離して形成し、これら2つの通路部分を複数の連通部分により繋ぐようにしてもよく、第1鏡面16aを冷却できればその形状及び寸法については限定しない。このような形状を有する第1冷却通路16bには、循環装置5が接続されており、循環装置5から冷媒が供給されて循環している。このような第1鏡台16の他に、第2筐体4内には、第2鏡台17が設けられている。
第2案内手段である第2鏡台17は、板状の部材である。第2鏡台17は、第2筐体4の天井付近に設けられ、軸線L1を挟んで第1鏡台16と幅方向に反対側の位置にあり、第1鏡台16と同じ距離だけ軸線L1から離れている。第2鏡台17は、第1筐体3側から第2筐体4の半径方向外方に向かって斜め下方に延びており、スプリッター9に略平行に配置されている。即ち、第2鏡台17は、軸線L1に直交する仮想平面に対して時計回りに角度θ(本実施形態では、左斜め上方に約45度)傾けて配置されている。このように配置される第2鏡台17の最下端は、第1筐体3を最も低い下限位置までスライドさせたときの第2出射孔3cよりも低い位置にあり、第2鏡台17の最上端は、第1筐体3を最も高い上限位置までスライドさせたときの第2出射孔3cよりも高い位置にある。
また、第2鏡台17の下側の面は、光を折り返して反射する第2鏡面17aを成している。この第2鏡面17aは、第1筐体3が昇降可能範囲のどの位置にあっても、スプリッター9の部分反射面9aと対向するようになっている。また、第2鏡台17内には、第2鏡面17aの裏側に第2冷却通路17bが形成されている。第2冷却通路17bは、第2鏡台17の厚み方向に見たとき、第1冷却通路16bと同様に蛇行するように張り巡らされている。このような形状を有する第2冷却通路17bには、循環装置5が接続されており、循環装置5から冷媒が供給されて循環している。
このように第1鏡台16及び第2鏡台17が取り付けられる第2筐体4の底部4bには、第1照射孔4c及び第2照射孔4dが形成されている。第1照射孔4cは、第2筐体4の底部4bを上下方向に貫通している。第1照射孔4cの外形寸法は、上方から見た平面視で第1鏡台16の外形寸法に略一致しており、第2筐体4の下からその中を見上げると第1照射孔4cの外形と第1鏡台16の外形が略重なるようになっている。第2筐体4の底面には、第1照射孔4cを塞ぐように第1保護ガラス18がシールを達成した状態で取り付けられている。第1保護ガラス18は、光を透過でき、また着脱可能になっている。
第2照射孔4dは、第2筐体4の底部4bを上下方向に貫通している。第2照射孔4dの外形寸法は、上方から見た平面視で第2鏡台17の外形寸法に略一致しており、第2筐体4の下からその中を見上げると第2照射孔4dの外形と第2鏡台17の外形が略重なるようになっている。第2筐体4の底面には、第1照射孔4cを塞ぐようにシールを達成した状態で取り付けられている。第2保護ガラス19は、光を透過でき、また着脱可能になっている。
このような構成を有するレーザ加工ヘッド1では、レーザ発振装置6から光ファイバー6aを介して導かれたレーザ光20が軸線L1に沿って入射される。入射されたレーザ光20は、コリメータレンズ10及び集光光学系11を通ってスプリッター9に入射する。スプリッター9では、レーザ光20の一部がそのまま透過し、残りの一部が反射される。
透過した一部のレーザ光である第1レーザ光21は、スプリッター9の下側に配置された全反射鏡8に達する。全反射鏡8では、全反射面8aにより第1レーザ光21が全て第1方向(図2において左方向)に反射される。第1方向に反射された第1レーザ光21は、第1出射孔3bから出て第1鏡台16の第1鏡面16aに達し、この第1鏡面16aにより下方に反射される。下方に反射された第1レーザ光21は、第1保護ガラス18を通過し、第1保護ガラス18から下方に距離x離れた第1照射位置22にて集光する。第1照射位置22に2つの被溶接部材23,24を重ねて配置することで、2つの被溶接部材23,24が第1照射位置22にある施工部にて第1レーザ光21により溶接される。
また、スプリッター9で反射された残りのレーザ光である第2レーザ光25は、第2方向(図2において右方向)に反射される。第2方向に反射された第2レーザ光25は、第2出射孔3cから出て第2鏡台17の第2鏡面17aに達し、この第2鏡面17aにより下方に反射される。下方に反射された第2レーザ光25は、第2保護ガラス19を通過する。第2鏡台17は、軸線L1から第1鏡台と同じ距離だけ離れている。それ故、第2レーザ光25は、第2保護ガラス19から下方に距離x離れた第2照射位置26にて集光する。第2照射位置26に2つの被溶接部材23,24を重ねて配置することで、2つの被溶接部材23,24が第2照射位置26にある施工部にて第2レーザ光25により溶接される。
このようにレーザ加工ヘッド1は、レーザ光20を第1レーザ光21及び第2レーザ光25に分割して第1照射位置22及び第2照射位置26にて集光して照射し、2箇所の施工部で同時に被溶接部材23,24を溶接できる。このように第1レーザ光21及び第2レーザ光25が夫々照射される第1照射位置22及び第2照射位置26は、第1保護ガラス18及び第2保護ガラス19から下方に距離x離れ、且つ軸線L1に直交する溶接平面H1上に位置している。このように第1レーザ光21及び第2レーザ光25が集光される溶接平面H1に溶接すべき2つの被溶接部材23,24がくるようにレーザ加工ヘッド1を移動させることで、2つの被溶接部材23,24の2箇所の施工部を同時に溶接することができる。
レーザ加工ヘッド1により溶接する2つの被溶接部材23,24は、例えば図1及び図2に示すようなハット型の鋼板と平坦な鋼板である。ハット型の鋼板である被溶接部材23は、断面凸状の短冊状の板状の補強部材であり、その幅方向中間部分が突出している。つまり、被溶接部材23は、幅方向中間部分に長手方向に延びる凸部23aを有し、この凸部23aの幅方向両側にフランジ23bを夫々有している。このように構成される被溶接部材23の2つのフランジ23bを平坦な鋼板である被溶接部材24の上に重ねて配置し、これら重ねられたフランジ23bと被溶接部材24とが溶接平面H1に配置されるようにレーザ加工ヘッド1を移動させる。更に詳細に説明すると、フランジ23bの上面が溶接平面H1に配置されるようにレーザ加工ヘッド1を移動させる。そうすることで、被溶接部材23の2つのフランジ23bが同時に被溶接部材24に溶接される。このように2つのフランジ23bを同時に溶接することで、溶接時にフランジ23bが熱変形して被溶接部材24から持ち上がることなく、被溶接部材23のフランジ23bと被溶接部材24との間でギャップが生じることを防ぐことができる。
このように同時に溶接可能な第1照射位置22及び第2照射位置26は、前述の通り第1鏡台16と第2鏡台17とが軸線L1から同じ距離だけ離れているので、溶接平面H1上において軸線L1を挟んで幅方向に対称な位置にある。このような位置関係にある第1照射位置22と第2照射位置26との間隔である照射間隔d1は、第1筐体3を上下方向に昇降させることで変更できるようになっている。以下では、照射間隔d1が変更する仕組みについて具体的に説明する。
レーザ加工ヘッド1では、図3(a)乃至(c)に示すように、第1筐体3を第2筐体4に対して上昇させて全反射鏡8及びスプリッター9を上昇させると、第1鏡台16及び第2鏡台17に入射する第1レーザ光21及び第2レーザ光25の入射位置が高くなっていく。そうすると、第1鏡台16及び第2鏡台17が逆V字状に傾いているので、前記各入射位置が軸線L1に近づいていき、第1照射位置22及び第2照射位置26が軸線L1に向かって近づいて照射間隔d1が狭まるようになっている。
この際、第1筐体3を距離Δd上昇させると、第1レーザ光21が上昇前よりも距離Δd高い入射位置にて第1鏡台16の第1鏡面16aに入射する。入射位置が高くなった分、第1レーザ光21の光路において全反射鏡8の全反射面8aから第1鏡台16の第1鏡面16aまでの距離がΔd短くなる。また、第1筐体3の上昇に伴って集光光学系11も一緒に上昇するので、集光光学系11から全反射鏡8までの第1レーザ光21の光路距離は変わらない。それ故、第1筐体3が上昇して集光光学系11が溶接平面H1から遠ざかった分だけ、全反射面8aから第1鏡面16aまでの距離が短くなるので、照射間隔d1を狭めても、第1照射位置22(即ち、第1レーザ光21の焦点)は溶接平面H1上にある。
同様に、第1筐体3を距離Δd上昇させると、第2レーザ光25が上昇前よりも距離Δd高い入射位置にて第2鏡台17の第2鏡面17aに入射する。入射位置が高くなった分、第2レーザ光25の光路においてスプリッター9の部分反射面9aから第2鏡台17の第2鏡面17aまでの距離がΔd短くなる。また、第1筐体3と上昇に伴って集光光学系11も上昇するので、集光光学系11からスプリッター9までの第2レーザ光25の光路距離は変わらない。それ故、第1筐体3が上昇して集光光学系11が溶接平面H1から遠ざかった分だけ、部分反射面9aから第2鏡面17aまでの距離が短くなるので、照射間隔d1を狭めても、第2照射位置22(即ち、第2レーザ光25の焦点)は溶接平面H1上にある。
逆に、第1筐体3を第2筐体4に対して下降させて全反射鏡8及びスプリッター9を下降させると、第1鏡台16及び第2鏡台17に入射する第1レーザ光21及び第2レーザ光25の入射位置が低くなっていく。そうすると、前記各入射位置が軸線L1から遠ざかっていき、第1照射位置22及び第2照射位置26が軸線L1にから遠ざかって照射間隔d1が広くなる。この際、照射間隔d1を狭めた場合と同様に、第1照射位置22及び第2照射位置26は、溶接平面H1上にある。
このようにレーザ加工ヘッド1では、第1筐体3を昇降させることで、第1照射位置22と第2照射位置26との照射間隔d1を調整することができる。これにより、溶接する間隔を調整することができる。本実施形態で一例として示した被溶接部材23のようなハット型の鋼板は、その使用態様に応じて凸部23aの幅が異なるものが使用される(図3(a)乃至(c)参照)。このように凸部23aの幅の異なる被溶接部材23,23A,23Bが使用される場合であっても、凸部23aの幅に応じて照射間隔d1を調整することで、レーザ加工ヘッド1は、どのような幅に対しても使用することができる。つまり、レーザ加工ヘッド1は、被溶接部材23の凸部23aの幅に影響を受けることなく使用することができ、溶接する間隔が様々な製品に対して使用することができる。
また、第1レーザ光21及び第2レーザ光25は、共にスプリッター9により同じ強度で分割されている。それ故、第1レーザ光21と第2レーザ光25の照射強度は、第1照射位置22及び第2照射位置26にて略均一になる。それ故、第1照射位置22及び第2照射位置26が位置する溶接平面H1に2つの被溶接部材23,24を重ねて配置した場合、第1照射位置22及び第2照射位置26における溶け込み量等に大きなバラツキが生じることがなく、略同じ溶け込み量で溶接することができる。
<押圧機構>
このように様々な溶接間隔の製品に使用可能なレーザ加工ヘッド1の第2筐体4の下面には、図2に示すようにローラ用リニアガイド27が設けられている。ローラ用リニアガイド27は、幅方向に延びる長尺の部材である。このローラ用リニアガイド27には、第1押圧機構28及び第2押圧機構29が摺動可能に取り付けられている。第1押圧機構28及び第2押圧機構29は、構成が類似している。そこで、第2押圧機構29の構成については、第1押圧機構28の構成と異なる点についてだけ説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第1押圧機構28は、ローラ支持体30を有している。ローラ支持体30は、その上端部に間隔調整用スライド部31を有している。間隔調整用スライド部31は、ローラ用リニアガイド27に摺動可能に係合しており、ローラ支持体30は、この間隔調整用スライド部31によりローラ用リニアガイド27に沿って幅方向に移動できるようになっている。また、ローラ支持体30の下端部には、ローラ32が設けられている。ローラ32は、上方から見た平面視で前記ローラ用リニアガイド27に平行な軸線L2回りに回動できるようにローラ支持体30に設けられている。
このように配置される第1押圧機構28のローラ32は、第1照射位置22の近傍の第1押圧位置33にあり、その下端が溶接平面H1上に位置している。そのため、ローラ32は、溶接平面H1にて重ねて配置された被溶接部材23,24の第1照射位置22の近傍を下方に押して押し付けることができる。このように被溶接部材23,24を押し付けるローラ32は、レーザ加工ヘッド1を動かすことで被溶接部材23,24を下方に押しながらそれらの上を転がるようになっている。これにより、レーザ加工ヘッド1は、2つの被溶接部材23,24の第1照射位置22の近傍を押し付けながら連続的に溶接できるようになっている。
他方、第2押圧機構29のローラ32は、第2照射位置26の近傍の第2押圧位置34にあり、その下端が溶接平面H1上に位置している。そのため、ローラ32は、溶接平面H1にて重ねて配置された被溶接部材23,24の第2照射位置26の近傍を下方に押し付けることができる。従って、レーザ加工ヘッド1は、2つの被溶接部材23,24の第2照射位置26の近傍も押し付けながら連続的に溶接することができるようになっている。
このように構成される第1押圧機構28及び第2押圧機構29において、第1押圧位置33及び第2押圧位置34は、第1照射位置22及び第2照射位置26と同様に幅方向に離れた位置にあり、第1押圧位置33及び第2押圧位置34から軸線L1までの距離は、略一致している。また、第1押圧位置33は、第1照射位置22より軸線L1側に位置しており、第2押圧位置34は、第2照射位置26より軸線L1側に位置している。それ故、第1押圧位置33と第2押圧位置34との押圧間隔d2は、第1照射位置22と第2照射位置26の照射間隔d1より短くなっている。この押圧間隔d2は、第1押圧機構28及び第2押圧機構29をローラ用リニアガイド27に対して摺動させることで調整できるようになっており、第1押圧機構28及び第2押圧機構29のローラ支持体30には、押圧間隔d2と照射間隔d1とを連動させる第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36が設けられている。
<入射位置変更機構>
焦点調整機構でもある第1入射位置変更機構35は、第1スライド支持体37を有している。第1スライド支持体37は、上下方向に延びる部材であり、幅方向に移動できるように設けられている。第1スライド支持体37の下端部は、第1押圧機構28のローラ支持体30の上端部に一体的に設けられており、第1スライド支持体37の上端部には、第1昇降調整用スライド部38が設けられている。第1昇降調整用スライド部38は、第3リニアガイド39に摺動可能に係合している。第3リニアガイド39の上下端には、ストッパーが設けられており、第1昇降調整用スライド部38が外れないようになっている。
このように構成される第3リニアガイド39は、軸線L1に直交する仮想平面に対して全反射鏡8の全反射面8a及び第1鏡台16の第1鏡面16aと反対の方向に同じ角度θだけ傾いている。本実施形態では、第3リニアガイド39が軸線L1に直交する仮想平面に対して時計回りに約45度傾けられている。また、第1昇降調整用スライド部38は、この第3リニアガイド39の傾きに合わせて約45度傾けて第1スライド支持体37に設けられている。
また、第2入射位置変更機構36は、第2スライド支持体40を有している。第2スライド支持体40は、上下方向に延びる部材であり、第2筐体4を内外方向に貫通し、且つ幅方向に移動できるように設けられている。第2スライド支持体40の下端部は、第2押圧機構29のローラ支持体30の上端部に一体的に設けられており、第2スライド支持体40の上端部には、第2昇降調整用スライド部41が設けられている。第2昇降調整用スライド部41は、第4リニアガイド42に摺動可能に係合している。第4リニアガイド42の上下端には、ストッパーが設けられており、第2昇降調整用スライド部41が外れないようになっている。
このように構成される第4リニアガイド42は、軸線L1に直交する仮想平面に対してスプリッター9の部分反射面9a及び第2鏡台17の第2鏡面17aと反対の方向に同じ角度θだけ傾いている。本実施形態では、第3リニアガイド39が軸線L1に直交する仮想平面に対して反時計回りに約45度傾けられている。また、第2昇降調整用スライド部41は、この第4リニアガイド42の傾きに合わせて約45度傾けて第2スライド支持体40に設けられている。
このように傾けて配置される第3リニアガイド39及び第4リニアガイド42は、図2に示すように正面から見てV字状に配置されている。第3リニアガイド39及び第4リニアガイド42は、軸線L1を挟んで反対側に位置しており、第3リニアガイド39が第1鏡台16側に位置し、第4リニアガイド42が第2鏡台17側に位置している。このように配置される第3リニアガイド39及び第4リニアガイド42の下端部は、第1筐体3の外周部に固定されている。
このように固定される第3リニアガイド39及び第4リニアガイド42は、第1筐体3と共に上下方向に昇降するようになっている。それ故第3リニアガイド39が昇降すると、第1昇降調整用スライド部38が第3リニアガイド39上を摺動して幅方向に移動し、それに伴って第1押圧機構28が幅方向に摺動するようになっている。また、第4リニアガイド42が昇降すると、第2昇降調整用スライド部41が第4リニアガイド42上を摺動して幅方向に移動し、それに伴って第2押圧機構29が幅方向に移動するようになっている。
このように第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36は、第1筐体3の昇降に合わせて第1押圧機構28及び第2押圧機構29を幅方向に移動させて第1押圧機構28の幅方向の位置及び第2押圧機構29の幅方向の位置を調整できるようになっている。このように第1筐体3の昇降に合わせて位置を調整可能な第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36は、第1筐体3が上昇すると第1押圧機構28及び第2押圧機構29を軸線L1に向かって移動させ、押圧間隔d2を狭めるようになっている。また、第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36は、第1筐体3が下降すると、第1押圧機構28及び第2押圧機構29を軸線L1から遠ざけるように移動させ、押圧間隔d2を広げるようになっている。
第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36は、このように第1筐体3を昇降させることで押圧間隔d2を変更することができるが、逆に第1入射位置変更機構35又は第2入射位置変更機構36を動かして押圧間隔d2を変更し、第1筐体3を昇降させることができるようにもなっている。
このように押圧間隔d2を変更できる第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36の軸線L1に直交する仮想平面に対する傾き角(角度θ)が、全反射面8a及び部分反射面9aの軸線L1に直交する仮想平面に対する傾き角(角度θ)と略一致している。これにより、第1筐体3の昇降量に対する第1押圧位置33及び第1照射位置22の移動量が略一致し、第1筐体3が昇降しても第1照射位置22と第1押圧位置33との距離が変わらないようになっている。それ故、第1押圧位置33は、常に第1照射位置22の近傍に位置するようになっている。同様に、第1筐体3の昇降量に対する第2押圧位置34及び第2照射位置26の移動量が略一致し、第1筐体3が昇降しても第2照射位置26と第2押圧位置34との距離が変わらない。それ故、第2押圧位置34は、常に第2照射位置26の近傍に位置するようになっている。つまり、第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36は、常に第1照射位置22及び第2照射位置26の近傍が押し付けられた状態で第1照射位置22及び第2照射位置26を溶接することができるように構成されている。
このように構成される第1入射位置変更機構35及び第2入射位置変更機構36のうち少なくとも一方、本実施形態では、第1入射位置変更機構35は、駆動手段43に機械的に接続されている。駆動手段43は、例えばボールねじ機構とサーボモータによって構成され、ボールねじ機構を介して第1押圧機構28を動かし、この第1押圧機構28をローラ用リニアガイド27に沿って移動させるようになっている。駆動手段43により第1押圧機構28を移動させると、第1入射位置変更機構35により第1筐体3が昇降する。また、第1筐体3の昇降により第2入射位置変更機構36が第2押圧機構29をローラ用リニアガイド27に沿って移動させる。このように第1押圧機構28の動きに連動して第2押圧機構29が動き、押圧間隔d2が変更される。
このように押圧間隔d2を変更する駆動手段43は、第1押圧機構28の動きに連動させて第1筐体3を昇降させるので、押圧間隔d2と共に照射間隔d1を変更するようになっている。つまり、駆動手段43は、照射間隔d1、及び押圧間隔d2を連動させて変更することができるようになっている。このように照射間隔d1及び押圧間隔d2を変更可能な駆動手段43は、制御装置44に電気的に接続されている。
<制御装置>
制御装置44は、予め規定されたプログラム、キーボード等の入力手段により入力された作業員からの指令、又は後述するセンサー等から得られる情報に基づいて駆動手段43を駆動し、照射間隔d1及び押圧間隔d2を制御するようになっている。センサー等としては、例えば光学式の距離センサーやバーコードリーダがある。光学式の距離センサーの場合、被溶接部材23を挟むように2つの距離センサーを左右両側に配置して被溶接部材23の幅を測定し、この幅に応じて制御装置44が押圧間隔d2及び照射間隔d1を制御する。またバーコードリーダの場合、被溶接部材23の凸部23aの上面に、凸部23aの幅及び長さ等の情報が含まれるQRコード等のバーコードを設けておき、このバーコードをバーコードリーダにより読み取って、その情報に基づいて制御装置44が照射間隔d1及び押圧間隔d2を制御する。また、制御装置44は、レーザ加工ロボット2の各アームを駆動してレーザ加工ロボット2の姿勢を制御し、レーザ加工ヘッド1を所望の位置へと移動させることができるようになっている。
<その他の構成>
また、レーザ加工ヘッド1は、更にガラス保護手段45と、防塵手段46と、第1調光機構47と、第2調光機構48とを備えている。ガラス保護手段45は、第2筐体4の下面より下側の位置に設けられており、第2筐体4の下面に沿ってクロスジェット又はエアナイフ等のエアを流すようになっている。このようにエアを流すことで、溶接の際に発生するスパッタ及びヒュームから第1保護ガラス18及び第2保護ガラス19を保護している。これにより、第1照射位置22及び第2照射位置26に照射される第1レーザ光21及び第2レーザ光25の強度低下を抑えることができる。
防塵手段46は、いわゆるコンプレッサーであり、第2筐体4内と繋がっている。防塵手段46は、第2筐体4内にエアを供給するようになっている。第2筐体4では、隙間が図示しないシール部材により埋められており、第2筐体4が密閉された空間となっている。それ故、防塵手段46から第2筐体4内へとエアを供給することで第2筐体4内が外圧よりも高い圧力に保たれ、第2筐体4内に進入する粉塵を抑制することができる。
第1調光機構47は、第1鏡台16と第1保護ガラス18の間に設けられている。第1調光機構47は、凸レンズを有しており、この凸レンズの位置を調整することで第1照射位置22の高さを微調整できるようになっている。また、第2調光機構48は、第2鏡台17と第2保護ガラス19との間に設けられている。第2調光機構48は、凸レンズを有しており、この凸レンズの位置を調整することで、第2照射位置26の高さを微調整できるようになっている。このように構成される第1調光機構47及び第2調光機構48は、それらの凸レンズの位置を調整して各位置22,26の高さを調整することでフォーカス条件をジャストフォーカスからデフォーカスまで調整することができ、第1照射位置22及び第2照射位置26における溶け込み量を調整することができる。
また、第1調光機構47及び第2調光機構48は、第1スライド部材37及び第2スライド部材40と同期して移動するようになっている。これにより、第1照射位置22及び第2照射位置26の位置が変更されても、フォーカス条件が維持されるようになっている。
これらのガラス保護手段45、防塵手段46、第1調光機構47及び第2調光機構48は、レーザ加工ヘッド1において必ずしも設けられている必要はなく、ガラス保護手段45、防塵手段46、第1調光機構47及び第2調光機構48のうち1つ以上の構成が設けられていなくてもよい。図面を簡略するために、ガラス保護手段45、防塵手段46、第1調光機構47及び第2調光機構48は、図3(a)乃至(c)において省略している。循環装置5についても同様に記載を省略している。
<レーザ加工ヘッドの動作>
このような構成を有するレーザ加工ヘッド1による溶接作業では、まず、溶接すべき2つの被溶接部材23,24を重ね合わせて溶接台49に載せる。その後、制御装置44は、ガラス保護手段45及び防塵手段46を駆動させ、更にレーザ加工ロボット2の各アームを駆動してレーザ加工ヘッド1を溶接台49の上方に移動させる。移動させた後、制御装置44は、駆動手段43を駆動して被溶接部材23の凸部23aの幅に応じて第1押圧機構28の位置を調整する。即ち、制御装置44は、押圧間隔d2を調整する。この際、制御装置44は、予め規定されたプログラム、作業員からの指令、又はセンサー等から得られる情報に基づいて押圧間隔d2を調整する。以下では、制御装置44がセンサー等から得られる情報に基づいて押圧間隔d2を調整する場合について説明する。
制御装置44は、センサー等から被溶接部材23の凸部23aの幅及びその長さを取得すると、駆動手段43を駆動して凸部23aの幅に応じた位置に第1押圧機構28を移動させる。例えば図3(a)のように凸部23aの幅が押圧間隔d2の初期間隔より広い場合、制御装置44は、駆動手段43を駆動して第1押圧機構28を軸線L1から遠ざけるように(即ち、左方向に)距離Δd移動させる。そうすると、第1入射位置変更機構35の第1昇降調整用スライド部38が第3リニアガイド39上を左方向に摺動しながら第3リニアガイド39を下側へ距離Δd押し下げる。第3リニアガイド39が押し下げられることで、第1筐体3が第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13に沿って距離Δd下降する。このように第1筐体3が距離Δd下降すると、第4リニアガイド42が下降し、第4リニアガイド42に係合する第2昇降調整用スライド部41が第4リニアガイド42上を軸線L1から遠ざかる方向(即ち、右方向)に摺動する。第2昇降調整用スライド部41が距離Δd摺動することで、第2押圧機構29が右方向に移動し、押圧間隔d2が距離Δd×2広がる。
また、第1筐体3が下降すると、全反射鏡8と第1鏡台16との相対位置が変わり、第1レーザ光21が第1鏡台16に入射する位置がΔd低くなる。また、スプリッター9と第2鏡台17との相対位置も変わり、第1レーザ光21が第1鏡台16に入射する位置がΔd低くなる。そうすることで、照射間隔d1が距離Δd×2広くなる。このように、押圧間隔d2の初期間隔よりも凸部23aの幅の方が広い場合、制御装置44は、第1押圧機構28を左方向に移動させて押圧間隔d2を凸部23aに応じた所定間隔まで広げ、更に押圧間隔d2に連動させて照射間隔d1も凸部23aに応じた所定間隔まで広げる。
このように照射間隔d1及び押圧間隔d2を広げた後、制御装置44は、レーザ加工ロボット2の各アームを動かしてレーザ加工ヘッド1を下降させ、第1押圧機構28及び第2押圧機構29のローラ32を重ねられた2つの被溶接部材23,24の上に押し付ける。この際、制御装置44は、第1押圧機構28及び第2押圧機構29の間に凸部23aが入るようにレーザ加工ロボット2の各アームの動きを制御する。このように第1押圧機構28及び第2押圧機構29のローラ32を2つの被溶接部材23,24の上に押し付けることで、第1押圧位置33及び第2押圧位置34において、被溶接部材23の2つのフランジ23bが被溶接部材24に押し付けられる。
制御装置44は、2つの被溶接部材23,24を押し付けた後、レーザ発振装置6を駆動してレーザ光20を発振させる。発振したレーザ光20は、光ファイバー6aを介して第1筐体3内に導かれ、集光手段7を通ってスプリッター9に達する。レーザ光20は、スプリッター9にて第1レーザ光21及び第2レーザ光25に分割される。第1レーザ光21は、全反射鏡8の全反射面8a及び第1鏡台16の第1鏡面16aにて反射され、第1保護ガラス18を通って第1押圧位置33の近傍の第1照射位置22にて集光される。また、第2レーザ光25は、第2鏡台17の第2鏡面17aにて反射され、第2保護ガラス19を通って第2押圧位置34の近傍の第2照射位置26にて集光される。第1照射位置22及び第2照射位置26は、前述の通り、照射間隔d1を広げても溶接平面H1上(即ち、溶接台49上)にあり、また第1照射位置22及び第2照射位置26近傍では、溶接台49上で重ねられる被溶接部材23の各々のフランジ23bと被溶接部材24が押し付けられている。それ故、第1照射位置22では、集光された第1レーザ光21により押し付けられた一方のフランジ23bと被溶接部材24との施工部が溶接され、第2照射位置26では、集光された第2レーザ光25により押し付けられた他方のフランジ23bと被溶接部材24との施工部が溶接される。
このようにレーザ発振装置6を駆動して2つの被溶接部材23,24の第1照射位置22及び第2照射位置26を溶接している間、制御装置44は、レーザ加工ロボット2の各アームを動かしてレーザ加工ヘッド1を被溶接部材23の凸部23aの長手方向に沿って移動させる。このように移動させながら溶接を行なうことで、被溶接部材23の2つフランジ23bと被溶接部材24とが凸部23aに沿って連続溶接される。所定距離(例えば、凸部23aの長さ分)の連続溶接が終了すると、制御装置44は、レーザ発振装置6の駆動を止める。その後、制御装置44は、レーザ加工ロボット2の各アームを動かしてレーザ加工ヘッド1を被溶接部材23,24から離す。
このように構成されるレーザ加工ヘッド1は、第1照射位置22及び第2照射位置26の2箇所を同時に溶接することができるので、被溶接部材23の幅方向両側にある2つのフランジ23bを同時に溶接することができる。同時に溶接することで、2つのフランジ23bを被溶接部材24から離さずに溶接することができ、ギャップ閉止が容易である。それ故、一方又は他方のフランジ23bを溶接する際に、ギャップを閉じるために矯正をする必要がなく、被溶接部材23を矯正するための矯正機構を必要としない。また、同時に溶接することで、被溶接部材23の幅方向に不均一な熱膨張及び熱収縮履歴が生じることがなく、この不均一な熱膨張及び熱収縮履歴によって生じる被溶接部材23,24が不所望な変形を防ぐことができる。
また、図3(b)及び(c)のような凸部23aの幅が初期間隔より狭い被溶接部材23A,23Bを溶接する場合について説明する。まず、制御装置44は、センサー等から凸部23aの幅及びその長さを取得する。制御装置44は、駆動手段43を駆動し、その幅に応じて第1押圧機構28を軸線L1に向かって(即ち、右方向に)距離Δd移動させる。そうすると、第1入射位置変更機構35の第1昇降調整用スライド部38は、第3リニアガイド39上を右方向に摺動しながらこの第3リニアガイド39を上側へ距離Δd押し上げる。第3リニアガイド39が押し上げられることで、第1筐体3が第1リニアガイド12及び第2リニアガイド13に沿って距離Δd上昇する。このように第1筐体3が上昇すると、第4リニアガイド42が距離Δd上昇し、第4リニアガイド42に係合する第2昇降調整用スライド部41が第4リニアガイド42上を軸線L1に向かって(即ち、左方向に)距離Δd摺動する。第2昇降調整用スライド部41が摺動することで、第2押圧機構29が左方向に移動し、押圧間隔d2が距離Δd×2狭まる。
また、第1筐体3が上昇すると、全反射鏡8と第1鏡台16との相対位置が変わり、第1レーザ光21が第1鏡台16に入射する位置がΔd高くなる。また、スプリッター9と第2鏡台17との相対位置も変わり、第1レーザ光21が第1鏡台16に入射する位置がΔd高くなる。そうすることで、照射間隔d1が距離Δd×2狭くなる。被溶接部材23A,23Bのように凸部23aの幅が押圧間隔d2の初期間隔より狭い場合、制御装置44は、第1押圧機構28を右方向に距離Δd移動させて押圧間隔d2を距離Δd×2狭め、更に押圧間隔d2に連動させて照射間隔d1を距離Δd×2狭める。このように照射間隔d1を狭めても、第1照射位置22及び第2照射位置26は、溶接平面H1上にある。それ故、照射間隔d1を狭めても溶接台49上に重ねて載せられる2つの被溶接部材23A,24、又は被溶接部材23B,24の第1押圧位置33及び第2押圧位置34近傍を溶接することができ、良好な溶接が可能となる。
レーザ加工ヘッド1は、凸部23aの幅が異なる被溶接部材23であっても、第1押圧機構28を動かすだけで、照射間隔d1及び押圧間隔d2を所望の間隔に合わせることができる。それ故、レーザ加工ヘッド1は、溶接する間隔が異なる様々な製品に対して利用することができ、利便性が向上している。一台で様々な製品に対して利用できるので、異なる幅のハット型の補強部材を一台で溶接することができ、生産性が向上する。
このようにレーザ光20を第1レーザ光21及び第2レーザ25に分割して2箇所で同時に溶接することを可能にするため、レーザ光20は、密度の大きいレーザ光が用いられることが好ましい。また、分割された第1レーザ光21及び第2レーザ25もまた、溶接速度等を考えると密度が大きい方が好ましい。このように使用され分割されるレーザ光の密度が大きいため、全反射鏡8、スプリッター9、第1鏡台16及び第2鏡台17にて反射される際に大きな熱が発生する。全反射鏡8、スプリッター9、第1鏡台16及び第2鏡台17が加熱され、第1筐体3及び第2筐体4内の温度が上昇する。
このように加熱される第1鏡台16及び第2鏡台17は、それらに設けられる第1冷却通路16b及び第2冷却通路17bを循環する冷媒、例えば冷却水により冷却される。従って、第1鏡台16の第1反射面16a及び第2鏡台17の第2反射面17aが焼き付くことを防ぐことができる。また、第1筐体3及び第2筐体4の第1冷却路3a及び第2冷却路4aにも冷媒が循環しており、この冷媒により第1筐体3及び第2筐体4内が冷却される。従って、第1筐体3及び第2筐体4内が高温になることを防ぐことができる。このような冷却路及び冷却通路等の冷却手段は、全反射鏡8及びスプリッター9にも設けることができ、それにより全反射鏡8及びスプリッター9の焼き付きを防ぐことができる。
また、本実施形態では、第1鏡台16及び第2鏡台17に入射する第1レーザ光21及び第2レーザ光25の入射位置を変えることにより、第1照射位置22及び第2照射位置26の位置を変更できるようになっているので、コリメータレンズ10と集光光学系11との間に照射間隔d1を調整する機構を設ける場合より位置精度などの要求が低くなる。
<その他の実施形態について>
本実施形態では、第1照射位置22及び第2照射位置26が変更できるようになっているが、どちらか一方だけが変更できるようなものであってもよい。つまり、第1位置照射位置22及び第2照射位置26のうち一方が固定され、他方が変更可能に構成されているものでもよい。例えば、スプリッター9が第1筐体3の昇降に関係なく常に同じ位置にあり、全反射鏡8が第1筐体3と共に昇降するようにすることで実現することができる。