JP5493107B2 - 面方位(111)のMgO薄膜の作製方法 - Google Patents
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Description
「MgO(111)」という)薄膜を原子スケールで表面平坦にレーザーアブレーション堆積
法によって作製する方法に関する。
定化ジルコニア(YSZ)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化マグネシウム(MgO)
、マグネシウムアルミネート(MgAl2O4)、酸化イットリウム、(LaAlO3)0.3−(SrAl0.5
Ta0.5O3)0.7(LSAT)、シリコンなどが使用される。原子スケールで平坦でかつ結晶性の
良好な酸化物単結晶基板表面を形成するには通常、単結晶基板の表面を研磨する方法が用
いられている。
磨面を持つ基板が市販されている。しかし、単結晶からMgO(111) 面を切り出し、機械
的に研磨する方法では、表面の平坦性は、きわめて悪く、表面疵等の欠陥も生じやすい。
このような方法で静電的に不安定なMgO(111)の平坦面を得るのは困難であり、RHE
ED 像には表面の凹凸を反映した透過回折像が現われ、Kikuchi線は現われてい
ない(非特許文献1)。
あるMgO基板の表面に3C−SiC膜を設ける際に、MgO基板を水素雰囲気中で10
00℃以上1600℃以下に加熱し、所定時間保持することによりMgO基板の表面に原
子ステップを形成する方法が提案されている(特許文献1)。
は、6H−SiC(0001)(非特許文献2)、GaN(0002)(非特許文献3)、Al2O3(0
001)(非特許文献4、5)、Ag(111)(非特許文献6)などの基板を用いて行われてき
たが、原子間力顕微鏡での断面プロファイルにより原子スケールでのステップ段差が確認
でき、成長時に反射高速電子線回折(RHEED)による強度振動が見え、原子スケールでの
積層状(layer by layer)成長が確認できたものは今までなかった。
。また、MgO(111) 面は、分子吸着、触媒反応に対して活性を持つことが知られており
、メタノールの低温での分解触媒への利用が報告されている(非特許文献7)。
光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、紫外線検出器のp型層として使
用できるp型酸化物半導体として原子スケールで平坦な NiO(111) 薄膜を単結晶基板
上に形成する方法を開発し、特許出願した(特許文献4、非特許文献8)。MgOと同様
に岩塩構造を取る NiOも単結晶を切り出して (111) 平坦面を得るのは困難であるが、
上に示した方法により単結晶基板上にNiO(111) 超平坦面を得ることが出来る。しかし
、この方法では原子スケールで平坦な MgO(111) 表面を形成しようとすると、MgO
と単結晶基板が固溶反応するために実現できない。
ス構造を作製する際にきわめて重要となる。例えば、極く薄膜のチャンネル層をこの上に
構築する場合、下地の面の粗さがチャンネル層の厚みと同じオーダーの大きさであると、
下地の面の凹凸での散乱の効果が大きくなり、チャンネル層は設計どおりの動作を行わな
い。
スケールで平坦化されると、全て陽イオン(Mg2+)、又は全て陰イオン(O2-)から成る
面が露出することになり、静電的に極めて不安定である。実際、バルク単結晶MgOを切
り出して原子スケールで平坦な (111) 面を研磨により得ることは成功していない。
する方法を報告した(非特許文献4)が、 図4に示すように、二乗平均粗さは0.2n
m程度を超え、しかも膜が厚くなるにつれて粗さが大きくなり、厚さ80nmでは粗さは
約0.6nmであり、原子スケールで平坦なMgO (111) 面は得られていなかった。
(0001)、YSZ(111) 、MgAl2O4 (111) 、ZnO (0001)については原子スケールで
平坦な市販品が存在する。これらの基板の格子定数は MgOとは有意に異なるため、そ
のままMgO(111) 平坦面の代わりの基板にはならない。
あり、MgOは、現在市販されているMgO以外の基板材料とは格子定数が異なるため、
MgO(111)を基板、又はバッファ層として用いれば堆積した薄膜に今までに試されてい
ない格子歪を導入することが可能となる。
は理論的に注目されてきたが、原子スケールで平坦な表面を持つMgO(111) 薄膜の実現
は、MgOの大きな電気的な不安定性のためにこれまで阻まれてきた。よって、MgO(1
11) 面の活性の実証的評価はなされておらず、電気的、化学的な活性の触媒等への利用も
進んでいなかった。
ットとして用いてMgO薄膜を基板上に堆積する方法において、基板として、単結晶Ni
O(111)薄膜層を原子スケールで表面平坦に成膜した単結晶基板を用い、該NiO(111)薄
膜層上に「Mg−O」層を1ユニットとして積層状に堆積させてエピタキシャル成長させ
ることによってMgO(111)薄膜を原子スケールで表面平坦に成膜することを特徴とする
面方位(111)のMgO薄膜の作製方法、である。
してMgO(111)薄膜を成膜することを特徴とする上記(1)のMgO薄膜の作製方法、
である。
1)のMgO薄膜の作製方法、である。
にRHEED強度振動をモニタリングすることによって、所望の層数で堆積を停止するこ
とを特徴とする上記(1)のMgO薄膜の作製方法、である。
ことを特徴とする上記(1)のMgO薄膜の作製方法、である。
上にレーザーアブレーション堆積法によりMgO焼結体又は単結晶をターゲットとして用
いてMgO薄膜を作製することで、初めて原子スケールで「Mg−O」を積層状(レイヤ
ーバイレイヤー)に堆積することが可能となり、MgO(111)薄膜を原子スケールで表面
平坦に作製できることを見出した。なお、「Mg−O」とは、MgO(111) 薄膜において、
電気的中性を保った最も薄い膜であり、Mgだけが存在する平面と、それに隣接するOだ
けが存在する平面の2平面から構成される層のことをいう。
化ジルコニア等が用いられるが、YSZに直接MgOを室温で堆積し、後で1,300℃
で加熱してアニールするという方法は、MgOとYSZが反応するので実行できない。中
間温度でMgOを堆積させると、ある程度表面平坦な膜が形成されるが、原子スケールで
平坦な表面は得られず、RHEED強度振動も見られない。原子スケールで表面平坦でな
いNiO薄膜上にMgOを堆積すると、原子スケールで平坦なMgO表面は得られず、R
HEED強度振動も見られない。
るが、NiOの場合は遷移金属であるNiがさまざまな価数を取りうるため、電気的不安
定性を緩和するような電子配置を取ることが予想できる。その点で、MgO(111) 面の方
は、強いイオン結合性、非常に大きいバンドギャップと合わせて、NiOより不安定性は
高い。単結晶NiO(111)薄膜は、不安定性の高いMgO(111) 面の堆積に際してバッフ
ァ層としての機能を有するが、NiO(111) 薄膜をアニール処理により超平坦単結晶膜と
した場合に、他の基板材料では、従来実現出来なかったより不安定なMgO(111)薄膜の
レイヤーバイレイヤー成長を可能とし、原子スケールで表面平坦な膜が堆積する理由は明
確ではない。
再構成を生じるのに対し、本発明の方法で作製したMgO(111) 表面は高い不安定性にも
かかわらず面内方向の再構成を生じない。この理由は明らかではないが、再構成を生じな
い本MgO(111)表面は、他の膜の成長のためのテンプレートとして有用性は大きい。
ためのバッファ層として特に有用である。特に、本MgO(111)薄膜の結晶性は他の薄膜
に比べてきわめて高いため、この上に成長させた薄膜においても高い結晶性を期待できる
という点で有用である。
る。酸化物単結晶基板の表面は、通常、その製造工程における光学研磨による研磨痕があ
り、結晶そのものにもダメージが入っている。このような基板を大気中又は真空中で10
00℃以上に加熱することによって表面拡散を起こさせると超平坦化した表面が得られる
。超平坦化した酸化物単結晶基板の表面には結晶構造を反映した構造が現れる。すなわち
、数100nm程度の幅を持つテラスとサブナノメータ(nm)程度の高さを持つステップか
らなる構造を、一般に「原子スケールで表面平坦」と呼ぶ。基板に堆積した薄膜について
も同様である。
全に平坦化された表面である。ステップの存在により、構造全体で完全平坦化された表面
とはならない。この構造を二乗平均粗さ測定方法による粗さRRMSで表現すれば、RRMSは
1.0nm以下のものである。RRMSは、原子間力顕微鏡で、例えば、1μm角の範囲を
走査することによって算出した値である。
、従来のAl2O3(0001)、YSZ(111) 、MgAl2O4 (111) 、ZnO (0001)等の原子
スケールで平坦な面を持つ基板を用いても得られなかった原子スケールで表面平坦な高い
結晶性のMgO(111) 薄膜の作製に成功した。
表面を研磨した基板に直接、レーザーアブレーション堆積法によりMgO薄膜を堆積する
のではなく、該単結晶基板表面に原子スケールで平坦なテラスとサブナノメータ(nm)のス
テップから構成されている単結晶NiO(111)薄膜を成膜した基板を用いる。このような
単結晶NiO(111)薄膜の成膜方法は、前記特許第4,014,473号明細書・図面記
載の方法を用いることができる。
板などを用いる。酸化物単結晶基板には、例えば、YSZ等の安定化ジルコニア、サファ
イア、MgO、ZnOなどがある。特に、YSZは、アニールによるNiOとの反応が生
じ難く、結晶性が悪くならないので好ましい。
結晶薄膜を堆積する(図1のA)。堆積方法には、パルス・レーザー蒸着法、スパッタリ
ング法、CVD法、MO−CVD法、MBE法などを用いることができる。堆積時の基板
温度は100℃以下とする。下限温度は0℃である。堆積時の基板温度はより好ましくは
10〜50℃である。基板表面の二乗平均粗さRRMSは、1.0nm以下のものを用いる
ことが好ましい。RRMSは原子間力顕微鏡で、例えば、1μm角を走査することによって
算出できる。
、原子スケールで平坦なテラスと分子層ステップの構造は見られないが、これを高温でア
ニールする。アニール温度は600℃〜1500℃が好ましい。
た、NiO薄膜を堆積した基板2枚を、膜部分を内側に挟み込む形で2枚重ねてアニール
してもよい(図1のB)。アニール中の雰囲気は大気又は酸素ガスが好ましい。次に2枚
重ねた場合は、はがして1枚に戻す(図1のC)。これにより原子スケールで表面平坦な
単結晶 NiO(111) (以下、「NiO(111)/YSZ(111)」という)を形成する。
1のD)。堆積時の基板温度は好ましくは500℃〜900℃とし、酸素分圧は好ましく
は10-4〜1Paとする。基板温度が500℃より低いとRHEED振動は見えなくなり
、900℃を超えるとNiO層へのMgOの顕著な固溶が予想されるので好ましくない。
酸素分圧が10-4未満では高温では金属Niの析出が起こり、1Paを超えるとRHEE
D振動は再び見えなくなり好ましくない。ターゲットは、MgO焼結体又はMgO単結晶
を用いる。ターゲットと基板との間隔は、任意であるが、装置の規模に応じて適宜選択す
る。上記の方法により、目的に応じて所望の膜厚となるように堆積する。
状(レイヤーバイレイヤー)に成長し、単結晶の研磨では存在しない原子スケールで表面
平坦な(111)面が得られる。また、「Mg−O」の層数を10〜500に増やしても、二
乗平均粗さRRMSが0.5nm、好ましくは0.25nmを超えない平坦性と単結晶に匹
敵する結晶性が得られる。MgO(111) 薄膜をバッファ層として使用する場合、その膜厚
は1nm〜2000nm、好ましくは1nm〜200nm程度が用いられるが、本発明の
方法で得られるMgO(111)薄膜は膜厚が大きくなっても次第に粗くなることはない。
したがって、膜厚1nm〜200nmで0.5nm、好ましくは0.25nmを超えない
平坦性を実現できる。
g−O」層ユニット数(原子スケールの膜厚)をRHEED強度振動のモニタリングによ
り制御できることがわかった。RHEEDの電子ビームが照射されている部分の大きさは
ミリメートルのオーダーなので、その領域で、すなわち、極めてマクロなスケールで、膜
表面が完全平坦(ゼロ次スポット強度最大)、膜表面に中途半端に原子が占められていく
途中(強度が下がる)、再び原子が敷き詰められて完全平坦が回復(ゼロ次スポット強度
再び最大に)を繰り返していることをRHEED強度振動は現している。そこで、RHE
ED強度振動を数え、所望の層数に対応する振動回数のところで堆積を終了することで膜
の厚みをその場で正確に決められるので、磁気トンネル接合などでの障壁層をMgOで作
製する際にこの方法を適用できる。
1.室温でYSZ(111) 基板2枚にNiO薄膜をパルスレーザーアブレーション法で堆積
した。YSZ(111)単結晶基板(信光社(株)製、10mm角)を大気中1300℃に加熱し
て、原子状平坦面を作製した。レーザーアブレーション用超高真空容器(パスカル(株)
社製)に、このYSZ単結晶基板を設置して温度を室温に保持した。容器中に1×10-3
Paの酸素ガスを導入し、KrFエキシマーレーザー光(ラムダ・フィジクス(株)社製
レーザー発光装置)をNiO焼結体ターゲットに照射して、ターゲットから50mm離し
て対向させた基板上にNiO薄膜を堆積させた。膜厚は20nmとした。次に、NiO薄
膜を堆積した基板を真空容器から取り出した。
300℃、大気中で1時間アニールした後、室温まで冷却した。2枚の基板をはがすと原
子スケールで平坦な単結晶 NiO(111)表面を基板に形成できたことが図2(b)に示す
原子間力顕微鏡像と鏡像中のC〜D間断面の粗さ(Height)プロファイルによって確認でき
た。RRMSは、0.13nmであった。
Oを堆積した。ただし、基板温度を600℃、ターゲットをMgO単結晶とした。500
layers 以下の厚みの膜の作製を繰り返し行い試料とした。
像でみて、原子スケールでのステップ-テラス構造が見え、鏡像中のE〜F間断面の粗さ(
Height)プロファイルを見るとステップ一段が「 Mg−O 」1 ユニット分で7層となっ
ていることが分かる。RRMSは、0.17nmであった。図2(d)に示すように、「 M
g−O 」ユニットの堆積層数を増やして原子間力顕微鏡で見たところ、「 Mg−O 」
10ユニット(10 layers)分、100ユニット(100 layers)分、500ユニット(500 laye
rs)分と膜が厚くなってもRRMSは0.25nmを超えておらず、極めて小さい値に抑えら
れている。
chi線が現われ、著しい表面平坦性と高い結晶性を反映している。図3の(B)は、Mg
O(111) 堆積時の RHEED 強度振動を示すグラフであり、横軸に堆積時間(秒)、縦
軸にゼロ次スポットの強度(a.u.)を示す。挿入図中の「1ML:32s」は「Mg−O」1ユ
ニット層に相当する周期が32秒であることを示す。図3の(A)に示すように、NiO
(111)薄膜のRHEED像は鋭いKikuchi線が現れており、著しい表面平坦性と
高い結晶性を反映している。さらに、図3の(B)に示すように、MgO(111) 薄膜の堆積
時の RHEEDのゼロ次スポットの強度には強度振動が観察され、「 Mg−O 」 ユニ
ットごとに層状成長していることが分かった。
り、本発明の方法で得られたMgO(111) 面は特に他の薄膜の堆積用のバッファ層として
、TFT(薄膜トランジスタ)、LD(レーザーダイオード)、LED(発光ダイオード
)、MTJ(磁気トンネル接合)等のエレクトロニクスデバイス分野で利用される。また
、MgO(111) 面は、分子吸着、触媒反応に対して活性を持つことが知られているため、
メタノールの低温での分解などの触媒材料としても期待できる。
Claims (5)
- レーザーアブレーション堆積法によりMgO焼結体又は単結晶をターゲットとして用いて
MgO薄膜を基板上に堆積する方法において、基板として、単結晶NiO(111)薄膜層を
原子スケールで表面平坦に成膜した単結晶基板を用い、該NiO(111)薄膜層上に、Mg
O(111) 薄膜において、電気的中性を保った最も薄い膜であり、Mgだけが存在する平面
と、それに隣接するOだけが存在する平面の2平面から構成される層である「Mg−O」
を1ユニットとして積層状に堆積させてエピタキシャル成長させることによってMgO(1
11)薄膜を原子スケールで表面平坦に成膜することを特徴とする面方位(111)のMgO薄膜
の作製方法。 - 基板温度を500〜900℃とし、酸素分圧を10-4〜1PaとしてMgO(111)薄膜を
成膜することを特徴とする請求項1記載のMgO薄膜の作製方法。 - 前記「Mg−O」の層数が1〜500であることを特徴とする請求項1記載のMgO薄膜
の作製方法。 - 前記「Mg−O」の層数が1〜10であり、「Mg−O」層の堆積時にRHEED強度振
動をモニタリングすることによって、所望の層数で堆積を停止することを特徴とする請求
項1記載のMgO薄膜の作製方法。 - MgO(111)薄膜の二乗平均粗さRRMSが0.25nmを超えないことを特徴とする請求項
1記載のMgO薄膜の作製方法。
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