JP5491753B2 - 中性子グリッド及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中性子を用いて被検体の透過画像を撮影する際に、前記被検体からの中性子散乱線を除去し、鮮明な前記透過画像を得るための中性子グリッド及びその製造方法に関する。
X(γ)線など放射線が物質を透過する際には、その構成物質の種類や形状によって吸収や散乱が異なってくる。これを映像として写真やビデオ、デジタルファイル等として記録すれば、物質の破損状態、変化、充填状況等を把握することができる。これは一般にX線ではレントゲン写真として人体の内部の状態を診察する方法として用いられている。測定したい物体あるいは試料を破壊せずに内部の状態を測定するこの方法はラジオグラフィまたは非破壊放射線撮影法と呼ばれている。
特にX線を用いた医療撮影では、X線発生源の焦点から1次X(エックス)線が放射状に放射され、被検体に照射される。1次X線は被検体で吸収され、角度を変えずにそのまま減衰して透過し、受像体で記録される。一方、前記1次X線は、前記被検体に照射されるとその構成物質に依存して吸収の他に散乱を起こし、散乱線となる2次X線、3次X線等が1次X線と角度を変えて受像体に向かう。
この状態で前記被検体の透過画像を得ようとする場合、前記1次X線に加えて、2次及び3次等のX線総てが前記受像体で記録されてしまうようになる。したがって、前記1次X線によって得ようとする本来的な透過画像に対して、前記2次及び3次等の散乱X線による画像がかぶってしまうために、鮮明な透過画像を得ることができない。
このような観点から、通常は前記被検体と前記受増体との間にグリッド(格子)を配置し、前記2次及び3次等の散乱X線を除去して鮮明な透過画像を得るようにしている。
前記グリッドは、前記1次X線の照射方向と略平行な方向において、X線吸収の少ないスペーサーとX線吸収の多い箔とが配列され、前記照射方向と略垂直な方向において積層されてなる。前記スペーサーには、例えば繊維や樹脂、木片、アルミニウムが用いられ、前記箔には鉛箔など重い元素を含む箔が用いられている。結果として、前記1次X線と角度の異なる2次及び3次等の散乱X線はグリッドの鉛箔にて吸収されて除去される(特許文献1及び2)。
なお、前記グリッドは、X線源の焦点からの受像体までの距離に合わせてグリッドの角度を1次X線の角度と合わせた集束グリッド、前記1次X線が平行に照射されることを想定した平行グリッド、及び中心の鉛箔と外側の鉛箔の高さが異なるテーパ付きグリッドなどがある。このようなグリッドは、JIS Z 4910:2000ガイドとして規格の説明がある。
特開2007−130460号公報 特開2008−232731号公報
一方、X線と同様に中性子を用いて被検体の透過画像を得ようとする試みがなされている。このような方法は、中性子ラジオグラフィあるいは中性子イメージングなどと呼ばれ、従来のX線あるいはγ線によるラジオグラフィでは撮影がほとんど不可能であった金属中に水素や水素原子を含む水、樹脂、油、アルコールなどを含む燃料電池及びエンジン、水素貯蔵の分野において盛んに用いられるようになってきている。これは、中性子が、質量がほぼ等しい水素等との散乱反応が顕著であり、水素を含む水、プラスチックなどに感度が高いことに起因している。
また、ガドリニウム、カドミウム、あるいはボロンなど特定の中性子吸収材料の画像化にも適している。
しかしながら、上述のように中性子を用いて被検体の透過画像を得る場合にも、X線の場合と同様に中性子の散乱が生じ、散乱した中性子による画像が前記透過画像にかぶってしまい、鮮明な透過画像を得ることができないという問題がある。但し、X線と異なり中性子の場合には、中性子のエネルギーによって被検体の構成元素との反応が異なり、2次的に生成される中性子(散乱中性子)も異なるようになる。
例えば、中性子源として原子炉を用いる中性子ラジオグラフィでは、使用される中性子は熱中性子(サーマルニュートロン)が主成分となり、そのエネルギー分布は0.025eV以下が主成分となる。しかしながら、前記原子炉の場合でも、前記熱中性子よりもエネルギーの高い熱外中性子や高速中性子の成分が微量に含まれる場合がある。また、中性子源として加速器を用いた場合は、より高いエネルギーにまで幅広く中性子が分布している。
上述した高速中性子は、水素と反応して熱中性子に変換される。したがって、中性子を用いて被検体の透過画像を得ようとする場合には、X線を用いる場合と異なり、前記被検体から新たに熱中性子が生成され、この熱中性子によって形成される画像が本来の熱中性子によって得ようとする透過画像にかぶって鮮明な透過画像が得られない原因となっている。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、中性子、特に熱中性子を用いて被検体の透過画像を得る際に、前記透過画像のノイズの原因となる中性子散乱線を除去することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明の一態様は、線源から照射される中性子を後方に配置した受像体に被検体を介して通す中性子グリッドであって、第1の熱中性子質量減衰係数を有しAl,Sn,W,Au,Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む複数のスペーサー、及び前記第1の熱中性子質量減衰係数に対して100倍以上の大きさの第2の熱中性子質量減衰係数を有し酸化ガドリニウム(Gd )及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン( 10 C)の少なくとも一方を含む膜体からなる前記複数の中性子吸収体と、前記複数のスペーサー及び前記複数の中性子吸収体を上下方向において挟持するための一対のカバー材とを具え、前記複数のスペーサー及び前記複数の中性子吸収体は、1次元的にそれぞれ交互に、かつ線源から放射状に入射する中性子に対して平行なテーパー状に延在して配置され、前記膜体は、前記複数のスペーサーそれぞれの上に、酸化ガドリニウム(Gd )及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン( 10 C)の少なくとも一方を含む原料から蒸着法によって形成し、その厚さが5μm〜30μmの範囲の厚さであることを特徴とする、中性子グリッドに関する。
本態様の中性子グリッドは、中性子、特に熱中性子を用いて被検体の透過画像を得る際、前記被検体と受像体との間に、その構成要素であるスペーサー及び中性子吸収体が前記中性子の照射方向と略平行に延在するようにして配置する。この場合、前記スペーサーと前記中性子吸収体との配列方向は、前記中性子の照射方向と略垂直とする。
したがって、中性子源から発生した中性子、特に熱中性子が前記被検体において散乱した場合において、その散乱中性子は、前記中性子の照射方向とは異なる方向にランダムに散乱し、前記中性子グリッドの中性子吸収体に所定の角度で入射して吸収されるようになる。したがって、前記散乱した中性子による画像が前記透過画像にかぶることがない。
また、中性子源から発生した熱中性子よりもエネルギーの高いエピサーマルニュートロンやファーストニュートロン(高速中性子)の成分が水素等と反応して熱中性子に変換された場合においても、この副次的に発生した熱中性子は、前記中性子の照射方向とは異なる方向にランダムに散乱し、前記中性子グリッドの前記中性子吸収体に所定の角度で入射して吸収されるようになる。したがって、このように副次的に生成された熱中性子による画像が前記透過画像にかぶることがない。
一方、上記中性子源から照射された本来的な中性子、すなわち熱中性子は、前記中性子グリッドの前記スペーサー及び中性子吸収体が前記中性子の照射方向と略平行に延在するようにして配置していることから、前記中性子グリッドの前記中性子吸収体で一部吸収されるものの、完全に吸収されることなく、前記被検体の目的とする透過画像を得ることができる。
以上説明したように、本発明の中性子グリッドを用いることにより、中性子、特に熱中性子を用いて被検体の透過画像を得る際に、前記透過画像のノイズの原因となる中性子散乱線を除去することができる。
中性子ラジオグラフィ測定系の一例を示す構成図である。 図1に示す測定系を用いた際の被検体の透過画像を得るための説明図である。 図1に示す測定系に用いた中性子グリッドの構成を示す図である。 図1に示す測定系に用いた中性子グリッドの構成を示す図である。 元素の原子番号と熱中性子質量吸収係数との関係を示すグラフである。 ボロン(B)とガドリニウム(Gd)について中性子エネルギーに対する相対的な吸収特性を示すグラフである。 アルミニウム基板上に酸化ガドリニウムを蒸着させて得た積層体における熱中性子の捕捉効率結果を示すグラフである。 熱中性子の照射方向と中性子グリッドの集束方向とがずれている状態を示す模式図である。
以下、本発明の詳細、その他の特徴及び利点について、実施の形態に基づいて説明する。
(中性子グリッド)
<中性子グリッドの構成>
図1は、受像体に中性子イメージインテンシファイア(中性子I.I.)を用い、中性子源として原子炉を用いた場合の中性子ラジオグラフィ測定系を示す構成図であり、図2は、図1に示す測定系を用いた際の被検体の透過画像を得るための説明図である。また、図3及び図4は、図1に示す測定系に用いた中性子グリッドの構成を示す図である。
図1に示すように、この測定系10は、原子炉からなる中性子発生源11と、この中性子発生源11の、中性子照射方向の前方に配置されたモデレータ12と、コリメータ13とを有する。また、コリメータ13の前記中性子照射方向の前方には被検体14が配置され、その後方には中性子グリッド15及び受像体(中性子I.I.)16が配置されている。
また、中性子グリッド15は、図3に示すように、複数のスペーサー151と複数の中性子吸収体152とが交互に配列され、その上下を一対のカバー材152及び153で挟持されるようにして構成されている。なお、図1及び2から明らかなように、複数のスペーサー151及び複数の中性子吸収体152の配列方向は、中性子の照射方向と略垂直であって、各スペーサー151及び各中性子吸収体152は、前記中性子の照射方向と略平行となるように延在させる。
なお、中性子吸収体152の熱中性子質量減衰係数は、スペーサー151の熱中性子質量減衰係数の100倍以上となるように設定する。これによって、上記中性子は、スペーサー151は透過するものの、中性子吸収体152では透過されずに吸収されるようになる。
以上説明したような、スペーサー151及び中性子吸収体152の配置条件と物理条件とを満足することによって、中性子グリッド15は上記中性子に対してグリッドとしての機能を奏することができる。
ここで“略平行”及び“略垂直”とは、上記中性子が以下に示すような点線源から照射された場合を考慮したものである。すなわち、前記点線源から照射された中性子は被検体14に対して放射状に照射され、中性子グリッド15に対しても放射状に入射するようになる。この場合、被検体14の中心部を透過する中性子は中性子グリッド15に対してほぼ垂直に入射するが、被検体14の端部を透過する中性子は中性子グリッド15に対して所定の角度で入射するようになる。
したがって、中性子グリッド15に対して所定の角度で入射した中性子を考慮した場合、複数のスペーサー151及び複数の中性子吸収体152の配列方向は、前記中性子の照射方向と必ずしも垂直とはならず、各スペーサー及び各中性子吸収体も、前記中性子の照射方向と必ずしも平行には延在しないので、このような中性子をも考慮することにより、上述のような“略平行”及び“略垂直”の文言を用いたものである。
中性子発生源(原子炉)11で発生した高速中性子はモデレータ12によって熱中性子に変換され、コリメータ16によって一部が引き出されて被検体14に照射され、被検体14を透過した後、中性子グリッド15を通して受像体(中性子イメージインテンシファイア(I.I.))16にてイメージ画像として写される。結果として、被検体14の透過画像を受像体(中性子I.I.)16で得ることができる。
今、中性子発生源11がコリメータ13の存在等によって点線源Oを構成する場合を考える。この場合、図2に示すように、点線源Oから照射された熱中性子n1は、放射状に広がって被検体14に至る。その後、熱中性子n1の大部分は被検体14を透過し、中性子グリッド15を経て受像体16に至る。これは、上述のように、中性子グリッド15を構成するスペーサー151及び中性子吸収体152は、熱中性子n1の照射方向と略平行となるように延在する一方、その配列方向は前記照射方向と略垂直となっており、熱中性子n1の一部は中性子吸収体152で吸収されるものの、その大部分はスペーサー151を透過することに起因する。
一方、熱中性子n1の一部は、被検体14の表面及び内部で散乱し、散乱熱中性子nsとなる。この散乱熱中性子nsは、図2からも明らかなように、本来の熱中性子n1の照射方向とは無関係に種々の方向に散乱されるようになる。したがって、散乱熱中性子nsの、中性子グリッド15への入射角度は、中性子グリッド15を構成するスペーサー151及び中性子吸収体152の延在方向とは略平行とはならず、また、その配列方向に対しても略垂直とはならない。
したがって、散乱熱中性子nsは、スペーサー151を透過することなく、中性子吸収体152に斜めに入射し、吸収されることになる。結果として、受像体16では、本来の熱中性子n1による透過画像のみを得ることができ、散乱熱中性子nsによる画像が上記透過画像にかぶるのを防止することができる。結果として、受像体16において被検体14の鮮明な透過画像を得ることができる。
なお、散乱熱中性子nsは、熱中性子n1が被検体14に照射された場合のみならず、コリメタータ13中で熱中性子n1が散乱して形成される場合もある。しかしながら、このようにして形成された散乱熱中性子nsも上述した原理に基づいて、中性子グリッド15によって吸収除去され、目的とする透過画像に対してノイズとなるような画像を形成することはない。
また、中性子発生源11で発生した中性子は、モデレータ12によって全て熱中性子に変換されるわけではなく、一部は熱外中性子や高速中性子となる。しかしながら、このような中性子も、上述した原理に基づいて、中性子グリッド15によって吸収除去され、目的とする透過画像に対してノイズとなるような画像を形成することはない。
<中性子グリッドの構成材料>
次に、中性子グリッド15を構成する材料について述べる。図5は、横軸を元素の原子番号、縦軸に熱中性子質量吸収係数を示している。参考のためにX線100kVでの吸収計数を実線にて図中に示している。
図5を参照すると、Li,B,Cd,In,Sm,Gd及びDyにおいて、高い熱中性子質量吸収係数を示すことが分かる。一方、Al,Sn,W,Au,Pb及びBiにおいて、低い熱中性子質量減衰係数を示すことが分かる。したがって、中性子グリッド15のスペーサー151は、Al,Sn,W,Au,Pb及びBiの少なくとも1種を含むことが好ましく、中性子吸収体152は、Li,B,Cd,In,Sm,Gd及びDyの少なくとも1種を含むことが好ましい。
上述した材料選択により、中性子吸収体152の熱中性子質量減衰係数は、スペーサー151の熱中性子質量減衰係数の100倍以上とすることができるが、中性子吸収体152としてDyを含む場合は、その熱中性子質量減衰係数が比較的小さいので、スペーサー151は、熱中性子質量減衰係数が十分に小さいAl、Sn等を選択する。
なお、スペーサー151及び中性子吸収体152は、上述した金属元素単体から構成することもできるし、上述した元素を含む限りにおいて、合金やその他の化合物とすることもできる。
特に、化学的に安定であって、形成時の原料の入手のし易さ、形成の容易さ等の観点から、中性子吸収体152は、酸化ガドリニウム(Gd)及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン(10C)の少なくとも一方を含む膜体から構成することが好ましい。
図6は、ボロン(B)とガドリニウム(Gd)について中性子エネルギーに対する相対的な吸収特性を示している。共に熱中性子のエネルギー0.025eVの時を1に規格化して、吸収係数の相対値を示している。ボロンの場合、中性子による吸収は主に同位体のB−10でB−11はほとんど吸収しない。ガドリニウムの場合も吸収の大きいのは同位体のGd−157である。図6中に記載している熱中性子の吸収係数は、[b](バーン)という単位で表され、この数値が大きいほど多く吸収される。天然に存在するガドリニウムは、B−10と比べて約10倍以上吸収係数が大きい。
しかしながら、熱中性子よりもエネルギーの高い熱外中性子の領域よりも高いエネルギー領域では、ガドリニウムの吸収係数はボロンと比べて極端に小さくなることがわかる。また、リチウム(Li−6)もボロンと同様にエネルギーに対して比例して減少する特性を示す。したがって、中性子グリッド15として熱中性子よりも高い中性子エネルギーで使用する場合には、中性子吸収体をB−10またはLi−6を含む材料から構成することが好ましい。逆に熱中性子以下のエネルギーの場合には、かかるエネルギー領域で吸収係数が大きいガドリニウムが望ましい。
次に中性子グリッド15を構成するカバー材152及び153について説明する。中性子の場合、照射される空間には中性子の他にX線やγ線が多く混在しているのが一般的である。したがって、これらX線やγ線によるノイズを除去するために、カバー材152及び153は、中性子を透過し、X線及びγ線を透過しないような原子番号の大きい材料が最適である。かかる観点より、カバー材152及び153は、タングステン(W)や鉛(Pb)、ビスマス(Bi)などの材料またはこれらを主成分とした合金から構成する。
また、アルミニウムを支持材として、この支持材上にタングステン(W)や鉛(Pb)、ビスマス(Bi)などの材料またはこれらを主成分とした合金を膜状に形成する、又は板状部材として貼り合わせるようにして形成することができる。
<中性子グリッドの変形例>
上述した中性子グリッド15は単独で用いることもできるが、少なくとも2以上組み合わせ、各中性子グリッド15を構成するスペーサー151及び中性子吸収体152が交差するようにして積層して用いることもできる。この場合、一方向における散乱熱中性子nsの吸収除去のみならず、他方向における散乱熱中性子nsの吸収除去も行うことができる。例えば、2つの中性子グリッド15を各中性子グリッド15を構成するスペーサー151及び中性子吸収体152が互いに直交するようにすれば、X方向及びY方向の2方向において2次元的な散乱熱中性子nsの吸収除去を行うことができる。
(中性子グリッドの製造)
次に、上述した中性子グリッド15の製造方法について説明する。
<第1の製造方法>
上述した中性子グリッド15を製造する第1の方法としては、中性子グリッド15を構成するスペーサー151を基板とし、この基板上に、中性子吸収体152を蒸着法を用いて形成するという操作を順次に繰り返し、目的とする中性子グリッド15を形成する方法である。この方法によれば、中性子吸収体152は膜体として形成されることになり、さらにこの膜体は前記蒸着法を用いていることに起因して構成原子が密に充填された状態となる。
したがって、中性子吸収体152中の中性子吸収に寄与する原子の数密度が大きくなり、前記膜体の厚さを小さくしても十分に散乱熱中性子等を吸収することができる。実際、前記膜体の厚さを5μm〜30μmの範囲に設定することによって、散乱熱中性子nsを少なくとも約30%〜80%の範囲で吸収し、除去することができる。
なお、前記膜体の厚さが30μmを超えても、散乱熱中性子nsの吸収及び除去の割合は80%を大きく超えて上昇することはない。したがって、原料の使用効率等の観点からも、膜体として構成された中性子吸収体152の厚さの上限は30μm程度とすることが好ましい。一方、膜体としての中性子吸収体152の厚さが5μmよりも小さいと、散乱熱中性子nsの吸収除去の割合が減少し、中性子グリッド15自体がその本来的な機能を発揮しない場合がある。
図7は、アルミニウム基板上に酸化ガドリニウムを蒸着させて得た積層体における熱中性子の捕捉効率をHe−3中性子検出器で測定した結果である。酸化ガドリニウムの理論的な密度は7.4g/ccであるが、実験結果から実効的な密度は4g/ccで一致している。この結果を参照すると、酸化ガドリニウムの厚さが5μmで約30%の捕捉(吸収)が確認され、30μmで80%の捕捉(吸収)が確認される。
なお、図7では、前記積層体の膜面に垂直に(前記積層体の厚さ方向に対して平行に)熱中性子が入射した場合を示している。しかしながら、実際の散乱熱中性子nsは、中性子グリッド15、すなわち中性子吸収体152に対して斜めに入射することになるので、散乱熱中性子nsに対する中性子吸収体152の実効的な厚さは、図7に示すような垂直入射の場合に比較して増大する。
したがって、図7において、前記積層体における酸化ガドリニウムの厚さ5μmで約30%の捕捉(吸収)が確認され、30μmで80%の捕捉(吸収)が確認される場合において、実際の中性子グリッド15における中性子吸収体152では、特に下限値である5μmの場合でも、散乱熱中性子nsに対する実効的な厚さは5μm以上となるので、かかる下限値5μmにおける実際の散乱熱中性子nsの吸収除去効率は30%以上となる。
したがって、中性子吸収体152の膜体の厚さを5μm〜30μmの範囲に設定することによって、散乱熱中性子nsを少なくとも約30%〜80%の範囲で吸収し、除去することができるとしたのは、図7から得られる上述のような考察に基づくものである。
なお、蒸着法を用いて中性子吸収体152を膜体として形成するこの方法では、例えば、上述した酸化ガドリニウム(Gd)及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン(10C)の少なくとも一方を含む原料に対して蒸着法を施す。蒸着法としては、真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法などの汎用の方法を用いることができる。
但し、スペーサー151を上述した熱中性子質量減衰係数の小さい元素を含むアルミニウムやジルコニウム合金、ビスマスや鉛、スズやスズの合金、半田等からなる箔から構成し、中性子吸収体152も酸化ガドリニウム(Gd)等の箔から構成し、これらを交互に貼り合わせることによって目的とする中性子グリッド15を構成することも考えられる。
しかしながら、この方法では、酸化ガドリニウム(Gd)等の箔の形成及び入手が困難であるとともに、貼り合せるための操作が複雑で時間を要するために効率的ではない。
<第2の製造方法>
上述した中性子グリッド15を製造する第2の方法としては、中性子吸収体152を、スペーサー151上に、粒径が10μm以下の酸化ガドリニウム(Gd)及び酸硫化ガドリニウム(GdS)の少なくとも一方の粉末、又は粒径が10μm以下の濃縮ボロンを含む炭化ボロン(10C)及び窒化ボロン(10BN)の少なくとも一方の粉末をバインダーと混合し、スペーサー151上に沈降法によって形成するという操作を繰り返すことによって、目的とする中性子グリッド15を形成する方法を挙げることができる。
沈降法は、公知の膜形成方法であり、溶液内の下にスペーサー151を設置し、上述した酸化ガドリニウム(Gd)等の粉末を前記溶液内に分散させ、その後時間を置いて前記粉末を沈降させ、上澄み液を流してスペーサー151に沈降付着させる方法である。
本方法は、スペーサー151をスズや鉛の合金等の低融点の物質から構成した場合に有効である。上述した蒸着法を用いるような場合は、特に真空蒸着法等の場合、基板であるスペーサー151を高温に加熱する必要があるが、スペーサー151を上述のような低融点物質から構成した場合、前記加熱によってスペーサー151が湾曲したり、部分的に溶けてしまったりする場合があり、目的とする中性子グリッド15を形成することができない場合がある。
これに対して、本方法ではスペーサー151に対して加熱操作を施すことがないので、スペーサー151を低融点物質から構成した場合においても、中性子吸収体152の形成時に溶解等することがない。したがって、スペーサー151に使用可能な材料の選択性が増大する。
但し、本方法では、上述した蒸着法を用いて中性子吸収体152の膜体を形成する第1の方法に比較し、中性子吸収体152の構成原子の数密度が減少してしまう。したがって、本方法では、第1の方法と同様の中性子吸収効率を得るべく、その厚さを100μm〜500μmとする。
<第3の製造方法>
上述した中性子グリッド15を製造する第3の方法としては、中性子吸収体152を、スペーサー151上に、粒径が10μm以下の酸化ガドリニウム(Gd)及び酸硫化ガドリニウム(GdS)の少なくとも一方の粉末、又は粒径が10μm以下の濃縮ボロンを含む炭化ボロン(10C)及び窒化ボロン(10BN)の少なくとも一方の粉末をバインダーと混合し、スペーサー151上に印刷法によって形成するという操作を繰り返すことによって、目的とする中性子グリッド15を形成する方法を挙げることができる。
本方法も、上記第2の方法同様に、スペーサー151に対して加熱操作を施すことがないので、スペーサー151を低融点物質から構成した場合においても、中性子吸収体152の形成時に溶解等することがない。したがって、スペーサー151に使用可能な材料の選択性が増大する。
但し、本方法でも、上述した蒸着法を用いて中性子吸収体152の膜体を形成する第1の方法に比較し、中性子吸収体152の構成原子の数密度が減少してしまう。したがって、本方法では、第1の方法と同様の中性子吸収効率を得るべく、その厚さを100μm〜500μmとする。
なお、上記印刷法としては、スクリーン印刷法等、公知の方法を用いることができる。
(中性子グリッド装置)
図8に示すように、中性子発生源11(本例では点線源としている)から照射された熱中性子n1の照射方向と中性子グリッド15の集束方向とがずれているような場合、熱中性子n1は、スペーサー151及び中性子吸収体152の延在方向と略平行に入射せずに、所定の角度で交差するようにして入射するようになる。この状態では、熱中性子n1が中性子グリッド15を透過することができず、受像体16において被検体14(図8では図示せず)の透過画像を得ることができない。
したがって、このような場合は、中性子グリッドの15角度並びに前後の距離を遠隔で調整できるようにグリッドを回転並びに直線駆動装置に取り付けて使用するようにする。これによって、当初、熱中性子n1の照射方向と中性子グリッド15の集束方向とが図8のような関係にあるような場合でも、中性子グリッド15の位置を調整することによって、例えば、図2に示すような位置関係とし、中性子グリッド15の機能を十分に発揮させて受像体15上に被検体14の鮮明な透過画像を得ることができるようになる。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
10 中性子ラジオグラフィ測定系
11 中性子発生源
12 モデレータ
13 コリメータ
14 被検体
15 中性子グリッド
151 スペーサー
152 中性子吸収体
153、154 カバー材
16 受像体

Claims (5)

  1. 線源から照射される中性子を後方に配置した受像体に被検体を介して通す中性子グリッドであって、
    第1の熱中性子質量減衰係数を有しAl,Sn,W,Au,Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む複数のスペーサー、及び前記第1の熱中性子質量減衰係数に対して100倍以上の大きさの第2の熱中性子質量減衰係数を有し酸化ガドリニウム(Gd )及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン( 10 C)の少なくとも一方を含む膜体からなる前記複数の中性子吸収体と、
    前記複数のスペーサー及び前記複数の中性子吸収体を上下方向において挟持するための一対のカバー材とを具え、
    前記複数のスペーサー及び前記複数の中性子吸収体は、1次元的にそれぞれ交互に、かつ線源から放射状に入射する中性子に対して平行なテーパー状に延在して配置され、
    前記膜体は、前記複数のスペーサーそれぞれの上に、酸化ガドリニウム(Gd )及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン( 10 C)の少なくとも一方を含む原料から蒸着法によって形成し、その厚さが5μm〜30μmの範囲の厚さであることを特徴とする、中性子グリッド。
  2. 前記カバー材は、W,Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項に記載の中性子グリッド。
  3. 請求項1または請求項2に記載の中性子グリッドを少なくとも2以上組み合わせ、各中性子グリッドを構成するスペーサー及び中性子吸収体が交差するようにして積層してなることを特徴とする、中性子グリッド。
  4. 請求項1〜3のいずれか一に記載の中性子グリッドと、
    前記中性子グリッドの中心軸を中性子の照射方向と一致させるための制御駆動装置と、を具えることを特徴とする、中性子グリッド装置。
  5. 第1の熱中性子質量減衰係数を有しAl,Sn,W,Au,Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む複数のスペーサー、及び前記第1の熱中性子質量減衰係数に対して100倍以上の大きさの第2の熱中性子質量減衰係数を有し酸化ガドリニウム(Gd )及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン( 10 C)の少なくとも一方を含む膜体からなる前記複数の中性子吸収体と、前記複数のスペーサー及び前記複数の中性子吸収体と上下方向において挟持するための一対のカバー材とを具え、前記複数のスペーサー及び前記複数の中性子吸収体は、1次元的にそれぞれ交互に、かつ線源から放射状に入射する中性子に対して平行なテーパー状に延在して配列されてなる中性子グリッドの製造方法であって、
    前記複数のスペーサーそれぞれの上に、前記中性子吸収体を、酸化ガドリニウム(Gd)及び濃縮ボロンを含む炭化ボロン(10C)の少なくとも一方を含む原料から、蒸着法により厚さ5μm〜30μmの範囲の膜体として形成することを特徴とする、中性子グリッドの製造方法。
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