JP5491252B2 - 切削工具及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合焼結体を用いた切削工具に関する。
従来から、切削工具などの耐摩耗部材として使われているセラミック材料は、靭性向上を目的として、組成や組織の複合化、残留応力の付与など様々な方法で改良が行われてきた(特許文献1〜3)。
例えば、組成に関しては、特許文献1のようにジルコニア(ZrO2)およびSiCウィスカーを複合化して強靭化する手法がある。しかし、ジルコニアは室温では優れた靭性を有するものの、耐熱性に問題があり、相変態が起こって高温下では逆に強度を著しく劣化させてしまうという問題がある。また、SiCウィスカーは大変高価である。
組織の複合化に関しては、特許文献2のように粒子を異方成長させて、靭性を高めようとする手法がある。しかし、異方粒成長のためには例えば低融点のシリカのような助剤成分の添加が不可欠であり、1000℃以上の高温下では耐熱性が十分でないという問題がある。
また、残留応力強化に関しては、特許文献3のように同心状の積層構造体として、最外層に圧縮の残留応力を生じさせ、耐熱衝撃性を改善する手法がある。しかし、残留応力により強化されてもいったんクラックが入ってしまうと、同心円状積層構造では積層境界面方向にかかる応力に沿ってクラックが進展し、簡単に大きな欠落部分を形成してしまうという問題がある。
特表平3−505708号公報 特開2000−219569号公報 特開平9−11005号公報
上述した従来の技術では、いずれの場合にも、切削工具などの耐摩耗性部材にクラックが生じると、クラックがそのまま進展して、耐摩耗性部材の破損に至ってしまうという問題がある。一方、耐摩耗部材を使用する際に、クラックが生じることは避けることはできない。発明者らは、このような破損のメカニズムに着目し、クラックが生じた後に、そのクラックがそのまま進展しないように耐摩耗部材を構成すれば、より破損し難い耐摩耗部材が得られるという着想に至ったものである。
本発明は、クラックが生じても、クラックがそのまま進展し難く、より破損し難い切削工具を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、上表面のコーナー部を切刃として使用する切削工具であって、
互いに異なる材料組成と熱膨張率を有する複数の異種材料成形体を、前記切削工具の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせ、前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置で測定される破壊靱性が異方性を有するように構成されており、
前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置においてJIS-R1607のIF法に準じて破壊靱性値を測定したとき、
(i)前記コーナー部を形成する2つの辺のうちで前記測定位置により近い第1の辺にほぼ平行な方向に伸びるクラックのクラック長さの半分から算出される第1の破壊靱性値と、
(ii)前記測定位置の中心を始点として前記第1の辺から遠ざかる方向に伸びるクラックのクラック長さから算出される第2の破壊靱性値と、
の差が、0.5MPa√m以上であることを特徴とする切削工具である。
この構成によれば、切削工具の切刃の近傍にクラックが生じても、破壊靱性に異方性があるためにクラックがそのまま進展し難く、クラックが迂回して進展する。この結果、より破損し難い切削工具を提供することができる。また、測定位置に近い第1の辺に平行な方向の第1の破壊靱性値と、第1の辺から遠ざかる方向の第2の破壊靱性値とに十分な差があるので、クラックがそのまま進展し難く迂回して進展し、より破損し難い切削工具を提供することができる。
[適用例1]
上表面のコーナー部を切刃として使用する切削工具であって、
互いに異なる材料組成と熱膨張率を有する複数の異種材料成形体を、前記切削工具の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせ、前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置で測定される破壊靱性が異方性を有するように構成されていることを特徴とする切削工具。
この構成によれば、切削工具の切刃の近傍にクラックが生じても、破壊靱性に異方性があるためにクラックがそのまま進展し難く、クラックが迂回して進展する。この結果、より破損し難い切削工具を提供することができる。
[適用例2]
適用例1記載の切削工具であって、
前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置においてJIS-R1607のIF法に準じて破壊靱性値を測定したとき、
(i)前記コーナー部を形成する2つの辺のうちで前記測定位置により近い第1の辺にほぼ平行な方向に伸びるクラックのクラック長さの半分から算出される第1の破壊靱性値と、
(ii)前記測定位置の中心を始点として前記第1の辺から遠ざかる方向に伸びるクラックのクラック長さから算出される第2の破壊靱性値と、
の差が、0.5MPa√m以上であることを特徴とする切削工具。
この構成によれば、測定位置に近い第1の辺に平行な方向の第1の破壊靱性値と、第1の辺から遠ざかる方向の第2の破壊靱性値とに十分な差があるので、クラックがそのまま進展し難く迂回して進展し、より破損し難い切削工具を提供することができる。
[適用例3]
適用例1又は2記載の切削工具であって、
前記第2の破壊靱性値が前記第1の破壊靱性値よりも小さいことを特徴とする切削工具。
この構成によれば、第1の辺から遠ざかる方向の第2の破壊靱性値の方が小さいので、第1の辺の近傍にクラックが発生しても、第1の辺から遠ざかる方向にクラックが迂回し易く、より破損し難い切削工具を提供することができる。
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項に記載の切削工具であって、
前記複数の異種材料成形体は、前記切削工具の上表面を構成する第1の成形体と、前記第1の成形体に組み合わされた第2の成形体とを含み、
前記複数の異種材料成形体は、互いに組み合わされた後に焼結され、
前記第2の成形体の熱膨張率は、前記第1の成形体の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする切削工具。
この構成によれば、焼結工程の冷却時に第2の成形体の方がより収縮し、切削工具の上表面を構成する第1の成形体に圧縮応力が残留するので、クラックが進展し難く破損し難い切削工具を提供することができる。
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか一項に記載の切削工具であって、
前記複数の異種材料成形体は、それぞれアルミナを主成分とするセラミック材料で形成されていることを特徴とする切削工具。
この構成によれば、安価な材料を用いて破損し難い切削工具を提供することができる。
[適用例6]
上表面のコーナー部を切刃として使用する切削工具の製造方法であって、
(a)互いに異なる材料組成と熱膨張率を有する複数の異種材料成形体を成形する工程と、
(b)前記複数の異種材料成形体を前記切削工具の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせることによって、前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置で測定される破壊靱性が異方性を有する組み合わせ成形体を作成する工程と、
を備えることを特徴とする切削工具の製造方法。
この方法によれば、切削工具の切刃の近傍にクラックが生じても、破壊靱性に異方性があるためにクラックがそのまま進展し難く迂回して進展し、より破損し難い切削工具を提供することができる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、セラミック複合部材、焼結体、耐摩耗性部材、切削工具、及び、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
切削工具の外観を示す斜視図である。 切削工具の成形体組み合わせ構造の例を示す図である。 切削工具の製造方法を示すフローチャートである。 実施例及び比較例の構成と試験結果を示す図である。 破壊靱性値の測定方法を示す説明図である。
図1は、本発明の一実施形態としての切削工具10の外観を示す斜視図である。この切削工具10は、JIS-B4121に準拠したSNGN120708形状のスローアウェイチップである。切削工具10は、丸みを帯びた4つのコーナー部を有する略正方形状の上表面を有しており、全体として略角柱形状を有している。切削工具10のコーナー部の辺は、切刃12として使用される。また、コーナー部の上表面部分はすくい面14として使用され、側面は逃げ面16として使用される。但し、切削工具10の形状としては、これ以外の種々の形状を採用することが可能である。また、本発明は、切削工具以外の種々のセラミック複合部材や耐摩耗性部材として構成することも可能である。
図2は、切削工具10として利用可能な種々の成形体組み合わせ構造の例を示す図である。ここでは、4つの構造T1〜T4の平面図と、平面図の上に示された切断面X1,X2でそれぞれ切断したときの断面図がそれぞれ描かれている。構造T1〜T4のそれぞれは、切削工具の上表面を構成する上部成形体UC1〜UC4と、下部成形体LC1〜LC4をそれぞれ組み合わせたものである。
上部成形体UC1〜UC4と下部成形体LC1〜LC4は、熱膨張率が互いに異なるものとなるように、異種材料で成形される。これらの異種材料としては、例えば、Al2O3(アルミナ)を主成分とする各種のセラミック材料を使用することが可能である。具体的には、Al2O3を主成分として、ZrO2,TiC,TiNを含む群から選択された材料を混合したセラミック材料を使用でき、これらの成分の比率を変えることによって成形体の熱膨張率を調整可能である。なお、ZrO2の熱膨張率は約10×10-6/℃〜11×10-6/℃であり、Al2O3,TiC,TiNの熱膨張率は約7×10-6/℃〜9×10-6/℃である。Al2O3を主成分とするセラミック材料の代わりに、Al2O3を含まず、ZrO2,TiC,TiNから選択された材料で構成されたセラミック材料を使用してもよい。また、他の材料で構成されたセラミック材料を使用してもよい。これらのセラミック材料には、NiやCoなどの金属を混合してもよい。さらに、サーメットや超硬合金(Cemented Carbide)などの他の焼結材料を使用して成形体を形成することも可能である。
第1の組み合わせ構造T1の上部成形体UC1は、上表面の4辺の位置で厚みが最も小さく、4辺から離れるに従って厚みが増大して一定の厚みに達するような下に凸の台状形状を有している。下部成形体LC1は、上部成形体UC1に嵌合して、全体として略角柱状の部材を構成する。換言すれば、上部成形体UC1は下に凸の嵌合面を有しており、下部成形体LC1はこれに嵌合する凹状の嵌合面を有している。なお、図1の逃げ面16に相当する側面には、上部成形体UC1と下部成形体LC1の両方の側面が現れる(図示省略)。この点は、他の組み合わせ構造T2〜T4も同様である。
第2の組み合わせ構造T2の下部成形体LC2は、略円柱状の形状を有しており、上部成形体UC2は、この下部成形体LC2を上から被う形状を有している。換言すれば、下部成形体LC2は上に凸の嵌合面を有しており、上部成形体UC2はこれに嵌合する凹状の嵌合面を有している。この構造T2においても、図1の逃げ面16に相当する側面には、上部成形体UC2と下部成形体LC2の両方の側面が現れる。但し、下部成形体LC2の全体を上部成形体UC2の中に嵌入させて、図1の逃げ面16に相当する側面に下部成形体LC2が現れないようにしてもよい。
第3の組み合わせ構造T3の上部成形体UC3と下部成形体LC3は、それぞれ全体として略平板状の形状を有している。但し、上部成形体UC3と下部成形体LC3の間の嵌合面には、複数の凹凸が形成されている。嵌合面の凹凸は、切削工具10の切刃12として使用されるコーナー部近傍に設けられていることが好ましい。
第4の組み合わせ構造T4の上部成形体UC4と下部成形体LC4は、それぞれ平板状形状を有しており、その境界も平面である。この組み合わせ構造T4は、比較例の切削工具に採用されるものである。
上述の4つの組み合わせ構造T1〜T4において、上表面の中央部における上部成形体UC1〜UC4の厚みは、約1〜2mmに設定されることが好ましい。上部成形体の中央部の厚みが過度に大きいと、上部成形体と下部成形体の熱膨張率の差に起因する内部応力が上表面付近であまり大きくならない。そのため、上表面における破壊靱性が十分な異方性を有さなくなる可能性がある。一方、上部成形体の中央部の厚みが過度に小さいと、安定した性能の焼結体を作成するのが難しくなる可能性がある。
図2に例示した組み合わせ構造T1〜T3では、熱膨張率が互いに異なる第1と第2の成形体を、切削工具10の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせている。従って、これらの成形体の組み合わせ構造を焼結すると、その冷却時に、熱膨張率の違いに起因する内部応力が残留する。例えば、下部成形体の熱膨張率が上部成形体の熱膨張率よりも大きい場合には、下部成形体の方がより大きく収縮するので、上部成形体の上表面に圧縮応力が残留する。逆に、下部成形体の熱膨張率が上部成形体の熱膨張率よりも小さい場合には、上部成形体の上表面に引張応力が残留する。また、この残留応力は、等方的でなく、凹凸状の嵌合面の形状に依存した異方性応力として残存する。この結果、切刃12に近い上表面(すくい面14)において、コーナー部の対角線からオフセットした測定位置で破壊靱性を測定すると、破壊靱性値が異方性を示すものとなる。従って、切削工具10の使用時に、切刃12の近傍にクラックが発生しても、そのクラックがそのまま直進せずにいろいろな方向に進み得るので、クラックが迂回しながら進展する。この結果、従来に比べて破損し難い切削工具を得ることができる。
なお、成形体の組み合わせ構造としては、図2に示した構造T1〜T3以外の種々の構造を採用することが可能である。また、組み合わせ構造としては、3つ以上の成形体を組み合わせてもよい。例えば、構造T1の下部成形体LC1の下面に上面と同じような凹部を設け、その下に、上部成形体UC1の上下を逆にした成形体を組み合わせるようにしてもよい。なお、耐摩耗性部材(切削工具)の構造としては、上表面が平面ではなく、凹凸を有するものも存在する。この場合において、「上表面に平行な面」という語句は、「上表面の凸部の頂点に接する平面に平行な面」という意味に解釈すべきである。
図3は、本発明の実施形態における切削工具の製造方法を示すフローチャートである。ステップT100では、切削工具の組み合わせ構造を構成する複数の成形体用の各種粉末を配合して混合粉末を作成する。ステップT110では、各成形体用の混合粉末を金型により成形する。ステップT120では、得られた複数の成形体をカーボン型に充填して焼結する。焼結条件としては、通常の焼結条件を使用可能である。例えば、温度が1450℃、圧力が30MPaの条件下においてアルゴンガス気流中で3時間ホットプレスにて焼結することによって組み合わせ構造の焼結体を得ることができる。ステップT130では、製作した焼結体を所望の切削工具形状に加工する。この結果、異種成形体を組み合わせて構成された切削工具が得られる。
なお、焼結を行わずに、複数の異種材料成形体を耐摩耗性部材の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせることによって、破壊靱性が異方性を有する組み合わせ成形体を形成するようにしてもよい。但し、複数の異種材料成形体を組み合わせた後に焼結すれば、破壊靱性が異方性を有する耐摩耗性部材をより容易に作成することが可能である。
図4は、実施例及び比較例の構成と試験結果を示す図である。図4(A)は、組み合わせ構造を構成する成形体用の材料A〜Eの組成(重量%)を示している。材料Aは、Al2O3が100%である。材料Bは、Al2O3を90%、ZrO2を10%含む。材料Cは、Al2O3を70%、ZrO2を70%含む。材料Dは、Al2O3を60%、TiNを40%含む。材料Eは、TiCを20%、TiNを66%、Niを7%、Coを7%含む。なお、ZrO2は、Al2O3,TiC,TiNよりも熱膨張率が大きいので、ZrO2をより多く含む材料ほど大きな熱膨張率を有する。
図4(B)は、実施例1〜6及び比較例1〜3に関して、使用した材料と、組み合わせ構造と、破壊靱性値及び切削距離の試験結果を示している。図4(B)において、「表面材質」の欄は図2の上部成形体UC1〜UC4として使用した材料を示し、「内部材質」の欄は下部成形体LC1〜LC4として使用した材料を示す。構造の欄は、図2の4つの組み合わせ構造T1〜T4のいずれを使用したかを示している。例えば、実施例1では、図2の構造T1を使用し、その上部成形体UC1を材料A(100%Al2O3)で形成し、下部成形体LC1を材料C(70%Al2O3+30%ZrO2)で形成した。実施例1〜3では、同じ材料A,Cの組み合わせを用いて、異なる構造T1〜T3をそれぞれ有するように焼結体をそれぞれ作成した。実施例4〜6では、同じ構造T2を用いて、材料の異なる組み合わせを使用して焼結体をそれぞれ作成した。比較例1では、構造T4を用いて、材料A,Cの組み合わせを使用して焼結体を作成した。比較例2,3では、材料A及び材料Bのうちの一種類の材料をそれぞれ用いて、図1に示す形状の焼結体を作成した。
各実施例及び比較例の焼結体は、図3のステップT100〜T120に従ってそれぞれ作成した。まず、ステップT100では、図4(A)の組成に従って、各材料A〜Eに使用する粉末を配合して混合粉末を作成した。ステップT110では、これらの混合粉末を金型により成形して、上部成形体及び下部成形体をそれぞれ得た。但し、比較例2,3に関しては、上下の区別の無い略角柱形状の成形体を得た。ステップT120では、得られた成形体をカーボン型に充填し、1450℃、30MPaの条件下においてアルゴンガス気流中で3時間ホットプレスにて焼結して、焼結体をそれぞれ得た。こうして得られた焼結体に関して、下記の破壊靱性値測定及び切削距離測定を行った。
破壊靱性値測定では、各焼結体の表面を0.100μmRa以下の表面粗さに鏡面仕上げし、JIS-R1607に基づきIF法(Indentation Fracture Method)にて破壊靱性値を測定した。図5は、破壊靱性値の測定方法を示す説明図である。破壊靱性値の測定は、図5(A)に示すように、焼結体10aのコーナー部の3mm四方の領域(ハッチングを付した領域)で行った。図5(B)は、その測定領域の拡大図である。測定位置(ビッカース硬度計の圧コンIDの位置)は、コーナー部の対角線DLからオフセットした位置に設定した。すなわち、圧コンIDが、コーナー部の2つの辺E,Eのうちの一方の辺Eにより近くなるように測定位置を選択した。以下では、圧コンIDから近い辺Eを「近接辺E」と呼び、圧コンIDから遠い辺Eを「遠方辺E」と呼ぶ。具体的な測定位置としては、圧コンIDの中心が、近接辺Eから約1mmの距離にあり、遠方辺Eから約2mmの距離にある位置を選択した。なお、これらの距離は、各辺E,Eを延長した直線から圧コンIDの中心までの垂直距離を意味している。圧コンIDの方向は、圧コンIDの対角線のうちの一方が近接辺Eに平行になるように設定した。但し、図5(A)の形状では2つの辺E,Eは互いに垂直なので、圧コンIDの2つの対角線が2つの辺E,Eにそれぞれ平行になった。
圧コンIDの形成後、顕微鏡により以下の長さを測定した。
(1)圧コンIDの対角線の長さの平均値の半分:d [m]
(2)近接辺Eとほぼ平行な方向に沿って圧コンIDの上下に伸びるクラックのクラック長さの半分:L1 [m]
(3)圧コンIDの中心を始点として近接辺Eから遠ざかる方向に伸びるクラックのクラック長さ:L2 [m]
そして、上記の測定値d,L1,L2から、JIS-R1607のIF法の計算式に準じた以下の(1)式及び(2)式に従って、2つの破壊靱性値Kc1, Kc2 [MPa√m]をそれぞれ算出した。
Figure 0005491252
Figure 0005491252
ここで、Eは表面材質の弾性率[Pa]、Pは押込荷重[N]である。なお弾性率Eは、JIS-R1602(ファインセラミックスの弾性率試験方法)に準拠し測定した値を用いた。
第1の破壊靱性値Kc1は、近接辺Eとほぼ平行な方向に沿って圧コンIDの上下に伸びるクラックのクラック長さ2L1の半分の値L1を用いて算出されている。従って、第1の破壊靱性値Kc1は、近接辺Eと平行な方向に沿った靱性を示しているものと考えることが可能である。
一方、第2の破壊靱性値Kc2は、圧コンIDを始点として近接辺Eから遠ざかる方向に伸びるクラックCaのクラック長さL2を用いて算出されている。従って、第2の破壊靱性値Kc2は、近接辺Eから遠ざかる方向に沿った靱性を示しているものと考えることが可能である。なお、破壊靱性試験は、圧コンIDを始点として近接辺Eに近づく方向に伸びるクラックCb(図5)が、近接辺Eに達しないように行うことが好ましい。この理由は、クラックCbが近接片Eに達すると、第2の破壊靱性値Kc2を正確に測定するのが困難だからである。
図4(B)に示す破壊靱性値のうち、「平行方向」の欄は第1の破壊靱性値Kc1を示しており、「隔離方向」の欄は第2の破壊靱性値Kc1を示している。
切削試験では、ステップT100〜T130に従って上記条件で製作した焼結体を、JIS-B4121に基づくスローアウェイチップとしてSNGN120708形状(図1)に加工し、下記条件にて切削性能を評価した。
<切削性能評価条件>
・被削材:FC200(鋳鉄)
・速度:200m/min
・切り込み:1.5mm
・送り:0.5mm/rev
・切削油:なし
図4(B)に示す切削距離は、13メートル加工する毎に衝撃を与えてクラックを入れ、刃先が欠落するまで加工できた距離を示している。
図4(B)の下部に示す比較例1では、近接辺Eに平行な方向の第1の破壊靱性値と、近接辺Eから隔離する方向の第2の破壊靱性値が同一値を示している。すなわち、比較例1で採用した構造T4では、上部成形体UC4と下部成形体LC4の境界に凹凸がなく、それらが互いに平面で接しているので、平行方向と隔離方向の破壊靱性値に差が生じていない。比較例2,3は、材料A,Bのみをそれぞれ用いて形成された焼結体なので、やはり平行方向と隔離方向の破壊靱性値に差が生じていない。比較例2,3の破壊靱性値は、材料Aと材料Bの焼結体が有する破壊靱性値である。なお、比較例1の表面材質(上部成形体の材質)は、比較例2と同じ材料Aであるが、比較例1の方が比較例2よりも破壊靱性値が高い。この理由は、比較例1では、ZrO2を含む内部材質Cの方が表面材質Aよりも熱膨張率が大きいため、焼結工程の冷却時に内部材質Cの方がより大幅に収縮し、表面材質Aに圧縮応力が残留して、クラックが進展し難くなっているためであると推定される。比較例1〜3の破壊靱性値と切削距離とを比較すると、破壊靱性値が高いほど切削距離が長く、切削工具としての耐久性に優れていることが理解できる。
実施例1〜3は、いずれも表面材質Aと内部材質Cの組み合わせを使用しているが、異なる構造T1〜3を有する焼結体である。これらは、近接辺Eに平行な方向の第1の破壊靱性値と、隔離方向の第2の破壊靱性値が異なる値を示している。より具体的には、近接辺Eに平行な方向の第1の破壊靱性値の方が、隔離方向の第2の破壊靱性値よりも大きい。すなわち、これらの実施例1〜3で採用した組み合わせ構造T1〜T3では、近接辺Eに平行な方向ではクラックが進展しにくく、近接辺E1から遠ざかる方向にクラックが進展しやすい。この理由は、焼結工程での冷却時に、近接辺Eに平行な方向により大きな圧縮応力が残留して、クラックが進展しにくく、一方、近接辺Eから遠ざかる方向ではそれほど大きな圧縮応力が残留していないためであると推定される。実施例1〜3の切削距離は、277 m,290 m,239 mであり、比較例1〜3の切削距離にくらべていずれも大幅に切削距離が伸びている。実施例1〜3の中では、構造T2を有する実施例2の切削距離がもっとも長い。従って、耐久性の観点からは、構造T1〜T3の中で構造T2が好ましい。なお、実施例2と比較例1とを比較すると、実施例2の隔離方向の破壊靱性値(4.0MPa√m)は、比較例1の破壊靱性値(4.2MPa√m)よりも小さいが、切削距離は実施例2(290 m)の方が比較例1(126 m)に比べて大幅に大きな値を示している。すなわち、切削距離は、破壊靱性値の大きさにも依存するが、平行方向と隔離方向に破壊靱性値の差があるか否か、により大きく依存していることが理解できる。実際に、切削試験の途中でクラックの進展方向を観察したところ、比較例1では、近接辺Eの近傍にクラックが発生すると、近接辺Eにほぼ平行な方向に沿ってクラックがそのまま進展していた。一方、実施例2では、近接辺Eの近傍にクラックが発生しても、その後、近接辺Eから隔離する方向に沿ってクラックが迂回している様子が観察された。このように、平行方向と隔離方向の破壊靱性値に差異がある場合には、クラックがそのまま直進せずに様々な方向に迂回しながら進展していくので、大きな切削距離が得られるものと理解できる。
実施例4〜6は、好ましい組み合わせ構造T2を用いて、表面材質と内部材質を実施例2から変更したものである。これらの実施例4〜6でも、平行方向と隔離方向の破壊靱性値に十分に大きな差異が存在し、切削距離も比較例1〜3に比べて大幅に増大している。特に、実施例4は、平行方向と隔離方向の破壊靱性値(7.9MPa√m,6.5MPa√m)がいずれも大きな値を示しており、切削距離がもっとも長い点で好ましい。破壊靱性値の値が大きい理由は、表面材質BがZrO2を含んでいるからである。なお、実施例1〜6は、いずれも比較例1〜3に比べて切削距離が十分に長い。従って、平行方向と隔離方向の破壊靱性値の差は、0.5MPa√m以上あることが好ましい。
なお、実施例1〜6では、いずれも平行方向よりも隔離方向の破壊靱性値が小さい。このような破壊靱性値の異方性(方向依存性)を実現するためには、焼結体の表面の対角線DL(図5)からオフセットした位置において、近接辺Eに平行な方向における残留圧縮応力が、隔離方向における残留圧縮応力よりも大きくなるように、上部成形体と下部成形体の嵌合面の凹凸が形成されていることが好ましい。
なお、実施例1〜6とは逆に、平行方向よりも隔離方向の破壊靱性値が大きくなるように、上部成形体と下部成形体の嵌合面の凹凸を形成してもよい。この場合にも、クラックの発生後にクラックがそのまま直進せずに様々な方向に迂回しながら進展してゆき、大きな切削距離が得られることが期待できる。また、上部成形体の熱膨張率を下部成形体の熱膨張率よりも大きくして、上部成形体に引張応力が残留するようにしていてもよい。
10…切削工具
12…切刃
14…すくい面
16…逃げ面

Claims (5)

  1. 上表面のコーナー部を切刃として使用する切削工具であって、
    互いに異なる材料組成と熱膨張率を有する複数の異種材料成形体を、前記切削工具の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせ、前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置で測定される破壊靱性が異方性を有するように構成されており、
    前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置においてJIS-R1607のIF法に準じて破壊靱性値を測定したとき、
    (i)前記コーナー部を形成する2つの辺のうちで前記測定位置により近い第1の辺にほぼ平行な方向に伸びるクラックのクラック長さの半分から算出される第1の破壊靱性値と、
    (ii)前記測定位置の中心を始点として前記第1の辺から遠ざかる方向に伸びるクラックのクラック長さから算出される第2の破壊靱性値と、
    の差が、0.5MPa√m以上であることを特徴とする切削工具。
  2. 請求項記載の切削工具であって、
    前記第2の破壊靱性値が前記第1の破壊靱性値よりも小さいことを特徴とする切削工具。
  3. 請求項1又は2に記載の切削工具であって、
    前記複数の異種材料成形体は、前記切削工具の上表面を構成する第1の成形体と、前記第1の成形体に組み合わされた第2の成形体とを含み、
    前記複数の異種材料成形体は、互いに組み合わされた後に焼結され、
    前記第2の成形体の熱膨張率は、前記第1の成形体の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする切削工具。
  4. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の切削工具であって、
    前記複数の異種材料成形体は、それぞれアルミナを主成分とするセラミック材料で形成されていることを特徴とする切削工具。
  5. 上表面のコーナー部を切刃として使用する切削工具の製造方法であって、
    (a)互いに異なる材料組成と互いに異なる熱膨張率を有する複数の異種材料成形体を成形する工程と、
    (b)前記複数の異種材料成形体を前記切削工具の上表面に平行な面に対して凹凸状の嵌合面を介して互いに組み合わせることによって、前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置で測定される破壊靱性が異方性を有する組み合わせ成形体を作成する工程と、
    を備え
    前記上表面のコーナー部の対角線からオフセットした測定位置においてJIS-R1607のIF法に準じて破壊靱性値を測定したとき、
    (i)前記コーナー部を形成する2つの辺のうちで前記測定位置により近い第1の辺にほぼ平行な方向に伸びるクラックのクラック長さの半分から算出される第1の破壊靱性値と、
    (ii)前記測定位置の中心を始点として前記第1の辺から遠ざかる方向に伸びるクラックのクラック長さから算出される第2の破壊靱性値と、
    の差が、0.5MPa√m以上であることを特徴とする切削工具の製造方法。
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