JP5488066B2 - 放電管及びストロボ装置 - Google Patents

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本発明は、円筒状のガラスバルブの外周面に金属の蒸着による反射膜が形成される閃光放電管(以下、放電管とも呼ぶ)に関し、また、当該閃光放電管を備えるストロボ装置に関する。
従来、ストロボ装置の発光部に設けられる放電管として、光を透過する帯状の透光部を残すようにして、円筒状のガラスバルブの外周面に反射膜が形成される放電管が知られている(例えば、特許文献1)。そして、反射膜は、アルミニウムや銀等の金属を蒸着することによって形成され、放電管内で発生した光を反射させることで、発光効率を向上させている。
特開平7−72535号公報
ところで、放電管2は、ガラスバルブ9の内部で励起されたガス全体が発光することで、外部に向けて光を照射する。したがって、図7に示すように、小さい範囲で蒸着されている反射膜10では、点Fでの発光が反射膜10では反射されず、放電管2の後方(所望の方向とは異なる方向)に照射されるため、光量を損失することになる。また、反射膜が形成される放電管おいては、一般的に、ガラスバルブ9の外周面から反射膜が剥がれるという問題もあった。
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、光量を損失するのを防止できると共に、ガラスバルブの外周面から反射膜が剥がれるのを防止できる放電管及びストロボ装置を提供することを課題とする。
本発明に係る放電管は、円筒状のガラスバルブの外周面に金属の蒸着による反射膜が形成される放電管において、反射膜は、周方向において240°以上の範囲で蒸着されると共に、焼結されたシリカ膜により外側から覆われていることを特徴とする。
斯かる構成によれば、反射膜が周方向において240°以上の範囲で蒸着されているため、内部で発生した光が反射膜で反射され、その結果、所望の方向(被写体に向けて照射したい方向)に光を照射することができる。さらに、焼結されたシリカ膜が反射膜を外側から覆うため、ガラスバルブの外周面と反射膜とを強固に接合することができる。
また、請求項2記載の発明において、シリカ膜は、厚み寸法が20nm〜200nmとなるように形成されることが好ましい。
斯かる構成によれば、厚み寸法が20nm〜200nmとなるように、シリカ膜が形成されている。したがって、ガラスバルブの外周面と反射膜とを強固に接合できると共に、シリカ膜が光学特性に影響を及ぼすのを防止できる。
本発明に係るストロボ装置は、前記の放電管を備えることを特徴とする。
斯かる構成によれば、放電管の反射膜が周方向において240°以上の範囲で蒸着されているため、放電管の内部で発生した光が反射膜で反射され、その結果、所望の方向に光を照射することができる。さらに、焼結されたシリカ膜が反射膜を外側から覆うため、ガラスバルブの外周面と反射膜とを強固に接合することができる。
以上の如く、本発明に係る放電管及びストロボ装置によれば、所望の方向に光を照射するため、光量を損失するのを防止できると共に、ガラスバルブの外周面と反射膜とを強固に接合するガラスバルブの外周面から反射膜が剥がれるのを防止できるという優れた効果を奏する。
本発明の一実施形態に係るストロボ装置の全体斜視図 同実施形態に係る放電管の、(a)は全体斜視図、(b)はA−A線の断面図 同実施形態に係る放電管の製造方法を説明する内視正面図 同実施形態に係る放電管の製造方法を説明する斜視図 同実施形態に係る放電管の製造方法を説明する図における、(a)〜(c)は断面図 同実施形態に係る放電管の反射膜厚と反射率との相関図 従来の放電管の全体断面図
以下、本発明に係るストロボ装置及び放電管における一実施形態について、図1〜図6を参酌して説明する。
本実施形態に係るストロボ装置1は、撮像装置(図示していない)に設けられる。そして、ストロボ装置1は、図1に示すように、光を放射する放電管2と、放電管2から放射される光を被写体側に向けて反射する反射部材3と、放電管2及び反射部材3を保持するホルダ4とを備える。また、ストロボ装置1は、一部が透光性を有し且つ放電管2と反射部材3とを保持した状態でホルダ4を収容する光学部材5を備える。
さらに、ストロボ装置1は、光学部材5を覆うように、光学部材5に固定されるパネル基板6を備える。また、ストロボ装置1は、パネル基板6に搭載される高電圧部のトリガーコイル(図示していない)及び各種電子部品7,…と、オートフォーカスを行う際に補助光として機能する補助光源(LED)8とを備える。
放電管(閃光放電管)2は、図2に示すように、長尺な円筒状のガラスバルブ9と、ガラスバルブ9の外周面に金属の蒸着により形成される反射膜10とを備える。なお、放電管2は、反射膜10を周方向の一部の範囲に配置することで、透光可能な帯状の透光部11がガラスバルブ9の前方側に配置され、透光部11を介して、内部で発生した光を外部に向けて照射する。また、放電管2は、長手方向の各端部12に、電極13,14を備えている。さらに、放電管2は、反射膜10を外側から覆うべく焼結されたシリカ膜15を備える。
反射膜10は、軸心方向全長に亘ってガラスバルブ9の外周面に蒸着されている。そして、反射膜10は、周方向において240°以上の範囲でガラスバルブ9の外周面に蒸着されている。
シリカ膜15は、少なくとも反射膜10を覆うように配置されている。具体的には、シリカ膜15は、ガラスバルブ9の全長及び全周を覆うように配置されている。そして、シリカ膜15は、厚み寸法が20nm〜200nmとなるように形成されている。
本実施形態に係るストロボ装置1及び放電管2の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る放電管2の製造方法について説明する。
まず、ガラスバルブ9に金属の蒸着を行うための真空蒸着装置について、図3を参酌して説明する。
図3に示すように、真空蒸着装置16は、ガラスバルブ9の外周面に金属を蒸着することで反射膜10を形成すべく、ガラスバルブ9,…を固定する蒸着治具17を備える。
なお、蒸着治具17は、ガラスバルブ9を固定した後に、真空チャンバ18内に設置される。また、蒸着治具17は、生産性の観点から、複数のガラスバルブ9,…を固定できるようになっている。
また、蒸着治具17は、真空チャンバ18内の上方に配置される回転ステージ19に取り付けられるようになっている。そして、真空チャンバ18内の下方には、ガラスバルブ9,…に蒸着されて反射膜10となる金属材の蒸着源20が設置されている。なお、蒸着源20としては、アルミニウムや銀等が用いられる。
斯かる構成によれば、蒸着治具17で固定されているガラスバルブ9の軸方向を中心に(図3のB矢印方向に)、回転ステージ19が回転することで、ガラスバルブ9における蒸着源20と対向する外周面の位置を変更することができる。
そして、ガラスバルブ9,…と蒸着源20とが真空チャンバ18内に設置された後、真空チャンバ18内を真空状態にする。その後、蒸着源20を加熱すると、各ガラスバルブ9に向けて(図3のC矢印方向に)金属材が蒸発するため、各ガラスバルブ9の外周面に反射膜10が形成される。
次に、各ガラスバルブ9を蒸着治具17に固定する方法と、蒸着治具17を真空チャンバ18内に設置する方法とについて図4を参酌して説明する。
図4に示すように、蒸着治具17は、ベース板21上に複数の長尺なマスク用治具22が設けられている。そして、互いの長手方向が平行となるように、各マスク用治具22にガラスバルブ9を配置した後、各ガラスバルブ9の端部を押さえ板23で押さえる。さらに、押さえ板23は、各ガラスバルブ9の端部と当接する状態を維持するように、ベース板21上の取付部24にネジ25を介して固定される。
そして、ベース板21上に、各マスク用治具22と各ガラスバルブ9とが固定された後、各ガラスバルブ9がマスク用治具22よりも下方に位置する状態(図4における向きと上下が反転している状態)で、蒸着治具17が真空蒸着装置16の真空チャンバ18内に設置される。
なお、マスク用治具22,…は、ガラスバルブ9,…の外周面に反射膜10が形成されない部位、即ち、光が透過する帯状の透光部11となる部位を設けるためのものである。また、押さえ板23は、マスク用治具22,…とガラスバルブ9,…とを固定すると共に、ガラスバルブ9,…の端部に配置される電極13に成膜されるのを防止している。
次に、ガラスバルブ9に金属の蒸着を行うことで、ガラスバルブ9の外周面に反射膜10を形成する方法について、図5を参酌して説明する。
まず、回転ステージ19の回転角度を設定し、ガラスバルブ9と蒸着源20とが対向する第1の方向(図5(a)のD矢印方向)で、ガラスバルブ9に蒸着を行う。このとき、ガラスバルブ9の外周面のうち、蒸着源20に対して正面に位置する部位を中心として、周方向において約180°の範囲で反射膜10が形成される。
さらに、ガラスバルブ9の外周面のうち、蒸着源20に対して正面に位置する部位から背面側に向けて、徐々に薄くなるように反射膜10が形成される。なお、マスク用治具22によって覆われるガラスバルブ9の外周面の部位には、金属材が付着しないため、反射膜10が形成されない。
次に、回転ステージ19が回転することで、ガラスバルブ9が蒸着源20に対して正面に位置する部位が約90°移動し、図5(b)に示すように、第1の方向と直交する第2の方向(図5(b)のE矢印方向)で、ガラスバルブ9に蒸着を行う。
このときも同様に、ガラスバルブ9の外周面のうち、蒸着源20に対して正面に位置する部位を中心として、周方向において約180°の範囲で反射膜10が形成され、さらに、ガラスバルブ9の外周面のうち、蒸着源20に対して正面に位置する部位から背面側に向けて、徐々に薄くなるように反射膜10が形成される。
そして、上記の手順を、少なくとも2回(必要な膜厚に応じて複数回)行うことにより、マスク用治具22に覆われていないガラスバルブ9の外周面全てに金属材が蒸着する。これにより、蒸着角度が180°を超える反射膜10でも形成可能である。
また、ガラスバルブ9の外周面においては、第1の方向からの蒸着と、第2の方向からの蒸着との両方の蒸着において、反射膜10が形成された重複部分26が存在する。そして、図5(c)に示すように、反射膜10は、重複部分26が最も厚く形成され、透光部11側に行くに従って徐々に膜厚が薄くなるように形成される。
図6は、放電管2に形成された反射膜10の反射率(蒸着源20として銀を用いて反射膜10を形成し、発光波長400〜700nm域の分光反射率を測定したときの平均値)と、反射膜10の厚さとの関係を示す表及びグラフである。
上記の結果に基づき、本実施形態においては、反射膜10の厚みが少なくとも50nm以上、好ましくは100nm以上となるように蒸着されている。そして、反射膜10の厚みが50nm以上であれば、従来のストロボ装置に用いられている反射部材(反射傘)と、略同じ反射率(92%)となるため、放電管2内で発生した光を十分に反射させることができる。
さらに、剥離し易い反射膜10の周方向における各端部(前方側の部位)は、反射率が低下しない程度に薄い50nm以上の膜厚で形成する一方、反射膜10の周方向における中央部(後方側の部位)は、放電管2発光時の衝撃や熱によって金属粒子が飛散する恐れがあり、しかも、反射光量の低下を防ぐためにも、100nm以上の膜厚となるように形成するのが好ましい。
また、反射膜10全域を従来の反射部材(反射傘)よりも高い反射率に設定したい場合は、少なくとも80nm以上で成膜を行うのが好ましい。そして、放電管2の後方部分の反射膜10は、上記の蒸着方法によって100nm以上の膜厚となるため、反射率が周方向に亘って略同じ(約96%)になり平均化でき、その結果、配光ムラを抑制できる。
次に、各ガラスバルブ9及び反射膜10を被覆するシリカ膜15を形成する方法について説明する。
まず、ガラスバルブ9の外周面に反射膜10が形成された放電管2を保持し、シリカ液(例えばシラノール(S(OH):13wt%)、メタノール(CHOH:26wt%)、酢酸メチル(CHCOOCH:25.8wt%)、エタノール(COH:24wt%)、酢酸エチル(CHCOOC:11wt%)、五酸化二燐(P:0.2wt%))を放電管2(ガラスバルブ9及び反射膜10)の外側に付着させる(付着工程)。このとき、シリカ液が溜められた貯槽に放電管2を浸漬させる場合でもよく、また、シリカ液を放電管2に向けて噴霧させる場合でもよい。なお、電極13,14に、シリカ液が付着しないように、電極13,14をカバーする等の措置が必要である。
次に、放電管2に向けて窒素ガスを吹き付けることで、放電管2の外側に付着しているシリカ液の厚みを均一にする(ガス吹付工程)。その後、高温に加熱された炉内に放電管2を入れて、シリカ液を放電管2に焼結させる(焼結工程)。そして、自然冷却すること(冷却工程)で、各ガラスバルブ9及び反射膜10を被覆するシリカ膜15が形成される。
ところで、透光部11の周方向の角度(以下「開口角度」ともいう)が一定値以下である、即ち、透光部11が放電管2の光軸方向で放電管2の内径縁部よりも前方側に位置する場合、放電管2内で発生した光が後方に照射するのを防止できる。
ここで、斯かる位置における開口角度を2θ、放電管の外半径をR1、放電管の内半径をR2とすると、
cosθ = R2/R1
という関係が成り立つので、放電管の外半径R1と内半径R2との比に対応させて、θを一定値以下にする必要がある。そこで、一般的に製造されている細径の閃光放電管の寸法(タイプ1〜9)を基に、反射膜10の蒸着角度の例を以下の表1に記す。
Figure 0005488066



別途添付(pdfファイル)




例えば、タイプ9であれば、外径=1.30mmより、R1=0.65mmとなり、また、内径=0.85mmより、R2=0.425となり、その場合、2θ=98.3°となる。したがって、透光部11が放電管2の光軸方向で放電管2の内径縁部よりも前方側に位置するには、開口角度をこの値(2θ)以下にする必要があるため、反射膜10を形成する蒸着角度を360°(全角度)−98.3°(開口角度)=261.7°以上にしなければならない。
そして、実用上用いられる種々の放電管2の外径及び内径の関係と、放電管2の製造誤差(部品公差)等とを考慮すると、反射膜10を形成する範囲を240°以上にすることが好ましい。
以上より、本実施形態に係るストロボ装置1によれば、放電管2の反射膜10が周方向において240°以上の範囲で蒸着されているため、放電管2の内部で発生した光が反射膜10で反射される。これにより、所望の方向に光を照射することができるため、光量を損失するのを防止できる。
また、本実施形態に係るストロボ装置1によれば、焼結されたシリカ膜15が反射膜10を外側から覆うため、ガラスバルブ9の外周面と反射膜10とを強固に接合することができる。したがって、ガラスバルブ9の外周面から反射膜10が剥がれるのを防止できる。
なお、本発明に係るストロボ装置及び放電管は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
例えば、本発明に係る放電管2においては、反射膜10は、軸心方向における各端部12よりも中央部の方が大きい範囲で蒸着されて構成される場合でもよい。この場合透光部11は軸心方向において反射膜10の全長に渡って存在していればよい。例えば、端部12における反射膜10が蒸着される範囲としては、240°以上で中央部14(中心位置15)における反射膜10が蒸着される範囲としては、端部12より大きく360°より小さければよい。
また、本発明に係る放電管2の製造方法においては、反射部材3を蒸着時のマスク用治具22として用い、放電管2と反射部材3とを組み合わせた状態で蒸着治具17に固定して反射膜10を蒸着する場合でもよい。斯かる製造方法によれば、より簡易に適正な蒸着角度で反射膜10を成形することができる。
また、上記実施形態に係る放電管2の製造方法においては、ガラスバルブ9の外周に対する蒸着源20からの角度を変化させるために回転ステージ19を回転させていたが、斯かる場合に限られない。例えば、ガラスバルブ9を1本ずつ個別に回転させる場合でもよく、また、蒸着源20を移動させてガラスバルブ9の外周に対する角度を変化させる場合でもよい。
また、上記実施形態に係る放電管2の製造方法においては、真空蒸着法により蒸着を行う場合を説明したが、斯かる場合に限られず、例えば、スパッタリング法やイオンプレーティング法により蒸着を行う場合でもよい。
本発明に係る放電管及びストロボ装置は、所望の方向に光を照射するため、光量を損失するのを防止できると共に、ガラスバルブの外周面と反射膜とを強固に接合するガラスバルブの外周面から反射膜が剥がれるのを防止できる効果を有し、円筒状のガラスバルブの外周面に金属の蒸着による反射膜が形成される放電管や、当該放電管を備えるストロボ装置として有用である。
1 ストロボ装置
2 放電管
3 反射部材
4 ホルダ
5 光学部材
6 パネル基板
7 電子部品
8 補助光源
9 ガラスバルブ
10 反射膜
11 透光部
12 端部
13 電極
14 電極
15 シリカ膜
16 真空蒸着装置
17 蒸着治具
18 真空チャンバ
19 回転ステージ
20 蒸着源
21 ベース板
22 マスク用治具
23 押さえ板
24 取付部
25 ネジ
26 重複部分


Claims (3)

  1. 円筒状のガラスバルブの外周面に金属の蒸着による反射膜が形成される放電管において、反射膜は、周方向において240°以上の範囲で蒸着されると共に、
    前記反射膜は周方向において、その端部から半周の範囲にわたって、膜厚が徐々に厚くなるように形成されており、
    さらに焼結されたシリカ膜により外側から覆われていることを特徴とする閃光放電管。
  2. 前記シリカ膜は、厚み寸法が20nm〜200nmとなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の閃光放電管。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の閃光放電管を備えることを特徴とするストロボ装置。
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