JP5487437B2 - ポリイオンコンプレックスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリイオンコンプレックスの製造方法に関し、より詳細にはキチン又はキトサンと、アルギン酸を反応して得られるポリイオンコンプレックスの製造方法に関する。
海洋バイオマスを有効に活用することを目的として多くの研究が進められている。
海洋バイオマスの中でも、大量に排出されるカニやエビの殻から得られるキチン(β−1,4−ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン、(C13NO)n)或いはキチンをアルカリにより脱アセチル化して得られるキトサン(β−1,4−ポリ−D−グルコサミン (C11NO)n)や、海藻から可溶性塩として抽出されるアルギン酸((CCOOH)n)は、優れた性質を持つため、医療分野や製紙・繊維工業等の多くの分野に利用されている。
キトサンをはじめとするポリカチオンとアルギン酸をはじめとするポリアニオンを水或いは水に混和性のある溶媒の共存下で混合することで、速やかにゲル状のポリイオンコンプレックス(高分子電解質の複合体)が得られることが知られている。
例えば、キトサン等のポリカチオンとアルギン酸等のポリアニオンを水等の溶媒に溶解したものを薄層状に流延して得られるポリイオンコンプレックスを乾燥してフィルム化した医療用接着剤が提案されている(特許文献1)。
又、例えば、キトサンの持つ抗菌性に着目して、繊維を、0.1〜20質量%濃度の酸水溶液にキトサンを0.1〜10質量部溶解した溶液と、アルギン酸等のポリアニオンを0.1〜10質量%含有する水溶液に順次含浸処理するキトサン付与繊維の製造方法が提案されている(特許文献2)。
又、例えば、キトサンの持つ抗菌性に着目し、高コストでも応用可能な材料への展開を目的とした水系コーティング材を得るために、キトサン溶液にアニオンモノマーを添加し、固化する際にポリマー化する技術が提案されている(非特許文献1)。これにより、ポリイオンコンプレックスがゲル化して溶液粘度が急速に高くなることによりコーティング材としての利用が難しくなる点が解消できるとされている。
これらは、いずれも、ゲル化したポリイオンコンプレックスの接着機能を利用した技術である。
特開2000−5296号公報 特開平9−41271号公報
吉村治、外2名、「天然物由来抗菌性コーティング材の開発」、〔online〕、石川県工業試験場 平成19年度成果発表会要旨集、〔平成22年10月30日検索〕、インターネット<URL:http://www.irii.jp/theme/2007/text/study03.html>
解決しようとする問題点は、キトサンとアルギン酸を反応して得られるポリイオンコンプレックスの製造工程が煩雑であるためポリイオンコンプレックスの製造コストが高く、利用分野が、上記のように高価額のハイエンド商品(最上級の群の商品)である医薬品等の分野に限られ、豊富に存在する海洋バイオマスを低価額のローエンド商品(最も廉価な一群の商品)の分野に広範に有効利用することが難しい点である。
本発明に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方、及びアルギン酸を混合、加熱して可塑化する工程と、
さらに、カルボン酸又はその誘導体、及び水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を混合、加熱して反応するとともに、水分を逐次除去する工程と、
を有することを特徴とする。
又、本発明に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、好ましくは、前記カルボン酸又はその誘導体が、乳酸及び乳酸オリゴマーのうちのいずれか一方又は双方であることを特徴とする。
又、本発明に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、好ましくは、前記乳酸オリゴマーの数平均分子量が1,000〜10,000であることを特徴とする。
又、本発明に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、好ましくは、60〜160℃の温度で反応することを特徴とする。
又、本発明に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、好ましくは、シリンダと、第一の原料投入口と、第一の原料投入口の下流に設けられる第二の原料投入口と、該第二の原料投入口の下流に設けられる真空脱気機構と、投入原料中で回転して投入原料を混合しながら押し進めるスクリューと、ダイと、加熱機構を備える混合押出機を用い、
前記キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方と、前記アルギン酸を該第一の原料投入口から該シリンダに投入して混合及び加熱して可塑化し、前記カルボン酸又はその誘導体、及び水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を該第二の原料投入口から該シリンダに投入して混合及び加熱するとともに、水分を該真空脱気機構で除去し、得られるポリイオンコンプレックスをダイから押し出すことを特徴とする。
本発明に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方、及びアルギン酸を混合、加熱して可塑化する工程と、さらに、カルボン酸又はその誘導体、及び水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を混合、加熱して反応するとともに、水分を逐次除去する工程と、を有するため、反応時のゲル化が抑制され、簡易かつ安価な方法でポリイオンコンプレックスを効率的に製造することができる。
図1は本実施の形態例に係るポリイオンコンプレックスの製造方法の好適な態様として混合押出機を用いるときの、装置の概略構成を示す図である。 図2は実施例で得られた粉体状の生成物を吸水させたときの概観を示す写真図である。
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、以下に説明する。
本実施の形態例に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方、及びアルギン酸を混合、加熱して可塑化する工程と、さらに、カルボン酸又はその誘導体(以下、これをイオン化剤ということがある。)、及び水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を混合、加熱して反応するとともに、水分を逐次除去する工程と、を有する。これにより粉粒状或いはペースト状のポリイオンコンプレックスが得られる。
キチン、キトサン及びアルギン酸は粉体のものをそのまま原料として用いることが好ましいが、必要に応じて、少量の、水その他の溶媒に溶解したものを用いることを排除するものではない。
キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方とアルギン酸は、質量部数単位で、例えば40:60〜60:40の範囲に配合することができるが、同量であることが好ましい。
キチン、キトサン及びアルギン酸の混合物は、可塑化する程度に加熱する。これにより、後の反応を均一かつ効率的に実施することができる。加熱温度が極端に高いと、ゲル化反応が進行してしまい、好ましくない。
イオン化剤(カルボン酸又はその誘導体)は、反応原料であるキチン及びキトサンのイオン化反応を制御し、徐々に進行させることができるものであり、例えば、乳酸、乳酸オリゴマー、ラクチド等を用いることができる。このうち、乳酸及び乳酸オリゴマーは、キトサンのイオン化反応をより効果的に制御できるため、好ましい。
また、乳酸オリゴマーを用いる場合、数平均分子量が1,000〜10,000の範囲にあるものを用いると、キトサンのイオン化反応をより効果的に制御できるため、好ましい。数平均分子量10,000以上では乳酸を徐放しづらくなり、イオン化反応が低下する。分子量測定は、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置GPC-8020を用いて行う。分子量の計算はポリスチレン換算で行う。測定条件として、カラムはTSKgel Super HM-H、検出器はUV-8020とRI-8020を用いる。システム温度、カラム温度は40 ℃、溶媒はクロロホルムを用い、流量は0.60 mL min-1とする。標準サンプルとして、Mnが500から1、110、000までの低分散度ポリスチレンスタンダード(TOSOH TSKstandard Polystyrene)を用いる。クロロホルム2 mLにポリ乳酸サンプル約12mgを溶かし、この溶液をオールプラスチックシリンジに1-1.5 mL採取し、ポアサイズ0.5 μmのテフロン(テフロンは登録商標)製メンブランフィルターで濾過し、GPC用サンプルとする。
イオン化剤は、これらのうちの一種のみを用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
イオン化剤として乳酸を用いる場合、キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方の総量100質量部に対して乳酸を、例えば40〜80質量部用いる。又、イオン化剤として乳酸オリゴマーを用いる場合、反応時の乳酸オリゴマーからの乳酸の徐放効率を考慮して、キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方の総量100質量部に対して乳酸オリゴマーを、例えば200〜800質量部用いる。これに対して、これら以外のラクチド等のイオン化剤を用いる場合、原料組成や反応条件等により望ましい使用量が大きく変わりうるため、適宜検討し、所望の使用量を設定する。
前記したように、キチン又はキトサンとアルギン酸を混合して極端に高い温度に加熱すると、直ちに反応してゲル状のポリイオンコンプレックスが生成し、溶液粘度が急速に高くなるため、取り扱いが煩雑となる。これに対して、本実施の形態例では、キチン又はキトサンとアルギン酸の混合物を加熱して可塑化したうえで、イオン化剤と、イオン化剤の濃度を調整する適量の水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を加えることにより、キチン又はキトサンのイオン化反応を制御して、徐々に進行させることで、ポリイオンコンプレックスの生成速度を抑制することができ、これにより、反応過程の原料の粘度の急激な上昇を制御することができる。
イオン化剤とともに、水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を用いる。
水と混和性のある有機酸の水溶液は、キチン、キトサン及びアルギン酸を溶解できるものである限り特に限定するものではなく、例えば、クエン酸、ピルビン酸、酢酸、ギ酸等を用いることができる。有機酸の水溶液の濃度は特に限定するものではないが、反応のより均一な進行を図る観点からは、有機酸濃度が10質量%以上の水溶液を用いることが好ましく、又、用いる反応装置の耐食性の観点からは、有機酸濃度が50質量%以下の水溶液を用いることが好ましい。ただし、作業環境や衛生面等の観点からは、有機酸を用いずに水のみを用いることが好ましい。
イオン化剤とともに用いる水又は水と混和性のある有機酸は、キチン、キトサン及びアルギン酸を溶解してポリイオンコンプレックスの生成反応を円滑に進めるうえで必須である。水又は水と混和性のある有機酸の水溶液の量は、特に限定するものではないが、例えば、水を用いる場合、イオン化剤100質量部に対して50〜1,000質量部程度とすることが好ましい。有機酸の水溶液を用いる場合は、イオン化剤に対する配合量は水溶液の有機酸濃度によって大きく異なる。水等の量が極端に少なすぎると、言い換えれば、水等で溶解した乳酸等のイオン化剤が高濃度であると、ゲル化反応の急速な進行をうまく制御できないおそれがある。
水や有機酸の水溶液は、イオン化剤とは別に準備してイオン化剤とともに混合して用いてもよく、又、全部又は一部をイオン化剤の溶媒の形で用いてもよい。
なお、イオン化剤として乳酸オリゴマーを用いる場合、乳酸オリゴマーをキチン、キトサン及びアルギン酸と同時に混合し、加熱してもよい。熱により変質した乳酸オリゴマーが、後から加えた水により加水分解して乳酸を放出することでキトサンをより効率的にイオン化することができる。
加熱は、60〜160℃の温度で行うことが好ましい。
キチン、キトサン及びアルギン酸は常温で粉体である。加熱温度が60℃を大きく下回ると、融点が90℃前後であるキトサンを溶融することができず、一方、加熱温度が160℃を大きく上回ると、熱分解温度が210℃前後であるキトサン及び200℃前後であるアルギン酸の熱分解が進み、炭化を生じるため、いずれも好ましくない。
好ましくは、キチン又はキトサンとアルギン酸を混合して加熱するときの加熱温度は、例えば60〜80℃の温度とし、これによりキトサンを溶融する。このとき、融点が85℃程度であるアルギン酸は一部溶融し、原料全体として可塑化状態となる。また、イオン化剤及び水等を加えて混合して加熱するときの加熱温度は、例えば100〜140℃の温度とし、これによりポリイオンコンプレックスを生成する。加熱温度が100℃を大きく下回ると、イオン化剤によるキチン又はキトサンのイオン化抑制作用が効果的に進行しないおそれがある。
上記の熱分解温度及び融点はセイコーインスツルメンツ株式会社製のTG/DTA及びDSCを用いて測定した値である。サンプル約3.0mgをアルミニウムパン(PN50-020 Alφ5 Pan)に取り、TGは窒素気流(100 mL min-1)下、40℃から400℃までの範囲で、昇温速度9 ℃ min-1で等速昇温法による熱重量測定を行った。DSCは窒素気流(50mL min-1)下、室温から200℃までの範囲で、昇温速度10℃min-1で等温昇温法にて融点を測定した。
原料全体として可塑化状態とするのに必要な反応時間は、例えば30秒〜5分程度あれば十分であり、また、ポリイオンコンプレックスを生成するのに必要な反応時間は、例えば10〜30分程度あれば十分である。
原料中に配合した水以外にも、反応により水分を生成する。反応による水分は、大半がイオン化剤の脱水反応により生じる水分(水蒸気)であるが、キトサン及びアルギン酸由来の水分も同伴することが考えられる。
水分は、反応時の急激なゲル化を促進するため、好ましくない。これに対して、本実施の形態例では、原料中に配合した水及び反応により生成した水分が蒸発した水蒸気を逐次除去し、実質的に系内に水分の存在しない状態で反応を進行するため、反応時のゲル化の進行を制御、抑制できる。
本実施の形態例に係るポリイオンコンプレックスの製造方法は、例えば、攪拌機を設けた反応釜等を用いてバッチ処理で行うことができ、このとき、例えば反応釜を密閉するとともに脱気機構を設け、或いは真空室内に反応釜を配置する等して、水分を除去することができる。
ただし、例えば後述するような連続処理可能な装置を用いると、より簡易な処理が可能となり、また、高い生産性を得るうえで、好ましい。
本実施の形態例に係るポリイオンコンプレックスの製造方法によれば、反応時のゲル化が抑制され、簡易かつ安価な方法でポリイオンコンプレックスを効率的に製造することができる。
得られる粉粒状或いはペースト状のポリイオンコンプレックスは、抗菌接着剤、抗菌繊維、抗菌シート、抗菌塗料、吸着剤或いはシックハウス防止剤等の広範な用途に好適に用いることができる。なお、ペースト状のポリイオンコンプレックスは、水分の脱気量をコントロールすることで得られる。
つぎに、混合押出機を用いた本実施の形態例に係るポリイオンコンプレックスの製造方法の好適な態様について、図1を参照して説明する。
図1に示す混合押出機10は、シリンダ(バレル)12と、第一の原料投入口14と、第二の原料投入口16と、真空脱気機構18と、スクリュー20と、ダイ22と、加熱機構24を備える。第二の原料投入口16は、第一の原料投入口14の下流に設けられ、真空脱気機構18は、第二の原料投入口16の下流に設けられる。なお、例えばシリンダ12の駆動部等、混合押出機10が備える残余の構成要素については、図示及び説明を省略する。
混合押出機(株式会社井元製作所製 型番IMC-160B)10は、例えば、シリンダ12の容量が0.5リットルであり、スクリュー径がφ20mm、スクリューの長さが600mmである。第一の原料投入口14と第二の原料投入口16の間の距離が275mmであり、第二の原料投入口16と真空脱気機構18の間の距離が150mmである。なお、第二の原料投入口16及び真空脱気機構18は、市販装置に備えられた2つのベント部を利用したものである。
真空脱気機構18は、例えば、シリンダ12から導出される配管と、配管に接続される冷却トラップと、受器と、減圧装置(真空装置)で構成される(図示せず)。シリンダ12の内部圧力は、真空脱気機構18により、例えば50kPa程度に設定可能に構成される。内部圧力は、反応温度における水の飽和蒸気圧以下に設定され、圧力が低いほど留出温度が低下して水分を除去しやすいため好ましいが、水分の留去温度が低くなりすぎると留去した水分が壁面に付着し真空度を低下させる問題があるため、反応温度に応じて水分が壁面に付着しないような圧力に調整することが好ましい。
スクリュー20は、例えば、二軸スクリューであり、回転速度が5〜50rpmである。
加熱機構24は、例えば、電源・温度制御機構24aと、2つのゾーン(矢印A1及びA2で示す)を独立して加熱できる電熱ヒータ24b、24cで構成される。
混合押出機10を用いたポリイオンコンプレックスの製造方法を説明する。
シリンダ12の内部温度を、ゾーンA1については電熱ヒータ24bにより例えば60℃に、及びゾーンA2については電熱ヒータ24cにより例えば140℃に、それぞれ設定する。真空脱気機構18によりシリンダ12の内部圧力を例えば50kPaに設定する。スクリュー20を例えば10rpmの回転速度で回転させる。
キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方とアルギン酸を総量で例えば供給速度100g/hで第一の原料投入口14からシリンダ12に投入する。スクリュー20により、回転混合され、推し進められるキチン等の原料のうち、キトサンが加熱により溶融し、ゾーンA1では原料全体として可塑化状態になる。スクリュー20によりシリンダ12内を推し進められる可塑化状態のキチン等の原料に対して、乳酸及び乳酸オリゴマーのうちのいずれか一方又は双方を総量で例えば供給速度30g/hで第二の原料投入口16からシリンダ12に投入する。同時に、例えば水を供給速度120g/hで第二の原料投入口16からシリンダ12に投入する。投入する水の全部又は一部は、乳酸等を水溶液化したときの溶媒であってもよい。乳酸等がキトサンのゲル化を抑制しながらポリイオンコンプレックスの生成が進行する。
投入した水の蒸発や乳酸等の分解により生成する水の蒸発によって生成する水蒸気は、真空脱気機構18によりシリンダ12の外に排出され、ポリイオンコンプレックスの生成は実質的に水分が存在しない状態で進行する。
ダイ22から粉粒状或いはペースト状のポリイオンコンプレックスが押し出され、回収される。
上記の混合押出機を用いたポリイオンコンプレックスの製造方法により、簡易な方法で連続処理による高い生産性でポリイオンコンプレックスを製造することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1、2)
図1に示した混合押出機を用いた。
シリンダ12の内部温度を、ゾーンA1については電熱ヒータ24bにより60℃に、及びゾーンA2については140℃に制御し、真空脱気機構18によりシリンダ12の内部圧力を50kPaに設定した。また、スクリュー20の回転速度を下記表1に示す条件に設定した。
下記表1に示した割合でアルギン酸(非膨張、和光純薬工業株式会社製)及びキトサン(MW =10,000-300,00 和光純薬工業株式会社製)の同量を、第一の原料投入口14からシリンダ12に総量で100g/hの供給速度で投入した。
下記表1に示した割合で乳酸(90質量%乳酸濃度、武蔵野化学研究所株式会社製)又は乳酸オリゴマー(MW=1,000〜10,000 融点158〜163℃)に水を加えたものを、第二の原料投入口16からシリンダ12に表1に示す供給速度で投入した。なお、乳酸オリゴマーは、上記の乳酸を乳酸オリゴマーに調製したものを用いた。
ダイ22から押し出される生成物は粉体であった。
(比較例1、2)
比較例1は乳酸及び乳酸オリゴマー並びに水のいずれも使用せず、又、比較例2については乳酸オリゴマーを使用したが水を使用しなかった点以外は、実施例1、2と同様の方法で製造した。
ダイ22から押し出される生成物は粉体であった。
なお、水を投入しなかった点以外は実施例1と同じ条件で行ったものは、ゲル化反応を制御できずに、押出成形機のスクリューが空回りし、或いはキトサンの溶融しない一部がシリンダ内で詰まりを生じ、成形不可能であった。
また、乳酸を投入しなかった点以外は実施例1と同じ条件で行ったものは、得られた粉体生成物について、後述する水添加による生成物の確認を実施例1、2等と同様の条件で行った結果、水を添加した生成物の水分吸収率は10%以下であった。
また、脱気を行わなかった以外は実施例1と同じ条件で行ったものは、成形開始当初は発泡体が得られるが、成形過程では水蒸気が装置に充満して圧力が上昇し、また、その後シリンダ内で詰まりを生じたため、処理を中止した。
(水添加による生成物の確認)
実施例1、2及び比較例1、2で得られた各生成物に、生成物100質量部に対して25質量部の水を添加して、生成物の吸水によるゲル化挙動を調べた。図2に、水を添加した各生成物のうち、図中左側から順に、比較例1、実施例1及び実施例2の吸水生成物の概観写真を示す。
水を添加した生成物の水分吸収率(25質量部の添加水分うち生成物に吸収された水分の割合:質量%)は、比較例1が3.8%、実施例1が81.0%、比較例2が8.6%及び実施例2が56%であった。
比較例1、2のものは、水分吸水率が著しく小さく、また、写真によると比較例1のものは溶解性がほとんど確認されないため、生成物がポリイオンコンプレックスをほとんど含んでいないものと判定した。これに対して、実施例1、2のものは水分吸水率が大きいため、ポリイオンコンプレックスを形成しているものと判定した。特に、水分吸水率が81.0%の実施例1のものは、写真によると、溶解性が高く、ゲル化している状況が観察された。
10 混合押出機
12 シリンダ
14 第一の原料投入口
16 第二の原料投入口
18 真空脱気機構
20 スクリュー
22 ダイ
24 加熱機構
24a 電源・温度制御機構
24b、24c 電熱ヒータ

Claims (5)

  1. キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方、及びアルギン酸を混合、加熱して可塑化する工程と、
    さらに、カルボン酸又はその誘導体及び水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を混合、加熱して反応するとともに、水分を逐次除去する工程と、
    を有することを特徴とするポリイオンコンプレックスの製造方法。
  2. 前記カルボン酸又はその誘導体が、乳酸及び乳酸オリゴマーのうちのいずれか一方又は双方であることを特徴とする請求項1記載のポリイオンコンプレックスの製造方法。
  3. 前記乳酸オリゴマーの分子量が1,000〜10,000であることを特徴とする請求項2記載のポリイオンコンプレックスの製造方法。
  4. 60〜160℃の温度で反応することを特徴とする請求項1記載のポリイオンコンプレックスの製造方法。
  5. シリンダと、第一の原料投入口と、第一の原料投入口の下流に設けられる第二の原料投入口と、該第二の原料投入口の下流に設けられる真空脱気機構と、投入原料中で回転して投入原料を混合しながら押し進めるスクリューと、ダイと、加熱機構を備える混合押出機を用い、
    前記キチン及びキトサンのうちのいずれか一方又は双方と、前記アルギン酸を該第一の原料投入口から該シリンダに投入して混合及び加熱して可塑化し、前記カルボン酸又はその誘導体、及び水又は水と混和性のある有機酸の水溶液を該第二の原料投入口から該シリンダに投入して混合及び加熱するとともに、水分を該真空脱気機構で除去し、得られるポリイオンコンプレックスをダイから押し出すことを特徴とする請求項1記載のポリイオンコンプレックスの製造方法。
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